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誰にでも、誰にも汚されたくない、秘めた恋や夢があったはず

         運命は愛の暮らしを引き離し
          時の漣は、残された二人の足跡を音も無く消てゆく・・
           やがて、吹き抜ける北風に冷たい忘却の夜へと流されて・・・
         人生は道標べもなく
           そして又、季節は移り行き夢の欠片、集めて・・
            そおっと抱締めたとき、まだ残る、ぬくもりが、悲しくて
             三叉路にはシグナルも無く、雨に濡れて歩く旅人・・・・

枯れ葉の流れ着く先 【幻編:総表紙】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

 

表紙:イラスト.jpg    
       イラスト製作:Ma~kun    作:Touch-ojisan                     
 漫画イラスト庫STUDIO EXCALIBUR 協賛・提供
小説の挿絵では素晴しさを半減しております、宜しかったら大画面で見られます 
下記URL:ま~くんまでポッチと、お立ちより下さい、
    ブロガーの皆様の貴重な感想やアドバイス、励みに、心よりお礼申し上げます
登場人物の紹介 
鶴見 佳子.jpg
林 美奈子1.jpg
龍崎 健司.jpg
孝ちゃん2.jpg北原 監督1.jpg
久美ちゃん&孝ちゃん1.jpg長崎 浩子.jpg長崎 海斗.jpg
Y & R-FJ.jpg
北原 監督 & 龍崎 佳子2.jpg

 

訪問有難う御座います、ストーリーは下記ページより前編1から順次始まります、登録が逆になっていますので下段が、より申請が新しくなっております、順次戻る様に読み進めて下さい、(枯れ葉の流れ着く先  【前編 裏表紙】)《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2012-03-31-1 

宜しくお願い致しますm(__)m。


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枯れ葉の流れ着く先 【前編 表紙】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

枯れ葉 前編裏表紙.jpg
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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編1】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

小説ですのでStory【前編1】~Story【前編10】【後編1】の順序でお読み下さい、読み易く登録が逆になっています★

  《回想:reminiscences》

 Formula Nippon Twin Ring Motegi(フォーミラー日本 モテギ・サーキット 8/9日)

リュウヘルメット2.jpg

  真夏のギラギラした太陽を時折り千切れ雲が遮る、ここモテギ・サーキットは畑や田園に囲まれた静かな村であるが、この日ばかりは、流行のファションに身を包んだ若者達や派手な車が集まり交通麻痺が起きるほど賑わっている。

 サーキット内ではコース上のスタート位置に運ばれたフォーミラーカーに各レーサーが乗り込み、マシーンの準備や最終チェックが終わったメカニック達や華やかなレース・クィーンも立ち去り。 フォーメーション・ラップを終えた各マシーンが予選タイム順に決められたスタート・ポジションに着いている。

 サーキッド・スタンドを満席に埋めた観衆の歓喜や騒めきも今は消え、スタートの瞬間を固唾を呑み見据えている。 今、正に13台のFNマシーンがスタートの時を迎え、スタート位置に着いたフォーミラーカーのコックピットに納まっているレーサー達は今は遅しと待ち侘びている。 彼らは一斉に高圧縮高回転の甲高い排気音を”ヒューンフォーンパォーンパォーン”と戦場の雄叫びの様に、鼓膜が破れんばかりに響かせ、聞く者の腸(ハラワタ)に染み渡り、身体の奥底から痺れ、官能を呼び起し、嫌が上にも興奮が高まっている。

 目の前のスタート合図のシグナル・ライトを見詰める俺は逸り高鳴る気持ちを抑える様に静かにステアリングの手応えを確認する、一人狭いコックピットに押し込まれ、これまでの待機時間の孤独と不安が、闘志に変わり、戦闘態勢に入る時でもある、ググッと力強くステアリングを握り返し”たのむぞ”とマシーンに祈るように、つぶやく。

 ヘルメットのバイザーを下ろしスタートの瞬間に集中、スタート・シグナルを凝視しする、ランプがクローズアップされ、その信号以外、全ての音や物が俺の中では掻き消され静寂其の物だ、ただ心臓の鼓動だけが”ドックン、ドックン、ドックン”とやけに大きく響く。

 スタートシグナル・ライトが網膜一杯に赤く映り、一つずつ灯き始めた、さー、いよいよだ!逸る気持ちを抑えながらスタートの瞬間にタイミングを合わせる、シグナルが、1つ2つ3・・4・・5つ全て点灯、次の瞬間ブラックアウト!全てのライトが消える、反射的にテアリング・クラッチバドルを放しアクセルを踏み込む、スタートだ!。

 サーキット全体の空気が嵐の海岸に激しく打ち砕ける波の様にマシーンの排気音を満席に埋めた観客席に轟かせ、激しいスリップ痕を残し白煙を上げながら一斉に13台のマシーンのタイヤが廻り始める、満月にしぼり込まれた弓の弧から矢が放たれる様に、俺はドライビング・シートに体が押し付けられ張り付くほど強いG(圧力)を受け走り出す 「よし!上出来だ!うまくいった」俺は心で呟く。 スタートは微妙で難しい、パワーを加え過ぎてもタイアがスリップを起こし地面との摩擦抵抗を失い、マシーンは前に進まない、弱すぎてもエンジンの立ち上がりが悪く、相手に交わされ、遅れを取ってしまう、スタートは微妙で難しいものだ。

 前車の僅かに開いた脇を抜ける様に、第一コーナーを目指し、空かさずステアリング・クラッチを引きステアリング・バドルでシフトアップ、アクセル・ペタル踏み込み、又戻す、もう一度、反射的に素早くバドルを握り、二度目のシフトアップ、今度はこれでもかとアクセル・ペタルを床が抜けるほど強く踏み込み加速する、エンジン回転数はレッドゾーンを遥かに越えている、間髪を入れずバドルで変速ギアーを3速に入れる。 此処までの操作は僅か2秒足らずの間である、此のクラスのレースでは、性能がほぼ同じ、第一コーナーまでの先頭争いが重要、其の後のレース結果にかなり影響するスタート事故1jpg.jpg

 解き放たれた野生の狼達が一斉に獲物を追い詰める様に13台のマシーンが第一コーナーに傾れ込む、 俺はバック・ミラーを確認し、トップを運良くアウトから交わし押さえ込みコースのインに付く、

 迫り来る第一コーナーぎりぎりで間髪をいれず思い切りブレーキング、目の前に見えるフロントタイアのブレーキデスクが熱をおびて真っ赤に染まる、同時にシフトダウン、タイヤをロック寸前で解き放す、 ステアリングに集中し、マシーンの挙動、リヤーの横滑りを抑える為にカウンター・ステァを微妙に充てながらマシーンの挙動を研ぎ澄ました全身の五感で背中や尻から動きを感じ取り、空かさずアクセルを細心の注意を払い踏み込む、第一コーナーでの激しい先陣争い!。

 突然、俺のドライブするマシーンが、予期せぬ衝撃を受け激しく前後に回転、マシーンのリヤーから体操のムーンサルトの様に前後左右錐揉み状態で持ち上げられマシーンと共に舞い上がる!、地表と 空が真っ逆さまに見えた次の瞬間! 俺は闇の中へ・・・・。

ポピー.jpg 暖かい春を思わせる日差しの中、何処までも広がっているポピーの花畑の中に大の字に寝そべってる俺がいる、子供の頃から今の俺の生きて来た生活が、まるでビデオの早送りかフラシュバックの様に脳内のスクリーンに映し出されている、人は走馬灯の様にと言う、夢は色付では見られないと伝えられているがポピーの花が赤や白、ピンクに、空は何処までも青く澄んで鮮やかに見える。

 すっかり忘れていた、近所のおじさんやおばさん、小学校好きだった同級生、俺の兄貴、ガキ大将、先生、職場の同僚、自動車レースの仲間達と練習中に亡くなった友人と家族、外人、行き付けの喫茶店の叔父さん、女店員、焼鳥屋のおやじ、レースクイン、コンパニオン、行き付けの食堂の叔母さん、レストラン経営の陽気な外人とその妻、居酒屋の女将、以前別れた妻の汚れを知らない天使の様な笑顔、和服の女性、そして入院中の男の子、 
なぜか分らないが電車の中で向かい席に座った戦慄を覚えるほど恐い顔のおじさん、だが何故か彼の目に吸い込まれ話し掛けたくなる衝動に襲われるが俺の頭の片隅で止めろ止めろと囁く、かろうじて流れ去る景色に目をやるが辺りは真っ暗闇に・・

Formura-RYy.jpg 突然映像がスローモーションに変わる、何故か入籍したばかりの妻、ヨシ子が俺の頭をかばうように懸命に抱きとめ柔らかい胸の暖かさに安らぎを感じていたが、突然嵐の渦に巻き込まれ、ヨシ子の意思に反した様に苦悩と悲しげに徐々に離れ漆黒の闇の中に消えかけて行く、如何したのだ!一体何が起こっているのだ!俺は懸命にもがき助け抵抗を試みるが、いつの間にか俺の腕の中で今にも壊れてしまいそうで、どの様に抱いたら良いのかそれすら判らぬまま、不安定に膝の上に抱かれている女の赤ちゃんは?何んなんだ?。

 ただ声も発せず懸命に俺を見詰めている、此の小さい物体に阻まれ、何故か体を動かす事も、声すら出ない、ましてや手を離せば、何処までも続く深い々暗闇に引き込まれ、その子が飲み込まれてしまいそうで、ヨシ子に手を差し出すことも出来ない、俺は引き込まれる様な底なしに広がる漆黒の暗闇に漂いながら徐々に消え行く悲しげなヨシ子を、赤ちゃんを膝に抱いたまま、ただもどかしげ見守り、声にならない声をあげる”何故なんだ、ヨシ子!俺を確り捕まえて放さないでくれ!もっと確り・・”、必死の抵抗を試みるが、ウウッどうしたんだ助ける事も出来ない、俺の心と頭は張り裂けんばかりだ、いったい何が起きているのだ・・クー!?

 ..訳が解らない!恐怖の潜在意識なのか?それとも抑圧された欲望なのか?それとも未来への警告なのか?。一体今のはなんだんだ・・!。

上高地 河童橋.jpg 混沌とする中、目まぐるしく場面は突然変って?。 今はトレッキングブームで大分様変りしたが、高校生の頃、余り訪れる人も無かった、上高地の河童橋を友人と渡り大正池や冷たさで一分も手を差し入れていられない雪解けの清流、梓川上流の明神池付近の山小屋でキャンプ生活。

 澄みきった群青色の深い空、爽やかで少し冷たい透明感を覚える、頭がズキンと痛くなる様な清涼感とマイナスイオンに満ち溢れた空気、思わず深々と深呼吸してしまう、其処からの朝日に浮かぶ北アルプス穂高連山の山頂付近の残雪が銀色の輝き、時々突風に舞いきらめく粉雪のスターダスト、全てが新鮮で美しく素晴しく感動した。

 焼岳では未だに上がる噴煙、硫黄の臭いに咽、槍ヶ岳、北穂高岳では天候も良く涸沢カールの照り返す雪渓を友と二人アイゼンを付け黙々と上がり岩場を少し恐く感じたが踏み外さない様に岩にしがみつき、梯子や鎖につかまりロープを頼りに時にはピトン(ハーケン)に足場を委ね、屏風岩を右手に眺めながら、慎重に慎重にやっと登り着き友と二人喜び合い山小屋で一泊、翌朝、頂上で見る雲海からの御来光、余りの素晴しさに息を呑み言葉を失う!。

 疲れも忘れ、全ての雑念が洗われ、大袈裟では無く、その雄大に広がる光景に宇宙と魂の融合すら感じ心が揺さぶられるほどの感動を覚えた、一歩踏み出せば良質な羽毛が果てし無く広がる雲海の上を歩き寝転び遊び回れる誘惑に誘われる様な感覚に陥る。 神秘的な宇宙との関わりを感じ始めたのはその頃だろう。 中学三年生の時、反対する母を友と説得し八ヶ岳連山を縦走した記憶が逆行し蘇る、強烈に印象に残っていたのだろう、鮮明に浮かぶ。

お神渡り諏訪湖1.jpg 眼下には武田信玄の息子勝頼の危急を知らせるため、政略結婚を強いられた八重垣姫が勝頼の戦い用の兜を脇に抱え、凍てつく氷に覆われた諏訪湖に入水自殺した、戦国の悲劇そんな事を思い浮かべたのは多分兜をレース用ヘルメットに見立てたからだろう。

 やがて青く澄んだ水を湛える諏訪の湖が見え初め、突然体全体に震えが走る寒気を覚える、如何したのだ!身体が凍りつきそうだ、今では滅多に見られないが真冬湖一面に分厚い氷が張り不気味な音と共に膨張して割れ目に沿い盛り上がる、その高さは50cm~70cmはある、其れはちょうど上諏訪神社(大社)から(下社)下諏訪の神社に架けて割れ目が盛り上がる、それは上社の男神が下社の女神に会う為に歩き渡った跡だと語り継がれ、御神渡り(おみわたり)の神話が有る。

 今度は体がやけに暑い汗が滲み出てくる、そしてこの湖畔には10m位吹き上げる間欠温泉がありその周りは冬でも暑いくらいだ。 七年に一度の御柱祭りがある、山出しの大木が人々を跳飛ばし崖を下る、御神体は自然が神、諏訪神社の奥に広がる山々そのものである。 激しく目まぐるしく光景が移り変わる。

蓼科山.jpg 諏訪の町を右手に駆け上り、霧ヶ峰高原の景色に目を奪われながら、ビーナスライン添いに白樺湖を通り過ぎると、蓼科湖が朝靄の中に現われる、目の前には少し丸みをおびた諏訪富士と呼ばれる蓼科山が迫って見えるか信州の蓼科高原。 天候は変り、初夏の日差しの様に、暖かく、ぽかぽか陽気、やけに喉が渇く、辺りを見回すと、日差しの中に小川が見える、漣が太陽に照らされキラキラ光って眩しいほど美しい、足首ほどの水嵩に小石が敷き詰められている川底が見える、裸足で水と戯れ、その冷たさに驚いた覚えがある。

 何処かで見た光景だ、確か小学生の頃、夏休みキャンプで遊んだ場所だ、時空(space-time)を飛び越え、何故ここに居るのかは解らないが、山中から雪解けの湧き水、澄んで冷たく美味しそうだ、きっとこの体の火照りと渇きを癒してくれるだろう、早く喉を潤し渇きを止めよう、その美味しい湧き水を飲みに、起き上がろうと..

 その時、何処ともなく”リュウ!リュウ!起きて、ねぇ起きて!” 母の呼ぶ声が幾度となく聞こえたような気がして目覚めた。 ”アゥゥー..なんだ夢か!遅刻だ!早くサーキットに行かなければ”、だが肩と腰の辺りに痛みが走り頭は割れる様に痛い..

 一体如何したと言うのだ?....何時もの俺の部屋ではない!レース仲間がなぜいる?母は何処に?..そうか!母だったら、リュウとは呼ばず、健司と呼ぶはず、何故、母と思ったのか?不思議だ!。
 混乱する頭も納まり、..俺は、レース・スタート直後第一コーナーへ全車なだれ込むなか、ライバル車を頭一つ押さえ突入、ブレーキングと同時に減速、突然、俺のレース・マシーンに思わぬ何かの力が加り車体は前後に回転、何かに背中を吊り上げられた様に空中に舞い上がり、逆さまに地面に叩き付けられて後頭部を強く打ち、意識を失ったまま病院に運ばれ、ベットにいる事が解った。

 頭の衝撃により異常興奮や発熱、脳内のメモリー回路(neuron-synaose)に異常電位差を起しイメージ・メモリー(image-memory)が遠く昔の忘れていた記憶を激しく呼び出したのではないか?。 この長い夢は俺が目覚める、ほんの数秒前のわずかの間の事と思われる、其の上、体温調整も狂っていたのかもしれない。 余談だが、脳内にはもう一つ論理メモリーがある(logic-memory)、その全てを空中から、眺めている別の俺がいる、それを人は幽体離脱と云うが、全て頭の中で起こっている事と思う。

 あの光景は幼い頃、母に包まれていた頃の憬れの慕情なのか?、だが不思議だ!このまま死を迎えたら俺の世界は消えてしまうのか?何が起きようと、暗黒の無の世界なのか?それとも、あの赤ちゃんに俺の魂が移り、この宇宙と地球の変化、人の営みを映し出すと云うのか?、人の願望で有って、ありえる訳が無い希望的観測に過ぎない。

北原 監督気が付いた.jpg 「おう!..気づいたか、心配かけやがって!」チーム監督(北原)の顔が眼の前に迫る、こんなに優しい監督の顔は見たことがない、しかも俺を覗み込む眼鏡越しの目には微かに潤んで見える。 監督は以前同チームでレースに出場した事もあるが現在我がチームのオーナーで監督である、アラ・フォー四十代に入ったばかり、顎から口に繋がる髭と眼鏡が似合う渋めで論理派タイプである。

消え行くヨシ子.jpg ..夢の中で悲しい顔をし消えて行く、入籍したばかりの妻・佳子(ヨシ子)の姿を思い出し、再び起き上がろうと試みるが肩と腰の辺りに痛みが走る、慌て辺りを目だけで探る、俺の胸元で心配そうに見詰めるヨシ子を確認、俺の手を確り握っている、その手を握り確認の合図を送る、ヨシ子の優しく温かく軟らかい手で握り返して来て安堵した、そしてあの俺を呼ぶ声がヨシ子で有った事で母と間違えた事が納得できた、多分此処は、モテギ・サーキッドの近くの病院のベッド上だ

 その後、自宅近く横浜の妻の勤務する病院に移り翌日、主だった検査を受ける、結果良好、ヘルメットや肩首ホルダー(nack-holdar)ロールバー(roll-bar)、6点式シートベルト、強化アルミのモノコックのおかげ脳や骨にも異常も診れず熱も下がり、奇跡的幸いで打撲だけの負傷、もしステアリング(steering-wheel)から手を離していたのなら、かなりのダメージが有ったと思われる、頭をかなり打ったが、直ぐに退院出来た。

 数日後、痛みも治まり体も回復し、錦糸町駅より2,3分のビル五階の一郭にある、俺が所属する、ジャパン・カーレーシング・アカデミー事務所を、妻ヨシ子と訪ねた、チーム監督の北原さんやメカニックのクルー達と挨拶を交わし、あの事故の話になり、レースでは良くある、後続車の前輪タイヤと俺の車の後輪タイヤの追突でテールを乗り上げたまま前後に車体が回転、レーシングカーは前進する為に造られ後ろ向きでは弱いもので車体を浮き上がらない様に押さえる為のウイングが逆効果、飛行機と同じ原理、揚力で舞上がってしまった、幸いレースコースから外れ他車への衝突も免れ砂地に逆さまに叩きつけられる様に落ちたとの事でした、砂地と燃料に引火せず火災にならずに済んだ事、本当に運が良かったと聞かされた。

 今でも鮮明に覚えている、目覚める寸前に体験した夢の話を、流石に得体の知れない赤ちゃんとヨシ子が消えていった処は省き説明したところ、物知りの監督が真面目に「その川に入らなくて良かったな、それが三途の川だったんだ!、お母さんが助けてくれたんだよ、お母さんに呼び返されたのだよ、もし呼ぶ声が無かったら..見知らぬ恐い顔のおじさんと話をしていたら、きっと川を渡り、戻れなかったよ..」 それは死を意味し、なんとなく俺も皆も恐くなってしまった、 監督、曰く「お母さんは偉大だ!リュウ、お前も皆も、母に感謝しなければ駄目だぞ!」皆、お母さんには、頭が上がらない様だ(少なからず、こんなにお金にも成らない夢を持たせてむらって迷惑掛けているから)それぞれの胸の内に母との思い出に心を馳せ、慌て照れた顔が物語っている、 監督ヨシ子に目を移しながら「それに、医師とは云へ、無闇に動かす事無く、怪我が無いか冷静にチェックして、懸命にリュウを呼んでいたよ、ヨシ子さんの気転の有る対処が有ったからだよ、本当にリュウは幸運児だよな」。

 メカニックの孝ちゃんがふっくらとした頬と可愛い目を輝かせて「リュウちゃんは西遊記の石猿みたいに石頭だよね!」 「俺は孫悟空の様なあんなに延びる如意棒は持っていないよ」、「リュウちゃんは、相変わらず下半身の事ばかり、頭あんなに打ったのに、少しも頭良くなっていないよね、益々下品だよね!」 皆笑って良いものか迷って、笑いを堪えている、後ほど紹介するが、孝ちゃん、こと鈴木孝三、メカニックで感性も素晴しく高い技術の持ち主であるが、俺も女と見間違うほど綺麗だが性同一性障害者である、
孝ちゃんラブ1.jpg 「俺は肉食系だよ、幸ちゃんの様に、米や麦のジュース(酒、ビール)ばはり飲んでいる草食系ではないよ、彼女の一人や二人位作れよ」 少し言い過ぎたかな 「だって私、リュウちゃんの事、大好きだもん!」 「ワァーォ!俺まだそちらの方は駄目だよ、カンベンしてよ!」 妻のヨシ子冗談顔で自分の立場を強調する様に「あ~ら!孝ちゃん、私はどうなるのかしら?」 孝ちゃん天井を眺め俺に目を移し「う~ん!..どうしよう、私の気持ちは変えられないわよ、悲しいよね!、も~ぅ..リュウに聞いてよね!」 皆大笑い、俺は内心、フゥー、孝ちゃんが、男?であって良かった。
 

 俺達は今年初めてビックレースに参加、資金もままならぬ弱小チーム、予備のマシーン(レース用車)も無い、今後のレース予定の不安が過ったがレーシングカーや予定の事には一再触れず、監督はじめ皆これほど心配していてくれた事、心に沁みるほど嬉しく感謝の思で一杯だった。

  《商談》 
ラウンドマーク.jpg 話は、今回のレースから4,5ヶ月ほど前にさかのぼる、 横浜みなと未来、地上69階の展望ラウンジフロアーを持つラウンドマークタワー内の35階事務所にて、我がレーシングチーム監督兼オーナーの指示に依り、予てから話しの有った、メインスポンサーと商談に一人で出向いた、以前のドライバーが家庭の事情(父の事業ホテル旅館等を引き継ぐ事に)で降板し、年間レース後半、俺がドライブする事になった件に対しての従属契約や契約金の話し合いである、チームとして予め話はついていたが、予想していたとうり、不況のため、以前の契約どうり、それ程、期待した金額は示されなかったが今後ともお付き合いさせて頂ける事になり、先ず々ほっとした。

 ラウンドマークタワー35階の事務所から高速エレベーターで1階出入り口へ、フロアーは、OL、ビジネスマン、イベント会場や観光、アウトレットのお店が並び、遊園地、公園、半月形のコンチネンタルホテル等あり、横浜のファションの地である老舗が並ぶ元町、中華街が近いため、観光客、子供から若者、お年寄りまで、ビジネスマン等、目的の違う人々が何時でも大勢入り混じり行き交っているが、不思議と違和感なく馴染んでいる。

 俺は入り口近くの喫茶店へ、左側ショーウインドーにスイーツ類が美味しそうに沢山飾られている、中に入ると着飾った女性達のグループ、オフィスレディー、ビジネスマン、観光の人々で賑わっているが、以外に静かである、ウェートレスに空きテーブルに案内され、ホットコーヒーを注文した

 とにかくレースを続ける為の資金を得るため、スポンサーの獲得に悩んでいた、上位チームのいくつかは、外人ドライバーを雇い、メーカー(車の会社)から、直接援助が受けられる名門、俺達、チームはビックレース出場は今年が初めて、立ち上げたばかりの弱小チーム、資金面でも大変で、ドライバー兼、営業マン、カーレースのチームを運営する事は並みの金額では出来ない、これから各社に交渉に出かけなければならない、俺のカーレース経歴や俺達のチームが記載されている車のスポーツ誌や成績表など集め、昨年此のレースの観客動員数等、宣伝効果について..などなど、冷めてしまったコーヒーを飲みながら、何処の会社にお願いに行くか、取り留め無く、考えを巡らせていた。

ヨシ子出会い.jpg 「龍崎さんですよね」 突然、淡いスズランの香りが微かに漂い、素晴らしい魅力ある声で、顔もスタイルも抜群、白のスーツにパンツルックでなんともエレガント、如何見ても年上で気品ある女性が声をかけて来た。  突然の事で、ただ呆然と見つめるだけだった、何か返事をしなければ、当惑している俺を察したのか 「あのー私、以前、奥様の担当医でした鶴見ですが」
 「ああ!思い出した横浜X大の、何時も白衣しか見ていなかったもので」 余りにも突然で長い事会ってはいない上、私服、こんなに魅力的な人とは..「其のせつは大変お世話になりました」 鶴見先生微笑みを湛えた瞳で見詰め「同席しても構いませんか?誰かいらしゃるのでは?」 「いいえ、ちょうど用件が済んだ処で、休んでいたので、どうぞ」 「私、空きテーブルを待っていて、貴方が目に止ったの、丁度お話したい事も有り、少構いません?」 「あっ!どうぞ」

リュウ先生.jpg 真向かいの椅子に優雅に座った、柔らかな、瞳で俺を見つめながら 「何をお飲みになっていらしゃるのですか?」 「俺、いや私はコーヒーですが!」 スーと右手を優雅に上げウエイターを呼ぶ「私にミルクティーとこちらにコーヒーの追加お願いします、..よろしいですか?」と微笑で見つめた、なんと、美しく魅力的、俺の心を見透かされた様な気がして、おもわず目が泳いでしまった、如何したと云うのだ、俺はただ圧倒され 「あ、はい」 と返事するのが精一杯、何時もは、レースクイーンや沢山のコンパニオンを相手に冗談の連発、どうにもインテリ諷(intelligent)には弱く勝手が違う、何時もの俺は?戸惑うばかり、

 何の話だろう..かろうじて 「何か..俺、..私に?」 「貴方達の事あれからずうーと気になっていたのよ、と云うよりも、貴方の事かな!」 「俺、いや私達1年半位前に」

 優しい微笑みを浮かべ「離婚の事知っています、奥様・・いえ美奈子さんから全て聞いていますわ、それから気を使わず”俺”で良いですよ、 心不全と狭心症で奥様が救急で入院なさって、私が担当になり、初めて貴方にお会いになったときに、なぜか引き込まれてしまいそうな貴方のキラキラ澄んだ激しく生き生きしている目と、純粋で直向な心に触れこんなにも奥様を愛している人がいる事に感激したのよ、あの時の貴方は自分の全てを失っても、奥様を助けてあげたい、思いが痛いほど伝わって来て、其れで印象深くある意味、恐いくらいに感じたのよ」

 「あぁーそうだったんですか」 いっきに、説明している鶴見先生に、俺も少し冷静さを取り戻し、不謹慎と思ったのですが説明とは関係ない事を頭の半分で考えると云うより感じていました ”..どうしてだろう、今まで沢山素敵で可愛い人と出会ったのに、どこか違う、これが大人の女性の貴賓と魅力なのか..顔や体が綺麗なのは言うまでも無く暖かく繊細な心の動き、生活から養った知性や情熱、此れを本当のエレガント(elegant)と言える人だ..今までに無い強烈な魅力に引き付けられていた” あの頃は白衣の先生を綺麗な人だと思っていたが、そんな意味で見る余裕など全く無かった

 俺は、妻の入院中の事を思い浮かべ、当時の気持ちを解かりやすく先生に説明した「今までの、俺の生活の全てを捨て、自動車レースで成功する事を目標にして生きてきたのに、妻の病気の事で、辞め無ければならず、他の生き方もしらず、俺は奈落の底でもがき、本当に苦しんでいた!、何としても妻の病気を治し、レースに復帰したかったから、必死だったんです!」 先生は頷きながら「だから!だったのね、あの恐いくらいな目、それで貴方のこと気になって..聞いているの!」

 この人と、もっと話したい、こんな気持が生まれた事は初めてだった、 とっさに、思いついた言葉が 自分でも、なんと、浅はかと思いつつ 「あ!はい、聞いています、..先生、お腹空いていませんか? 何処かで、ゆっくり話が聞きたいと思い、俺、何時も一人で寂しい食事で、夕食御一緒できますか?」何時もは言葉にした事が無いが、以外にもスムーズに一気に出てしまった日本丸.jpg

 考える様に可愛い唇辺りを指先で押さえ「そうーね..?云われれば、その方が良いかも、..私も、何処か?」 ヨシやった!俺は一気に「俺の知っている所で良いですか?ここから1時間位かかりますが、逗子海岸にイタリアンの美味しい処知っていますが?」 先生は指先を唇から頬に移し「そうね..私も久しぶりにウインドショピングに夢中で云われれば、お腹空いたわ、そこに連れて行って下さる?」 まさか、OKが出るとは!  後で聞いた話ですが、普段、絶対有り得ない事どうして、簡単に返事をしてしまったか、今でも解らないと、多分同じ様に女性が一人で外で食事するのが寂しかった事と貴方の気迫を感じたからと思うわ..だったそうです

 喫茶店を後にして、帆船日本丸を左手に駐車場に向かう、俺達レーシング・クルー達が夏、時々利用しているイタリア人がオーナーの逗子のお店に携帯で予約を入れた 「グラチェ、リュウ、2人なんて珍しいよ、待って居るよ」


  《逗子海岸》

 BMW5.jpg先生、こんなトラックの様な車に乗るの初めてでしょう?」 俺はBMW X5 xDrive30i silver  の助手席ドアーを開け先生を招きいれた、先生はにっこりして、少し高めのステップに足を掛け「私だって知っていますよ、BMWの4WDとか多目的スポーツ・ワゴンとか云うんでしょう」 女性のわりには良く車の事知っているな助手席に座り込むのを見届けドアーを閉めフロント側を回り運転席に付いた「ワゴンと云うよりメチャメチャ汚れていますからトラック見たいな物で、先生、俺はこの車見たいに多目的で便利ですよ、どうぞ何時でも御利用下さい」 ようやく、何時もの俺に戻ってきた様だ 

 微笑を浮かべた顔で、俺の目を覗き込むように「そうね、此れから一杯お願いしようかな?..冗談ですよ!、..何故か?貴方と同じ匂いを感じるのよ..弟の様な!私に弟はいないんですけどね」 

 「へー!、俺は先生の様に爽やかな鈴蘭の様な素晴らしい香りはないですよ、汗と油の匂いです、それと時々オナラもね」 益々目を丸くして「ち!違います!、その匂いではなく」 「解っています、冗談ですよ、人としての感覚、物の考え方がでしょう、でも先生とは..違うと思うな」 先生は悪戯坊主でも叱るように「モー、貴方って人は!..いいえ、奥様が入院中五ヵ月の間、毎日貴方を視て話をしたのよ、少しは貴方を理解していると思うわ.... この香水、普段は付けられませんが、これは私の好きなゲランの夜間飛行と云うの、どう?」 「とても素晴らしい爽やかな香りですが..何かむらむら、するような」 「バカね!」 その見つめた目は、何か母に似た優しさに包まれ、私に安堵と安らぎを与えた。              
 
かもめ.jpg みなと未来から本牧に出て首都高速、横浜横須賀線で朝比奈インターで降り鎌倉霊園の曲がりくねった山道を抜け、鎌倉鶴岡八幡宮の正門、大きな鳥居の前をへて由比ガ浜海岸に出る、右手に湘南の海辺を眺めながら材木座海岸をへて逗子へ、車の窓を開けると心地良い海の磯風、時折、穏やかに揺れる波がキラキラと光を乱反射し、何処までも広がる波間の先に穂が閃く、
何時もなら遠く感じる道のりだが、とりとめのないジョークなど話している間に、直ぐに着いてしまった様に感じられた

 少し予約時間より早く着いたので逗子の海岸に出ることにした、車を海岸の駐車場に止め、海風で砂が吹き溜っり所々段差も隠れてしまった階段を滑らないように下るが 「あっ!」 突然先生の小さな悲鳴、砂に足をとられ、少し滑った様だ、俺は思わず両手を広げた先生の右手を掴んだ、先生も確り握り返し、何事も無く続く砂浜に互いに無言のまま出る、階段を下り切った所で俺は急に恥ずかしくなり、慌てて先生の手を振り切る様に放した 「ありがとう」 「いえ」 「レーサーなのね、咄嗟の動作が速いわ」 「ええ、まあー」

 先生は歩きずらそうにして「靴に砂が入ってしまったわ」 俺は先生の前にしゃがみ込み「先生、俺の肩に掴り、靴を脱いで下さい」 先生は砂の入った高級そうな黒の革靴パンプスとでも呼ぶのか砂の入った足を躊躇しながら差し出した、その足首を優しく掴み靴を脱がせ、足と靴の砂を払い無言で戻した、長い間だ忘れていた女性の手や足を握った感触が生々しく、急に恥ずかしくなり言葉につまった、 先生は改めて「優しいのね、有難う助かったわ!」 俺は取り澄まし 「いえ」と言う返事がやっと出た

 日差しも柔らかく爽やかな風が時々吹いて、ウインドサーフィンをしている人達や散歩をしている人がチラホラ見える、大きく緩やかに湾曲した遠浅の砂地の波打ち際のゆったりした波と共に、心安らぐ穏やかな潮騒を聞きながら互いに靴に砂が巻き込まない様に静かに足を運び、暫く二人共無言で歩いたが、俺は落ち着く為に大きく息を吸い、妻との経緯を話し始めた..「俺たちが、結婚して..」

逗子海岸1.jpg 先生は遠く、海の先を眺め当時を思い浮かべる様に、俺の話を遮る「奥様から、聞いています」突然、俺に向き返り 「・・あっぁ!、もう奥さんでは無いですね、とにかく、離婚の件と静養を兼ね軽井沢に移る事で、あちらの病院に診断書を添えて上げました、....この様な話、してよいのか?..でも事実を話した方が、誤解が無く良いと思いますので、お聞きするのですが」

 暫く考え込む様な沈黙があり、そのまま先生は話を続けた「貴方!何処か身体が悪いのですか?」 「いえ、何処も、あ~ぁ頭は悪いが?」 「そう云う事ではなく、ハッキリ質問するわ」 「何か?」 ・・・「貴方方は一度も性行為(sexual intercourse-less)が無かったのですね」 エッ!なんだ、この先生!上品そうな顔をして顔色一つ変えず、サイボーグの様に無表情、余りにもギャップの違い、何の動揺も無く、冷静な普段の会話、まるで医者の講義用の話し方だ、もっとも医師である事は間違いないが、余りにもサラリと云ってくれ本音はホッとした、それに食事の誘いに、応じたのは、俺が離婚した事を知っていたからだ。

