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誰にでも、誰にも汚されたくない、秘めた恋や夢があったはず

         運命は愛の暮らしを引き離し
          時の漣は、残された二人の足跡を音も無く消てゆく・・
           やがて、吹き抜ける北風に冷たい忘却の夜へと流されて・・・
         人生は道標べもなく
           そして又、季節は移り行き夢の欠片、集めて・・
            そおっと抱締めたとき、まだ残る、ぬくもりが、悲しくて
             三叉路にはシグナルも無く、雨に濡れて歩く旅人・・・・

枯れ葉の流れ着く先 【幻編:表紙】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

 

表紙:イラスト.jpg    
  イラスト製作、提供 : ま~くん     作 : Touch-ojisan                    
 漫画イラスト庫STUDIO EXCALIBUR 協賛
小説の挿絵では素晴しさを半減しております、宜しかったら大画面で見られます 
下記URL:ま~くんまでポッチと、お立ちより下さい、
    ブロガーの皆様の貴重な感想やアドバイス、励みに、心よりお礼申し上げます
登場人物の紹介 
鶴見 佳子.jpg
林 美奈子1.jpg
龍崎 健司.jpg
孝ちゃん2.jpg北原 監督1.jpg
久美ちゃん&孝ちゃん1.jpg長崎 浩子.jpg長崎 海斗.jpg
Y & R-FJ.jpg
北原 監督 & 龍崎 佳子2.jpg

 

訪問有難う御座います、ストーリーは下記ページより前編1から順次始まります、登録が逆になっていますので下段が、より申請が新しくなっております宜しくお願い致しますm(__)m


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編1】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

小説ですのでStory【前編1】~Story【前編9】【後編1】の順序でお読み下さい、読み易く登録が逆になっています★

  《回想:reminiscences》

 Formula Nippon Twin Ring Motegi(フォーミラー日本 モテギ・サーキッド 8/9日)

リュウヘルメット2.jpg

  真夏のギラギラした太陽を時折り千切れ雲が遮る、ここモテギ・サーキットは畑や田園に囲まれた静かな村であるが、この日ばかりは、流行のファションに身を包んだ若者達や派手な車が集まり交通麻痺が起きるほど賑わっている

 サーキット内ではコース上のスタート位置に運ばれたフォーミラーカーに各レーサーが乗り込み、マシーンのチェックや準備の終わったメカニック達も華やかなレース・クィーンも立ち去り、フォーメーション・ラップを終え各マシーンが予選タイム順に決められたスタート・ポジションに着ている

 サーキッド・スタンドを満席に埋めた観衆の歓喜や騒めきも今は消え、スタートの瞬間を固唾を呑み見据えている、今正に13台のFNマシーンがスタートの時を迎え、スタート位置に着いたフォーミラーカーのコックピットに納まっているレーサー達は今は遅しと待ち侘びている、一斉にヒューンパォーンフォーンパォーン高圧縮高回転の甲高い排気音を、鼓膜が破れんばかりに響かせ腸(ハラワタ)に染み渡り、身体の奥底から痺れ官能を呼び起こされ、嫌が上にも興奮が高まっている

 俺は目の前のスタート合図のシグナル・ライトを見詰め逸り高鳴る気持ちを抑える様に、静かにステアリングの手応えを確認する、一人狭いコックピットに押し込まれ、これまでの待機時間の孤独と不安が、闘志にかわり、戦闘態勢に入る時でもある、ググっと確りステアリングを握り返し”たのむぞ”とマシーンに祈るように、つぶやく

 ヘルメットのバイザーを下ろしスタートの瞬間に集中、スタート・シグナルを凝視しする、ランプがクローズアップされ、その信号以外、全ての音や物が俺の中では掻き消され静寂其の物だ、ただ心臓の鼓動だけが”ドックン、ドックン、ドックン”やけに大きく響く

 スタートシグナル・ライトが赤く一つずつ灯き始め1つ2つ3・・4・・5つ全て点灯、次の瞬間ブラックアウト!全てのライトが消える、反射的にテアリング・クラッチバドルを放しアクセルを踏み込む、スタートだ!

 サーキット全体の空気が嵐の海岸に激しく打ち砕ける波の様にマシーンの排気音を満席に埋めた観客席に轟かせ、激しいスリップ痕を残し白煙を上げながら一斉に13台のマシーンのタイヤが廻り始める、満月にしぼり込まれた弓の弧から矢が放たれる様に、俺はドライビング・シートに体が押し付けられ張り付くほど強いG(圧力)を受け走り出す、第一コーナーを目指し、空かさずステアリング・クラッチを引きステアリング・バドルでシフトアップ、アクセル・ペタル踏み込み、又戻す、もう一度、反射的に素早くバドルを握り、二度目のシフトアップ、今度は之でもかとアクセル・ペタルを床が抜けるほど強く踏み込み加速する、エンジン回転数はレッドゾーンを遥かに越えている、間髪を入れず変速ギアーを3速に入れる、此処までの操作は僅か2秒足らずの間であるスタート事故1jpg.jpg

 解き放たれた野生の狼達が一斉に獲物を追い詰める様に、第一コーナーに傾れ込む、俺はバック・ミラーを確認し、トップをアウトから交わし押さえ込む様にコースのインに付く、迫り来るコーナーぎりぎりで、今度は思い切りブレーキング、フロントのブレーキデスクが熱をおびて真っ赤に染まる、同時にシフトダウン、タイヤをロック寸前で解き放す、ステアリングに集中し、マシーンの挙動、リヤーの横滑りを抑える為にカウンター・ステァを微妙に充てながらマシーンの挙動を研ぎ澄ました全身の五感で特に背中や尻から動きを感じ取りアクセルを細心の注意を払い踏み込む、第一コーナーでの激しい先陣争い!

 突然!俺のドライブするマシーンが予期せぬ衝撃を受け前後に回転、突然、舞い上がる、地上と 空が真っ逆さまに見えた瞬間! 俺は闇の中へ・・・・。

ポピー.jpg 暖かい春を思わせる日差しの中、何処までも広がっているポピーの花畑の中に大の字に寝そべってる俺がいる、子供の頃から今の俺の生きて来た生活が、まるでビデオの早送りかフラシュバックの様に脳内のスクリーンに映し出されている、人は走馬灯の様にと言う、夢は色付では見られないと伝えられているがポピーの花が赤や白、ピンクに空は何処までも青く澄んで鮮やかに見える

 すっかり忘れていた、近所のおじさんやおばさん、小学校好きだった同級生、俺の兄貴、ガキ大将、先生、職場の同僚、自動車レースの仲間達と練習中に亡くなった友人と家族、外人、行き付けの喫茶店の叔父さん、女店員、焼鳥屋のおやじ、レースクイン、コンパニオン、行き付けの食堂の叔母さん、レストラン経営の陽気な外人とその妻、居酒屋の女将、以前別れた妻の汚れを知らない天使の様な笑顔、和服の女性、そして入院中の男の子、
なぜか分らないが電車の中で向かい席に座った戦慄を覚えるほど恐い顔のおじさん、だが何故か彼の目に吸い込まれ話し掛けたくなる衝動に襲われるが俺の頭の片隅で止めろ止めろと囁く、かろうじて流れ去る景色に目をやるが辺りは真っ暗闇に・・

Formura-RYy.jpg 突然映像がスローモーションに変わる、何故か入籍したばかりの妻、ヨシ子が俺の頭をかばうように抱きとめ柔らかい胸の暖かさに安らぎを感じていたが、突然嵐の渦に巻き込まれ、ヨシ子の意思に反した様に苦悩と悲しげに徐々に離れ漆黒の闇の中に消えかけて行く、如何したのだ!一体何が起こっているのだ!俺は懸命にもがき助け抵抗を試みるが、いつの間にか俺の腕の中で今にも壊れてしまいそうで、どの様に抱いたら良いのかそれすら判らぬまま、不安定に膝の上に抱かれている女の赤ちゃんは?何んなんだ?ただ声も発せず懸命に俺を見詰めている、此の小さい物体に阻まれ、何故か体を動かす事も、声すら出ない、ましてや手を離せば、何処までも続く深い々暗闇に、その子が飲み込まれてしまう、ヨシ子に手を差し出すことも出来ない、俺は引き込まれる様な底なしに広がる漆黒の暗闇に漂いながら徐々に消え行く悲しげなヨシ子を、赤ちゃんを膝に抱いたまま、ただもどかしげ見守り、声にならない声をあげる”何故なんだ、ヨシ子!俺を確り捕まえて放さないでくれ!もっと確り・・”、必死の抵抗を試みるが、ウウッどうしたんだ助ける事も出来ない、俺の心と頭は張り裂けんばかりだ、いったい何が起きているのだ・・クー!?..訳が解らない!恐怖の潜在意識なのか?、一体今のはなんだんだ・・!

上高地 河童橋.jpg 混沌とする中、目まぐるしく場面は突然変って?、今はトレッキングブームで大分様変りしたが、高校生の頃は余り訪れる人も無かった、友人と、上高地のカッパ橋を渡り大正池や冷たさで一分も手を差し入れていられない雪解けの清流、梓川上流の明神池付近の山小屋でキャンプ生活、澄みきった群青色の深い空、爽やかで少し冷たい透明感を覚える、頭がズキンと痛くなる様な清涼感とマイナスイオンに満ち溢れた空気、思わず深々と深呼吸してしまう、其処からの朝日に浮かぶ山々の山頂付近の残雪が銀色の輝き、時々突風に舞いきらめく粉雪のスターダスト、全てが新鮮で美しく素晴しく感動した

 焼岳では未だに上がる噴煙、硫黄の臭いに咽、槍ヶ岳、穂高岳では照り返す雪渓を友と二人スノー・スパイクを付け黙々と上がり山小屋で一泊、翌朝、岩場を少し恐く感じたが踏み外さない様に岩にしがみつき、時にはピトン(ハーケン)に足場を委ね、鎖につかまりロープを頼りに慎重に慎重にやっと登り着き友と二人喜び合い、頂上で見る雲海からの御来光、余りの素晴しさに息を呑み言葉を失う!、疲れも忘れ、全ての雑念が洗われ、大袈裟では無く、その雄大に広がる光景に宇宙と魂の融合すら感じ心が揺さぶられるほどの感動を覚えた、良質な羽毛の様な雲の上を歩き寝転び遊び回れる様な感覚に陥る、神秘的な宇宙との関わりを感じ始めたのはその頃だろう、中学三年生の時、反対する母を友と説得し八ヶ岳連山を縦走した記憶が逆行し蘇る、強烈に印象に残っていたのだろう、鮮明に浮かぶ

お神渡り諏訪湖1.jpg 眼下には武田信玄の息子勝頼の危急を知らせるため、戦略結婚を強いられた八重垣姫が勝頼の戦い用の兜を脇に抱え、凍てつく氷に覆われた諏訪湖に入水自殺した、戦国の悲劇そんな事を思い浮かべたのは多分兜をレース用ヘルメットに見立てたからだろう

 やがて青く澄んだ水を湛える諏訪の湖が見え初め、突然体全体に震えが走る寒気を覚える、如何したのだ!身体が凍りつきそうだ、今では滅多に見られないが真冬湖一面に分厚い氷が張り不気味な音と共に膨張して割れ目に沿い盛り上がる、その高さは50cm~70cmはある、其れはちょうど上諏訪神社(大社)から(下社)下諏訪の神社に架けて割れ目が盛り上がる、それは上社の男神が下社の女神に会う為に歩き渡った跡だと語り継がれ、御神渡り(おみわたり)の神話が有る、今度は体がやけに暑い汗が滲み出てくる、そしてこの湖畔には10m位吹き上げる間欠温泉がありその周りは冬でも暑いくらいだ、七年に一度の御柱祭りがある、山出しの大木が人々を跳飛ばし崖を下る、御神体は自然が神、諏訪神社の奥に広がる山々そのものである、激しく目まぐるしく光景が移り変わる

蓼科山.jpg 諏訪の町を右手に駆け上り、霧ヶ峰高原の景色に目を奪われながら、ビーナスライン添いに白樺湖を通り過ぎると、蓼科湖が朝靄の中に現われる、目の前には少し丸みをおびた諏訪富士と呼ばれる蓼科山が迫って見えるか信州の蓼科高原、天候は変り、初夏の日差しの様に、暖かく、ぽかぽか陽気、やけに喉が渇く、辺りを見回すと、日差しの中に小川が見える、漣が太陽に照らされキラキラ光って眩しいほど美しい、足首ほどの水嵩に小石が敷き詰められている川底が見える、裸足で水と戯れ、その冷たさに驚いた覚えがある、何処かで見た光景だ、確か小学生の頃、夏休みキャンプで遊んだ場所だ、時空(space-time)を飛び越え、何故ここに居るのかは解らないが、山中から雪解けの湧き水、澄んで冷たく美味しそうだ、きっとこの体の火照りと渇きを癒してくれるだろう、早く喉を潤し渇きを止めよう、その美味しい湧き水を飲みに、起き上がろうと..

 その時、何処ともなく”リュウ!リュウ!起きて、ねぇ起きて!” 母の呼ぶ声が幾度となく聞こえたような気がして目覚めた。 ”アゥゥー..なんだ夢か!遅刻だ!早くサーキットに行かなければ”、だが肩と腰の辺りに痛みが走り頭は割れる様に痛い..

 一体如何したと言うのだ?....何時もの俺の部屋ではない!レース仲間がなぜいる?母は何処に?..そうか!母だったら、リュウとは呼ばず、健司と呼ぶはず、何故、母と思ったのか?不思議だ!
 混乱する頭も納まり、..俺は、レース・スタート直後第一コーナーへ全車なだれ込むなか、ライバル車を頭一つ押さえ突入、ブレーキングと同時に減速、突然、俺のレース・マシーンに思わぬ何かの力が加り車体は前後に回転、何かに背中を吊り上げられた様に空中に舞い上がり、逆さまに地面に叩き付けられて後頭部を強く打ち、意識を失ったまま病院に運ばれ、ベットにいる事が解っ

 頭の衝撃により異常興奮や発熱により脳内のメモリー回路(neuron-synaose)に異常電位差を起しイメージ・メモリー(image-memory)が遠く昔の忘れていた記憶を激しく呼び出したのではないか? この長い夢は俺が目覚める、ほんの数秒前のわずかの間の事と思われる、其の上、体温調整も狂っていたのかもしれない、余談だが、脳内にはもう一つ論理メモリーがある(logic-memory)、その全てを空中から、眺めている別の俺がいる、それを人は幽体離脱と云うが、全て頭の中で起こっている事と思う、あの光景は幼い頃、母に包まれていた頃の憬れの慕情なのか?、だが不思議だ!このまま死を迎えたら俺の世界は消えてしまうのか?何が起きようと、暗黒の無の世界なのか?それとも、あの赤ちゃんに俺の魂が移り、この宇宙と地球の変化、人の営みを映し出すと云うのか?ありえる訳が無い希望的観測に過ぎない。

北原 監督気が付いた.jpg 「おう!..気づいたか、心配かけやがって!」チーム監督(北原)の顔が眼の前に迫る、こんなに優しい監督の顔は見たことがない、しかも俺を覗み込む目には微かに潤んで見える、監督は以前同チームでレースに出場した事もあるが現在我がチームのオーナーで監督である、アラ・フォー四十代に入ったばかり、顎から口に繋がる髭と眼鏡が似合う渋めで論理派タイプである

消え行くヨシ子.jpg ..夢の中で悲しい顔をし消えて行く、入籍したばかりの妻・佳子(ヨシ子)の姿を思い出し、再び起き上がろうと試みるが肩と腰の辺りに痛みが走る、慌て辺りを目だけで探る、俺の胸元で心配そうに見詰めるヨシ子を確認、俺の手を確り握っている、その手を握り確認の合図を送る、ヨシ子の優しく温かく軟らかい手で握り返して来て安堵した、そしてあの俺を呼ぶ声がヨシ子で有った事で母と間違えた事が納得できた、多分此処は、モテギ・サーキッドの近くの病院のベッド上だ

 その後、自宅近く横浜の妻の勤務する病院に移り翌日、主だった検査を受ける、結果良好、ヘルメットや肩首ホルダー(nack-holdar)ロールバー(roll-bar)、6点式シートベルト、強化アルミのモノコックのおかげ脳や骨にも異常も診れず熱も下がり、奇跡的幸いで打撲だけの負傷、もしステアリング(steering-wheel)から手を離していたのなら、かなりのダメージが有ったと思われる、頭をかなり打ったが、直ぐに退院出来た、

 数日後、痛みも治まり体も回復し、錦糸町駅より2,3分のビル五階の一郭にある、俺が所属する、ジャパン・カーレーシング・アカデミー事務所を、妻ヨシ子と訪ねた、チーム監督の北原さんやメカニックのクルー達と挨拶を交わし、あの事故の話になり、レースでは良くある、後続車の前輪タイヤと俺の車の後輪タイヤの追突でテールを乗り上げたまま前後に車体が回転、レーシングカーは前進する為に造られ後ろ向きでは弱いもので車体を浮き上がらない様に押さえる為のウイングが逆効果、飛行機と同じ原理、揚力で舞上がってしまった、幸いレースコースから外れ他車への衝突も免れ砂地に逆さまに叩きつけられる様に落ちたとの事でした、砂地と燃料に引火せず火災にならずに済んだ事、本当に運が良かったと聞かされた、

 今でも鮮明に覚えている、目覚める寸前に体験した夢の話を、流石に得体の知れない赤ちゃんとヨシ子が消えていった処は省き説明したところ、監督が「その川に入らなくて良かったな、それが三途の川だったんだ!、お母さんが助けてくれたんだよ、お母さんに呼び返されたのだよ、もし呼ぶ声が無かったら..見知らぬ恐い顔のおじさんと話をしていたら、きっと川を渡り、戻れなかったよ..」 それは死を意味し、なんとなく俺も皆も恐くなってしまった、 監督、曰く「お母さんは偉大だ!リュウ、お前も皆も、母に感謝しなければ駄目だぞ!」皆、お母さんには、頭が上がらない様だ(少なからず、こんなにお金にも成らない夢を持たせてむらって迷惑掛けているから)それぞれの胸の内に母との思い出に心を馳せ、慌て照れた顔が物語っている、 監督「それに、医師とは云へ、無闇に動かす事無く、怪我が無いか冷静にチェックして、懸命にリュウを呼んでいたよ、ヨシ子さんの気転の有る対処が有ったからだよ、本当にリュウは幸運児だよな」。

 メカニックの孝ちゃんが「リュウちゃんは西遊記の石猿みたいに石頭だよね!」 「俺は孫悟空の様なあんなに延びる如意棒は持っていないよ」、「リュウちゃんは、相変わらず下半身の事ばかり、頭あんなに打ったのに、少しも頭良くなっていないよね、益々下品だよね!」 皆笑って良いものか迷って、笑いを堪えている、後ほど紹介するが、孝ちゃん、こと鈴木孝三、メカニックで感性も素晴しく高い技術の持ち主であるが、俺も女と見間違うほど綺麗だが性同一性障害者である、
孝ちゃんラブ1.jpg 「俺は肉食系だよ、幸ちゃんの様に、米や麦のジュース(酒、ビール)ばはり飲んでいる草食系ではないよ、彼女の一人や二人位作れよ」 少し言い過ぎたかな 「だって私、リュウちゃんの事、大好きだもん!」 「ワァーォ!俺まだそちらの方は駄目だよ、カンベンしてよ!」 ヨシ子冗談顔で「あ~ら!孝ちゃん、私はどうなるのかしら?」 孝ちゃん「う~ん!..どうしよう、私の気持ちは変えられないわよ、悲しいよね!、も~ぅ..リュウに聞いてよね!」 皆大笑い、俺は内心、フゥー、孝ちゃんが、男?であって良かった
 

 俺達は今年初めてビックレースに参加、資金もままならぬ弱小チーム、予備のマシーン(レース用車)も無い、今後のレース予定の不安が過ったがレーシングカーや予定の事には一再触れず、監督はじめ皆これほど心配していてくれた事、心に沁みるほど嬉しく感謝の思で一杯だった。

  《商談》 
ラウンドマーク.jpg 話は、今回のレースから4,5ヶ月ほど前にさかのぼる、 横浜みなと未来、地上69階の展望ラウンジフロアーを持つラウンドマークタワー内の35階事務所にて、我がレーシングチーム監督兼オーナーの指示に依り、予てから話しの有った、メインスポンサーと商談に一人で出向いた、以前のドライバーが家庭の事情(父の事業ホテル旅館等を引き継ぐ事に)で降板し、年間レース後半、俺がドライブする事になった件に対しての従属契約や契約金の話し合いである、チームとして予め話はついていたが、予想していたとうり、不況のため、以前の契約どうり、それ程、期待した金額は示されなかったが今後ともお付き合いさせて頂ける事になり、先ず々ほっとした

 ラウンドマークタワー35階の事務所から高速エレベーターで1階出入り口へ、フロアーは、OL、ビジネスマン、イベント会場や観光、アウトレットのお店が並び、遊園地、公園、半月形のコンチネンタルホテル等あり、横浜のファションの地である老舗が並ぶ元町、中華街が近いため、子供から若者、ビジネスマン、お年寄りまで、目的の違う人々が何時でも大勢入り混じり行き交っているが、不思議と違和感なく馴染んでいる

 俺は入り口近くの喫茶店へ、左側ショーウインドーにスイーツ類が美味しそうに沢山飾られている、中に入ると着飾った女性達のグループ、オフィスレディー、ビジネスマン、観光の人々で賑わっているが、以外に静かである、ウェートレスに空きテーブルに案内され、ホットコーヒーを注文した

 とにかくレースを続ける為の資金を得るため、スポンサーの獲得に悩んでいた、上位チームのいくつかは、外人ドライバーを雇い、メーカー(車の会社)から、直接援助が受けられる名門、俺達、チームはビックレース出場は今年が初めて、立ち上げたばかりの弱小チーム、資金面でも大変で、ドライバー兼、営業マン、カーレースのチームを運営する事は並みの金額では出来ない、これから各社に交渉に出かけなければならない、俺のカーレース経歴や俺達のチームが記載されている車のスポーツ誌や成績表など集め、昨年此のレースの観客動員数等、宣伝効果について..などなど、冷めてしまったコーヒーを飲みながら、何処の会社にお願いに行くか、取り留め無く、考えを巡らせていた。

ヨシ子出会い.jpg 「龍崎さんですよね」 突然、素晴らしい魅力ある声で、顔もスタイルも抜群、白のスーツにパンツルックでなんともエレガント、如何見ても年上で気品ある女性が声をかけて来た、突然の事で、ただ呆然と見つめるだけだった、何か返事をしなければ、当惑している俺を察したのか 「あのー私、以前、奥様の担当医でした鶴見ですが」
 「ああ!思い出した横浜X大の、何時も白衣しか見ていなかったもので」 余りにも突然で長い事会ってはいない上、私服、こんなに魅力的な人とは..「其のせつは大変お世話になりました」 鶴見先生微笑みを湛えた瞳で見詰め「同席しても構いませんか?誰かいらしゃるのでは?」 「いいえ、ちょうど用件が済んだ処で、休んでいたので、どうぞ」 「私、空きテーブルを待っていて、貴方が目に止ったの、丁度お話したい事も有り、少構いません?」 「あっ!どうぞ」

リュウ先生.jpg 真向かいの椅子に優雅に座った、柔らかな、瞳で俺を見つめながら 「何をお飲みになっていらしゃるのですか?」 「俺、いや私はコーヒーですが!」 スーと右手を優雅に上げウエイターを呼ぶ「私にミルクティーとこちらにコーヒーの追加お願いします、..よろしいですか?」と微笑で見つめた、なんと、美しく魅力的、俺の心を見透かされた様な気がして、おもわず目が泳いでしまった、如何したと云うのだ、俺はただ圧倒され 「あ、はい」 と返事するのが精一杯、何時もは、レースクイーンや沢山のコンパニオンを相手に冗談の連発、どうにもインテリ諷(intelligent)には弱く勝手が違う、何時もの俺は?戸惑うばかり、

 何の話だろう..かろうじて 「何か..俺、..私に?」 「貴方達の事あれからずうーと気になっていたのよ、と云うよりも、貴方の事かな!」 「俺、いや私達1年半位前に」

 優しい微笑みを浮かべ「離婚の事知っています、奥様・・いえ美奈子さんから全て聞いていますわ、それから気を使わず”俺”で良いですよ、 心不全と狭心症で奥様が救急で入院なさって、私が担当になり、初めて貴方にお会いになったときに、なぜか引き込まれてしまいそうな貴方のキラキラ澄んだ激しく生き生きしている目と、純粋で直向な心に触れこんなにも奥様を愛している人がいる事に感激したのよ、あの時の貴方は自分の全てを失っても、奥様を助けてあげたい、思いが痛いほど伝わって来て、其れで印象深くある意味、恐いくらいに感じたのよ」

 「あぁーそうだったんですか」 いっきに、説明している鶴見先生に、俺も少し冷静さを取り戻し、不謹慎と思ったのですが説明とは関係ない事を頭の半分で考えると云うより感じていました ”..どうしてだろう、今まで沢山素敵で可愛い人と出会ったのに、どこか違う、これが大人の女性の貴賓と魅力なのか..顔や体が綺麗なのは言うまでも無く暖かく繊細な心の動き、生活から養った知性や情熱、此れを本当のエレガント(elegant)と言える人だ..今までに無い強烈な魅力に引き付けられていた” あの頃は白衣の先生を綺麗な人だと思っていたが、そんな意味で見る余裕など全く無かった

 俺は、妻の入院中の事を思い浮かべ、当時の気持ちを解かりやすく先生に説明した「今までの、俺の生活の全てを捨て、自動車レースで成功する事を目標にして生きてきたのに、妻の病気の事で、辞め無ければならず、他の生き方もしらず、俺は奈落の底でもがき、本当に苦しんでいた!、何としても妻の病気を治し、レースに復帰したかったから、必死だったんです!」 先生は頷きながら「だから!だったのね、あの恐いくらいな目、それで貴方のこと気になって..聞いているの!」

 この人と、もっと話したい、こんな気持が生まれた事は初めてだった、 とっさに、思いついた言葉が 自分でも、なんと、浅はかと思いつつ 「あ!はい、聞いています、..先生、お腹空いていませんか? 何処かで、ゆっくり話が聞きたいと思い、俺、何時も一人で寂しい食事で、夕食御一緒できますか?」何時もは言葉にした事が無いが、以外にもスムーズに一気に出てしまった日本丸.jpg

 考える様に可愛い唇辺りを指先で押さえ「そうーね..?云われれば、その方が良いかも、..私も、何処か?」 ヨシやった!俺は一気に「俺の知っている所で良いですか?ここから1時間位かかりますが、逗子海岸にイタリアンの美味しい処知っていますが?」 先生は指先を唇から頬に移し「そうね..私も久しぶりにウインドショピングに夢中で云われれば、お腹空いたわ、そこに連れて行って下さる?」 まさか、OKが出るとは!  後で聞いた話ですが、普段、絶対有り得ない事どうして、簡単に返事をしてしまったか、今でも解らないと、多分同じ様に女性が一人で外で食事するのが寂しかった事と貴方の気迫を感じたからと思うわ..だったそうです

 喫茶店を後にして、帆船日本丸を左手に駐車場に向かう、俺達レーシング・クルー達が夏、時々利用しているイタリア人がオーナーの逗子のお店に携帯で予約を入れた 「グラチェ、リュウ、2人なんて珍しいよ、待って居るよ」


  《逗子海岸》

 BMW5.jpg先生、こんなトラックの様な車初めてでしょう?」 BMW X5 xDrive30i silver  先生はにっこりして「私だって知っていますよ、BMWの4WDとか多目的スポーツ・ワゴンとか云うんでしょう」 女性のわりには良く車の事知っているな 「ワゴンと云うよりメチャメチャ汚れていますからトラック見たいな物で、先生、俺はこの車見たいに多目的で便利ですよ、どうぞ何時でも御利用下さい」 ようやく、何時もの俺に戻ってきた様だ 

 微笑を浮かべた顔で、俺の目を覗き込むように「そうね、此れから一杯お願いしようかな?..冗談ですよ!、..何故か?貴方と同じ匂いを感じるのよ..弟の様な!私に弟はいないんですけどね」 

 「へー!、俺は先生の様に爽やかな鈴蘭の様な素晴らしい香りはないですよ、汗と油の匂いです、それと時々オナラもね」 益々目を丸くして「ち!違います!、その匂いではなく」 「解っています、冗談ですよ、人としての感覚、物の考え方がでしょう、でも先生とは..違うと思うな」 先生は悪戯坊主でも叱るように「モー、貴方って人は!..いいえ、奥様が入院中五ヵ月の間、毎日貴方を視て話をしたのよ、少しは貴方を理解していると思うわ.... この香水、普段は付けられませんが、これは私の好きなゲランの夜間飛行と云うの、どう?」 「とても素晴らしい爽やかな香りですが..何かむらむら、するような」 「バカね!」 その見つめた目は、何か母に似た優しさに包まれ、私に安堵と安らぎを与えた。              
 
かもめ.jpg みなと未来から本牧に出て首都高速、横浜横須賀線で朝比奈インターで降り鎌倉霊園の曲がりくねった山道を抜け、鎌倉鶴岡八幡宮をへて由比ガ浜に出、右手に湘南の海辺を眺めながら逗子へ、心地良い海風と穏やかに揺れる波がキラキラと光を乱反射し、何処までも広がる波間の先に穂が閃く、
何時もなら遠く感じる道のりだが、とりとめのないジョークなど話している間に、直ぐに着いてしまった様に感じられた、
少し予約時間より早く着いたので逗子の海岸に出ることにした、日差しも柔らかく爽やかな風が吹いて、ウインドサーフィンをしている人達がチラホラ見える、
海岸を歩きながら、妻との経緯を話し始めた..「俺たちが、結婚して..」

 俺の話を遮るように「奥様から、聞いています・・あっぁ!、もう奥さんでは無いですね、とにかく、離婚の件と静養を兼ね軽井沢に移る事で、あちらの病院に診断書を添えて上げました、....この様な話、してよいのか?..でも事実を話した方が、誤解が無く良いと思いますので、お聞きするのですが」 暫く考え込む様な沈黙があり、そのまま先生は話を続けた「貴方方は一度も性行為(sexual intercourse-less)が無かったのですね、」顔色一つ変えず無論、何の動揺も無く、冷静な普段の会話まるで医者の講義用の話し方だ、もっとも医師である事は間違いないのですが、余りにもサラリと云ってくれ本音はホッとした、それに俺の食事の誘いに、応じたのは、俺が一人身だと思ったからに相異ない

逗子海岸.jpg 「それとですね、以前、奥様が五ヶ月余り入院中、貴方は、一日も欠かさず夕方から翌朝まで奥様の横の借りベットで泊っている事も知っていました、そんな貴方の暖かさと優しさ、それとあの時の貴男は..何かの目的の為に悲壮的な激しさ、さえ感じました、それ程、愛が有ったのに何故? 奥様が心臓病だったからですか?それとも貴方ED障害?」 「....!?」 「..此れでは解らないわね、云い直すわね..impotence?、失礼と思いましたが、もしかして、何か精神的障害が有るのではと思い」 俺は改めて先生の顔を覗く様に見直したが、何の動揺も無く、冷静な顔のまま俺に問いかけている、俺は内心驚きは有ったが、そのぶれない目に医師として純粋に知りたいと思い、応えなければと  

 「いいえ!ちゃんと人一倍、男ですよ!」 ..まったく!こんなに綺麗で可愛い顔して上品な先生が、会って直ぐだと云うのに、意外な言葉に当惑したが....なんて事云わすのだよ!....しかし、不思議なもので咄嗟に出た、言葉は、人並みで無く、人一倍だった..一体何を強調しているのか、長い期間の禁欲生活がそう云はせたのか?自分の心の中で笑えて来た 俺は続けて「だけど、そんな俺でさえ、心が洗われてしまう、彼女は(以前の奥さん)そうした人なんです!」

 それには応えず、俺の事に触れてきた「先ほど車の中で、香水にむらむらとおっしゃいましたのと確かカーレーサーでしたね、それで正常だと思いましたが、医師としてはっきり、させて置かなければいけないから、此れからの貴方の話に間違った、見解をしない様にね」 ..医者ってそんな事聞くの..患者の扱いで麻痺しているのか?それとも本当に必要な事かも?このとき俺は感じた職業的質問、やはり先生だなと.. 「先生!あの時レースを辞めてしまって、又今度、再トライしようと思っていますが、レーサーだと何故?」 「そうね..一概に言えないのですが、男性的で攻撃的でなければ、勝てないでしょう?..アンドロゲン(androgen)とエストステロン(testosterone)というホルモン(hormone)、今の男性は少なくなって、いるようです、女性にもエストロゲンとプロゲステロンは有り重要ですが一生に作られる量はスプーン一杯位だそうです、詳しい事は、ともかく、..それから?」

 俺は経緯を話し続けた「それで、..彼女の病気もあったのですが、俺の中で勝手にイメージを作ってしまい、こんなに汚れを知らない素直で優しい心の持ち主を、と思うのは俺だけでは無いと思います、彼女に接した人なら誰しも思う事でしょう、何所か別の惑星からの天使が場違いな所に降りてしまったのでは、なぜ俺なんだ!俺の様に汚れた手で穢してしまってはいけない、今までの肉欲を捨て、此れが俺を変える試練だ、何がそうさせたか解らないが?、俺が守らなければ、と勝手に作り上げてしまって、

逗子海岸1.jpg 其れと病気を治して頂きたかったのは、おれ自身の全てを賭けた夢、カーレースを続けたい為でも有ったから、俺の出場するカーレースかなりの集中力が必要で其のたび妻を気使っていられない、多少のアクシデント等のショックに堪えられる体に戻って欲しく、況してや子供を作る事など、以ての外、耐えられる体ではなくどうにもならなくなってしまった

 こんな事話しても誰も奥さんが病気だから当たり前でしょうと言われてしまうし..、何所にいても、救急車のサイレンを聞くたびにドキッとして、あわてて確認の電話をしたり、そんな状況で、カーレースも出来なくなり、何時も不安で、其れが長期に続くと看護疲れも重なり、心と肉体がばらばらになり、当り前ではすまされなく、疲れ果ててしまい駄目なもので、入院していた時のほうが、本音、安心し、本当にほっとしました..其ればかりか、このまま永遠に病院に預けられたら、妻の幸せも考えられなくなり、そんなおぞましい恐ろしい事まで考える様になり!..俺はただ々、彼女を守りたかった!それだけで良かったはずが、それが足枷になり..そんな事を少しでも考える、俺に嫌悪感を持ちました」 先生は黙って頷いていた 「こんな話つまらないでしょう?」 「いいえ!お伺いしたいわ、どうぞ続けて下さい」

 なおも俺は話を続け..「先生だって知っているでしょう、彼女がどんなにピュア(純真で汚れのない)で人を非難したり傷つけたりする事が出来ない人だと! もしこの世に神がいるのならなんで俺なんだ!脾肉な事するのかと思いました..かつての俺を知る人は、プラトニックラブで結婚!そんなの、うそだ!何故結婚する必要が有るの?と、信じてむらえず、子供のママゴトじゃぁ無いんだよと失笑され!その上、逆玉を狙ったんだろうと、ましてやレースなど遊びであって職業では無いと、理解してむらえませんでした、だからこそ、なお更貫き通し汚す事が出来なかった、彼女が先生に相談していたなんって!、..心に閊えていた事が、やっと一人でも事実だと知って頂き、俺が間違っていたのかも知れませんが、そんな愛し方もある事を..何か救われた気持ちです!」

 先生は暫く考えていたが、力強く「確かにその通りな、心優しく汚れの無い人と思いますが、それは違います、男の勝手な妄想です!..どんな女性も人として愛と安らぎを感じたいのですよ、それと何故、信頼できる誰かに相談しなかったのですか?」 余りにもハッキリと否定され  

解っていない.jpg つい俺は、声が荒くなり 「理屈じゃないよ!如何してか俺にもわからないよ!」 「ごめんなさい」 「上手く説明できないが先生は男の純真さが解っていない!、現に妻に会うまでの俺がそうでした、本当に愛してしまったら、絶対に傷つける事が出来なくなるものです!、自分の欲望だけに走れるのは余り愛していないから、簡単に傷つける事が出来るのです..ただ々、守ってあげたかった、其処に陥った人でなければ俺の心など解らないよ、其れだけが、随一、俺が出来る事と思い、
..幾度となく妻と話合い、時には、妻から俺に抱きつき迫って、それでも受け入れる事が出来ず、その都度二人で何回も傷付き涙し、ジレンマとの戦いに疲れても、俺には、なんとしても自分が作り上げた汚れを知らない妹の様なイメージをひたすら守り、壊す事が出来なかった!」 先生は両手を前に出し下に向けて押さえる様に振り下げ、俺を制しながらも優しく「少し冷静になって!、落ち着いてね..落ち着いて下さい」

冷静に.jpg 「すみません、..ただ先生だけには、解って欲しくて..今だから、こんなに冷静に話せますが、どんなに苦しかった事か、俺だって男だよ!女が欲しいとどれだけ思ったか!、又、俺の為に妻がどれだけ勇気を振り絞り、羞恥心に身を震わせ、心を震わせた、行為か痛いほど解っているから、尚更痛ましく、苦しく切なく侮辱した行為か!知っていても、如何する事も..、本当に疲れ切てしまい」..