 先生は尚も冷静に「それに、以前、奥様が五ヶ月余り入院中、貴方は、一日も欠かさず夕方から翌朝まで奥様の横の借りベットで泊っている事も知っていました、そんな貴方の暖かさと優しさ、それとあの時の貴男は..何かの目的の為に悲壮的な激しさ、さえ感じました、それ程、愛が有ったのに何故? 奥様が心臓病だったからですか?それとも貴方ED障害?」

 「....!?」 「..此れでは解らないわね、解り易く云い直すわね..impotence?、失礼と思いましたが、もしかして、何か精神的障害が有るのではと思い」 俺は改めて先生の顔を覗く様に見直したが、何の動揺も無く、冷静な顔のまま俺に問いかけている、俺は内心驚きは有ったが、たぶん、心臓病の患者や家族から、そんな相談を受けているのかも知れない、そのぶれない目に医師として純粋な質問に、応えなければと  

 「いいえ!ちゃんと人一倍、男ですよ!」 ..まったく!こんなに綺麗で可愛い顔して上品な先生が、会って直ぐだと云うのに、意外な言葉に当惑したが....なんて事云わすのだよ!....しかし、不思議なもので咄嗟に出た、言葉は、人並みで無く、人一倍だった..一体何を強調しているのか、長い期間の禁欲生活がそう云はせたのか?自分の心の中で笑えて来た 俺は続けて「だけど、そんな俺でさえ、心が洗われてしまう、彼女は(以前の奥さん)そうした人なんです!」

 それには応えず、俺の事に触れてきた「先ほど車の中で、香水にむらむらとおっしゃいましたのと確かカーレーサーでしたね、それで正常だと思いましたが、医師としてはっきり、させて置かなければいけないから、此れからの貴方の話に間違った、見解をしない様にね」 ..医者ってそんな事聞くの..患者の扱いで麻痺しているのか?それとも本当に必要な事かも?このとき俺は感じた職業的質問、やはり先生だなと.. 「先生!あの時レースを辞めてしまって、又今度、再トライしようと思っていますが、レーサーだと何故?」 「そうね..一概に言えないのですが、男性的で攻撃的でなければ、勝てないでしょう?..アンドロゲン(androgen)とエストステロン(testosterone)というホルモン(hormone)、今の男性は少なくなって、いるようです、女性にもエストロゲンとプロゲステロンは有り重要ですが一生に作られる量はスプーン一杯位だそうです、詳しい事は、ともかく、..それから?」

逗子海岸.jpg 俺は経緯を話し続けた「それで、..彼女の病気もあったのですが、俺の中で勝手にイメージを作ってしまい、こんなに汚れを知らない素直で優しい心の持ち主を、と思うのは俺だけでは無いと思います、彼女に接した人なら誰しも思う事でしょう、あの頃荒みきっていた俺にはイノセントワールド(innocent world)何所か別の惑星からの天使が場違いな所に降りてしまったのでは、なぜ俺なんだ!俺の様に汚れた手で穢してしまってはいけない、今までの肉欲を捨て、此れが俺を変える試練だ、何がそうさせたか解らないが?、その不思議な魅力に何時しか取り込まれ、俺が守らなければ、と勝手に自分の中で作り上げてしまって、

 其れと病気を治して頂きたかったのは、おれ自身の全てを賭けた夢、カーレースを続けたい為でも有ったから、俺の出場するカーレースかなりの集中力が必要で其のたび妻を気使っていられない、多少のアクシデント等のショックに堪えられる体に戻って欲しく、況してやあの頃は子供など邪魔であって子供を作る事など、以ての外、其の上、子供を生む事に耐えられる体ではなく、そんな事は如何でもよかった、

 こんな事話しても誰も奥さんが病気だから当たり前でしょうと言われてしまうし..、何所にいても、救急車のサイレンを聞くたびにドキッとして、あわてて確認の電話をしたり、そんな状況で、カーレースも出来なくなり、何時も不安で、其れが長期に続くと看護疲れも重なり、心と肉体がばらばらになり、当り前ではすまされなく、疲れ果ててしまい駄目なもので、入院していた時のほうが、本音、安心し、本当にほっとしました..其ればかりか、このまま永遠に病院に預けられたら、妻の幸せも考えられなくなり、そんなおぞましい恐ろしい事まで考える様になり!..俺はただ々、彼女を守りたかった!それだけで良かったはずが、それが足枷になり..そんな事を少しでも考える、俺に嫌悪感を持ちました」 先生は黙って頷いていた 「こんな話つまらないでしょう?」 「いいえ!お伺いしたいわ、どうぞ続けて下さい」

 なおも俺は話を続け..「先生だって知っているでしょう、彼女がどんなにピュア(純真で汚れのない)で人を非難したり傷つけたりする事が出来ない人だと! もしこの世に神がいるのならなんで俺なんだ!脾肉な事するのかと思いました..かつての俺を知る人は、プラトニックラブで結婚!そんなの、うそだ!何故結婚する必要が有るの?と、信じてむらえず、子供のママゴトじゃぁ無いんだよと失笑され!その上、逆玉を狙ったんだろうと、ましてやレースなど遊びであって職業では無いと、理解してむらえませんでした、だからこそ、なお更貫き通し汚す事が出来なかった、彼女が先生に相談していたなんって!、..心に閊えていた事が、やっと一人でも事実だと知って頂き、俺が間違っていたのかも知れませんが、そんな愛し方もある事を..何か救われた気持ちです!」

 先生は暫く考えていたが、力強く「確かにその通りな、心優しく汚れの無い人と思いますが、それは違います、男の勝手な妄想です!..どんな女性も人として愛と安らぎを感じたいのですよ、それと何故、信頼できる誰かに相談しなかったのですか?」 余りにもハッキリと否定され  

解っていない.jpg つい俺は、声が荒くなり 「理屈じゃないよ!如何してか俺にもわからないよ!」 「ごめんなさい」 「上手く説明できないが先生は男の純真さが解っていない!、現に妻に会うまでの俺がそうでした、本当に愛してしまったら、絶対に傷つける事が出来なくなるものです!、自分の欲望だけに走れるのは余り愛していないから、簡単に傷つける事が出来るのです..ただ々、守ってあげたかった、其処に陥った人でなければ俺の心など解らないよ、其れだけが、随一、俺が出来る事と思い、
..幾度となく妻と話合い、時には、妻から俺に抱きつき迫って、それでも受け入れる事が出来ず、その都度二人で何回も傷付き涙し、ジレンマとの戦いに疲れても、俺には、なんとしても自分が作り上げた汚れを知らない妹の様なイメージをひたすら守り、壊す事が出来なかった!」 先生は両手を前に出し下に向けて押さえる様に振り下げ、俺を制しながらも優しく「少し冷静になって!、落ち着いてね..落ち着いて下さい」

冷静に.jpg 「すみません、..ただ先生だけには、解って欲しくて..今だから、こんなに冷静に話せますが、どんなに苦しかった事か、俺だって男だよ!女が欲しいとどれだけ思ったか!、又、俺の為に妻がどれだけ勇気を振り絞り、羞恥心に身を震わせ、心を震わせた、行為か痛いほど解っているから、尚更痛ましく、苦しく切なく侮辱した行為か!知っていても、如何する事も..、本当に疲れ切てしまい」..

 ..如何したのだろう、今までこんな事は決して無かった、自身の心の底を、素直に開き、真剣に思いの数々の全て話せ、しかも此れほど理解されたく、訴えている、..そんな優しい目と軟らかく抱き締める様に受け止めて、なんの気取りも無く、何時でも本音で話してくれる..俺は何の拘りも無く、今までの溜りに溜まった全てを一気にブッツケ吐き出している..何ぜだろう、不思議だ?なおも俺はサーファーの人達をボンヤリ見詰め、砂浜をゆっくり歩きながら、話を続ける

ウインドサーフィン逗子.jpg 「そんなある日、妻が置手紙をして実家に帰ってしまった、貴方を自由にしたいから、貴方の夢を叶えて下さい、どんな時でも貴方は私の為に飛び返って来てくれ、どんなに疲れていても私の傍に一晩中看護していてくれていた、貴方が私を想って大事にしてくれて本当に涙がこぼれるほど嬉しかったか、そんな貴方に何も答えられない自分が辛く悲しくやりきれなく感じていました、貴方が思うほど私の心は美しくありません、これからは貴方は誰にも邪魔されずに好きなカ-レ-スに夢を駆けて下さい

 ..それと貴方は野菜あまり食べないから、料理が嫌でしたらコンビニエンス・ストアーに一食分の野菜サラダ有ります、必ず食べる様に、アンダーウエアーは何処にあるとか、とまあそんな事が書き記してありました」  

リュウ&ミーコ思い出1.jpg その時の事、先生には、話せなかったのですが、部屋は何一つ普段と変わらなかったのに静寂の中、何か強烈に冷たい風が吹いているような、狭い空間がやけに広く、妻の暖かさを今更ながら感じ手紙を持ったまま、崩れ落ちしばらくそのまま床にしゃがみこんで、北国の真冬の荒野の中に取り残されたように動くことが出来ませんでした、あれだけ心配をかけ疲れ切っていたのに..、お互い憎んで別れたのなら、こんな寂しさは、起きなかっただろう、何故か妻の楽しそうな笑顔だけが思い出され、今更ながら悲しさと虚無感を強烈に感じていました、

 「それから暫らくして彼女の母親から、手紙と離婚届けの書類が送られてきまして、どうか何もしないで下さい、貴方の声や手紙を見るととても悲しそうにしています、本当に貴方が娘を大事に愛して下さった事、良く解っています、以前から貴方に負担が掛かりますからと申し上げて来ました、今まで本当に辛い思いを掛けましたね、本当に有難う御座いました。美奈子もやっと決断出来た様です、娘は油絵が好きなので、静養方々軽井沢の別荘に行かせます、何時でも貴方が決断出来ましたら、その書類に印鑑を押して定出して下さい、と記してありました、

 何処か俺の心の奥で、そんな日が来る事を望んでいたのかも..ただ俺の考えを曲げたくなかった、意地に成っていたのではないか?もう続かない事を知っていながら認めたくなかった!何処かで自分対しての言い訳を探していた、本当は疲れ切っていて、そうなる事を望んでいた!..色々な思いが有りましたが、その全てを断ち切る為にもサインと印を押し送り返しました。

イギリス南部田舎.jpg それで暫らく何もかも、全てを忘れる為、又これから先の進み方を示してくれる道標を探す為に、改めて好きなカーレースの名門校(JimRussell's British Academy of Motorsport/Racing Drivers School)にイギリスへ留学、(現在はアメリカとカナダのみ)三ヶ月ほど行くことにしました....でもどんなに新たな刺激に夢中になりレースカーをドライブしょうと、環境への変化、外国人の刺激を受けようとも、(イギリス南部の田舎町サーキト以外何も無い所ですがレンガ造りの古い家並等、風情が有り素晴しく綺麗な所です)ジムラッセル.jpg私の心の灰色の影は消えないまま、帰国しました、生徒は全て外国人、アメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・イタリア・ブラジルそれは国際色豊かで言葉も間々ならない中で皆同じ目的、性格も違うが、それなりに意思の疎通は出来た、中にはそのままイギリスに残り、ヨーロッパF-3に参戦する人も、其処で成績を認められF-1に進む事も可能だ、出来る事なら俺もそうしたかったが資金にとても余裕がない俺は諦めざるを得なかった。

 帰国後、二年半位で先生に偶然お会い出来たしだいで今こうしています」 少しおどけた言い方をした 「茶化さないで!それで大よそ理解出来ました、..どう考えても一方的で貴方が悪いわ!如何して結婚などしたの!」

 「如何して?、って、..そんな事、云われても、解っていても..もういいよ!..俺は青かった!て事ですか?..そんな、常識的答えは、言たくわないが、俺が、自分への償いか、憧れかは解らないが汚れの無いこの子(美奈子)を守らなくてはと思い..」 ..ただそれだけでは言い尽くせない経過が沢山有った、..其の当時、俺の荒み切った生活の中で、偶然彼女と出会い探しているお店を一緒に探したのがきっかけ

 それから彼女から又お会いしたいと、何回も会う内に、楽しく明るくなって行く俺を感じ、逢う度に心が洗われ俺自身浄化されて行く様で嬉しく思った、だが、これ以上逢ってはいけないきっと傷つけてしまうからと、何回も断ったが、彼女の気持ちに絆され、負けてしまった..先生には出会いを話せば長くなるし、知る必要も無いと思い話す事は止めた.. 

逗子1.jpg しかし、どこかで、自分を正当化したい心が働き「それと、此れだけは言って起きたいが小学校に入り立ての子供の頃、可愛くて綺麗な女性の先生が居て、皆の憧れだった、ある時、先生がお便所に行った時、俺の友達が、あの先生はお便所になんか行かないよて、泣いて否定したんだ、どんなに彼に取って天使の様に美しく心が膨らんでいたか、だが俺は心無く、俺のお母さんも先生だが便所に行くよって云ってしまった、彼は(リュウのお母さんと違う!絶対、絶対違うんだ!)て、誰もが彼の聖域を犯す事は出来ない、何れ解る事だが、一笑出来る物では無いと思います、その時誰が説明し納得させられただろうかって? 今の俺の場合はもっと始末が悪いよ、全て解っていて、それ以上に完全に弩壷にはまってしまって、美しく、綺麗な物えの憧れと、俺の心の救いに、せめてもの償い!..何時の間に如何する事も出来なく..。」

 如何して、意味もない弁解じみた事を言ってしまったのだろう?先生に良く思われたいからか?..良くは解からないが心では母親一人で育ててくれた感謝、厳粛な生き方の母への反発、自慢の母に、無条件に愛されたい、俺に振り向いて欲しい、何がそうさせたか解らない又そんな環境への反発、そんな自分への反発と葛藤、そんな時に妻の純真な心に触れ、心洗われる思いと償い、そんな複雑な思いで、なぜこうなったか、一口に説明が付くものではない、理屈では無くこうなってしまい、適切な言葉が思いつかず、少しは理解されたのではないかと思い又予約の時間もあったので..

 まーぁ!良いか..「それに以前は完全な人間を求め、澄まし顔で、綺麗事を言って、手を汚した事の無い人が嫌いだった、その人達の心の奥の化けの皮を剥がして遣りたかったし、酒を飲んで愚痴や、したり顔で批判ばかりする人も許せなかった、でも今では、心や精神だけで人の営みが出来る事ではない、人は欲望と共に生きている事が、嫌と云うほど解りました、全て俺がいけなかった、..後悔はありません」

 先生から、もっと否定的な冷ややかな言葉を浴びせられると思ったが以外であった「貴方は悪ぶっているが、本当は純真過ぎるほど純粋な人よ、結果的には人を傷付けてしまったが、それが解っただけでも成長したのよ、大半の人のは結婚前に逃げ出していますよ、人の心には悪魔も住んで居るのよ、人にも自分にも、許す事も覚えなければね、何時かは、折れてしまいますよ」 まるで本当の姉の様な口調でした・・何故か!この人とこれからも、これで終わらず、ずうーっと関わる様な気がした

トニー店.jpg そんな話で予約時間が近ずいたのでレストランに向かった、トニー(restaurant Tony)の看板の玄関を開け奥のカウンタまで進む「ハーイ!トニー元気だった (Hi! How are you Tony?)」「リュウちゃん、待っていたよ(How doing Ryuchan!can't wait ..Oh! How charming & sexy! Miss' behind) 後ろのミス..お嬢さん、凄くチャーミングでセクシーね、イントロデゥース(introduce)ね」

 先生から「鶴見 佳子(よし子)です、今日は宜しくお願い致します」俺はこの時初めて名前を知った「今日はリュウの好きなスペァーリブをメインに私トニーにお任せコースでよろしいか?、ミス、ヨシコ」「おいおい!俺には聞かないの?」 トニーは白人とは故、逗子の海岸の太陽の下、浅黒く焼けた精悍な顔で「レディーファーストね、それとリュウの好きなオニオンローフ付けるから」 先生は笑顔一杯で「おまかせするわ、」 やはりイタりア人、笑顔でウインクを先生に送り「じゃー今日はトニーのおごりで(is to be my treat)美味しい赤ワインで乾杯ねミス、ヨシコ飲めますか?、リュウは子供で飲めないからスパークジュース」俺にもウインクを送って、車で来ているとき俺が絶対にアルコールは口にしない事をしっているからだ 「はい頂くわワイン大好きですよ」

アペタイザー オニオンローフ.jpg 「このバベキューリブとアペタイザーオニオンローフ(appetizer onion  loaf オニオンリングをビルデングの様に積み重ねた様な物)は、以前、私とトニー達とで銀座のトニーと同じ名前のアメリカンフード店トニーレマのオジリナルメニューを私達が気に入り海辺のサーファー達に喜ばれるだろうとトニーがオリジナルレシピで造りあげた物です」
 「先生にはカロリーが高過ぎ、くど過ぎませんか?」 「リュウ、大丈夫だよ、別にトニースペシャル、ボンゴレ ビアンコ(あさりのパスタ)用意するよ、それとイタリアの家庭料理でトマトとレットオニオンの冷製サラダ(トマト、オニオンは半分にし又それを八切かザク切りして、ソルト少々の水を加え、乾燥バジルと生スイートバジル少しでオリーブオイルたっぷり後は冷蔵庫で少し寝かすと良いよ)とても簡単で美味しいよ..これはね、年代物のバルサミコちょと高いが美味しいよ」 と言いながらサラダにかけてくれ「ブレッド(a piece of bread is dunk in dressing)に浸して食べて」

ボンゴレ ビアンコ.jpg 先生早速フランスパンをちぎってトマトサラダのドレッシングの中に浸し「ほんとう!こうするととても、美味しいわね、..ねー、トニー、バルサミコとワインビネガーと、どの様に違うの?」 トニーは俺と先生の間の席に座り、彫りの深い顔で表情豊かに得意げに説明を始めた「日本の酢と同じでお米と葡萄で作る違い、ワインの熟成方と熟成度の違い、ワインビネガーは主に調理に使うと思って良いよ、..バルサミコは葡萄果汁を煮詰め濃縮させた物を木の樽で(is wait for the grape-juice  to mature inethe cask)12年以上熟成良いものでは20年30年以上熟成させ樽の香りが程よく付き主に最後の仕上げの調味料に使うと思って良いのでは、安い物でも使う前に鍋で半分位煮詰めて酸味を飛ばして使ったら良いよ」 先生は興味深げに「そうなんですか!初めて知ったわ..リュウ知っていた?」 「詳しくは、知らない、でも、オリーブオイルとバルサミコでパンに浸して食べる事は知ってたよ」 「へー、リュウの事、見直したわ」 トニーは尚も得意になり「もう一つ教えるね、ボンゴレ・ビアンコとロッソが有るよ、ビアンコはオイルソース、ロッソは、レッド、トマトソースね」 「俺、初めて教えてむらったよ、やっはり、トニーは女に甘いね」何だろう、今までにこんな気持ちを抱いた事は初めて、妬みの様な気持ちが沸き、そんな俺に驚きを感じた 「イタリアでは男皆、普通ですよ」トニーは俺を見詰めニッコリ、ウインクを送る

 「トニーどうしたんだよ!いつもと..」俺は心を見透かされたかの様に恥ずかしくなった 「リュウ、嬉しいんだよ!エックス・ワイフ(ex-wife )別れた妻以来、(almost three year)三年位、初めて女性を連れてきて、しかもこんなにチャーミングでセクシーな人今度はミス、ヨシコ何時でも一人で来てね」 本当に心配し喜んでくれ、嬉しく思った、国が違っても、人には変り無く、友達は出来るものだ! 「またまた!イタリア人は女性が好きだから!奥さんに云うよ」 奥さんは日本人だ 「オオノー、奥さん恐いよ、リュウ、シークッレト、シークッレトね!..リュウ&ミス、ヨシコ、アナザーカスタム(another custom)ね、ちょっと失礼するよ」ちょうどお客さんが5,6人入ってきてトニーはそちらへ向かった 

 「龍ちゃんと呼んで良いですか?」突然先生が尋ねた 「ちゃん、なんて、龍(リュウ)で、良いですよ、皆にそう呼ばれていますから」 「リュウ..ねえ..これから、そう呼ばせてい頂くわ」 「頂くなんって!そんな者ではないですよ、それより、本当に、こんなに油ぽい、カロリーの高い物で..」 先生BBQスペアーリブ.jpg「たまには、食べてみたかったのよ、後で運動するわ」

 「先生、このBBQ・Rib バーベキュウ・リブはホークやナイフを使わず、手でガブリと行って、その方が、旨いですよ」 先生「ヨーシ!やってみますわ、何か野獣になった見たい! (小さく、ガーォ)..ウーン美味しいわ!」本当に楽しそうに 「リュウちゃんは、沢山良い友達がいるようね」ワインのせいか、立続けてしゃべりだした 「私達の医学会議が終わった後に良く高級レストランやホテルのレストランに先生達と行くのですが、少しも楽しく無くほとんど先に帰っています、こんなにリラックスして楽しく過ごした事、無かったわ」 先生はトニーのワインのすすめも有って少し酔って、来た様だ!

 「リュウ、先ほどの話なんだけど、女性だって、たまには自分を忘れ、全てを忘れ、心を休めたい物なのよ!人は中々聖人君子にはなれない者よ、皆、寂しく弱いのよ、全ての束縛から解放されたい時もあるの、現にリュウ、貴方がそうだったでしょ..」 「先生!先生!..酔っているんですか? 先生も何か有ったのですか?」 「もちろんよ!私を幾つだと思っているの」 「失礼、年を聞いても良いですか?」 「かまわないわ、もう三十三よ!..運転免許証見てよ」..運転免許証をハンドバックから出して見せた..俺より五歳上なんだ、先生は俺の年知っているはずだ..「リュウは二十八歳でしょう、私、女として、もうオバサンよ」 「判りました、免許証、落とすといけないから、しまって下さい、..先生は、そんな事有りませんよ、全然若いです」..一つ位上かな?..本当に若いし綺麗で魅力のある人だなとおもった..「ありがとう、リュウに云われれば嬉しいわ」、

 「リュウに初めてお会いした時、精悍で、瞳が澄んでいてキラキラ!輝いて、その瞳で見つめられ、体中の細胞が目覚め”ゾック”としたわ!」.. 「今もよ、少し肉付き良くなったみたいですが、其の目、その顔、その純粋な気持ちで私に問いかけるところ少しも変っていないわ、そのうえ人を惑わせる、その仕種、優しさが感じられ、人の心を引き付け、もっと魅力が加わり、いけない人ね!」

 ..本当に酔ってしまったのかな?..先生の別な姿を見られた様で、人間的で色気さえ感じ、何か先生に近ずけ身近に感じた.. 「またまた!お世事が上手いですね、酔っているじゃないですか?..此処の所USネイビー基地内のアメリカのジャンク・フード、(ファストフードの事)とにかく、カロリーが有る物ばかり食べていたから、少し太り気味、トレーニングしなければ」

 「お世事なんかじゃないわよ、その澄んだ瞳で見詰られると、其の目の中にに引き込まれてしまいそう、本当ですよ!..だめだめ!随分話したわ、久しぶりに、こんな時を過す事が出来、本当に楽しかったわ、少し酔ったみたい、お腹も満腹になったし、すごく楽しかった、そろそろ帰りましょうか?」 ..俺も久しぶりに楽しく、いつの間に大分時間も過ぎていた

 ..「そうですね」..大声で..「トニー!」 マスターを呼び「トニー、今日はありがとう、お腹フルね!美味しかったよ、奥さんに宜しくね!」  「今日は店に来れなかったがマイワイフも、リュウの事、心配していたね、あれから(離婚)元気ないってね、早く前の様なリュウちゃん戻ったらいいねって、今日リュウの明るい顔、見れて本当に嬉しいよ、ミス、ヨシコ、リュウの事頼んだよ、何時でも来てね、待っているよ」両手を広げ先生を軽くハグ.. 「今日は本当に楽しかったです、料理もとても美味しく、ついお腹一杯頂きました、此方こそ有難う、又伺わせて頂きますわ」..

 帰りの車の中で「本当に楽しかったわ、ついワイン飲み過ぎ、少し酔ったみたい、リュウ、本当に良い友達たくさんいるのね、良かった」 そんな話をしなが、横浜X大病院の付近とだけ云って無防備にも、酔いのせいか、すやすや、寝てしまった、仕事が忙しくきついのかな?この時とても、可愛い人と感じた、「病院近くですよ」 と揺り起こし 「家は何処ですか?」 「う~ん、あら寝てしまったようね、やはり、プロの運転ね、安心して..もう少し先のシーサイドライン柴口駅の近くの柴町のマンションよ私の実家は金沢区の能見台で個人病院を開いているの、病院まで交通が不便でしょう」 そんな話をする内に先生のマンションに着いてしまった 

 先生「今日は、とても楽しかったわ、コーヒーでも入れるわよ、寄っていく?」 「いいえ、今日は夜遅いので帰ります、じゃあ、おやすみ!」 「運転気を付けてね、..プロに可笑しいわね、其れじゃー、お休みなさい」 まーぁ 社交辞令と思いとあっさり帰ったが、何か心残りで先生の言葉通り家に寄ればよかったと思い、少し後悔したりで、たまりませんでした                                                                                                                                       

 それから一週過ぎ先生はもう俺の事などすっかり忘れている、事と思っていた、金曜日、先生から連絡が入り、この前は楽しかった事、お礼に今度は先生が招待しますと言はれ、本当は嬉しかったのですが、一応断りました、是非との事、じゃぁー明日土曜日に、といって受けましたが本音は、あれから一時も先生の事が頭から離れず、いっそう逢いたくなって直ぐにでも逢いたくてたまりませんでした、今までカーレースに夢中で、こんな事一度もなかったのに!如何したんだ!気になって仕方ない、ああ逢いたい!

 話はレースのビジネスに戻るが、あれから思い当たるスポンサー交渉に奮闘、思案の甲斐なく、行き詰まり、このままでは絶望的だ、人に束縛される事が大嫌いだが、迷いに迷い葛藤が有ったが、レースは何としても続けたいその思いが強く、最終的に別れた奥さんのお父さんの会社が丸ビル.jpgアルミニュムのインゴット(塊)を製造している、東京駅近くの本社事務所に久々に訪ねた、後ろめたい気持ちと頼ってはならないと思いつつもレースに復帰出来るチヤンス、如何してでも逃したくはなかった、しかし、後々、俺の心に思いも因らない重圧になってしまうとわ、その時は少しも思ってもいなかった、

 受付で社長にお会い出来るか尋ね、了解を得る事が出来ホットした、社長(以前の義父)見慣れた社長室に案内された、大きな社長用デスクの前に豪華な接待用カウチがセットされている「如何した!、久し振りだね、あれから元気にしておるかね?、この不況だ、きっと君が尋ねて来ると思った、娘から達てのお願い、力になって下さいと頼まれている、まあー掛けたまえ」と言い、後は何も私達の事にはいっさい触れず、カメラ、精密機械の会社やエンジンブロック、アルミホイールの会社に取引があり、3,4社、その場で何の特にもならないのに連絡取っ手頂き、私を紹介し訪ねる事を電話なのに頭を下げ了解を受けていました

 俺は立ったまま、電話の話に聞き入って、今更ながら、俺は心とは裏腹に娘からのお願いと聞き、訪ねた事を後悔したが此処までして頂き、もう引く事が出来なかたった、 結婚当時は良く会食に高級ホテルや料亭等に同伴したものだ、私の会社に来ないかね?とよく誘われたが、断って来た、 

 「近いうちにこことこの会社を尋ねなさい、力になって頂けると思うから、元気そうで良かった、君は人より危険な仕事、充分体には気を付けて..掛けたまえ」ソファーに向かいてを差し伸べた、俺は座る事も出来ず 「はい、有難うございます..ええと..美奈子さんは?」 「心配は無い、軽井沢で絵を描きながら、自分の作品を飾る画廊とまで行かないが、喫茶店と言った方が良いかな、お手伝いさんと静かに過ごしとるよ、余り気を使わずに良いから、たまには、私を訪ねて来なさい」席を立ちながら「食事でもどうかね」 「はい、今日は私達のチームに吉報を報告したいと思いますので、すみません」 「そうか、何時でも訪ねて来なさい」 「有難う御座います」 と言って、頭を深々と下げる事しか出来ませんでした

 たまらず涙が出そうでお礼も、そこそこ、あわてて社長室のドア閉めたので事務員が不振な顔で見つめていました、少し前まではお父さん、何も云わずとも、男と男、解っているだろうと語りかけているようでした、この人の家庭で育った妻だったのだと、新ためて思いましたが、俺の心には何か強烈に圧し掛かり、勝手な物で頼ってしまった、俺自身を許せなく胸に痞える後悔の思いが増して、ビジネスとして心から喜べなかった、

 無論、社長の会社も大分援助して頂きました、次の日にチーム監督権マネージャーの北原と紹介された会社を回り、少しずつですが、契約を取り付け、何とかチームとして運営出来そうです。

   《二度目の食事》                                                                                              待ちに待った土曜日が来た、早速、朝から先生に電話を入れ、午前中は何か急に病院へ行かなければならなく午後2時半位に先生のマンション前で待ち合わせした。 それから、1時間ほど遅れ、急いで来たのでしょう、薄っすら汗をかいて

  マンションJPG.jpg「御免なさい、急に患者の様態が変わり、処置していた物ですから、もしかして帰ってしまったかなと、思ったり心配でした..ごめんなさいね」 「大丈夫です車の中で休んでいましたから、それでもう大丈夫なのですか?」 「ええ、後は当直の医師がいますから、それより横浜山下公園前のホテル・ニュウーグランドでフランス料理と考えていたのですが、着替えもしなければ、いけないし時間もかかるから、能見台にある焼肉店でよいかしら?とても美味しい所よ」 「あ、はい、何処でも構わないです」 凄い格差だが多分俺の為を思って、時間も遅くなり、お腹も空いていると思い気楽に腹一杯食べさせたかったのかも知れない 「その方がかえって、リュウも沢山食べれるから、ちょっと、シヤワーだけ浴びたいから、部屋でコーヒーでも、飲んで待っていただける?」 セキュリティ完備の最上階、横浜、金沢八景島や海の公園の砂浜が見えるナイスビューの4LDKでリビングが広々している

 「凄く、良いところですね」 先生は直ぐにキッチンに入りコーヒーをドリップして「リュウ、コーヒー好きのようだったのでブルーマウンテンを焙煎してむらったのよ、飲んで見て」 「確かに香り豊かで、まろやか、とても美味しいよ」 「良かった、じゃ、シャワー浴びてきますから、退屈だったらテレビでも見てて」 何だよ、俺を男として見ていないのかよ、と思いながらも、何か胸はドキドキ、いったい俺は何を期待して何を考えているのだ、冷静に冷静にと自分に言い聞かせ、コーヒーカップを持ち立ち上がり窓辺からの海の景色に心落ち着かせていた、向かいは千葉の房総半島が黒く霞んだ山並に真っ白い綿飴の様な入道雲を抱え、空は動物を連想させる夏雲が所々に浮かび青々と澄んでいる、目の前は海の公園が良く整備された砂浜が広がっている、海は湾内の為か波も穏やかである 

 「お待ち同様、さ~ぁ行きましょうか?」 ジーンズにTシャツ、ずいぶんラフ、でもスタイル抜群ピッタリ決まっている「先生は何を着ても、似合いますね、スタイルも良いし、特に足はすらりと真っ直ぐ長く、お尻の形ち、良いですね」
少し怒った顔を作り「バカ!..何云ってるの、子供のくせに、さ~行くわよ」 「でも、スタイルいいし、綺麗だから、今日のシャンプーの匂いも好きですよ」 「もう!解ったわ、ありがとう、行きましょう!」 全然子ども扱い、無視されている。

能見台駅.jpg 京急能見台、此処は東京にも40,50分国道16号線を挟み両脇坂になっている、静かな高級住宅がある駅近くの焼肉店はテーブル5,6、席と畳の2席、2組のお客さんがいた、私達は奥のテーブルに座った、女将さん風のおばさんが「いらしゃい、お嬢さん、ずいぶんお見えにならず、病院のお勤め忙しいのですか?お父様も近頃見えないので、今日は何に致しますか?」 「ええ、そうなんですか、父に伝えて置きます..取り敢えず、ビール、リュウ、なににするの?遠慮なく沢山食べてね」 俺はとっさに気取って 「僕は車ですから、お茶で、メニュー見せて下さい」 はい、と云って女将は奥に、

 先生はにっこり笑顔を見せながら 「へー、僕ですか?」 「からかわないで下さい、先生に気を使ったビビンバ.jpgのに」 「ごめんね、ここは、私達家族が私の子供の頃から来ていたのよ、私の家は、この坂の上へ歩いて5分位な所で、父が看護婦と事務員一人の小さな開業医しているの、」 「凄く近いんですね、ご両親は元気なんですか?」 「ええ、元気ですよ」 女将が注文を伺いに来た 「リュウ、決まった?何でも遠慮なくね」 「じゃぁ、骨付きカルビとロース、ユッケ、生センマイ、ご飯、サンチュで又後で」 「リュウは、生肉が好きなのね、私は石焼ビビンバと..クッパは、リュウの分と二つね」 「きっと、俺は野生動物に近いかも、何かに束縛されたりする事が大嫌いだから」

ユッケ.jpg 「私ね、リュウと居ると、何故か、自分になれて、落ち着くの、あれからずーうとリュウの事、頭から離れなかったの、如何してか判らないが、気になって!気になって!仕方なかったのよ」  「俺も、本当は直ぐに逢いたくて、俺もこんな事初めて、何時もなら車の事考えたら、忘れるのに..会いたかった!」 

 「本当?嬉しいわ!..年の事考えたら、考えられないし、私、どうかしている!、食事、誘うの止めようと何回も考えたけれど、考えるほど逢いたくなるのよ!」 「年なんて関係ないよ、すごく、若く見えるし」..とは云った者の余りにも職業の違いや、地位、立場が違う!..でも其のことには触れていないが.. 「始めは、皆そう思うのよ、現実はそうは、いかないものよ、分別の有る女がって、非難されるだけよ、でも、この気持ち、どうにもならないの!」 本当に此れほど素直でストレートに自分の気持ちを伝えられた事はない、何の気負いも無く素直に清清しくさえ思う、きっと、伸び伸び素直に育ったからと思う 「どうにもならない事考えても仕方ないよ!俺の事子供扱いして!」