 ..如何したのだろう、今までこんな事は決して無かった、自身の心の底を、素直に開き、真剣に思いの数々の全て話せ、しかも此れほど理解されたく、訴えている、..そんな優しい目と軟らかく抱き締める様に受け止めて、なんの気取りも無く、何時でも本音で話してくれる..俺は何の拘りも無く、今までの溜りに溜まった全てを一気にブッツケ吐き出している..何ぜだろう、不思議だ?なおも俺はサーファーの人達をボンヤリ見詰め、砂浜をゆっくり歩きながら、話を続ける

ウインドサーフィン逗子.jpg 「そんなある日、妻が置手紙をして実家に帰ってしまった、貴方を自由にしたいから、貴方の夢を叶えて下さい、どんな時でも貴方は私の為に飛び返って来てくれ、どんなに疲れていても私の傍に一晩中看護していてくれていた、貴方が私を想って大事にしてくれて本当に涙がこぼれるほど嬉しかったか、そんな貴方に何も答えられない自分が辛く悲しくやりきれなく感じていました、貴方が思うほど私の心は美しくありません、これからは貴方は誰にも邪魔されずに好きなカ-レ-スに夢を駆けて下さい

 ..それと貴方は野菜あまり食べないから、料理が嫌でしたらコンビニエンス・ストアーに一食分の野菜サラダ有ります、必ず食べる様に、アンダーウエアーは何処にあるとか、とまあそんな事が書き記してありました」  

リュウ&ミーコ思い出1.jpg その時の事、先生には、話せなかったのですが、部屋は何一つ普段と変わらなかったのに静寂の中、何か強烈に冷たい風が吹いているような、狭い空間がやけに広く、妻の暖かさを今更ながら感じ手紙を持ったまま、崩れ落ちしばらくそのまま床にしゃがみこんで、北国の真冬の荒野の中に取り残されたように動くことが出来ませんでした、あれだけ心配をかけ疲れ切っていたのに..、お互い憎んで別れたのなら、こんな寂しさは、起きなかっただろう、何故か妻の楽しそうな笑顔だけが思い出され、今更ながら悲しさと虚無感を強烈に感じていました、

 「それから暫らくして彼女の母親から、手紙と離婚届けの書類が送られてきまして、どうか何もしないで下さい、貴方の声や手紙を見るととても悲しそうにしています、本当に貴方が娘を大事に愛して下さった事、良く解っています、以前から貴方に負担が掛かりますからと申し上げて来ました、今まで本当に辛い思いを掛けましたね、本当に有難う御座いました。美奈子もやっと決断出来た様です、娘は油絵が好きなので、静養方々軽井沢の別荘に行かせます、何時でも貴方が決断出来ましたら、その書類に印鑑を押して定出して下さい、と記してありました、

 何処か俺の心の奥で、そんな日が来る事を望んでいたのかも..ただ俺の考えを曲げたくなかった、意地に成っていたのではないか?もう続かない事を知っていながら認めたくなかった!何処かで自分対しての言い訳を探していた、本当は疲れ切っていて、そうなる事を望んでいた!..色々な思いが有りましたが、その全てを断ち切る為にもサインと印を押し送り返しました。

イギリス南部田舎.jpg それで暫らく何もかも、全てを忘れる為、又これから先の進み方を示してくれる道標を探す為に、改めて好きなカーレースの名門校(JimRussell's British Academy of Motorsport/Racing Drivers School)にイギリスへ留学、(現在はアメリカとカナダのみ)三ヶ月ほど行くことにしました....でもどんなに新たな刺激に夢中になりレースカーをドライブしょうと、環境への変化、外国人の刺激を受けようとも、(イギリス南部の田舎町サーキト以外何も無い所ですがレンガ造りの古い家並等、風情が有り凄く綺麗です)ジムラッセル.jpg私の心の灰色の影は消えないまま、帰国しました、生徒は全て外国人、アメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・ブラジルそれは国際色豊かで言葉も間々ならない中で皆同じ目的、性格も違うが、それなりに意思の疎通は出来た、中にはそのままイギリスに残り、ヨーロッパF-3に参戦する人も、其処で成績を認められF-1に進む事も可能だ、出来る事なら俺もそうしたかったが資金にとても余裕がない俺は諦めざるを得なかった。

 帰国後、二年半位で先生に偶然お会い出来たしだいで今こうしています」 少しおどけた言い方をした 「茶化さないで!それで大よそ理解出来ました、..どう考えても一方的で貴方が悪いわ!如何して結婚などしたの!」

 「如何して?、って、..そんな事、云われても、解っていても..もういいよ!..俺は青かった!て事ですか?..そんな、常識的答えは、言たくわないが、俺がこの子(美奈子)を守らなくてはと思い..」 ..ただそれだけでは言い尽くせない経過が沢山有った、..其の当時、俺の荒み切った生活の中で、偶然彼女と出会い探しているお店を一緒に探したのがきっかけ

 それから彼女から又お会いしたいと、何回も会う内に、楽しく明るくなって行く俺を感じ、逢う度に心が洗われ俺自身浄化されて行く様で嬉しく思った、だが、これ以上逢ってはいけないきっと傷つけてしまうからと、何回も断ったが、彼女の気持ちに絆され、負けてしまった..先生には出会いを話せば長くなるし、知る必要も無いと思い話す事は止めた.. 

逗子1.jpg しかし、どこかで、自分を正当化したい心が働き「それと、此れだけは言って起きたいが小学校に入り立ての子供の頃、可愛くて綺麗な女性の先生が居て、皆の憧れだった、ある時、先生がお便所に行った時、俺の友達が、あの先生はお便所になんか行かないよて、泣いて否定したんだ、どんなに彼に取って天使の様に美しく心が膨らんでいたか、だが俺は心無く、俺のお母さんも先生だが便所に行くよって云ってしまった、彼は(リュウのお母さんと違う!絶対、絶対違うんだ!)て、誰もが彼の聖域を犯す事は出来ない、何れ解る事だが、一笑出来る物では無いと思います、その時誰が説明し納得させられただろうかって? 今の俺の場合はもっと始末が悪いよ、全て解っていて、それ以上に完全に弩壷にはまってしまって、美しく、綺麗な物えの憧れと、俺の心の救いに、せめてもの償い!..何時の間に如何する事も出来なく..。」

 如何して、意味もない弁解じみた事を言ってしまったのだろう?先生に良く思われたいからか?..良くは解からないが心では母親一人で育ててくれた感謝、厳粛な生き方の母への反発、自慢の母に、無条件に愛されたい、俺に振り向いて欲しい、何がそうさせたか解らない又そんな環境への反発、そんな自分への反発と葛藤、そんな時に妻の純真な心に触れ、心洗われる思いと償い、そんな複雑な思いで、なぜこうなったか、一口に説明が付くものではない、理屈では無くこうなってしまい、適切な言葉が思いつかず、少しは理解されたのではないかと思い又予約の時間もあったので..

 まーぁ!良いか..「それに以前は完全な人間を求め、澄まし顔で、綺麗事を言って、手を汚した事の無い人が嫌いだった、その人達の心の奥の化けの皮を剥がして遣りたかったし、酒を飲んで愚痴や、したり顔で批判ばかりする人も許せなかった、でも今では、心や精神だけで人の営みが出来る事ではない、人は欲望と共に生きている事が、嫌と云うほど解りました、全て俺がいけなかった、..後悔はありません」

 先生から、もっと否定的な冷ややかな言葉を浴びせられると思ったが以外であった「貴方は悪ぶっているが、本当は純真過ぎるほど純粋な人よ、結果的には人を傷付けてしまったが、それが解っただけでも成長したのよ、大半の人のは結婚前に逃げ出していますよ、人の心には悪魔も住んで居るのよ、人にも自分にも、許す事も覚えなければね、何時かは、折れてしまいますよ」 まるで本当の姉の様な口調でした・・何故か!この人とこれからも、これで終わらず、ずうーっと関わる様な気がした

トニー店.jpg そんな話で予約時間が近ずいたのでレストランに向かった、トニー(restaurant Tony)の看板の玄関を開け奥のカウンタまで進む「ハーイ!トニー元気だった (Hi! How are you Tony?)」「リュウちゃん、待っていたよ(How doing Ryuchan!can't wait ..Oh! How charming & sexy! Miss' behind) 後ろのミス..お嬢さん、凄くチャーミングでセクシーね、イントロデゥース(introduce)ね」

 先生から「鶴見 佳子(よし子)です、今日は宜しくお願い致します」俺はこの時初めて名前を知った「今日はリュウの好きなスペァーリブをメインに私トニーにお任せコースでよろしいか?、ミス、ヨシコ」「おいおい!俺には聞かないの?」「レディーファーストね、それとリュウの好きなオニオンローフ付けるから」 「おまかせするわ、」 「じゃー今日はトニーのおごりで(is to be my treat)美味しい赤ワインで乾杯ねミス、ヨシコ飲めますか?、リュウは子供で飲めないからスパークジュース」俺にウインクを送ってきた、車で来ているとき俺が絶対にアルコールは口にしない事をしっているからだ 「はい頂くわワイン大好きですよ」

アペタイザー オニオンローフ.jpg 「このバベキューリブとアペタイザーオニオンローフ(appetizer onion  loaf オニオンリングをビルデングの様に積み重ねた様な物)は、以前、私とトニー達とで銀座のトニーと同じ名前のアメリカンフード店トニーレマのオジリナルメニューを私達が気に入り海辺のサーファー達に喜ばれるだろうとトニーがオリジナルレシピで造りあげた物です」
 「先生にはカロリーが高過ぎ、くど過ぎませんか?」 「リュウ、大丈夫だよ、別にトニースペシャル、ボンゴレ ビアンコ(あさりのパスタ)用意するよ、それとイタリアの家庭料理でトマトとレットオニオンの冷製サラダ(トマト、オニオンは半分にし又それを八切かザク切りして、ソルト少々の水を加え、乾燥バジルと生スイートバジル少しでオリーブオイルたっぷり後は冷蔵庫で少し寝かすと良いよ)とても簡単で美味しいよ..これはね、年代物のバルサミコちょと高いが美味しいよ」 と言いながらサラダにかけてくれ「ブレッド(a piece of bread is dunk in dressing)に浸して食べて」

ボンゴレ ビアンコ.jpg 先生早速フランスパンをちぎってトマトサラダのドレッシングの中に浸し「ほんとう!こうするととても、美味しいわね、..ねー、トニー、バルサミコとワインビネガーと、どの様に違うの?」 トニー「日本の酢と同じでお米と葡萄で作る違い、ワインの熟成方と熟成度の違い、ワインビネガーは主に調理に使うと思って良いよ、..バルサミコは葡萄果汁を煮詰め濃縮させた物を木の樽で(is wait for the grape-juice  to mature inethe cask)12年以上熟成良いものでは20年30年以上熟成させ樽の香りが程よく付き主に最後の仕上げの調味料に使うと思って良いのでは、安い物でも使う前に鍋で半分位煮詰めて酸味を飛ばして使ったら良いよ」 先生「そうなんですか!初めて知ったわ..リュウ知っていた?」 「詳しくは、知らない、でも、オリーブオイルとバルサミコでパンに浸して食べる事は知ってたよ」 「へー、リュウの事、見直したわ」 トニー「もう一つ教えるね、ボンゴレ・ビアンコとロッソが有るよ、ビアンコはオイルソース、ロッソは、レッド、トマトソースね」 「俺、初めて教えてむらったよ、やっはり、トニーは女に甘いね」 トニー「イタリアでは男皆、普通ですよ」

 「トニーどうしたんだよ!いつもと..」 「リュウ、嬉しいんだよ!エックス・ワイフ(ex-wife )別れた妻以来、一年半以上、初めて女性を連れてきて、しかもこんなにチャーミングでセクシーな人今度はミス、ヨシコ何時でも一人で来てね」 本当に心配し喜んでくれ、嬉しく思った、国が違っても、人には変り無く、友達は出来るものだ! 「またまた!イタリア人は女性が好きだから!奥さんに云うよ」 奥さんは日本人だ 「オオノー、奥さん恐いよ、リュウ、シークッレト、シークッレトね!..リュウ&ミス、ヨシコ、アナザーカスタム(another custom)ね、ちょっと失礼するよ」ちょうどお客さんが5,6人入ってきてトニーはそちらへ向かった 

 「龍ちゃんと呼んで良いですか?」突然先生が尋ねた 「ちゃん、なんて、龍(リュウ)で、良いですよ、皆にそう呼ばれていますから」 「リュウ..ねえ..これから、そう呼ばせてい頂くわ」 「頂くなんって!そんな者ではないですよ、それより、本当に、こんなに油ぽい、カロリーの高い物で..」 先生BBQスペアーリブ.jpg「たまには、食べてみたかったのよ、後で運動するわ」

 「先生、このBBQ・Rib バーベキュウ・リブはホークやナイフを使わず、手でガブリと行って、その方が、旨いですよ」 先生「ヨーシ!やってみますわ、何か野獣になった見たい! (小さく、ガーォ)..ウーン美味しいわ!」本当に楽しそうに 「リュウちゃんは、沢山良い友達がいるようね」ワインのせいか、立続けてしゃべりだした 「私達の医学会議が終わった後に良く高級レストランやホテルのレストランに先生達と行くのですが、少しも楽しく無くほとんど先に帰っています、こんなにリラックスして楽しく過ごした事、無かったわ」 先生はトニーのワインのすすめも有って少し酔って、来た様だ!

 「リュウ、先ほどの話なんだけど、女性だって、たまには自分を忘れ、全てを忘れ、心を休めたい物なのよ!人は中々聖人君子にはなれない者よ、皆、寂しく弱いのよ、全ての束縛から解放されたい時もあるの、現にリュウ、貴方がそうだったでしょ..」 「先生!先生!..酔っているんですか? 先生も何か有ったのですか?」 「もちろんよ!私を幾つだと思っているの」 「失礼、年を聞いても良いですか?」 「かまわないわ、もう三十三よ!..運転免許証見てよ」..運転免許証をハンドバックから出して見せた..俺より五歳上なんだ、先生は俺の年知っているはずだ..「リュウは二十八歳でしょう、私、女として、もうオバサンよ」 「判りました、免許証、落とすといけないから、しまって下さい、..先生は、そんな事有りませんよ、全然若いです」..一つ位上かな?..本当に若いし綺麗で魅力のある人だなとおもった..「ありがとう、リュウに云われれば嬉しいわ」、

 「リュウに初めてお会いした時、精悍で、瞳が澄んでいてキラキラ!輝いて、その瞳で見つめられ、体中の細胞が目覚め”ゾック”としたわ!」.. 「今もよ、少し肉付き良くなったみたいですが、其の目、その顔、その純粋な気持ちで私に問いかけるところ少しも変っていないわ、そのうえ人を惑わせる、その仕種、優しさが感じられ、人の心を引き付け、もっと魅力が加わり、いけない人ね!」

 ..本当に酔ってしまったのかな?..先生の別な姿を見られた様で、人間的で色気さえ感じ、何か先生に近ずけ身近に感じた.. 「またまた!お世事が上手いですね、酔っているじゃないですか?..此処の所USネイビー基地内のアメリカのジャンク・フード、(ファストフードの事)とにかく、カロリーが有る物ばかり食べていたから、少し太り気味、トレーニングしなければ」

 「お世事なんかじゃないわよ、その澄んだ瞳で見詰られると、其の目の中にに引き込まれてしまいそう、本当ですよ!..だめだめ!随分話したわ、久しぶりに、こんな時を過す事が出来、本当に楽しかったわ、少し酔ったみたい、お腹も満腹になったし、すごく楽しかった、そろそろ帰りましょうか?」 ..俺も久しぶりに楽しく、いつの間に大分時間も過ぎていた

 ..「そうですね」..大声で..「トニー!」 マスターを呼び「トニー、今日はありがとう、お腹フルね!美味しかったよ、奥さんに宜しくね!」  「今日は店に来れなかったがマイワイフも、リュウの事、心配していたね、あれから(離婚)元気ないってね、早く前の様なリュウちゃん戻ったらいいねって、今日リュウの明るい顔、見れて本当に嬉しいよ、ミス、ヨシコ、リュウの事頼んだよ、何時でも来てね、待っているよ」両手を広げ先生を軽くハグ.. 「今日は本当に楽しかったです、料理もとても美味しく、ついお腹一杯頂きました、此方こそ有難う、又伺わせて頂きますわ」..

 帰りの車の中で「本当に楽しかったわ、ついワイン飲み過ぎ、少し酔ったみたい、リュウ、本当に良い友達たくさんいるのね、良かった」 そんな話をしなが、横浜X大病院の付近とだけ云って無防備にも、酔いのせいか、すやすや、寝てしまった、仕事が忙しくきついのかな?この時とても、可愛い人と感じた、「病院近くですよ」 と揺り起こし 「家は何処ですか?」 「う~ん、あら寝てしまったようね、やはり、プロの運転ね、安心して..もう少し先のシーサイドライン柴口駅の近くの柴町のマンションよ私の実家は金沢区の能見台で個人病院を開いているの、病院まで交通が不便でしょう」 そんな話をする内に先生のマンションに着いてしまった 

 先生「今日は、とても楽しかったわ、コーヒーでも入れるわよ、寄っていく?」 「いいえ、どう致しまして、今日は夜遅いので帰ります、じゃあ、おやすみ!」 「運転気を付けてね、..プロに可笑しいわね、其れじゃー、お休みなさい」 まーぁ 社交辞令と思いとあっさり帰ったが、何か心残りでたまりませんでした                                                                                                                                       

 それから一週過ぎ先生はもう俺の事などすっかり忘れている、事と思っていた、金曜日、先生から連絡が入り、この前は楽しかった事、お礼に今度は先生が招待しますと言はれ、本当は嬉しかったのですが、一応断りました、是非との事、じゃぁー明日土曜日に、といって受けましたが本音は、あれから一時も先生の事が頭から離れず、いっそう逢いたくなって直ぐにでも逢いたくてたまりませんでした、今までカーレースに夢中で、こんな事一度もなかったのに!如何したんだ!気になって仕方ない、ああ逢いたい!

 話はレースのビジネスに戻るが、あれから思い当たるスポンサー交渉に奮闘、思案の甲斐なく、行き詰まり、このままでは絶望的だ、人に束縛される事が大嫌いだが、迷いに迷い葛藤が有ったが、レースは何としても続けたいその思いが強く、最終的に別れた奥さんのお父さんの会社が丸ビル.jpgアルミニュムのインゴット(塊)を製造している、東京駅近くの本社事務所に久々に訪ねた、後ろめたい気持ちと頼ってはならないと思いつつもレースに復帰出来るチヤンス、如何してでも逃したくはなかった、しかし、後々、俺の心に思いも因らない重圧になってしまうとわ、その時は少しも思ってもいなかった、

 受付で社長にお会い出来るか尋ね、了解を得る事が出来ホットした、社長(以前の義父)見慣れた社長室に案内された、大きな社長用デスクの前に豪華な接待用カウチがセットされている「如何した!、あれから元気にしておるかね?、この不況だ、きっと君が尋ねて来ると思った、娘から達てのお願い、力になって下さいと頼まれている、まあー掛けたまえ」と言い、後は何も私達の事にはいっさい触れず、カメラ、精密機械の会社やエンジンブロック、アルミホイールの会社に取引があり、3,4社、その場で何の特にもならないのに連絡取っ手頂き、私を紹介し訪ねる事を電話なのに頭を下げ了解を受けていました

 俺は立ったまま、電話の話に聞き入って、今更ながら、俺は心とは裏腹に娘からのお願いと聞き、訪ねた事を後悔したが此処までして頂き、もう引く事が出来なかたった、 結婚当時は良く会食に高級ホテルや料亭等に同伴したものだ、私の会社に来ないかね?とよく誘われたが、断って来た、 

 「近いうちにこことこの会社を尋ねなさい、力になって頂けると思うから、元気そうで良かった、君は人より危険な仕事、充分体には気を付けて..掛けたまえ」ソファーに向かいてを差し伸べた、俺は座る事も出来ず 「はい、有難うございます..ええと..美奈子さんは?」 「心配は無い、軽井沢で絵を描きながら、自分の作品を飾る画廊とまで行かないが、喫茶店と言った方が良いかな、お手伝いさんと静かに過ごしとるよ、余り気を使わずに良いから、たまには、私を訪ねて来なさい」席を立ちながら「食事でもどうかね」 「はい、今日は私達のチームに吉報を報告したいと思いますので、すみません」 「そうか、何時でも訪ねて来なさい」 「有難う御座います」 と言って、頭を深々と下げる事しか出来ませんでした

 たまらず涙が出そうでお礼も、そこそこ、あわてて社長室のドア閉めたので事務員が不振な顔で見つめていました、少し前まではお父さん、何も云わずとも、男と男、解っているだろうと語りかけているようでした、この人の家庭で育った妻だったのだと、新ためて思いましたが、俺の心には何か強烈に圧し掛かり、勝手な物で頼ってしまった、俺自身を許せなく胸に痞える後悔の思いが増して、ビジネスとして心から喜べなかった、

 無論、社長の会社も大分援助して頂きました、次の日にチーム監督権マネージャーの北原と紹介された会社を回り、少しずつですが、契約を取り付け、何とかチームとして運営出来そうです。

   《二度目の食事》                                                                                              待ちに待った土曜日が来た、早速、朝から先生に電話を入れ、午前中は何か急に病院へ行かなければならなく午後2時半位に先生のマンション前で待ち合わせした。 それから、1時間ほど遅れ、急いで来たのでしょう、薄っすら汗をかいて

  マンションJPG.jpg「御免なさい、急に患者の様態が変わり、処置していた物ですから、もしかして帰ってしまったかなと、思ったり心配でした..ごめんなさいね」 「大丈夫です車の中で休んでいましたから、それでもう大丈夫なのですか?」 「ええ、後は当直の医師がいますから、それより横浜山下公園前のホテル・ニュウーグランドでフランス料理と考えていたのですが、着替えもしなければ、いけないし時間もかかるから、能見台にある焼肉店でよいかしら?とても美味しい所よ」 「あ、はい、何処でも構わないです」 凄い格差だが多分俺の為を思って、時間も遅くなり、お腹も空いていると思い気楽に腹一杯食べさせたかったのかも知れない 「その方がかえって、リュウも沢山食べれるから、ちょっと、シヤワーだけ浴びたいから、部屋でコーヒーでも、飲んで待っていただける?」 セキュリティ完備の最上階、横浜、金沢八景島や海の公園の砂浜が見えるナイスビューの4LDKでリビングが広々している

 「凄く、良いところですね」 先生は直ぐにキッチンに入りコーヒーをドリップして「リュウ、コーヒー好きのようだったのでブルーマウンテンを焙煎してむらったのよ、飲んで見て」 「確かに香り豊かで、まろやか、とても美味しいよ」 「良かった、じゃ、シャワー浴びてきますから、退屈だったらテレビでも見てて」 何だよ、俺を男として見ていないのかよ、と思いながらも、何か胸はドキドキ、いったい俺は何を期待して何を考えているのだ、冷静に冷静にと自分に言い聞かせ、コーヒーカップを持ち立ち上がり窓辺からの海の景色に心落ち着かせていた、向かいは千葉の房総半島が黒く霞んだ山並に真っ白い綿飴の様な入道雲を抱え、空は動物を連想させる夏雲が所々に浮かび青々と澄んでいる、目の前は海の公園が良く整備された砂浜が広がっている、海は湾内の為か波も穏やかである 

 「お待ち同様、さ~ぁ行きましょうか?」 ジーンズにTシャツ、ずいぶんラフ、でもスタイル抜群ピッタリ決まっている「先生は何を着ても、似合いますね、スタイルも良いし、特に足はすらりと真っ直ぐ長く、お尻の形ち、良いですね」
少し怒った顔を作り「バカ!..何云ってるの、子供のくせに、さ~行くわよ」 「でも、スタイルいいし、綺麗だから、今日のシャンプーの匂いも好きですよ」 「もう!解ったわ、ありがとう、行きましょう!」 全然子ども扱い、無視されている。

能見台駅.jpg 京急能見台、此処は東京にも40,50分国道16号線を挟み両脇坂になっている、静かな高級住宅がある駅近くの焼肉店はテーブル5,6、席と畳の2席、2組のお客さんがいた、私達は奥のテーブルに座った、女将さん風のおばさんが「いらしゃい、お嬢さん、ずいぶんお見えにならず、病院のお勤め忙しいのですか?お父様も近頃見えないので、今日は何に致しますか?」 「ええ、そうなんですか、父に伝えて置きます..取り敢えず、ビール、リュウ、なににするの?遠慮なく沢山食べてね」 俺はとっさに気取って 「僕は車ですから、お茶で、メニュー見せて下さい」 はい、と云って女将は奥に、

 先生はにっこり笑顔を見せながら 「へー、僕ですか?」 「からかわないで下さい、先生に気を使ったビビンバ.jpgのに」 「ごめんね、ここは、私達家族が私の子供の頃から来ていたのよ、私の家は、この坂の上へ歩いて5分位な所で、父が看護婦と事務員一人の小さな開業医しているの、」 「凄く近いんですね、ご両親は元気なんですか?」 「ええ、元気ですよ」 女将が注文を伺いに来た 「リュウ、決まった?何でも遠慮なくね」 「じゃぁ、骨付きカルビとロース、ユッケ、生センマイ、ご飯、サンチュで又後で」 「リュウは、生肉が好きなのね、私は石焼ビビンバと..クッパは、リュウの分と二つね」 「きっと、俺は野生動物に近いかも、何かに束縛されたりする事が大嫌いだから」

ユッケ.jpg 「私ね、リュウと居ると、何故か、自分になれて、落ち着くの、あれからずーうとリュウの事、頭から離れなかったの、如何してか判らないが、気になって!気になって!仕方なかったのよ」  「俺も、本当は直ぐに逢いたくて、俺もこんな事初めて、何時もなら車の事考えたら、忘れるのに..会いたかった!」 

 「本当?嬉しいわ!..年の事考えたら、考えられないし、私、どうかしている!、食事、誘うの止めようと何回も考えたけれど、考えるほど逢いたくなるのよ!」 「年なんて関係ないよ、すごく、若く見えるし」..とは云った者の余りにも職業の違いや、地位、立場が違う!..でも其のことには触れていないが.. 「始めは、皆そう思うのよ、現実はそうは、いかないものよ、分別の有る女がって、非難されるだけよ、でも、この気持ち、どうにもならないの!」 本当に此れほど素直でストレートに自分の気持ちを伝えられた事はない、何の気負いも無く素直に清清しくさえ思う、きっと、伸び伸び素直に育ったからと思う 「どうにもならない事考えても仕方ないよ!俺の事子供扱いして!」

R & Y 焼肉1.jpg 「違うのよ、こんなに、悩んでいるのに!リュウたら、生意気の事云うからよ」 「俺、子供扱いされ、駄目なのかって、でも良かった、すごく嬉しいよ、自分の気持に正直になろうよ、悩んでも始まらないよ、これからそのつど解決して行こう、サァー目の前の問題から..美味しそうだよ食べよう」  ちょうどお肉の焼け具合が良い頃だったので、 少し笑顔になった 「そうね、お腹空いたでしょう、戴きましょう」  

 「女将にコチジャン有ったら、お願いして」 「どうして?」 「サンチュにコチジャン少し塗って、寿司くらいの大きさのご飯乗せてカルビをのせ、手巻きすしの様に食べるのが好きだから、先生もトライして」 「リュウは、食事や料理の事、色々しっているのね」 多分先生はその食べ方知っていたと思うが、笑顔で聞ていた 「あちこち、友達やレース仲間で食べ歩いたから、今わ楽しく食べようよ」 「そうね!リュウの云う通り、台無しにするところね、食べましょう、遠慮無く沢山食べてね」 深刻な話しているわりには、俺は良く食べた、女将に挨拶をして、店を後にし、

 帰りの車の中で、心にも無いことを聞いた 「先生、実家に寄らなくて良いのですか?」 「今日は止めておくわ」 「じゃあ、マンションに送ります」 「まだ、話したい事有るので、今日はそのまま帰らず部屋に寄って!」 「はい、俺もまだ帰りたくないと思っていました!」 よし!期待通りになった..、ところが何故か非常に不安に襲われてしまった、きっと先生を失いたくはないと思うからだろう

ヨシ子ブラウスねー.jpg 部屋に戻り、ジャズを聞くのが好きなんだけれど普段は映画音楽が好きで良く聴いているから、始めに流れたのが、フランス映画の男と女のフランシス・レイのテーマ曲でお馴染みのダバダバダ、ダバダバダ~でした 「古い映画探して観る事が好きで、偶々良く行くレンタルショップで見つけて、印象深く残っていて、台詞も少なく、大人の恋愛の苦悩と美しさが良く出ていたわ、リュウも何時か見てみたら」 ずいぶん、古風だな、暫らく音楽を聴いていたのですが、

リュウ横顔あのさ1.jpg 沈黙に耐えられない様に同時位に、「ねー」「あのさー」 「リュウから話して!」「俺は、いいよ、先生からどうぞ」 「リュウから..」 「じゃ、俺から、話すよ、なぜ俺なんか!、もっと先生に相応しい人がいるだろうに」 「リュウからそんな言葉が出るとわ思わなかったわ、私に相応って、誰が決めるの!、私自身が決める事でしょう」 

 「そう云われればそうだけど、俺もそう思うよ、ただ、迷ったり、後悔して欲しくないから、先生さっきもそう云ったでしょう、迷ってるって、俺だって世間のそう云った考え嫌いだけれど、それに打ち勝つ気持ちが無ければ、いずれ駄目になるよ、先生を大事にしたいから」 ..俺は如何したんだろう?今まで口にした事の無い言葉が、本当はこのまま感情に任せたいよ、必死に抑えているのに..先生を失いたく無い..不安が大きく広がる、こんな気持ちになった事、今までに無い、初めてだ!、

 俺はこの時ラウンドマークタワーで出合った時の衝撃が解かった様な気がした、顔や体の綺麗な人に沢山、出合ったが、先生の様に、内面から醸し出す、エレガントな動作、知性や情熱、繊細な心に引き込まれて行く俺が怖く、又傷つけてしまうのではないか、初めて感じた不安、姿形では無く、何処か母を思わせる、あの慈愛に満ちた眼差し、云い返れば、これ以上、進む事が凄く怖くなった、でも失いたくない!一体俺は如何したのだ!心とは全く違う言葉が!戸惑うばかり、やっとカーレースへの復帰が叶うのに、俺は何をしているのだ手足纏になるに決まっている、だが心とは裏腹にどんどん、のめり込んでしまう

 「リュウ、ごめんなさい..リュウが病院に通っていたあの頃、私、貴方みたいに健康で自由で破天荒な人に遇った事が無く、毎日会えると楽しみになって、其のうち、弟の様になっていたの、あの頃のリュウだったら、そうするだろうて判っていたの..でも感情に此のまま流されたい気持ちもあったのよ、リュウの方がよほど大人ですね、何か恥ずかしい気持ちよ、でも..ありがとう、もう少し考えるわ」 「ごめん!俺、今日は帰ります、気持ち決めたら連絡下さい、待っていますから、今日は楽しかったよ、じゃーね」 俺は先生が怒ってしまうのでは無いか、不安で有ったが、飛び出す様に部屋を出た、 

 帰りの車の中、俺はどうなってしまったのか、俺の方が感情の赴くまま、したいよ.. 男の方がもっと辛いよ、でも先生の方がもっと辛いかも、女性からの、 俺ってバカだよなー.. 俺と全く違う、知性や繊細な心の動きの出来る、先生を本気で好きになったのか?!..上手く行く訳無いよ..きっと駄目になる!恥をかかしてしまったから..出来るなら失いたくない、いや本気で失いたく無い!どうして、こんなに胸が痛むのか初めての気持ち、この俺が、一体如何したんだ、何でこんなに切ないんだ!うぅ..なんなんだ!いけないと思う心が、逆に俺を煽ってしまう

 まだ先生に話して無い事があった、結婚前、世の中、斜に構えていた時期で、母の愛情、家庭への反発で遊び回っていた、その頃は生きる事の無意味さ、口先だけで善人ぶって平気で人を裏切る人等、人間不信に落ち入り、何時も冷めきって人の裏側で見る事しか出来ない自分を虐め、自暴自棄になり、それも俺の弱さである事も知っていた、レースに興味を持ったのも、暴走族やグループに入らなかったのは人間不信の俺にとって、群れる事が大嫌いだった、その寂しさを満たすため、女に溺れ、何の愛情も無くただ自分の欲望を満たすだけの付き合いをしていた女性が、外人、人妻も含め何人もいた、でも結婚とか、愛しているとかは一度も口にした事は無い、其の頃は結婚など、考えも及ばなかった、そんな刹那的生き方しか出来なかった俺は、何処か共通点を感じレースーに魅せられ、のめり込んで行った

 男の身勝手と云うより俺の身勝手、とても人を批判する立場で無いが、欲望を満たした後の空しさと嫌悪感が増すばかり、何でこんな事に無駄な時間を費やしてしまったのか、もお顔を見るのも嫌になって避ける様になってしまっても、俺の弱さ、又、何人も同じ繰り返しをしてしまい、もっと自身が傷つき、互いに傷つけ悲しく辛い思いをさせてしまった、天罰であろう、中には俺自身のめり込み悲しい別れをした事も、そんな自分が嫌いで、美しい愛を求める自身の仮面の下に眠っている肉欲やエゴイズムなのに、身勝手の話だが、益々、男の性がと繰り返す自分に精神と体の欲望のバランスが取れないままに闇の中で俺は傷ついていった

 そんな時、天使の様な彼女(別れた妻)に合った、この子は絶対汚してはいけないと強く思い、その結果がこれだ、そんな、トラウマの様なものも有り、今度のケースも又大事な人を傷つけてしまうのではと恐くて逃げ出したのが本音 

此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編2】へ続きます是非お読み下さる事お願いまで                                                               


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編2】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

   ☆=ストーリ【前編1からの続きです、是非お読み下さい=☆  

                                                                                        《富士サーキット》 Fuji Speedway

富士.jpg 次の日から富士サーキットで俺のドライブ(運転)に合わせたレーシングマシーン(車)の調整やテストが始まった、これは富士だけではなく、各サーキット毎に行われる、特に今回は俺にとって全て初めての挑戦、念入りに行わ無ければならない、変速機のギャー比の調整交換、サスペンション、アブソーバーの調整、ダンパーの交換、アライメントの調整、トーイン、キャンパー、タイヤの減り具合温度、ダウンフォースのフロント・リアーのウイングの調整、等沢山の仕事が有る

 このクラス”FNフォーミラー日本”ではほとんどワンメイク(同じ仕様の車)と同じだ、エンジンのメーカーが違う位、これは車の開発に余りお金を掛けなくて済む事と、本当にチームの技術力とチームワーク、真にドライバーの腕が試されます、何回となくadjust & run(車の走り込みと調整)です。又このmachine(車)の特徴はオーバーテイク、システム(レブ・リミッター)「エンジンの回転数の制御や開放」)が有る事でオーバーテイク(追い越し)が楽になる、ロールバーにLEDが点灯5回まで使用出来る、もっともこのロールバーで横転した時に助かったのです。

 今年は富士・鈴鹿・ツインリンクもてぎ・オートポリス・スポーツランドSUGO、各サーキットで行うが前半3戦は先輩ドライバーがエントリーして終了している、4戦から俺に変わる久し振りに、しかも待ちに待った日本でコックピット.jpgは最高ランクのレースマシーンをドライブ出来る喜びがあり、他の雑念や邪心に惑わされている場合ではないが、何故か気になる、大事な時だとは充分理解しているにも関わらず、振り払って忘れようと思えば思うほど、先生の顔が浮かび、何時もならステアリング(ハンドル)を握ったら必ず全てを忘れドライブに集中して引き締まるのに、今まで本当にこんな事は起きなかった、レースが全てで、ジャジャ馬の様なレースマシーンに出会うたび期待と喜びに燃えあがって来た筈なのに

 幾度と無く携帯電話に手がいくが、かろうじて待つことが出来た..心此処にあらずと感じたのだろう、監督の渋い顔が益々渋くなり 「リュウなにか、悩んでいるのか?突っ込みの切れと立ち上がりが、何時もはマシーンを壊してしまうほどなのに、如何した!」 「あ!ハイ別に何もないです」俺は隠すように、元気に応えた、待ち望んだマシーン(車)ドライブ出きる事に、最高の喜びを感じて良い筈なのに?何時もと違う、俺はどうなってしまったのだ

 監督レーシングカーに手を置き「何処か気になる箇所は無いか?」 長い間のブランクも体に染み付いているのか意外に簡単に取り戻せた 俺はエンジン部分を見ながら「エンジンの立ち上がりが少し悪いし(回転トルクが最高になるのが遅い)、多分変則ギヤー比がコースにあっていないか吸排気か?ハイスピードではアンダーステアー(フロントが流れるハンドルを切っても曲がらない事)スローではオーバーステアー(ハンドルをあまり切らなくても曲がってしまう)気味です、次はもっと攻めてみます」 「そうか!井原君聞いたか、調べ直してくれ、それにリュウ何か元気が無いぞ!」 「ハイ!」俺とエンジニアの井原君が同時に返事をした、今まで余りマシーンの調整がして無い様だ、本当に乗りずらい、まだまだ調整が必要だ、この調整はレーサーにとってとても重要な事だ

 ”あぁ~先生に逢いたいな!”、今はこんな事考えてる場合ではない、もと真剣にアタックしなければ、思いを消すように、頭を何回となく横に振った、テスト& ガレージ(調整)で5日間、何時もなら、アと云う間に終わって、もっと乗りたいと思うのですが、早く先生から連絡が来ないか、やけに気になってしかたなかった、自分を如何処理して良いのか、こんな事は初めてだ。

孝ちゃんタイヤ交換.jpg チームのメカニック達がエンジンを分解しバブル・フェイスの傷や歪・ピストンリング等部品のチェク交換、組み立てと懸命に働いている、エンジニアとメカニックは、其々かなり個性の強い人達だ、一人は寡黙でコンピューターとにらめっこ、又分解した部品を丁寧に洗い一つずつ傷などを細かく調べ丁寧な仕事をする、もう一人は正反対、良く喋る男?だが女性のような体付きと顔、喋り方もそうだ、初めは、なんだ、ボーイッシュな女かよ、と思った位だが、かなりメカニックとして感が鋭く調整力が優秀である、俺も調整や組み立てを手伝い少しずつコミュニケーションも取れ、レーシングカー(車)もかなり調整が進み仕上がってきた

 「孝ちゃん!、顔にエンジンオイル付いているよ、好い女台無しだよ」 「やだ~、リュウたら、ほんとう?」慌てて作業着から鏡を取り出し眺め「何でも無いよ、リュウの意地悪」 「へー、何時も鏡持っているだ」 「リュウ、怒るわよ!、この鏡、見ずらいマシーンの裏側見るのに、良いのよね」 「ごめん、ごめん、へー、凄いんだね、それで安心してドライブできるよ、マシーンも大分扱い易く反応も良くなったよ」 井原君も笑顔で二人の会話に耳を傾けている、これなら、和やかに行けそうだ、俺は両人にコースのチェックに出かける事告げた

 富士サーキットのコースを再確認ため徒歩で何時もの様に念入りにチェックを開始、コースの荒れ、ブレーキングやクリッピングポイント(カーブなどの目標点)、最速ラインの目標の確認、だがこんな大事な時に先生の顔がチラ付く..之では駄目だ!こんな事では、もう駄目だ、俺は一体如何したのだ!あんな別れかたをして、先生からはもう連絡が来ないのでは?不安で一杯だ、携帯に手を掛けた途端、呼び出しベルが鳴り少し驚いた、先生からだ一瞬ためらったが嬉しかった、喜びで俺の顔がほころびるのが解る 「ハイ、リュウですが!」

あいたいな1.jpg たぶん、先生は外来の患者の診察が終わった頃だろう「ヨシ子です、リュウ元気にしている?」 「はい」 「今、お話出来ますか?」 「はい、富士で車のテストですが、ここ煩くてちょと移動します」時折走るレースカーの排気音で言葉がかき消されてしまう、隣の部屋に移りドアーをしめて「はい」 「リュウきこえる?」 「もう大丈夫です」 「リュウ・・私どう考えてもリュウを失う事出来ないわ、理由なんて、解らないし、知る必要もないのよ!、リュウに叱られるかも知れないが、充分悩んだの、でも自分の心は否定出来ないし、何時だってリュウの顔がチラつくのよ!、私自身予想もしなかったことよ、理性では如何する事も出来ないの、この先リュウが居ないなんって..絶えられない!」

 立て続に叩き込む様に話して来る..何時も取り澄まし、冷静沈着で少し冷たさを感じる、あの先生が、こんなに、率直に自分の心の内を情熱的に告白するなんって、俺の方がもっと予想できなかった、しかも、自分の気持ちを正直に、はっきりと此れほど素直に話す人に出会った事は無い、..あぁ、よかった!俺から申し込むつもりであったから、ほっとした

 ..俺と同じだ、だが、反面異常な不安に襲われた、又こんなに正直な先生を傷つけてしまうのでは?それに、これから俺のレース人生に影響しないか?それにも況してスポンサーの件も頭を過ぎった、如何しよう!、理屈じゃないよな~ぁ..今は先生に会いたい!断る理由など無いではないか、 先生は少し合間を取って「嫌で無かったら、其方の車のテスト終わったら来てくれる?..もし私と付き合う気が無ければ、今断って!」

 なんて、素直で積極的なんだろう 俺も全く考える余地も無く不安も何もかも飛んでしまっていた「ハイ、俺も同じ事思っていました!、明日夕方には着くと思います、夕食はチームの皆と食べて行きますから」 「嬉しい!本当に良いのね!、待っています、リュウ!無理しない様に気を付けてね」 「ハイ、なるべく早く伺います」..無理しなければ、勝てないのに..苦笑い..しかし、普通女性なら思わせぶりな言い方をするが、本当に率直な人だ..俺は凄く好感をもった、その後、自分でも呆れるほど、今度はマシーンに集中出来た

 マシーンの足周りの調整もタイヤ表面の外側と内側の温度差がなるべく平均に表面の減り等からホイールアラメントを調整し仕上がりに近ずき、今までは以前のドライバのシート(運転席の椅子)を隙間にクッション・パットを入れ調整して使用していたが、最近メジャーした俺れ専用のドライバー・シートが届き、交換、ドライビング・ポジションもピッタリ決まり、マシーンの動きの感覚が判り易くなった、.. 監督の眼鏡がキラリと光 「リュウ後半の走り、別人の様だった、まだ調整必要か?」 後半は大分路面との食いつきも良くなり、ギヤー比を変えた為か、コーナーからの立ち上がりもかなり良くなり、走り易くなった 「そうですね、まだケツ(車のリヤタイヤの横滑り)が流れ気味で押さえきれないから、立ち上がりで、アクセルを踏み込めないのでワンテンポ遅れてしまいます、もう少し食いつき良く出来ませんか」 「そうか、皆、後ひと頑張りだな今晩、調整して明日、朝一にテストだ」監督の顔つきも少し柔らかくなった様に思えた

 レースはもう此処から始まっている、次の朝、まあまあ調整も終わり、メカニックや監督と労をねぎらい食事をしたが、メカニックの鈴木 孝三さん(孝ちゃんと呼んでいる)は馴れ馴れしく俺の体を良く触る、言葉も女性の様だが、かなり好意的で気が利く!「リュウ、切れも良く早くなったわ、凄いわね」 「まーな、孝ちゃん、井原君、だいぶ運転し易くなったよ」 井原君は相変わらず真面目な顔で「エンジンの回転良くなりましたか?シリンダー・ライナーの傷のチェックやピストンリングの交換はもちろん、シリンダー・ヘッド、バルブの傷や歪等、吸、排気マニーホールド内を良く磨きをかけ、ジョイントのズレも直しておきました」 「うん、井原君、アクセル反応、敏感になりエンジンの回転立ち上がりが以前より全然良くなったよ、ありがとう」 俺は監督に早速、他に用事があるからと伝え、少し早めに帰途についた。

 富士からの帰り道、車を運転しながら、スポンサーの事も少しは気になり常に頭の片隅に残っていたが、今は俺の頭と心は完全に先生に奪われていた、こんな事は初めてだ、何時もなら、レーシングカーの調整と俺のドライブの反省とでも云うのか、ドライブ・コースを思い浮かべ考えるが、それに此の事でスポンサーを失いかねない、もうそんな事は今はどうでもよい、此方の方が大切になっていた

 今は先生に会える嬉しさが全てであった..先生と逢ったら何を話せば良いか、..初めに今晩は、それではインパクトが無い、ヤーか、ヨォか、オッスか、待った!か?..元気?おかしいな、何していたの?話したばかりだ、如何したんだ!ろくな考えが浮かばない、俺の気持ちを話すべきか..綺麗で魅力が有りますね、そんな歯の浮く様な事、俺先生が好きです!いきなり云えないよ、いや、率直に云うべきか?それとも先生の事をもっと聞くべきか、医者の話しや医療の話など分らないし、何を話せば良いのか..何かムードの有る話?俺に出来る訳が無い、うーん・・解らない!俺は何を考えているのか、..何も浮かばない、ただ々一刻も早く先生に逢いたい!..こんな戸惑いは初めてだ!

     《再出発》

龍崎3.jpg 富士からの長い道のりを、まとまりが付かぬまま、先生の待つマンションに着いてしまった、恐さと戸惑い部屋番号とチャイムを押す指が躊躇いを招いた、落ち着け!深く息を吸い込みチャイムを押した「リュウです」 ドア・ホーンから軽やかな声「おかえり、今開けます」

 余り待たずして玄関が開いた!エレベーターで最上階に、部屋の前でドアー開けて先生が待っていた、お互いに言葉は要らなかった、先生から俺の胸に飛び込んでくれた、黙ったまま極自然に抱き合い!、お互いの目を見つめ、それが自然であるが如く、唇を交わし、お互い高ぶりを押さえようと先生は俺の胸に顔を埋め押し付け暫らく其のままにしていた

ヨシ子心音.jpg 「リュウの心音、乱れてる」 「ハハ..、先生、職業病だよ、当たり前でしょう、小心者だから、こんな美人で可愛い先生に抱きつかれれば、乱れるよ!」..あんなに車の中で、悩み戸惑ったのに..アハァハ..言葉なんか要らないよな 「冗談よ!正常よ、リュウは口が旨いから、今日は泊っていくでしょう?コーヒーでも飲む?」 俺は心の中で(うん)といいながら、先生の目を見て頭を小さく、立てに振った 

 やはり、年の差、俺に気を使って自然の流れを作ってくれ、ゆとりある気持ちになれ、ありがたかったが、以前の結婚の失敗、これからのレースに対しての不安が一時、過ぎったが、嬉しさの方が数段勝っていた、全て先生に任そう..そして、富士スピードウェイでの話し、先生の職場の事や両親の話を暫らく聞いていた、なにか揺ったりした時が流れ、先生が俺に合わせた会話をした訳でも無いが、何か波長が合い俺の心の中で、変化し始めていた以前から此処に住み暮らしていた様な、何かゆったり落ち着いた気持ちを得られるのか?

 先生は俺を優しく見詰めながら「ねー、リュウ、先生って呼ぶの、やめて」 「どして?..じゃぁ、なんて呼ぶの」 少し恥ずかしそうに「そうーね、ヨシ子でいいわよ」 「なんか、急に無理だよ」 「じゃぁー、二人の時だけでも、そうしてちょうだい」 なにか、すごく可愛く感じた、きっと少しでも歳の差をちじめようと思っている様だ 「わかったよ、なるべくそう呼ぶよ」

 マジマジと俺を見て「私、こんなに苦しく、人を想った事、無かったわ..どうして、こんなに惹かれるのかしら!、不思議な位」 ..俺だっておなじだよ、何で惹かれるのだろう.. 「リュウ、疲れたでしょう、シャワー浴びてきて、此方よ、バスタオルこれ使って」 後は何も云う事は無かった、全て受け入れてくれたのだ!人の出会いとは不思議な物だ、一月前には何も知らず何も無かったのに、それも、五、六年前、美奈子と出会った時から手繰り寄せられる様に運命の歯車が廻り始めていたとは!

 シャワーを済ませバスタオルを腰に巻いたままの俺は、先生に手を引かれ寝室に移る、其処には大きなシモンズのダブルのベッドが目に入る、先生でも、やはり女性そんな雰囲気部屋である、二人は熱く唇を重ね、もつれながらベッドに倒れ込む、やがて以前の俺の結婚生活が余りにも子供で幼稚に思えたのだろう、そんな気使いは要らないのに

 年下の俺の心を傷つけ無い様に、恐る恐るガラスの容器でも扱うように、俺の目を改めて見詰、先生の不安そうで懸命に見つめる瞳が、恥じらいと優しさを含みながら、俺の頬に優しく手を沿え改めて優しく熱く唇を重ねた

 恥じらいながらも、けなげに、ゆっくりと、優しく導き「リュウ..、慌てないでいいのよ、..優しくゆっくりとね..」 耳元で優しく囁いてくれた、羞恥心を帯びながらも、揺ったり横たえ、静かに波打つ曲線を描いたスロープ、柔らかく透きとうる肌が、微かに欲望を誘う香りが、それを望んでいる様でもあった

 それは燃える様な奪い合うものではなく、静かに優しく厳かな儀式の様に、互いを確かめるように目を離す事なく、お互いの心の中を確かめ合う様に見詰め合い、定めに導かれるかように、ごく自然にゆっくりとゆっくりと結ばれ、先生は短く息を吸い込み、小さく開けた口元から、安堵の吐息と共に、俺の背中に廻した両手に優しく力が加わり..俺の全身と全能あらゆる感情と思索を優しく暖かいアロマオイルの中に包み込み、安らぎの香りと、慈愛に満ちた眼差しに、安住の中に溶け込み飲み込まれてしまった様だ!(Your love, adoring eyes, almighty & passion with peace of mind, My destined soul mate

 優しく受け入れくれた先生に、全てをさらけ出し委ね、その気高さと気遣と優しさに感動さえ覚えた、こんなに素晴らしくゆったりした安らぎを感じ与えられた事は、嘗て一度も無かった、

 又こんなに愛おしく切なく感じた事も、このまま、時間が止ったらどんなに良いか、心から信頼され言葉こそ無かったが、私が望んだ事よ、全ての責任は私ですから、安心して休みなさいと語りかけているようだ、だからこそ嘗て誰からも決して得られなかった、安らぎと、安住を与えられたのだと

 俺は、初めて感じた、例え俺が先生に刃を突き立てようが、先生の優しく包み込む様な眼差しが、貴方が其れを望むのならば、好きにして良いのよ..貴方の全てを受け入れるわと囁いているようだ..たとえこれからなにがあろうと、こんな巡り合いは二度と起こらない!このかけがいのない愛! 

 生まれる前から迷いつまずき、傷つき、長い間探し求め、此処にたどり着くために、やっと出会えた様な気がした!そして以前何処かで此の安らぎの中にいたのではないか、遠い昔忘れていた香り、何か懐かしい母に感じた匂いであったのではないのか?

 あぁー、この安らぎ、どんな言葉でも勝るものは無い、永遠に、この愛の中に留まりたい!..もう引き返す事も、止める事も出来ない、そして、あの、みなと未来での再会は、何か運命的なものさえ感じられた、・・・どれほど時が過ぎたのだろうか   

 先生はそんな俺を優しく愛しげに俺の頬に手を添えて見守るように暫く見詰めていた、俺が落ち着いた頃を見はかり、呟く様に「リュウ、私だって全てを忘れリュウだけを感じ、全ての束縛を外し自由になりたい時も有るのよ、凄く嬉しかったの、お互いに、全てを受け入れ、これが本当の愛なのよ、居るだけで、心を通わせあい、愛を感じ、安らぎを感じ、互いに愛しさを感じる者なのよ、人は生きている限り求め続ける者よ、心やお腹を長い間、空にする事は出来ないのよ」

 はにかみ顔で、何も知らない年下の俺に教えるかの様に語る 「リュウ、貴方は何かに反抗し悪がっているが、本当は純粋過ぎるのよ、もう自分を偽る事をしなくても良いのよ、貴方には火の様な激しさと、優しさ暖かさが有るのよ、そんなリュウが愛しく大好きよ、..ただ欲を云えばヨシコって呼んで、遠慮することないのよ、自由にしてもうちょっと目茶目茶にして欲しかったな」 意外な言葉だったが、たぶん俺が初心で気を使い先生に遠慮でもしていると思ったのでしょう、本当は長い禁欲生活と先生の優しさに何時までも、したって、全てを委ねていたかったからだ

 羞恥心から少し頬を染めながら、そんな事を云う先生に驚きも有ったが、飾りもなく素直で、しかも、大凡の女性が言いたくても云えない事を、はっきり自分を主張している、又 どんな女性でも欲望が起きる時が有り愛する人を心から信頼出来るからこそ、自身に素直になれ本当に心からの安らぎを得られると、今までの俺の結婚生活に対してと、年下の俺に全てを身を持って教えている様に思えた、又、先生自身、何か抑圧された心と戦って解き放したいのではないかと

 今までの俺ならそこまで云はれ、男として許せなく、間違いなく再び牙をむき出し挑んだ事だろう、しかし先生の眼差しは、母にも似た、無償の愛を感じ、優しさと愛に満ち溢れどんな凶暴の牙でもその眼差しで溶かしその軟らかい胸に包み込んでしまう(Love, true love is to ask nothing in return like a mother & your gentle gaze

 それにより俺自身の心の奥底に有った、今までの性に対しての不純な罪悪感や自身の心を閉ざし終わった後の遣り切れない空しさや孤独感が消え去り薄らいで、ゆったり、する事が出来た、女性を征服するのでは無く、愛により生まれる、相手の全てを知り、全てを共有したい気持ちから起きる物だと感じ、又こんなにも無防備な中でゆったりとした幸せ感が得られ、遠い遠い昔こんな安らぎの中に居た様に思え、何時までも、浸っていたい思いであった、

 そして、あの頑なまで守ろうとしていた封印と精神は!、脆くも崩れ、今までの俺は何で有ったのか? ..もう、疲れた、本当に疲れてしまった!今、この安らぎを知り、生きると謂う事に脆くも崩れ去って行く、封印を破ってしまった、俺自身に少し虚しさを覚えた事も事実であったが、今どんな言葉であろうと、この安らぎを言い尽くせなく、返って言葉にする事で薄らいでしまう様に思えた

何故だ!?こんな時に、少し悲しげな顔の美奈子を思い出す、俺が幸せ過ぎるからか?急いで打ち消す様に振り払うが、暫く頭に残る、先生はあの包み込む様な優しい瞳でのぞみ込むように「どうかしましたか?」 俺は目を伏せ「余り幸せすぎて..」先生の胸に潜り込む様に顔を寄せた、先生は黙ったまま俺をきつく抱締めてくれた、まるで女の台詞、何の違和感も無く呟いていた 

 条件は違うが俺も世の中や自分自身に反発した様に、先生も、何か固定された、常識を破りたかったのでは、だから俺の様な別世界の物に興味を持ったのでは? それも純粋の愛で一適の邪悪な心が無い事を物語り、ある意味尊敬さえ覚え、又年上の女性にも関わらず可愛くも感じていた、今まで、俺が感じた罪悪感や嫌悪感など微塵も覚えず、心から休めた

 そして静寂と安らぎの中で富士スピードウエイの疲れも有り、何時の間にか先生の優しい温もりと香りに包まれ眠りに落ちていく..かすかな記憶のなかで、此の人と一緒になるのかも..そんな予感がした。

コーヒー.jpg 翌朝、俺のレーシング・カーに得たいの知れない老紳士が乗っている、「おい其れは俺の車だ!降りろ!降りるんだ!」 声を出そうにも、声が出ない!、そいつを掴み出そうとして驚く!宇宙人の様な得体の知れないタコのように変わっていく、身構えようとするが体が金縛りなった様に動かせない!俺は初めて恐怖を感じる、先生が奴から逃れ俺に救いを求め走り込んで来るが寸前捕まってしまう、何時ものエンジンの排気の匂いではなく、爽やかなコーヒーの匂いが漂う?、不思議だ!

 其処で、ハット!目覚めた、なんだ!ベッドのシーツが俺の体に絡まって手足の自由を奪っている、相当寝相が悪かったか!、先生を心の底から失いたくと、失う事が怖いのか!親しくなったのは最近の事なのに、見る筈の無い夢、しかし以前何処かで見た様な気がし不思議に感じた

 部屋の出窓の白いレースのカーテンから朝の光が漏れている、そうか此処は先生の所だ、隣脇には、もう先生の姿はなく、何だか訳の解部屋1.jpgらぬ嫌な夢だ!振り払う様に打ち消してベットルームを出た

 ダイニングへ海から来る爽やかな風に夢の事も忘れ、大きく両手を広げ胸一杯吸い込んだ、朝の柔らかな太陽の光、何もかもやわらかく感じ、香り良いコーヒーの匂いと共に 「リュウ、おはよう、コーヒーどうぞ」何も起きなかった様な、穏やかな声にほっとした

 ヨシ子後ろ食事.jpg「あ、せん..えーと、おはよう」 「リュウ、呼びずらい様だから、ケイでも良いですよ私の漢字、(佳子)ケイ子とも読むの」 「うんうん、ヨシ子で良いよ、これからそう呼ぶよ」 バスルームでシャワー浴び体を洗っていると 「リュウ、歯ブラシとタオル私のだけど新しいから使って、後で必要な物買いに行きましょう」ドアーの外から声を掛けてくれた 「あぁー、ありがとう」 衣服をととのえ、ダイニングへ 「リュウ..朝食ハムエックにカリカリベーコンとウインナ、とトーストで良いでしょう」 「ハイ、充分です」 「さぁー座って、用意、出来ているから、野菜サラダ食べてよ、云われているでしょう」 私はこんな揺ったりのんびりした待遇を受けたのは母以来

 トースト.jpgオレンジジュースを出しながら 先生は優しく「リュウ、本当に愛していなく、欲望だけで、私を抱けたの?違うでしょう!、リュウの中の何かが壊れた? 愛の形には、色々有ると思うけど、お互いを認め全てを与え、全てを奪いたい物なのよ、本当の意味での理解が出来たからと思うわ、全てではないけれど、そう思わない?」 

 先生は何処からこんな自信が生まれるのか?何故か余り悪い気持ちは起きなかった、先生の云う通りだと思った、素直に受け入れれば、こんなにも安らげるのに自分が少し偏った考だと 今まで、先生に出会う為に先生に向かって迷い、戸惑い、辿り着いた気がし、体全体の力が抜け、本当に心から安らぎを持てた

ベーコンエッグ.jpg 俺は心からそう感じた事を言葉に出した「やっと出会えた、此処なんだ!この安らぎだ、心から思ったよ、先生に甘え駄目になってしまうような、何か恐いくらい、エェ!何んだよ、女が云うような事、俺が云っているよ!」 

 「本当にそう思っているの?」 「本当です、本当に出会えて良かったと思っているよ」 「本当なら嬉しいわ!..そうよね、これからは良い所をなるべく見ることね、私はどんなリュウで有っても、私が世間から非難されボロボロになっても愛し続けるわ、それを覚悟出来たから、リュウに又合う事が出来たの」

 少し前の俺だったら、ボロボロに傷つくと聞いただけで、それならもういいよ、そんなに我慢してむらわなくてもと、そのまま出て行ったと思う、しかし今の俺は先生が其処まで覚悟して俺を選んだ事に、素直に 有難うと思った..俺は変ったな!

 「俺、嬉しいよ!でも、こんな俺で本当に良いの?」 「バカね、困った事に、こんな俺が大好きなのよ!フフ、よろしくお願いね」 やはり、予感が当たった 「こちこそ、頼みます」 幸せすぎたのか今朝のあの嫌な夢を思い出す、あれは何だったのか?先生と、この様になって、レースでのスポンサーが以前の妻の父である事が心に痞えて気になっているからか?不安が心を過ぎる..

ラウンドマーク1.jpg 「リュウ、これから、リュウに再会した横浜のラウンドマークに行きましょう、あそこでリュウと手をつないで堂々と歩きたいの、行きましょうよ!」 その時、それは、先生自身の何かの決意にも感じた 「いいですよ、行こう!」

 早々と食事を済ませ 「リュウ、何着て行こうか?」 「俺、昨日の様なラフなスタイルが好きだよ、それと俺も着替えたいから、俺の処に寄って行くよ」 「ハーイ、そう云うと思った」 今日の先生は、誰も医者とは思へ無いスタイル、膝辺りに穴の開いたビンテージ物のジーズと黒の胸の開いたTシャツ、あのセクシーな匂いの香水、胸と腰が強調され足の長さと相まってとても魅力的だ 「いいね!俺そのスタイル好きだよ!」 「ほんとう?リュウの好みなの?以前にもそう云っていたわね、そう言う処、自分に素直で好きよ」 「まーね!感じたままで、余り考えていないよ」俺は何でもこの人には思いのままを何でも話せる人と感じた

 俺の住んでいるマンションは横浜本牧の元米軍基地を返還した跡地(マイカル本牧)に有る 、先生が部屋を見たいと云うので、一緒に俺の部屋に入った、暫く珍しそうに見回していたが、「意外と綺麗にしているわ、それに、車のトロフィー沢山有るのね」 「うん、大凡はカーレース、特に最初のが思い出があるよ」 「それにあの賞状と金のバッチは?..COMMANDER FLEET ACTIVITIES..って?」 「あ~あれね、米海軍からのだよ、あれは特別な賞で滅多にない事だよ、そのほか毎年仕事で賞を頂いているよ」 「見掛けによらないね、レース以外興味が無いのかと思った」 「なに、そんなに!見てたの」 「冗談ですよ!、そんなリュウだったら惹かれる訳ないでしょう」 「まったく!」

 「リュウ、下着と他の着替え2,3持って来て、今日も私の処に泊るでしょ?」 「俺も週末休みだから、良かった、そうさせてむらうよ」 サーキットなどは、週末はレンタル料が高いうえ色々な模様し物が有りマシーン(車)のテストには不向きで、マシーン(車)のテストも終わり、後は本番1,2日前位、まで予定が無い、おれもカーゴーパンツとTシャツに着替え、予備の着替えをバッグに詰め込んだ

 スクエアエリア.jpgみなと未来、クイーンズスクエアの有名店をあちらこちら、先生は以前の何か嫌な思い出を消すかの様に、開放され、俺の手を引き約束どうり、まるで二十歳前後の若者様に楽しそうに歩いた、..男達の目が先生に向けられる、ある者は、釘ずけされ、じーとなめ回すように見つめる人、又ある人は慌てて目をそらし、振り返って見ている男、その気配を肌で感じる、俺は少し優越感を覚えた

 暫くウインドショッピングをし「リュウ、こんなブルー・ダニューブ(Blue-Danube)の食器揃えたいね」 「それなら、俺、一式持っているよ、ベースの外人の友達に頼んで取り寄せてむらったんだ」 「本当?良く知っていたね」 「以前イギリスのレースの学校に行った時に知ったの、イギリスの皇室で使っているとか、とにかく俺も気品が有る品だと思って」 「リュウて、不思議な人ね、何処か影があり、そのくせ、ガサツな人と思ってたのに、物を見る目も有るのね」 「そりゃあー、良い物位分るよ、そんな目で見てたんだ!先生を選んだ目だよ、確かな物ですよ」俺はこんなに楽しいデートは何年ぶりだろう 「ごめん!リュウは口が上手ね、私の事は解らないわよ、リュウの買い被りかも、ガッカリしないでね」 「俺が良いと云っているから、それで良いの」 先生は目を細め本当に嬉しそうな顔で「嬉しいわ!」

 少しお腹も空き、海の見える屋外のオープンデッキ有るお店を探しそこに決めた、ピザと、きのこのパスタを注文しデッキテラスの席をとった、太陽と海、そして青い空、開放感を満喫しながらの会話

第三橋.jpg 「すごく楽しいの、来て良かった、これが本当のデートよね、リュウ、嬉しいわ!」 子供のように楽しそうにしている、先生を見、俺も楽しくなった、以前何か有ったのかな? 「俺も本当に楽しいよ」 「ここのスパゲッティーより、トニーの処の方が数段美味しいね」 「俺もそう思うよ、あれはね、俺が伝授したんだ」 「まぁー、偉そうに良く言うわ」 「本当です、イタリアの人は、日本のお醤油使わないから、アサリのワイン蒸しを作る時に、オリーブオイルにニンニクの香りを付けて種を抜いた鷹の爪、少しに白ワインでアサリを蒸しアサリが少し開いた処に、黒コショウ、バター、パセリの微塵切と、お醤油少々使って本当に味が良くなったんだよ」 「ふ~ん、リュウて応用が利きアイデアマンね」 店を出、臨港パークに、左手に大桟橋、右手には横浜ベイブリッチが見えるベンチにゆっくり並んで座り、爽やかな風と何処までも青く広がる空と海を眺め

 「ねー、リュウ、私、以前彼氏がいたのよ、こんな話して良いかしら?」 「余り聞きたくないが、必要だったら、いいよ」 「その人はね、始めはいい人だと思ったけれど、僕の彼女や妻になる人は淑女であってこうあるべきだとか、何かと云うと慎みなさい、世間体ばかり考えている人だったのよ、その家族と同僚の男達もそれに近い人が多かった」

時計観覧車.jpg やっはり、そんな気がした、その年まで何も無い事はない、以前何か此処での思い出を消してしまいたいか塗り直したかったのかも知れない 「もう何も言はなくて良いよ、解ったから、俺は先生の、ごめん、まだ先生がぬけなくて」 「いいのよ、続けて」

 「先生の云いたい事、解かっているよ、だれも、先生の自由は奪えないし妨げられる物ではないよ、だいち、個性が無くなるよ、そこら辺の似合いもしないブランド品を身に付け中身が空堂のPTAの噂好き欲求不満のザーマス、おばさんになって欲しくないよ、過去はどうでもいいよ、知りたくもないし知れば嫌な思いも生まれるし、知った処で、過去は何も変えられないよ、今が大切だから、もっと個性ある先生らしく楽しく、実りの有る生き方をしようよ」 そうか、俺だって、いろいろ、先生も俺以上にトラウマが有ったんだ、それで今までの先生が言ってきた事が、自由をさまたげる障壁を取り除きたかったのでは、何か理解出来た様に思えた

赤レンガ倉庫.jpg 「ごめんね!リュウはそんな人では無いと思うし、ただ、後から何かと言われるのが嫌だったから、この出会いを本当に大切にしたと思ったから..嬉しいわ、リュウは意外と大人ね、PTAは言い過ぎよ、それなりに皆、頑張っているのよ、子供みたい処有るけれど、そこが好きよ!..ねー、赤レンガ倉庫に行って、歯ブラシ、湯のみ、など揃えましょうよ、明日の食料もね、リュウはお腹満足させれば、ご機嫌だから、リュウと一緒だと本当に楽しいわ」

 「そうだね、俺って、そんなに単純!なの?..でも、先生もユニークな人だね、あの時の表現が、何か俺も納得させられたよ」 「バカ!恥ずかしいじゃない!、あの時だから云えたのよ」 「そうでなくて..先生が俺の為に、女だって、疲れたり、寂しかったり、又、要求があったり、生きているのって!..其れと今までの周りの環境から、抜け出し何か抑圧された物を変えようとしている事が、あの時、思い切り何かにぶっつけ、全てを壊したくて、自然に出た言葉と思うよ..自分を殺して、一生、生きていけないよ、俺が経験した事だよ、上手く説明出来ないが」

 「解っているのね..リュウは一見変わっていてガサツに見えるけど、そのへんの気取った男より、本当に頭良いし意外と教養も身に着けているね、自分でも気が付かなかったけれど、リ港未来夜景.jpgュウに云はれ、その通りと思うわ、だから一目見た時から全然違う世界のリュウが気になっていたのかも」 「そんなに褒められた事無いよ、余り、おだてないで、上げたり下げたり忙しいね、俺、レーサーですから、瞬時の判断が出来なくてわ、冗談ですけど、ハァハァ..さあ、行きますか?」

  二人は本当に素直に自分の気持ちをさらけ出し、精神的面も含め全てを裸になり、いっそう絆が深まり、安らぎと、愛情が生まれ始めていた、雨期の為、昼間の天気が一変、小雨が降り始めて来た、互いに二人の年の差も余り感じなくなり、楽しく買い物して、中華街に足を伸ばし夕食も済ませ、雨の中、足早に家路に向かった、

 先生のマンションにて、新しいマグカップにコーヒーを入れて 「なにか、新婚さんみたいね」 俺は冗談ぽく、両手を広げ 「みたい、じゃあ無く、新婚だよ、さ~ぁ、こっちにお出でスィートハァーッ(sweet heart)」 「それって、大根役者の演技みたい、ダーリン(darling)と言えばよいでしょうが、笑っちゃいそうよ..それより、リュウのレースの事、聞かして」

 「なにから話して良いか、..俺の乗っている車はフォーミュラカーと言って、規格に定められ作られているんだ、大体3400cc位で600/hp(馬力)位有り、普通車の半分以下の重さで最高速300km位出るの..こんな話つまらないでしょう」 「大丈夫よ、なんとなく、凄さが解かるわ、それより、リュウが車の事話している時の目、キラキラ輝いて生き々して、好きよ、ねー続けて、時々街中で大きな音させてドリフト(drift)?しているグループが有るけど、リュウもした事あるの?」 「良く車の事、知っているね」 「入院患者で小学生に入る位の男の子が車大好きで、良く私に話してくれるの、遊びたい盛りなのにね、リュウの車も、最近その子からミニチアで教わったの」

 「そうなの..俺は、そんな運転はしないよ、傍迷惑だし、ただ、腕自慢したいだけで、スタントマンは別にして本当にレースを目指している人には誰もいないよ、並のレーサーだったらドリフト位(車のタイヤに急激にパワーを加えたり急激なブレーキを加え車を横滑りさせ方向を変えたりする事)、皆んな出来るよ、レースは人より早く走る事、あんな無駄な走行は、しないよ、無駄な横滑りさせれば、それだけ遅くなるし、タイヤやブレーキ、そのほかの部品の消耗になるよ全部悪影響そんな馬鹿げたレーサーは誰一人いないよ、少しでも、ドライブもマシーンも如何に無駄なく走る事が早さに繋がるだよ、それとカーレースはガソリンの無駄使いと思っている人が多いが、車の開発や安全に関わっているんだよ、如何に安全で少ない燃料で早く走れるか凌ぎを削っているのだよ、それとヨーロッパでは意識が高くイギリスなどレースで活躍した人をサー(sir:閣下)の称号を与えられているんだよ」 「凄いんだね、解ったわ、じゃぁ、ただの暴走族と同じね」

 「そうだね、今の車は性能が良くなり、自分の腕でなく、車に乗せられているよ、見ていて危なく思う事沢山有るね、彼らに 時々サーキットを開放してやり、思いっきり走らせれば、スピードと車の恐さも解かり無謀な運転は無くなると思うよ、もっとも今ではドリフト専用コースも大分有るけど有料だから」 「リュウ、いい事云うね そうだと良いのにね、あの子にも話すわ」

 それで、レーサーは其々自分とマシーンの限界で走っているよ、その限界ぎりぎりのタイトロープを集中し護り通し気を緩めた者が負けだよ、俺が最も好きなのはレースの駆け引き、相手を射程距離に治めたとき、相手のマシーンの特性を知りプレシャーを与え相手のミスを誘う、相手の苦手なコーナーや相手の車の特性を見極め此方アウトから抜くと見せかけ、インから抜き去った時、ちょっとした快感、..得意げに身振り手振りで話す、俺をまるで母親が子供の話を聞くように見つめている、開催日程や場所等、話し、

 「リュウのご両親や兄弟は?」 俺の家族の話になった、父は俺が小三の時に白血病で亡くなった事、父の職業は新聞記者の政治部で時々社説等書いていた事、母は高校の教師で今は定年退職して家で学習塾をやっている事、女一人、男二人の三人兄弟の末っ子、俺は、大学の工学部を出、暫らくある一流企業で勤めていたが、派閥や人間関係が嫌になり、ある日、自動車レースのF-1を観戦し虜になり、この道に入った事など大まかに話した 「あ~ぁ、それで、何となく解かったわ、リュウが時々、難しい言葉使うから」 「俺は父母と違って文学は全然駄目、機械いじりばかりして勉強嫌い、家では異端児、扱い変わっていたのかも」

 「リュウ、おおよそ解かったわ、..それでね、私達のこれからの事考えてみたの、当分はこのままで良いけれど、いずれ、考えなければいけないわ、私は病院辞めたく無いし、リュウの子供欲いし、リュウの夢も叶えさせたいし色々考えなければいけないね」 「まだ俺が何処まで出来るか、解からないし、これから、一つ々解決出きるものから考えようよ、俺、何が有っても絶対逃げないよ、マジで、絶対先生を失いたくないよ

 「嬉しいわ、リュウが逃げださない事、前の奥さんの事で解かっているわ、うちの病院の看護婦達が言ってたよ、毎晩、疲れ切って帰って来て奥さんの手を握りながらベッドの下で眠っていたって、あんな旦那さんだったら良いねって、皆憧れていたのよ」 「でも、看護婦さん達は現実を知らないから、結局、惨め破局、マジ、同じ過ちは絶対出来ないよ、自分が許せなくなるよ..