R & Y 焼肉1.jpg 「違うのよ、こんなに、悩んでいるのに!リュウたら、生意気の事云うからよ」 「俺、子供扱いされ、駄目なのかって、でも良かった、すごく嬉しいよ、自分の気持に正直になろうよ、悩んでも始まらないよ、これからそのつど解決して行こう、サァー目の前の問題から..美味しそうだよ食べよう」  ちょうどお肉の焼け具合が良い頃だったので、 少し笑顔になった 「そうね、お腹空いたでしょう、戴きましょう」  

 「女将にコチジャン有ったら、お願いして」 「どうして?」 「サンチュにコチジャン少し塗って、寿司くらいの大きさのご飯乗せてカルビをのせ、手巻きすしの様に食べるのが好きだから、先生もトライして」 「リュウは、食事や料理の事、色々しっているのね」 多分先生はその食べ方知っていたと思うが、笑顔で聞ていた 「あちこち、友達やレース仲間で食べ歩いたから、今わ楽しく食べようよ」 「そうね!リュウの云う通り、台無しにするところね、食べましょう、遠慮無く沢山食べてね」 深刻な話しているわりには、俺は良く食べた、女将に挨拶をして、店を後にし、

 帰りの車の中で、心にも無いことを聞いた 「先生、実家に寄らなくて良いのですか?」 「今日は止めておくわ」 「じゃあ、マンションに送ります」 「まだ、話したい事有るので、今日はそのまま帰らず部屋に寄って!」 「はい、俺もまだ帰りたくないと思っていました!」 よし!期待通りになった..、ところが何故か非常に不安に襲われてしまった、きっと先生を失いたくはないと思うからだろう

ヨシ子ブラウスねー.jpg 部屋に戻り、ジャズを聞くのが好きなんだけれど普段は映画音楽が好きで良く聴いているから、始めに流れたのが、フランス映画の男と女のフランシス・レイのテーマ曲でお馴染みのダバダバダ、ダバダバダ~でした 「古い映画探して観る事が好きで、偶々良く行くレンタルショップで見つけて、印象深く残っていて、台詞も少なく、大人の恋愛の苦悩と美しさが良く出ていたわ、リュウも何時か見てみたら」 ずいぶん、古風だな、暫らく音楽を聴いていたのですが、

リュウ横顔あのさ1.jpg 沈黙に耐えられない様に同時位に、「ねー」「あのさー」 「リュウから話して!」「俺は、いいよ、先生からどうぞ」 「リュウから..」 「じゃ、俺から、話すよ、なぜ俺なんか!、もっと先生に相応しい人がいるだろうに」 「リュウからそんな言葉が出るとわ思わなかったわ、私に相応って、誰が決めるの!、私自身が決める事でしょう」 

 「そう云われればそうだけど、俺もそう思うよ、ただ、迷ったり、後悔して欲しくないから、先生さっきもそう云ったでしょう、迷ってるって、俺だって世間のそう云った考え嫌いだけれど、それに打ち勝つ気持ちが無ければ、いずれ駄目になるよ、先生を大事にしたいから」 ..俺は如何したんだろう?今まで口にした事の無い言葉が、本当はこのまま感情に任せたいよ、必死に抑えているのに..先生を失いたく無い..不安が大きく広がる、こんな気持ちになった事、今までに無い、初めてだ!、

 俺はこの時ラウンドマークタワーで出合った時の衝撃が解かった様な気がした、顔や体の綺麗な人に沢山、出合ったが、先生の様に、内面から醸し出す、エレガントな動作、知性や情熱、繊細な心に引き込まれて行く、今までの反動か俺の性的欲望が怖く、又傷つけてしまうのではないか、初めて感じた不安、姿形では無く、何処か母を思わせる、あの慈愛に満ちた眼差し、云い返れば、これ以上、進む事が凄く怖くなった、でも失いたくない!一体俺は如何したのだ!心とは全く違う言葉が!戸惑うばかり、やっとカーレースへの復帰が叶うのに、俺は何をしているのだ手足纏になるに決まっている、だが心とは裏腹にどんどん、のめり込んでしまう

 「リュウ、ごめんなさい..リュウが病院に通っていたあの頃、私、貴方みたいに健康で自由で破天荒な人に遇った事が無く、毎日会えると楽しみになって、其のうち、弟の様になっていたの、あの頃のリュウだったら、そうするだろうて判っていたの..でも感情に此のまま流されたい気持ちもあったのよ、リュウの方がよほど大人ですね、何か恥ずかしい気持ちよ、でも..ありがとう、もう少し考えるわ」 「ごめん!俺、今日は帰ります、気持ち決めたら連絡下さい、待っていますから、今日は楽しかったよ、じゃーね」 俺は先生が怒ってしまうのでは無いか、不安で有ったが、飛び出す様に部屋を出た、 

 帰りの車の中、俺はどうなってしまったのか、俺の方が感情の赴くまま、したいよ.. 男の方がもっと辛いよ、でも先生の方がもっと辛いかも、女性からの、 俺ってバカだよなー.. 俺と全く違う、知性や繊細な心の動きの出来る、先生を本気で好きになったのか?!..上手く行く訳無いよ..きっと駄目になる!恥をかかしてしまったから..出来るなら失いたくない、いや本気で失いたく無い!どうして、こんなに胸が痛むのか初めての気持ち、この俺が、一体如何したんだ、何でこんなに切ないんだ!うぅ..なんなんだ!いけないと思う心が、逆に俺を煽ってしまう

 まだ先生に話して無い事があった、結婚前、世の中、斜に構えていた時期で、母の愛情、家庭への反発で遊び回っていた、その頃は生きる事の無意味さ、口先だけで善人ぶって平気で人を裏切る人等、人間不信に落ち入り、何時も冷めきって人の裏側で見る事しか出来ない自分を虐め、自暴自棄になり、それも俺の弱さである事も知っていた、レースに興味を持ったのも、暴走族やグループに入らなかったのは人間不信の俺にとって、群れる事が大嫌いだった、

 その寂しさを満たすため、女に溺れ、何の愛情も無くただ自分の欲望のまま、罪悪感をかんじながらも、何もかも成り行き任せ、愛しているとかは一度も口にした事は無い、其の頃は結婚など、考えも及ばなかった、そんな刹那的無責任な生き方しか出来なかった、命の尊さなど少しも感じなかった俺は、何処かカーレースに共通点を感じスピードに魅せられ、のめり込んで行った、

 男の身勝手と云うより俺の身勝手、とても人を批判する立場で無いが、欲望を満たした後の空しさと嫌悪感が増すばかり、何でこんな事に無駄な時間を費やしてしまったのか、もお顔を見るのも嫌になって避ける様になってしまっても、俺の弱さ、又、何人も同じ繰り返しをしてしまい、もっと自身が傷つき、互いに傷つけ悲しく辛い思いをさせてしまった、天罰であろう、中には俺自身のめり込み悲しい別れをした事も、そんな自分が嫌いで、美しい愛を求める自身の仮面の下に眠っている肉欲やエゴイズムなのに、身勝手の話だが、益々、男の性がと繰り返す自分に精神と体の欲望のバランスが取れないままに闇の中で俺は傷ついていった

 そんな時、天使の様な彼女(別れた妻)に合った、この子は絶対汚してはいけないと強く思うと言うより、俺が浄化される、そんな気持ちが働いていたのかもしれない、その結果がこれだ、そんな、トラウマの様なものも有り、今度のケースも又大事な人を傷つけてしまうのではと恐くて逃げ出したのが本音 

此処まで読んで下さり有難う御座います枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編2】) クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11-8是非お読み下さる事お願いまで                                                               


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編2】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

   ☆=ストーリ【前編1からの続きです、是非お読み下さい=☆  

                                                                                        《富士サーキット》 Fuji Speedway

富士.jpg 次の日から富士サーキットで俺のドライブ(運転)に合わせたレーシングマシーン(車)の調整やテストが始まった、これは富士だけではなく、各サーキット毎に行われる、特に今回は俺にとって全て初めての挑戦、念入りに行わ無ければならない、エンジンは言うまでも無く、変速機のギャー比の調整交換、サスペンション、アブソーバーの調整、ダンパーの交換、アライメントの調整、トーイン、キャンパー、タイヤの減り具合温度、ダウンフォースのフロント・リアーのウイングの調整、等今思いあたるだけでも沢山の仕事が有る

 このクラス”FNフォーミラー日本”ではほとんどワンメイク(同じ仕様の車)と同じだ、エンジンのメーカーが違う位、これは車の開発に余りお金を掛けなくて済む事と、本当にチームの技術力とチームワーク、真にドライバーの腕が試されます、何回となくadjust & run(車の走り込みと調整)です。又このFJ.machine(車)の特徴は「オーバーテイク、システム(レブ・リミッター)エンジンの回転数の制御や開放」が有る事でオーバーテイク(追い越し)が楽になる、ロールバーにLEDが点灯5回まで使用出来る、もっともこのロールバーで横転した時に助かったのです。

 今年は富士・鈴鹿・ツインリンクもてぎ・オートポリス・スポーツランドSUGO、各サーキットで行うが前半3戦は先輩ドライバーがエントリーして終了している、4戦から俺に変わる久し振りに、しかも待ちに待った日本でコックピット.jpgは最高ランクのレースマシーンをドライブ出来る喜びがあり、他の雑念や邪心に惑わされている場合ではないが、

 何故か気になる、大事な時だとは充分理解しているにも関わらず、振り払って忘れようと思えば思うほど、先生の顔が浮かぶ、如何したと云うのか!何時もならステアリング(ハンドル)を握ったら必ず喜びに全てを忘れドライブに集中して引き締まるのに、増してや待ちに待ったマシーンにも関わらず、今まで本当にこんな事は起きなかった、レースが全てで、ジャジャ馬の様なレースマシーンを如何に乗りこなすか、新しいマシーンに出会うたび期待と喜びに燃えあがって来た筈なのに

 幾度と無く携帯電話に手がいくが、かろうじて待つことが出来た..心此処にあらずと感じたのだろう、監督の渋い顔が益々渋くなり 「リュウなにか、悩んでいるのか?突っ込みの切れと立ち上がりが、何時もはマシーンを壊してしまうほどなのに、如何した!」 「あ!ハイ別に何もないです」俺は隠すように、元気に応えた、待ち望んだマシーン(車)ドライブ出きる事に、最高の喜びを感じて良い筈なのに?何時もと違う、俺はどうなってしまったのだ

 監督レーシングカーに手を置き「何処か気になる箇所は無いか?」 長い間のブランクも体に染み付いているのか意外に簡単に取り戻せた 俺はエンジン部分を見ながら「エンジンの立ち上がりが今一悪い(回転トルクが最高になるのが遅い)、多分変則ギヤー比がコースにあっていないか吸排気か?ハイスピードではアンダーステアー(フロントが流れるハンドルを切っても曲がらない事)スローではオーバーステアー(ハンドルをあまり切らなくても曲がってしまう)気味です、次はもっと攻めてみます」 「そうか!井原君聞いたか、調べ直してくれ、それにリュウ何か元気が無いぞ!」 「ハイ!」俺とエンジニアの井原君が同時に返事をした、今まで余りマシーンの調整がして無い様だ、まるで反応が悪く本当に乗りずらい、まだまだ調整が必要だ、この調整はレーサーの好みもあり、とても重要な事だ。

 ”あぁ~先生に逢いたいな!”、今はこんな事考えてる場合ではない、もと真剣にアタックしなければ、思いを消すように、頭を何回となく横に振った、テスト& ガレージ(調整)で5日間、何時もなら、アと云う間に終わって、もっとレースマシーン乗りたいと思うのですが、早く先生から連絡が来ないか、やけに気になってしかたなかった、自分を如何処理して良いのか、こんな事は初めてだ。

孝ちゃんタイヤ交換.jpg チームのメカニック達がエンジンを分解しバルブ・フェイスの傷や歪・ピストンリング等部品のチェク交換、組み立てと懸命に働いている、エンジニアとメカニックは、其々かなり個性の強い人達だ、一人は寡黙でコンピューターとにらめっこ、又分解した部品を丁寧に洗い一つずつ傷などを細かく調べ丁寧な仕事をする、もう一人は正反対、良く喋る男?だが女性のような体付きと顔、喋り方もそうだ、初めは、なんだ、ボーイッシュな女かよ、と思った位だが、かなりメカニックとして感が鋭く調整力が優秀である、俺も調整や組み立てを手伝い少しずつコミュニケーションも取れ、俺の乗るレーシングカーもかなり調整が進み仕上がってきた

 「孝ちゃん!、顔にエンジンオイル付いているよ、好い女台無しだよ」 「やだ~、リュウたら、ほんとう?」慌てて作業着から鏡を取り出し眺め「何でも無いよ、リュウの意地悪」 「へー、何時も鏡持っているだ」 「リュウ、怒るわよ!、この鏡、見ずらいマシーンの裏側見るのに、良いのよね」 「ごめん、ごめん、へー、凄いんだね、それで安心してドライブできるよ、マシーンも大分扱い易く反応も良くなったよ」 井原君も笑顔で二人の会話に耳を傾けている、これなら、和やかに行けそうだ、俺は両人にコースのチェックに出かける事告げた。

 富士サーキットのコースを再確認ため徒歩で何時もの様に念入りにチェックを開始、コースの荒れ、ブレーキングやクリッピングポイント(カーブなどの目標点)、最速ラインの目標の確認、だがこんな大事な時に先生の顔がチラ付く..これでは駄目だ!こんな事では、もう駄目だ、俺は一体如何したのだ!あんな別れかたをして、先生からはもう連絡が来ないのでは?不安で一杯だ、携帯に手を掛けた途端、呼び出しベルが鳴り、余りのタイミングに少し驚いた、携帯を覗くと先生からだ一瞬ためらったが嬉しかった、喜びで俺の顔がほころびるのが解る 「ハイ、リュウですが!」

あいたいな1.jpg たぶん、先生は外来の患者の診察が終わった頃だろう「ヨシ子です、リュウ元気にしている?」 「はい」 「今、お話出来ますか?」 「はい、富士で車のテストですが、ここ煩くてちょと移動します」時折走るレースカーの排気音で言葉がかき消されてしまう、隣の部屋に移りドアーをしめて「はい」 「リュウきこえる?」 「もう大丈夫です」 「リュウ・・私どう考えてもリュウを失う事出来ないわ、理由なんて、解らないし、知る必要もないのよ!、リュウに叱られるかも知れないが、充分悩んだの、でも自分の心は否定出来ないし、何時だってリュウの顔がチラつくのよ!、私自身予想もしなかったことよ、理性では如何する事も出来ないの、この先リュウが居ないなんって..絶えられない!」

 立て続け話して来る..何時も取り澄まし、冷静沈着で少し冷たさを感じる、あの先生が、こんなに、率直に自分の心の内を情熱的に告白するなんって、俺の方がもっと予想できなかった、しかも、自分の気持ちを正直に、はっきりと此れほど素直に話す人に出会った事は無い、..あぁ、よかった!俺から申し込むつもりであったから、ほっとした

 ..俺と同じだ、だが、反面異常な不安に襲われた、又こんなに正直な先生を傷つけてしまうのでは?それに、これから俺のレース人生に影響しないか?それにも況してスポンサーの件も頭を過ぎった、如何しよう!、理屈じゃないよな~ぁ..今は先生に会いたい!断る理由など無いではないか、 先生は少し合間を取って「嫌で無かったら、其方の車のテスト終わったら来てくれる?..もし私と付き合う気が無ければ、今断って!」

 なんて、素直で積極的なんだろう 俺も全く考える余地も無く不安も何もかも飛んでしまっていた「ハイ、俺も同じ事思っていました!、明日夕方には着くと思います、夕食はチームの皆と食べて行きますから」 「嬉しい!本当に良いのね!、待っています、リュウ!無理しない様に気を付けてね」 「ハイ、なるべく早く伺います」..無理しなければ、勝てないのに..苦笑い..しかし、普通女性なら思わせぶりな言い方をするが、本当に率直な人だ..俺は凄く好感をもった、その後、自分でも呆れるほど、今度はマシーンに集中出来た

 マシーンの足周りの調整もタイヤ表面の外側と内側の温度差がなるべく平均に表面の減り等からホイールアラメントを調整し仕上がりに近ずき、今までは以前のドライバのシート(運転席の椅子)を隙間にクッション・パットを入れ調整して使用していたが、最近メジャーした俺れ専用のドライバー・シートが届き、交換、ドライビング・ポジションもピッタリ決まり、マシーンの動きの感覚が判り易くなった、.. 監督の眼鏡がキラリと光 「リュウ後半の走り、別人の様だった、まだ調整必要か?」 後半は大分路面との食いつきも良くなり、ギヤー比を変えた為か、コーナーからの立ち上がりもかなり良くなり、走り易くなった

 「そうですね、まだケツ(車のリヤタイヤの横滑り)が流れ気味で押さえきれないから、立ち上がりで、アクセルを踏み込めないのでワンテンポ遅れてしまいます、もう少し食いつき良く出来ませんか」 「そうか、皆、後ひと頑張りだな今晩、調整して明日、朝一にテストだ」監督の顔つきも少し柔らかくなった様に思えた

 レースはもう此処から始まっている、次の朝、まあまあ調整も終わり、メカニックや監督と労をねぎらい食事をしたが、メカニックの鈴木 孝三さん(孝ちゃんと呼んでいる)は馴れ馴れしく俺の体を良く触る、言葉も女性の様だが、かなり好意的で気が利く!「リュウ、切れも良く早くなったわ、凄いわね」 「まーな、孝ちゃん、井原君、だいぶ運転し易くなったよ」

 井原君は相変わらず真面目な顔で「エンジンの回転良くなりましたか?シリンダー・ライナーの傷のチェックやピストンリングの交換はもちろん、シリンダー・ヘッド、バルブの傷や歪等、吸、排気マニーホールド内を良く磨きをかけ、ジョイントのズレも直しておきました」 俺はエンジンカウル部分を見ながら「うん、井原君、基本からチェックし直してくれたんだね、アクセル反応、敏感になりエンジンの回転立ち上がりが以前より全然良くなったよ、ありがとう」 俺は監督に早速、他に用事があるからと伝え、少し早めに帰途についた。

 富士からの帰り道、車を運転しながら、スポンサーの事も少しは気になり常に頭の片隅に残っていたが、今は俺の頭と心は完全に先生に奪われていた、こんな事は初めてだ、何時もなら、レーシングカーの調整と俺のドライブの反省とでも云うのか、ドライブ・コースを思い浮かべ考えるが、それに此の事でスポンサーを失いかねない、もうそんな事は今はどうでもよい、此方の方が大切になっていた、

 今は先生に会える嬉しさが全てであった..先生と逢ったら何を話せば良いか、..初めに今晩は、それではインパクトが無い、ヤーか、ヨォか、オッスか、待った!か?..元気?おかしいな、何していたの?話したばかりだ、如何したんだ!ろくな考えが浮かばない、俺の気持ちを話すべきか..綺麗で魅力が有りますね、そんな歯の浮く様な事、俺先生が好きです!いきなり云えないよ、いや、率直に云うべきか?それとも先生の事をもっと聞くべきか、医者の話しや医療の話など分らないし、何を話せば良いのか..何かムードの有る話?俺に出来る訳が無い、うーん・・解らない!俺は何を考えているのか、..何も浮かばない、ただ々一刻も早く先生に逢いたい!..こんな戸惑いは初めてだ!

     《再出発》

龍崎3.jpg 富士からの長い道のりを、まとまりが付かぬまま、先生の待つマンションに着いてしまった、恐さと戸惑い部屋番号とチャイムを押す指が躊躇いを招いた、落ち着け!深く息を吸い込みチャイムを押した「リュウです」 ドア・ホーンから軽やかな声「おかえり、今開けます」

 余り待たずして玄関が開いた!エレベーターで最上階に、部屋の前でドアー開けて先生が待っていた、お互いに言葉は要らなかった、先生から俺の胸に飛び込んでくれた、黙ったまま極自然に抱き合い!、お互いの目を見つめ、それが自然であるが如く、唇を交わし、お互い高ぶりを押さえようと先生は俺の胸に顔を埋め押し付け暫らく其のままにしていた

ヨシ子心音.jpg 「リュウの心音、乱れてる」 「ハハ..、先生、職業病だよ、当たり前でしょう、小心者だから、こんな美人で可愛い先生に抱きつかれれば、乱れるよ!」..あんなに車の中で、悩み戸惑ったのに..アハァハ..言葉なんか要らないよな 「冗談よ!正常よ、リュウは口が旨いから、今日は帰らなくていいでしょう?コーヒーでも飲む?」 俺は心の中で(うん)といいながら、先生の目を見て頭を小さく、立てに振った 

 やはり、年の差、俺に気を使って自然の流れを作ってくれ、ゆとりある気持ちになれ、ありがたかったが、以前の結婚の失敗、これからのレースに対しての不安が一時、過ぎったが、嬉しさの方が数段勝っていた、全て先生に任そう..そして、富士スピードウェイでの話し、先生の職場の事や両親の話を暫らく聞いていた、なにか揺ったりした時が流れ、先生が俺に合わせた会話をした訳でも無いが、何か波長が合い俺の心の中で、変化し始めていた以前から此処に住み暮らしていた様な、何かゆったり落ち着いた気持ちを得られるのか?

 先生は俺を優しく見詰めながら「ねー、リュウ、先生って呼ぶの、やめて」 「どして?..じゃぁ、なんて呼ぶの」 少し恥ずかしそうに「そうーね、ヨシ子でいいわよ」 「なんか、急に無理だよ」 「じゃぁー、二人の時だけでも、そうしてちょうだい」 なにか、すごく可愛く感じた、きっと少しでも歳の差をちじめようと思っている様だ 「わかったよ、なるべくそう呼ぶよ」

 マジマジと俺を見て「私、こんなに苦しく、人を想った事、無かったわ..どうして、こんなに惹かれるのかしら!、不思議な位」 ..俺だっておなじだよ、何で惹かれるのだろう.. 「リュウ、富士から直接帰ったのでしょう疲れていない?」 「大丈夫だよ」 「ねー、シャワー使うでしょう浴びてきて、此方よ、バスタオルこれ使って」 後は何も云う事は無かった、全て受け入れてくれたのだ!人の出会いとは不思議な物だ、一月前には何も知らず何も無かったのに、それも、五、六年前、美奈子と出会った時から手繰り寄せられる様に運命の歯車が廻り始めていたとは!

 シャワーを済ませバスタオルを腰に巻いたままの俺は、先生に手を引かれ寝室に移る、其処には大きなシモンズのダブルのベッドが目に入る、先生でも、やはり女性そんな雰囲気部屋である、二人は熱く唇を重ね、もつれながらベッドに倒れ込む、やがて以前の俺の結婚生活が余りにも子供で幼稚に思えたのだろう、そんな気使いは要らないのに

 後ろで纏め留めた髪止めを外し、息を詰めた様に静かに俺を見詰める、瞳なんと深みのある、優しい眼差しか年下の俺の心を傷つけ無い様に、恐る恐るガラスの容器でも扱うように、俺の目を改めて見詰、先生の不安そうで懸命に見つめる瞳が、恥じらいと優しさを含みながら、俺の頬に優しく手を沿え改めて優しく熱く唇を重ねた

 恥じらいながらも、けなげに、ゆっくりと、優しく導き「リュウ..、慌てないでいいのよ、..優しくゆっくりとね..」 耳元で優しく囁いてくれた、羞恥心を帯びながらも、揺ったり横たえ、静かに波打つ曲線を描いたスロープ、投げ出された、長く伸びた脚、眩しく光る柔らかく透きとうる肌が、微かに欲望を誘う香りが、それを望んでいる様でもあった

 それは燃える様な奪い合うものではなく、静かに優しく厳かな儀式の様に、互いを確かめるように目を離す事なく、お互いの心の中を確かめ合う様に見詰め合い、定めに導かれるかように、ごく自然にゆっくりとゆっくりと結ばれ、先生は短く息を吸い込み、小さく開けた口元から、安堵の吐息と共に、俺の背中に廻した両手に優しく力が加わり..俺の全身と全能あらゆる感情と思索を優しく暖かいアロマオイルの中に包み込み、安らぎの香りと、慈愛に満ちた眼差しに、安住の中に溶け込み飲み込まれてしまった様だ!(Your love, adoring eyes, almighty & passion with peace of mind, My destined soul mate

 優しく受け入れくれた先生に、全てをさらけ出し委ね、その気高さと気遣と優しさに感動さえ覚えた、こんなに素晴らしくゆったりした安らぎを感じ与えられた事は、嘗て一度も無かった、

 又こんなに愛おしく切なく感じた事も、このまま、時間が止ったらどんなに良いか、心から信頼され言葉こそ無かったが、私が望んだ事よ、全ての責任は私ですから、安心して休みなさいと語りかけているようだ、だからこそ嘗て誰からも決して得られなかった、安らぎと、安住を与えられたのだと

 俺は、初めて感じた、例え俺が先生に刃を突き立てようが、先生の優しく包み込む様な眼差しが、貴方が其れを望むのならば、好きにして良いのよ..貴方の全てを受け入れるわと囁いているようだ..たとえこれからなにがあろうと、こんな巡り合いは二度と起こらない!このかけがいのない愛! 

 生まれる前から迷いつまずき、傷つき、長い間探し求め、此処にたどり着くために、やっと出会えた様な気がした!そして以前何処かで此の安らぎの中にいたのではないか、遠い昔忘れていた香り、何か懐かしい母に感じた匂いであったのではないのか?

 あぁー、この安らぎ、どんな言葉でも勝るものは無い、永遠に、この愛の中に留まりたい!..もう引き返す事も、止める事も出来ない、そして、あの、みなと未来での再会は、何か運命的なものさえ感じられた、・・・どれほど時が過ぎたのだろうか   

 先生はそんな俺を優しく愛しげに俺の頬に手を添えて見守るように暫く見詰めていた、俺が落ち着いた頃を見はかり、呟く様に「リュウ、私だって全てを忘れリュウだけを感じ、全ての束縛を外し自由になりたい時も有るのよ、凄く嬉しかったの、お互いに、全てを受け入れ、これが本当の愛なのよ、居るだけで、心を通わせあい、愛を感じ、安らぎを感じ、互いに愛しさを感じる者なのよ、人は生きている限り求め続ける者よ、心やお腹を長い間、空にする事は出来ないのよ」

 はにかみ顔で、何も知らない年下の俺に教えるかの様に語る 「リュウ、貴方は何かに反抗し悪がっているが、本当は純粋過ぎるのよ、もう自分を偽る事をしなくても良いのよ、貴方には火の様な激しさと、優しさ暖かさが有るのよ、そんなリュウが愛しく大好きよ、..ただ欲を云えばヨシコって呼んで、遠慮することないのよ、自由にしてもうちょっと目茶目茶にして欲しかったな」 意外な言葉だったが、たぶん俺が初心で気を使い先生に遠慮でもしていると思ったのでしょう、本当は長い禁欲生活と先生の優しさに何時までも、したって、全てを委ねていたかったからだ

 羞恥心から少し頬を染めながら、そんな事を云う先生に驚きも有ったが、飾りもなく素直で、しかも、大凡の女性が言いたくても云えない事を、はっきり自分を主張している、又 どんな女性でも欲望が起きる時が有り愛する人を心から信頼出来るからこそ、自身に素直になれ本当に心からの安らぎを得られると、今までの俺の結婚生活に対してと、年下の俺に全てを身を持って教えている様に思えた、又、先生自身、何か抑圧された心と戦って解き放したいのではないかと

 今までの俺ならそこまで云はれ、男として許せなく、間違いなく再び牙をむき出し挑んだ事だろう、しかし先生の眼差しは、母にも似た、無償の愛を感じ、優しさと愛に満ち溢れどんな凶暴の牙でもその眼差しで溶かしその軟らかい胸に包み込んでしまう(Love, true love is to ask nothing in return like a mother & your gentle gaze

 それにより俺自身の心の奥底に有った、今までの性に対しての不純な罪悪感や自身の心を閉ざし終わった後の遣り切れない空しさや孤独感が消え去り薄らいで、ゆったり、する事が出来た、女性を征服するのでは無く、愛により生まれる、相手の全てを知り、全てを共有したい気持ちから起きる物だと感じ、又こんなにも無防備な中でゆったりとした幸せ感が得られ、遠い遠い昔こんな安らぎの中に居た様に思え、何時までも、浸っていたい思いであった、

 そして、あの頑なまで守ろうとしていた封印と精神は!、脆くも崩れ、今までの俺は何で有ったのか? ..もう、疲れた、本当に疲れてしまった!今、この安らぎを知り、生きると謂う事に脆くも崩れ去って行く、封印を破ってしまった、俺自身に少し虚しさを覚えた事も事実であったが、今どんな言葉であろうと、この安らぎを言い尽くせなく、返って言葉にする事で薄らいでしまう様に思えた

何故だ!?こんな時に、少し悲しげな顔の美奈子を思い出す、俺が幸せ過ぎるからか?急いで打ち消す様に振り払うが、暫く頭に残る、先生はあの包み込む様な優しい瞳でのぞみ込むように「どうかしましたか?」 俺は目を伏せ「余り幸せすぎて..」先生の胸に潜り込む様に顔を寄せた、先生は黙ったまま俺をきつく抱締めてくれた、まるで女の台詞、何の違和感も無く呟いていた 

 条件は違うが俺も世の中や自分自身に反発した様に、先生も、何か固定された、常識を破りたかったのでは、だから俺の様な別世界の物に興味を持ったのでは? それも純粋の愛で一適の邪悪な心が無い事を物語り、ある意味尊敬さえ覚え、又年上の女性にも関わらず可愛くも感じていた、今まで、俺が感じた罪悪感や嫌悪感など微塵も覚えず、心から休めた

 そして静寂と安らぎの中で富士スピードウエイの疲れも有り、何時の間にか先生の優しい温もりと香りに包まれ眠りに落ちていく..かすかな記憶のなかで、此の人と一緒になるのかも..そんな予感がした。

コーヒー.jpg 翌朝、俺のレーシング・カーに得たいの知れない老紳士が乗っている、「おい其れは俺の車だ!降りろ!降りるんだ!」 声を出そうにも、声が出ない!、そいつを掴み出そうとして驚く!宇宙人の様な得体の知れないタコのように変わっていく、身構えようとするが体が金縛りなった様に動かせない!俺は初めて恐怖を感じる、先生が奴から逃れ俺に救いを求め走り込んで来るが寸前捕まってしまう、何時ものエンジンの排気の匂いではなく、爽やかなコーヒーの匂いが漂う?、不思議だ!

 其処で、ハット!目覚めた、なんだ!ベッドのシーツが俺の体に絡まって手足の自由を奪っている、相当寝相が悪かったか!、先生を心の底から失いたくと、失う事が怖いのか!親しくなったのは最近の事なのに、見る筈の無い夢、しかし以前何処かで見た様な気がし不思議に感じた

 部屋の出窓の白いレースのカーテンから朝の光が漏れている、そうか此処は先生の所だ、隣脇には、もう先生の姿はなく、何だか訳の解部屋1.jpgらぬ嫌な夢だ!振り払う様に打ち消してベットルームを出た

 ダイニングへ海から来る爽やかな風に夢の事も忘れ、大きく両手を広げ胸一杯吸い込んだ、朝の柔らかな太陽の光、何もかもやわらかく感じ、香り良いコーヒーの匂いと共に 「リュウ、おはよう、コーヒーどうぞ」何も起きなかった様な、穏やかな声にほっとした

 ヨシ子後ろ食事.jpg「あ、せん..えーと、おはよう」 「リュウ、呼びずらい様だから、ケイでも良いですよ私の漢字、(佳子)ケイ子とも読むの」 「うんうん、ヨシ子で良いよ、これからそう呼ぶよ」 バスルームでシャワー浴び体を洗っていると 「リュウ、歯ブラシとタオル私のだけど新しいから使って、後で必要な物買いに行きましょう」ドアーの外から声を掛けてくれた 「あぁー、ありがとう」 衣服をととのえ、ダイニングへ 「リュウ..朝食ハムエックにカリカリベーコンとウインナ、とトーストで良いでしょう」 「ハイ、充分です」 「さぁー座って、用意、出来ているから、野菜サラダ食べてよ、云われているでしょう」 私はこんな揺ったりのんびりした待遇を受けたのは母以来

 トースト.jpgオレンジジュースを出しながら 先生は優しく「リュウ、本当に愛していなく、欲望だけで、私を抱けたの?違うでしょう!、リュウの中の何かが壊れた? 愛の形には、色々有ると思うけど、お互いを認め全てを与え、全てを奪いたい物なのよ、本当の意味での理解が出来たからと思うわ、全てではないけれど、そう思わない?」 

 先生は何処からこんな自信が生まれるのか?本人の目の前で欲望だけで抱きましたと云える、男などめったにいないよ!だが凄く愛しているよ、何故か余り悪い気持ちは起きなかった、先生の云う通りだと思った、素直に受け入れれば、こんなにも安らげるのに自分が少し偏った考だと 今まで、先生に出会う為に先生に向かって迷い、戸惑い、辿り着いた気がし、体全体の力が抜け、本当に心から安らぎを持てた

ベーコンエッグ.jpg 俺は心からそう感じた事を言葉に出した「やっと出会えた、此処なんだ!この安らぎだ、心から思ったよ、先生に甘え駄目になってしまうような、何か恐いくらい、エェ!何んだよ、女が云うような事、俺が云っているよ!」 

 「本当にそう思っているの?」 「本当です、本当に出会えて良かったと思っているよ」 「本当なら嬉しいわ!..そうよね、これからは良い所をなるべく見ることね、私はどんなリュウで有っても、私が世間から非難されボロボロになっても愛し続けるわ、それを覚悟出来たから、リュウに又合う事が出来たの」

 少し前の俺だったら、ボロボロに傷つくと聞いただけで、それならもういいよ、そんなに我慢してむらわなくてもと、そのまま出て行ったと思う、しかし今の俺は先生が其処まで覚悟して俺を選んだ事に、素直に 有難うと思った..俺は変ったな!

 「俺、嬉しいよ!でも、こんな俺で本当に良いの?」 「バカね、困った事に、こんな俺が大好きなのよ!フフ、よろしくお願いね」 やはり、予感が当たった 「こちこそ、頼みます」 幸せすぎたのか今朝のあの嫌な夢を思い出す、あれは何だったのか?先生と、この様になって、レースでのスポンサーが以前の妻の父である事が心に痞えて気になっているからか?不安が心を過ぎる..

 「リュウ、これから、リュウに再会した横浜のラウンドマークに行きましょう、あそこでリュウと手をつないで堂々と歩きたいの、行きましょうよ!」 その時、それは、先生自身の何かの決意にも感じた 「いいですよ、行こう!」

 早々と食事を済ませ 「リュウ、何着て行こうか?」 「俺、昨日の様なラフなスタイルが好きだよ、それと俺も着替えたいから、俺の処に寄って行くよ」 「ハーイ、そう云うと思った」 今日の先生は、誰も医者とは思へ無いスタイル、膝辺りに穴の開いたビンテージ物のジーズと黒の胸の開いたTシャツ、あのセクシーな匂いの香水、胸と腰が強調され足の長さと相まってとても魅力的だ 「いいね!俺そのスタイル好きだよ!」 「ほんとう?リュウの好みなの?以前にもそう云っていたわね、そう言う処、自分に素直で好きよ」 「まーね!感じたままで、余り考えていないよ」俺は何でもこの人には思いのままを何でも話せる人と感じた

スクエアエリア.jpg 俺の住んでいるマンションは横浜本牧の元米軍基地を返還した跡地(マイカル本牧)に有る 、先生が部屋を見たいと云うので、一緒に俺の部屋に入った、暫く珍しそうに見回していたが、「意外と綺麗にしているわ、それに、車のトロフィー沢山有るのね」 「うん、大凡はカーレース、特に最初のが思い出があるよ」 「それにあの賞状と金のバッチは?..COMMANDER FLEET ACTIVITIES..って?」 「あ~あれね、米海軍からのだよ、あれは特別な賞で滅多にない事だよ、そのほか毎年仕事で賞を頂いているよ」 「見掛けによらないね、レース以外興味が無いのかと思った」 「なに、そんなに!見てたの」 「冗談ですよ!、そんなリュウだったら惹かれる訳ないでしょう」 「まったく!」

 「リュウ、下着と他の着替え2,3持って来て、今日も私の処に泊るでしょ?」 「俺も週末休みだから、良かった、そうさせてむらうよ」 サーキットなどは、週末はレンタル料が高いうえ色々な模様し物が有りマシーン(車)のテストには不向きで、マシーン(車)のテストも終わり、後は本番1,2日前位、まで予定が無い、おれもカーゴーパンツとTシャツに着替え、予備の着替えをバッグに詰め込んだ

みなと未来駅付近.jpg みなと未来、クイーンズスクエアの有名店をあちらこちら、先生は以前の何か嫌な思い出を消すかの様に、開放され、俺の手を引き約束どうり、まるで二十歳前後の若者様に楽しそうに歩いた、..男達の目が先生に向けられる、ある者は、釘ずけされ、じーとなめ回すように見つめる人、又ある人は慌てて目をそらし、振り返って見ている男、その気配を肌で感じる、俺は少し優越感を覚えた

 暫くウインドショッピングをし「リュウ、こんなブルー・ダニューブ(Blue-Danube)の食器揃えたいね」 「それなら、俺、一式持っているよ、ベースの外人の友達に頼んで取り寄せてむらったんだ」 「本当?良く知っていたね」 「以前イギリスのレースの学校に行った時に知ったの、イギリスの皇室で使っているとか、とにかく俺も気品が有る品だと思って」 「リュウて、不思議な人ね、何処か影があり、そのくせ、ガサツな人と思ってたのに、物を見る目も有るのね」 「そりゃあー、良い物位分るよ、そんな目で見てたんだ!先生を選んだ目だよ、確かな物ですよ」俺はこんなに楽しいデートは何年ぶりだろう 「ごめん!リュウは口が上手ね、私の事は解らないわよ、リュウの買い被りかも、ガッカリしないでね」 「俺が良いと云っているから、それで良いの」 先生は目を細め本当に嬉しそうな顔で「嬉しいわ!」

 少しお腹も空き、海の見える屋外のオープンデッキ有るお店を探しそこに決めた、ピザと、きのこのパスタを注文しデッキテラスの席をとった、太陽と海、そして青い空、開放感を満喫しながらの会話

ベイブリジッチ.jpg 「すごく楽しいの、来て良かった、これが本当のデートよね、リュウ、嬉しいわ!」 子供のように楽しそうにしている、先生を見、俺も楽しくなった、以前何か有ったのかな? 「俺も本当に楽しいよ」 「ここのスパゲッティーより、トニーの処の方が数段美味しいね」 「俺もそう思うよ、あれはね、俺が伝授したんだ」 「まぁー、偉そうに良く言うわ」 「本当です、イタリアの人は、日本のお醤油使わないから、アサリのワイン蒸しを作る時に、オリーブオイルにニンニクの香りを付けて種を抜いた鷹の爪、少しに白ワインでアサリを蒸しアサリが少し開いた処に、黒コショウ、バター、パセリの微塵切と、お醤油少々使って本当に味が良くなったんだよ」 「ふ~ん、リュウて応用が利きアイデアマンね」 店を出、臨港パークに、左手に大桟橋、右手には横浜ベイブリッチが見えるベンチにゆっくり並んで座り、爽やかな風と何処までも青く広がる空と海を眺め

 「ねー、リュウ、私、以前彼氏がいたのよ、こんな話して良いかしら?」 「余り聞きたくないが、必要だったら、いいよ」 「その人はね、始めはいい人だと思ったけれど、僕の彼女や妻になる人は淑女であってこうあるべきだとか、何かと云うと慎みなさい、世間体ばかり考えている人だったのよ、その家族と同僚の男達もそれに近い人が多かった」

時計観覧車.jpg やっはり、そんな気がした、その年まで何も無い事はない、以前何か此処での思い出を消してしまいたいか塗り直したかったのかも知れない 「もう何も言はなくて良いよ、解ったから、俺は先生の、ごめん、まだ先生がぬけなくて」 「いいのよ、続けて」

 「先生の云いたい事、解かっているよ、だれも、先生の自由は奪えないし妨げられる物ではないよ、だいち、個性が無くなるよ、そこら辺の似合いもしないブランド品を身に付け中身が空堂のPTAの噂好き欲求不満のザーマス、おばさんになって欲しくないよ、過去はどうでもいいよ、知りたくもないし知れば嫌な思いも生まれるし、知った処で、過去は何も変えられないよ、今が大切だから、もっと個性ある先生らしく楽しく、実りの有る生き方をしようよ」 そうか、俺だって、いろいろ、先生も俺以上にトラウマが有ったんだ、それで今までの先生が言ってきた事が、自由をさまたげる障壁を取り除きたかったのでは、何か理解出来た様に思えた

赤レンガ倉庫.jpg 「ごめんね!リュウはそんな人では無いと思うし、ただ、後から何かと言われるのが嫌だったから、この出会いを本当に大切にしたと思ったから..嬉しいわ、リュウは意外と大人ね、PTAは言い過ぎよ、それなりに皆、頑張っているのよ、子供みたい処有るけれど、そこが好きよ!..ねー、赤レンガ倉庫に行って、歯ブラシ、湯のみ、など揃えましょうよ、明日の食料もね、リュウはお腹満足させれば、ご機嫌だから、リュウと一緒だと本当に楽しいわ」

 「そうだね、俺って、そんなに単純!なの?..でも、先生もユニークな人だね、あの時の表現が、何か俺も納得させられたよ」 「バカ!恥ずかしいじゃない!、あの時だから云えたのよ」 「そうでなくて..先生が俺の為に、女だって、疲れたり、寂しかったり、又、要求があったり、生きているのって!..其れと今までの周りの環境から、抜け出し何か抑圧された物を変えようとしている事が、あの時、思い切り何かにぶっつけ、全てを壊したくて、自然に出た言葉と思うよ..自分を殺して、一生、生きていけないよ、俺が経験した事だよ、上手く説明出来ないが」

 「解っているのね..リュウは一見変わっていてガサツに見えるけど、そのへんの気取った男より、本当に頭良いし意外と教養も身に着けているね、自分でも気が付かなかったけれど、リ港未来夜景.jpgュウに云はれ、その通りと思うわ、だから一目見た時から全然違う世界のリュウが気になっていたのかも」 「そんなに褒められた事無いよ、余り、おだてないで、上げたり下げたり忙しいね、俺、レーサーですから、瞬時の判断が出来なくてわ、冗談ですけど、ハァハァ..さあ、行きますか?」

  二人は本当に素直に自分の気持ちをさらけ出し、精神的面も含め全てを裸になり、いっそう絆が深まり、安らぎと、愛情が生まれ始めていた、雨期の為、昼間の天気が一変、小雨が降り始めて来た、互いに二人の年の差も余り感じなくなり、楽しく買い物して、中華街に足を伸ばし夕食も済ませ、雨の中、足早に家路に向かった、

 先生のマンションにて、新しいマグカップにコーヒーを入れて 「なにか、新婚さんみたいね」 俺は冗談ぽく、両手を広げ 「みたい、じゃあ無く、新婚だよ、さ~ぁ、こっちに、おいで、スィートハァーッ(sweet heart)」 「それって、大根役者の演技みたい、ダーリン(darling)と言えばよいでしょうが、笑っちゃいそうよ..それより、リュウのレースの事、聞かして」

 「なにから話して良いか、..俺の乗っている車はフォーミュラカーと言って、規格に定められ作られているんだ、大体3400cc位で600/hp(馬力)位有り、普通車の半分以下の重さで最高速300km位出るの..こんな話つまらないでしょう」 「大丈夫よ、なんとなく、凄さが解かるわ、それより、リュウが車の事話している時の目、キラキラ輝いて生き々して、好きよ、ねー続けて、時々街中で大きな音させてドリフト(drift)?しているグループが有るけど、リュウもした事あるの?」 「良く車の事、知っているね」 「入院患者で小学生に入る位の男の子が車大好きで、良く私に話してくれるの、遊びたい盛りなのにね、リュウの車も、最近その子からミニチアで教わったの」

 「そうなの..俺は、そんな運転はしないよ、傍迷惑だし、ただ、腕自慢したいだけで、スタントマンは別にして本当にレースを目指している人には誰もいないよ、並のレーサーだったらドリフト位(車のタイヤに急激にパワーを加えたり急激なブレーキを加え車を横滑りさせ方向を変えたりする事)、皆んな出来るよ、レースは人より早く走る事、あんな無駄な走行は、しないよ、無駄な横滑りさせれば、それだけ遅くなるし、タイヤやブレーキ、そのほかの部品の消耗になるよ全部悪影響そんな馬鹿げたレーサーは誰一人いないよ、少しでも、ドライブもマシーンも如何に無駄なく走る事が早さに繋がるだよ、それとカーレースはガソリンの無駄使いと思っている人が多いが、車の開発や安全に関わっているんだよ、如何に安全で少ない燃料で早く走れるか凌ぎを削っているのだよ、それとヨーロッパでは意識が高くイギリスなどレースで活躍した人をサー(sir:閣下)の称号を与えられているんだよ」 「凄いんだね、解ったわ、じゃぁ、ただの暴走族と同じね」

 「そうだね、今の車は性能が良くなり、自分の腕でなく、車に乗せられているよ、見ていて危なく思う事沢山有るね、彼らに 時々サーキットを開放してやり、思いっきり走らせれば、スピードと車の恐さも解かり無謀な運転は無くなると思うよ、もっとも今ではドリフト専用コースも大分有るけど有料だから」 「リュウ、いい事云うね そうだと良いのにね、あの子にも話すわ」

 それで、レーサーは其々自分とマシーンの限界で走っているよ、その限界ぎりぎりのタイトロープを集中し護り通し気を緩めた者が負けだよ、俺が最も好きなのはレースの駆け引き、相手を射程距離に治めたとき、相手のマシーンの特性を知りプレシャーを与え相手のミスを誘う、相手の苦手なコーナーや相手の車の特性を見極め此方アウトから抜くと見せかけ、インから抜き去った時、ちょっとした快感、..得意げに身振り手振りで話す、俺をまるで母親が子供の話を聞くように見つめている、開催日程や場所等、話し、

 「リュウのご両親や兄弟は?」 俺の家族の話になった、父は俺が小三の時に白血病で亡くなった事、父の職業は新聞記者の政治部で時々社説等書いていた事、母は高校の教師で今は定年退職して家で学習塾をやっている事、女一人、男二人の三人兄弟の末っ子、俺は、大学の工学部を出、暫らくある一流企業で勤めていたが、派閥や人間関係が嫌になり、ある日、自動車レースのF-1を観戦し虜になり、この道に入った事など大まかに話した 「あ~ぁ、それで、何となく解かったわ、リュウが時々、難しい言葉使うから」 「俺は父母と違って文学は全然駄目、機械いじりばかりして勉強嫌い、家では異端児、扱い変わっていたのかも」

 「リュウ、おおよそ解かったわ、..それでね、私達のこれからの事考えてみたの、当分はこのままで良いけれど、いずれ、考えなければいけないわ、私は病院辞めたく無いし、リュウの子供欲いし、リュウの夢も叶えさせたいし色々考えなければいけないね」 「まだ俺が何処まで出来るか、解からないし、これから、一つ々解決出きるものから考えようよ、俺、何が有っても絶対逃げないよ、マジで、絶対先生を失いたくないよ

 「嬉しいわ、リュウが逃げださない事、前の奥さんの事で解かっているわ、うちの病院の女性の看護師達が言ってたよ、毎晩、疲れ切って帰って来て奥さんの手を握りながらベッドの下で眠っていたって、あんな旦那さんだったら良いねって、皆憧れていたのよ」 「でも、看護婦さん達は現実を知らないから、結局、惨め破局、マジ、同じ過ちは絶対出来ないよ、自分が許せなくなるよ..

 ..話変わるけどさ、あの時、前の奥さんの看護で、そのまま寝てしまった時、時々毛布が俺の肩に掛けて有ったの、看護婦さんに聞いたけど、誰も知らないて、もしかして、先生では無かったの? 何かそんな気がして」 「そうよ、リュウ今はね、看護婦と言わないのよ、今は、看護師と呼ぶの、それは兎も角、夜勤の時にね、あの時のリュウはね、今もね、目が澄んでいてキラキラして、私を見つめ、他の方法は無いか又調べたのですが、こんな方法はどうなんですか?て懸命に質問して来たの、大抵の患者やその家族の方は私や他の先生方の説明を聞くだけで”そうですか”で終わってしまうの、何故か、リュウの事、こんな弟がいたら良いなと思い、時々ね」 「そうなんだ!やっと解った、あの時は、ありがとう」

 「リュウの気持ちとっても嬉しいわ、今日は遅いから、又考えましょう、さー、シャワー浴びて来て、そう云えばリュウのパジャマ買うの忘れたね、まだまだいっぱい色々する事あるね」 「うん、今夜は期待どうりするからね」 「バカな事云ってないで、早くシャワー浴びてらっしゃい」 こんなところは、お姉さんの様だ 「私のパジャマ用の徳大なTシャツ出して置くから着てね」

  シャワーを浴びながら、ふと思った、俺は未だガキだな、先生が何を考えていたか、少しも考えていなかった、先生の両親、俺の母、そして世間の皆、説得させなければ成らない、先生の固い決意少しも汲み取れなかった、年上の上に先生の地位、全て責任を取らなくてはいけない、少なくても世間はそう思うのだから、俺にそんな心配少しも掛けまいとしてそれなりの決意をしている事、今までの女子達と違うんだ、なんって俺はノウテンキなんだと

 俺は改めて、先生がシャワーを済ませあがって来るのを待った、「リュウ、如何したの、ベッドに行っていると思ったわ、パジャマ合わないの?」 「そうじゃないよ、こっちに来て座って」 「如何したの?、改まって!」 「ごめん、先生の事何も考えていなくて、これから、先生の両親と皆を説得しなければ成らないし、俺そんな事少しも考えていなくて」 「良いのよ、リュウはそんな事、心配しなくても、云ったでしょ、リュウに電話入れるまで、色々悩み、考えたの、結局は私たちの決意が変わらなければ大丈夫よ、必ず説得出来ると思うわ、リュウはそんな心配しなくて、いいのよ、リュウの夢、壊したくないし、リュウに迷惑掛けたくないよ」

 やっぱり五つも歳 違うんだ、そこまで考え、全部自分でやろうとしていたんだ 「なんで、俺だって出来るよ、一人でやろうと思わないで、二人の問題でしょう、二人で乗り切ろうよ!」 急に先生の目から涙が溢れ、俺に抱きついてきた 「リュウって優しいのね、..うん、うん..」 「何でも二人で考えようよ、あまり役に立たないけどね、抱き付くのは此処ではないよ、あっちのベッドだよ」 「うん、でも先生はやめてね、パジャマ大丈夫そうね」

 「女の子って、こんなに下からスウスウして大丈夫なの、それと先生の良い匂いするよ」 「そうよ、何時もスカート履いているから、慣れよ、」 「病院で会った時はキリットして誰も寄せ付けない顔して、狭心症、弁膜症、右心室、左心室、大動脈瘤とか今と全然違う顔だね、俺も少しは覚えたけれど、今の顔どっちも好きですよ」 「リュウたら、からかって!女は恐いよ!営業用の顔と二つ持っているのよ、フッフ ウフ 、下から掴んじゃうぞ!」 少し先生の笑顔が戻ってきた 「おぉ怖!、俺、先生のじゃぁー無くヨシ子の泣き顔より、今の笑顔が大好きだよ、もう寝よう、」

 あえて、この後の事にわ触れないが、この言葉で理解して頂こう、女性をレーシングカーに例えたら失礼かも知れないが、俺にとっては同じ気分だ、空気抵抗を抑えるため極限までに削ぎ落としたボデーは女性の曲線美に等しく、繊細で、扱い難く、直ぐに燻ってしまうが、フェラーリF458.jpg度エンジンが掛かると、押さえきれない、程の高回転に燃え上がる、扱いは、全く同じだ、時には繊細に押さえ、時には床を踏み抜くほど此れでもかとアクセル踏み込み、幾つものカーブを微妙なハンドル捌きとアクセル、ワークで操り、後はオーバーヒートでブチ壊れようがゴールに向かって走りきる、その極限の車を操れ自分の手足に出来た時、男たちは、究極な喜びを得られ、美しいスポーツカーに憧れる。これは俺の持論だが、少なからずそう思っている男は多いはず。 (ワゴン車も実務的で良いが、時には無駄の遊びが有っても良いと思う、スポーツカーで夢とロマンを持ち続けて欲しいものだ、芸術や科学も其処から生まれ、決して無駄にはならないはず)。

     《金沢八景島

  翌朝、六時少し過ぎに、目覚めシャワーを済ませ、今日は夕べからの雨も上がり、近くの海の公園から八景島への散歩に行く準備を整え、今日のブランチのお弁当アメリカンクラブサンドを作る事にしクラブサンド.jpgた、昨日買い揃えたベーコンと鎌倉ハムとスモークチキン(本当はクリスマスの時に使うターキーを使うらしいが)を少し分厚くきり1cm位バターで軽く炒め、溶いた卵に黒コショウを軽く振りこれもフライパンで伸ばし厚めに半熟位にして二つ折りにする、後はレタス、トマトとタマネギの輪きり水に少しつけて置く、ピクルスなど乗せ合わせ、サンドイッチ用パンもトーストして軽くバター、粒マスタード等塗り重ね合わせ楊枝で押さえ三角や長方形に切る、あとは、リンゴやオレンジ、をランチバケットに入れ、準備終了、朝のコーヒーを入れている頃、先生が起きて来た、

 「リュウ、おはよう 良く眠れたわ、何かお肉の良い匂いで起されたわ」 「おはよう、今日は八景島まで散歩だよ、ランチ作ったから」 「あーそれで、良い匂いしたのね、分ったわ、でも..体がだるくて、まだ体が火照り、ジンジンして余韻がのこっているみたい、体フニャフニャよ、..意外とリュウて、女の子と遊んでいたのかな?」 「そ!そんな事無いよ!オレンジジュース飲んで、冷たいシャワー浴びればシャキとするよ」 「まあー、お互い過去の事ね、リュウは嘘へたね、直ぐ解るわよ!、シャワー浴びてくるね」 ..コーヒーを飲みながら、バナナと卵、蜂蜜でミルクをミキサーに入れミルクシェークを二人で飲み、

海の公園散歩道-1.jpg 先生はスエットにパーカーを着て二人してランチバスッケトを持って出かけた、 「今日は香水変えたの、少し爽やかな匂いだね」 「リュウ、鼻も良いね、これは、同じメーカーのミツコと云うの」 「女の子はTPO考え大変だね」 柴町の海の公園の駐車場に車を止め、そこから歩く事にした、夏には海水浴も出来る海辺と砂浜、それと平行に森林の有る遊歩道(ジョギングコースも有る)が八景島までつながっている、東京湾を挟んで千葉房総半島に夏の様な入道雲が浮かぶ、雨上がりの清々しい初夏の柔らかい日差しと風が気持ち良い

ヨシ子夕べ.jpg 先生は少し頬を高揚させながら「リュウ、夕べは有難う、凄く安心感があったから、心から、裸の自分に成れて、今まで感じた物より凄い凄い変化を..」 あまりストレートで俺も戸惑いながら「うん、解かっていたよ、先生って何でもストレート云ってくれて助かるよ、其の方が俺も好きだよ」 「リュウだからよ、リュウには何でも話せるし私の全て知って頂きたいから、それが本当に私達に取り、安らぎを与える事に成るから」 「俺、大分遠廻りしたが無駄ではなかったよ、やっと見付けられ、昨日から、先生の優しさと心からの安らぎが嬉しくて、初めてあんなに、感動したよ、先生に逢えてよかった」

リュウ黒T優しい.jpg 「ほんとうに?..最初の時、前の奥さんの事もあり、本当はリュウが何も知らないのかなと思って、物すごく恥ずかしかったのよ、リュウは繊細で傷つき易い人だからと思い、本当に顔から火の出る思いって、あの事よ!」 「うん、ごめん、知っていたけど、あの時、凄く嬉しかったの、あんなに心から休めた事、無かったから先生の優しさの中に、何時までもいたかったから、俺、本当にあんな幸せ感じた事なかったよ」

 「本当に?、それなら、よかったわ..それと私、昨夜、初めて..こんな、凄い」 俺はずかしい思いをさせまいと、話を遮る様に 「世の中の夫婦下手に気取っていないで、お互いが欲しく、求め会った時を思い起せば、離婚は少なくなると思うよ、そのくせ人にはその行為を下品とかいって、子供作っているし、マリヤさまで無い限り、どんな人でも、父と母の愛から生まれたんだから、動物みたいに、ただ子供作る為の考えの方が余程不純だよ..」

 俺は堰を切った様に話始めた「..人には心が有り愛があるから、自分達にとって寄り良い方法を考えるのが当然、皆、環境、育ちや顔も違うし考えも、頭を使う人ほど想像力豊かでそれぞれ違いがあるし、食べ物にしてもそれぞれ好みが違う様に、本当に向き合って話合う事が大切だと思うよ、それと、一方だけを押し付けず、二人を認め合い、尚、出来れば共有趣味を持てたら良いね、なーんって、云ちゃって!..俺に似合わない理想なんか、云って」何故か今まで話した事の無い自分の言葉に照れを感じてしまったが

 「もっとも、人のことは云えないけれど、以前の俺達は散々話し合ったけれど、一旦出来てしまったイメージを、如何しても変える事が出来ず、俺自身の全てが壊れてしまうような気がして何も出来なかったまぁ、他人に話す事でもないし、他人の事云えないが、何千年、何万年、繰り替えされて来た行為なのに何故、素直に成れないのかな?余り開放的でも、刺激が薄れるかな?だから秘め事と言うのかな?」

 尚も、先生なら受け止めてくれるのではないかと思い、俺は初めて自分の存在やこの世界についての、疑問をブッツケて見たいと、自分の考えを話し続けた「それ以前に、俺は人間やこの世の中でこの宇宙で、生きている生物が生殖を繰り返し、生き延びる、意義がわからない、子孫を残し続け何億万年後、何時の日か、此の宇宙を支配するためか?何の意味が有るのか、何故、俺が此処に居るのか?どんな意味が有るのか何も解からないよ?俺が死んだら、此の世界は消えてしまう、全て無意味ではないか?自分の聞いたり見える範囲の事しか解らない、しかし人は自分自身だけは特別だ、だから、少しでも優秀な子孫を残したいのか?俺だけは、この世の建造の神から何か特別な使命を与えられたと思い、自分の価値を認めたいが為に?!本当は何も解らないし、況してや生きている意義がわからないよ、この宇宙や自然はそんな個人的、感情や営みには無関係に変化して行き、余りにもちっぽけな存在だから

 元々、何の為の価値か?誰が決めるのか?、女に認められたいが為にか?何も無い価値を俺だけは特別だと思いたいだけ..でも、そう云う俺も現実には、先生に強烈に引かれ、俺の価値を認められたい為の煩悩だらけの俺がいるよ、もの凄く愛されたいと思っているし、愛さずにはいられない本能だらけの俺がいるよ、全く、矛盾だらけで、何の価値の無い、煩悩に苦しむ俺が何故生きているのだ?と思うよ」 なんだろう、こんなに理屈っほい話、気恥ずかしく普段はとても出来ないのに不思議と、今までこんなにベレベラ喋った事はなかったが初めて俺を理解出来る人にあった思いからだ!

 優しく包み込む様に先生は黙って聞いていたが、まるで子供を諭す様に「神は天地創造を五日間で成し遂げ7日目に安息とされたと云われているそうよ」 きっと生きる意義を説明するための聖書の話だろう、その先の話が有るだろうが俺は遮った「俺はこの世界が出来た、科学的ビッグバーンなら解るけど、神など信じられないよ、何故、世の中こんなに不条理に出来ているの?ましてや自然は無情だよ、 ・・でもね、時々ちゃかり、神様にお願いごとする事あるけどね、俺のは自分に都合の良い神様だけどね、自分でも話している事が、ごちゃごちゃで解らなくなるよ、アハッハ」

 先生は俺を否定するでもなく「フッフフなにか、リュウって哲学者みたい、何となく、納得させられるけれど、私は、この世の創造、ましてや、宇宙の事など解らないわ」 「おだてないでよ”ソクラテスやニーチェ”ではないよ、ただ理屈ぽい本当の”阿呆イズム”の人だって云いたいだけでしょう!..先生は現実的ですね」

 「面白い事云うわね、アフォイズム(aphorism)をかけたのね、・・リュウをそんな諷に思っていないわよ!何でも解っている様な顔をしてリュウの様に悩んでいる人をセセラ笑っている人の方が大嫌いよ!」・・「でもね、今のこの幸せは事実でしょ、それに、他の生物は解りませんが、ただ生殖を繰り返すだけでは無いの、人は一人では寂しくて生きていけないのよ、・・今の元気なリュウには解らないでしょうが」 たぶん職業がら、お年寄りに限らず、孤独に去って逝く人を沢山見て来たからだろう 「リュウ!リュウだって、たった今幸せだって云ったでしょう!一人で感じたり、分かちあったり、する事が出来る?」 「うん、幸せだよ!そう思っている」

 「私もよ!、現実にリュウに遭え、此れほど、いとおしく愛してしまった事に、感謝するわ、そして、最高に幸せよ!愛は人を特別な存在に変えるのよ、それだけじゃ、いけないの?、この世の全ての存在に意義があると思うの、..リュウの云う通り宇宙の力は底知れない物よ、でもその様に云いながら”俺の命俺がどうしょうと俺の勝手だ”とリュウは自分で生きていると思っているでしょう?、でもそれは違うは”私達は生きているのでは無く、生かされているのよ、そのうえ、意味は解らないが地球上の生物達は競って子孫の繁栄を求めているの、それが定めなの!

海の公園-1JPG.jpg そして、命は各々与えられた時間、その中で与えられた定めに導かれ、この巡り合いの奇跡に、ただ感謝し素直に受け入れば良いでしょう..リュウ!私達のこの、不思議な巡り逢い想像できた?解明できる?..それもこの世にリュウのお父さんとお母さんの愛があって、又その父と母が存在して、そうして皆に愛され、リュウが生まれたのよ!例外はあるけれど、私もよ、同じ様に愛され生まれてきたの其の上、リュウと私が偶然、再会した事、不思議でしょう、それでね此の与えられた時を大切に生きなければ、ならないの」

 「そうかも知れない、俺も、先生に逢え最高に幸せだよ」 それに無闇に否定せず俺を確り受け止めてくれる、やはり先生は現実的で何時の間に説得されてしまう、凄いや! 「幸せに思う心、其れが大切な事よ、与えられた命に悔いの無いようにね・・その中で自分なりの意味を見出せば、いいんじゃない・・

 それでリュウ、話を戻すはね、少なからず人はね、日常の生活の中で性に対して罪悪感を植えつけられて居るの、それはね、愛情も無く性だけに溺れ、子供が出来てしまう事を恐れ、戒め、防ぐ為と思うわ」 「リュウもう少し話して良いかしら?」 「はい」

 「逗子の海岸で話した時、納得いかない様だったから、リュウの言葉を借りるのなら、この地球上の生物全て、理由は解らないが、子孫を残し繁栄させ様として争っている、そのとうりだと思うわ、人でも動物でも、子孫を残す為に、心とは別な処で勝手に反応が起きるの、それは健康な証拠、決して、悪い事ではないわ、それより、正常の若者がそんな気持ちが起きない方が、病気か異常よ!大して知識の無い大人達が知ったか分って偏った変な道徳を押し付けて、青春期を迎える子供達が戸惑い、悪い事と思い隠してしまうから、歪んだ考えになってしまうの、人が生きて行く上で最も重要な事を避けているの、その時期にちゃんと向き合って話す必要が有るの」

 ..内心、嘗ての俺、心が痛むよ.. 話題を変えようと思い 「海辺に出よう!」 「ええ、いいわね、行きましょう」 二人は林の遊歩道を抜け八景島入り口に続く大橋に向かい、海辺の波打ち際の砂浜を寄せ来る波と時々遊びながら楽しく歩いた、時々吹く爽やかな風が優しく通り過ぎて行く、俺は悪戯心で先生を波打ち際に押しやった 「フフ、波が来るよ」 「キャー、リュウ押さないで、濡れちゃうから」 時々大きく寄せる波を楽しげに大げさに避けながら、俺に一層寄り添い先生は話の続きを始めた

 「それでね、今では、学校でも教える様だけど、先生自身が偏見を持ち、本当の意味を余り理解出来ていないと思うわ、だから、教わる者が理解出来ないのよ、理性を教えることは、其の行いを偏見無く見つめ理解した上で、説明すべきよ、動物達には自分で育て無くて、子供自身が生きる能力を持ているから、ただ子供を生み続けて強い子孫を残す事が出来る物と、

ryu & yoshiko 海辺.jpg 人間はそうは、行かないわ、子育てを必要とする動物達もね、子供が物事に耐えれる身体が出来上がるまで親の手が必要なの、其れには、子供に愛情を持ち夫婦で助け合い、自立するまで、育てる必要が有るの、経済的にも、子供に社会で生きて往ける善悪を身に付けさせなければいけないの、そこで、ただ、感情や欲望だけに身を任してはいけない事を理解出来るのよ」 まるで以前の俺を知っているかのように

 俺は堪らなくなり、もう一度、先生を波に向かって、軽く押した先生は笑いながら「もうーリュウたら、だめよ!大事な事だから!ちゃんと聞いて」 「うん!」 「若い時はどんなに駄目だと言っても、沢山恋愛するでしょう相手を好きになる事も大切で自然だが、欲望を愛と勘違いしているの、本当の愛や愛情は結果を、其処まで考えなければいけないの、それが正しいと思うけれど

 リュウは、行き過ぎ、純粋過ぎるほど純粋の事が、返って人を傷つけてしまう結果になってしまうの、時として、愚かなのも人間よ、..”結婚は一方だけでは無く、自身の体も心も受け入れ、其の上で相手の事を考えなくてわ”..旨く説明出来たかしら」 やはり先生だ確り自分の意見を述べる、たぶん俺の結婚の失敗が何故か教えたかったに違いない、其の場の気分ではなく、確かな、愛と家庭を作る、責任を求めていたからだろう

 何かたまらなくなり「子供じゃぁないよ、そんな事解っているよ!、さんざん苦しんだから、バランスと責任でしょう、こんな時も先生はシュール、現実的だよね」 流石、先生だね、相手が解かる様に説明する事、当時も病院での説明や態度に感銘して、尊敬し、本当に信頼出来る人と思たよ、本当は俺自身、身を持って痛切に感じた、事を解ったのであろう 「ごめん!解っているのよね、説明する事も無かったね、責任感有るし、それがリュウの素晴しい処でもあるのにね」

 先生は俺の目を真っ直ぐ見詰め、決断した様に「それで、昨夜の事だけど、私、話す事、躊躇ったんだけど、リュウに私の全部を知ってむらう、事が良いと思い..なんて云ったら良いのか..初めての経験よ!自分が自分で無いような、ほら、大学生だった頃友達の頼みで、女の人が足りないからと浅草で、お祭りの御神輿、担いだ時にアドレナリン(adrenaline)がどんどん出てハイになった時のような、少し違うかな、とにかく今まで感じなかった感覚!..真っ暗な海へ何処までも落ちて行く恐さに、リュウの腕にしがみ付き、快感と不安の中で漂っている様な、それが、物凄い耐え難い快感になり」

 又、先生は少し恥ずかしそうに言葉を探し話を続けた「それからも、とどまる所が無く襲ってきて、身体中の肌に電気が走り、体の奥底から全身の細胞に血潮が沸き上がって来るような、絶え切れない物凄い快感で、意識が霞んで行く中、別な生物が勝手に動きだして、死んでしまいそうな快感の波が寄せては返し何回となく、とどまる事無く、押し寄せて来る感覚..薄れて行く意識の中で、貪欲にも、もっと、もっと、リュウと溶け合い一つ成りたく、もっと、リュウが愛しく欲しいと思う気持ちで、本当にこのままリュウを感じながら、死んでも良いと思ったわ、反面、自分の体が悪魔に支配された様で恐くなったの!」