 ..話変わるけどさ、あの時、前の奥さんの看護で、そのまま寝てしまった時、時々毛布が俺の肩に掛けて有ったの、看護婦さんに聞いたけど、誰も知らないて、もしかして、先生では無かったの? 何かそんな気がして」 「そうよ、夜勤の時にね、あの時のリュウはね、今もね、目が澄んでいてキラキラして、私を見つめ、他の方法は無いか又調べたのですが、こんな方法はどうなんですか?て懸命に質問して来たの、大抵の患者やその家族の方は私や他の先生方の説明を聞くだけで”そうですか”で終わってしまうの、何故か、リュウの事、こんな弟がいたら良いなと思い、時々ね」 「そうなんだ!やっと解った、あの時は、ありがとう」

 「リュウの気持ちとっても嬉しいわ、今日は遅いから、又考えましょう、さー、シャワー浴びて来て、そう云えばリュウのパジャマ買うの忘れたね、まだまだいっぱい色々する事あるね」 「うん、今夜は期待どうりするからね」 「バカな事云ってないで、早くシャワー浴びてらっしゃい」 こんなところは、お姉さんの様だ 「私のパジャマ用の徳大なTシャツ出して置くから着てね」

  シャワーを浴びながら、ふと思った、俺は未だガキだな、先生が何を考えていたか、少しも考えていなかった、先生の両親、俺の母、そして世間の皆、説得させなければ成らない、先生の固い決意少しも汲み取れなかった、年上の上に先生の地位、全て責任を取らなくてはいけない、少なくても世間はそう思うのだから、俺にそんな心配少しも掛けまいとしてそれなりの決意をしている事、今までの女子達と違うんだ、なんって俺はノウテンキなんだと

 俺は改めて、先生がシャワーを済ませあがって来るのを待った、「リュウ、如何したの、ベッドに行っていると思ったわ、パジャマ合わないの?」 「そうじゃないよ、こっちに来て座って」 「如何したの?、改まって!」 「ごめん、先生の事何も考えていなくて、これから、先生の両親と皆を説得しなければ成らないし、俺そんな事少しも考えていなくて」 「良いのよ、リュウはそんな事、心配しなくても、云ったでしょ、リュウに電話入れるまで、色々悩み、考えたの、結局は私たちの決意が変わらなければ大丈夫よ、必ず説得出来ると思うわ、リュウはそんな心配しなくて、いいのよ、リュウの夢、壊したくないし、リュウに迷惑掛けたくないよ」

 やっぱり五つも歳 違うんだ、そこまで考え、全部自分でやろうとしていたんだ 「なんで、俺だって出来るよ、一人でやろうと思わないで、二人の問題でしょう、二人で乗り切ろうよ!」 急に先生の目から涙が溢れ、俺に抱きついてきた 「リュウって優しいのね、..うん、うん..」 「何でも二人で考えようよ、あまり役に立たないけどね、抱き付くのは此処ではないよ、あっちのベッドだよ」 「うん、でも先生はやめてね、パジャマ大丈夫そうね」

 「女の子って、こんなに下からスウスウして大丈夫なの、それと先生の良い匂いするよ」 「そうよ、何時もスカート履いているから、慣れよ、」 「病院で会った時はキリットして誰も寄せ付けない顔して、狭心症、弁膜症、右心室、左心室、大動脈瘤とか今と全然違う顔だね、俺も少しは覚えたけれど、今の顔どっちも好きですよ」 「リュウたら、からかって!女は恐いよ!営業用の顔と二つ持っているのよ、フッフ ウフ 、下から掴んじゃうぞ!」 少し先生の笑顔が戻ってきた 「おぉ怖!、俺、先生のじゃぁー無くヨシ子の泣き顔より、今の笑顔が大好きだよ、もう寝よう、」

 あえて、この後の事にわ触れないが、この言葉で理解して頂こう、女性をレーシングカーに例えたら失礼かも知れないが、俺にとっては同じ気分だ、空気抵抗を抑えるため極限までに削ぎ落としたボデーは女性の曲線美に等しく、繊細で、扱い難く、直ぐに燻ってしまうが、フェラーリF458.jpg度エンジンが掛かると、押さえきれない、程の高回転に燃え上がる、扱いは、全く同じだ、時には繊細に押さえ、時には床を踏み抜くほど此れでもかとアクセル踏み込み、幾つものカーブを微妙なハンドル捌きとアクセル、ワークで操り、後はオーバーヒートでブチ壊れようがゴールに向かって走りきる、その極限の車を操れ自分の手足に出来た時、男たちは、究極な喜びを得られ、美しいスポーツカーに憧れる。これは俺の持論だが、少なからずそう思っている男は多いはず。 (ワゴン車も実務的で良いが、時には無駄の遊びが有っても良いと思う、スポーツカーで夢とロマンを持ち続けて欲しいものだ、芸術や科学も其処から生まれ、決して無駄にはならないはず)。

     《金沢八景島

  翌朝、六時少し過ぎに、目覚めシャワーを済ませ、今日は夕べからの雨も上がり、近くの海の公園から八景島への散歩に行く準備を整え、今日のブランチのお弁当アメリカンクラブサンドを作る事にしクラブサンド.jpgた、昨日買い揃えたベーコンと鎌倉ハムとスモークチキン(本当はクリスマスの時に使うターキーを使うらしいが)を少し分厚くきり1cm位バターで軽く炒め、溶いた卵に黒コショウを軽く振りこれもフライパンで伸ばし厚めに半熟位にして二つ折りにする、後はレタス、トマトとタマネギの輪きり水に少しつけて置く、ピクルスなど乗せ合わせ、サンドイッチ用パンもトーストして軽くバター、粒マスタード等塗り重ね合わせ楊枝で押さえ三角や長方形に切る、あとは、リンゴやオレンジ、をランチバケットに入れ、準備終了、朝のコーヒーを入れている頃、先生が起きて来た、

 「リュウ、おはよう 良く眠れたわ、何かお肉の良い匂いで起されたわ」 「おはよう、今日は八景島まで散歩だよ、ランチ作ったから」 「あーそれで、良い匂いしたのね、分ったわ、でも..体がだるくて、まだ体が火照り、ジンジンして余韻がのこっているみたい、体フニャフニャよ、..意外とリュウて、女の子と遊んでいたのかな?」 「そ!そんな事無いよ!オレンジジュース飲んで、冷たいシャワー浴びればシャキとするよ」 「まあー、お互い過去の事ね、リュウは嘘へたね、直ぐ解るわよ!、シャワー浴びてくるね」 ..コーヒーを飲みながら、バナナと卵、蜂蜜でミルクをミキサーに入れミルクシェークを二人で飲み、

海の公園散歩道-1.jpg 先生はスエットにパーカーを着て二人してランチバスッケトを持って出かけた、 「今日は香水変えたの、少し爽やかな匂いだね」 「リュウ、鼻も良いね、これは、同じメーカーのミツコと云うの」 「女の子はTPO考え大変だね」 柴町の海の公園の駐車場に車を止め、そこから歩く事にした、夏には海水浴も出来る海辺と砂浜、それと平行に森林の有る遊歩道(ジョギングコースも有る)が八景島までつながっている、東京湾を挟んで千葉房総半島に夏の様な入道雲が浮かぶ、雨上がりの清々しい初夏の柔らかい日差しと風が気持ち良い

ヨシ子夕べ.jpg 先生は少し頬を高揚させながら「リュウ、夕べは有難う、凄く安心感があったから、心から、裸の自分に成れて、今まで感じた物より凄い凄い変化を..」 あまりストレートで俺も戸惑いながら「うん、解かっていたよ、先生って何でもストレート云ってくれて助かるよ、其の方が俺も好きだよ」 「リュウだからよ、リュウには何でも話せるし私の全て知って頂きたいから、それが本当に私達に取り、安らぎを与える事に成るから」 「俺、大分遠廻りしたが無駄ではなかったよ、やっと見付けられ、昨日から、先生の優しさと心からの安らぎが嬉しくて、初めてあんなに、感動したよ、先生に逢えてよかった」

リュウ黒T優しい.jpg 「ほんとうに?..最初の時、前の奥さんの事もあり、本当はリュウが何も知らないのかなと思って、物すごく恥ずかしかったのよ、リュウは繊細で傷つき易い人だからと思い、本当に顔から火の出る思いって、あの事よ!」 「うん、ごめん、知っていたけど、あの時、凄く嬉しかったの、あんなに心から休めた事、無かったから先生の優しさの中に、何時までもいたかったから、俺、本当にあんな幸せ感じた事なかったよ」

 「本当に?、それなら、よかったわ..それと私、昨夜、初めて..こんな、凄い」 俺はずかしい思いをさせまいと、話を遮る様に 「世の中の夫婦下手に気取っていないで、お互いが欲しく、求め会った時を思い起せば、離婚は少なくなると思うよ、そのくせ人にはその行為を下品とかいって、子供作っているし、マリヤさまで無い限り、どんな人でも、父と母の愛から生まれたんだから、動物みたいに、ただ子供作る為の考えの方が余程不純だよ..」

 俺は堰を切った様に話始めた「..人には心が有り愛があるから、自分達にとって寄り良い方法を考えるのが当然、皆、環境、育ちや顔も違うし考えも、頭を使う人ほど想像力豊かでそれぞれ違いがあるし、食べ物にしてもそれぞれ好みが違う様に、本当に向き合って話合う事が大切だと思うよ、それと、一方だけを押し付けず、二人を認め合い、尚、出来れば共有趣味を持てたら良いね、なーんって、云ちゃって!..俺に似合わない理想なんか、云って」何故か今まで話した事の無い自分の言葉に照れを感じてしまったが

 「もっとも、人のことは云えないけれど、以前の俺達は散々話し合ったけれど、一旦出来てしまったイメージを、如何しても変える事が出来ず、俺自身の全てが壊れてしまうような気がして何も出来なかったまぁ、他人に話す事でもないし、他人の事云えないが、何千年、何万年、繰り替えされて来た行為なのに何故、素直に成れないのかな?余り開放的でも、刺激が薄れるかな?だから秘め事と言うのかな?」

 尚も、先生なら受け止めてくれるのではないかと思い、俺は初めて自分の存在やこの世界についての、疑問をブッツケて見たいと、自分の考えを話し続けた「それ以前に、俺は人間やこの世の中でこの宇宙で、生きている生物が生殖を繰り返し、生き延びる、意義がわからない、子孫を残し続け何億万年後、何時の日か、此の宇宙を支配するためか?何の意味が有るのか、何故、俺が此処に居るのか?どんな意味が有るのか何も解からないよ?俺が死んだら、此の世界は消えてしまう、全て無意味ではないか?自分の聞いたり見える範囲の事しか解らない、しかし人は自分自身だけは特別だ、この世の建造の神から何か特別な使命を与えられたと思い、自分の価値を認めたいが為に?!本当は何も解らないし、況してや生きている意義がわからないよ、この宇宙や自然はそんな個人的、感情や営みには無関係に変化して行き、余りにもちっぽけな存在だから

 元々、何の為の価値か?誰が決めるのか?、女に認められたいが為にか?何も無い価値を俺だけは特別だと思いたいだけ..でも、そう云う俺も現実には、先生に強烈に引かれ、煩悩だらけの俺がいるよ、もの凄く愛さずにはいられないし、愛されたいと思っている、本能だらけの俺がいるよ、全く、矛盾だらけで、何の価値の無い俺が何故生きているの?」 なんだろう、こんなに理屈っほい話、気恥ずかしく普段はとても出来ないのに不思議と、今までこんなにベレベラ喋った事はなかったが初めて俺を理解出来る人にあった思いからだ!

 優しく包み込む様に先生は黙って聞いていたが、まるで子供に話す様に「神は天地創造を五日間で成し遂げ7日目に安息とされたと云われているそうよ」 きっと生きる意義を説明するための聖書の話だろう、その先の話が有るだろうが俺は遮った「俺はこの世界が出来た科学的ビッグバーンなら解るけど、神など信じられないよ、何故、世の中こんなに不条理に出来ているの?ましてや自然は無情だよ、 ・・でもね、時々ちゃかり、神様にお願いごとする事あるけどね、俺のは自分に都合の良い神様だけどね、自分でも話している事が解らなくなるよ、ハッハ」

 先生は俺を否定するでもなく「フッフフなにか、リュウって哲学者みたい、何となく、納得させられるけれど、私は、この世の創造、ましてや、宇宙の事など解らないわ」 「おだてないでよ”ソクラテスやニーチェ”ではないよ、ただ理屈ぽい本当の”阿呆”アフォイズム(aphorism)の人だって云いたいだけでしょう!..先生は現実的ですね」

 「面白い事云う人ね、そんな諷に思っていないわよ!何でも解っている様な顔をしてリュウの様に悩んでいる人をセセラ笑っている人の方が大嫌いよ!」・・「でもね、今のこの幸せは事実でしょ、それに、他の生物は解りませんが、ただ生殖を繰り返すだけでは無いの、人は一人では寂しくて生きていけないのよ、今の元気なリュウには解らないでしょうが」 たぶん職業がら、お年寄りに限らず、孤独に去って逝く人を沢山見て来たからだろう 「リュウ!リュウだって、たった今幸せだって云ったでしょう!一人で感じたり、分かちあったり、する事が出来る?」 「うん、幸せだよ!そう思っている」

 「私もよ!、現実にリュウに遭え、此れほど、いとおしく愛してしまった事に、感謝するわ、そして、最高に幸せよ!愛は人を特別な存在に変えるのよ、それだけじゃ、いけないの?、この世の全ての存在に意義があると思うの、..リュウの云う通り宇宙の力は底知れない物よ、でもその様に云いながら”俺の命俺がどうしょうと俺の勝手だ”とリュウは自分で生きていると思っているでしょう?、でもそれは違うは”私達は生きているのでは無く、生かされているのよ、そのうえ、意味は解らないが地球上の生物達は競って子孫の繁栄を求めているの、それが定めなの!

 そして、命は各々与えられた時間、その中で与えられた定めに導かれ、この巡り合いの奇跡に、ただ感謝し素直に受け入れば良いでしょう..リュウ!私達の巡り逢い想像できた?解明できる?..それもこの世にリュウのお父さんとお母さんの愛があって、又その父と母が存在しているからでしょう、そうして、皆に愛され、リュウが生まれたのよ!例外はあるけれど、私もよ、同じ様に愛され生まれてきたの、それでね此の与えられた時を大切に生きなければ、ならないの」

 「そうかも知れない、俺も、先生に遭え最高に幸せだよ」 それに無闇に否定せず俺を確り受け止めてくれる、やはり先生は現実的で何時の間に説得されてしまう、凄いや! 「幸せに思う心、其れが大切な事よ、与えられた命に悔いの無いようにね・・その中で自分なりの意味を見出せば、いいんじゃない・・

 それでリュウ、話を戻すはね、少なからず人はね、日常の生活の中で性に対して罪悪感を植えつけられて居るの、それはね、愛情も無く性だけに溺れ、子供が出来てしまう事を恐れ、戒め、防ぐ為と思うわ」

海の公園-1JPG.jpg 「リュウもう少し話して良いかしら?」 「はい」 「逗子の海岸で話した時、リュウは納得いかない様だったから、人でも動物でも、子孫を残す為に、心とは別な処で勝手に反応が起きるの、それは健康な証拠、決して、悪い事ではないわ、それより、正常の若者がそんな気持ちが起きない方が、病気か異常よ!大して知識の無い大人達が知ったか分って偏った変な道徳を押し付けて、青春期を迎える子供達が戸惑って、悪い事と思い隠してしまうから、歪んだ考えになってしまうの、人が生きて行く上で最も重要な事を避けているの、その時期にちゃんと向き合って話す必要が有るの」 ..内心、嘗ての俺、心が痛むよ.. 話題を変えようと思い 「海辺に出よう!」 「ええ、いいわね、行きましょう」

 二人は林の遊歩道を抜け八景島入り口に続く大橋に向かい、海辺の波打ち際の砂浜を寄せ来る波と時々遊びながら楽しく歩いた、時々吹く爽やかな風が優しく通り過ぎて行く、俺は悪戯心で先生を波打ち際に押しやった 「フフ、波が来るよ」 「キャー、リュウ押さないで、濡れちゃうから」 時々大きく寄せる波を楽しげに大げさに避けながら、俺に一層寄り添い先生は話の続きを始めた

 「それでね、今では、学校でも教える様だけど、先生自身が偏見を持ち、本当の意味を余り理解出来ていないと思うわ、だから、教わる者が理解出来ないのよ、理性を教えることは、其の行いを偏見無く見つめ理解した上で、説明すべきよ、動物達には自分で育て無くて、子供自身が生きる能力を持ているから、ただ子供を生み続けて強い子孫を残す事が出来る物と、

ryu & yoshiko 海辺.jpg 人間はそうは、行かないわ、子育てを必要とする動物達もね、子供が物事に耐えれる身体が出来上がるまで親の手が必要なの、其れには、子供に愛情を持ち夫婦で助け合い、自立するまで、育てる必要が有るの、経済的にも、子供に社会で生きて往ける善悪を身に付けさせなければいけないの、そこで、ただ、感情や欲望だけに身を任してはいけない事を理解出来るのよ」 まるで以前の俺を知っているかのように

 俺は堪らなくなり、もう一度、先生を波に向かって、軽く押した先生は笑いながら「もうーリュウたら、だめよ!大事な事だから!ちゃんと聞いて」 「うん!」 「若い時はどんなに駄目だと言っても、沢山恋愛するでしょう相手を好きになる事も大切で自然だが、欲望を愛と勘違いしているの、本当の愛や愛情は結果を、其処まで考えなければいけないの、それが正しいと思うけれど

 リュウは、行き過ぎ、純粋過ぎるほど純粋の事が、返って人を傷つけてしまう結果になってしまうの、時として、愚かなのも人間よ、..”結婚は一方だけでは無く、自身の体も心も受け入れ、其の上で相手の事を考えなくてわ”..旨く説明出来たかしら」 やはり先生だ確り自分の意見を述べる、たぶん俺の結婚の失敗が何故か教えたかったに違いない、其の場の気分ではなく、確かな、愛と家庭を作る、責任を求めていたからだろう

 何かたまらなくなり「子供じゃぁないよ、そんな事解っているよ!、さんざん苦しんだから、バランスと責任でしょう」 流石、先生だね、相手が解かる様に説明する事、当時も病院での説明や態度に感銘して、尊敬し、本当に信頼出来る人と思たよ、本当は俺自身、身を持って痛切に感じた、事を解ったのであろう 「ごめん!解っているのよね、説明する事も無かったね、責任感有るし、それがリュウの素晴しい処でもあるのにね」

 先生は俺の目を真っ直ぐ見詰め、決断した様に「それで、昨夜の事だけど、私、話す事、躊躇ったんだけど、リュウに私の全部を知ってむらう、事が良いと思い..なんて云ったら良いのか..初めての経験よ!自分が自分で無いような、ほら、大学生だった頃友達の頼みで、女の人が足りないからと浅草で、お祭りの御神輿、担いだ時にアドレナリン(adrenaline)がどんどん出てハイになった時のような、少し違うかな、とにかく今まで感じなかった感覚!..真っ暗な海へ何処までも落ちて行く恐さに、リュウの腕にしがみ付き、快感と不安の中で漂っている様な、それが、物凄い耐え難い快感になり」

 又、先生は少し恥ずかしそうに言葉を探し話を続けた「それからも、とどまる所が無く襲ってきて、身体中の肌に電気が走り、体の奥底から全身の細胞に血潮が沸き上がって来るような、絶え切れない物凄い快感で、意識が霞んで行く中、別な生物が勝手に動きだして、死んでしまいそうな快感の波が寄せては返し何回となく、とどまる事無く、押し寄せて来る感覚..薄れて行く意識の中で、貪欲にも、もっと、もっと、リュウと溶け合い一つ成りたく、もっと、リュウが愛しく欲しいと思う気持ちで、本当にこのままリュウを感じながら、死んでも良いと思ったわ、反面、自分の体が悪魔に支配された様で恐くなったの!」

 「俺だって、一緒だよ、なんて素晴しいかと感じ、絶対離さない、と思ったよ」 先生は少し頬を染め俯きかげんに「本当に?恥ずかしいわ、..私、淫乱のようになって、理性を失い..軽蔑しない!」 「馬鹿な事云うなよ!意味が違うでしょう、やっと理性を取り払い開放される事が出来、お互い本当の自分なれ、初めてこんなに安らぐ事が出来て、お互いの全てを知ろうと心まで裸になれ、一つに溶け合い求め合い、何が悪いの、こんな巡り合い二度と無いよ、なに、卑屈になっているの、なんて素晴しい人だと思ったよ、もっと大事にしなくては、先生が教えてくれたでしょう、たまには、全ての束縛から解放されても良いと、悪魔では無く、それこそ天使でしょう」 俺は先生との空白の時間を少しでも取り戻し先生を知り尽くしたかった、からかも知れないが為に激しく求めたのかも知れない、

 いつの間にか海と島を繋ぐ、八景島入り口の広く長い大橋を渡り、正面の大きなメリーゴーランドを過ぎ、なだらかな坂道の両脇に紫陽花の咲き誇るあじさいコースを歩いていた

紫陽花八景島.jpg 「リュウ、やっぱり、あれは悪魔よ!、あの耐え切れない苦しさの中で痺れる甘美さと快感、まるでドーバミンの嵐中に迷い込んでしまって、嵐の渦に巻き込まれ自分が破壊されてしまいそうで恐いの」 「先生はそんな事は無いよ、今だって冷静で、自分を分析しているでしょう、もうオキシトミンが出ているよ、それと、エンドルフィンかも知れないよ、たまには普段のストレスを開放してくれる場が必要だよ、脳は危険を感じると自然に制御する物質を出すんだよ」 「如何して、医者でも無いのに、そんな事知っているの?それに、付け加えるなら、精神的に健全で健康が条件ね」

 「まあーね、コンピューターでロボット作りたくてね、頭の構造の事少し知りたく感情の事も勉強したの、ドーバミン・ニューロン(Dopamine-neuron)とか、神経伝達物質など、苦しさとか痛みも、快感に繋がるんだよ」 「それで、..本当に、そう思っているの?」 「当たり前でしょう!先生自身が教えてくれたんだよ」 「本当に?..リュウは悪魔よ、もう虜になってしまったわ」 「そんな!..めちゃめちゃにしてー、って!」..そう云えば、先生の体全体が、うっすらと、汗ばんでいたな.. 先生は俺を見詰め「其れくらいリュウは..私に悪魔の魔法をかけたのよ」

 「だから、解かっていると云ったでしょう、裸の自分を受け止める、此れが本当の愛だよ!、本当に先生、素直で清清しい位、..本や話には聞いていたが、本当に俺が体験するなんて、なにも心配する事では無いよ、むしろ、素晴らしいよ、本当に出会ったのには、嬉しい驚きだったよ、女性の中には、生まれ持った特殊能力と、また訓練により出来る人もいる様だが、俺は、なんて幸運な男かて、これも先生の言う正常で、人より走る事が早いとか、特技かな?ずば抜けた身体だからこそ生まれる物と思うけど、それと頭の良い人ほど想像力があり、高い常識との葛藤が外れたから、より強く感じれたのだよ、俺達長い時を架けやっと出会えたのだよ、..本当に先生の事、可愛いなって感じたよ!」

 先生は俯き加減に目を伏せ、頬をなお更赤らめて「本当に、うれしい!ありがとう!こんな事、話せたのリュウだけよ」 「本音を話し本音で接しようて、云っていたの..先生でしょう、それと知らなかったの?」 「私は婦人科では無いわよ、だいいち婦人科でもそんな事教えないよ、知る訳け無いでしょう、自分の体が恐いような、本当に複雑な気持ち..」 「..リュウに生意気な事云えないね、私自信、心の偏見が有ったのかもしれないわね..でもどんな事が有っても、やはり、リュウだけにしか話せないわ..」

紫陽花八景島2.JPG 「ただ、リュウに喜んでむらえるなら幸せよ、この世の中で何人の人がいるのかは判らないが、幾千もの瞳が、とめどなく交差する、そんな巷でふと見詰め合いたちまち恋に魅せられ、運命と言うか選ばれた、二人が組み合わされ、(You & I destined soul mate, Fated deepest love that is meant to last) よし子とリュウの様に、これ以上在り得ないほど、深く、深く、とても深く!、これ以上の愛は無いと思うほど!、私達は愛し合っているんだと!、本当に嬉しいし喜びと感激と想像を絶する快感の中で、このまま全てが永遠に止ってしまえば良いと!、この大空に舞い上がる様な精神的開放感、これで本当に良かったと思ったわ!こんな幸せが有るなんて!」

 「先生って、凄く不思議、現実的なのに、こんなに詩的な処もあるんだ!、何かを我慢すれば、何時か亀裂が起きるよ、おれ自身が体験してきた事でしょう、誰に迷惑掛けるわけでも無いし、お互い苦痛で無ければ助け合うのが当然でしょう、夫婦って、お互い裸の心で助け合う物でしょう!、其れが、心から休める事、先生自身が教えてくれたんですよ!」

 つい、声が荒くなってしまったのか 「私だって女よ!こんなに幸せで、詩的になる時もあるのよ、リュウの云う通り、そんなに力説しなくても、良く分ったわ..それでね、私が年を取って、自由が利かなくなったら、下もの世話リュウ以外してもらわないわ」 「それは、大変だ!男の方が寿命短いよ、俺がしてむらうよ」 「だめよ、リュウに一生愛され、リュウに見守られて、一生終わりたいわ、おばーちゃんになっても、愛していただける?」 「ハッハァ!長生きしないと、いけないな、やはり先生は現実主義だ」 「そうですよ、私、寂しがりやだから、一人で生きられないわ、本当にお願いするからね、本当よ!」 やはり先生という立場、そうしたいろいろ沢山の人を見てきたからだろうか?

紫陽花.jpg やっと、俺の説明で先生は安心し先生自身を受け入れたようだ、..「きっと、自分でも解っていない心の奥底で眠っている物が安心観の中で素直に呼び起し解放されたんだよ、もう何処かで不満も感じられないと思うよ、もう何も、心配すること無いよ、..本当に俺はラッキーマンだ、誰かに、叫びたいくらいだよ」

  先生は確りした、口調で「それと、私の周りの世間と云う牢獄と私自身を巻きつけていた鎖を、リュウ、貴方はいとも簡単に解き放し、開放感を与えてくれたわ、結婚している世の中の女性、皆こんな幸せを感じているのかしら?」 「さーね? 意外と、自分自身の中にある物だよ、一歩踏み出し心を開けば簡単だったり、するものだよ」 これは俺自身にも言い聞かせる言葉かも知れない

 先生は本能的に何時も何か掴みきれない心の奥底から湧き上がる物、それがたとえ悪魔?であって、どんなに恐くて不安に晒されても知らなければ収まらなかったのでは、常識を超える恐さであっても知りたいと感じていたのでは..そして、余りにも自身の変化に不安を覚え話さずには居られなかったのではないのか..そんな話をしている中に穏やかな風に送られ八景島のシーパラダイス付近に来ていた、

紫陽花-1.jpg 紫陽花が昨日からの雨上がりに一際綺麗に輝き咲き誇っている、..まるで、先生の様だ、其の時々で、色が変り、華やかに、ある時は清純な真っ白やブルー・シアンの清楚で有り、又妖艶で怪しげな紫に、雨を求め雨に打たれる度に一層輝きを放ち、やがて真っ赤に燃え上がる..俺はヨシ子に時折降り注ぐ雨になり、時には輝く光りになり、紫陽花の様に..先生を!..

 「リュウ、如何したの?急に黙り込んで」 俺は何か見透かされ様で、少し慌て戸惑った「うんうん、紫陽花が、綺麗だな~ぁって」 あじさい祭りも有ってか、沢山のカップルが楽しそうに行き交っている、見事な花が咲き誇る、あじさいの滝と名前の付いた階段を下り

山紫陽花.jpg 「あの、楽しそうな、あのカップルもこっちのカップル達も色々楽しさも悩みが有ると思うよ、お腹空いたね、何所か据わる処決めようよ」 「リュウって突然話がお腹に行くのね、ネエ~、あそこの、水族館(八景島シーパラダイス)の入り口近くのサービステーブルにしょうよ」 「じゃあ、そこの空いているテーブルにして、俺、何か飲み物、自動販売機で買って来るよ、何にする?」 「なんにしょうかな、ジュースとお茶、..こんな事無かったわ後でソフトクリーム食べたい!何かリュウと居ると、子供に帰ったみたい

 朝、準備した、サンドイッチを食べ 「リュウ、こんなに近い処なのに私し久し振り、今まで沢山高級なレストランやホテルの会食に行ったけれど、リュウと一緒だと全然問題にならない位楽しいし、凄く凄く幸せ、サンドイッチ凄く美味しいから沢山戴いちゃった、リュウと一緒だと太りそう」

ヨシ子解った.jpg 「屋外だから、美味しく感じるかも、大丈夫だよ、今晩、俺が運動させてあげるから..、今日は色々考えるのよそう、楽しくしようよ」 「リュウの云う意味解かる様になったよ、さっきリュウが紫陽花見て、あんなに慌てて、考えていた事解ったわ..フフ、今夜一杯お願いしようっと」 「パーカ!」先生の頭を指でつついた、まあー、当らずとも遠からずだ 「アハァ、リュウ、赤くなって照れてる、図星でしょう」 「まあーね、もっと意味深いよ」 「どんな事?」 「後で」なんって、明るい人だりう 「ねー、水族館でイルカショー見ようよ」 「水族館なんって俺には関係なく想像も出来なかったよ、子供達が沢山だね、いい機会だから入ってみるか」 「一人では、何か入りずらいでしょ」

 俺は少し気恥ずかしかったが先生と、切符売り場に見知らぬ子供達と並び戸惑いながらキップを求めた 隣に並んだ子供が何を求めたら良いか解らなく思った俺をみて「お兄さん、アトラクション等セットになった方が、お得だよ」もう母親と何回も来ているのであろう 「あ、有難う」 売り場のお嬢さんに向かって「じゃぁーそれ下さい」何とか焦りながらキップを手にした、その子のお母さんと顔が合い、思わず互いに苦笑していた、俺の戸惑いをみて 「フフ、リュウの困った顔、見ちゃった!」 子供の様に素直に楽しく喜んでいる先生を見て、連れて来て良かったし、そんな先生が居てくれ幸せに感じた

  入り口のお姉さんにチケットを渡し入場すると中は薄暗く大きな水槽に珍しい熱帯魚や海の動物達があちこちに見えた、俺はふと思いつき、尋ねた「ねぇ、先生、何所か旅行したくない?」 「そぅーね、リュウ、今は駄目なの、病院のスケジュウルも有るしね、それよりね、今はリュウと云う心の大陸を旅をして、新しい自分探すの、始めはリュウはアメリカ大陸かなと思ったけれど、ヨーロッパ大陸だね、時々見知らぬ、女の子が出て来たり..?」 「そうか、そのうち行こうよ、 ね、如何してヨーロッパなの?女は無いよ!」 「そうね、始めリュウはアメリカ的と感じて、ただ野生的で大ざっぱ、と思っていたけど、リュウと言葉交わし接して、以外と繊細で多面的な所が有ると思ったから」

シーパラダイス.jpg 館内の放送でイルカショウが始まることが告げられ、子供達の興奮した、ざわめきと共に押出されながら、巨大水槽のトンネルの中をエレベーターで頭上を鰯の大群が銀色や青く光り、エイや鮫など泳ぐ中を感動しながら、大きなプールの有る会場に着いた、何段もある大観覧席のちょうど中ほどに先生と並んで席を取った、孫と一緒のお婆さんや若いお母さん、子供達ばかり、何か場違いの所に迷いこんでしまった様で、ちょと小恥ずかしく思う、

 やっと落ち着き先ほどの話の続きを始めた「やっぱり、先生だね、云う事が違うよ、又、先生って云ってしまった、ごめん」 「リュウに云はれたら、くすぐったいね、いいのよ、リュウが蟠り無くなるまで、..今はね、リュウと出会い何か新しい自分を見つけられそう!、全てが新鮮で子供の様にワクワクしているの、..もう、歩き始めているわ、私の中で、リュウが導いた、新しい出会いも有ったし、少し角度変えて見れば、色々見えて来たのよ、みんなリュウからの刺激よ」

 「俺、褒められているの?先生の生きた世界と俺の世界が余りにも違うからでしょう」 「そうよ、だから、自分以外の世界は認めなかったのよ、それをリュウが変えてくれたの、本当の人間的な、暖かい物をね」

そんな、会話の中でも、時折ふと見せる悲しげな表情が気になり 「先生、如何したの心配事でも..?」 「なにか、余り幸せ過ぎて、不安で恐いの! このまま、リュウを駄目にしてしまうのでは無いかとか、リュウがいなくなってしまう様な、時々頭を過ぎるのよ、幸せなのにね、変よね!」 「先生、俺なら大丈夫だよ、それより俺の方が先生の人生を狂わせてしまうのでは、って」 「ちがうわ、私が変えようとしているの、今になって解かったわ、前の奥さんの事、持ち出すの嫌でしょうが、リュウのレースの事よ、毎日心配になるわ、あの時は、冷静に考えられたのに、誤解しないで、リュウの夢は消したくないの、それと世間の目、もっと強く成らなくては」 時々ショウの歓声で聞き取りずらい

K-ryu.jpg 「確かに危険もあるよ、でも普段の生活でも危険だらけだよ、況してや、戦場カメラマンや救命隊、登山家、いっぱい居るよ、もう嫌なの、互いに足の引っ張り合いや、本心で話さず影での中傷等、レースは単純に見えるが、色々戦略も有るけれど、それと自分との戦い、影での汚い工作も無く実力勝負、走り切った、達成感と結果が直ぐに判る事だと思うよ、俺単純だから」 「ま~ぁ、謙遜ですか?リュウは複雑でなかなか解らないわよ」 「そうかなー?」

 「リュウの話は解っているわ、でも理屈では無いの、リュウがレースに取り組んでいる時の輝いている目、そこが好きなの!でも、恐いの!」 「もう走り初めているんだよ、前に進むしか無いよ」 「そうよね、幸せすぎるから!リュウを失う事など出来ないわ!、リュウの云う様に、進むしかないよね」

 「ねーぇ、帰りに鍵屋によって、私とリュウの家の鍵作りましょうよ、良いでしょ」 「うん、そしよう、又明日から1週間会えなくなるから」 「リュウ、会いたい時には、何時でも来て良いのよ、私だって、会いたくて、寂しい時有るんだから、気を使わなくて良いよ」 「ありがとう、そうさせてむらうよ、明日から今週末俺のビックレースのデビュー戦の準備も兼ねて明後日辺りから富士に行くから」 「じゃー今晩は私の処に居てくれる?」 歳上のせいも有り、本当にハッキリ自分の気持ちを言う人だが決して押し付けではない所が流石と 「先生が駄目と言っても、側にいるよ」 暗黙の内に此の出会いが、長い時を経なくても、二人を結婚に導く事を予感していた

 金沢文庫の鍵のショップで二人の鍵を作り、駅の近くの喜多方ラーメン店で夕食を済ませ、先生のマンションに帰り、俺のレースの経歴を先生に伝える事にした、ある電気メーカーの商品開発技術部に配属されたが、俺の気性に合わなかった事とカーレースに魅せられ、転職、将来海外のレース活動、英会話も含め良いと思い、横須賀X軍基地に、レース活動も有りその時は休ませて頂ける条件で日本政府経由の方が条件が良かったが、自由な休みが取れなく、米海軍に直接パートで就職、日本従業員の為のプログラムと日本語用PCの設置扱いの指導等を担当、

 初戦は富士フレシュマン(スカイラインGTRのレース仕様)で出場、見事優勝、それからランクアップしながら数々のレースに出場かなり良い成果でした、それで結婚、奥さんが入院、レース活動中止に至った事、レース関係者に何とか継続出来ないか相談が有って残念がられました、後は先生に話したとうり、そんな話をした

 此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編3】へ続きます是非お読み下さる事お願いね


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編3】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

ストーリー【前編2】からの続きです是非下欄【前編3】をお読み下さい☆ 

 翌朝"、二人してマンション前にて、別れ、先生は紺のスーツで四角い大きな黒の皮のバックで、昨日とは別人、「先生、今朝は営業用の顔ですか?」 先生は悪戯坊主を叱るように「もう、リュウたら、それより、気を付けてね」 「はい、先生も」 先生はニッコリ笑顔で俺に歩みより手をとって「ええ!何か二人って!いいわね嬉しくなるわ・・行ってらっしゃい、本当に気を付けて、いいわね!」 「うん!」 俺は久しぶりに先生との事、伝えに母の所へ一晩泊り、富士に向かう事にした。

  俺の実家は横浜根岸の高台、競馬場跡付近にある、俺のマンションからすぐ坂を上がった所、 坂を下れば元町にすぐ出られ左に下れば伊勢崎町、真っ直ぐ行くと港の見える公園と外人墓地、 母とゆっくり話す事は珍しい、

 母に前の妻の担当医で以前からから世話になっている事、ひょんな事から、再会し親しく成った事など、「俺、結婚しょうと思ってるよ」 母「おまえが、決めた事だがら反対はしないが、住む世界が余りにも違う事、女性は男と違い傷つき易く、もう泣かす事は絶対許しませんよ、五つも年上の事考えて何年も先も愛して行けるか、二度と同じ間違いをしては、いけないよ、おまえは、直ぐに感情に流され易いから」 「もうー、解かっているよ」 「・・兎に角、近い内に連れて来なさい」 母は、口ではきついが、受け入れてくれた様子、内心ほっとし嬉しかった。

 また、これも言ずらいがレース再開と今週からビックレースにチャレンジ出来る様になった事を報告、流石に別れた奥さんの父からスポンサー援助の事は話せなかった 「お前は、父に似て、一度決めたら聞く耳を持たないから、あんなに安定した会社も辞めてしまって、本当は母も危険な事反対です、結婚を決めるのには相手の女性の事も考えなさい、どんなに心配するか、前の事で解かっているはず、よーく考えて、とにかく、気を付けてやりなさい」 叱られたが、一応了解を得、まだ俺の部屋が、其のままにしてある、やはり、母特製の散し寿司と稲荷寿司、肉ジャガは美味い。 

《富士スピードウェイ》 Fuji Speedway round 4 (06/28)  

fuji.jpg 今は立ち上げた、ばかりのジャパン・レーシング・アカデミー・チームのオーナーで有りチーム監督である北原から、今年のレースは全部で8戦前半3戦は先輩レーサーがドライブしていたが、家の事情でレース活動止める事になり、資金難も有り急遽、スポンサーの収得を条件に俺の起用となった

 この第4戦6月から俺にとってはビックレースのデビュー初戦になる、気持ちも高まり何時もの集中を取り戻し始めた、レース期間中は、スピードウエイに預けてあるチームのキャンピングカーの生活になるホテルでも良いが経費節約と気を使はないですむ、車の中の方が落ち着く、食事はレース場内のケータリングやレストランで何時でも取れ、風呂やシャワーも何時でも使用出来る

 翌日朝、横浜海老名から東名高速をへて、監督とメカニック・エンジニア達と御殿場でスクールのマイクロバスと合流、メカニック二人が俺の車に移動し、此処からエンジニアの井原くんに運転を変り俺は後部席でサーキットまで休む事にした、今週末の天候は余り芳しく無いが始めての俺の走りに期待を掛けて居る様で少しプレッシャーを感じつつ、東名御殿場から富士スピードウエイに向かった