 「俺だって、一緒だよ、なんて素晴しいかと感じ、絶対離さない、と思ったよ」 先生は少し頬を染め俯きかげんに「本当に?恥ずかしいわ、..私、淫乱のようになって、理性を失い..軽蔑しない!」 「馬鹿な事云うなよ!意味が違うでしょう、こう云う事、理性を持って、している人の方が、気持ち悪いし恐いよ、やっと理性を取り払い開放される事が出来、お互い本当の自分なれ、初めてこんなに安らぐ事が出来て、お互いの全てを知ろうと心まで裸になれ、一つに溶け合い求め合い、何が悪いんだよ、こんな巡り合い二度と無いよ、なんで、卑屈になっているの、俺、感動したよ、なんて素晴しい人だ!と思ったよ、もっと大事にしなくては、先生が教えてくれたでしょう、たまには、全ての束縛から解放されても良いと、悪魔では無く、それこそ天使でしょう」 俺は先生との空白の時間を少しでも取り戻し先生を知り尽くしたかった、からかも知れないが為に激しく求めたのかも知れない、

 いつの間にか海と島を繋ぐ、八景島入り口の広く長い大橋を渡り、正面の大きなメリーゴーランドを過ぎ、なだらかな坂道の両脇に紫陽花の咲き誇るあじさいコースを歩いていた

紫陽花八景島.jpg 「リュウ、やっぱり、あれは悪魔よ!、あの耐え切れない苦しさの中で痺れる甘美さと快感、まるでドーバミン恍惚の嵐中に迷い込んでしまって、嵐の渦のブラックホールに巻き込まれ光を失った暗闇の中に限りなく落ちて行き自分が破壊されてしまいそうで恐かったの」 「先生はそんな事は無いよ、今だって冷静で、自分を分析しているでしょう、もうオキシトミンが出ているよ、それと、エンドルフィンかも知れないよ、たまには普段のストレスを開放してくれる場が必要だよ、脳は危険を感じると自然に制御する物質を出すんだよ」 「如何して、医者でも無いのに、そんな事知っているの?それに、付け加えるなら、精神的に健全で健康が条件ね」

 「まあーね、コンピューターでロボット作りたくてね、頭の構造の事少し知りたく感情の事も勉強したの、ドーバミン・ニューロン(Dopamine-neuron)とか、神経伝達物質など、苦しさとか痛みも、快感に繋がるんだよ」 「それで、..本当に、そう思っているの?」 「当たり前でしょう!先生自身が教えてくれたんだよ」 「本当に?..リュウは悪魔よ、もう虜になってしまったわ」 「そんな!..めちゃめちゃにしてー、って!」..そう云えば、先生の体全体が、うっすらと、汗ばんでいたな.. 先生は俺を見詰め「其れくらいリュウは..私に悪魔の魔法をかけたのよ」

 「だから、解かっていると云ったでしょう、裸の自分を受け止める、此れが本当の愛だよ!、本当に先生、素直で清清しい位、..本や話には聞いていたが、本当に俺が体験するなんて、なにも心配する事では無いよ、むしろ、素晴らしいよ、本当に出会ったのには、嬉しい驚きだったよ、女性の中には、生まれ持った特殊能力と、また訓練により出来る人もいる様だが、俺は、なんて幸運な男かて、これも先生の言う正常で、人より走る事が早いとか、特技かな?ずば抜けた身体だからこそ生まれる物と思うけど、それと頭の良い人ほど想像力があり、高い常識との葛藤が外れたから、より強く感じれたのだよ、俺達長い時を架けやっと出会えたのだよ、..本当に先生の事、可愛いなって感じたよ!」

 先生は俯き加減に目を伏せ、頬をなお更赤らめて「本当に、うれしい!ありがとう!こんな事、話せたのリュウだけよ」 「本音を話し本音で接しようて、云っていたの..先生でしょう、それと知らなかったの?」 「私は婦人科では無いわよ、だいいち婦人科でもそんな事教えないよ、知る訳け無いでしょう、自分の体が恐いような、本当に複雑な気持ち..」 「..リュウに生意気な事云えないね、私自信、心の偏見が有ったのかもしれないわね..でもどんな事が有っても、やはり、リュウだけにしか話せないわ..」

紫陽花八景島2.JPG 「ただ、リュウに喜んでむらえるなら幸せよ、この世の中で何人の人がいるのかは判らないが、幾千もの瞳が、とめどなく交差する、そんな巷でふと見詰め合いたちまち恋に魅せられ、運命と言うか選ばれた、二人が組み合わされ、(You & I destined soul mate, Fated deepest love that is meant to last) よし子とリュウの様に、これ以上在り得ないほど、深く、深く、とても深く!、これ以上の愛は無いと思うほど!、私達は愛し合っているんだと!、本当に嬉しいし喜びと感激と想像を絶する快感の中で、このまま全てが永遠に止ってしまえば良いと!、この大空に舞い上がる様な精神的開放感、これで本当に良かったと思ったわ!こんな幸せが有るなんて!」多分、みなと未来での俺達の出会いの事を詩にしたのだろうか

 「先生って、凄く不思議、現実的なのに、こんなに詩的な処もあるんだ!、何かを我慢すれば、何時か亀裂が起きるよ、おれ自身が体験してきた事でしょう、誰に迷惑掛けるわけでも無いし、お互い苦痛で無ければ助け合うのが当然でしょう、夫婦って、お互い裸の心で助け合う物でしょう!、其れが、心から休める事、先生自身が教えてくれたんですよ!」

 つい、声が荒くなってしまったのか 「私だって女よ!こんなに幸せで、詩的になる時もあるのよ、リュウの云う通り、そんなに力説しなくても、良く分ったわ..それでね、私が年を取って、自由が利かなくなったら、下もの世話リュウ以外してもらわないわ」 「それは、大変だ!男の方が寿命短いよ、俺がしてむらうよ」 「だめよ、リュウに一生愛され、リュウに見守られて、一生終わりたいわ、おばーちゃんになっても、愛していただける?」 「ハッハァ!長生きしないと、いけないな、やはり先生は現実主義だ」 「そうですよ、私、寂しがりやだから、一人で生きられないわ、本当にお願いするからね、本当よ!」 やはり先生という立場、そうしたいろいろ沢山の人を見てきたからだろうか?

紫陽花.jpg やっと、俺の説明で先生は安心し先生自身を受け入れたようだ、..「きっと、自分でも解っていない心の奥底で眠っている物が安心観の中で素直に呼び起し解放されたんだよ、もう何処かで不満も感じられないと思うよ、もう何も、心配すること無いよ、..本当に俺はラッキーマンだ、誰かに、叫びたいくらいだよ」

  先生は確りした、口調で「それと、私の周りの世間と云う牢獄と私自身を巻きつけていた鎖を、リュウ、貴方はいとも簡単に解き放し、開放感を与えてくれたわ、結婚している世の中の女性、皆こんな幸せを感じているのかしら?」 「さーね? 意外と、自分自身の中にある物だよ、一歩踏み出し心を開けば簡単だったり、するものだよ」 これは俺自身にも言い聞かせる言葉かも知れない

 先生は本能的に何時も何か掴みきれない心の奥底から湧き上がる物、それがたとえ悪魔?であって、どんなに恐くて不安に晒されても知らなければ収まらなかったのでは、常識を超える恐さであっても知りたいと感じていたのでは..そして、余りにも自身の変化に不安を覚え話さずには居られなかったのではないのか..そんな話をしている中に穏やかな風に送られ八景島のシーパラダイス付近に来ていた、

紫陽花-1.jpg 紫陽花が昨日からの雨上がりに一際綺麗に輝き咲き誇っている、..まるで、先生の様だ、其の時々で、色が変り、華やかに、ある時は清純な真っ白やブルー・シアンの清楚で有り、又妖艶で怪しげな紫に、雨を求め雨に打たれる度に一層輝きを放ち、やがて真っ赤に燃え上がる..俺はヨシ子に時折降り注ぐ雨になり、時には輝く光りになり、紫陽花の様に..先生を!..

 「リュウ、如何したの?急に黙り込んで」 俺は何か見透かされ様で、少し慌て戸惑った「うんうん、紫陽花が、綺麗だな~ぁって」 あじさい祭りも有ってか、沢山のカップルが楽しそうに行き交っている、見事な花が咲き誇る、あじさいの滝と名前の付いた階段を下り

山紫陽花.jpg 「あの、楽しそうな、あのカップルもこっちのカップル達も色々楽しさも悩みが有ると思うよ、お腹空いたね、何所か据わる処決めようよ」 「リュウって突然話がお腹に行くのね、ネエ~、あそこの、水族館(八景島シーパラダイス)の入り口近くのサービステーブルにしょうよ」 「じゃあ、そこの空いているテーブルにして、俺、何か飲み物、自動販売機で買って来るよ、何にする?」 「なんにしょうかな、ジュースとお茶、..こんな事無かったわ後でソフトクリーム食べたい!何かリュウと居ると、子供に帰ったみたい

 朝、準備した、サンドイッチを食べ 「リュウ、こんなに近い処なのに私し久し振り、今まで沢山高級なレストランやホテルの会食に行ったけれど、リュウと一緒だと全然問題にならない位楽しいし、凄く凄く幸せ、サンドイッチ凄く美味しいから沢山戴いちゃった、リュウと一緒だと太りそう」

ヨシ子解った.jpg 「屋外だから、美味しく感じるかも、大丈夫だよ、今晩、俺が運動させてあげるから..、今日は色々考えるのよそう、楽しくしようよ」 「リュウの云う意味解かる様になったよ、さっきリュウが紫陽花見て、あんなに慌てて、考えていた事解ったわ..フフ、今夜一杯お願いしようっと」 「パーカ!」先生の頭を指でつついた、まあー、当らずとも遠からずだ 「アハァ、リュウ、赤くなって照れてる、図星でしょう」 「まあーね、もっと意味深いよ」 「どんな事?」 「後で」何処かに罪悪感が残っている俺と違って、なんって、明るい人だろう 「ねー、水族館でイルカショー見ようよ」 「水族館なんって俺には関係なく想像も出来なかったよ、子供達が沢山だね、いい機会だから入ってみるか」 「一人では、何か入りずらいでしょ」

 俺は少し気恥ずかしかったが先生と、切符売り場に見知らぬ子供達と並び戸惑いながらキップを求めた 隣に並んだ子供が何を求めたら良いか解らなく思った俺をみて「お兄さん、アトラクション等セットになった方が、お得だよ」もう母親と何回も来ているのであろう 「あ、有難う」 売り場のお嬢さんに向かって「じゃぁーそれ下さい」何とか焦りながらキップを手にした、その子のお母さんと顔が合い、思わず互いに苦笑していた、俺の戸惑いをみて 「フフ、リュウの困った顔、見ちゃった!」 子供の様に素直に楽しく喜んでいる先生を見て、連れて来て良かったし、そんな先生が居てくれ幸せに感じた

  入り口のお姉さんにチケットを渡し入場すると中は薄暗く大きな水槽に珍しい熱帯魚や海の動物達があちこちに見えた、俺はふと思いつき、尋ねた「ねぇ、先生、何所か旅行したくない?」 「そぅーね、リュウ、今は駄目なの、病院のスケジュウルも有るしね、それよりね、今はリュウと云う心の大陸を旅をして、新しい自分探すの、始めはリュウはアメリカ大陸かなと思ったけれど、ヨーロッパ大陸だね、時々見知らぬ、女の子が出て来たり..?」 「そうか、そのうち行こうよ、 ね、如何してヨーロッパなの?女は無いよ!」 「そうね、始めリュウはアメリカ的と感じて、ただ野生的で大ざっぱ、と思っていたけど、リュウと言葉交わし接して、以外と繊細で多面的な所が有ると思ったから」

シーパラダイス.jpg 館内の放送でイルカショウが始まることが告げられ、子供達の興奮した、ざわめきと共に押出されながら、巨大水槽のトンネルの中をエレベーターで頭上を鰯の大群が銀色や青く光り、エイや鮫など泳ぐ中を感動しながら、大きなプールの有る会場に着いた、何段もある大観覧席のちょうど中ほどに先生と並んで席を取った、孫と一緒のお婆さんや若いお母さん、子供達ばかり、何か場違いの所に迷いこんでしまった様で、ちょと小恥ずかしく思う、

 やっと落ち着き先ほどの話の続きを始めた「やっぱり、先生だね、云う事が違うよ、又、先生って云ってしまった、ごめん」 「リュウに云はれたら、くすぐったいね、いいのよ、リュウが蟠り無くなるまで、..今はね、リュウと出会い何か新しい自分を見つけられそう!、全てが新鮮で子供の様にワクワクしているの、..もう、歩き始めているわ、私の中で、リュウが導いた、新しい出会いも有ったし、少し角度変えて見れば、色々見えて来たのよ、みんなリュウからの刺激よ」

 「俺、褒められているの?先生の生きた世界と俺の世界が余りにも違うからでしょう」 「そうよ、だから、自分以外の世界は認めなかったのよ、それをリュウが変えてくれたの、本当の人間的な、暖かい物をね」

そんな、会話の中でも、時折ふと見せる悲しげな表情が気になり 「先生、如何したの心配事でも..?」 「なにか、余り幸せ過ぎて、不安で恐いの! このまま、リュウを駄目にしてしまうのでは無いかとか、リュウがいなくなってしまう様な、時々頭を過ぎるのよ、幸せなのにね、変よね!」 「先生、俺なら大丈夫だよ、それより俺の方が先生の人生を狂わせてしまうのでは、って」 「ちがうわ、私が変えようとしているの、今になって解かったわ、前の奥さんの事、持ち出すの嫌でしょうが、リュウのレースの事よ、毎日心配になるわ、あの時は、冷静に考えられたのに、誤解しないで、リュウの夢は消したくないの、それと世間の目、もっと強く成らなくては」 時々ショウの歓声で聞き取りずらい

K-ryu.jpg 「確かに危険もあるよ、でも普段の生活でも危険だらけだよ、況してや、戦場カメラマンや救命隊、登山家、いっぱい居るよ、もう嫌なの、互いに足の引っ張り合いや、本心で話さず影での中傷等、レースは単純に見えるが、色々戦略も有るけれど、それと自分との戦い、影での汚い工作も無く実力勝負、走り切った、達成感と結果が直ぐに判る事だと思うよ、俺単純だから」 「ま~ぁ、謙遜ですか?リュウは複雑でなかなか解らないわよ」 「そうかなー?」

 「リュウの話は解っているわ、でも理屈では無いの、リュウがレースに取り組んでいる時の輝いている目、そこが好きなの!でも、恐いの!」 「もう走り初めているんだよ、前に進むしか無いよ」 「そうよね、幸せすぎるから!リュウを失う事など出来ないわ!、リュウの云う様に、進むしかないよね」

 「ねーぇ、帰りに鍵屋によって、私とリュウの家の鍵作りましょうよ、良いでしょ」 「うん、そしよう、又明日から1週間会えなくなるから」 「リュウ、会いたい時には、何時でも来て良いのよ、私だって、会いたくて、寂しい時有るんだから、気を使わなくて良いよ」 「ありがとう、そうさせてむらうよ、明日から今週末俺のビックレースのデビュー戦の準備も兼ねて明後日辺りから富士に行くから」 「じゃー今晩は私の処に居てくれる?」 歳上のせいも有り、本当にハッキリ自分の気持ちを言う人だが決して押し付けではない所が流石と 「先生が駄目と言っても、側にいるよ」 暗黙の内に此の出会いが、長い時を経なくても、二人を結婚に導く事を予感していた

 金沢文庫の鍵のショップで二人の鍵を作り、駅の近くの喜多方ラーメン店で夕食を済ませ、先生のマンションに帰り、俺のレースの経歴を先生に伝える事にした、ある電気メーカーの商品開発技術部に配属されたが、俺の気性に合わなかった事とカーレースに魅せられ、転職、将来海外のレース活動、英会話も含め良いと思い、横須賀X軍基地に、レース活動も有りその時は休ませて頂ける条件で日本政府経由の方が条件が良かったが、自由な休みが取れなく、米海軍に直接パートで就職、日本従業員の為のプログラムと日本語用PCの設置扱いの指導等を担当、

 初戦は富士フレシュマン(スカイラインGTRのレース仕様)で出場、見事優勝、それからランクアップしながら数々のレースに出場かなり良い成果でした、それで結婚、奥さんが入院、レース活動中止に至った事、レース関係者に何とか継続出来ないか相談が有って残念がられました、後は先生に話したとうり、そんな話をした

 此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編3】クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11》へ続きます是非お読み下さる事お願いね


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編3】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

ストーリー【前編2】からの続きです是非下欄【前編3】をお読み下さい☆ 

yoshiko-通勤上半身.jpg  翌朝、先生は濃紺(deep navy)のスーツで四角い大きなエルメス バーキンの黒皮ショルダーバック、昨日とまるで別人貴賓さえ感ずる、車で最寄の駅前まで送り、運転席の俺の肩に手を置き「レース頑張ってね!」 「はい」

 車を降りた先生は、スマホで職場であろうメールの確認を取りながらおそらく、ここ二日間は外部や仕事など重要な連絡が有るだろうに、俺に悟られない様に心掛けていたのだろう、どれだけ大切な時間かを考えると、嬉しく思った、

 俺は先生の心配を解す為に「・・先生!今朝は営業用の顔ですか?」 先生は振り向き、悪戯坊主を叱るように「もう、リュウたら、それより、気を付けて運転してね」 「はい、先生も」

 ニッコリ笑顔で俺に歩みより、まるで自分の子供でも送るように運転席の窓枠に肘を掛けた俺の手をとって、小声で「ねぇ!何か二人って!いいわね、心が暖かく楽しくなるわ」確認を取る様に俺の手を確り握り・・「行ってらっしゃい、本当に気を付けて、いいわね!」 「うん!じゃぁ」 駅のエスカレーターを上がる先生の姿が見えなくなるまで見送った、俺はこの女性の包み込む様な優しさと暖かさをもっと感じていたい、そんな思いに駆られたのは始めてと言っていい。

 久しぶりに先生との事を伝えに母の所で一晩泊り、翌朝、富士に向かう事にした。  俺の実家は横浜根岸の高台、競馬場跡付近にある、俺のマンションからすぐ坂を上がった所である、 坂を下れば元町にすぐ出られ左に下れば伊勢崎町、真っ直ぐ行くと港の見える公園と外人墓地。

 母とゆっくり話す事は珍しい、母に離婚した妻(美奈子)の担当医、鶴見 先生で以前からから世話になっている事、ひょんな事から、再会し親しく成った事など説明して、俺は一息入れて改めて母に声をかけた「ねー、おかーさん」 「うん!なに?」 「俺、まだ先生には確かめていないけれど、先生と結婚しょうと思ってるよ」

 母はきっと複雑な思いであろう、不安げな顔つきで、言葉を選び慎重に「おまえが、決めた事だがら反対はしないが、住む世界が余りにも違うでしょう、・・女性は男と違い傷つき易いのよ、もう泣かす事は絶対許しませんよ、・・五つも年上の事考えて一生この先も愛して行けるの?」

 「・・」 「二度と同じ間違いをしては、いけないよ、おまえは、直ぐに感情に流され易いから、だいいち、その先生の気持ち聞いていないでしょう?」 「もうー、解かっているよ!」 「・・兎に角、近い内にその人、連れて来なさい」 母は、口ではきついが、受け入れてくれた様子、内心ほっとし嬉しかった。

 また、これも言ずらいがレース再開と今週からビックレースにチャレンジ出来る様になった事を報告、流石に別れた奥さんの父からスポンサー援助の事は話せなかった 「お前は、父に似て、一度決めたら聞く耳を持たないから、あんなに安定した会社も辞めてしまって、本当は母も危険な事反対ですよ、結婚を決めるのには相手の女性の事も考えなさい、どんなに心配するか、前の事で解かっているはずでっしょう、よーく考えて、とにかく、気を付けてやりなさい」 叱られたが、一応了解を得、まだ俺の部屋が、其のままにしてある、やはり、母特製の散し寿司と稲荷寿司、肉ジャガは美味い。 

《富士スピードウェイ》 Fuji Speedway round 4 (06/28)  

fuji.jpg 今は立ち上げた、ばかりのジャパン・レーシング・アカデミー・チームのオーナーで有りチーム監督である北原から、今年のレースは全部で8戦前半3戦は先輩レーサーがドライブしていたが、家の事情でレース活動止める事になり、資金難も有り急遽、スポンサーの収得を条件に俺の起用となった

 この第4戦6月から俺にとってはビックレースのデビュー初戦になる、気持ちも高まり何時もの集中を取り戻し始めた、レース期間中は、スピードウエイに預けてあるチームのキャンピングカーの生活になるホテルでも良いが経費節約と気を使はないですむ、車の中の方が落ち着く、食事はレース場内のケータリングやレストランで何時でも取れ、風呂やシャワーも何時でも使用出来る。

 翌日朝、横浜海老名から東名高速をへて、監督とメカニック・エンジニア達と御殿場でスクールのマイクロバスと合流、メカニック二人が俺の車に移動し、此処からエンジニアの井原くんに運転を変り俺は後部席でサーキットまで休む事にした、今週末の天候は余り芳しく無いが始めての俺の走りに期待を掛けて居る様で少しプレッシャーを感じつつ、東名御殿場から富士スピードウエイに向かった

孝ちゃんラブ2.jpg 車の中で、孝ちゃんが 「ねー、リュウ、毎回ビリで走っている人、如何して未だ走るの」 始めは質問の意味がわからなかったが、「いつも最下位で辞めようと思わないの?」 「う~ん、人其々、考えが違うが、俺だったら、何時かは必ずトップに立ってやる、思ってやっているよ、少なくとも皆そう思って戦っているのでは?」 「でも、明らかに実力に差がある事解らないの」 「おいおい!そこからが、重要だと思うよ、なにくそ、と思い相手の走りを研究して来る人、諦める人、幸ちゃんだって、そうでしょう、、皆より俺が早く走れる様に、調整、研究して誰にも負けないメカニックを目指しているだろう?」

 「まーね、私、機械が好きだから、それに機械、裏切らないからね」 「まーねて!孝ちゃんに俺の命預けているんだよ、ネジ一本でも緩んでいたら、俺オシャカ!だから頼むよ、・・何が有ったか知らないが、俺だって初挑戦だ、一番ビリになるかも、脅かすなよ!」誰かに裏切られたのかな? 孝ちゃん、笑顔で「リュウの為だったら頑張れるわ、昔の評判聞いているわよ、ダントツの連勝だったってね、びりになる訳無いでしょう、如何して辞めてたの?」

 俺は車の窓から遠くの山並みに目をそらし「まあー色々ね、..それより以前と今では全然違うよ、レギュレーションだってマシーンのクラスも違っているしマシーンの性能も格段良くなっているからそれに、俺このクラス初めてだよ」 察しの良い孝ちゃん、それ以上は触れず「まかしてよね、リュウの事、好きだから、私も命掛けちゃう」 俺は苦笑しながら「命掛けなくていいから、ネジの締め忘れ無いように、俺の命守ってよ頼むよ!」

 運転席の井原君も、俺が話しかけなければ、自分から積極的に話をする人ではないが、ぼそりと話に加わった「孝ちゃん!龍崎さんは、ミスの無いように、確り点検して欲しいと云っているのだよ」 孝ちゃんは丸く大きな目を益々大きくして「それぐらい解っているわよ、リュウが素敵だから、解るでしょう!」 何時も黙って聞いている井原君珍しく「もう、泣いても知らないよ」 孝ちゃん、益々驚いた顔で「もう泣いているわよ、リュウ、冷たいから!もうーリュウたら狸き寝入りしているよ」 井原君何時もなら、それ以上関心を持たない、のに今日は何か違う「龍崎さんを困らせて、だめだよレース出来なくなるよ」 俺は可笑しくなり「俺、孝ちゃんの事好きだしマシーンの調整、技術力すっごいと思っているよ、だけど、ごめん!俺の女の好みとちょっと、違うな!」 「もうー、解ったわよ!好みに合う様にするから、どんな女が好き?」 井原君、珍しく冗談だろう「こりゃ駄目だ!」 俺と孝ちゃん、驚きの顔で見合った、皆軟らかい顔になって笑い声えが飛び交っていた、もうスピードウエイ入り口のダンロップゲートが見えてきた

クミちゃん.jpg 俺らの弱小チームでも、監督兼オーナー(北原)、メカニック兼エンジニア(井原君&孝「コウ」ちゃん)この二人のマシーンの調整能力は他のチームに負けないくらい素晴らしい、マネージャー権雑用(竹田君、通称タケちゃん)紅一点、事務兼タイムキーパー雑用(久美子、クミちゃん)計6名、その他監督が経営しているレーシング・スクールからの体験を兼ね生徒ボランテア5.6人後はスポンサーからのレースークイン3名、チーム全体では略12、3名位になる、一流チームはレースードライバー2名、レースカー予備も入れて3~4台の大チーム俺らの余に3倍から4倍以上の人員である

 富士スピードウェイに木曜の夜には各チームが集まってくる、大型トレーラー3,4台でマシーン(車)や工具、テント・椅子やテーブル、スポンサーの商品まで持ち込み、金曜朝には、各チームごとに決められたパドック(発車待機所)え準備を整える為に大忙しだ、当然俺達も準備に追われ、ケータリングのお弁当を取り、準備が一応終わったのが夕方の7時を過ぎていた、皆準備やマシーン調整に疲れた様で、早々にシャワーを取り、余り会話も無く宿舎に戻った。

北原 監督あ.jpg 翌金曜、街中と違い少しは標高が高い為か清々しい朝を迎えた、場内のレストラン朝食はバイキング、我らのチームクルーも他のチームも続々レストランに集まって来た

 我がチームの人々が集まった中で監督の挨拶が有り 「皆さん、おはよう、今回から皆も知っての通り新しく龍崎君がドライバーを務める事になりました、今まで通り力を合わせ、戦いましょう、龍崎君挨拶を」やはり監督だ!渋めの顔で挨拶、長い経験と知識が滲み出る、チームの皆の引き締めになる

 「はい、これと言って改めて無いのですが、これから”リュウ”と呼んで下さい、何分にもFJは始めてのマシーンで始めてのクラスのレースですので、至らない処は遠慮なく、注意して下さい、もう一部の皆さんとはコミニケーションが取れていますが、皆さん、チーム一つなり頑張りましょう!、宜しくお願い致します」 あちらこちらから拍手が響く。 監督とは何時も電話かレース場、スポンサーの会社であっていた為、未だチームの事務所に訪ねた事も無く、クミちゃんとは電話応対の声だけで、タケちゃんには初めての対面である、両人が宜しくの挨拶に来た、続いて我らチームのスポンサー達やレースクィーン、キャンペンガール等と挨拶を交わす、

  食堂に入った他のチームの人達も、新人レーサーを興味深げに眺め、大半は以前からの仲間や知り合いも沢山いて ”ヨォ!リュウ戻って来たね頑張れよ!、お手柔らかにたのむよ!” 等の声援もあり、皆さん拍手で歓迎してくれた、俺は照れ笑いをしながら、軽く手を振り頭を下げ答えた、少し気恥ずかしい思いをしたが、嬉しかった

龍崎ハイ.jpg 監督の眼鏡がキラリと光り俺を見詰め「おい、リュウ食事終わったら、各チーム監督と運営委員に挨拶だ」 「あ!はい、どうも苦手だな」 「リュウ、行かなければ、だめだ!」 孝ちゃん慌てて口を挟み「私リュウと一緒に行ってあげる」 監督の声が響く「孝ちゃんは井原と挨拶がてら他のチームの偵察だ、何か新しい事が有るか勉強がてら、何気なく聞いて来い、遊んでる暇はないぞ、お昼は弁当になるクミちゃんに注文しとけ」 孝ちゃん膨れ顔で「は~い」 俺と監督は各チーム監督に挨拶廻りし、もう俺の噂は大分流れている様だ、それに以前からのレース仲間や知り合いもかなりいて、励ましの言葉を掛けられ意外と挨拶も楽に終わった

 俺はコースのチェック、事前にコンピューターによるコース取りの再チェクに、気分転換も兼ね1時間位、コースサイドを歩いた、コースはドライ、路面もまだ新しく悪くは無い例によってブレーキングポイントとクッリピングポイントの目標チェックと再確認を行い

 パドックに戻り昼食をチーム・クルー達とお弁当を食べながら雑談後、マシーンの調節を手伝う、その頃、我がチームのスポンサーで営業の人達や監督のスクールの生徒達も研修も兼ね見学に集まって来て我がチームのピットも賑わっていた、其々挨拶を交わす

 井原君が真面目そうな顔をして、聞き取り難い低い声で 「前のドライバーの人は乗る時まで、全然顔も出しませんでした、それとリュウさんは的確にマシーンの状態を伝えて、調整し易いので、助かります」 孝ちゃんも慌て同意するように「それに、リュウに命に関わると云われ、ネジや孝ちゃんタイヤ交換3.jpgナットの一本まで気を入れてチェックしたり締め直しましたから」 「井原君、孝ちゃん、ありがとう」 孝ちゃん口を尖らせ両目を同時に使ってのウインク「ウッフン!リュウの為だもの」 「俺は機械物が好きだからね、それと、この方が気持ちが静まるよ、まぁーこれからも勉強の為、手伝させてよ、何時でも声かけてね」

 ..本当は機械も好きだが、このマシーンを自分の体の一部にする為の俺の儀式の様なもの..機械に接する事で愛着を感じるのだ..それに此のクラスになると、決してドライバーの技量だけで勝てるものでは無い総合力だ、..監督の張りの有る声で 「今日から、一日目のフリー走行(practice)が始まるぞ、リュウ時間だ!、レーシングスーツに着替えて来い」 何か一瞬に緊張感が走った 「はい」 ピットの後ろに、駐車してある、キャンピング・カーでレーシングスーツ(オーバーオール)に着替えピットに戻り

ピット.jpg ”さーぁ、やるぞ、気合を入れて行こう”、誰とでもなく呟く、マシーンに乗り込み、タケちゃんと孝ちゃんに6点式シートベルトを肩に食い込ほど思い切り締めてむらい、二人にポンと肩を叩かれ、親指を立てながら、”グットラック”と声をかけてくれた 「なんだよ、孝ちゃん、英語かよ」 「今は、この掛声が一番合っているんです、リュウ、がんばってね~」 「おぉ、孝ちゃん、その声なにか力抜けちゃうな」 俺も親指を立て挨拶した、「もう~、リュウたら」 「分ったよ、ごめん、宮ちゃん、孝ちゃん、昨日から徹夜に近い調整作業、有難う、頑張るよ!」 宮坂君と孝ちゃん二人とも頭をうんうんと振り指で VサインやOKマークを示した

 ..さー、いよいよだ、冷静に行こう..ヘルメットをかぶりドライブ用グローブを確かめながら確り着用、メカニックが予備バッテリーを繋ぐ、俺は目を閉じ大きく鼻から空気を込み、口からゆっくりと息を吐出し目を開き、マシーンのスイッチを入れ、祈る様にスタータアーボタンを押した、”キュルキュルキュル..ヒューフホォーン、フホォーン、フホォンフホォーン”腹に沁みるレーシングカー特有の高回転高圧縮の甲高いエンジン音が快く体に響く、待ちに待ち望んだ恋人に逢う様にステアリングを愛しげに握り、逸る心を押さえもう一度、目を閉じ、しばらくエンジン音に酔い痴れる、心の中で愛しいマシーンに向かって「宜しく!たのむよ!」と語りかけ、静かに目を開ける、俺の闘争心も徐々に高まってくる。

 話は違うが今、F-1の世界ではこのエンジン排気流まで空力リヤーウイング(DRS・ドラック・リダクション・システム)に使う、凄ましさ、ブレーキまで発電(KERS・キネマティック・エナジー・リカバリー・システム、運動エネルギー回生システム)に使いその力を利用する世界だ、これはバレーやダンス等に使われる言葉だがカーレースでも使う足の指先と踵でブレーキとアクセルを片足で同時に操作しシフトダウンやアップのときギヤーをシンクロさせるが今では全てコンピューターで管理されていてヒール& トゥー(heel & toe)は過去の物になり始めている、マシーン開発に凌ぎ合う物凄い世界だ! FN(フォーミラー・日本)では日本のカー・レースの底辺を広めようとチャーシ(ボディー)の規格を一定にマシーンの開発費等を抑えF-2.gifているが、開発の速さは日進月歩、まだまだ変化が早く大変だ。

 ..監督の手が上下に振られ、スタートの合図だ!俺は右手を上げ監督に向って親指を立て合図を送る、ステアリングに配置されているピットレーンリミッターボタンを押しステアリング・バドルでギヤーを入れ慎重にクラッチバドルを放しアクセルを踏み込む

 マシーンはパドックをゆっくりと走り始め、ピットレーンを安全のため規定速度にて通過、リミッターを解除し第一コーナーへ始めの周回はRPM(エンジン回転数)ダイヤルをバーンアウトにセット慣らしとタイヤを適正温度まで上げ粘着度を高める、タイヤの空気圧も適切に上がる、監督との無線通話も先ず々、コース取りの確認を頭で描く、ステアリングボタンで通常ドライモードに戻し、ステアリングパドルで序々にシフトアップ、水温、油圧、のチェク異常なし、最終コーナーをアクセルを踏み込みながら立ち上がる、監督からの予選タイムアタックの指示がイヤーホンから聞こえる

 いよいよ、最終コーナーをアクセルを床に張り付くほど踏み込み、速力を増しながら立ち上がる、長い間、檻に閉じ込められた狼がやっと解き放たれ獲物を追うかの様に、軽快な排気音を残しスタートラインを全速力で駆け抜けるマシーンと俺に取ってのベスト、ラインをコーナーぎりぎり、フロントタイヤが縁石をはみ出すまで攻める、頭で描いたライン通り正確に各コーナーを攻め最終コーナーでは、最大横Gが俺に襲い掛かる、マシーンが遠心力で外側に流れバランスが崩れた、微妙にステアリングで調整、緊張と集中時だ!アクセルを緩める事無く何とか立て直し通過出来た、初回としては、まずまず、タイヤの内、外側の減りや温度を見ながら主にメカが足まわりの調整、

 再度集中して少し最終コーナーのラインを変え再挑戦、今度は最終コーナーでブレる事無く走りきる”アジャスト アンド アタック”を三回、ベストラップを見る1’27.66秒、13組出場中5番手だ、監督はじめ皆、大喜びルーキーとしてはかなり良い成績、明日は他のチームも本気でアタックして来る、安心は出来ない。

 俺はこの期間が一番好きだ、レースで勝つ事も大事だが、チーム全員一つの目的に一丸となって、心の底でぶつかり合い、喜び、悲しみ、怒り、互いの心を、ぶっつけ、寄せ合い、分かち合う、一つの家族だ、主役が何人も居る大チームでは、其々の思惑も有り、そうも行かないと思う、久々に先生との巡り合いもあり、長い間、死似体だった俺は今この世に、この世界に生きている!、実感を強烈に感じていた、やっと俺が生き返った、やはり俺には、この世界が一番、帰って来て良かった!