孝ちゃんラブ2.jpg 車の中で、孝ちゃんが 「ねー、リュウ、毎回ビリで走っている人、如何して未だ走るの」 始めは質問の意味がわからなかったが、「いつも最下位で止めようと思わないの?」 「う~ん、人其々、考えが違うが、俺だったら、何時かは必ずトップに立ってやる、思っているよ、少なくとも皆そう思って戦っているのでは?」 「でも、明らかに実力に差がある事解らないの」 「おいおい!そこからが、重要だと思うよ、なにくそ、と思い相手の走りを研究して来る人、諦める人、幸ちゃんだって、そうでしょう、、皆より俺が早く走れる様に、調整、研究して誰にも負けないメカニックを目指しているだろう?」

 「まーね、私、機械が好きだから、それに機械、裏切らないからね」 「まーねて!孝ちゃんに俺の命預けているんだよ、ネジ一本でも緩んでいたら、俺オシャカ!だから頼むよ、何が有ったか知らないが、俺だって初挑戦だ、一番ビリになるかも、脅かすなよ!」誰かに裏切られたのかな? 孝ちゃん、笑顔で「リュウの為だったら頑張れるわ、昔の評判聞いているわよ、ダントツの連勝だったってね、びりになる訳無いでしょう、如何して辞めてたの?」

 俺は車の窓から遠くの山並みに目をそらし「まあー色々ね、..それより以前と今では全然違うよ、レギュレーションだってマシーンのクラスも違っているしマシーンの性能も格段良くなっているからそれに、このクラス初めてだよ」 察しの良い孝ちゃん、それ以上触れず「まかしてよね、リュウの事、好きだから、私も命掛けちゃう」 俺は苦笑しながら「命掛けなくていいから、ネジの締め忘れ無いように、俺の命守ってよ頼むよ!」

 運転席の井原君も、俺が話しかけなければ、自分から積極的に話をする人ではないが、ぼそりと話に加わった「孝ちゃん!龍崎さんは、ミスの無いように、確り点検して欲しいと云っているのだよ」 孝ちゃんは丸く大きな目を益々大きくして「それぐらい解っているわよ、リュウが素敵だから、解るでしょう!」 井原君「もう、泣いても知らないよ」 孝ちゃん「もう泣いているわよ、リュウ、冷たいから!もうーリュウたら狸き寝入りしているよ」 井原君「龍崎さんを困らせて、だめだよレース出来なくなるよ」 俺は可笑しくなり「俺、孝ちゃんの事好きだしマシーンの調整、技術力すっごいと思っているよ、だけど、ごめん!俺の女の好みとちょっと、違うな!」 「解ったわよ!好みに合う様にするから、どんな女が好き?」 井原君「こりゃ駄目だ!」 皆軟らかい顔になって笑い声えが飛び交っていた、もうスピードウエイ入り口のダンロップゲートが見えてきた

クミちゃん.jpg 俺らの弱小チームでも、監督兼オーナー(北原)、メカニック兼エンジニア(井原君&孝「コウ」ちゃん)この二人のマシーンの調整能力は素晴らしい、マネージャー権雑用(竹田君、通称タケちゃん)紅一点、事務兼タイムキーパー雑用(久美子、クミちゃん)計6名、その他監督が経営しているレーシング・スクールからの体験を兼ね生徒ボランテア5.6人後はスポンサーからのレースークイン3名、チーム全体では略12、3名位になる、一流チームはレースードライバー2名、レースカー予備も入れて3~4台の大チーム俺らの余に3倍から4倍以上の人員である

 富士スピードウェイに木曜の夜には各チームが集まってくる、大型トレーラー3,4台でマシーン(車)や工具、テント・椅子やテーブル、スポンサーの商品まで持ち込み、金曜朝には、各チームごとに決められたパドック(発車待機所)え準備を整える為に大忙しだ、当然俺達も準備に追われ、ケータリングのお弁当を取り、準備が一応終わったのが夕方の7時を過ぎていた、皆準備やマシーン調整に疲れた様で、早々にシャワーを取り、余り会話も無く宿舎に戻った、

北原 監督あ.jpg 翌金曜、街中と違い少しは標高が高い為か清々しい朝を迎えた、場内のレストラン朝食はバイキング、我らのチームクルーも他のチームも続々レストランに集まって来た

 監督の挨拶が有り 「皆さん、おはよう、今回から皆も知っての通り新しく龍崎君がドライバーを務める事になりました、今まで通り力を合わせ、戦いましょう、龍崎君挨拶を」やはり監督だ!渋めの顔で挨拶、長い経験と知識が滲み出る、チームの皆の引き締めになる

 「はい、これと言って改めて無いのですが、これから”リュウ”と呼んで下さい、何分にもFJは始めてのマシーンで始めてのクラスのレースですので、至らない処は遠慮なく、注意して下さい、もう一部の皆さんとはコミニケーションが取れていますが、皆さん一つなり頑張りましょう!、宜しくお願い致します」 監督とは何時もレース場かスポンサーの会社であっていた為、未だチームの事務所に訪ねた事も無く、クミちゃんとタケちゃんには初めての対面である、両人が宜しくの挨拶に来た、続いて我らチームのスポンサー達やレースクィーン、キャンペンガール等と挨拶を交わす、

  食堂に入った他のチームの人達も、新人レーサーを興味深げに眺め、大半は以前からの仲間や知り合いも沢山いて ”ヨォ!リュウ戻って来たね頑張れよ!、お手柔らかにたのむよ!” 等の声援もあり、皆さん拍手で歓迎してくれた、俺は照れ笑いをしながら、軽く手を振り頭を下げ答えた、少し気恥ずかしい思いをしたが、嬉しかった

龍崎ハイ.jpg 監督の眼鏡がキラリと光り俺を見詰め「おい、リュウ食事終わったら、各チーム監督と運営委員に挨拶だ」 「あ!はい、どうも苦手だな」 「リュウ、行かなければ、だめだ!」 孝ちゃん慌てて口を挟み「私リュウと一緒に行ってあげる」 監督「孝ちゃんは井原と挨拶がてら他のチームの偵察だ、何か新しい事が有るか勉強がてら、何気なく聞いて来い、遊んでる暇はないぞ、お昼は弁当になるクミちゃんに注文しとけ」 孝ちゃん膨れ顔で「は~い」 俺と監督は各チーム監督に挨拶廻りし、もう俺の噂は大分流れている様だ、それに以前からの知り合いもかなりいて、意外と挨拶も楽に終わった

 俺はコースのチェック、事前にコンピューターによるコース取りの再チェクに、気分転換も兼ね1時間位、コースサイドを歩いた、コースはドライ、路面もまだ新しく悪くは無い例によってブレーキングポイントとクッリピングポイントの目標チェックと再確認を行い

 パドックに戻り昼食をチーム・クルー達とお弁当を食べながら雑談後、マシーンの調節を手伝う、その頃、我がチームのスポンサーで営業の人達や監督のスクールの生徒達も研修も兼ね見学に集まって来て我がチームのピットも賑わっていた、其々挨拶を交わす

 井原君が真面目そうな顔をして、聞き取り難い低い声で 「前のドライバーの人は乗る時まで、全然顔も出しませんでした、それとリュウさんは的確にマシーンの状態を伝えて、調整し易いので、助かります」 孝ちゃんも慌て同意するように「それに、リュウに命に関わると云われ、ネジや孝ちゃんタイヤ交換3.jpgナットの一本まで気を入れてチェックしたり締め直しましたから」 「井原君、孝ちゃん、ありがとう」 孝ちゃん口を尖らせ両目を同時に使ってのウインク「ウッフン!リュウの為だもの」 「俺は機械物が好きだからね、それと、この方が気持ちが静まるよ、まぁーこれからも勉強の為、手伝させてよ、何時でも声かけてね」

 ..本当は機械も好きだが、このマシーンを自分の体の一部にする為の俺の儀式の様なもの..機械に接する事で愛着を感じるのだ..それに此のクラスになると、決してドライバーの技量だけで勝てるものでは無い総合力だ、..監督、張りの有る声で「今日から、一日目のフリー走行(practice)が始まるぞ!リュウ時間だぞ、レーシングスーツに着替えて来い」 「はい」 ピットの後ろに、駐車してある、キャンピング・カーでレーシングスーツ(オーバーオール)に着替えピットに戻り

ピット.jpg さーぁ、やるぞ、気合を入れて行こう、マシーンに乗り込み、タケちゃんと孝ちゃんに6点式シートベルトを肩に食い込ほど思い切り締めてむらい、二人にポンと肩を叩かれ、親指を立てながら、”グットラック”と声をかけてくれた 「なんだよ、英語かよ」 「今は、この掛声が一番合っているんです、リュウ、がんばってね~」 「おぉ、孝ちゃん、その声なにか力抜けちゃうな」 俺も親指を立て挨拶した、「もう~、リュウたら」 「分ったよ、ごめん、宮ちゃん、孝ちゃん、昨日から徹夜に近い調整作業、有難う、頑張るよ!」 宮坂君と孝ちゃん二人とも頭をうんうんと振り指で VサインやOKマークを示した

 ..さー、いよいよだ、冷静に行こう..ヘルメットをかぶりドライブ用グローブを確かめながら確り着用、メカニックが予備バッテリーを繋ぐ、俺は目を閉じ大きく鼻から込み、口からゆっくりと息を吐出し目を開き、マシーンのスイッチを入れ、祈る様にスタータアーボタンを押した、”キュルキュルキュル..ヒューフホォーン、フホォーン、フホォーン”腹に沁みるレーシングカー特有の高回転高圧縮の甲高いエンジン音が快く体に響く、待ちに待ち望んだ恋人に逢う様にステアリングを愛しげに握り、逸る心を押さえもう一度、目を閉じ、しばらく酔い痴れる、心の中で愛しいマシーンに向かって「宜しく!たのむ!」と語りかけ、静かに目を開ける、俺の闘争心も徐々に高まってくる

 話は違うが今、F-1の世界ではこのエンジン排気流まで又空力リヤーウイング(DRS・ドラック・リダクション・システム)に使う、凄ましさ、ブレーキまで発電(KERS・キネマティック・エナジー・リカバリー・システム、運動エネルギー回生システム)に使いその力を利用する世界だ、これはバレーやダンス等に使われる言葉だがカーレースでも使う足の指先と踵でブレーキとアクセルを片足で同時に操作しシフトダウンやアップのときギヤーをシンクロさせるが今では全てコンピューターで管理されていてヒール& トゥー(heel & toe)は過去の物になり始めている、マシーン開発に凌ぎ合う物凄い世界だ! FN(フォーミラー・日本)では日本のカー・レースの底辺を広めようとチャーシ(ボディー)の規格を一定にマシーンの開発費等を抑えF-2.gifているが、まだまだ大変です

 ..監督の手が上下に振られ、スタートの合図だ!俺は右手を監督に向け上げ親指を立て合図を送る、ステアリングに配置されているピットレーンリミッターボタンを押しステアリング・バドルでギヤーを入れ慎重にクラッチバドルを放しアクセルを踏み込む

 マシーンはパドックをゆっくりと走り始め、ピットレーンを規定速度にて通過、リミッターを解除し第一コーナーへ始めの周回はRPM(エンジン回転数)ダイヤルをバーンアウトにセット慣らしとタイヤを適正温度まで上げ粘着度を高める、タイヤの空気圧も適切に上がる、監督との無線通話も先ず々、コース取りの確認を頭で描く、ステアリングボタンで通常ドライモードに戻し、ステアリングパドルで序々にシフトアップ、水温、油圧、のチェク異常なし、最終コーナーをアクセルを踏み込みながら立ち上がる、監督からの予選タイムアタックの指示がイヤーホンから聞こえる

 いよいよ、最終コーナーをアクセルを床に張り付くほど踏み込み、速力を増しながら立ち上がる、長い間、檻に閉じ込められた狼がやっと解き放たれ獲物を追うかの様に、軽快な排気音を残しスタートラインを全速力で駆け抜けるマシーンと俺に取ってのベスト、ラインをコーナーぎりぎり、フロントタイヤが縁石をはみ出すまで攻める、頭で描いたライン通り正確に各コーナーを攻め最終コーナーでは、最大横Gが俺に襲い掛かる、マシーンが遠心力で外側に流れバランスが崩れた、微妙にステアリングで調整、緊張と集中時だ!アクセルを緩める事無く何とか建て直し通過出来た初回としては、まずまず、タイヤの内、外側の減りや温度を見ながら主にメカが足まわりの調整

 再度集中して少し最終コーナーのラインを変え再挑戦、今度は最終コーナーでブレる事無く走りきる”アジャスト アンド アタック”を三回、ベストラップを見る1’27.66秒、13組出場中5番手だ、監督はじめ皆、大喜びルーキーとしてはかなり良い成績、明日は他のチームも本気でアタックして来る、安心は出来ない。

 俺はこの期間が一番好きだ、レースで勝つ事も大事だが、チーム全員一つの目的に一丸となって、心の底でぶつかり合い、喜び、悲しみ、怒り、互いの心を、ぶっつけ、寄せ合い、分かち合う、一つの家族だ、主役が何人も居る大チームでは、其々の思惑も有り、そうも行かないと思う、久々に先生との巡り合いもあり、長い間、死似体だった俺は今この世に、この世界に生きている!、実感を強烈に感じていた、やっと俺が生き返った、やはり俺には、この世界が一番、帰って来て良かった

 「監督!昨夜からメカニックの皆んと徹夜に近い、作業と努力、感謝しています、有難う御座います」 「リュウ、これからが勝負だ、皆の期待を裏切るなよ!」 「監督プレッシャー!掛けないで下さいよ」 口の重い井原君が笑顔で 「リュウちゃんは、機械にも詳しいから、適切のアドバイスで調整し易く助かります」 「レーシングマシーンは本当に其々異なる動物の様に性格が違うから、馬のように調教して自分のものにしなければ、俺はその過程が好きだよ」 孝ちゃん得意げに「だから、熱心だよね、私的にサーァ、リュウのドライブ癖解ってきたわよ」 「凄いね、何だか恐いよ、心まで見透かされいる様で」 「だって、リュウの事、好きだもん、全部解ちゃうわよ」 「おい!おい、有難いが、俺、女好きだよ!」 「よく云うわよねー!..解っているわよ、それでも、いいのよ!」 皆大笑い

 「クミちゃんは彼氏いるの?」 クミちゃんとタケちゃんが顔を見合わせる 「はぁーはぁん、竹田君か?」 タケちゃんが頭を掻いている、 コウちゃんが「リュウの事だから、もう目を付けたのね、手を出しては、ダメよ、タケちゃんに頭から水掛けられちゃうから..」 チーム全体を和ませる奴だ、 監督何時もの渋みのある顔に益々重さを増した声で「サー、明日は最終公式タイムアタック、他のチームも真剣に来るぞ、もっと大変だ、引き締めて行くぞ!皆、今夜は早く休みなさい」

  《富士スピード・ウエイ予選/決勝 round4》

レースクイン1.jpg 翌日、メインスタンドの後ろは各メーカーの出店、Tシャツやワッペン、カー用品、フイルム、デジカメの記憶チップ等々や食べ物屋が沢山出揃ってコンパニオン、キャンペンガール、レースクイーン等で賑わい始めている、我がチームもボランテアの車好きと、スポンサーからのレースクイーンが集まり、大賑わいだ。

 新しく加わった、スクールの生徒達、レースやメカニックの体験学習も兼ねタイヤ交換等の指導や練習に大忙し、流石に車好きの生徒達学習能力も高くスムーズに運ぶ、他のチームでは常時その倍位のメカニックは揃えている、二日目の公式タイムアタックではコンマ何秒か短めたが他のチームも頑張り一台下がり六番目のスタート位置になってしまった、前回までは十位前後だったようだ、初出場では良い成績と監督に言われ、少しほっとした、二日目の夜はチーム全員で夕食会、

 監督「さー明日はいよいよ本番、皆さんも力を合わせ頑張りましょう、ご存知でしょうが、今回からドライバーに龍崎君を起用致しました、リュウは改まった挨拶が嫌いな様なので、其々始めての方は食事を取りながら、紹介を行ってください、では明日の検討を」 情報が入りどうやら、明日は雨の様だ、初のデビュウで雨か!、少し不安になるが条件は皆同じと、話題を変える、俺は生徒達1人1人に、握手と冗談交じりの挨拶を交わし、チームの仲間意識をたかめた

 俺はメカニックの横の席に戻り、リラックスするために「井原君には彼女いるのですか?」 孝ちゃん「井原さんは結婚しているのよ!、すごく可愛い奥さん、私には聞かないの?」 俺は考え込む様に「う~ん、いるの?」 孝ちゃん「何よ!その聞き方、いる訳無いって顔して、..いないに、決まっているでしょう、リュウ、一筋だから、もう分っているでしょう」 「だから、俺はダメって云ったでしょう」 「解っているわよ、もうリュウは女好きのスケベなんだから、目がレースクイーンにばっかり、行っているんだから、ダメよ!」 生徒達皆大笑い 監督、言葉とは裏腹に笑い顔で「孝ちゃん、あんまりリュウを困らせちゃダメだぞ」 孝ちゃん「もう監督まで、分かっています、明日雨の様うだから、締まっていかなくちゃ」 本当に彼の御陰で皆和やかになり、纏ったチームになりそうだ、

レースクイン7.jpg スクールの生徒の一人が俺に質問してきた「龍崎さんのライバルは誰ですか?、其れと、何方のチームですか?」 「まだ、このクラス俺は新人だよ、全員、全チームがライバルかな」 生徒「新人って事は、無いでしょう、前に噂良く聞きましたよ」 「此のクラスになると全員、それにこのレースで俺は新人だよ!誰と言う訳では無いよ、まあー、何時だって自分がライバルかな、先ずは一秒でも自分に勝つ事だよ!」 生徒「凄い!それでは目標のライバルが居ないと言う事ですか?」

 俺は苦笑して「違うよ!解っていないな!少しでも早く走れる様に、自分との戦いだよ、それに何時だって全員がライバルだよ、只、レースになったら何も考えず、目の前の獲物を追い詰めるだけだ、それと他のチームの事は余り気にならないよ、気にしても変えられないだろう、自分のチームに与えられた環境を最大限に生かす事、後は監督のレースの組み立てだよ」 生徒不思議そうな顔で何か納得がいかなそうに「そう云う物ですか?」 俺「他のドライバーの考えは、知らないが、現実はそんなにドラマチックな物では無いよ、..そうだなぁー、与えられた物を最大限に生かし、目の前の獲物を追うハンター、其れが魅力かな」 生徒「そうですか!でも何か解る様な気がします」

 いよいよだな、日曜日、本番決勝日、夕べは、流石に興奮して寝つけなかった、朝食を済ませ、小雨が降っていたが、俺は傘を差しコースの再チェックに出かけた、水溜りや滑り易い所を目標を見立て特に頭に入れコースを点検し歩いた、有り難い事に、雨にも関わらず、観戦者が合羽や傘を差し続々集まっている、念入りにコース一周しパドックに戻りかけた時、孝ちゃんが走り寄って来る 「リュウ、お客さんだよ、物凄く、綺麗なお姉さんが尋ねて来てるよ」 「誰だろう?スポンサーの人かな?」 孝ちゃんと歩きながらパドックに戻った

ヨシ子来ちゃった.jpg 驚いた事に先生が待っていた! 「リュウ、来ちゃった!..だってリュウの大事なデビュー戦でしょう!」 「先生!びっくりした!..ありがとう、この雨の中か、大変だったでしょう?」 俺はまさか来るとは少しも思ってもいなかったので本当にビックリ!

 先生、緊張した顔で「ええ、横浜駅から国府津、御殿場まで電車乗り次いで其処からタクシー、周りには人影も無く、山道を雨と霧で景色も見えなく、フロントガラスのワイパーの単調に忙しく動く音だけ、何か寂しくなちゃった!」 俺は本当に嬉かった「ごめんね、来るとわ思なかったから、嬉しいよ!」 やっと先生に笑みが戻り「私がハラハラしたり、恐がると思って、二度と前の奥さんの様に..あんな思いさせまいと思い、私に観戦して欲しいとは云へなかった事、解っていたわ、私は大丈夫よ!」 「考えもしなかったよ、来てくれると思っていなかったから本当に嬉しいよ」 チームの皆、如何したのか?興味ぶかげに眺めている、

 俺はあわてて..手のひらを先生に向けて「皆さんに紹介します、鶴見 佳子(ヨシコ)さんです、エート..」 先生は戸惑う俺を察し「紹介に預かりました、龍崎の..婚約者のヨシ子です、龍崎共々宜しくお願い致します」 俺の耳元で小さな声で「リュウ、勝手にごめんね、これで良かったかしら?」 俺は想わず、駄目出しの理由もなく頭を小さく立てに振った、俺は続けて「そう云う訳ですので、此れから、宜しくお願いします」 そうか、..俺から話そうと思っていたが俺の気持ちを知ってたかのように、結婚するつもりなんだ助かった..、

 監督初めスタフ全員拍手で歓迎してくれた、コウちゃんが目を丸くして「綺麗な人!この人がリュウの好みの女なのね!・・・メカの鈴木 孝三です、残念だけれど、..おめでとう!ねー、ヨッちゃん、て呼んで良いかしら?」 「えっ!」先生は俺の目を見、確認を取り 「はい、よろしいですが?」 孝ちゃんは手を出し「よろしくね」 先生に握手を求めた、俺も、あぁ、先生がヨシコと呼べと言うから困ってしまったが、ヨッちゃん、なら呼べそうな気がした、

 監督の顔も綻び、先生に握手しながら「北原です、婚約おめでとう、龍崎君は何も話していなかったので、驚きました、此方こそ、宜しくお願いします、龍崎君には期待しています」 俺は監督に向かって手を差し伸べ「俺のチームの監督でオーナーでレーシングスクールを経営しています」 と紹介し、続けて「以前からレースの大先輩で監督と同じチームで走った事が有り、間もなく監督はレーシングスクールを開設し声を掛けて頂いたもので..」 そんな経緯をへて監督の世話になる事などを説明した、ちょうど、お弁当の時間、皆其々自己紹介をして和やかに過ごした、

 監督が気を利かして 「リュウ、ヨシ子さんと一緒にレストランに行って来なさい、スタートは一時半だから一時までにレーシングスーツを着てきなさい」 孝ちゃんふてくされた顔で「リュウのお弁当頂いちゃうわよ」 「いいけど?食べすぎで肥るよ、いいの?」 孝ちゃん外人の様に肩をすくめ、両手を広げ「ヤケ食いよ!」

 俺達は場内のレストランで昼食を取りながら 先生は「リュウごめんね、リュウの了解も得ないで、とっさにあんな事言って、でも 私の本当の気持ちよ、それでいいの?」 「良いに決まっているでしょう!それに、初めから、そのつもりで俺を誘ったんでしょう?」 「ええ、リュウさえ良かったらって」 「ほんとに、助かったよ!、俺挨拶苦手で、俺もそう考えていたの、でも本当に俺でいいの?」 「私もリュウがそうしたいと感じていたの、それに普通お互いを知るために、もっと期間を得てからと考えるのに、不思議だわ・・何故かじっとしていられず、待っていられなく此処まで来てしまったの!」 「うん、俺から先生に結婚の事、話そうと思っていたんだ、此に来る前におふくろに合って、先生との事、話して来たんだ」 「リュウ、有難う、本当にいいのね、お母様、驚いたでよう」 「何時もの事だから、それほど・・そうだ!近い内におふくろに合ってくれる?」

 「ええ、そのつもり心配しないで大丈夫よ、リュウが私にレースの事、云えない気持ち解るけど、一緒に考えましょうって、云ったのはリュウでしょう、責める気は無いけれど、リュウが前に言った事と同じに一人だけで待っている事の方が辛いし寂しいのよ・・レースは恐いわ、でも、リュウを苦しめる事になるから、リュウと同じ夢追うの、いいでしょう?」

 ヨシ子良かった.jpg「あぁ、これから、そうするよ、強いんだね」 「ちがうわ、此処へ来るのだって、霧が出て回りは見えないし、雨は降るし、本当に寂しくなったし、心細く不安で恐かった、本当は弱いんだから!」 俺の肩によりかかってきた 「分かったよ、ごめん、さ食事して、着替えなければ」 「それと、さっきコウちゃん、孝三?男みたいな、名前ね?”残念だけれど”て、どう云う意味?」 「あぁ、あれね、アハハ、後で分かるよ、気にする事ないよ」

リュウ横顔.jpg 食事を済ませキャンピングカーに向かい車内で軽くキスを交わした、レーシングスーツ(ツナギ服)に着替える、先生が手伝いたいと、背中から腰に腕を回して来た、「それでは、着替え出来ないよ、帰ってからね」 「はい、今、大切な時だよね、でも寂しかったのよ、リュウの気持ち確かめられ良かったわ、さぁー着替えて」 防火用耐熱アンダーウエアー上下(厚手の耐熱タートルネックのシャツとタイツ)先生が後ろから手を貸してくれとても楽に出来た、

 「リュウ、お守り、鎌倉の鶴岡八幡宮で宮司様にお払いを受けて頂いて来たのよ、何処か身に付けて神主.jpgね」 俺は余り神頼みはしないが、お守りの絵柄は流鏑馬だ、きっと馬と車を掛 けての事だろう、先生からの初めての心からのプレゼント本当に嬉しかった 「ありがとう、嬉しいよ、付ける処無いからポケットに入れとくよ」

 これは蛇足であるが、俺は無宗教だ、これは日本人の良い所だと、勝手に思っている、俺だけかな?人は弱いもの、困った時の神頼み、それで良い、自分の都合のいい、心の神にお願いする事だ、他の人や他の国の宗教を批判するつもりは無いが、そのために争い殺し合い、又人の心の弱さに付込み、それを利用するカルト集団まで出てくる始末、単純に考えても何か間違っている、群れなければ生き伸びれない人間の性なのか?俺は各々の都合の良い自分なりの心の神に願えば良いと思っている、俺は今勝利の女神に祈るだけだ、話をもどそう

 ソックスも防火用その上に此れも防火耐熱お守り.jpg繊維で出来た、レーシングスーツそして車に乗る時、頭から覆面レスラーの被るようなマスクにグローブこれも防火耐熱用、此れだけでもそうとう夏には暑いそれにレーシングシュウズとヘルメット 「リュウ、凄く、かっこいい!、中に沢山着るのね、ROLEX daytona Na116523-1.jpg知らなかった」 「安全の為だよ、でも夏はかなり暑いよ」 俺の外した腕時計デイトナを受け取りながら「本当にカッコ良い!ねー!リュウのこの腕時計、私に頂戴!」 「エー!これ俺がレース始めた頃、どうしても欲しくて高かったけれど、無いお金出して、外人に頼んで、取り寄せてむらったものだよ、それに男物でゴツイし外側のケースは普通は板をプレスして加工した物のだが、オイスターと言って分厚いシルバーゴールドを刳り貫いて作った物で重いよ、裏に俺のイニシャル入っているから」

 「だからなのよ、リュウが大事にしているからこそ、頂きたいの!代わりにリュウの欲しい時計買ってあげるから、お願い!」 「うーん、じゃぁーいいよ、代わりは要らないよ」 「嬉しい!いいのね、ありがとう!リュウと思って大事にするわ、本当にいいのね!」 「うん、いいよ、大事にしてね」 先生は嬉しそうに、自分のカルティエ・パシャ・クロノの時計を外し、付け替えた「うん大事にする有難う、これ患者の脈拍、計るのにもいいね」 「先生の時計だって脈計れますよ」 「これが、いいの」嬉しそうに腕に付けた時計を左右に廻し眺めている 突然俺の首に腕を巻きつけ、頬にキスをして「大事にする、ありがとう」 「さー!そろそろ時間だ、行こう!」

 キャンピングカーを出てパドックに向かう途中、子供達のサイン攻めに会う、五、六人サインをし 「ごめんね、もう時間無いんだ、また後でね」 「リュウ、人気者だね」 「彼ら誰でも良いのだよ、レーシングスーツ着ていたからね、それとレースのプログラムに顔写真載っているから、..さぁー!気合入れて行かなければ、初戦だからね!」 「この雨でもやるの?」 「大抵はね」 「恐く無いの」 「皆に聞かれるが、恐いと思ったら、もう乗れないよ」 本音は時として少し恐いと思うが、自分を信じて走るだけ、本当に恐怖を感じたら、体が動かなくなり、危険である、もう車には乗れなくなる、幸い少し空が明るくなって来た、我がチームのピットに戻り、ヨシ子を久美ちゃんに預け

FujiRyu.jpg レースクイーンにスポンサーからの宣伝用ビッグパラソルを差され、皆からデビューと婚約を祝福と励ましに肩や身体を叩かれ、テレながらコース上のレース車に向かい乗り込む、井原君や孝ちゃんに安全ベルトを締めてむらい、大きく息を吸い込む、誰しも感じる事だろうが、この時間が、一番嫌いで、他のドライバーが百戦練磨の強者に見える、俺が一番早いんだと自身に言い聞かせ、目を閉じてステアリングを確り握り暫く精神統一し雨のコースを心の中で復唱

 いよいよメカニックはエンジンをスタートさせる為のバッテリーを繋ぐ、本番エンジン・スタートだ、けたたましく全車一斉にエンジンの排気音が響く、多分耳元で大声話ても何も聞き取れない位のけたたましさだろう、俺にはヘルメットと耳栓替りのイヤホンをしても微かに聞こえる、この時ステアリングのボタンの確認や操作は色々有り、一番忙しいレインポジションに合わせる、メカニックやレースクイーン達がパドックに引き下がりグリーンライトが点灯しペースカーが走り出す

 フォーメイションラップ雨の中お披露目とウォームアップ走行が始まり、水飛沫で前が見えない、俺は前車の微かに見えるテールランプを追いながら走る、雨の場合はローリング・スタートになる、先導車が判断してスタートの混乱をなるべく防ぎ事故を起こさないためレース・カーを予選順位に走らせながら安全を確認し先導車が退きスタートを切る、雨飛沫が視界を遮りコースの下見所ではない、普通は一周で終わるが雨の為7,8周天候の様子の指示を受けながら先導車に従い走る、天候の悪化、雨が強くなりコースアウトする車が多く、一旦、全車ピットに戻り、運営委員より一旦スタートを見合わせ、中止か続行か様子を見、判断する事になった

雨スタート.jpg 暫くそのまま天候の回復待ちで、雨が小降りなり空が明るくなり始め、再スタートに決定だ、俺達チームは監督の指示で燃料を満タンにする 「リュウ、これで、給油無しで走りきるぞ、無闇にアクセルを踏み込むな」 不思議に思ったが「分かりました」燃料が少ない方が車体が軽くなりスベリにくなるのに?後で監督のこの作戦が当たる事になる、タイヤも冷めない様に再びウオーマーで暖め再スタートを待つ、天候は回復に向かって再び各車ピットロードを走りスタート位置に並ぶ

監督&ヨシ子・ピットにて1.jpg グリーンライトが点き、再スタート、コース上から先導車に従い、本来は温度を上げ路面との粘着度を高めるが、その必要は無い、レーンタイヤである、水捌けを良くする溝が有る為に状況による、スタート位置に付く前に一台コースアウトし最後尾からのピットスタートになる、自動的に一台繰上げ五番目位置だ、此れまで何回スタートを迎えた事か、スタートシグナルが付くまでが心臓が飛び出す位高鳴る、俺の記念すべき再デビューは最悪の雨か、前後左右のドライバーが超一流の強豪ドライバーに見える、きっと皆俺と同じだと不安を断ち切ろうと思うが、そうもいかない

 全ての不安を打ち消す為大きく深呼吸する、マシーンを雨用スタートポジションに操作、シグナルが青に変わり、ローリング・スタート先導車の後に予選順位順に緩やかに続き戦列を作る、たぶん一週でスタートだろう、コースの終盤、最終コーナーで前車との間隔をつめる、先導車がピットロードに退く、予選一番の車両(FJマシーン)がスタートラインを過ぎた時点でレースの始まりである、最終コーナーを速度を上げ立ち上がり

 さーぁ、スタートだ、”おちつけ!”前車に集中する!クラッチバドルを静かに放しクラッチを繋ぎ、ギアーを一段上げ徐々にスピードを上げる、スタートライン通過!何時もより静かにアクセルを踏み込む、雨でタイヤがスリップしない様にだ、前車に離れない様に上出来のスタートだ!この時すでに俺の不安は消え獲物を追う狼に変わる、水飛沫で前が見えないが前車に襲い掛かる様に第一コーナーに飛び込む、前車を捕らえた!、横に並び込む、此処が勝負処だ!

 雨.jpg少し相手よりブレーキをギリギリまで遅らせ同時にシフバドルで2段跳びのシフトダウン、エンジンブレーキを併用し、勝負を掛けた!、車体半分位の競り合い、タイヤのスリップが起きない事を願いながらステアリングに集中しアクセルを静かに踏み込む、何とか前に出、慎重にテアリングを操作しコーナを抜けた、よし!、このまま落ち着いて行こう、そのまま抜き去った後続車を押さえ、少しずつ離す事が出来、何週か前車との距離を短締め様と焦るが、車が安定しなく真っ直ぐに走る事さえ困難だ、前車との間、なかなかちぢまらない、焦る心が招きコースの水溜りに乗り、瞬間、車が思わぬスピン”コントロールする間もない、あぁー此れで終わり!”と思ったがコースをはみ出す事も無くコース上に一回転、幸い走る方向に立ち直ってくれた、..おぉ!ラッキー助かった!

 幸い後続車に抜かれる事無くそのまま進むことが出来、一安心、あせるな!自分に言い聞かせ神経を研ぎ澄まし、バケットシートから尻と背中に伝わるマシーンの微妙な挙動を感じ取り、アクセルとステアリングに集中して何周か走る、カーブもなるべく前車の轍に沿い乾いた所を選ぶ緊張感で何時もの倍以上の神経を使い疲れを感じる

 監督から無線で燃料を持たせろの指示、余りアクセルを踏み込むなの意味、途中雨がひどくなり、何処かで事故が有ったのか?処理の為ペースカーが入る、少し気持ちを休め緊張をほぐす、監督より「雨でスリップ2,3台コースから飛び出した様だ慎重に、我慢して走れ、いいな!」 「はい」 全車ペースカーの速度に合せ、ペースダウン、前車に近ずくが後ろからも真後ろに迫って来る、スタート直後状態に各車が犇き合うが規定により其の時の順序を守り抜く事は出来ない、6周回後ペースカーが退き、

 各車一斉にスピードアップ、あせるな!あせるな!自分に言い聞かせ、アクセルペタルをおもきり踏み込みたいが、我慢、我慢、一瞬のミスで全てを失う、ステアリングに集中する、バックミラーに後続が写し出され迫って来る、慎重に行け、水の溜まっているコースを避け走行する

 監督から又連絡、「前の二台がスピン、コースアウト、二番手だ!そのまま、燃料をセーブしろ!」 「解りました!、前が見えない」 監督「皆、同じだ!あせるな!」 又もペースカーだ、だが雨の滴で後続車が歪み擦れてバックミラーに見え隠れする、4周後にペースカーが退く、アクセルを静かに踏んだり緩めたり、なるべく水の少ないコースを選び走る、後続車と距離とるヒヤヒヤだが相手も慎重で、仕掛けて来ない!長い、後、何周だ「監督!後、何周ですか?」 「後8周、我慢しろ」 長い!レースがこんなに長く感じた事はなかった、雨F.jpgほとんど前が見えなくなった、ヘルメットのカバーバイザーの汚れた最後のステバイザーをむしり取り投げ捨てる、さぁーもう少しだ、気を抜かず行くぞ!後7周、後6周....5..4フーゥ、何とか燃料をもたせ最後まで走り切り、待ちに待ったチェカーフラグだ、ゴールラインを過ぎ思わず、大きくため息が出る「フー!終わった!..まったく、雨でハイドロプレーニング、氷上との戦いの様だった」 レースと言うより、綱渡りの様な曲乗りと我慢比べのようだ、通常のレースより数倍疲れた

 監督からリュウ良くやった二番だ、無線の声がやたら大きく聞こえ喜んでいる様子が解る、この雨でも観客が多く、熱心に声援を送ってくれる、俺は手を上げ拍手に答えながらゆっくりゴールの指定場所まで走る

 チームクルーと喜びを分かち合い手を握り合い 「ありがとう、ありがとう」 繰り返すしか何も浮かばなかった、先生も涙ぐみ喜んで抱きつき 「リュウ、こんなに興奮して歓喜し感動した事なかったわ」 「ありがとう、先生のお守りのせいかな」 としか言葉が出てこない、走りきった感動で頭の中が真っ白だ! 孝ちゃん「先生は、両手を合わせ額を押し付け祈り通し、だったわよ」 先生は監督やメカニックと俺との無線のやり取りを体験して、まだ興奮した様子で「レースって、監督やエンジニアの井原くん、孝ちゃん、皆さんの助けがあって、成り立つのよね、改めて本当にリュウの事、宜しくお願いします」まるで息子を気使う母親の様にクルー達に何度も頭を下げていた 俺は照れくさくもあり「先生、皆、解っているから、もういいよ、・・皆!、本当に、ありがとう」

 ラッキーにもデビュー戦で表彰台に立つことが出来た、案の定インタビュウー、苦手だ、俺は、ただ々我慢のドライブだった、監督の作戦とクルーの皆さんの努力に感謝するとのべ、早々に退散、

 又、この後、全チームと関係者のパーティが有る、ここでは、この後、車で帰る人など居るので、お酒は無理に進めたりしない、各チームの交流会が目的で、この時ばかりは和気藹々、他のチーム監督から良いドライバー見付けたの連発、監督も鼻高々の様子、俺は偶々運が良かっただけですよ、皆さんのチームドライバー、早いですよ、まだまだ、教えて頂く事沢山あります、宜しくお願い致しますと挨拶廻り、本来なら、自分を売り込むチャンスの場であるが、俺の性格余りそうした事をしたくなかった、一段落付いた処で、俺は監督に、ヨシ子さんは明日仕事が有りますから、先に送って帰りますので、後の事お願いして帰る事にした、チーム全員に送られ、なんだか、気恥ずかしい思いであった、

 帰りの車の中 「運転疲れていない?代わりましょうか?」 「平気だよ、先生の運転の方が疲れるかも」 「馬鹿にしないで!」 「ごめん、先生だからって事ではないよ、この道はもう数えきれないほど通った道だよ」 「リュウだったら、本当かもね、私もほかの子の運転恐い時があるから」

 「リュウ、レースの時、水飛沫であれでは何も見えないでしょう、どうやって走るの」 「どうて?、前の車の轍の跡とテール&ブレーキランプ、後は俺らのクラスの同等腕、前の人を信頼するしかないね、後は微かに横の景色、雨のひどい時にはハイドロプレーニング現象が起こりコースはアイス・バーン(氷の上)の様に成る時も有るよ、そんな時は中止になるよ」

 「とにかく、ひやひや物、もう夢中で手の中汗で、びっしょり、あんなに興奮した事、何年振りかしら、リュウが夢中になる気持ち判ったわ、表彰台に立ったリュウ、素敵だったわ」 「ありがとう、たまたまだよ、そんなに甘くないね、皆凄いや!今日は本当にラッキーだったよ、前車がつぶれ早い人がリタイヤしたからね、走って痛感したよ、やっぱり凄いね全然追いつかなくて」

 「それでも、かっこ良かったな、..それと、孝ちゃん?面白い人ね、.GID.ごめん云直すわね..性同一性障害? リュウの事、好きなのかな?」 「専門用語なんか出る処なんか、先生だね、..俺にも解らないよ、本気か冗談か、本当に解らないよ?..とにかく、良い奴?..奴と云っていいかな~ぁ、その辺は孝ちゃん自身解っていると思うよ、そうやって世間と自分と戦って来たんだ、とにかくチーム全体を和やかにしてくれるし、車の調整技術は抜群だよ」

 「そうよね、苦しんできたのよね、皆良い人達で気を使って頂て、今日一日で皆さんの好意感じ好きになったわ、皆と話せる様に車の事、もっと勉強しなくちゃ、リュウ、沢山の綺麗なレースクイーン?に囲まれちゃって、少し焼けちゃたな」 「大丈夫だよ、先生の様な優しくて綺麗な人いなよ! あの脳内メーカーで調べれば、俺の頭の中は全部ヨシ子、ヨシ子で墨の処に少し車かな、ほとんど思考力ゼロになっているよ」 「ほんと?冗談でも嬉しいわ、少し眠くなったみたい」

 「本当だよ!、朝から大変だったから、今日はありがとう、お守り仕事終わってから鎌倉に行って来たの?シート倒して寝なさい、もう、家まで後一時間半位かかりそうだから」 「そうよ、神主さんが居る内に、急いで大変だったのよ」 暫く無言が続き「..zzz」 「もう寝ているのかな..本当に疲れていたんだ、此処へ来る事だって、大変な事だからな..」

 先生の寝顔を見て、朝から電車を乗り継ぎ、雨の中、あんな寂しい山へ、俺のデビュー戦だからと一生懸命、俺の選んだ世界を知るために、違った環境の人達と懸命にコミュニケーションを取って、本当に疲れてしまったんだ、..なんて可愛いんだ!.. 前とは違った意味で、先生を守らなければ、今度は俺達の為に、そう思った。

 先生と俺は似たような、環境で育ち、俺は世間と教育者の親に大好きな故に、矛盾しているが反発を覚え、道を少し外れてしまって、ようやく、たどり着いた処が先生であり、又 先生も、自身のこの生き方が何か違うのではないかと、疑問を持ちながら、俺にたどり着き、今度はお互い心の底から全てを分かち合えると感じた

 無事到着、マンション駐車場で先生を起し 「あら、もう着いたの、朝出かけた時より全然早いわ、リュウの運転、安心出来るし、今日泊まって行くでしょう?」 「はい」 「こんな気持ち生れて初めて、もう、毎日、寂しくて、リュウなんか車の事で、私なんか忘れていたでしょう?」 「そんな事無いよ!有る訳無いでしょう、とにかく荷物降ろそうよ」

 女の人は何て感が鋭いのか、見抜かれているようで、少し戸惑った、確かに先生が来るまで考えも見なかった、多分先生に関しては安心していたのかも 「リュウ、洗濯物沢山有るでしょう?持って来て」 部屋に入り、何かほっとした、自分の家に帰った様に 「リュウ、此処に移って来ない?あれから毎日、会いたくて寂しくて寂しくて、眠れなくて、夕方毎日ジョギングしていたのよ」 「いいの?良かったら、そうするけど、明日、久しぶりに、バイト先米軍基地に行こうと思って、朝から行って、仕事終わったら、本牧の俺の処から取り敢えず必要な物、持ってくるよ、本当にいいの?」

 「うれしい!良いに決まっているでしょう、じゃぁ、夕食用意して待って居るから..リュウはお肉好きだからハンバーグで良いでしょう」 ..あぁ、俺に優しく待っていてくれる人がいるのだ!愛する人の元に返れるのだ!..幸せの中にどっぷり浸かって、それが普通の出来事と思っている人には解らないだろうが、これほど嬉しく安らぎを感じた事はなかった、 先生と俺は何と、波長が合うのかと思った..昔ならレーシングクルー達と勝利の美酒で一晩中騒いでいたが、今は俺も変った、普通なら何所か高級レストランで二人の出発を祝いたいはず、でも誰にも邪魔されず、全て手作りで、二人の門出を祝いたいと思ったからだと思った、俺には最高のプレゼント!

 「いいね、明日楽しみに帰ろう」 「余り、料理した事、無いから美味しく出来るか解りませんよ、それと遠慮しなくて良いのよ、洗濯物出してね、明日、洗って置きますから、..はい、コーヒー出来ましたよ」 「有難う、リビングで飲んでいい?」 先生も缶ビールの蓋を開けながら「どうぞ、私もビール飲んで良いかしら?それとリュウのレースのスケジュール教えて」 先生としての一面だけ知っていたので、家の事は何もしないと思っていたが、意外と家庭的で驚いた

 「うん、予定書いて冷蔵庫の扉に張って置くよ、取り敢えず次は鈴鹿で7月11,12日だよ」 「そう、じゃあ来週土日、空いているね?」 「うん」 「じゃあ、私の両親に会って頂ける?連絡して、おきますから」 「はい、日にちは、どっちでも、良いよ、何か緊張しちゃうな!」 「大丈夫よ、心配しないで、じゃあ、明日、両親に連絡取っ手おきますから」 缶ビールを高く上げ「それと、改めてリュウのデビューと入賞、おめでとう」..先生ビールを一口「あぁ、美味しい!」 俺はコーヒーカップを上げ 「ありがとう」

横須賀基地.jpg  翌朝先生は病院へ、俺は横須賀米X軍基地( FLEET ACTIVITIES,YKOSUKA(通称、Base-ベース)に休みのスケジュールは前もって定出、了解を取って有るので、心配は無い、勤務するオフィスに入り俺のボス、大柄でデブでとにかく明るい、Mr: Samuel(サミエル)、通称サムにレースでセカンドポジションで在った事を報告、外人は大げさだ、オフィス全体聞こえる大声とアクションで"congratulation"皆も拍手で喜んでくれた、 同僚に仕事のスケジュウルを聞き、改善するPCプログラム変更や日本人の事務員の表計算等のPCのアップデートを行う、一通り終わり事務員と雑談中

 「Hi! Ryu, Long time no see you. Do me favor for check my PC?(ハイ、リュウ、長い間見えな かったね、私のPCもチェックして下さい)」 「ハイ、ミス、パトリシア元Tボーンステーキ.jpg気していましたか?あなたのPCは外人サイド、デイブに頼んだら?」 「ちょと、だから、お願い見て下さい」 PCの画面を見ると、I miss you so much!..invitation to T bone steak dinner at military officer's club..(逢えなくて、寂しいわリュウ、今晩ベース内の将校クラブ・レストランで、Tボーン・ステーキご馳走するから行きませんか?) とタイプしてありました、とっさに 「So sorry, I have an appointment today, I must be going to another place. If you like next time. ごめん、今日は他に約束があるから帰らないといけないから、次の期会いにね」 ちょと残念そうでしたが 「OK! Next time that.. feel regret」

 軍の将校の娘さんで、綺麗で可愛い、時々俺を誘ってくる  同僚の平井君が、察しているのか 「デートしたら良いのに、何かと将校の娘さんだから有利になるのに」 俺は内心、損得で恋愛出来るかよ!、と思ったが 「俺はダメだよ、平井君誘って見たら?」 「私ですか?ダメですよ相手にされないすよ」 「なんなら、俺、話してみようか?」 「ダメダメ、だめですよ、止めて下さい」 「そうか、男と女解らないよそのうち、誘ったら?」 間もなく退社時間になったので、今日は急いで帰り支度をして 

有難う御座いますストーリ【前編4】へ続きます是非お読み下さる事お願いします


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編4】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

 ☆=ストーリ【前編3】からの続きです、是非下欄【前編4】をお読み下さい=☆ 

 横浜本牧のマンションに向かい、取り敢えず、必要な着替えや剃刀、ローション、ノートPC、靴、スーツ等 後デスク形PC等は後にする事にし、少しでも早く会いたくて、休む事無く折り返し金沢文庫、柴町の先生のマンションへ ドア、ホーンを鳴らし 「宅急便ですが、ハートマークの、お届け物です」 「はーい、リュウ、今開けますから」 なんだ!又、判ちゃったか、内側からドアを開けながら

 「お帰りなさい、ハートはリュウ以外ないでしょう」 先生の声に、何か凄く平和で安らいだ気分で安堵感を覚えた、今までは帰っても、俺が守らなくてはと思い安らぐ事などあまり出来なかった、決して、前の奥さんが悪いのではなく、かえって、取り返しの付かない、それが間違っていたとしても、俺なりに愛していたのに、悲しみを与えてしまって、本当に可愛そうな事をしてしまった、他の接し方が有ったのではないか、解っていながら如何にもならなかった、今でも心が痛む!

 俺自身の問題だ、もうポニー直ぐに.jpg何時までも、くよくよ考えるのは止そう、先生にもどちらにも、悪い!..もし、これが初めから先生に出合っていたのなら、あたり前に思え、こんなにも感謝と感動はなかったであろう、このなんでもない普通の営みが、こんなにも大切に感じられ、ある意味、良かったと思った ”あぁ、俺に、こんなに、安心して、帰る場所が出来たのだ、なんて幸せの事か!”

 「ただいま、お肉の匂いたまらないな」 「もうすぐ仕度出来るから、取り敢えず、荷物、空いている部屋に運んで、終わったら手を洗って、此処に座ってね」 「OK、すぐ終わるよ、とにかく喉が渇いたな!」 荷物運び終わって、 手を洗いダイニングテーブルに付くと

 サラダにオニオンスープ、グラタン、フランスパンのスライス、先生は冷蔵庫からシャンパンを取り出し 「リュウ、開けてちょうだい、半日で帰らせて頂き、準備したのリュウ、ワイングラスにシャンパン注いで」 栓が飛ばないように押さえて抜いた、俺と先生のテーブルクロスに並べられた二つの小ぶりのワイングラスに注いだ、琥珀色の液体に微かに細かい泡が次から次えと幾つも弧を描いて立ち上がり、シャワシャワ音を立て弾けている

 先生のこぼれ落ちそうな笑顔で「さーあ、今日から二人の門出よ!、リュウ、宜しくお願い致します」 俺も連られ笑顔になっていた「俺こそ!、こんな準備してくれて、本当に嬉しいよ」 先生はワイングラスをしなやかな指先で持ち上げ「リュウ乾杯しょう、これからの二人の幸せを願って乾杯!」 俺もグラスを差し出し「・・・乾杯!」 ヨシ子のグラスと合せた、静かな部屋にチーンと澄んだ音が広がり、数々の乾杯が有ったが、此れほど心に染み渡り共鳴し何故か感動さえ感じ、ヨシ子も同じ様に感じたのだろう、互いに暫く見詰あった、・・最初の一杯は喉の渇きのためか、炭酸が快く一気に空けてしまった

 先生は俺のグラスに二杯目を継ぎ足しながら「リュウ飲めるのね、改めて宜しくね」 「俺こそ、急いで帰って来たから、喉が渇いて、それに今日はもう運転しなくて良いからね、安心して酔っちゃうかも」 先生は目を優しく細め「嬉しいわ、真面目なのね、リュウって酔ったら、如何なるのかしら?」 「さーね、車の仕事だから、余り呑んだ事ないから、少し笑い上戸かな?解らないよ」 「酔わしちゃうかな!今日は止めとこうと、この後大事な事あるからフッフ」 「だよね」 「ねー、味に自信ないけど、召し上がって、誰にも邪魔されず二人だけで、新しい出発を祝いたかったの!」  

グラタン.jpg 「美味しいよ、幸せをかみ締めなくちゃぁー、..このオニオンスープにピザ用チーズある?」 「有るけど?」 「怒らないでね、そのフランスパンにガーリックバターぬってトーストしてからオニオンスープに浮かし入れてチーズたっぷり乗せて三、四分位チンするの、もっと美味しくなるよ、其の方が良いでしょう」

 「本当、美味しいわ、リュウ如何してこんなに知っているの?」嫌な顔もせず、素直な人だ 「うん、自炊が多かったせいでしょうでも、和食は全然駄目」 「それにしても、良く知っているわ、教わらなくてわね」 「そんな事ないよ、ヨシ子こそ、此れだけ出来るだもの、勉強ばかりして、他の事は正直あまり出来ないと思ったよ、本当に美味しいよ!」

シーザーサラダ.jpg 「さー飲んで、俺、先生と会え本当に嬉しい、こんなに、和やかに出来る日が来るなんて、思いも依らなかった」 「私もよ、学生の時、お母さんの言う事、聞いて料理習って良かった、リュウとだと本当の自分になれ、心から休めるの、それとね、リュウがどんなに怒っても、私の胸の中で眠っている、リュウを思うと、何故か全然恐くないの、信頼しているから」 「なんだ、全然子供みたいだね」 「子供と違うわ、肉親の様な、本当に心から裸になれるの、身も心も、て云うけれど本当にそうなったから、リュウが疲れたら、休めてあげたいの、リュウはそんな気持ちを抱かせるのよ」 きっと俺以上に俺の事を、愛おしく、感じていてくれたのか、と思い、

 「そうだと思った!、俺があんなに素直に安らげるなんて、何の恐れもなく全てをうけ入れてくれたから」 真面目な顔で「私もよ、何が有ってもリュウから離れられないよ!、覚悟して!な~んてね」 「おぉー、恐いな」 「そうそう、今度の土曜日、私の両親に合ってね、連絡してありますから、あ!それとハンバーグ、オーブンに入っているから出して」 

ハンバーグ.jpg 多分、俺のハンバーグと思うが先生の倍以上の大きさだ 「この大きいのが俺の?」 「違うわよ!大きい方が私、実はね、私大食いなの、..驚いたフゥフフ違うわ!、大きいほうが、リュウのに決まっているでしょう、驚いた?」 「だと思ったよ、でもTVで大食いの女の人見たから、まさかと思ちゃった」 俺は真剣な顔で「うん!このハンバーグ変だぞ!すごく塩からい」 先生は驚き「え!本当?」 俺はニヤリとして「嘘ですよ! 今の仕返し、凄く美味しいよ、本当、美味しい!」 「もう!リュウは」 

 「ねー、コウちゃんが言った、ヨッちゃんって呼んで良いかな?それなら呼べそうだから」 俺の顔を真っ直ぐ見て「リュウ、がヨッちゃんって、呼ぶの可笑しいでしょう!、ヨシ子って呼んで見なさい!リュウは私の旦那さんよ!なにか遠慮が有ってよそよそしいでしょう!」 何か有ったのかなぁ?まぁーいいか、質問はよそう「じゃあ、ヨシ子、コーヒー入れて」 「ハイ、旦那様、直ぐ入れて来ます、ほら云えば簡単でしょう」 本当に楽しい一時を向かえられた

 翌日から、俺は先生をヨシ子と呼ぶ事にした、ヨシ子は病院、何時も整った服装だ、俺はベースへ勤務、ヨシ子にも説明したが、外人の兵隊の中ではスーツは対象的でチグハグだ、軽装で十分、返って、浮いてしまう職場の殆んどの外人達兵士や軍属はラフなスタイル、Tシャツで軽装だ

 土曜日を向かえ、二人して久しぶりの休み、のんびり休み、朝、海岸沿いに軽くジョギング中、「私ね、以前から考えていたのだけれど、心臓も大事だけれど、リュウと知り逢って、もっと精神医学の勉強したいと思ったの、これからは、世の中がもっと複雑になり、人間関係も色々、心理学も必要よ、今回、私もリュウも一つのきっかけで解決出来た事もあるでしょう、今直ぐと云う訳ではないが、どう思う?」 「凄く良いと思うよ、何時だって応援するよ、俺の事となら何の心配も要らないよ、ヨシ子が目標の有る俺が好きだと思う様に俺だってそう思うよ」 「ありがとう、又その時が来たら相談するね」

 朝食を取り 「リュウ、朝は、野菜サラダとリンゴ、バナナも確り食べてね、頭の回転が良くなるから、今日午後から両親の家に行きますよ」 まるで、子供扱だが全然悪い気がしない、むしろ、揺ったりした安らぎを覚える 「うん、俺、スーツ着て行った方が、いい?」 「そうね?、初めて会うから、其の方が、良いと思うけど、リュウの好きにしていいのよ」 「黒のTシャツにチャコールグレイの明るいスーツでノーネクタイにするよ、それで良いでしょう?どうも、首絞められるの、ダメなの」 「リュウは皆と違って少し変わっているけど、目立ってセンス良いよ、それカッコ良くて、とても似合うわよ」

 「私もリュウ合わせて黒のスーツにタイトスカートにしょう」 「それって、何処かの大企業の社長秘書みたい」 ヨシ子は訝しげに「リュウ、この洋服嫌いなの?」 俺はニヤツキ「そうじゃないけど、かっこいいよ!眼鏡かけたら、フフッちょっと違う事想像したから」 「なによ、なに考えているの?、おあいにくさま、目は悪くないわよ、其の顔、解かったわ、リュウ、エッチな事考えているでしょう!、それぐらい分るわよ!」 「それだけカッコ良く、魅力があるからだよ」 「また誤魔化して」

 「早めに出て、お昼、何所か外で食べよう」 「リュウにお任せ、どこでもいいわよ」 「じゃ、この近くの釣り船屋の近くで漁師の旦那と気さくの奥さんが夜は居酒屋で、昼間食堂やっていて、焼き魚や煮付け、やって居る所で良い?」 金沢八景の野島公園に近い所で、魚料理は余り好きではなかったが、其処のは新鮮で料理も旨く何より処理もよく生臭くなくて、俺好みで以前良く通って所である  

太田屋.JPG 居酒屋の看板の前で水を打っていた、人の良さそうな女将さんが俺を見つけガラガラ声で 「リュウちゃん!リュウちゃんじゃあない、如何したの、此処のところ顔出さないから?」 「こんにちは!」 「今日は、じゃ無いよ!心配していたんだから、あら、其方の場違いの綺麗なモデル見たいなお嬢さん!リュウの連れ?」 「ええ、先生でお医者さん」 「まーぁ、モデルさんかと思ったよ!」 「久しぶりに、お昼、食べに来たよ」 「さー、そんな処に立って居ないで内へお入り、其方のお嬢さんもね」 先生、圧倒された様子で 「宜しくお願いします」 が精一杯の様、中は畳の席で、大きいテーブルが6席、それにカウンターがL字に10人位座れる、まだ時間が早いので俺達だけだ、 カウンターの席の真ん中に座り 

伊勢海老の味噌汁.jpg 「今日は、おばちゃんにお任せだよ、お願いします」 「はいよ、リュウおばちゃん じゃ、無いだろう、おねーさんでしょう!」 奥から漁師の旦那が 「久しぶりだな、リュウ、何していたの」 「又、車の方へ戻ったから」 ハンドルを握る真似をしながら 「また、これか?リュウはカッコよいからな、辞めたんじゃあないの?そっちの綺麗な方、紹介してよ」 「お医者さんの鶴見先生」 「鶴見 圭子です、これから、リュウと一緒に時々伺いますので」 「リュウなんか、どうでもいいの、鶴見先生だけで来て下さいね」 「奥さんに叱られるよ」 奥さん旦那を見ながら「いいの、このバカは、本当、美人に弱いだから、どうせ、見るだけの楽しみだから」 旦那にゃにや顔で「何言っているの、俺のモテルこと、知らないから」 俺は「それより、腹へったよ!俺の飯 わ?」 旦那慌てて「そうだ!今出すよ」

 鮪カマ香草焼き.jpg伊勢海老の頭が入った、魚介類の味噌汁に金目鯛の煮付け、鱸(スズキ)の刺身、鮪の鰓(カマ)の肉をハーブと塩コショウ、ニンニク、バターでホイル焼、炊き立てのご飯、 味噌汁を飲んでヨシ子も思わず「これ、美味しい、リュウも頂いて見て」 旦那さんがカウンター越しに「先生、お代わりもありますから、一杯食べて下さい」 奥さん、旦那を誇らしげに見ながら、だみ声で「これは、顔は悪いが、腕は確かだよ」 「そんな事ないです、顔だって、味が有って魅力的ですよ、私、好きだな」 旦那嬉しそうに「ほうら見なさい、俺はもてるから」 「バカだね、この人は、お世事も、解らないから」 とにかく、笑いが一杯で魚も美味しく二人して満足 

 支払いを済ませて「じゃあ、又近い内に来るから、今日はご馳走様」 ヨシ子も「本当に楽しく美味しかった、ありがとう御座います」 女将さん嬉しげに「先生の口に合ってよかった、リュウ、レース、身体だけは、気お付けてよ」旦那も奥で手を上げていた ちょうど近所の人達がお昼にお店に来た 「よう、リュウじゃないか?珍しいな、元気かよう?」 「はい、何とか生きてるよ!今日は急ぎの用事がありますから、又近い内に来ます」

 さぁー、いよいよヨシ子の両親の処だ、「リュウ、本当に良い夫婦だね、料理も美味しかったし、本当、リュウは色々な人知っているのね、本当の暖かさが伝わってくるわ、あんな感じのお店に入ったの学生以来だな」 「気に入って良かった、俺、魚余り好きでは無いけど、あそこのは美味しく食べれるよ」 俺はチョット躊躇したが「..ヨシ子!」 やっと名前呼べた 「なぁーに」 「前から思っていたが、歩き方綺麗だね」 「そーう、学生の時にね、スカウトされ、少しモデルやった事あるから、そこで教わったの」 「それでか、何時も決める処、決まるから、レース、クィーンでも余りいないよ」

 「それと、母がうるさかったからマナー教室に通っていた事があるの、リュウもガサツに見えるが、ちゃんと、マナー出来ているね、一緒にいるから、判るの」 「俺、まだ子供の頃、お袋に ”なにがマナーだよ、どのホークやスプーンであれ箸であれ、手掴みだって、その人が美味しいと思う方法で食べればいいんだよ” と嘯いた事もあったが、お袋に叱られたよ ”お前がカッコ付ける為にマナーが或るのではないよ、他人が健司の耳元でクチャクチャしたり食器をカチャカチャ音を立てて食べたり、喋っていたら、いやでしょう、他人に迷惑掛けない様にする為だよ” だって、叱られたよ」それに、これはヨシ子に黙っていたが前の奥さんの義父に、ホテルや高級レストランに幾度と無く連れて行かれ大抵の事は覚えた

 途中でお土産用、綺麗なスイーツ和菓子を購入 いよいよ、鶴見医院に着いた、駐車場にはアウディRS5、クワトロ(Audi RS5 quattro4.2L V8FSI)..ビックリ、この車アウディはポルシェに変わりルマン24時間レースで勝ち続けている、ドイツメーカーの車、此れは義父と話が合うかも、「ヨシ子、これお父さんの車?」 「ええ、そうですが、なにか?」 「これ、皆の憧れの車だよ!お父さんと、話が合うかもしれない?」 「そうなんですか、このオリンピックマークみたいの車、最近買い換えた様ですよ、もっと勉強しなくては」、今日は鶴見医院の診察は臨時休業午前中で終わりの張り紙があった、何故か身が引き締まる思いである

 裏手の家族用玄関から、ヨシ子から入る 「ただいま」 身構えた佇みは、お母さんであろう まず確り頭からつま先まで一瞥され、穏やかに見えるが、俺に対して余り良い印象は持っていない様子だ、俺に向かって 「お待ち致しておりました、どうぞ、お上がり下さい」 お母さんは、ヨシ子似の顔でスタイルも良い 俺は緊張していた、大きく息をして「はい、龍崎です、突然で申し訳有りません、宜しくお願い致します、..お邪魔致します」 奥の方に看護婦と事務員らしき人がちらちら見える

 ヨシ子、お土産の紙バックを渡しながら「お母さん、これ龍崎から、お父さんは?」義母の愛犬であろう、パピヨンが短い尻尾をこれ以上早く振れないほど振り、ヨシ子に跳び付いて来たパピヨンを抱き上げ「ルル今日は静かにしてね」ルルは初めて見る俺にヨシ子の抱き上げた腕の中から乗り出すように、匂いを嗅いだりそわそわだが、俺を見ながら嬉しそうに尾を振っている「ルル、判る様ね、リュウに吼えたりしないわ」ルルの頭を撫でながら「ルル!リュウよ宜しくね、って」 風薬の様な名前だな、俺もルルの頭を撫で「俺も小さい頃家にシェパードが居たので犬は好きだよ、ルル宜しく」 義母、俺にむかってお土産の袋を示し「有難う、これから気を使わないで下さいね、お父様は応接室で待っていますよ」 ヨシ子は母にルルを預けながらドァーをノックして 「お父様、入りますよ」 ドアを開けヨシ子と俺が入る 

 俺は緊張気味に「今晩は、龍崎 健司です」 「おお、君か!其方に、ヨシ子も掛けなさい」 立ったまま 「お嬢さんと、結婚しようと、思いまして」 「その件はヨシコから聞いているよ、まーぁ、掛けたまえ、ヨシ子も座って」 「はい」 俺は何か始めての就職、面接試験を受けた時の様な気分がした 義父は咳払いをして「ウン!今まで、お母さんの言う通りのレールに従って来たが、ヨシ子が始めてお母さんに、あんなに逆らって意見を言った事は無かったよ、最も、もう親が色々言う歳では無いからな、私は、ヨシ子が幸せで有りさえすれば、それで良いと思っている」 「はい、有難うございます、経済的には、幸せに出来るか解りませんが、幸せで在りたいと思います」 「龍崎君は変わっているね、今まで沢山、娘を下さいと来たが、皆、幸せにしますからと云っていたがね、ヨシ子は今までいろいろな縁談があったのだが全部断って、結婚しないのか心配になっていたところだが」 

 「はい、私は将来約束の出来ない事は言いたくありません、ただ今も将来も、心から幸せで有りたいと思いますし、今幸せに思っているから、お願いに伺いました」 「そうか!ヨシ子、変わっているな」 「お父様!そんな事いいでしょう、正直なのよ!」 「まぁ、親として娘の幸せを望むものだよ、それに君の仕事は危険が伴なうから、心配だが!ヨシ子が承知の上今更何も云わないが、細心の注意を怠わらないようにしてくれ!」 「はい、解りました、心致します、先ほどは生意気な事云って申し訳有りませんでした、宜しくお願いします」 俺はもう一度、深々と頭を下げた

 ヨシ子は父に「それと、お父様、私又精神医学の勉強したいと思い大学に戻ろうと思っています、その時は又ご迷惑掛けると思いますがお願い出来ますか?」 「フム・・お父さんの元気の内に頼むよ」 俺は神妙な態度で「私も賛成です、自分達で出来ると思いますがもし力不足の時は宜しくお願い致します」と頭を下げた、 義父は「ヨシ子の為に私も出来るだけ、応援するよ」 もう一度俺は頭を深々とさげ「有難う御座います」

 ちょうど、お母さんがお茶を運んで来た 義父は「お母さんも、掛けなさい、龍崎君に話す事は無いのか?」 ヨシ子の顔を伺いながら「ええ、ヨシ子とお話しましたから、ただ一人娘ですから、医師の方で此の家を継いで欲しかったのですが、私の意見だけ押し付けてはいけないから」 ヨシ子は義母を制する様に「お母さん、その話はリュウには関係ないでしょう」 「そうだったわね、龍崎さん、御伺いしたいのですが、ヨシ子に聞いた話では、如何してあの一流会社をお辞めになられたのですか?それと何故、自動車レースなのですか?」 「はい、私の母にも、叱られましたが、そこでは、単に会社の派閥争いや歯車の一部で、生意気のようですが、私の技術など何の意味も無く人生が終わってしまうような気がして、レースなら自分が生きている、実感が得られ、それに其のまま誤魔化しのない結果が得られます」

 俺の説明では余り納得行かない様子でしたが 「そうですか、私には惜しい気持ちが致しますが、ともかく..ヨシコをお願いします」小さく頭をさげた 「ハイ、此方こそ、宜しくお願いします」 俺はもっと反対されると思ったが、ヨシ子が全て話してあるらしく、ほっとした 

鶴見家ダイニング.jpg 義父は両膝を叩き立ち上がり「よし、今日は家の従業員にも紹介しょうと残って頂いていますから、居間の方へ」 居間には、仕出しの寿司や刺身、手巻き用寿司セットなどダイニングと居間のテーブルに沢山揃え用意して有りました、そこには中年の看護婦さんと、ヨシコと歳が同じ位の受付の女性が待っていました

 お父さんが 「今度、家のヨシコと結婚する、龍崎君です」 「龍崎です、何かとご迷惑掛けますが宜しくお願い致します」 看護婦の方が「安部と申します、此方こそ宜しくどうぞ」 「私、受付をしています、奥村ともうします、宜しくね、想像していた方より、全然違っていて、驚きました」 「はーぁ、ご期待に添えなくて」 「いえ、青白く学問ばかりして眼鏡を掛けている人を想像した物ですから、若くて凄く精悍で好い男でビックリしました」 「はーぁ、どうも、何と答えたら?」 ヨシ子慌てて「奥村さん、リュウが困っているでしょう、そんな人想像していたんだ、私だって、選ぶ権利あるんだから」 

 お父さんがビールを飲みながら「さー、皆、頂きましょう、龍崎君も頂きなさい」 「あ、はい、皆さんもリュウで良いですから、リュウと呼んで下さい」 お父さんが「リュウ君は、車のレーサーだそうで成績も良いそうだよ」 「お父さん..お父さんとお母さんと呼んで良いのですか?先生とか?ヨシ子さんも先生ですから」 義父は義母に向かい同意を求める様に「お前、それで良いよな、ちょっと、呼ばれた事無かったから、お父さんか!?まー、いずれにしても義理の父母だからな、ま、その内なれるだろう」 義母は当惑した顔をして「何となく、むず痒いわ」 何となく寂しそうにしている ヨシ子が俺をかばうように「お母さん、その内馴れるわよ」 

 奥村さんが気を利かせ話を変えて「リュウさん、大先生は車が好きで最近ベンツから買い替えたんですよ」 「はい、私も駐車場で拝見しましたが、良い車ですね、車好きの憧れですよ」 お父さん、得意そうな顔で「そうか!リュウ君、友人のデイラーの奨めで購入したんだ、ほら車のプロが言うのだから、間違いないよ」 多分、全員女性、非難されて居たのでは? 難しい説明をしても解らないと思い 「あの車はクワトロ(quattroフルタイム4WDハルデックス カップリングとコンピューター油圧システム)と云って音楽で云うリブラートですか?声を震わせる事ですが、波のように凸凹した道でもスムーズに走れる程、足廻りが良く運転が楽で、非常に安全ですよ」 先生、得意げに「だから、良い車と言ったでしょう!」 

 俺は話を変え「奥村さん、事務管理しているのですか?」 「ええ?」 「顧客、..では無く、患者のカルテですか?その整理や、税金の申請がもっと楽になると思いますよ、コンピューターのプログラム個人医院用など色々有りますから」 ヨシ子俺を援護するように「そうよ、リュウは、米軍基地で、コンピューターの専門で雇われているんだから、見て頂きなさいよ、仕事楽になるわよ」 皆も少しずつ和み始め、看護婦の安部さんも、好意的で、俺に食べ物を沢山勧めてくれた、先ず先ず一安心、

 夜も遅くなり帰る事にした、お母さんと女性の二人が見送りに出てくれ、お俺が運転席で挨拶を交わしている時に、高校生で在ろう身体の大きい男三人が、お母さん当たり、罵声を発した「このクソババアー、何もたもたしてるんだ!気を付けろ!」 俺は慌てて車から飛び降り 「おい!お前ら、ちょっと待て、俺のお母さんに、何て事言うか!このバカが、あやまれ!」 俺の余りの見幕に、ビックリして後ずさり、追い討ちを掛けるように 「てめいらの、おふくろが言われたら、どう思う、ちゃんと、頭を下げて、あやまれ!」 もう一歩前にで威圧した 学生達三人は俺の見幕に慌てて、頭を深々と下げ 「おばさん、すみませんでした」 と何度も頭を下げた 「よし、もうそんな事するなよ、お前らの、お母さんが悲しむぞ、もう行っていい!」 「すみませんでした」もう一度頭を下げ逃げる様に去っていった 俺は「一人では良い子だのに、仲間がいると、つい粋がってしまうから、それじゃあ、お母さん、大丈夫ですね、皆さん、お休みなさい」

 俺はヨシ子の実家を訪ねる前から、反対され快く思われていない事は解っていたのだが、義父母の雰囲気を感じ、遣る瀬無く、つい学生達に必要以上に怒りをぶちまけていたのかも知れない、もっと悪い印象与えてしまって、少し後悔の気持ちであった 

 車で帰宅途中、ヨシ子の携帯が鳴った「はい、お母さん、はい、....ええ....ええ.....はい.....分かりました、おやすみ!」 電話を終え、ニコニコしながら「リュウ、お母さん、ヤクザ見たいって、ビックリしていたわよ、....うそよ、凄く、感動して、リュウの事、好きになったって、お母さん単純なんだから、リュウの事、良い青年ですって」 俺はビックリ「本当?嘘でしょう!つい許せなくてカーとなり、やっちゃった!、柄が悪くて、お母さん驚いたと思ったよ!どうしても、許せなくて、きっと益々印象悪くなったね」 「私の方が、ビックリよ!でも素敵だったわ」

 なんだ、自分だって、お母さんと変わらないのに 「今までリュウの様に、体を張って、守ってくれる人に逢った事なかったから、それに”俺のお母さん”てリュウが言った事、凄く感動したみたい、ヨシ子も守ってくれる?」 「当たり前でしょう、ヨシ子だったら、手が出ていたよ」 嬉しそうに「本当う!嬉しい!それと..リュウは頭下げる事、嫌いなのに、先ほど、私の為にお父さんに、頭を下げて頂き、本当に嬉しかったわ、ありがとう!」 「そんな事ないよ、理由さえ有れば、こんなに軽い頭いつだって下げるよ」 俺は人って変な所感動する物だと、解らんな??と思った、とりあえず少しほっとした

 「ヨシ子、結婚の事、前もって、話してくれたんだね、でもお母さんの思いも解らない事ないし、悲しそうだったから、ヨシ子の両親に会って少し心が痛かった、そうとう、反対されたみたいだね、初めてお母さんに逆らったの?辛かったでしょう!」 「リュウ、そんなに、優しい事、云わないで、なお辛くなるでしょう!」 「ごめん、ごめん、本当に、ありがとう」 「リュウと同じよ、当たり前でしょう、私の為でもあるのよ、もう云わないで!」 「解ったよ、ねー、明日、鎌倉に行こうよ、報告と皆の幸せをお願いに」 「いいわよ、そうしましょ、リュウが安全で入賞出来た事も報告しなくてわ」

         《鎌倉》

 八幡宮.jpg翌日、日曜日朝10時頃、鎌倉に付いた、初夏の日差しの中、鶴岡八幡宮の前の駐車場に車を止め、八幡宮境内を手をつなぎ歩いた、俺は写真を始めたばかりで、余り良く解っていないのですが、先ず形から最新デジタル一眼レフカメラを持ちカメラマンスタイルのチョッキやパンツ、ハンチング帽で、ヨシ子は、淡いクリーム色のパンツと黒の襟の大きき開いたブラウス、薄手の同じクリーム色の大き目のスカーフ、つばの大きな黒の帽子、背も170㎝位、スタイルも良いどう見ても目立つ、