 「監督!昨夜からメカニックの皆んと徹夜に近い、作業と努力、感謝しています、有難う御座います」俺は嬉しさを隠せず、在りのままの感謝を陳べた 「リュウ、これからが勝負だ、皆の期待を裏切るなよ!」 「監督プレッシャー!掛けないで下さいよ」 口の重い井原君が笑顔で 「リュウちゃんは、機械にも詳しいから、適切のアドバイスで調整し易く助かります」 「レーシングマシーンは本当に其々異なる動物の様に性格が違うから、馬のように調教して自分のものにしなければ、俺はその過程が好きだよ」 孝ちゃん得意げに「だから、熱心だよね、私的にサーァ、リュウのドライブ癖解ってきたわよ」 「凄いね、何だか恐いよ、心まで見透かされいる様で」 「だって、リュウの事、好きだもん、全部解ちゃうわよ」 「おい!おい、有難いが、俺、女好きだよ!」 「よく云うわよねー!..解っているわよ、それでも、いいのよ!」 皆大笑い

 俺は孝ちゃんの話をかわし「クミちゃんは彼氏いるの?」 クミちゃんとタケちゃんが顔を見合わせる 「はぁーはぁん、竹田君か?」 タケちゃんが頭を掻いている、 コウちゃんが「リュウの事だから、もう目を付けたのね、手を出しては、ダメよ、タケちゃんに頭から水掛けられちゃうから..」 チーム全体を和ませる奴だ、 監督何時もの渋みのある顔に益々重さを増した声で「サー、明日は最終公式タイムアタック、他のチームも真剣に来るぞ、もっと大変だ、引き締めて行くぞ!皆、今夜は早く休みなさい」

  《富士スピード・ウエイ予選/決勝 round4》

レースクイン1.jpg 翌日、メインスタンドの後ろは各メーカーの出店、Tシャツやワッペン、カー用品、フイルム、デジカメの記憶チップ等々や食べ物屋が沢山出揃ってコンパニオン、キャンペンガール、レースクイーン等で賑わい始めている、我がチームもボランテアの車好きと、スポンサーからのレースクイーンが集まり、大賑わいだ。

 新しく加わった、スクールの生徒達、レースやメカニックの体験学習も兼ねタイヤ交換等の指導や練習に大忙し、流石に車好きの生徒達学習能力も高くスムーズに運ぶ、他のチームでは常時その倍位のメカニックは揃えている、二日目の公式タイムアタックではコンマ何秒か短めたが他のチームも頑張り一台下がり六番目のスタート位置になってしまった、前回までは十位前後だったようだ、初出場では良い成績と監督に言われ、少しほっとした、二日目の夜はチーム全員で夕食会、

 監督はチームの皆を集め「さー明日はいよいよ本番、皆さんも力を合わせ頑張りましょう、ご存知でしょうが、今回からドライバーに龍崎君を起用致しました、リュウは改まった挨拶が嫌いな様なので、其々始めての方は食事を取りながら、紹介を行ってください、では明日の検討を」 情報が入りどうやら、明日は雨の様だ、初のデビュウで雨か!、少し不安になるが条件は皆同じと、話題を変える、俺は生徒達1人1人に、握手と冗談交じりの挨拶を交わし、チームの仲間意識をたかめた

 俺はメカニックの横の席に戻り、リラックスするために「井原君には彼女いるのですか?」 孝ちゃん「井原さんは結婚しているのよ!、すごく可愛い奥さん、私には聞かないの?」 俺は考え込む様に「う~ん、いるの?」 孝ちゃん「何よ!その聞き方、いる訳無いって顔して、..いないに、決まっているでしょう、リュウ、一筋だから、もう分っているでしょう」 「だから、俺はダメって云ったでしょう」 「解っているわよ、もうリュウは女好きのスケベなんだから、目がレースクイーンにばっかり、行っているんだから、ダメよ!」 生徒達皆大笑い 監督、言葉とは裏腹に笑い顔で「孝ちゃん、あんまりリュウを困らせちゃダメだぞ」 孝ちゃん膨れ面で抗議する様に「もう監督まで、分かっています、明日雨の様うだから、締まっていかなくちゃ」 本当に彼の御陰で皆和やかになり、纏ったチームになりそうだ、

レースクイン7.jpg スクールの生徒の一人が俺に質問してきた「龍崎さんのライバルは誰ですか?、其れと、何方のチームですか?」 「まだ、このクラス俺は新人だよ、全員、全チームがライバルかな」 生徒「新人って事は、無いでしょう、前に噂良く聞きましたよ」 「此のクラスになると全員、それにこのレースで俺は新人だよ!誰と言う訳では無いよ、まあー、何時だって自分がライバルかな、先ずは一秒でも自分に勝つ事だよ!」 生徒は驚きを見せ「凄い!それでは目標のライバルが居ないと言う事ですか?」

 俺は苦笑して「違うよ!解っていないな!少しでも早く走れる様に、自分との戦いだよ、それに何時だって全員がライバルだよ、只、レースになったら何も考えず、目の前の獲物を追い詰めるだけだ、それと他のチームの事は余り気にならないよ、気にしても変えられないだろう、自分のチームに与えられた環境を最大限に生かす事、後は監督のレースの組み立てだよ」 生徒不思議そうな顔で何か納得がいかなそうに「そう云う物ですか?」 「他のドライバーの考えは、知らないが、現実はそんなにドラマチックな物では無いよ、..そうだなぁー、与えられた物を最大限に生かし、目の前の獲物を追うハンター、其れが魅力かな」 生徒は考え込むように「そうですか!でも何か解る様な気がします」

 いよいよだな、日曜日、本番決勝日、夕べは、流石に興奮して寝つけなかった、朝食を済ませ、小雨が降っていたが、俺は傘を差しコースの再チェックに出かけた、水溜りや滑り易い所を目標を見立て特に頭に入れコースを点検し歩いた、有り難い事に、雨にも関わらず、観戦者が合羽や傘を差し続々集まっている、念入りにコース一周しパドックに戻りかけた時、孝ちゃんが息を切らし走って来る 「リュウ、お客さんだよ、物凄く、綺麗なお姉さんが尋ねて来てるよ」 「誰だろう?スポンサーの人かな?」 孝ちゃんと歩きながらパドックに戻った

ヨシ子来ちゃった.jpg 驚いた事に女医先生が待っていた!先生は俺を確認したとたんに、険しい顔がパット明るくなり俺に近寄り「リュウ、来ちゃった!..だってリュウの大事なデビュー戦でしょう!」 「先生!びっくりした!..ありがとう、この雨の中か、大変だったでしょう?」 俺はまさか来るとは少しも思ってもいなかったので本当にビックリ!

 先生は、霧深くなれない場所への一人旅、緊張した顔で「ええ、横浜駅から国府津、御殿場まで電車乗り次いで其処からタクシー、周りには人影も無く、山道を雨と霧で景色も見えなく、フロントガラスのワイパーの単調に忙しく動く音だけ、何か寂しくなちゃった!」 俺は本当に嬉かった「ごめんね、来るとわ思なかったから、嬉しいよ!」 やっと先生に笑みが戻り「私がハラハラしたり、恐がると思って、二度と前の奥さんの様に..あんな思いさせまいと思い、私に観戦して欲しいとは云へなかった事、解っていたわ、私は大丈夫よ!」 「考えもしなかったよ、来てくれると思っていなかったから本当に嬉しいよ」

 チームの皆、如何したのか?興味ぶかげに眺めている、俺はあわてて..手のひらを先生に向けて「皆さんに紹介します、鶴見 佳子(ヨシコ)さんです、エート..」 先生は戸惑う俺を察したかのように「紹介に預かりました、龍崎の..」俺の顔を見、少し躊躇いがちな表情で「・・婚約者のヨシ子です、龍崎共々宜しくお願い致します」 言葉の後、即座に俺の耳元で小さな声で「リュウ、勝手にごめんね、これで良かったかしら?」 俺は想わず、駄目出しの理由もなく頭を小さく立てに振った、俺は続けて「そう云う訳ですので、此れから、宜しくお願いします」 そうか、..なんって大胆で自信のある人だろう!俺から話そうと思っていたのだが、もし俺が違うと云ったら如何するつもりだったのか?俺の気持ちを全て知ってたかのように、驚きも有ったが、結婚するつもりなんだ、本音助かった..、

 監督初めスタフ全員拍手で歓迎してくれた、コウちゃんが目を丸くして「綺麗な人!この人がリュウの好みの女なのね!・・・メカの鈴木 孝三です、残念だけれど、..おめでとう!ねー、ヨッちゃん、て呼んで良いかしら?」 「えっ!」先生は俺の目を見、確認を取り 「はい、よろしいですが?」 孝ちゃんは手を出し「よろしくね」 先生に握手を求めた、俺も、あぁ、先生がヨシコと呼べと言うから困ってしまったが、ヨッちゃん、なら呼べそうな気がした、

 監督の顔も綻び、先生に握手しながら「北原です、婚約おめでとう、龍崎君は何も話していなかったので、驚きました、此方こそ、宜しくお願いします、龍崎君には期待しています」 俺は監督に向かって手を差し伸べ「俺のチームの監督でオーナーでレーシングスクールを経営しているよ」 と紹介し、俺はなお続けて「以前からレースの大先輩で監督と同じチームで走った事が有り、間もなく監督はレーシングスクールを開設し声を掛けて頂いたもので..」 そんな経緯をへて監督の世話になる事などを説明した、ちょうど、お弁当の時間、皆其々自己紹介をして和やかに過ごした、

 監督が気を利かして 「リュウ、ヨシ子さんと一緒にレストランに行って来なさい、スタートは一時半だから一時までにレーシングスーツを着てきなさい」 孝ちゃんふてくされた顔で「リュウのお弁当頂いちゃうわよ」 「いいけど?食べすぎで肥るよ、いいの?」 孝ちゃん外人の様に肩をすくめ、両手を広げ「ヤケ食いよ!」

 俺達は場内のレストランで昼食を取りながら 先生は「リュウごめんね、リュウの了解も得ないで、とっさにあんな事言って、でも 私の本当の気持ちよ、本当にそれでいいの?」 「良いに決まっているでしょう!それに、初めから、そのつもりで俺を誘ったんでしょう?」 「ええ、リュウさえ良かったらって」 「ほんとに、助かったよ!、俺挨拶苦手で、俺もそう考えていたの、でも俺でいいの?」 「私もリュウがそうしたいと感じていたの、それに普通お互いを知るために、もっと期間を得てからと考えるのに、不思議だわ・・何故かじっとしていられず、待っていられなく此処まで来てしまったの!」・・「だから、思わず、あんな大胆な言葉が出てしまったの」 「うん、俺から先生に結婚の事、話そうと思っていたんだ、此に来る前におふくろに合って、先生との事、話して来たんだ」 「リュウ、有難う、本当にいいのね、お母様、驚いたでよう」 「何時もの事だから、それほど・・そうだ!近い内におふくろに合ってくれる?」

 「ええ、そのつもり心配しないで大丈夫よ、リュウが私にレースの事、云えない気持ち解るけど、一緒に考えましょうって、云ったのはリュウでしょう、責める気は無いけれど、リュウが前に言った事と同じに一人だけで待っている事の方が辛いし寂しいのよ・・レースは恐いわ、でも、リュウを苦しめる事になるから、リュウと同じ夢追うの、いいでしょう?」

 ヨシ子良かった.jpg「あぁ、これから、そうするよ、強いんだね」 「ちがうわ、此処へ来るのだって、霧が出て回りは見えないし、雨は降るし、本当に寂しくなったし、心細く不安で恐かった、本当は弱いんだから!」 俺の肩によりかかってきた 「分かったよ、ごめん、さ食事して、着替えなければ」 「それと、さっきコウちゃん、孝三?男みたいな、名前ね?”残念だけれど”て、どう云う意味?」 「あぁ、あれね、アハハ、後で分かるよ、気にする事ないよ」

リュウ横顔.jpg 食事を済ませキャンピングカーに向かい車内で軽くキスを交わした、レーシングスーツ(ツナギ服)に着替える、先生が手伝いたいと、背中から腰に腕を回して来た、「それでは、着替え出来ないよ、帰ってからね」 「はい、今、大切な時だよね、でも寂しかったのよ、リュウの気持ち確かめられ良かったわ、さぁー着替えて」 防火用耐熱アンダーウエアー上下(厚手の耐熱タートルネックのシャツとタイツ)先生が後ろから手を貸してくれとても楽に出来た、

 「リュウ、お守り、鎌倉の鶴岡八幡宮で宮司様にお払いを受けて頂いて来たのよ、何処か身に付けて神主.jpgね」 俺は余り神頼みはしないが、お守りの絵柄は流鏑馬だ、きっと馬と車を掛 けての事だろう、先生からの初めての心からのプレゼント本当に嬉しかった 「ありがとう、嬉しいよ、付ける処無いからポケットに入れとくよ」

 これは蛇足であるが、俺は無宗教だ、これは日本人の良い所だと、勝手に思っている、俺だけかな?人は弱いもの、困った時の神頼み、それで良い、自分の都合のいい、心の神にお願いする事だ、他の人や他の国の宗教を批判するつもりは無いが、そのために争い殺し合い、又人の心の弱さに付込み、それを利用するカルト集団まで出てくる始末、単純に考えても何か間違っている、群れなければ生き伸びれない人間の性なのか?俺は各々の都合の良い自分なりの心の神に願えば良いと思っている、俺は今勝利の女神に祈るだけだ、話をもどそう

 ソックスも防火用その上に此れも防火耐熱お守り.jpg繊維で出来た、レーシングスーツそして車に乗る時、頭から覆面レスラーの被るようなマスクにグローブこれも防火耐熱用、此れだけでもそうとう夏には暑いそれにレーシングシュウズとヘルメット 「リュウ、凄く、かっこいい!、中に沢山着るのね、ROLEX daytona Na116523-1.jpg知らなかった」 「安全の為だよ、でも夏はかなり暑いよ」 俺の外した腕時計デイトナを受け取りながら「本当にカッコ良い!ねー!リュウのこの腕時計、私に頂戴!」 「エー!これ俺がレース始めた頃、どうしても欲しくて高かったけれど、無いお金出して、外人に頼んで、取り寄せてむらったものだよ、それに男物でゴツイし外側のケースは普通は板をプレスして加工した物のだが、オイスターと言って分厚いシルバーゴールドを刳り貫いて作った物で重いよ、裏に俺のイニシャル入っているから」

 「だからなのよ、リュウが大事にしているからこそ、頂きたいの!代わりにリュウの欲しい時計買ってあげるから、お願い!」 何故か先生の真剣な眼差しが突き刺さる様に気になった「うーん、じゃぁーいいよ、代わりは要らないよ」 「嬉しい!いいのね、ありがとう!リュウと思って大事にするわ、本当にいいのね!」 「うん、いいよ、大事にしてね」 先生は嬉しそうに、自分のカルティエ・パシャ・クロノの時計を外し、付け替えた「うん大事にする有難う、これ患者の脈拍、計るのにもいいね」 まだ俺に未練が有ったのか「先生の時計だって脈計れますよ」 「これが、いいの」嬉しそうに腕に付けた時計を左右に廻し眺めている 突然俺の首に腕を巻きつけ、頬にキスをして「大事にする、ありがとう」 「さー!そろそろ時間だ、行こう!」

 キャンピングカーを出てパドックに向かう途中、子供達のサイン攻めに会う、五、六人サインをし 「ごめんね、もう時間無いんだ、また後でね」 「リュウ、人気者だね」 「彼ら誰でも良いのだよ、レーシングスーツ着ていたからね、それとレースのプログラムに顔写真載っているから、..さぁー!気合入れて行かなければ、初戦だからね!」 「この雨でもやるの?」 「大抵はね」 「恐く無いの」 「皆に聞かれるが、恐いと思ったら、もう乗れないよ」 本音は時として少し恐いと思うが、自分を信じて走るだけ、本当に恐怖を感じたら、体が動かなくなり、危険である、もう車には乗れなくなる、幸い少し空が明るくなって来た、我がチームのピットに戻り、ヨシ子を久美ちゃんに預け

FujiRyu.jpg レースクイーンにスポンサーからの宣伝用ビッグパラソルを差され、皆からデビューと婚約を祝福と励ましに肩や身体を叩かれ、テレながらコース上のレース車に向かい乗り込む、井原君や孝ちゃんに安全ベルトを締めてむらい、大きく息を吸い込む、誰しも感じる事だろうが、この時間が、一番嫌いで長く感じる、他のドライバーが百戦練磨の強者に見えるが、俺が一番早いんだと自身に言い聞かせ、目を閉じてステアリングを確り握り暫く精神統一し雨のコースを心の中で復唱し、他の不安要素は考えない事にしている、

 いよいよメカニックはエンジンをスタートさせる為のバッテリーを繋ぐ、本番エンジン・スタートだ、けたたましく全車一斉にエンジンの排気音が響く、多分耳元で大声話ても何も聞き取れない位のけたたましさだろう、俺にはヘルメットと耳栓替りのイヤホンをしても微かに聞こえる、この時ステアリングのボタンの確認や操作の確認は色々有り一番忙しい、レインポジションにスイッチ合わせる、メカニックやレースクイーン達がパドックに引き下がりグリーンライトが点灯しペースカーが走り出しスタート順位順に各車前車に従い走り始める、

 フォーメイションラップ雨の中お披露目とウォームアップ走行が始まり、水飛沫で前が見えない、俺は前車の微かに見えるテールランプを追いながら走る、雨の場合はローリング・スタートになる、先導車が判断してスタートの混乱をなるべく防ぎ事故を起こさないためレース・カーを予選順位に走らせながら安全を確認し先導車が退きスタートを切る、雨飛沫が視界を遮りコースの下見所ではない、普通は一周で終わるが雨の為7,8周天候の様子の指示を受けながら先導車に従い走る、天候の悪化、雨が強くなりコースアウトする車が多く、一旦、全車ピットに戻り、運営委員より一旦スタートを見合わせ、中止か続行か様子を見、判断する事になった

雨スタート.jpg 暫くそのまま天候の回復待ちで、雨が小降りなり空が明るくなり始め、再スタートに決定だ、俺達チームは監督の指示で燃料を満タンにする 「リュウ、これで、給油無しで走りきるぞ、無闇にアクセルを踏み込むな」 不思議に思ったが「分かりました」燃料が少ない方が車体が軽くなりスベリにくなるのに?後で監督のこの作戦が当たる事になる、タイヤも冷めない様に再びウオーマーで暖め再スタートを待つ、天候は回復に向かって再び各車ピットロードを走りスタート位置に並ぶ

監督&ヨシ子・ピットにて1.jpg グリーンライトが点き、再スタート、コース上から先導車に従い、本来は温度を上げ路面との粘着度を高めるが、その必要は無い、レーンタイヤである、水捌けを良くする溝が有る為に状況による、スタート位置に付く前に一台コースアウトし最後尾からのピットスタートになる、自動的に一台繰上げ五番目位置だ、此れまで何回スタートを迎えた事か、スタートシグナルが付くまでが心臓が飛び出す位高鳴る、俺の記念すべき再デビューは最悪の雨か、前後左右のドライバーが超一流の強豪ドライバーに見える、きっと皆俺と同じだと不安を断ち切ろうと思うが、そうもいかない

 全ての不安を打ち消す為大きく深呼吸する、マシーンを雨用スタートポジションに操作、シグナルが青に変わり、ローリング・スタート先導車の後に予選順位順に緩やかに続き戦列を作る、たぶん一週でスタートだろう、コースの終盤、最終コーナーで前車との間隔をつめる、先導車がピットロードに退く、予選一番の車両(FJマシーン)がスタートラインを過ぎた時点でレースの始まりである、最終コーナーを速度を上げ立ち上がり

 さーぁ、スタートだ、”おちつけ!”前車に集中する!クラッチバドルを静かに放しクラッチを繋ぎ、ギアーを一段上げ徐々にスピードを上げる、スタートライン通過!何時もより静かにアクセルを踏み込む、雨でタイヤがスリップしない様にだ、前車に離れない様に上出来のスタートだ!この時すでに俺の不安は消え獲物を追う狼に変わる、水飛沫で前が見えないが前車に襲い掛かる様に第一コーナーに飛び込む、前車を捕らえた!、横に並び込む、此処が勝負処だ!

 雨.jpg少し相手よりブレーキをギリギリまで遅らせ同時にシフバドルで2段跳びのシフトダウン、エンジンブレーキを併用し、勝負を掛けた!、車体半分位の競り合い、タイヤのスリップが起きない事を願いながらステアリングに集中しアクセルを静かに踏み込む、何とか前に出、慎重にテアリングを操作しコーナを抜けた、よし!、このまま落ち着いて行こう、そのまま抜き去った後続車を押さえ、少しずつ離す事が出来、何週か前車との距離を短締め様と焦るが、車が安定しなく真っ直ぐに走る事さえ困難だ、前車との間、なかなかちぢまらない、焦る心が招きコースの水溜りに乗り、瞬間、車が思わぬスピン”コントロールする間もない、あぁー此れで終わり!”と思ったがコースをはみ出す事も無くコース上に一回転、幸い走る方向に立ち直ってくれた、..おぉ!ラッキー助かった!

 幸い後続車に抜かれる事無くそのまま進むことが出来、一安心、あせるな!自分に言い聞かせ神経を研ぎ澄まし、バケットシートから尻と背中に伝わるマシーンの微妙な挙動を感じ取り、アクセルとステアリングに集中して何周か走る、カーブもなるべく前車の轍に沿い乾いた所を選ぶ緊張感で何時もの倍以上の神経を使い疲れを感じる

 監督から無線で燃料を持たせろの指示、余りアクセルを踏み込むなの意味、途中雨がひどくなり、何処かで事故が有ったのか?処理の為ペースカーが入る、少し気持ちを休め緊張をほぐす、監督より「雨でスリップ2,3台コースから飛び出した様だ慎重に、我慢して走れ、いいな!」 「はい」 全車ペースカーの速度に合せ、ペースダウン、前車に近ずくが後ろからも真後ろに迫って来る、スタート直後状態に各車が犇き合うが規定により其の時の順序を守り抜く事は出来ない、6周回後ペースカーが退き、

 各車一斉にスピードアップ、あせるな!あせるな!自分に言い聞かせ、アクセルペタルをおもきり踏み込みたいが、我慢、我慢、一瞬のミスで全てを失う、ステアリングに集中する、バックミラーに後続が写し出され迫って来る、慎重に行け、水の溜まっているコースを避け走行する

 監督から又連絡、「前の二台がスピン、コースアウト、二番手だ!そのまま、燃料をセーブしろ!」 「解りました!、前が見えない」 監督「皆、同じだ!あせるな!」 又もペースカーだ、だが雨の滴で後続車が歪み擦れてバックミラーに見え隠れする、4周後にペースカーが退く、アクセルを静かに踏んだり緩めたり、なるべく水の少ないコースを選び走る、後続車と距離とるヒヤヒヤだが相手も慎重で、仕掛けて来ない!長い、後、何周だ「監督!後、何周ですか?」 「後8周、我慢しろ」 長い!レースがこんなに長く感じた事はなかった、雨F.jpgほとんど前が見えなくなった、ヘルメットのカバーバイザーの汚れた最後のステバイザーをむしり取り投げ捨てる、さぁーもう少しだ、気を抜かず行くぞ!後7周、後6周....5..4フーゥ、何とか燃料をもたせ最後まで走り切り、待ちに待ったチェカーフラグだ、ゴールラインを過ぎ思わず、大きくため息が出る「フー!終わった!..まったく、雨でハイドロプレーニング、氷上との戦いの様だった」 レースと言うより、綱渡りの様な曲乗りと我慢比べのようだ、通常のレースより数倍疲れた

 監督からリュウ良くやった二番だ、無線の声がやたら大きく聞こえ喜んでいる様子が解る、この雨でも観客が多く、熱心に声援を送ってくれる、俺は手を上げ拍手に答えながらゆっくりゴールの指定場所まで走る

 チームクルーと喜びを分かち合い手を握り合い 「ありがとう、ありがとう」 繰り返すしか何も浮かばなかった、先生も涙ぐみ喜んで抱きつき 「リュウ、こんなに興奮して歓喜し感動した事なかったわ」 「ありがとう、先生のお守りのせいかな」 としか言葉が出てこない、走りきった感動で頭の中が真っ白だ! 孝ちゃん「先生は、両手を合わせ額を押し付け祈り通し、だったわよ」 先生は監督やメカニックと俺との無線のやり取りを体験して、まだ興奮した様子で「レースって、監督やエンジニアの井原くん、孝ちゃん、皆さんの助けがあって、成り立つのよね、改めて本当にリュウの事、宜しくお願いします」まるで息子を気使う母親の様にクルー達に何度も頭を下げていた 俺は照れくさくもあり「先生、皆、解っているから、もういいよ、・・皆!、本当に、ありがとう」

 ラッキーにもデビュー戦で表彰台に立つことが出来た、案の定インタビュウー、苦手だ、俺は、ただ々我慢のドライブだった、監督の作戦とクルーの皆さんの努力に感謝するとのべ、早々に退散、

 又、この後、全チームと関係者のパーティが有る、ここでは、この後、車で帰る人など居るので、お酒は無理に進めたりしない、各チームの交流会が目的で、この時ばかりは和気藹々、他のチーム監督から良いドライバー見付けたの連発、監督も鼻高々の様子、俺は偶々運が良かっただけですよ、皆さんのチームドライバー、早いですよ、まだまだ、教えて頂く事沢山あります、宜しくお願い致しますと挨拶廻り、本来なら、自分を売り込むチャンスの場であるが、俺の性格余りそうした事をしたくなかった、一段落付いた処で、俺は監督に、ヨシ子さんは明日仕事が有りますから、先に送って帰りますので、後の事お願いして帰る事にした、チーム全員に送られ、なんだか、気恥ずかしい思いであった、

 帰りの車の中 「運転疲れていない?代わりましょうか?」 「平気だよ、先生の運転の方が疲れるかも」 「馬鹿にしないで!」 「ごめん、先生だからって事ではないよ、この道はもう数えきれないほど通った道だよ」 「リュウだったら、本当かもね、私もほかの子の運転恐い時があるから」

 「リュウ、レースの時、水飛沫であれでは何も見えないでしょう、どうやって走るの」 「どうて?、前の車の轍の跡とテール&ブレーキランプ、後は俺らのクラスの同等腕、前の人を信頼するしかないね、後は微かに横の景色、雨のひどい時にはハイドロプレーニング現象が起こりコースはアイス・バーン(氷の上)の様に成る時も有るよ、そんな時は中止になるよ」

 「とにかく、ひやひや物、もう夢中で手の中汗で、びっしょり、あんなに興奮した事、何年振りかしら、リュウが夢中になる気持ち判ったわ、表彰台に立ったリュウ、素敵だったわ」 「ありがとう、たまたまだよ、そんなに甘くないね、皆凄いや!今日は本当にラッキーだったよ、前車がつぶれ早い人がリタイヤしたからね、走って痛感したよ、やっぱり凄いね全然追いつかなくて」

 「それでも、かっこ良かったな、..それと、孝ちゃん?面白い人ね、.GID.ごめん云直すわね..性同一性障害? リュウの事、好きなのかな?」 「専門用語なんか出る処なんか、先生だね、..俺にも解らないよ、本気か冗談か、本当に解らないよ?..とにかく、良い奴?..奴と云っていいかな~ぁ、その辺は孝ちゃん自身解っていると思うよ、そうやって世間と自分と戦って来たんだ、とにかくチーム全体を和やかにしてくれるし、車の調整技術は抜群だよ」

 「そうよね、苦しんできたのよね、皆良い人達で気を使って頂て、今日一日で皆さんの好意感じ好きになったわ、皆と話せる様に車の事、もっと勉強しなくちゃ、リュウ、沢山の綺麗なレースクイーン?に囲まれちゃって、少し焼けちゃたな」 「大丈夫だよ、先生の様な優しくて綺麗な人いなよ! あの脳内メーカーで調べれば、俺の頭の中は全部ヨシ子、ヨシ子で墨の処に少し車かな、ほとんど思考力ゼロになっているよ」 「ほんと?冗談でも嬉しいわ、少し眠くなったみたい」

 「本当だよ!、朝から大変だったから、今日はありがとう、お守り仕事終わってから鎌倉に行って来たの?シート倒して寝なさい、もう、家まで後一時間半位かかりそうだから」 「そうよ、神主さんが居る内に、急いで大変だったのよ」 暫く無言が続き「..zzz」 「もう寝ているのかな..本当に疲れていたんだ、此処へ来る事だって、大変な事だからな..」

 先生の寝顔を見て、朝から電車を乗り継ぎ、雨の中、あんな寂しい山へ、俺のデビュー戦だからと一生懸命、俺の選んだ世界を知るために、違った環境の人達と懸命にコミュニケーションを取って、本当に疲れてしまったんだ、..なんて可愛いんだ!.. 前とは違った意味で、先生を守らなければ、今度は俺達の為に、そう思った。

 先生と俺は似たような、環境で育ち、俺は世間と教育者の親に大好きな故に、矛盾しているが反発を覚え、道を少し外れてしまって、ようやく、たどり着いた処が先生であり、又 先生も、自身のこの生き方が何か違うのではないかと、疑問を持ちながら、俺にたどり着き、今度はお互い心の底から全てを分かち合えると感じた

 無事到着、マンション駐車場で先生を起し 「あら、もう着いたの、朝出かけた時より全然早いわ、リュウの運転、安心出来るし、今日泊まって行くでしょう?」 「はい」 「こんな気持ち生れて初めて、もう、毎日、寂しくて、リュウなんか車の事で、私なんか忘れていたでしょう?」 「そんな事無いよ!有る訳無いでしょう、とにかく荷物降ろそうよ」

 女の人は何て感が鋭いのか、見抜かれているようで、少し戸惑った、確かに先生が来るまで考えも見なかった、多分先生に関しては安心していたのかも 「リュウ、洗濯物沢山有るでしょう?持って来て」 部屋に入り、何かほっとした、自分の家に帰った様に 「リュウ、此処に移って来ない?あれから毎日、会いたくて寂しくて寂しくて、眠れなくて、夕方毎日ジョギングしていたのよ」 「いいの?良かったら、そうするけど、明日、久しぶりに、バイト先米軍基地に行こうと思って、朝から行って、仕事終わったら、本牧の俺の処から取り敢えず必要な物、持ってくるよ、本当にいいの?」

 「うれしい!良いに決まっているでしょう、じゃぁ、夕食用意して待って居るから..リュウはお肉好きだからハンバーグで良いでしょう」 ..あぁ、俺に優しく待っていてくれる人がいるのだ!愛する人の元に返れるのだ!..幸せの中にどっぷり浸かって、それが普通の出来事と思っている人には解らないだろうが、これほど嬉しく安らぎを感じた事はなかった、 先生と俺は何と、波長が合うのかと思った..昔ならレーシングクルー達と勝利の美酒で一晩中騒いでいたが、今は俺も変った、普通なら何所か高級レストランで二人の出発を祝いたいはず、でも誰にも邪魔されず、全て手作りで、二人の門出を祝いたいと思ったからだと思った、俺には最高のプレゼント!

 「いいね、明日楽しみに帰ろう」 「余り、料理した事、無いから美味しく出来るか解りませんよ、それと遠慮しなくて良いのよ、洗濯物出してね、明日、洗って置きますから、..はい、コーヒー出来ましたよ」 「有難う、リビングで飲んでいい?」 先生も缶ビールの蓋を開けながら「どうぞ、私もビール飲んで良いかしら?それとリュウのレースのスケジュール教えて」 先生としての一面だけ知っていたので、家の事は何もしないと思っていたが、意外と家庭的で驚いた

 「うん、予定書いて冷蔵庫の扉に張って置くよ、取り敢えず次は鈴鹿で7月11,12日だよ」 「そう、じゃあ来週土日、空いているね?」 「うん」 「じゃあ、私の両親に会って頂ける?連絡して、おきますから」 「はい、日にちは、どっちでも、良いよ、何か緊張しちゃうな!」 「大丈夫よ、心配しないで、じゃあ、明日、両親に連絡取っ手おきますから」 缶ビールを高く上げ「それと、改めてリュウのデビューと入賞、おめでとう」..先生ビールを一口「あぁ、美味しい!」 俺はコーヒーカップを上げ 「ありがとう」

横須賀基地.jpg  翌朝先生は病院へ、俺は横須賀米X軍基地( FLEET ACTIVITIES,YKOSUKA(通称、Base-ベース)に休みのスケジュールは前もって定出、了解を取って有るので、心配は無い、勤務するオフィスに入り俺のボス、大柄でデブでとにかく明るい、Mr: Samuel(サミエル)、通称サムにレースでセカンドポジションで在った事を報告、外人は大げさだ、オフィス全体聞こえる大声とアクションで"congratulation"皆も拍手で喜んでくれた、 同僚に仕事のスケジュウルを聞き、改善するPCプログラム変更や日本人の事務員の表計算等のPCのアップデートを行う、一通り終わり事務員と雑談中

 「Hi! Ryu, Long time no see you. Do me favor for check my PC?(ハイ、リュウ、長い間見えな かったね、私のPCもチェックして下さい)」 「ハイ、ミス、パトリシア元Tボーンステーキ.jpg気していましたか?あなたのPCは外人サイド、デイブに頼んだら?」 「ちょと、だから、お願い見て下さい」 PCの画面を見ると、I miss you so much!..invitation to T bone steak dinner at military officer's club..(逢えなくて、寂しいわリュウ、今晩ベース内の将校クラブ・レストランで、Tボーン・ステーキご馳走するから行きませんか?) とタイプしてありました、とっさに 「So sorry, I have an appointment today, I must be going to another place. If you like next time. ごめん、今日は他に約束があるから帰らないといけないから、次の期会いにね」 ちょと残念そうでしたが 「OK! Next time that.. feel regret」

 軍の将校の娘さんで、綺麗で可愛い、時々俺を誘ってくる  同僚の平井君が、察しているのか 「デートしたら良いのに、何かと将校の娘さんだから有利になるのに」 俺は内心、損得で恋愛出来るかよ!、と思ったが 「俺はダメだよ、平井君誘って見たら?」 「私ですか?ダメですよ相手にされないすよ」 「なんなら、俺、話してみようか?」 「ダメダメ、だめですよ、止めて下さい」 「そうか、男と女解らないよそのうち、誘ったら?」 間もなく退社時間になったので、今日は急いで帰り支度をして 

有難う御座いますストーリ【前編4】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11-4是非お読み下さる事お願いします


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編4】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

 ☆=ストーリ【前編3】からの続きです、是非下欄【前編4】をお読み下さい=☆ 

 横浜本牧のマンションに向かい、取り敢えず、必要な着替えや剃刀、ローション、ノートPC、靴、スーツ等 後デスク形PC等は後にする事にし、少しでも早く会いたくて、休む事なく踵を返し金沢文庫、柴町の先生のマンションへ 弾む気持ちを抑えドア、ホーンを鳴らした、また悪戯心が起こり 「宅急便ですが、ハートマークの、お届け物です」エレベーターを上がりドアー前でもう一度チャイムを鳴らした、 内側からドアを開けながら「はーい、リュウ、今開けますから」 「なんだ!又、判ちゃったか」

 「お帰りなさい、ハートはリュウ以外ないでしょう」 エプロン姿の先生の声に、何か凄く平和で安らいだ気分で安堵感を覚えた、今までは帰っても侘しい一人、其の以前は俺が守らなくてはと思い安らぐ事などあまり出来なかった、決して、前の奥さん(美奈子)が悪いのではなく、かえって、取り返しの付かない、それが間違っていたとしても、俺なりに愛していたのに、悲しみを与えてしまって、本当に可愛そうな事をしてしまった、他の接し方が有ったのではないか、解っていながら如何にもならなかった、俺が幸せであればあるほど心が痛む!