 御神木の大きな銀杏の木(下段の写真、今は倒れて見られない以前の大銀杏、現在再生が進められている)のある正面階段を息を切らし上り、参門の両脇の仁王様を抜け大きな賽銭箱の在る仏殿前で、二人して賽銭を投げ入れ、仕来り通り手を打ち、結婚の報告と家族皆の安全と幸せを祈り、参拝を終え、ヨシ子は俺に問いかけた「リュウ、何をお願いしたの?」 「皆の幸せに決まっているでしょう、ヨシ子は?」 「フフ内緒」 「俺応えたよ」 「じゃー云うわ、可愛いリュウ似の赤ちゃん!」 「あ!俺、忘れていた、もう一度お願いに行こうか?」 「大丈夫よ、どうせ忘れているし子供に興味無いと思って、リュウの分も確りお願いしたから、それにレースの安全もね」 「別にそんな事無いよ」云ったものの、そのとうりかも、自分の子供の事など考えても見なかった 「リュウは車の事だけだから、そんなに無理しなくていいよ、私はリュウの子供欲しいから、でもこればっかりは神様の贈り物だからね」 生活の事は俺には、全く依存していない、それも少し男として不満で有るが、図星である

 そんな事を話ながら、境内をあちらこちら見学し、写真を写し、ヨシ子はモデルも遣っていた事もあり、ポーズも決まり人目を引く、二人の記念に近くに居た叔父さんにシャターを押して下さいとお願いし 叔父さんが「モデルさんですか?綺麗ですね」 面倒だったので、ヨシ子と目を合わせ 「ええ、そうです」と答え、叔父さんも力が入ったのか、”もっと左に寄って”とか”二人共もっと寄り添って”絵を描く人の様に両手の指を四角に作り覗き見して、プロ並の指示をして、その仕種が余りにも滑稽で叔父さんに悪いと思いながらヨシ子と顔を合わせ笑いを堪えて5,6枚撮って頂きました、

鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏.jpg それでヨシ子がお手洗いに行きたいと云うので、大鳥居入り口近くの今は封鎖されている石で出来た太鼓橋左手の池の処で、待つ事にしました、暫らくすると、年頃二十台後半から三十位で和服の如何にも鎌倉婦人と云う感じの女性が、「鎌倉を撮影ですか?」 俺は「ええ、まぁー」 「歴史を尋ねてですか? 私、ちょうど用件が済みましたので、名所などご案内いたしましょうか?」 「有難りがたいですが、今日は連れが居ますので」俺を写真家と間違えたのか? 名刺を出しながら「そうですか、残念で御座います、宜しかったら、此方に連絡下されば、何時でも伺いますので」 「ええ、その時はお願いします、もう連れが見える頃ですので」 和服の女性は淑やかにお辞儀をし「では、お待ち致しております」と告げ、内股で静かに立ち去り 

 女性の立ち去った方向に、ヨシ子が優しく微笑んで立って待っていた 「どうして、声かけてくれなかったの?」 和服の女性を見送りボゥーと、していたのか俺の目先で手を振り「どうしてって、此方が知りたいわ、リュウが楽しそうに話していたから、..うそよ、リュウが、どんな対応するのか、興味があったの、リュウ、モテルのね!」 名刺は着付け教室の講師でした「俺よほど、暇に見えたのかな、何所か変だよ、何かの販売?狐に摘まれた様だよ、逆ナンパだね」 「それだけ、リュウは魅力が有るの、私が惚れているだもん!」 「ヨシ子だってモデルさんですかて、聞いていたよ」 他人が聞いたら、バカらしくなる話だが俺達はそんな話でも今は全て嬉しく楽しかった、

 小町通り.jpg小町通りに入り、少し歩いた処の小さな路地を右に折れすぐ、そこで可愛いガラス細工の加工しているお店に入った、以前からヨシ子に何かプレゼントしようと考えていたから、あちらこちら見ている内に薄っすらと微かにピンク色した真珠の入ったティアドロプ(涙の形、中に薄い水色の水の中に真珠が入っている)形で留め金部分を金網目のピアスと金のネックレスのセットが一際、目に付いた、何故か迷うこと無く此れにしようと思う

 「ヨシ子、これ付けて見て」 店員に申し出、付けて貰った 「うん、思った通りとても良いよ、似合っているよ、ねー、店員さん」 「ええ、とても似合って、おいでですわ、今わバロック真珠もカジュアル向きに出ていますが?」 「いえこれで?ヨシ子どう?」 店員「お目が高い、少し金額がお高いですが、これは純正御木本で厳正されたアコヤ貝から取れたものです、御木本の保証書も付いています」 「いえ、其れより、デザインが気に入りましたので」

 ヨシ子鏡を見て「素敵よ!でもいいわよ、高い時計戴いたばかりじゃない」 「それはそれ、じゃあ、これ頂くよ、このまま付けて行きますから、今、外したものを包んでください」 思ったより値段が高かったが如何しても欲しかったので余り、好きでは無かったがカードで、支払いを済ませた 「色々の意味を込め、ヨシ子にプレゼントだよ」 「ありがとう、本当に嬉しいわ、リュウから初めてのプレゼント、腕時計といっしょに、大事にするわ」 店員さんに向かって 「良く似合っているでしょう?嬉しいわ!」 「はい、本当にお似合いですわ、宜しかったですね」 「私達の記念なの嬉しくて!」 本当に子供の様に嬉しそうでした、店員さんも、その表情を見て、”それは良かったですね、お幸せに!”店員さん達一緒に喜んでくれました、こんなに素直な処が有り何か皆を幸せにする人だと思った

 店を後にして「ヨシ子、お腹空いたね、お昼なんにするの」 「リュウ、それより、いろいろの意味って、なーに?」 冗談で小指を立てて「いろいろはこっち色気の色々だよ」 「こっちって?」 「いろいろはいろいろだよ、分らなければ、いいよ、深い意味無いから、其れより、何か食べようよ」 ヨシ子首を傾げ「おかしな人?..そうね、日本そば屋さん在るかな~ぁ」 「確かもう少し行った処の四つ角左に入った所だと思うよ」 「リュウ、良く知っているね、前にだれ..ごめん」 「気にしなくて良いんだよ、今までお互い、其々生きて来たんだから、色々有って当然、前にも云ったと思うが互いに過去は変えられないよ、其れより過去が有って、お互いの今が有るのだから、余り気使いすると、返っておかしくなるよ、もっと、素直に行こうよ」

 「ごめんなさい、リュウは私の過去を決して聞かないのにね、時々リュウのほうが、大人だね、リュウって本当に色々な面を持っていてビックリよ」 考えてみたら、俺が生意気な事云っても、ヨシコは今まで俺を叱った事も怒る事も無かった、余裕なのか?母が子供を見守る様な、優しさに溢れた、目で見詰ている、益々安心と、安らぎを感じる 

 「此処だよ、入ろう」 店に入ると未だお客さんが誰も居なく、主人らしき、人が、カウンターで、ザル蕎麦をズーッズズーッと音を立て、美味しそうに食べていた、俺達はその隣に座り、何をオーダーするか壁のメニユーを見ていると、先ほどの主人らしき、人が「ここのザルで食べたら蕎麦の味が分かって美味しいよ、信州から取り寄せて、私が打っているから」

 薀蓄を語りそうだったので 「私も信州に友達が居ますから、良く聞かされました、じゃあ、大盛のザルお願いします、それと天ぷら別に二つお願いします」 ヨシ子も困り顔で「ザルでお願いします」 本当に蕎麦は美味しかったのですが、たれの付け方まで、うんちく その内客が入りだし、ほっとした、味蔵漬物店.jpg二人して、早々に食べ店を出

 「リュウ、なにか食べた気がしなかったね、リュウは不思議だね、何故か人を引き付けるのね」 「そうかなぁー?、でもそう云えば何時も全然お客の居ないお店でも、俺が入ると、不思議に直ぐに混雑してくるよ、この先に、味蔵(あじくら)と云う漬物屋が在るから、美味しい漬物何か選んで行こうよ、ヨシ子のお母さんにも届けてよ」 「ありがとう、行きましょう」

 この小町通りは何時でも観光客や東京方面の人達で肩を触れんばかり、混雑している、紫いものソフトクリームや近所でおせんべいの焼く匂いが漂ている、ここも有名店で、皆食べながら歩いている、向かいの美蔵漬物店の中に入る此処も人々で込み合っている 「わーぁ、沢山種類が有るのね、珍しい物ばかりで迷ちゃう!」 「味見出きるから、好きな物選んで」 私達の物と、お母さんに届ける漬物を込み合うなか、三、四点ずつ選び、駐車場まで戻る、

由比ガ浜.JPG 海岸(由比ガ浜)まで足を伸ばした、砂浜で二人が写真を写したりジャレ合う様に、暫らく楽しく波と遊んでいると、此方に、賓の有る初老の男が近ずいて、..何処かで遭った様な!如何考えても思い出せない?..俺に 「これ、宜しかったら、差し上げます」 と云って、小さなクスリ入れの様な透明な袋を差し出し「桜貝です、綺麗ですよ、沢山拾いましたからどうぞ」

 俺達二人して覗き込み「綺麗!淡いピンク色で本当に綺麗!」 俺は「これ、頂いてよろしいですか?」 「ええ、どうぞ!貴方、方に..」 「有難う御座います」 「お幸せに!」 ヨシ子お辞儀をしながら「有難う御座います」 その老人後ろも向かずに片手を上げながら、砂を踏む気配もなくスムーズに、浮いたように立ち去って行きました、目の錯覚か!?何か一瞬寒気を覚えた! ヨシ子「綺麗ね!リュウと居ると不思議な事が起きるわ」 思わず、俺は「如何して何だろう?、こんなに他にも楽しそうなカップル沢山居るのに?」 俺のsixth-senseが騒ぐ!

 如何しても心に引っ掛る、その初老の紳士を思い出せない、俺は何か浪子不動jpg.jpgその時一瞬不吉な気持ちになった、其れは、徳富 蘆花 の不如帰 ”ほととぎす” の小説、(病弱の浪子の台詞...人はなぜ死ぬのでしょう)を思い浮かべたからだ、逗子の海岸に石碑が立っている。

    作詞:土屋 花情       さくら貝の歌 

うるわしき 桜貝一つ  去り行ける 君にささげん  

この貝は 去年の浜辺に 我一人 ひろいし貝よ

  ほのぼのと うす紅染むるは 我が燃ゆる胸のさざ波 

    ああ なれど 我が想いはかなく うつし世の渚に果てぬ

 「どうしたの?」 ヨシ子が俺を覗き込む 「うんうん、何でも無いよ、これはね、さくら貝の歌があってね、こ桜貝.jpgの貝殻に二人の愛が実る様に願いを込めて集め、集めたさくら貝の中からお気に入りのさくら貝のひとつに恋の願いを込め、いつの日か願いをかけた桜貝を胸に、憧れの人に、自分の気持ちを告げ、恋の成就は、さくら貝が海に帰るとき、桜貝を拾った海岸を訪れ、成就したら、お礼の気持ちを込めてその海に戻すんだって、きっと、さっきのお爺さん、ヨシ子が余り綺麗だから若い頃思い出して、自分の若き日の失恋か壮絶の悲恋の思い出と重ねたか、俺達、年が離れているから不倫の仲と思ったのか?とにかく旨く達成する事を願い渡してくれたのでは?」 折角の好意だが、俺の心の中で何か納得がいかない

 「また!リュウはおせいじ云って!、それじゃぁ、私達に必要無いね、でも、凄くモダンで賓のある人でしたし願いが籠っているから、それと、この貝殻さくら貝と云うのね、綺麗!リュウとの記念に持って帰るわ!赤ちゃん出来たら、一つずつ、戻そうね」 これ以上考えるのはよそう、せっかくの好意だ「これ、幾つあるんだ、こんなに作るの?」 「大丈夫、リュウなら出来るよ」 「オットセイだね」 「その位、健康で有って望しいから」 又、しばらく二人で写真を撮り波と遊び

 「リュウ、前の奥さんの事だけど、気を悪くしないで聞いてくれる?」 「うん、何?」 「一度、合いに行ってらっしゃい、リュウ何か何時もひっかかっているみたい」 「如何して、俺はもう何とも思っていないよ」 「解かるのよ!、男女の愛ではない事は解っているの、リュウは正直で優しいから、私の事は気にしなくて良いのよ、其の方が私にも良いの、何時も気になって吹っ切れない気持ちのリュウ、心の中でもちゃんと、別れて来なさい、気持ちの整理ついてからで良いから、そうしなさい、私の為にも、リュウ自身の為にも、ね!」 語尾はかなり強くなっていた

 凄いな全て分かっているよ、俺が、幸せを感じれば感じるほど、もう、心の傷は癒えたのか、一人で大丈夫なのか?彼女の事が気になって心配になっていた事も事実だ!それと前の奥さんの父からの資金の提供スポンサーの件、先生に対し後ろめたい 「ご免なさい、その内ね」ヨシ子が決してやきもちや怒りで無いことは、解っていた、ヨシ子は優しい言葉で「そうよ、もうリュウの一部だから、分かるのよ、そんなリュウを感じる時、少し寂しいな!」 俺はもう一度「ごめん!」 言い訳は、言いたくなかたし、見透かされている、俺の気持ちを尊重し、傷付けまいと、時々お母さんかお姉さんの様だ

 本当に楽しいそうに「本当にリュウと一緒だと楽しい事ばかり、今までこんなに楽しい時を過した事無かったわ、リュウ、ありがとう」 「俺も同じだよ!ヨシ子と居ると、安心して自分になれるよ」 「本当、私、勇気出してよかった、リュウを誘う時、本当に勇気出したんだから、リュウたら、考えろって、威張って帰ってしまうだもん、悲しくて泣けてきちゃった、でも、それで、今が有るから、良かった」 「ヨシ子は俺の歪んだ心直してくれたんだよ、今のこの気持ち何時までも大事にしようよ」 「はい!大事にするわ、人を好になるて事は、理性や論理、知性では無いのよね」

 「だろうね、俺と全然違う生活をしている、ヨシ子を好きで好きで堪らなくなったから、不思議だよね、帰り、ちょっと寄り道して、美味しい、ビーフシュチュウ食べさせてくれる、処あるんだ、寄って行こうよ」 「はい、嬉しいわ、行きましょう、 アッハッハァ、リュウはムードでると、直ぐに、お腹に来るんだから

来来庵.jpg  由比ガ浜から八幡宮へ戻り建長寺をへて21号線を北鎌倉方面へ長寿寺近くで駐車場を捜し其処から徒歩で2,3分、店は通り沿いにある来来庵(ライライアン)看板門をくぐり、石段を登り玄関になる、昔ながらの民家ふうで情緒豊かで、店内は左手が座敷、右は土間にテーブルが一列に並び、テーブル席に案内された、「リュウ、本当に色々な所知っていて驚いたわ、凄く風情の在る所ね」 ここの特性ビーフシチュー、サラダ、ライスとデザートに抹茶とレアチーズケーキを注文した 

 ビ^フシチュー.jpg「此処のビーフシチューはかなり昔から始めた様で、軟らかく煮込まれた鎌倉牛が美味しいよ、デミグラソースもまろやかで優しい味だよ」 「隠れた人気店なのね、古い建物と庭との境が素通の様で気持ち良いね」注文した物が運ばれ、店員が「長い事、お見えになりませんでしたね、これ店で初めたばかりの品サービスですからお二人で召し上がれ」 タンシチューだ 「有難うございます、余り来ていないのですが如何して」 「何か貴方、印象ぶかく覚えていました、御ゆっくりして下さい」 「はい、有難う御座います」 「ほんと!リュウって不思議な人ね」 「いや、今日は特別だよ、ヨシ子と一緒のせいだと思うよ、さぁー食べよう」 「はい、本当、軟らかくてとろけそう、ソースもまろやか、美味しいね、今日は本当に幸せよ」 「少しキザかな!俺、ヨシ子の笑顔が一番好きだから」 「そのキザな言葉、リュウだったら許せる、もっと聞きたいわ、日本の男性は云わなさすぎよね」 「俺も抵抗有ったが、外人の処で働く様になったからかな?」

抹茶とレアチーズ.jpg  食事を済ませ、出入り口の会計に支払いに、先ほど食事を運んで来た女性がいた 「リュウちゃん、まだわからないの!私よ」 「え!..だれだったかな?」 「分からないの?中学一年の時の藤森よ、待って居たのに、リュウちゃん結婚したから、あちらの方?..綺麗な人ね」 「あぁ、ヤッちゃん?(泰子)思い出した、成績優秀な可愛い子で俺の隣の席で、確か国語のテスト合わせで隣りと交換した時、俺ほとんど、解らず白紙で、ヤッちゃんがビックリ 「私全部直して上げる」と答え全部書いて回答に丸付けて、全部正解100点にして、俺がそんなに出来る訳無いのに、一緒に職員室で先生に叱られた事があった」でも少し面影が残っていたが本当に女性は変わるんだと改めて感じた

 「そうよ、あの時、結婚してくれるって、私、待っていたけど、先に結婚してしまうから、辛かった!それで前から話のあった、此処に嫁いだの」 「俺そんなこと言ったの?..本当に?」 「本当よ、ズーット待っていたんだから!」 「ごめんなさい、そうだったの、何って云って謝れば良いやら..本当にゴメン、でも良かったね、俺に比べ、こんなに、良い所へ嫁ぎ、本当に良かったじゃぁない!それでさっき変な事、言うなと思ったよ、分からなくて悪かったね」 「もうー、すっかり、忘れているんだから、いいわ、許してあげるから、時々来てね」 「もちろん!許さないって云ったら..あぁ、びっくりした」

 多分前の奥さんの顔も離婚も知らない、離れた所で待っているヨシ子を呼んだ、きっと話をあわせてくれると思い 「えぇと!家内のヨシ子です、変だと思ったが、中学校の時の友達、泰子さん」 「ああ、そうでしたの、それで、妻のヨシ子です、よろしくお願いします、その頃、龍崎にいたずらされ、お困りでしたでしょう?」 「いいえ、凄く正義感が強く、良く助けて頂ました、懐かしく、つい声を掛けてしまい、よろしかったら時々お訪ね下さい」 「はい、ありがとう御座います、とても美味しく頂ました又伺わせて頂きます、それでは、失礼します」 たったこの少しの会話、女は澄まし顔で、俺にはなにか、冷たい火花を感じた

 「リュウ、あの人と、何かあったのかな~、ちょっと変だったよ」 「まだ、中学の頃だよ、ある訳無いでしょう、でも話合わせてくれて有難う」 「女性はもっと大人よ..」 「ヨシ子もそうだったの、モテタでしょう?」 「私は..何にもなかったわ」 俺は冗談らしい話振りで「本当かな?」 フッと膨れた顔で「リュウと違います!」

 鈴鹿行き前々日、ヨシ子「リュウ今回、私、仕事で鈴鹿に行けないから」 「うん、分っているよ」 「それでね、私、リュウのお母様に、お会いして来ますから」 「いいよ、俺と一緒に、別の日に行けば」 「リュウ、ダメです!、もう私達一緒に暮らして居るのですから、遅い位、だらしない事は、ちゃんと報告しなくては、今連絡して下さい!」 俺は首をすくめ「はい!解りました」 おぉ、恐い!、ヨシ子に初めて叱られたが、何故か、凄く安心感に包まれた、俺はお袋に、ヨシ子が1人で訪ねる事を電話で報告し了解を得た

  フー!まだかよ!..此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編5】へ続きます是非お読み下さる事お願いね


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編5】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

   ☆=Story【前編4】からの続きです、是非下欄【前編5】をお読み下さい=☆ 

  《鈴鹿サーキット》  Suzuka Circuit  round 5 (07/12)  

  鈴鹿まで約4時間から4時間半のドライブ、スクールのマイクロバスが家まで迎えてくれた、俺は明日からのレースの為に後部席で体を休め、竹田君の運転、途中監督と変わるらしい、バス内に入ると、生徒達が6人位、宜しくお願いしますと挨拶、俺も「やぁ、こちらこそよろしく、監督から指示があったと思いますが、皆にはタイヤ交換や給油お願いするから、慌てず、的確にを重視して、あくまで安全第一に、怪我の無いように、一秒でも早く、頼みます」 生徒達「はい、頑張ります」 監督は生徒達に説明や指導の為、生徒達のグループに混じって席をとって生徒の質問に答えていた、軽く会釈して、奥へ

 いつも竹田君の隣に久美ちゃんが居るのにおかしいなと思いながら後部席、久美ちゃんの隣に座り 「宜しく」 久美ちゃん笑顔で「缶ジュースですが何か飲みますか、オレンジジュースかコーク、コーヒーがありますが」 「ありがとう、じゃー、コーヒーにして、俺少し寝ますから、夕飯の時起して下さい」 コーヒーをサイドホルダーに入れ、薄手のチームの宣伝の入ったパーカーを頭から被り暫らく寝てしまった

   東名高速の海老名SA(サービスエリア)で久美ちゃんに起され皆夕食を取る事にした、レストラン街のダイニン海老名SAうまいもの横丁.jpgグCASAにした、久美ちゃんは俺の隣で食事を取った、何か様子がおかしい、「久美ちゃん、竹田君の処で食事したら?」 「いいの、此処で!」 何かおかしいが、ま、いいか、何か話さなければ「クミちゃん、相変わらず綺麗だね」 「また、お世事ばかり、後で相談が有るの、聞いて下さい」 何か深刻そう 「ええ、俺で良かったら」 皆の食事も終わり、俺は竹田君に向かって大声で「タケちゃん、運転変わらなくて大丈夫か?」 監督が「俺が変わっても良いぞ」 タケちゃん「大丈夫です」 監督「疲れたら、何時でも言え、変わるから」 またクミちゃんと同席になり、

 久美ちゃん小さな声で俺の耳元で呟くように「聞いて下さい、竹田君がレースクイーンの人とお付き合いしている様で、いくら問いただしても話してくれないの、如何したら良いか解らなくて」 何か入り込んでいる様子だ「そう云うはなし、俺には無理だよ、自分の事も良く分らないから」 久美ちゃんは耳元で「他に相談出来る人、いないの、お願い!」 「俺じゃ如何する事も出来ないよ」目で必死に訴えて「おねがい」 「う~ん、今回のレースが終わってから、話を詳しく聞くよ、それと久美ちゃんには悪いと思うが、二人の問題、両方の話聞かなければね」 悲しそうな目で「レース前にこんな事、御免なさい、後でお願いします」 俺はヨシ子にも聞いて、むらう方が良いと思い「じゃあ、そうして、帰りに家寄ったらいいよ、女同士、ヨシ子に相談したら?その方がいい考えが浮かぶと思うよ」 久美ちゃん「はい、お願いします」 「おぉ!俺、休むから」 夕べはかなり遅くまで起きていた、またパーカーを被り寝てしまった、どの位寝たのか、又クミちゃんにゆり起された、俺の携帯が鳴っていた、ヨシ子からだ 「はい」 ヨシ子「今、どちらですか?」  

  外を眺め久美ちゃんに「今何処?」 「豊田市だと思います」 「名古屋の豊田市辺りだよ、如何したの?」 「別に何も無いけど、リュウの声聞いて寝ようかなと想って、何か寂しいのよ」 「俺もだよ」 「今までリュウから愛しているって聞いた事ないから、今聞きたいの!」 「ええ!そうなの、云っている様な気がしているけど?それより俺と一緒にいて判らないの!」 「リュウの鈍感!今聞きたいの!言って!」 俺は何か気恥ずかしく、小声で「えー!じゃぁー、愛してる」 「じゃぁー!、じゃぁーでは無いでしょう!」 益々小声になり「うん、..愛しているよ、..ヨシ子が一番分かっているのに」

 全く!愛の安売りじゃないよ、価値が下がる様な気がした 「リュウ恥ずかしいのでしょう?女は分かっていても、確かめたい物なの!、これで眠れるわ」 「まったく!愛の安売りじゃないよ」 「リュウは直ぐにカーとなるから、気を付けて冷静にね、じゃーおやすみなさい」 「もー意地悪いんだから、あのさー、久美ちゃんが何か相談があるって、帰りに家に寄りたいって」 「そう、分ったわ、リュウ意地悪では無いのよ、純粋に確かめたいから、女心よ女は時々寂しくなるのよ」 俺は周りを見ながら小声で「愛しているよ!じゃぁ、切るよ」

 電話を切ると、久美ちゃんが「まぁ、幸せそうで、羨ましいわ」 「ごめん、へんな話、聞かしちゃって、全く照れるよな!、それより..余り、深刻に考えるなよ、もっと、色々見たりして、其のうち、良い事もあるよ」..ヨシ子だったら、如何対処するのだろうか? 話を逸らし大きい声で「竹田君運転変わろうか?」 監督達も起してしまった 監督「俺が変わるよ!」 竹田君「大丈夫です、このままサーキットまで行きます」 監督「そうか、無理するなよ」 

 何か、電話で目が覚めてしまった、俺はクミちゃんに「竹田君との交際やめるつもりは無いでしょう?」 「ええ、まあー」 「壊すつもりなら良いが、続けたいのなら、もう何も云わないこと!、黙って助手席で竹田君の眠気覚ましに、手助けしたら?」 「如何してですか?許せと言う事ですか?」 「許せなかったら如何するの?止める事が出来るの?」 「・・・」 「知って何になる?、本当に続けたいのなら、今竹田君の助手席に座り道案内の手助けしなさい、何か解った処でどうなる物でもないよ、惨めに成るだけだよ!、心無い人を無理やり引き戻して攻め立てても虚しいだけと思うけど、今は黙って行きなさい、本気だたら久美ちゃんの処に戻ってこないよ、きっと、謝ってくれると思うよ、其の内、久美ちゃんの良い処解ってくれるよ、変な意地を張らずに一度位、許して上げたら?」

 俺の話した、意味がやっと少し理解出来た様で 「はい、そうしてみます」 「うん、そのほうが良いと思うよ」 「じゃぁ、話してきます」と云って竹田君の運転する後ろの助手席に移り、何やら竹田君と話始めた様子、一安心、俺の昔の経験から男の気持ちが解るから、出来てしまった傷を突いて広げた処で、返って反発を覚え修復出来るものも出来なくなるだけ、相手の心が自分に向かわなければ、なんの解決にも成らない、その辺、理解出来ないのかな? 

 俺の横の座席が空いたのを見極め生徒の一人が隣に座り「此方の席空いたんですか、移って良いでしょうか?」 「ああ、どうぞ」 生徒急いで移動して「龍崎さんは、なぜこの道を選んだのですか?」 「何故って?、レースが好きだから、それに走る為だけに無駄を省いた車に魅力をかんじるだよ」 「好きだからと云って、何処まで出来るか、解らないでしょう?」 内心何と優柔不断な奴だと思いながらも、その生徒の目は、初めての経験に輝いていたが、不安なのかな?それとも何か迷っているか?「レースが好きなんでしょう?」 「はい」 「まだ、始めたばかりでしょう」 「ええ、ですが」 「ですがって?」 「いえ、何でもないです」 「とにかく、やるぞ、と云う気迫が無ければこの道は進めないよ、憧れやカッコ良いだけなら止めた方が良いよ、映画や漫画の世界では無いよ、見た目は派手な世界だが、地道な努力有って結果が得られるのだよ、スクールに入ればレールに乗って行けると思っているの?」 慌てて「いいえ、それは」

 「君は車の運転、人より才能が有ると思ったからでしょう」 「ええ、そうですけど、此処に来てもっと上手い人が沢山いる事が解りました」 「だから、..辞めるの?、ナニクソと思わないの、何時か連中を負かしてやると云う気が無ければ駄目でしょう、初めから上手く出来る人はいないよ」 「ええ」 「此処に来てどれだけ吸収できるか、先生がよく教えてくれなかった、そんな事知らなかったとか、云っていないで、走りが早くて、上手い人の走りをその目で視て自分と違う所を覚えるのだよ、それでは何をやっても駄目だと思うな」 輝きを増した目で俺を見つめ「はい、わかりました」 何時もより到着する時間が長く感じた、ようやく鈴鹿についた、クミちゃんも機嫌よく竹田君と話をしている、本当に、あ~ぁだ!

suzukajpg.jpg 俺達がマイクロバスから降りるのを待ちかねた様に孝ちゃんが跳んで来た「リュウ、遅かったわね、マシーン準備出来ているよ、それとキャンピンカーも綺麗に整理して掃除したからね」 「有難う、ご苦労さんです、やっと孝ちゃんの顔見てホッとしたよ」 孝ちゃん「もうー、リュウたら”ホット”したなんて嬉しい事云ってくれるわね」 「明日朝早くコース下見するから、レースカーを見てから今日はもう休ませてむらうよ」 孝ちゃんは嬉しそうに「分かったわ、それをやるからリュウはレース早いのよ、マシーンは確りチェックしてあるから、ゆっくり休んでね」 「ありがとう、監督に伝えてね、じゃぁ、おやすみ」 俺は休む前に一人ガレージに向いマシーンを長年の癖で手で押し付け車を軋ませ、タイヤの緩みをチェクして乗り込みシートに身を預けハンドルに手を置き、ぼんやり薄暗くなった霧の中のコースに思いを巡らせた

 翌日金曜の朝、何時もの様にコースを確認とチェックに歩いた、複合カーブは状況により異なるが、一般的には最終カーブ出口を少しでも速度を上げ抜ける事だ、以前、走っているが、ここ暫らく走ってはいない、コースの看板や路肩等少し変わっていたが、さほど違いは無い、携帯が鳴りヨシ子からだ「お早う!」 ヨシ子「リュウ、おはよう、良く眠れた?」 「うん、ヨシ子は?」 「リュウの声聞いたから大丈夫、其れより朝食、消化の良いもの食べなさいよ、それとリュウは短気だから、冷静にね」

 「そんなに短気じゃぁないよ!、そう云えば食べる、で思い出したが、少し足を伸ばせば伊勢湾、海産物が美味しいよ、牡蠣や蛤、アワビ、伊勢えび、浮かんで来るだけでも、お腹空くよ、今度ゆっくり、ヨシコ子と来たいね」 「本当?期待しているわ、私、今日から忙しくなるから、兎に角冷静にね..いい!解かった?」 まるで母親だ、其れも悪く無い 「うん解かっているよ、其れより、俺のおふくろに会うの一人で、大丈夫?」 「リュウのお母さんだもの、大丈夫よ、心配しないで、それじゃぁ、リュウこそ落ち着いて冷静に頑張ってね」 「あぁ、愛しているよ」云はなければ判らないとヨシ子に言われ、少し抵抗も有ったが、あれ以来、俺は敢えて口に出すよう心がけている 「ウフフ、嬉しい!私もよ、愛しているわ、気を付けてね」

 ひとと通りコースのチェックが終わり、朝食に向かった、「龍崎君!」 他の一流チームの監督から呼び止められた 「龍崎君、君来年うちのチームに来ないかね?」 「ええ!急に言われても」俺は突然の言葉に戸惑いを覚えた 「返事は今で無くて良いから、今、君は失礼だが、契約金幾らむらっているの?」 「ええまあ、幾らと云うか」 その辺は心得ているのでしょう「まあ、いい、悪い様にはしないよ、考えておいてくれ」 と云って、立ち去って行きました、俺は、暫くポカンと監督の後姿を目で追っていたが、我に返り、小さくガッツポーズ、”よしっや!遂にやった!!”俺のドライブ・テク認めてくれたんだ!本当に嬉かった、だが反面、今のチームを捨てる事が俺に出来るのか?頭を過る、いろいろ考えるのはよそう、今はこのレースに集中だ!

 朝はサーキット内の食堂”サーキット ダイニング”そこはバイキング形式でボリュウムもある、我らチーム全員集まり、スクールの新人生徒達は、いよいよ実体験も兼ねた研修にはいる、例の如く、食事を済ませ、dinning-img.jpg監督の挨拶、皆の紹介が有り其々生徒達の持ち場を指示と練習に入る、期待と不安で生徒達は微かに昂揚してる様子、俺は午前中一時間ほど午後二時間のプラクテス走行があり、井原君や孝ちゃん達と車の調整走行(adjustment &  test-drive)の繰り返し、かなり俺好みに仕上ってきた、メカニックの二人には感謝、

 俺は孝ちゃんに尋ねた「ねー、コウちゃん、彼女欲しくないの?」 孝ちゃんキョトンとした様子で「私?正直、女性には興味ないの、リュウ知ってるくせに!」 「御免、本当に俺、解らないから、聞いているの、それで寂しく無いの?」 訴える様な目付きで「寂しいわよ!、でも、自分でも如何する事も出来ないの、..リュウ、愛してくれる?」 「おいおい!俺は無理だよ、女好きだから」 「冗談よ!、リュウは本気に聞いてくれて、嬉しいわ」 「苦しんで来たんだね、誰か孝ちゃんを理解する、良い人見つかると良いね」 「いるわよ、リュウがいるじゃない!分かっているわよ、何も言はないで、片思いそれでも良いの、このままそっとしといてお願い!ね」 「全く..分かったけど、俺には如何する事も出来ないよ!、早く相談出来る人見付けろよ!」 井原君「そうだよ、誰かキットいるよ、良い人見つかると良いね」 「バカ!皆優しい事云はないで」コウちゃん、少し涙ぐむ 俺は「ようし!今日は調整出来上がって来たし、これ位にして、頭切り替えよう、スクール宣伝ブースの監督達の方に手伝いに行こう」

 鈴鹿紹介.jpg久美ちゃんと竹田君が仲良くスクールの宣伝ブースで働いている 「クミちゃんもう良いのか?」 「はい、おかげさまで、気の迷いだったそうです、誤ってくれました、でも何か納得出来ないわ!」 「クミちゃん!黙って、許してやれよ」 「はい、有難う御座いました」 コウちゃん「リュウ、久美ちゃん何か有ったの?」 「なんでもないよ、犬も食わないってやつ」 コウちゃん、そう云う処察しが良い「なんーだ、知和喧嘩!仲が良いから」 「バカらしい、そんなところだよ」本当は大分深刻だった、「タケちゃん、もう心配かけるなよ!あんな、良い子はいないよ、大事にしろよ!」 「はい、心配掛けました、有難う御座います」 孝ちゃん「リュウ大変ね、でも皆リュウちゃんを慕っているから」 「ありがとう、監督は経営の事で頭使っているから、少しは手助けしなければ」 「だからリュウの事皆好きになるの」 「明日はタイムトライアルだから、頼むよ」 孝ちゃんは俺の耳元で「リュウ!私知っているのよ」 「何が?」 「引き抜きよ!、私、さっき聞いちゃった、凄いのね!」 「まだ、何も分からないよ、皆には絶対内緒だよ!バラしたら許さないよ!」 「その位、分かっているわよ」

 俺は孝ちゃんを皆と離れた場所に連れて行き 「俺の口から監督に話すまでは、誰にも云うなよ、それと孝ちゃん女の気持ち判るでしょう?」 「ええまあ、それが何か?」 久美ちゃんと竹田君の事を詳しく説明し、俺が久美ちゃんにアドバイスした事が良かったか尋ねた「リュウ、それで良かったと思うよ、責めれば、責めるほど男の心が離れてしまうのに、女は自分以外の女性は許せなくなるのよ、それで彼を攻め立て、その女性を彼の心から抹殺したいのよ、自分の方が絶対上と思いたいの、人には、優劣を付けられないのにね、それが女心、色々な好みが有るのにね、大丈夫よ久美ちゃんはそんなに馬鹿じゃないから」 「なら良いが?恐いね!」 「そうよ、リュウも気を付けなさいよ」 

 「リュウ、久美ちゃんは本当に大丈夫よ、..それより、リュウの婚約者、ヨシ子さん、リュウが惚れたの解るよ!普段は自分に厳しい人だが、リュウには完全に女になって凄く素直で可愛いい人ね、あんなに可愛い人いないよ、その上リュウを見つめる目、可愛い子を守る様な、あれは母の目よ、悔しいけど、負けたわ、リュウ、大事にしなさい」 「俺は餓鬼だからな、本当にそう思ってくれるの?ありがとう!」 「当たり前でしょう、男は直ぐに浮気するから、リュウ、ヨシ子さんを泣かさないでね」 「オォ、ありがとう、大事にするよ!」

 翌日、天候も良く暑い位だ、Free Practice(フリープラクテス)1’42.522秒で四番手始めてのコースではsuzuka.jpg上出来だ、監督「リュウ良くやった!午後からQualifying(予選)だぞ、気を抜くな」 「はい、皆の御陰です、何時も夜遅くまで有難う、井原君とコウちゃん、S字カーブから後の逆バンクでフロントが流れてしまってスピードがそのままキープ出来ないんだ、ダンロップコーナーまで、此処が一番重要だから」 コウちゃん「解ったよ、フロントウイングもう少しダウンフォース掛けるね、リュウは、お昼食べて、少し休んで直ぐ調整出来るから」 「ありがとう」 午後から三回の一番良いタイムが採用される、ヨシコの言葉を思い出し冷静にを心がける孝ちゃんの調整が良く、1’42.036秒貴重なタイムアップ、三番手に決まり、上々だ、これで、明日の決勝レースに望める 孝ちゃん「リュウ凄いわね、前のドライバー何時も10番前後よ」 「そうだったの?、コウちゃん達の調整が良かったからだよ、有難う、暑さで負けない様にレーシングスーツに風入る様にしてくれて、ドライブし易くなったよ、それに井原君のエンジンの調整力は抜群だよ、立ち上がりも以前より良くなったよ」 「リュウの実力よ、だから..」 俺は慌ててコウちゃんを睨み付けた

 いよいよ本番、suzuka-s.jpg7月12日鈴鹿、天候:晴 コース:ドライ 気温:30℃梅雨明け湿度も高い俺達ドライバーに採って暑く辛いコンデションの中で43週の長丁場だ、孝ちゃんと井原君がコース上のマシーンサイドで俺を迎え、例の如く俺がマシーンに乗り込むのを待って、安全ベルトを締め、確り締まっているか確認後、俺に向けて孝ちゃんが親指を立て、グッドラックの賭け声がヘルメットごしに聞えた、俺も親指立て返事の合図を送る

 エンジン スタートの合図があり、俺はスタートボタンを押す”キュルキュル、フォフォーンフォーンフォーン”レース用エンジン、高回転の独特な音が一斉に響く、バッテリーを外し、各チームのメカニックやレースクイーン達がパドックに引き揚げる、スタートランプがグリーンに変りフォーメーションラップがスタートした、先導車に従いRPMパターンをバーンアウトにセットし俺は時々蛇行運転しながらニュタイヤの皮を剥き同時に適正温度に暖め路面との接触を良好に保つ、監督から路面温度44℃と聞かされた少し高い、車の油圧、水温、等確認しスタートラインの三番グリッドに付く

リュウヘルメット1.jpg この緊張感は大嫌いだ!、何時もの事ながら回りのドライバーが気になる胸は最高に高鳴る、本当はライバルは自分自身、先ず自分を超える事からだ、やっと其のことに気が付てきた、13台全マシーンがグリッド定位置に付いたであろう、バーンアウトからスタートにセットする、クラッチバドルを引いて、シフトバドルでギヤーを入れる、アクセルペタルを踏み込む、エンジンの回転はリミッターで制御されている、あとはスタートランプを凝視、スタートを待つ、嫌が上にも緊張が最高潮になる

 スタート合図のレッドシグナルが付き始めた、一斉にエンジン音が高鳴る、全ての不安が掻き消されランプに集中する、1・2・3・4・5ブラックアウト、よし行くぞ!同時にクラッチバトルをはなす、上出来のスsuzuka-start.jpgタートだ!そのままインをキープしサイドミラーで後続を確認、俺より少し離れている、3番手で第一コーナーを順調に無事抜けた、スタートのドキドキ感も消え、獲物を追う闘争心の狼に変わる、監督から無線だ「後続4番は少し離れている、スタートでフライング、ドライブスルーペナルティだ、落ち着いてそのポジションをまもれ」監督の声など耳に入らない、前車との差が少しずつで有るが近ずく、俄然闘志が湧く、23週で2番手がピットイン給油だ、25週でトップがピットへ、監督よりピットに入れの指示が「次の週に給油とタイヤ交換だ」給油タイヤ交換も順調に進み3位をキープしたまま前車を追う、32週目「よし、射程圏内に入った、プレッシャーを掛けるぞ」アウト側から、並び掛ける

 突然4速ギヤーァが入らなくなった、「なんだ!如何した!」素早く何回もギヤー チェンジを試みる、だめだ! 「監督、4速からギヤーが動きません」 「何とか走れるか?」 「はい」 「そのまま走行キープしろ」 一気に7~8秒ほど落ちる4,5番手に抜かれてしまう、「あーぁ、また駄目か!、何て事だ!」 監督「リュウ、諦めるな!最後までやれ!」 「はい、クソ!何とかなってくれ、チキショウ!、入れ、入れよ!」..バドルで何回もシフトチェンジを試し続ける、自然にマシーン(車)に話かけていた「お願いだ機嫌を直してくれよ、如何したんだ、頼むよ!」

 其の度、幾度もギャーチエンジ、偶々何かのショックで、噛んでいるギヤーが外れてくれたのだろう37週目に回復した「ヨシ!ラッキー、監督ギヤー直りました!行くぞ!」いいぞ、其の調子、頑張ってくれよ..又マシーンと話していた 「よし、良いぞ、あわてるな!そのまま、いい子でいてくれよ!少し調子を見てからだ」 監督「リュウ、熱くなるな!冷静に!一周位は確認を取れ」 「大丈夫です、行きます!」

 今度は頼むよマシーンに話しかけ猛アタックを開始、2、3周すると五番手に追いつき、最終コーナーから直線に入っり、ピッタリ後に付きスリップストリーム(slipstream)に入る相手の空気抵抗の少ない力を利用して牽引して頂きエンジンに負担をかけず追随する、第一コーナー手前でイン側に飛び出す同時にアクセルを目一杯踏み込み、上手く追い越す事が出来た

 一周後前車四番に追いつき、冷静に1週後ろに付いてプレシャーを加える、よし!このS字カーブで抜ける、カーブ入り口でアウトに飛び込む、ブレーキを我慢して、頭一つ出た、このままキープだ、此処はお互い譲れず闘争心の激突だ、次のカーブうまくインに飛び込む車体がアウトに流れる、相手も抜き返そうとアウトから突っ込んで来る、フロントタイヤが軽く接触、反射的にカウンターステヤーを充てリアが滑る事を押さえマシーンを立て直す、マシーどうしが触れそうに迫るが何としても譲れない!何とか頭一つ出る、相手も並び掛けて来るが、ねじ伏せ逆バンクを抜ける事が出来、何とか抜く事が出来ダンロプコーナーを直線的に走り、最短距離で少しでも後続車を引き離す

 ..ヤッタぜ!、此れだ、このバトルが快感だ..三番の獲物を追う、前車の真後ろに迫ったが相手も強く百戦練磨、俺の攻撃を上手く左右を押さえる、また監督からだ「リュウ、聞いているか!冷静にしろ、テンション上がりすぎだ!」 「ハイ」返事はしたものの俺の闘争心に火が付き最後まで追回しバトルを続け、幾度となく並びかけたが鈴鹿ピット.jpg抜くまでに至らず、悔しさが残った43週、4番でチェカーを受けた、

 監督の激励の声「リュウ、良くやった!良くやった!惜しくも賞々台には上がれなかったが上々の出来だ、これでスポンサーも納得するよ」 例によって表彰式と全チーム集まった会食パーティーが行われ、他チームとの交流の場である、大分盛り上がっていた、皆から良いレーサー見つけたねと云はれて北原監督も上機嫌、中にはあからさまに家のチームで引き取りたいとまで出る、和やかな時間を過した後、監督やメカニックに後片付けや、レースーカーの運搬等お願いして、先に帰りたい生徒達とタケちゃん、久美ちゃん達とで帰る事にした

 監督から呼び止められ「リュウ、解っているだろうが熱くなるだけでは、レースに勝てないぞ、お前の悪い処だ!気持ちは解るが、もっと冷静に考えろ!」 「はい、すみません気を付けます」 監督の言う通りだ、結果的に最後まで走りきらなければ意味が無い、だがこれがレーサーの心情、ヨシ子にも注意されていたのに、闘争心に支配されてしまい冷静な判断に欠けてしまった、駄目だな!、もしかして俺の心に他のチームの監督にもっとアッピールする気持ちが働いたのかも知れない、メカニック達の最高のテクノロジーと監督とドライバーのヒューマンの結合で有る事を俺は忘れていた

 井原君と孝ちゃんにお礼を述べ早く帰りたい生徒達と帰途に着いた、マイクロバスはタケちゃんの運転で助手席に久美ちゃんが座りようやく定着指定席に収まった、俺は生徒達と雑談して、生徒達はレースの感想を話していた、生徒の一人「龍崎さん、マシーントラブルで残念でしたね、でも後半の追い上げ凄いと云うより、あのバトル執念を感じました」 俺は「君達も戦へば、解かるようになるよ、勝たなければ、意味が無いから、まだまだ、だよ、今日監督から、注意されたよ」 途中夜食を取り今日のレースの展開を生徒達の興奮した話し合いに、俺もレースを始めたばかりの頃を思い出していた、

 夜11時に横浜金沢柴町のヨシ子のマンションに着いた、生徒達とタケちゃんにお礼を言い別れ、ドアーホーンを押し「鶴見さん!ハート付きの電報です!」 「ハーイ、リュウ今開けます」 ドアーが開き、どちらかとも無く抱き合った

     《結婚》

 俺は気になっていた事を先ず訊ねた「おふくろ、如何だったの?」 「リュウ、リュウから報告して」 「分かったよ、とにかく、コーヒー飲みたいな、荷物を片付けてくるから」 その間にコーヒーを入れてむらい、一息入れ飲みながら、マシーンが故障して4位になった事、竹田君達の事、他のチームからの契約の誘いの件を話した 「凄い、リュウ良かったね、観戦したかったし応援したかったな」 ヨシ子は冗談顔で 「リュウのマネージャーやらなくちゃ、それは嘘よ、自分の仕事有るし、そんな事出来ないよ、其れより、リュウに嫌われそう」 

 「それで、ヨシ子はどうだったお母さん、なんだって?」 「私、お母様の事、大好きになっちゃた」 「あんな、厳しいお袋、なに云われたの!」 「リュウは、甘えていて、お母様をちゃんと見ていないから、 お母様、云ってらしたわ、リュウには、一番甘えたい時期に、お父様が無くなり、可哀想だったが、三人の育ち盛りの子供を抱え、それ処では無かったて、お母様の実家の方の援助も有ったが、子供達全員大学まで行かせて」 「お袋、そんな事まで話したの?」 「そうよ、お兄さん、東X大の大学院で教育学研究課程修了、次期教授候補だそうですね、今は教育心理学を研究されているのですね、お兄さん夫婦にも一緒に会いました、優しい方ですね、リュウは何も私に話さないから」

 「そんな事、俺とヨシ子に関係ないから」 突然、今までに無いキツイ声で「関係あります!リュウが私の家を尋ねた事!、私がリュウの家を訪ねた事!、両家族の協力が必要だからでしょう!」 「そんなに、怒らなくても」 少し押さえた様に「リュウ、怒っている訳で無いのよ、現実に、私達二人だけで、生きているのでは無いのよ、それにお母さん、こんな事も言っていたわ、健司は変った子ですがヨシ子さんならあの子の事、理解してあげられる人だからって」

 今度は俺を諭すように「ごめんね、リュウの気持ち判っているの、二人の愛情の問題だから、家族の自慢やそんな物でリュウを好きになって欲しくないと思ったからでしょう?良く判っているわ、そんな事で、私が変わると思ったの、..でもねリュウ、両親がいて私達がいるの、二人だけでは、リュウも私に会う事が出来なかったのよ、リュウがレース出来る事も皆さんの協力が有り関わっているからでしょう、もっと大人にならなくては、だめよ」 初めて、こんなに叱られてしまったが、あまり腹は立たなかった、「悪かったよ、ごめん」 

 「それでね、私も精神医学を習いたいとお話し、お兄さんと話が盛り上がり、楽しかった、これから色々聞けるわ」 「あぁ、兄と兄の奥さんは、お母さんの学習塾も手伝っているの」 「お姉さんも名古屋で高校の教師だそうね、教育一家ね、でも今の教育方針は嫌いですって、ただ、外面の形だけの理想を追いすぎているって、只外国の教育は良いと採り入れて、最っと日本の昔からの教育の良さ、何故良いのか悪かったのか、見直し考えるべきだ、と云っていましたよ、 私もそう思います」 「だから龍崎家、俺だけ、異端児と云ったでしょう、そんな家庭に息が詰まりそうで、お母さんに悪いなと思いつつ何故か自分に嫌悪感を持ちながらも母や家族に尚更反発ばかりして」 

 「お母様がね、健司は一番甘えん坊で、なかなか、乳離れしなくて困り、オッパイにお塩を塗ったんだってね、それと人見知りが激しく、何時もお母様のお尻の後ろに隠れていったて、あの学生を叱った人が今では考えられない、可笑しくなっちゃいました

 でもお兄さんが、話して下さって、お兄さんが高校三年の時にイジメにあって、二年も違うと体力差が大人と子供位違うのにリュウが、不良の番長達に鉄パイプで大怪我さした事聞いたわよ、それ以来お兄さんにイジメは無かったって、その代わり、お母様、怪我をした家を訪ね大変だったって、話していましたよ」 「まったく!そんな事まで」

 「お母様がね、何処が気に入ったか判りませんが、ヨシ子さん、貴女で良かったわ、健司をお願いしますって、言って頂いたのよ、本当に嬉しかったわ」 「ほんとう?あのおふくろが、そんな事云ったの!」 

 実は、一昨日、土曜の夜、お母さんより電話で話があり、そんなに驚いては居なかった、..”「お前にはもったいない位、お前の様な、糸の切れた凧のようにふらふら、何時までも子供の様にヤンチャは、やっていられませんよ!、ヨシ子さんに確り助綱を握って頂かないと、素晴らしい人です、確りお願いしましたから、大事にしなさい」”..と云ってきた、お前は二度目で、ヨシ子さんは言い出し難いと思うから、女性は結婚式楽しみにしているからお前から云って上げなさと、聞かされていた

 俺はヨシ子に改まって「俺まだ正式にヨシ子に申し込んでいないし、返事むらっていないよね!..ウッウン!エート、俺と結婚してくれる?」 ヨシ子は俺の気配で察したのか「はい!不束ですが宜しくお願いします..リュウ、本当はもっと以前にムードのある場所で云って欲しかったなぁ」 「だよね・・!」

 「でも、あの雨の富士でお互いの確認取ったから、リュウの腕時計戴いたとき、どの位高価な物か知っていたし、リュウに断られると思ったわ、それを何の躊躇もなく私に預け、私を本当に信頼しているのだと感じたの、それにあの時、リュウのレーシングスーツ姿、カッコよかったよ、リュウに後から抱きついた、あの時に決めたのよ、リュウはレースの事で頭一杯だったからね、あの時云って欲しかったな」 「ごめん、何か苦手でね!このまま、ズルズルになるのが嫌いだからハッキリさせたかっただけだよ、そういえば、何時もその腕時計しているね」 「そうよ、約束だもの、それに何時もリュウが側にいてくれているようだから」・・・

 「本当ね、言葉って大切よね、少し期待外れだったけれど、雨の富士で私、決めたのよ!これでケジメが付いたわね」 「そうか!それで、俺って鈍感だねムード台無し」 「いいのよ、リュウのそんな処も好いのかも」

 「ヨシ子、結婚式如何するの、何か希望有るの?ウエデングドレスとか、日本式か教会?」 急に抱きついて来て「リュウ、嬉しいわ!ありがとう、..予定ねー?、カレンダー見て、リュウの都合も有るし、ゆっくり、決めようね」 「ねーリュウにも聞いて頂きたいの」 「何ですか?」 

 「私の学校の事、お兄さんに会って、益々勉強したくなったわ、心臓病で手術待ちの子供達、国内にドナーが中々居なく、外国でも絶望的に待たなければ、いけなし経費も凄く掛かるの、そんな子供達の精神的、心のケヤーをしなければいけないと、益々強く思い、本音を云はず都合の悪い物、汚い物には蓋をしてしまう人たち、思春期の悩みや患者の悩み、先ず自分自身を見直し対処しなければいけないの」

 ヨシ子は考える様に息を深く吸い込み意志ある力強い目で俺を見詰め「それで、リュウ此れは、真面目な話よ、以前リュウが哲学者みたいな顔をして云ったでしょう、例えば夫婦が肩を揉みあって、其処が良いのとか、そこじゃぁ無いよとか、平気で言うでしょう、でも殆んどの人達の性行為はタブーしされ、ほとんど話し合いは無いと思うの、特に女性は、不安で自分が正常で大丈夫なのか?こう感じたのよとか、こうして欲しい、これでよいのか?お互い話あった事は無いと思うのよ、

 男も女も自分は正常なのか?その事で悩んでいる人が多いの、でも相談する場所も相手もないのよ、現に院内の若い看護婦からも不安で時々相談があるの、でも、私自身何も知らないから、答えようが無かったの、お互い愛情があれば、相手の為になりたいと思うでしょう、だから私もリュウに感じた通り伝えたかったの

 リュウは意外と知っていたから本当に良かったけれど、私、自分の体、変になったって戸惑ったの、おまえ、変だよ、変わっているって言われたら、一生傷つき落ち込んでしまうでしょう、それだけではなく、かるはずみに云った言葉で、その人の大事な人生を一生狂わせてしまう事も有るのよ

 それに女性特有の病気、乳癌や癌で子宮や卵巣を摘出手術を受ける人達、不安で一杯なの、其の上もう女では無くなるのか?、女性として生きて行けるのか?悩んでも、そんな事考えているのか!命の方が大切でしょうって云われそうで、女にとって大事な事なのに聞きずらいから質問も出来ない人が多いのよ、其処から考えたかったの、女性として子宮や卵巣だけでは無く、子供の問題や其の後、性交渉は出来るのか?夫婦にとって大事な事、悩んでも聞きたくても聞けないでいる人達が大勢いるの

 手術前後の心のケアも大切なの、此れもリュウが力説した通り当っていたわ、私も勉強したの、人の心や脳で大部分、体を支配する事が分ったわ、それによりホルモンバランスも左右されるの、その上で、夫婦間も含め、そう言った女性や思春期等の精神科を専攻したいの、どう思う?」 長い説明で有ったが、真剣である思いを込めた、説明に、納得させられた

 「どうって?お互い良いものを感じられる事が、ストレスも解消され、より互いの愛を深めるし、そう云う病気で、沢山悩んで居る人がいると思うよ、結婚しても、性行為が嫌いな人もいるし、不幸にも幼いときの体験やショックで恐くなり駄目な人もいるよ、女の先生の方が、女性同しもっと気楽に相談出来るし、それに想像の世界の説得よりも実感があって、説得力有ると思うよ、俺には専門的な事、解らないよ、日本では、大切な事なのに、いやらしく不純に思っている人が大勢いるから、本当はそう云う人ほどいやらしい人と思うよ、とにかく新しい取り組み、ヨシ子がやりたいと思うのなら、迷わず、やったら、今だから出来る事も有るし後悔して欲しく無いから、やって見なさいよ、生活の事は何とかなるよ」 明るい顔で「本当に、私、間違っていないよね、良かった!」 「あたりまえだよ!医師でしょう人間の生態や体の仕組、本質、俺より数十倍知っているでしょう、大事な事だよ、間違っているわけないよ、堂々として」

 「よかった!リュウ、いろいろ知っているのね、驚いたわ!..学校、行って良いのね、なるべくリュウに迷惑掛けない様にするから」 「お互い様、だよ 俺も好きなこと、させてむらっているから、..ちょと、待ってね」 俺は、小物入れのバックを自分の部屋に取りにいった、バックとノートPCを持ち戻った

ノートPC.jpg それは二人して鎌倉鶴岡八幡宮に行った時から心に響いていた事である、俺は家庭や子供の事など、余り真剣に考えた事一度も無かった、自分の目的以外、余りにも自分本意であり、家庭を持つ事が何か、ヨシ子が子供を持ちたいと願った時に始めて知らされた

 バックの中から貯金通帳を全部出しヨシ子に黙って渡した、多分ヨシ子は俺の収入など全然、充てにはしていないと思い、 ヨシ子「なに?これ」 「それで、全部だよ、ヨシ子が管理して」

 通帳をめくり「なにこれ!ほんとう?ゼロが幾つ付いているの!」 「前にレース辞めた時、他にやる事が無かったから遊び感覚でレースの賞金や契約金等をインターネット株取引して、当時は上昇株が多く買えば儲かったよ、それで本格的に始め、アメリカの情報が手に入り易くコンピューターから一日中、目が離せなくなり此れでは体や精神まで駄目になると思い止めた、それにアメリカの家のローン関係が駄目になり始めた事を知り、いずれ銀行も駄目になる事知って、その煽りが日本にもいずれ来ると思い、2,3安定した有名な電気関係の会社のだけ残し、株全部売り、それで、本牧のマンション買ったの」

 ヨシ子は本当にビックリした顔で「まだ、家が買える位有るのね、ビックリして頭真っ白よ、リュウは何か会社作れるね」 「会社なんて全然駄目、俺には無理、才能ない上に性格的に駄目、それより、毎月の収入を見て、それで生活何とか成ると思うよ?」

 ヨシ子改めて俺を見て「ちょと、待って、今頭が混乱して、リュウはそんな素振り一度も見せなかったから、ネックレスとピアス買うときも、無理して買ったと思ったし、スポンサー探しに苦労しているみたいで、リュウの夢消したく無いし、だから私のお父様に頼んだの、それと、これリュウの物よ頂くわけには行かないわ」 「二人の物だよ、俺オフクロの苦労、小さい頃から見ているから、貧乏性なのかな?、これからは俺が生活費、責任持たなければいけないでしょう、その給料で生活費とヨシ子一人位学校に行かせる事出来ると思うけど?」 ヨシ子は通帳をめくりながら「これって、毎月同じ金額が入っているのですね、思ったより頂いているのね、リュウは先月、余り務めに行かなかったのでは?」 

 「給料と云うより契約ですから、アメリカの仕組みは必要で有れば毎年契約してくれます、でも要らなくなったら、切られてしまいます少し不安定、だから日本政府からの方が、安定しているって、話した事、有りますよね、レースの方は余り当てにならないし、レースでの契約金これは、俺に使わせて下さい、色々出費があるので、いいですか?」

 まだヨシ子は戸惑いながら「ええ、勿論よ、リュウの仕事の必要経費ですから、リュウって、驚かされる事ばかり?子供か大人か解らなく成ったわ、リュウに聞いても、”どうにか成るよ”、だけで..そんな夢を追ってるリュウを見るのが好きになったのだから、私が遣らなければと思っていたから、何か肩透かし受けたようで、戸惑ったの、それで私のお金は如何するの?」 本当に俺の金など充てにしていなかった、俺の夢を壊す事はしない覚悟で結婚に踏み切ったと思われる..とても其の心が嬉しく思った、 

 笑いながら「そうだね!此れからヨシ子の”ひも”でもやろうかな!」 「リュウには出来るわけないよ」 俺は自分に言い聞かす様に「解らないよ!、結婚するって、こう言う事だよね!」

 「此れから何が有るか解らないからヨシ子自身の為に捕って置いたら、それから銀行取引や振込みはインターネットで出来ますから、それと、ネット銀行、此れは電気製品が好きなので、ネット、ショップの為少しだけ、ヨシ子もネット利用すれば、必要な分普通銀行から、暗礁番号などもれ易いから、そのつど振り込んでいます、後で、暗礁番号など教えます

 とにかく今日はもう遅いから休もうよ、本当にヨシ子の進みたい事をやれば良いよ」 ヨシ子はまだ信じられない顔をしながら「本当にありがとう、助けてくれて、正直、リュウは好き勝って自由にやっているかと思い、充てにはしていなかったの、本当に思いも依らなかったわ、リュウは意外と生活力有るのね」

 「おふくろ、一人で頑張っている姿見ているから、これ以上迷惑掛けれないよ、まだレースの事で話したい事あるけど、もう遅いから明日にしょう」 「もう、こんな事が有った訳では無いですが、リュウが居ないと、寂しくて、リュウの体、どこか触っていないと眠れ無くなっちゃた!」 「あぁ、俺もだよ」 「ほんとうに?」 「あたりまえでしょう!」 「フッフ、リュウは、お母様も云っていらしたが、甘えんぼうでオッパイ離れしなくて、困りましたて、今も大好きでしょう」 「男は皆、好きだーよ~ん」

大田家.jpg 翌日何時もの様に其々仕事に出かけ、久振りに近くの漁師の居酒屋で夕食を取る事にした、夕方六時頃、居酒屋のドアーを空けた 「いらしゃい!」 大分混雑している「なんだ、リュウじゃない、お嬢さんも一緒かい」 「ハイ、今度、柴町に住む事にしたから、挨拶に、此れからちょいちょい、寄らせてむらうよ」 「又、如何して此方に住むのかね?」 ヨシ子に手を差伸べ「うん、先生と結婚するんだ!だから、この先のマンションなの」 「へー、ビックリしたな、もう当分結婚しないと思ったよ、こんなに、美人のお嬢さんと!」 

 奥のお客さんに向かい、大声で「ねー、皆、リュウが結婚するんだって」 ざわざわしていた人達が一兜焼きjpg.jpg斉に此方を向き、拍手と歓声が上がった、奥の席で顔馴染みの若者達が、席を空け「こっちに来いよ、ちょうど鮪の兜焼きを頼んだ処だ、お祝いしょうぜ、こっち、こっち、ここの席あけたよ」 皆この近所の漁師の息子や釣り船屋の息子等の集まりだ

 空いた席に照れながらヨシ子と二人座り「じゃあ、お邪魔するよ」 「リュウ、凄い美人で羨ましいねー、紹介してよ」 女将さんが「バカだねー、そんなにガサツに聞いたら、お医者さんの先生がビックリするだろう」 「へー、先生なんだ、俺も診てむらいたいね」 女将さん「頭でも診てむらいな、こいつの頭は取り換えても良くはならいけどね」 俺は「まあまあ、紹介するよ、横浜X大病院の心臓の先生で佳子さん」 「ヨシ子です、これから、宜しくお願いします」 女将さん「それじゃあ、おおこぜ.jpg前は診てむらえないね、心臓、バカが付くほど強いから」 「それは無いよ!女将さん、俺だってこんな美人に、弱いよ!心臓バクバクしているよ」 お客さん皆大笑い 女将さん「先生は飲みますか?」 「ええ、ビール頂くわ」 「先生はビールとリュウはウーロン茶で良いね」 俺は「はい、あと何か煮付けと刺身、飯、お願い」 「じゃあ、オコゼの煮付けと刺身、カワハギが有るから見繕うね」 ヨシ子皆に向かって「貴方達、健康診断受けているの?」 釣り船屋の若い船頭「俺なんか、病気になった事無いから、でも先生だったら診てむらいたいよ」 ヨシ子「皆もそうよ、診断受けた事なさそうね、本当に安心出来るか調べて下さいね」 皆とそんな話しと冗談を言鮪すきみ.jpgいながら、楽しく呑んだり食べた、帰りに支払い行くと、

 女将さんが「今日はリュウの結婚祝いだから料金は要らないよ」 俺「だめです、ちゃんと、取って下さい」 女将「素直じゃないねー、お祝いだから良いんだよ」 「はい、そうですか、ありがとう御座います」 ヨシ子、俺にいいの、と問いかける目で見、俺は心で”うん”と呟く様に小さく頭を振った、それを見て「かぶと焼きや、珍しい物ばかり、とても美味しく頂きました、今日はご馳走になり、ありがとう御座いました、皆さんにも宜しくお伝え下さい」 女将嬉しそうに「先生も此れに懲りずに時々来て下さいよ、帰り気を付けて」 その後、真っ直ぐ家路に着いた

 部屋で寛ぎながら「次は、8月8,9日モトギまでレースないから、引越しや住所変更の手続きしなくては」 「そうね、リュウの住所変更時に結婚届け、一緒に提出しましょか?」 「結婚式と一緒で、なくて良いの?」 「両親と相談したり、式場やまだまだ時間が要るから、何か良い日を選んで先に出しましょうよ」 「うん、そうだね、俺の誕生日3月17日だから7月17日にしょうか?」 「ええ、本当!私もよ1月17日、奇遇じゃぁない、そうしましょう、リュウが絶対忘れないから」 

 「決まりだね、..それとね、来年のレースの契約、一流チームから話があったけれど、如何するか、迷っているんだ!今度のレースの時、返事聞かれると思うの、今までと違って全部やって、くれるし、次へのスッテプアップも見込めるし契約金も桁違いに良いと思うし..でもね」 「リュウの長年の夢が見え始め手を伸ばせば届く処に有るのに、迷って!自分の心の中では決まっているんでしょう、

 なのに迷うなんってリュウらしく無いね、私に相談して”其れは他のチームの方が良いに決まっているでしょう、移りなさい”って云はれ、それで表彰台に乗っても、リュウは、心から喜べないでしょう、解っているわ、リュウが恩有る人を捨てる事が出来ないで迷っている事、こう云う答え聞々たかったのでは? ”リュウには、そんな事出来ないから今まで通りやりなさい!”って」 俺の考え手に取る様に解かっている、まいったな! 「多分皆も不安に思っているから、早く結論出さなくては、世界が望みだから上を狙いたいよ、でも必ずしも成功出来るとは限らないし、北原監督に拾われたから今の俺が有る、うん此れで、決まった!、今まで通りのチームでいくよ」 「リュウが後悔する事無く納得する様にしたら良いんじゃない」

 ヨシ子「それでね、話違うけれど、前に話した事あるでしょう、私の患者の子供、海斗(カイト)君と云うの、レーサーが夢なの、一度リュウのレース如何しても見させて上げたいと思っているけれど、どうかしら?」 「そんな事して、良いの? 俺はかまわないけど?」 「拡張型心筋症なの、心臓を提供してくれる(レシピエント)..ドナーが見つからない限り、直る見込みが無く体が成長する分、心臓に負担が掛かるの、今もどんどん悪くなっているの、部長には私が付いて行くからと話し検討していただき、両親に了解得ているから」 「決勝レースだけ見るだけだったら、時間的にも余り負担がかからないけれど片道、車で約3時間半掛かりますよ、ヨシコがそんなに云うには訳が有ると思うから、手配するよ、」 

 「車なら大丈夫よ、酸素吸入も点滴も出来るから、リュウは本当に優しいから!これで、あの子と約束守れるわ、先生の婚約者はレーサーなのって云ってしまって、あの子車が好きで好きで何時も私に話すのよ、それで如何してもリュウを応援したし、レース観たいって、聞かないの、あの子の両親、奥さんの方が私の中学、高校時代からの親友なの、夫は商社マンで海外を行ったり来たり、出来たら、是非お願いします、見させてやって下さいと云われたの」 「分ったよ、じゃー明日、病院へ行ったら、その海斗君の洋服のサイズ聞いといて」 「どうして?」 「うん、プレゼント、俺達のチームのブルゾンでも、と思って」 「リュウて!だから、皆好きになるのね、きっと喜ぶわ」 

 ヨシ子は結婚式も嬉しいだろうが、もっと自分を向上させる授業を受ける事と今の仕事を大事に思っていると思い、式の事はヨシ子に任せようと思った

 「それと、リュウが居酒屋に連れていった、意味解かったわ、今まで、あの人達の様にガラ悪い人、話もしないで、ただ敬遠して居たけれど、皆、素晴らしく、本当は優しく愉快な人達、これからは、ああ云う人達のお話も真剣に聞けるわ」 「そうだよ皆、良い奴だから、解かってくれると思って」 「それと、高級料理だけが、美味しい味では無いって、漁師の経験から新鮮さと其の物の旨さを引き出しているよ」 「本当にみんな美味しかった、リュウって、不思議、色々な層の人と知り合いね、きっと 私、鼻持ちならない人なっていたのかも、本当にリュウと逢え、良かった」 「それは、ヨシコ自身が変えようと思っていたからだよ、俺だって、ヨシコともう離れられないよ」 これは本音だ 「本当?嬉しい!」

 翌日、会社(ベース)から、監督に電話連絡し、ヨシコと結婚、籍だけ今月17日に入れる事、又、心臓病の子供、次のレース、ツインリング茂木に連れて行く事、子供用のレーシングスーツ(オーバーオール)とジャケットをサイズは後で知らせるから用意して下さいとお願いした

 「リュウ、解かっているよ、他のチームから誘われて居る事、如何する?」 「今まで通り監督のチームでやらせてください」 「俺のチームで本当に良いのか?、お前の夢叶えられ、もっと上の海外レースも出来るチャンスだぞ、俺に遠慮は要らないよ、本当にそれで良いのか?」 「ええ、もう決めましたから、それと他のチームはビジネス化していてダメだと思ったら、俺なんか直ぐお払い箱だから、監督!今のままで通りお願いします」 「そうか、解かった、お前の強情で頑固な処、知って要るから、何時でもこだわらず、チャンス有ったら良いんだぞ!、子供服手配しとくよ、それから、ヨシ子さんに、結婚おめでとう、と伝えてくれ」 「有難う御座います、宜しくお願いします」 

 それから母にも17日に籍だけ先に入れる事を連絡した、母「ヨシ子さんから、連絡ありましたよ、お前が頼りないから、本当に確りしなさい!」 相変わらずだ、「もう同じ間違いを二度とするんじゃあないよ、お前にはもったいくらいな人だよ、大事にしなさい」 の返事だった

 その日の夕食前、ヨシ子からも「両家のお母さんに入籍する事、連絡しましたから、私のお母さんがリュウに何時でも夕食に、いらして下さい、と云っていましたよ、あれから何か気に入た見たい」 「ありがとう、俺もお母さんに、連絡したら、ヨシ子から、連絡があったって、宜しく云ってください、だって、それと海斗君のサイズ分かった?」 「今6歳だけど、本当は学校に入れなければいけない年なの、やはり、成長も遅く5歳位のサイズで良いみたい」 「判った、直ぐに連絡するよ、それと監督に来年も頼みますって、話したよ、それと入籍する事、監督がヨシ子さんに、”おめでとう”宜しく、って伝えて下さいだって」 「大事な契約の事電話でいいの?」 「其の方が良い時も、あるの、長い付き合い、感情が入らない方が良い時もあるの、俺の言葉で全て察しているよ」 「それなら良いが」 

 直ぐにスクール事務所に電話をいれた、久美ちゃんが受け「ああ、クミちゃん、監督は?」 「リュウさん、今監督帰りましたが」 「それじゃあ、明日でも伝えて下さい、子供のレーシングスーツのサイズ5歳用でお願いします」 「その話聞ています、サイズ5歳用ですね、明日メーカーに注文出しておきます、それとリュウさん、内のチームに留まって下さる事、聞きました、嬉しいです!」 「まーな、これからも宜しくね、次のレース8月9日朝一にもう一度、マイクロバスで、家のヨシ子と、その子と母親3人ですから迎えに来て下さいと伝えてね」 「竹田に伝えておきます」 「それじゃあ、頼んだよ、それと竹田君と旨く行っているの?」 「ええ、おかげさまで、仲良くしています」 「良かったね、じゃーぁ又ね」

 ヨシ子「リュウて、本当優しいのね、有難う、きっと喜ぶわ」 「当日まで、海斗には内緒だよ」 「解ったわ、リュウレース前に病院で海斗君に一度合って頂ける、海斗君のお母さんにも?」 「いいよ、それと今度、金曜日17日半日に成らない?結婚届け提出の日、後二人だけで何所か食事どう、それともう一つ土曜日、両家で集ろうよ、確か能見台に予約制の懐石料理の店、今でも在ると思うよ、確か電話番号控えて有ると思うから、予約入れておくよ、どう?」

 「良いわね、多分大丈夫、スケジュウル調整するわ、お母さん達に連絡しなくては、じゃあ私何人になるかお聞きします」 「今回の会食費用俺達の結婚の為だから男の俺がレースの契約金の方から出します少しはカッコ付けたいから、此れも必要経費かな?冗談ですよ!、両親に伝えてね」 「そうするわ、リュウて何処からそんな考え浮かぶの、感心しちゃう」 「ヨシ子からに決まっているでしょう、ヨシ子ならきっとこうすると思って」 「まぁー!調子いいんだから、お母様でしょう?」

 「まぁね、これ全然違う話だけれど、前から思っていたの、朝や夕食後の皿洗い俺がするよ、ヨシ子に、少しでも勉強する、時間作って遣りたいから」 ヨシ子が突然抱き付いて俺をソファーに押し倒して来た「リュウて、どうしてそんなに優しく成れるの?ヨシ子、駄目になっちゃいそう!」 「ダメに、なったら困るよ、夕食まだだよ、お腹空いちゃた!」 ヨシ子は俺の額を突いて「リュウは良いとこで、本当お腹なんだから、直ぐ仕度するわ、少し待ってね、 リュウ!心から愛しているわ!」 「はい俺も、 腹が空いては戦が出来ぬ、て云うでしょう、この頃、ヨシ子、手早く応用も良いし栄養バランスも良く、料理凄く美味しくなったよ」 「リュウ、ほんとう?嬉しいわ!フフ..男は戦なの?ラブ & ピースでしょう!..急いで仕度します」 俺は何って素直で率直で可愛い人だと改めて思いました 

 ヨシ子は夕食の支度をしながら「リュウ、今朝、楽しい事、あったのよ、通勤途中と柴口の駅で、知らない、おじさん達に、先生、おはよう、お仕事ですか?て皆に笑顔で言われたの、私の心も何だか明るくなるの」 「あぁ、きっと、昨日、居酒屋に居た人達と思うよ」 「ええ、私もそう思ったの、何か毎朝楽しみになりそう、これもリュウの御蔭ね」

やはり!.jpg 17日金曜日、午後、横浜金沢区、金沢文庫の市役所に結婚届けと住所変更の届けを提出して、役所の係員が「お姉さんが代理ですか?」 俺は「生年月日を確認して下さい!」 係員、慌てて「これは、大変失礼しました、おめでとう、御座います、お幸せに!」 バツが悪そうに、お辞儀を繰り返していました、手続を済ませ役所を出、ヨシ子「やっぱり、年上に見えるのかしら?」それほど腹は立てていない様子 「俺が、子供の様に見えたからだよ」 「リュウ、本当だから、気にしなくても良いよ、でも、余りにも、あっけ無いね、此れで結婚!」 「俺も、そう思うよ、もう少しクラッカー等で皆が、おめでとう、言って欲しいね、受付の所全体だけでも良いから、祝福出来ないかなー、お役所仕事でセンス無いね、所詮、紙切れだからね、俺達の心の有り方でしょう」 

 「最近リュウに押されぎみ、私の方が子供ね、私、少しお金の事でイライラしていたの、其れなのにリュウ何にも云わずに、受け止めてくれて、嬉しかった」 「良いんだよ、解っているから、それと、言い忘れたが、あの中から結婚式に使ってもかまわないよ、ヨシ子に全部任したんだから」 「ありがとう、出来たら、私達の子供の為に使いたいの」 「まだコウの鳥が来ないのに、余り、子供を甘やかす様な事は良くないよ、少しは俺達の為に使おうよ」指輪.jpg 

 気を取り直し、横浜元町まで足を伸ばし宝石店で二人の結婚指輪とペンダントを奮発し、プラチナシルバー