 俺自身の問題だ、もうポニー直ぐに.jpg何時までも、くよくよ考えるのは止そう、先生にもどちらにも悪い!..もし、これが初めから先生に出合っていたのなら、あたり前に思え、こんなにも感謝と感動はなかったであろう、このなんでもない普通の営みが、こんなにも大切に感じられ、ある意味、良かったと思った

 ”あぁ、俺に、こんなに、安心して、帰る場所が出来たのだ、なんて幸せの事か!”

 「ただいま!、・・お肉の匂いたまらないな!」 急がしそうに空き部屋のドアーを指差しながら「もうすぐ仕度出来るから、取り敢えず、あちらの空いている部屋、リュウが使っていいから、荷物運んで、終わったら手を洗って、此処に座ってね」 「OK、すぐ終わるよ、とにかく喉が渇いたな!」 荷物運び終わって、手を洗いダイニングテーブルに付くと

 テーブルにはサラダにオニオンスープ、グラタン、フランスパンのスライス、など並べられていた、 先生はエプロンを外し冷蔵庫からスパークリングワインを取り出し俺に手渡し「リュウ、開けてちょうだい、半日で帰らせて頂き、準備したのリュウ、其処のワイングラスに注いで」 栓が飛ばないように押さえて抜いてテーブルの端に置いてあった二つのワイングラスに注いだ、琥珀色の液体に微かに細かい泡が次から次えと幾つも弧を描いて立ち上がり、シャワシャワ音を立て弾けている

スパークリング・ワイン.jpg 先生のこぼれ落ちそうな笑顔で「さーあ、今日から二人の門出よ!、リュウ、宜しくお願い致します」 俺も連られ笑顔になっていた「俺こそ!、こんな準備してくれて、本当に嬉しいよ」 先生はワイングラスをしなやかな指先で持ち上げ「リュウ乾杯しょう、これからの二人の幸せを願って乾杯!」 俺もグラスを差し出し「・・・乾杯!」 先生のグラスと合せた、静かな部屋に周波数の高い”チーン”と涼しげな澄んだ音が静寂のダイニングルームに静けさを強調する様に共鳴し広がった、

 数々の乾杯が有ったが、思わず目を閉じて耳を傾け、此れほど心に染み渡り、感動さえ感じた、先生も同じ思いだろう、互いに暫く無言で見詰あった・・、

 ・・最初の一杯は喉の渇きのためか、炭酸が快く一気に空けてしまった、先生は俺のグラスに二杯目を継ぎ足しながら「リュウ飲めるのね、改めて・・宜しくね!」 「俺こそ、急いで帰って来たから、喉が渇いて、それに今日はもう運転しなくて良いからね、安心して酔っちゃうかも」 先生は目を優しく細め「嬉しいわ、真面目なのね、リュウって酔ったら、如何なるのかしら?」悪戯ぽく笑った顔は何か色っぽく感じる、こんなに色々の姿を魅せる先生に驚きの感動を覚えたが、俺は澄まし顔で「さーね、車の仕事だから、余り呑んだ事ないから、少し笑い上戸かな?解らないよ」 「リュウを酔わしちゃうかな!・・今日は止めとこうと、この後大事な事あるからフッフフ・・」 医者の家庭に育ち自身も医師になり、人間の生理を知っているからだろうか、本当に、自分の気持ちに率直でオープン、余り罪悪感を感じさせない人だ、俺もついニャリとして「だよね!」

オニオンスープ1.jpg 「ねー、味に自信ないけど、召し上がって、誰にも邪魔されず二人だけで、新しい出発を祝いたかったの!」 「美味しいよ、幸せをかみ締めなくちゃぁー」・・「ねー、このオニオンスープに・・ピザ用チーズある?」 「有るけど?」 俺は僅かな時間を惜しんで懸命に用意した、先生を思って「怒らないでね、・・其処のフランスパンにガーリックバターぬってトーストしてからオニオンスープに浮かし入れてチーズたっぷり乗せて三、四分位チンするの、もっと美味しくなるよ、其の方が良いでしょう」

 嫌な顔もせず、素直な人だ直ぐに席を立ち手を加えてくれた 「本当、美味しいわ、リュウ如何してこんなに知っているの?」 「うん、自炊が多かったからかな、でも和食は全然駄目だよ」 先生は怒る、どころか「それにしても、良く知っているわ、教わらなくてわね」 「そんな事ないよ、ヨシ子こそ、此れだけ出来るだもの、勉強ばかりして、他の事は正直あまり出来ないと思ったよ、本当に美味しいよ!」 俺を可愛く睨んで見せたが、怒ってはいなかった

シーザーサラダ.jpg 「さー飲んで、俺、先生と会え本当に嬉しい、こんなに、和やかに出来る日が来るなんて、思いも依らなかった」 先生も、ワインで艶かしく、嫋やか(たおやか)な優しさを見せ「私もよ、学生の時、お母さんの言う事、聞いて料理習って良かった、リュウとだと本当の自分になれ、心から休めるの、それとね、リュウがどんなに怒っても、私の胸の中で眠っている、リュウを思うと、何故か全然恐くないの、信頼しているから」お酒が入ったせいか、よく喋る

 「なんだ、全然子供みたいだね」 「子供と違うわ、肉親の様な、本当に心から裸になれるの、身も心もって云うけれど本当にそうなったから、リュウと一緒だと今まで感じた事が無い位心から休めるの、だからリュウにも疲れを感じたら、休めてあげたいの、リュウはそんな気持ちを抱かせるのよ」 きっと俺以上に俺の事を、愛おしく、感じていたのか、と思った

 その通りだと思った!「俺、あの日あんなに素直に安らげるなんて、先生が何の恐れもなく全てをうけ入れてくれたから」 先生も真面目な顔で「私もよ、何が有ってもリュウから離れられないわ!、覚悟して!・・な~んてね」 「おぉー、恐いな」 「そうそう、今度の土曜日、私の両親に合って下さいね、連絡してありますから」・・「あ!それとハンバーグ、オーブンに入っているから出して」 

ハンバーグとグラタン.jpg 多分、俺のハンバーグと思うが先生の倍以上の大きさだ 「この大きいのが俺の?」 「違うわよ!大きい方が私、実はね、私大食いなの、..驚いたフゥフフ・・・違うわ!、大きいほうが、リュウのに決まっているでしょう、驚いた?」 「だと思ったよ、でもTVで大食いの女の人見たから、まさかと思ちゃった」 俺は真剣な顔で「うん!このハンバーグ変だぞ!すごく塩からい」 先生は驚き「え!本当?」 俺はニヤリとして「嘘ですよ! 今の仕返し、凄く美味しいよ、本当、美味しい!」 「もう!リュウは」笑いながら子供に’メ!’をする様に俺を睨む 

 「あのさー、コウちゃんが言った、ヨッちゃんって先生のこと、呼んで良いかな?それなら呼べそうだから」 俺の顔を真っ直ぐ見て「リュウ、がヨッちゃんって、呼ぶの可笑しいでしょう!、ヨシ子って呼んで見なさい!リュウは私の旦那さんよ!なにか遠慮が有ってよそよそしいでしょう!」 以前、何か有ったのかなぁ?まぁーいいか、質問はよそう「じゃぁ、ヨシ子!、コーヒー入れて」 「ハイ、旦那様、直ぐ入れて来ます、・・ほら云えば簡単でしょう」 本当に楽しい一時を向かえられた。

 翌日から、俺は先生をヨシ子と呼ぶ事にした、ヨシ子は病院、何時も整った服装だ、俺はベースへ勤務、ヨシ子にも説明したが、外人の兵隊の中ではスーツは対象的でチグハグだ、軽装で十分、返って、浮いてしまう職場の殆んどの外人達兵士や軍属はラフなスタイル、Tシャツで軽装だ

 土曜日の朝を向かえ、二人して久しぶりの、のんびりした休み、近くの”海の公園”の海岸沿いを軽くジョギング中 「リュウ!私ね、以前から考えていたのだけれど、今の科の心臓も大事だけれど、その治療を受ける患者とのコンサルタントと云うのかコミュニケーションが大事だと思ったの」 「うん」 ・・「それでね、リュウと知り逢って、もっと精神医学の勉強したいと思ったの、これからは、世の中がもっと複雑になり、人間関係も色々、心理学も必要よ、今回、私もリュウも一つのきっかけで解決出来た事もあるでしょう、今直ぐと云う訳ではないが、どう思う?」

 俺に異論などない「俺、身体や病気の事など解らないが、凄く良いと思うよ、何時だって応援するよ、俺の事となら何の心配も要らないよ、ヨシ子が目標の有る俺が好きだと思う様に俺だってそう思うよ」 嬉しそうに「ありがとう、心療内科や精神病の様な専門的科は有るのだけれど、もっと気楽に悩みを聞く場が有れば良いでしょう、又その時が来たら相談するね」

 朝食を取り 「リュウ、朝は野菜サラダとリンゴ、バナナも確り食べてね、頭の回転が良くなるから、今日午後から両親の家に行きますよ」 まるで、子供扱だが全然悪い気がしない、むしろ、揺ったりした安らぎを覚える 「うん、俺、スーツ着て行った方が、いい?」 サラダを出した手を止めて俺を改めて見る様に「そうね?、初めて会うから、其の方が、良いと思うし似合うと思うけど、リュウの好きにしていいのよ」 「黒のTシャツにチャコールグレイの明るいスーツでノーネクタイにするよ、それで良いでしょう?どうも、首絞められるの、ダメなの」 「リュウは皆と違って少し変わっているけど、目立ってセンス良いよ、それカッコ良くて、とても似合うわよ」

yoshiko-太田屋前.jpg 「私もリュウ合わせて濃紺のスーツにタイトスカートにしたけど、どうかしら?」俺に斜めに見える様に撓を付けて見せた、イタリア製のハイヒールにサイド・スリトがあるタイトスカート、すんなり伸びた足に魅力的な太腿がチラリと見える 「それって、何処かの大企業の社長秘書みたい」 ヨシ子は訝しげに「リュウ、この洋服嫌いなの?」 俺はニヤツキ顔になり「そうじゃないけど、かっこいいよ!眼鏡かけたら、フフッちょっと違う事想像したから」多分俺が好色な顔になっていたのか 「なによ!なに考えているの?、おあいにくさま、目は悪くないわよ、其の顔、解かったわ、リュウ、エッチな事考えているでしょう!、それぐらい分るわよ!」 俺は慌てて「それだけカッコ良く、魅力があるからだよ」 「また誤魔化して」

 「早めに出て、お昼、何所か外で食べよう」 「リュウにお任せ、どこでもいいわよ」 「じゃ、この近くの釣り船屋の近くで漁師の旦那と気さくの奥さんが夜は居酒屋で、昼間食堂やっていて、鮨や焼き魚・煮付け等やって居る所で良い?」 金沢八景の野島公園に近い所で、魚料理は余り好きではなかったが、其処のは新鮮で料理も旨く何より処理もよく生臭くなくて、俺好みで以前良く通って所である。  

太田屋.JPG 居酒屋の看板の前で水を打っていた、人の良さそうな女将さんが俺を見つけガラガラ声で 「リュウちゃん!リュウちゃんじゃあない、如何したの、此処のところ顔出さないから?」 「こんにちは!」 掃除の手を休め「今日は、じゃ無いよ!音沙汰無いから心配していたんだから、あら!其方の場違いの綺麗なモデル見たいなお嬢さん!リュウの連れ?」 「ええ、先生でお医者さん」 驚いたように目を見開き「まーぁ、モデルさんかと思ったよ!」 「久しぶりに、お昼、食べに来たよ」

 掃除道具をかたづけながら「さー、そんな処に立って居ないで内へお入り、其方のお嬢さんもね」 先生、圧倒された様子で 「宜しくお願いします」 が精一杯の様、中は畳の席で、大きいテーブルが6席、それにカウンターがL字に10人位座れる、まだ時間が早いので俺達だけだ、 カウンターの席の真ん中に座り 

伊勢海老の味噌汁.jpg 「今日は、おばちゃんにお任せだよ、お願いします」 カウンターに入った女将は「はいよ、リュウおばちゃん じゃ、無いだろう、おねーさんでしょう!」 奥のキッチンから漁師の旦那が 「久しぶりだな、リュウ、何していたの」 「又、車の方へ戻ったから」 旦那は両手を前に出し上下に交互に振りハンドルを握る真似をしながら「また、これか?リュウはカッコよいからな、辞めたんじゃあないの?そっちの綺麗な人、紹介してよ」 「ああー、お医者さんの鶴見先生」

 ヨシ子は笑顔を作り軽く会釈して「鶴見 圭子です、これから、リュウと一緒に時々伺いますので」 旦那は滅多に見せない、万遍な笑顔で「リュウなんか、どうでもいいの、鶴見先生だけで来て下さいね」 「それは、ないよ!奥さんに叱られるよ」 女将は旦那を見ながら「いいの、このバカは、本当、美人に弱いだから、どうせ、見るだけの楽しみだから」 旦那にゃにや顔で「何言っているの、俺のモテルこと、知らないから」 俺は苦笑しながら「それより、腹へったよ!俺の飯 まだ?」 旦那慌てて「そうだ!今出すよ」

 鮪カマ香草焼き.jpg伊勢海老の頭が入った、魚介類の味噌汁に金目鯛の煮付け、鱸(スズキ)の刺身、鮪の鰓(カマ)の肉をハーブと塩コショウ、ニンニク、バターでホイル焼、炊き立てのご飯、 味噌汁を飲んでヨシ子も思わず「これ、美味しい、リュウも頂いて見て」

 旦那さんがカウンター越しに「先生、お代わりもありますから、一杯食べて下さい」 奥さん、旦那を誇らしげに見ながら、だみ声で「これは、顔は悪いが、腕は確かだよ」 「そんな事ないです、顔だって、味が有って魅力的ですよ、私、好きだな」 旦那嬉しそうに「ほうら見なさい、俺はもてるから」 女将は手の平で旦那を叩くまねをして「バカだね、この人は、お世事も、解らないから」 とにかく、笑いが一杯で魚も美味しく二人して満足した 

 支払いを済ませて「じゃあ、又近い内に来るから、今日はご馳走様」 ヨシ子も満足したようで「本当に楽しく美味しかった、ありがとう御座います」 女将さん嬉しげに「先生の口に合ってよかった、リュウ、レース、身体だけは、気を付けてよ」 旦那も奥で手を上げていた

 ちょうどお昼時、近所で働いている人達が、お店に集まって来た 「よう、リュウじゃないか?珍しいな、元気かよう?」 「何とか生きてるよ!今日は急ぎの用事がありるから、又近い内に来ます」 「おお」手を上げながら、挨拶を交わし、彼らは店に入った 彼らを見送りながらヨシ子は「リュウ、本当に良い夫婦だね、料理も美味しかったし、本当、リュウは色々な人知っているのね、本当の暖かさが伝わってくるわ、あんな感じのお店に入ったの学生以来だわ」 「気に入って良かった、俺、魚余り好きでは無いけど、あそこのは美味しく食べれるよ」。

 さぁー、いよいよヨシ子の両親の所だ、俺はチョット躊躇したが「..ヨシ子!」 やっと名前呼べた 先生は極自然に「なぁーに」 名前が呼べた事に、ほっとして「前から思っていたが、歩き方綺麗だね」 「そーう、学生の時にね、スカウトされ、少しモデルやった事あるから、そこで教わったの」 「それでか、何時も決める処、決まるから、レース、クィーンでも余りいないよ」

 「それに、母がうるさかったからマナー教室に通っていた事があるの、・・リュウもガサツに見えるが、ちゃんと、マナー出来ているね、一緒にいるから、判るの」 「俺、まだ子供の頃、お袋に ”なにがマナーだよ、どのホークやスプーンであれ箸であれ、手掴みだって、その人が美味しいと思う方法で食べればいいんだよ” と嘯いた事もあったが、お袋に叱られたよ ”お前がカッコ付ける為にマナーが或るのではないよ、他人が健司の耳元でクチャクチャしたり食器をカチャカチャ音を立てて食べたり、喋っていたら、いやでしょう、他人に迷惑掛けない様にする為だよ” だって、叱られたよ」それに、これはヨシ子に黙っていたが前の奥さんの義父に、ホテルや高級レストランに幾度と無く連れて行かれ大抵の事は覚えた。

 途中、和菓子店でお土産用、綺麗なスイーツ菓子を購入 いよいよ、鶴見医院に着いた、駐車場にはアウディRS5、クワトロ(Audi RS5 quattro4.2L V8FSI)..ビックリ、この車アウディはポルシェに変わりルマン24時間レースで勝ち続けている、ドイツメーカーの車、此れは義父と話が合うかも、「ヨシ子、これお父さんの車?」 「ええ、そうですが、なにか?」 「これ、皆の憧れの車だよ!お父さんと、話が合うかもしれない?」 「そうなんですか、このオリンピックマークみたいの車、最近買い換えた様ですよ、もっと勉強しなくては」、今日は鶴見医院の診察は臨時休業午前中で終わりの張り紙があった、きっと俺達の為であろう、何故か身が引き締まる思いである

 裏手の家族用玄関から、ヨシ子から入り声をかけた「ただいま」 車の音で気付たのであろう、上がり口に身構えた佇みは、ヨシ子似の顔で賓の良いスタイル、お母さんと直ぐに分った、まず確り頭からつま先まで射るような目付きで一瞥され、穏やかに見えるが、俺に対して余り良い印象は持っていない様子だ、俺に向かって「お待ち致しておりました、どうぞ、お上がり下さい」 俺は緊張していた、大きく息を吸い「はい、龍崎です、突然で申し訳有りません、宜しくお願い致します、..お邪魔致します」 奥の方に五十歳位の看護婦と、おっと今は看護師と言うらしい、それに、ヨシ子と同じ年位の女性の事務員らしき人がちらちら見える

 ヨシ子、お土産の紙バックを渡しながら「お母さん、これ龍崎から、お父さんは?」義母の愛犬であろう、パピヨンが短い尻尾をこれ以上早く振れないほど振り、ヨシ子に跳び付いて来たパピヨンを抱き上げ「ルル今日は静かにしてね」ルルは初めて見る俺にヨシ子の抱き上げた腕の中から乗り出すように、匂いを嗅いだりそわそわだが、俺を見ながら嬉しそうに尾を振っている「ルル、判る様ね、リュウに吼えたりしないわ」ルルの頭を撫でながら「ルル!リュウよ宜しくね、って」 風薬の様な名前だな、俺もルルの頭を撫で「俺も小さい頃家にシェパードが居たので犬は好きだよ、ルル宜しく」 義母、俺にむかってお土産の袋を示し「これ有難う、これから気を使わないで下さいね、お父様は応接室で待っていますよ」 ヨシ子は母にルルを預けながらドァーをノックして 「お父様、入りますよ」 ドアを開けヨシ子と俺が入る 

 俺は緊張気味に「今晩は、龍崎 健司です」 義父は待ちかねた様に「おお、君か!其方に、ヨシ子も掛けなさい」 俺は立ったまま「お嬢さんと、結婚しようと、思いまして」 義父は真っ直ぐ俺を見て「その件はヨシコから聞いているよ、まーぁ、掛けたまえ、ヨシ子も座って」 「はい」 俺は何か始めての就職、面接試験を受けた時の様な気分がした 義父は咳払いをして「ウン!今まで、お母さんの言う通りのレールに従って来たが、ヨシ子が始めてお母さんに、あんなに逆らって意見を言った事は無かったよ、最も、もう親が色々言う歳では無いからな、私は、ヨシ子が幸せで有りさえすれば、それで良いと思っている」 「はい、有難うございます、経済的には、幸せに出来るか解りませんが、幸せで在りたいと思います」 義父は少しむっとした顔付きで「龍崎君は変わっているね、今まで沢山、娘を下さいと来たが、皆、幸せにしますからと云っていたがね、ヨシ子は今までいろいろな縁談があったのだが全部断って、結婚しないのか心配になっていたところだが」 

 「はい、私は将来約束など出来ない事は言いたくありません、ただ今も将来も、心から幸せで有りたいと思いますし、今幸せに思っているから、お願いに伺いました」 呆れたように「そうか!ヨシ子、変わっているな」 ヨシ子は慌て俺に助け舟を出し「お父様!そんな事いいでしょう、正直なのよ!」 少し落ち着いた顔で「まぁ、親として娘の幸せを望むものだよ、それに君の仕事は危険が伴なうから、心配だが!ヨシ子が承知の上今更何も云わないが、細心の注意を怠わらないようにしてくれ!」 「はい、解りました、心致します、先ほどは生意気な事云って申し訳有りませんでした、宜しくお願いします」 俺はもう一度、深々と頭を下げた

 ヨシ子は父に「それと、お父様、私又精神医学の勉強したいと思い大学に戻ろうと思っています、その時は又ご迷惑掛けると思いますがお願い出来ますか?」 「フム・・お父さんの元気の内に頼むよ」 俺は神妙な態度で「私も賛成です、自分達で出来ると思いますがもし力不足の時は宜しくお願い致します」と頭を下げた、 義父は「ヨシ子の為に私も出来るだけ、応援するよ」 もう一度俺は頭を深々とさげ「有難う御座います」

 ちょうど、お母さんがお茶を運んで来た 義父は「お母さんも、掛けなさい、龍崎君に話す事は無いのか?」 ヨシ子の顔を伺いながら「ええ、ヨシ子とお話しましたから、ただ一人娘ですから、医師の方で此の家を継いで欲しかったのですが、私の意見だけ押し付けてはいけないから」 ヨシ子は義母を制する様に「お母さん、その話はリュウには関係ないでしょう」 「そうだったわね、龍崎さん、御伺いしたいのですが、ヨシ子に聞いた話では、如何してあの一流会社をお辞めになられたのですか?それと何故、自動車レースなのですか?」 「はい、私の母にも、叱られましたが、そこでは、単に会社の派閥争いや歯車の一部で、生意気のようですが、私の技術など何の意味も無く人生が終わってしまうような気がして、レースなら自分が生きている、実感が得られ、それに其のまま誤魔化しのない結果が得られます」

 俺の説明では余り納得行かない様子でしたが 「そうですか、私には惜しい気持ちが致しますが、ともかく..ヨシコをお願いします」小さく頭をさげた 「ハイ、此方こそ、宜しくお願いします」 俺はもっと反対されると思ったが、ヨシ子が全て話してあるらしく、ほっとした 

鶴見家ダイニング.jpg 義父は両膝を叩き立ち上がり「よし、今日は家の従業員と云っても二人だけだが紹介しょうと残ってむらったから、居間の方へ移ろう」 居間には、仕出しの寿司や刺身、手巻き用寿司セットなどダイニングと居間のテーブルに沢山揃え用意して有りました、そこには中年女性の看護師さんと、ヨシコと歳が同じ位の受付の女性が待っていました

 義父は「今度、ヨシ子と結婚する、龍崎君です」と言いながら、俺を促すように肩を押し前に出した 「龍崎です、何かとご迷惑掛けますが宜しくお願いします」 看護師の方が「安部と申します、此方こそ宜しくどうぞ」続いて 「私、受付をしています、奥村ともうします、宜しくね、想像していた方より、全然違っていて、驚きました」 俺は手を首に充て、こすりながら「はーぁ、ご期待に添えなくて」 ずばずばと物を云う人だ「いえ、青白く学問ばかりして眼鏡を掛けている人を想像した物ですから、若くて凄く精悍で好い男でビックリしました」 俺は言葉に詰まり「はーぁ、どうも、何と答えたら?」 ヨシ子慌てて「奥村さん、リュウが困っているでしょう、そんな人想像していたんだ、私だって、選ぶ権利あるんだから」 

 義父はビールを飲みながら「さー、皆、頂きましょう、龍崎君も頂きなさい」 「あ、はい、皆さんもリュウで良いですから、リュウと呼んで下さい」 義父が「リュウ君は、車のレーサーだそうで成績も良いそうだよ」と事務員や看護師に向かい説明した 俺はヨシ子の両親をどの様に呼んでよいか判らず義父に向かい「お父さん..お父さんとお母さんと呼んで良いのですか?先生とか?ヨシ子さんも先生ですから」 義父は義母に向かい同意を求める様に「お前、それで良いよな、ちょっと、呼ばれた事無かったから、お父さんか!?まー、いずれにしても義理の父母だからな、ま、その内なれるだろう」 義母は当惑した顔をして「何となく、むず痒いわ」 何となく寂しそうにしている ヨシ子が俺をかばうように「お母さん、その内馴れるわよ」 

 事務員の奥村さんが気を利かせ話を変えてくれた「あのうーリュウさん、大(おお)先生は車が好きで最近ベンツから買い替えたんですよ」 「あ!はい、私も駐車場で拝見しましたが、良い車ですね、車好きの憧れですよ」 お父さん、得意そうな顔で「そうか!リュウ君、友人のデイラーの奨めで購入したんだ、ほら車のプロが言うのだから、間違いないよ」 多分、全員女性、非難されて居たのではないか? 難しい説明をしても解らないと思い 「あの車はQUATTRO(クワトロフルタイム4WDハルデックス カップリングとコンピューター油圧システム)と云って音楽で云うリブラートですか?声を震わせる事ですが、波のように凸凹した道でもスムーズに走れる程、足廻りが良く運転が楽で、非常に安全ですよ」 先生、得意げに「だから、良い車と言ったでしょう!」 

 俺は話を変え「奥村さん、事務管理しているのですか?」 「ええ?」 「顧客、..では無く、患者さんのカルテと言うのですか?その整理に、住所連絡先、予約の管理、薬や血液等外注検査の管理、税金の申請がもっと楽になると思いますよ、コンピューターのプログラム個人医院用など色々有りますから」 ヨシ子俺を援護するように「そうよ、リュウは、米軍基地で、コンピューターの専門で雇われているんだから、見て頂きなさいよ、仕事楽になるわよ、ね!お父様」 義父は頷きながら「それはいい、そろそろ、家もコンピューター入れようと思っていたところだよ」 皆も少しずつ和み始め、看護師の安部さんも、好意的で、俺に食べ物を沢山勧めてくれた、先ず先ず一安心、

 夜も遅くなり帰る事にした、義母と女性の二人が見送りに出てくれ、お俺が運転席で挨拶を交わしている時に、高校生で在ろう身体の大きい男三人が、すれ違いに義母に当たり、罵声を発した「このクソババアー、何もたもたしてるんだ!気を付けろ!」 俺は慌てて車から飛び降り 「おい!お前ら、ちょっと待て、俺のお母さんに、何て事言うか!このバカが、あやまれ!」 俺の余りの見幕に、ビックリして後ずさり、追い討ちを掛けるように 「てめいらの、おふくろが言われたら、どう思う、ちゃんと、頭を下げて、あやまれ!」 もう一歩前にで威圧した 学生達三人は俺の見幕に慌てて、頭を深々と下げ 「おばさん、すみませんでした」 と何度も頭を下げた 「よし、もうそんな事するなよ、お前へらの、お母さんが悲しむぞ、もう行っていい!」 「すみませんでした」もう一度頭を下げ逃げる様に去っていった 俺は「一人では良い子だのに、仲間がいると、つい粋がってしまうから、それじゃあ、お母さん、大丈夫ですね、皆さん、お休みなさい」

 俺はヨシ子の実家を訪ねる前から、反対され快く思われていない事は解っていたのだが、義父母の雰囲気を感じ、遣る瀬無く、つい学生達に必要以上に怒りをぶちまけていたのかも知れない、もっと悪い印象与えてしまって、少し後悔の気持ちであった 

 車で帰宅途中、ヨシ子の携帯が鳴った「はい、お母さん、はい、....ええ....ええ.....はい.....分かりました、おやすみ!」 電話を終え、ニコニコしながら「リュウ、お母さん、ヤクザ見たいって、ビックリしていたわよ、....うそよ、凄く、感動して、リュウの事、好きになったって、お母さん単純なんだから、リュウの事、良い青年ですって」 俺はビックリ「本当?嘘でしょう!つい許せなくてカーとなり、やっちゃった!、柄が悪くて、お母さん驚いたと思ったよ!どうしても、許せなくて、きっと益々印象悪くなったね」 「私の方が、ビックリよ!でも素敵だったわ」

 なんだ、自分だって、お母さんと変わらないのに 「今までリュウの様に、体を張って、守ってくれる人に逢った事なかったから、それに”俺のお母さん”てリュウが言った事、凄く感動したみたい、ヨシ子も守ってくれる?」 「当たり前でしょう、ヨシ子だったら、手が出ていたよ」 嬉しそうに「本当う!嬉しい!それと..リュウは頭下げる事、嫌いなのに、先ほど、私の為にお父さんに、頭を下げて頂き、本当に嬉しかったわ、ありがとう!」 「そんな事ないよ、理由さえ有れば、こんなに軽い頭いつだって下げるよ」 俺は人って変な所感動する物だと、解らんな??と思った、とりあえず少しほっとした

 「ヨシ子、結婚の事、前もって、話してくれたんだね、でもお母さんの思いも解らない事ないし、悲しそうだったから、ヨシ子の両親に会って少し心が痛かった、そうとう、反対されたみたいだね、初めてお母さんに逆らったの?辛かったでしょう!」 「リュウ、そんなに、優しい事、云わないで、なお辛くなるでしょう!」 「ごめん、ごめん、本当に、ありがとう」 「リュウと同じよ、当たり前でしょう、私の為でもあるのよ、もう云わないで!」 「解ったよ、ねー、明日、鎌倉に行こうよ、報告と皆の幸せをお願いに」 「いいわよ、そうしましょ、リュウが安全で入賞出来た事も報告しなくてわ」

         《鎌倉》

 八幡宮.jpg翌日、日曜日朝10時頃、鎌倉に付いた、初夏の日差しの中、鶴岡八幡宮の前の駐車場に車を止め、八幡宮境内を手をつなぎ歩いた、俺は写真を始めたばかりで、余り良く解っていないのですが、先ず形から最新デジタル一眼レフカメラを持ちカメラマンスタイルのチョッキやパンツ、ハンチング帽で、ヨシ子は、淡いクリーム色のパンツと黒の襟の大きき開いたブラウス、薄手の同じクリーム色の大き目のスカーフ、つばの大きな黒の帽子、背も170㎝位、スタイルも良いどう見ても目立つ、

 御神木の大きな銀杏の木(下段の写真、今は倒れて見られない以前の大銀杏、現在再生が進められている)のある正面階段を息を切らし上り、参門の両脇の仁王様を抜け大きな賽銭箱の在る仏殿前で、二人して賽銭を投げ入れ、仕来り通り手を打ち、結婚の報告と家族皆の安全と幸せを祈り、参拝を終え、ヨシ子は俺に問いかけた「リュウ、何をお願いしたの?」 「皆の幸せに決まっているでしょう、ヨシ子は?」 「フフ内緒」 「俺応えたよ」 「じゃー云うわ、可愛いリュウ似の赤ちゃん!」 「あ!俺、忘れていた、もう一度お願いに行こうか?」 「大丈夫よ、どうせ忘れているし子供に興味無いと思って、リュウの分も確りお願いしたから、それにレースの安全もね」 「別にそんな事無いよ」云ったものの、そのとうりかも、自分の子供の事など考えても見なかった 「リュウは車の事だけだから、そんなに無理しなくていいよ、私はリュウの子供欲しいから、でもこればっかりは神様の贈り物だからね」 生活の事は俺には、全く依存していない、それも少し男として不満で有るが、図星である

 そんな事を話ながら、境内をあちらこちら見学し、写真を写し、ヨシ子はモデルも遣っていた事もあり、ポーズも決まり人目を引く、二人の記念に近くに居た叔父さんにシャターを押して下さいとお願いし 叔父さんが「モデルさんですか?綺麗ですね」 面倒だったので、ヨシ子と目を合わせ 「ええ、そうです」と答え、叔父さんも力が入ったのか、”もっと左に寄って”とか”二人共もっと寄り添って”絵を描く人の様に両手の指を四角に作り覗き見して、プロ並の指示をして、その仕種が余りにも滑稽で叔父さんに悪いと思いながらヨシ子と顔を合わせ笑いを堪えて5,6枚撮って頂きました、

鎌倉鶴岡八幡宮の大銀杏.jpg それでヨシ子がお手洗いに行きたいと云うので、大鳥居入り口近くの今は封鎖されている石で出来た太鼓橋左手の池の処で、待つ事にしました、暫らくすると、年頃二十台後半から三十位で和服の如何にも鎌倉婦人と云う感じの女性が、「鎌倉を撮影ですか?」 俺は「ええ、まぁー」 「歴史を尋ねてですか? 私、ちょうど用件が済みましたので、名所などご案内いたしましょうか?」 「有難りがたいですが、今日は連れが居ますので」俺を写真家と間違えたのか? 名刺を出しながら「そうですか、残念で御座います、宜しかったら、此方に連絡下されば、何時でも伺いますので」 「ええ、その時はお願いします、もう連れが見える頃ですので」 和服の女性は淑やかにお辞儀をし「では、お待ち致しております」と告げ、内股で静かに立ち去り 

 女性の立ち去った方向に、ヨシ子が優しく微笑んで立って待っていた 「どうして、声かけてくれなかったの?」 和服の女性を見送りボゥーと、していたのか俺の目先で手を振り「どうしてって、此方が知りたいわ、リュウが楽しそうに話していたから、..うそよ、リュウが、どんな対応するのか、興味があったの、リュウ、モテルのね!」 名刺は着付け教室の講師でした「俺よほど、暇に見えたのかな、何所か変だよ、何かの販売?狐に摘まれた様だよ、逆ナンパだね」 「それだけ、リュウは魅力が有るの、私が惚れているだもん!」 「ヨシ子だってモデルさんですかて、聞いていたよ」 他人が聞いたら、バカらしくなる話だが俺達はそんな話でも今は全て嬉しく楽しかった、

 小町通り.jpg小町通りに入り、少し歩いた処の小さな路地を右に折れすぐ、そこで可愛いガラス細工の加工しているお店に入った、以前からヨシ子に何かプレゼントしようと考えていたから、あちらこちら見ている内に薄っすらと微かにピンク色した真珠の入ったティアドロプ(涙の形、中に薄い水色の水の中に真珠が入っている)形で留め金部分を金網目のピアスと金のネックレスのセットが一際、目に付いた、何故か迷うこと無く此れにしようと思う

 「ヨシ子、これ付けて見て」 店員に申し出、付けて貰った 「うん、思った通りとても良いよ、似合っているよ、ねー、店員さん」 「ええ、とても似合って、おいでですわ、今わバロック真珠もカジュアル向きに出ていますが?」 「いえこれで?ヨシ子どう?」 店員「お目が高い、少し金額がお高いですが、これは純正御木本で厳正されたアコヤ貝から取れたものです、御木本の保証書も付いています」 「いえ、其れより、デザインが気に入りましたので」

 ヨシ子鏡を見て「素敵よ!でもいいわよ、高い時計戴いたばかりじゃない」 「それはそれ、じゃあ、これ頂くよ、このまま付けて行きますから、今、外したものを包んでください」 思ったより値段が高かったが如何しても欲しかったので余り、好きでは無かったがカードで、支払いを済ませた 「色々の意味を込め、ヨシ子にプレゼントだよ」 「ありがとう、本当に嬉しいわ、リュウから初めてのプレゼント、腕時計といっしょに、大事にするわ」 店員さんに向かって 「良く似合っているでしょう?嬉しいわ!」 「はい、本当にお似合いですわ、宜しかったですね」 「私達の記念なの嬉しくて!」 本当に子供の様に嬉しそうでした、店員さんも、その表情を見て、”それは良かったですね、お幸せに!”店員さん達一緒に喜んでくれました、こんなに素直な処が有り何か皆を幸せにする人だと思った

 店を後にして「ヨシ子、お腹空いたね、お昼なんにするの」 「リュウ、それより、いろいろの意味って、なーに?」 冗談で小指を立てて「いろいろはこっち色気の色々だよ」 「こっちって?」 「いろいろはいろいろだよ、分らなければ、いいよ、深い意味無いから、其れより、何か食べようよ」 ヨシ子首を傾げ「おかしな人?..そうね、日本そば屋さん在るかな~ぁ」 「確かもう少し行った処の四つ角左に入った所だと思うよ」 「リュウ、良く知っているね、前にだれ..ごめん」 「気にしなくて良いんだよ、今までお互い、其々生きて来たんだから、色々有って当然、前にも云ったと思うが互いに過去は変えられないよ、其れより過去が有って、お互いの今が有るのだから、余り気使いすると、返っておかしくなるよ、もっと、素直に行こうよ」

 「ごめんなさい、リュウは私の過去を決して聞かないのにね、時々リュウのほうが、大人だね、リュウって本当に色々な面を持っていてビックリよ」 考えてみたら、俺が生意気な事云っても、ヨシコは今まで俺を叱った事も怒る事も無かった、余裕なのか?母が子供を見守る様な、優しさに溢れた、目で見詰ている、益々安心と、安らぎを感じる 

 「此処だよ、入ろう」 店に入ると未だお客さんが誰も居なく、主人らしき、人が、カウンターで、ザル蕎麦をズーッズズーッと音を立て、美味しそうに食べていた、俺達はその隣に座り、何をオーダーするか壁のメニユーを見ていると、先ほどの主人らしき、人が「ここのザルで食べたら蕎麦の味が分かって美味しいよ、信州から取り寄せて、私が打っているから」

 薀蓄を語りそうだったので 「私も信州に友達が居ますから、良く聞かされました、じゃあ、大盛のザルお願いします、それと天ぷら別に二つお願いします」 ヨシ子も困り顔で「ザルでお願いします」 本当に蕎麦は美味しかったのですが、たれの付け方まで、うんちく その内客が入りだし、ほっとした、味蔵漬物店.jpg二人して、早々に食べ店を出

 「リュウ、なにか食べた気がしなかったね、リュウは不思議だね、何故か人を引き付けるのね」 「そうかなぁー?、でもそう云えば何時も全然お客の居ないお店でも、俺が入ると、不思議に直ぐに混雑してくるよ、この先に、味蔵(あじくら)と云う漬物屋が在るから、美味しい漬物何か選んで行こうよ、ヨシ子のお母さんにも届けてよ」 「ありがとう、行きましょう」

 この小町通りは何時でも観光客や東京方面の人達で肩を触れんばかり、混雑している、紫いものソフトクリームや近所でおせんべいの焼く匂いが漂ている、ここも有名店で、皆食べながら歩いている、向かいの美蔵漬物店の中に入る此処も人々で込み合っている 「わーぁ、沢山種類が有るのね、珍しい物ばかりで迷ちゃう!」 「味見出きるから、好きな物選んで」 私達の物と、お母さんに届ける漬物を込み合うなか、三、四点ずつ選び、駐車場まで戻る、

由比ガ浜.JPG 海岸(由比ガ浜)まで足を伸ばした、砂浜で二人が写真を写したりジャレ合う様に、暫らく楽しく波と遊んでいると、此方に、賓の有る初老の男が近ずいて、..何処かで遭った様な!如何考えても思い出せない?..俺に 「これ、宜しかったら、差し上げます」 と云って、小さなクスリ入れの様な透明な袋を差し出し「桜貝です、綺麗ですよ、沢山拾いましたからどうぞ」

 俺達二人して覗き込み「綺麗!淡いピンク色で本当に綺麗!」 俺は「これ、頂いてよろしいですか?」 「ええ、どうぞ!貴方、方に..」 「有難う御座います」 「お幸せに!」 ヨシ子お辞儀をしながら「有難う御座います」 その老人後ろも向かずに片手を上げながら、砂を踏む気配もなくスムーズに、浮いたように立ち去って行きました、目の錯覚か!?何か一瞬寒気を覚えた! ヨシ子「綺麗ね!リュウと居ると不思議な事が起きるわ」 思わず、俺は「如何して何だろう?、こんなに他にも楽しそうなカップル沢山居るのに?」 俺のsixth-senseが騒ぐ!

 如何しても心に引っ掛る、その初老の紳士を思い出せない、俺は何か浪子不動jpg.jpgその時一瞬不吉な気持ちになった、其れは、徳富 蘆花 の不如帰 ”ほととぎす” の小説、(病弱の浪子の台詞...人はなぜ死ぬのでしょう)を思い浮かべたからだ、逗子の海岸に石碑が立っている。

    作詞:土屋 花情       さくら貝の歌 

うるわしき 桜貝一つ  去り行ける 君にささげん  

この貝は 去年の浜辺に 我一人 ひろいし貝よ

  ほのぼのと うす紅染むるは 我が燃ゆる胸のさざ波 

    ああ なれど 我が想いはかなく うつし世の渚に果てぬ

 「どうしたの?」 ヨシ子が俺を覗き込む 「うんうん、何でも無いよ、これはね、さくら貝の歌があってね、こ桜貝.jpgの貝殻に二人の愛が実る様に願いを込めて集め、集めたさくら貝の中からお気に入りのさくら貝のひとつに恋の願いを込め、いつの日か願いをかけた桜貝を胸に、憧れの人に、自分の気持ちを告げ、恋の成就は、さくら貝が海に帰るとき、桜貝を拾った海岸を訪れ、成就したら、お礼の気持ちを込めてその海に戻すんだって、きっと、さっきのお爺さん、ヨシ子が余り綺麗だから若い頃思い出して、自分の若き日の失恋か壮絶の悲恋の思い出と重ねたか、俺達、年が離れているから不倫の仲と思ったのか?とにかく旨く達成する事を願い渡してくれたのでは?」 折角の好意だが、俺の心の中で何か納得がいかない

 「また!リュウはおせいじ云って!、それじゃぁ、私達に必要無いね、でも、凄くモダンで賓のある人でしたし願いが籠っているから、それと、この貝殻さくら貝と云うのね、綺麗!リュウとの記念に持って帰るわ!赤ちゃん出来たら、一つずつ、戻そうね」 これ以上考えるのはよそう、せっかくの好意だ「これ、幾つあるんだ、こんなに作るの?」 「大丈夫、リュウなら出来るよ」 「オットセイだね」 「その位、健康で有って望しいから」 又、しばらく二人で写真を撮り波と遊び

 「リュウ、前の奥さんの事だけど、気を悪くしないで聞いてくれる?」 「うん、何?」 「一度、合いに行ってらっしゃい、リュウ何か何時もひっかかっているみたい」 「如何して、俺はもう何とも思っていないよ」 「解かるのよ!、男女の愛ではない事は解っているの、リュウは正直で優しいから、私の事は気にしなくて良いのよ、其の方が私にも良いの、何時も気になって吹っ切れない気持ちのリュウ、心の中でもちゃんと、別れて来なさい、気持ちの整理ついてからで良いから、そうしなさい、私の為にも、リュウ自身の為にも、ね!」 語尾はかなり強くなっていた

 凄いな全て分かっているよ、俺が、幸せを感じれば感じるほど、もう、心の傷は癒えたのか、一人で大丈夫なのか?彼女の事が気になって心配になっていた事も事実だ!それと前の奥さんの父からの資金の提供スポンサーの件、先生に対し後ろめたい 「ご免なさい、その内ね」ヨシ子が決してやきもちや怒りで無いことは、解っていた、ヨシ子は優しい言葉で「そうよ、もうリュウの一部だから、分かるのよ、そんなリュウを感じる時、少し寂しいな!」 俺はもう一度「ごめん!」 言い訳は、言いたくなかたし、見透かされている、俺の気持ちを尊重し、傷付けまいと、時々お母さんかお姉さんの様だ

 本当に楽しいそうに「本当にリュウと一緒だと楽しい事ばかり、今までこんなに楽しい時を過した事無かったわ、リュウ、ありがとう」 「俺も同じだよ!ヨシ子と居ると、安心して自分になれるよ」 「本当、私、勇気出してよかった、リュウを誘う時、本当に勇気出したんだから、リュウたら、考えろって、威張って帰ってしまうだもん、悲しくて泣けてきちゃった、でも、それで、今が有るから、良かった」 「ヨシ子は俺の歪んだ心直してくれたんだよ、今のこの気持ち何時までも大事にしようよ」 「はい!大事にするわ、人を好になるて事は、理性や論理、知性では無いのよね」

 「だろうね、俺と全然違う生活をしている、ヨシ子を好きで好きで堪らなくなったから、不思議だよね、帰り、ちょっと寄り道して、美味しい、ビーフシュチュウ食べさせてくれる、処あるんだ、寄って行こうよ」 「はい、嬉しいわ、行きましょう、 アッハッハァ、リュウはムードでると、直ぐに、お腹に来るんだから

来来庵.jpg  由比ガ浜から八幡宮へ戻り建長寺をへて21号線を北鎌倉方面へ長寿寺近くで駐車場を捜し其処から徒歩で2,3分、店は通り沿いにある来来庵(ライライアン)看板門をくぐり、石段を登り玄関になる、昔ながらの民家ふうで情緒豊かで、店内は左手が座敷、右は土間にテーブルが一列に並び、テーブル席に案内された、「リュウ、本当に色々な所知っていて驚いたわ、凄く風情の在る所ね」 ここの特性ビーフシチュー、サラダ、ライスとデザートに抹茶とレアチーズケーキを注文した 

 ビ^フシチュー.jpg「此処のビーフシチューはかなり昔から始めた様で、軟らかく煮込まれた鎌倉牛が美味しいよ、デミグラソースもまろやかで優しい味だよ」 「隠れた人気店なのね、古い建物と庭との境が素通の様で気持ち良いね」注文した物が運ばれ、店員が「長い事、お見えになりませんでしたね、これ店で初めたばかりの品サービスですからお二人で召し上がれ」 タンシチューだ 「有難うございます、余り来ていないのですが如何して」 「何か貴方、印象ぶかく覚えていました、御ゆっくりして下さい」 「はい、有難う御座います」 「ほんと!リュウって不思議な人ね」 「いや、今日は特別だよ、ヨシ子と一緒のせいだと思うよ、さぁー食べよう」 「はい、本当、軟らかくてとろけそう、ソースもまろやか、美味しいね、今日は本当に幸せよ」 「少しキザかな!俺、ヨシ子の笑顔が一番好きだから」 「そのキザな言葉、リュウだったら許せる、もっと聞きたいわ、日本の男性は云わなさすぎよね」 「俺も抵抗有ったが、外人の処で働く様になったからかな?」

抹茶とレアチーズ.jpg  食事を済ませ、出入り口の会計に支払いに、先ほど食事を運んで来た女性がいた 「リュウちゃん、まだわからないの!私よ」 「え!..だれだったかな?」 「分からないの?中学一年の時の藤森よ、待って居たのに、リュウちゃん結婚したから、あちらの方?..綺麗な人ね」 「あぁ、ヤッちゃん?(泰子)思い出した、成績優秀な可愛い子で俺の隣の席で、確か国語のテスト合わせで隣りと交換した時、俺ほとんど、解らず白紙で、ヤッちゃんがビックリ 「私全部直して上げる」と答え全部書いて回答に丸付けて、全部正解100点にして、俺がそんなに出来る訳無いのに、一緒に職員室で先生に叱られた事があった」でも少し面影が残っていたが本当に女性は変わるんだと改めて感じた

 「そうよ、あの時、結婚してくれるって、私、待っていたけど、先に結婚してしまうから、辛かった!それで前から話のあった、此処に嫁いだの」 「俺そんなこと言ったの?..本当に?」 「本当よ、ズーット待っていたんだから!」 「ごめんなさい、そうだったの、何って云って謝れば良いやら..本当にゴメン、でも良かったね、俺に比べ、こんなに、良い所へ嫁ぎ、本当に良かったじゃぁない!それでさっき変な事、言うなと思ったよ、分からなくて悪かったね」 「もうー、すっかり、忘れているんだから、いいわ、許してあげるから、時々来てね」 「もちろん!許さないって云ったら..あぁ、びっくりした」

 多分前の奥さんの顔も離婚も知らない、離れた所で待っているヨシ子を呼んだ、きっと話をあわせてくれると思い 「えぇと!家内のヨシ子です、変だと思ったが、中学校の時の友達、泰子さん」 「ああ、そうでしたの、それで、妻のヨシ子です、よろしくお願いします、その頃、龍崎にいたずらされ、お困りでしたでしょう?」 「いいえ、凄く正義感が強く、良く助けて頂ました、懐かしく、つい声を掛けてしまい、よろしかったら時々お訪ね下さい」 「はい、ありがとう御座います、とても美味しく頂ました又伺わせて頂きます、それでは、失礼します」 たったこの少しの会話、女は澄まし顔で、俺にはなにか、冷たい火花を感じた

 「リュウ、あの人と、何かあったのかな~、ちょっと変だったよ」 「まだ、中学の頃だよ、ある訳無いでしょう、でも話合わせてくれて有難う」 「女性はもっと大人よ..」 「ヨシ子もそうだったの、モテタでしょう?」 「私は..何にもなかったわ」 俺は冗談らしい話振りで「本当かな?」 フッと膨れた顔で「リュウと違います!」

 鈴鹿行き前々日、ヨシ子「リュウ今回、私、仕事で鈴鹿に行けないから」 「うん、分っているよ」 「それでね、私、リュウのお母様に、お会いして来ますから」 「いいよ、俺と一緒に、別の日に行けば」 「リュウ、ダメです!、もう私達一緒に暮らして居るのですから、遅い位、だらしない事は、ちゃんと報告しなくては、今連絡して下さい!」 俺は首をすくめ「はい!解りました」 おぉ、恐い!、ヨシ子に初めて叱られたが、何故か、凄く安心感に包まれた、俺はお袋に、ヨシ子が1人で訪ねる事を電話で報告し了解を得た

  フー!まだかよ!..此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編5】へ続きますクリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11-3是非お読み下さる事お願いね


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編5】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

   ☆=Story【前編4】からの続きです、是非下欄【前編5】をお読み下さい=☆ 

  《鈴鹿サーキット》  Suzuka Circuit  round 5 (07/12)  

  鈴鹿まで約4時間から4時間半のドライブ、スクールのマイクロバスが家まで迎えてくれた、俺はバスに乗り込み、、明日からのレースに備え後部座席にて体を休める事にした、バスは竹田君の運転で途中監督と変わるらしい、バスの中ほどで監督と軽く会釈を交わし、監督を囲む様に生徒達が8人位、各々俺に向かって、宜しくお願いしますと挨拶 「やぁ、こちらこそよろしく、監督から指示があったと思うが、皆にはタイヤ交換や給油お願いするから、慌てず、的確を重視して」 生徒達頷きながら「はい!ピット作業は少しでも早くでしょう」 「あぁ、そうだが、あくまで安全第一に、怪我の無いように」 生徒達「はい、頑張ります」 彼等は今からエキサイトしている様子だ、 監督は生徒達に説明や指導の為、生徒達のグループに混じって席をとって生徒の質問に答えていた、俺は一番後ろの席に移動した

 いつも竹田君の運転席の隣に久美ちゃんが居るのだが、今日はおかしいなと思いながら一人ぽつんと後部席にいる、久美ちゃんの隣に座り 「よう!宜しく、相変わらず可愛いね」 久美ちゃん、俺の顔を見てホットしたような笑顔で挨拶代わりに「また!誰にでも云うんでしょう、何か飲みますか?缶ジュースかコーク、コーヒーがありますが」 「ありがとう、じゃー、コーヒーにして」缶コーヒーを受け取りながら「俺、少し寝るから、夕飯の時起して」 コーヒーをサイドホルダーに入れ、薄手のチームの宣伝の入ったパーカーのフードを頭から顔を隠す様に被り、そのまま暫らく寝てしまった。

   東名高速の海老名SA(サービスエリア)で夕方5時半頃起され、目の前に久美ちゃんの顔が余りに近く迫って見え驚いた「おぉ!ビックリしたな、美人のお化けが迫って来て」 「もう!どうせ私はお化けでしょうから、食事を採るそうよ」 「美人って云ってるよ」 俺の言葉を無視して「さーぁ、行くわよ、もう皆さん降りましたよ」 全員夕食を取る事にした様だ、生徒達と監督でレストラン街のダイニン海老名SAうまいもの横丁.jpgグCASAに決め、久美ちゃんは俺の隣で食事を取ったが何か様子がおかしい、「久美ちゃん、竹田君の処で食事したら?」 久美ちゃんはチラリと竹田君を見て「いいの、此処で!」 何かおかしいが、まぁ、いいか、何か気まずい気配を感じ、とにかく話題を換え話しをしなければ、さっきのお化けの件もあり「久美ちゃん、相変わらず綺麗だね」 久美ちゃんは伏せ目がちに「また、お世事ばかり・・後で相談が有るの、聞いて下さい」 何か深刻そう 「ん・・!、俺で良いの?」 生徒の達は、友達も出来た様で各々話しに弾んでいるようだ、

 賑わいだ食事も終わり生徒達は各々話の合うグループを作りマイクロバスに戻り席に付いた、俺は竹田君に対して何か勝手に気まずい気持ちになり、竹田君に向かって大声で「タケちゃん、運転変わらなくて大丈夫か?」 生徒達の質問に答えていた監督慌てながら「俺が変わっても良いぞ」 タケちゃん、運手席に付きながらバックミラーに目を移し「大丈夫です、このまま行けます」 監督、生徒達の間の席に戻り「疲れたら、何時でも言え、変わるから」 またクミちゃんは俺の隣の同席に座ってきた、

 高速道路でタイヤの擦れる音や風の音で話し声等、余程大きくない限り周りには聞えないと思うが、久美ちゃん小さな声で俺の耳元で呟くように「ねー聞いて下さい、竹田君がレースクイーンの人と付き合っている様で、いくら問いただしても話してくれないの、如何したら良いか解らなくて」 何か入り込んでいる様子だ「そう云う話、俺には無理だよ、自分の事も良く分らないから」 久美ちゃんは耳元で「他に相談出来る人、いないの、お願い!」悲願するように呟いた 「俺が何と云おうと、竹田君の気持ちだろう、俺じゃ如何する事も出来ないよ」 久美ちゃんは目で必死に訴え「ねー、おねがい、話だけでも・ね!」 「う~ん、今回のレースが終わってから、詳しい話く聞よ!、それと久美ちゃんには悪いと思うが、二人の問題、両方の話聞かなければ、ね」 悲しそうな目で「レース前にこんな事、御免なさい、レース終わった後でお願いします」

 俺はヨシ子にも聞いて、むらう方が良いと思い「じゃあ、帰りに家寄ったらいいよ、女同士、ヨシ子に相談したら?その方がいい考えが浮かぶと思うよ」 久美ちゃん元気に「はい、お願いします」 「あぁ!俺、少し休むから」 「御免なさい、どうぞ休んでください」 夕べはかなり遅くまで起きていてまた眠気が襲ってきたパーカーを頭から被り寝てしまった、どの位寝たのか?、クミちゃんにゆり起され、俺の携帯が鳴っている事を告げられた、ヨシ子からだ 「はい」 聞きなれた、元気そうなヨシ子の声が聞えた「今、どちらですか?」  

  外を眺め久美ちゃんに「今何処?」 「豊田市だと思います」 俺は携帯に向かい「名古屋の豊田市辺りだよ、如何したの?」 「別に何も無いけど、リュウの声聞いて寝ようかなと想って」・・急に声のトーンを変え・・「何か寂しいの」 「俺もだよ」 「今までリュウから愛しているって聞いた事ないから、今聞きたいの!」 「ええ!そうなの、云っている様な気がしているけど?それより俺と一緒にいて判らないの!」 「リュウの鈍感!今聞きたいの!言って!」 何で今なんだよ!俺は何か気恥ずかしく、小声で「えー!じゃぁー、愛してる」 「じゃぁー!、じゃぁーでは無いでしょう!」 益々小声になり「うん、..愛しているよ、..ヨシ子が一番分かっているのに」

 全く!愛の安売りじゃないよ、価値が下がる様な気がした 「リュウ恥ずかしいのでしょう?女は分かっていても、確かめたい物なの!、これで眠れるわ」 「まったく!愛の安売りじゃないよ」 「リュウは直ぐにカーとなるから、気を付けて冷静にね、じゃーおやすみなさい」 「もー意地悪いんだから、あのさー、久美ちゃんが何か相談があるって、帰りに家に寄りたいって」 「そう、分ったわ、リュウ意地悪では無いのよ、純粋に確かめたいから、女心よ女は時々寂しくなるのよ」 俺は周りを見ながら小声で「愛しているよ!じゃぁ、切るよ」

 電話を切ると、久美ちゃんが俺の心を探る様に「まぁ!幸せそうで、羨ましいわ」 「ごめん、へんな話、聞かしちゃって、全く照れるよな!、それより..余り、深刻に考えるなよ、もっと、色々見たりして、其のうち、良い事もあるよ」..ヨシ子だったら、如何対処するのだろうか? 話を逸らし大きい声で「竹田君運転変わろうか?」 監督達も起してしまった 監督「俺が変わるよ!」 竹田君はサイドウインドウに右片肘を付き前方を見詰め左てをハンドルに添えたまま「大丈夫です、このままサーキットまで行きます」 目を閉じていた監督ねむそうな目を開き「そうか、無理するなよ」 車内の生徒達は寝ている者や相変わらず話に夢中な者もいる 

 俺はヨシ子の電話で目が覚めてしまい、クミちゃんに話しかけた「竹田君との交際やめるつもりは無いでしょう?」 「ええ、まあー」 「壊すつもりなら良いが、続けたいのなら、もう何も云わないこと!、黙って助手席で竹田君の眠気覚ましに、手助けしたら?」 「如何してですか?許せと言う事ですか?」 「許せなかったら如何するの?止める事が出来るの?」 久美ちゃんは、俯いて答えが見付からない様だ「・・・」 俺は追い討ちを掛ける様に「知って何になる?、互いに嫌な思いをするだけだろう、本当に失いたくなく続けたいのなら、今竹田君の助手席に座り道案内の手助けしなさい、何か解った処でどうなる物でもないよ、惨めに成るだけだよ!、心無い人を無理やり引き戻して攻め立てても虚しいだけと思うけど」俺は追い立てるように「今は黙って行きなさい、本気だたら、久美ちゃんの処に戻ってこないよ、きっと、謝ってくれると思うよ、其の内、久美ちゃんの良い処解ってくれるよ、変な意地を張らずに一度位、許して上げたら?」

 俺の話した、意味がやっと少し理解出来た様で、久美ちゃんはしぶしぶ返事をした「はい、そうしてみます」 「うん、そのほうが良いと思うよ、行きなさい」 重い尻を上げ「じゃぁ、話してきます」と云って竹田君の運転する後ろの助手席に移り、何やら竹田君と話始めた様子、一安心、俺の昔の経験から男の気持ちが解るから、出来てしまった傷を突いて広げた処で、返って反発を覚え修復出来るものも出来なくなるだけ、相手の心が自分に向かわなければ、なんの解決にも成らない、その辺、理解出来ないのかな? 

 俺の横の座席が空いたのを見極め生徒の一人が隣に座りたいのだろう「此方の席空いたんですか、移って良いでしょうか?」 「ああ、どうぞ」 生徒、急いで移動して隣に座った「龍崎さんは、なぜこの道を選んだのですか?」 「何故って?、レースが好きだから、それに走る為だけに無駄を省いた車に魅力をかんじるだよ」 「好きだからと云って、何処まで出来るか、解らないでしょう?」 内心何と優柔不断な奴だと思いながらも、その生徒の目は、初めての経験に輝いていたが、不安なのかな?それとも何か迷っているか?「レースが好きなんでしょう?」 「はい」 「まだ、レース始めたばかりでしょう」 「ええ、ですが」 「ですがって?」 「いえ、何でもないです」 「とにかく、やるぞ、と云う気迫が無ければこの道は進めないよ、憧れやカッコ良いだけなら止めた方が良いよ、映画や漫画の世界では無いよ、見た目は派手な世界だが、地道な努力有って結果が得られるのだよ、スクールに入ればレールに乗って行けると思っているの?」 生徒は慌てて「いいえ、それは」

 「君は車の運転、人より才能が有ると思ったからでしょう」 「ええ、そうですけど、此処に来てもっと上手い人が沢山いる事が解りました」 「だから、..辞めるの?、ナニクソと思わないの、何時か連中を負かしてやると云う気が無ければ駄目だよ、初めから上手く出来る人はいないよ」 「ええ」 「此処に来てどれだけ吸収できるか、先生がよく教えてくれなかった、そんな事知らなかったとか、云っていないで、走りが早くて、上手い人の走りをその目で視て自分と違う所を覚えるのだよ、それでは何をやっても駄目だと思うな」 輝きを増した目で俺を見つめ「はい、わかりました」 何時もより到着する時間が長く感じた、ようやく鈴鹿についた、クミちゃんも機嫌よく竹田君と話をしている、本当に、あ~ぁだ!

suzukajpg.jpg 俺達がマイクロバスから降りるのを待ちかねた様に孝ちゃんが走って来た「リュウ、遅かったわね、マシーン準備出来ているよ、それとキャンピンカーも綺麗に整理して掃除したからね」 「有難う、ご苦労さん、やっと孝ちゃんの顔見てホッとしたよ」 孝ちゃん顔をほころばせて「もうー、リュウたら”ホット”したなんて嬉しい事云ってくれるわね」 「明日朝早くコース下見するから、レースカーを見てから今日はもう休ませてむらうよ」 孝ちゃんは嬉しそうに「分かったわ、それをやるからリュウはレース早いのよ、マシーンは確りチェックしてあるから、ゆっくり休んでね」 「ありがとう、監督に伝えてね、じゃぁ、おやすみ」 俺は休む前に一人ガレージに向いマシーンを長年の癖で手で押し付け車を軋ませ、タイヤの緩みをチェクして乗り込みシートに身を預けハンドルに手を置き、ぼんやり薄暗くなった霧の中のコースに思いを巡らせた

 翌日金曜の朝、何時もの様にコースを確認とチェックに歩いた、複合カーブは状況により異なるが、一般的には最終カーブ出口を少しでも速度を上げ抜ける事だ、以前、走っているが、ここ暫らく走ってはいない、コースの看板や路肩等少し変わっていたが、さほど違いは無い、携帯が鳴りヨシ子からだ「お早う!」 「リュウ、おはよう、良く眠れた?」 「うん、ヨシ子は?」 「リュウの声聞いたから大丈夫、其れより朝食、消化の良いもの食べなさいよ、それとリュウは短気だから、冷静にね」

 「そんなに短気じゃぁないよ!、そう云えば食べる、で思い出したが、少し足を伸ばせば伊勢湾、海産物が美味しいよ、牡蠣や蛤、アワビ、伊勢えび、浮かんで来るだけでも、お腹空くよ、今度ゆっくり、ヨシコ子と来たいね」 「本当?期待しているわ、私、今日から忙しくなるから、兎に角冷静にね..いい!解かった?」 まるで母親だ、其れも悪く無い 「うん解かっているよ、其れより、俺のおふくろに会うの一人で、大丈夫?」 「リュウのお母さんだもの、大丈夫よ、心配しないで、それじゃぁ、リュウこそ落ち着いて冷静に頑張ってね」 「あぁ、愛しているよ」云はなければ判らないとヨシ子に言われ、少し抵抗も有ったが、あれ以来、俺は敢えて口に出すよう心がけている 「ウフフ、嬉しい!私もよ、愛しているわ、気を付けてね」

 ひとと通りコースのチェックが終わり、朝食に向かった、「龍崎君!」 他の一流チームの監督から呼び止められた 「龍崎君、君来年うちのチームに来ないかね?」 「ええ!急に言われても」俺は突然の言葉に戸惑いを覚えた 「返事は今で無くて良いから、今、君は失礼だが、契約金幾らむらっているの?」 「ええまあ、幾らと云うか」 その辺は心得ているのでしょう「まあ、いい、悪い様にはしないよ、考えておいてくれ」 と云って、立ち去って行きました、俺は、暫くポカンと監督の後姿を目で追っていたが、我に返り、小さくガッツポーズ、”よしっや!遂にやった!!”俺のドライブ・テク認めてくれたんだ!本当に嬉かった、だが反面、今のチームを捨てる事が俺に出来るのか?頭を過る、いろいろ考えるのはよそう、今はこのレースに集中だ!

 朝はサーキット内の食堂”サーキット ダイニング”そこはバイキング形式でボリュウムもある、我らチーム全員集まり、スクールの新人生徒達は、いよいよ実体験も兼ねた研修にはいる、例の如く、食事を済ませ、dinning-img.jpg監督の挨拶、皆の紹介が有り其々生徒達の持ち場を指示と練習に入る、期待と不安で生徒達は微かに昂揚してる様子、俺は午前中一時間ほど午後二時間のプラクテス走行があり、井原君や孝ちゃん達と車の調整走行(adjustment &  test-drive)の繰り返し、かなり俺好みに仕上ってきた、メカニックの二人には感謝、

 俺は孝ちゃんに尋ねた「ねー、コウちゃん、彼女欲しくないの?」 孝ちゃんキョトンとした様子で「私?正直、女性には興味ないの、リュウ知ってるくせに!」 「御免、本当に俺、解らないから、聞いているの、それで寂しく無いの?」 訴える様な目付きで「寂しいわよ!、でも、自分でも如何する事も出来ないの、..リュウ、愛してくれる?」

 「おいおい!俺は無理だよ、女好きだから」 「冗談よ!、リュウは本気に聞いてくれて、嬉しいわ」 「苦しんで来たんだね、誰か孝ちゃんを理解する、良い人見つかると良いね」 「いるわよ、リュウがいるじゃない!分かっているわよ、何も言はないで、片思いそれでも良いの、このままそっとしといてお願い!ね」 「全く..分かったけど、俺には如何する事も出来ないよ!、早く相談出来る人見付けろよ!」 珍しく井原君が私的な事に重い口を開き、ぼそっと「そうだよ、誰かキットいるよ、良い人見つかると良いね」心配そうに語りかけた

 孝ちゃん、少し涙ぐみ「バカ!皆優しい事云はないで、今まで皆に片端者あつかいされ、本当に嬉しいの」 ・・俺は急に美奈子の事を思い出し「孝ちゃん、美奈子だったら、孝ちゃんの事、人間で最も進化した人だと、きっとその様に云うよ」 孝ちゃん大きな目をもっと見開き「リュウ、美奈子ってだれよ」思わず美奈子と云った事を後悔した「孝ちゃんの知らない人、俺も孝ちゃんは片端、何て思ってもいないよ、本当に人間の一番進化した形ちなのかも知れないよ」 「進化!なんって、おせいじでもうれしいわ」

 俺は井原君の言葉に驚きと感動を思え、井原君の重い口が開いたことの嬉しさで、二人に向かって「ようし!今日はマシーンの調整も順調に仕上がって来たし、これ位にして、スクール宣伝ブースの監督達の所に手伝いに行こうか」

 鈴鹿紹介.jpg久美ちゃんと竹田君が仲良くスクールの宣伝ブースで働いている 「クミちゃんもう良いのか?」 「はい、おかげさまで、気の迷いだったそうです、誤ってくれました、でも何か納得出来ないわ!」 「クミちゃん!黙って、許してやれよ」 「はい、有難う御座いました」 コウちゃん「リュウ、久美ちゃん何か有ったの?」 「なんでもないよ、犬も食わないってやつ」 コウちゃん、そう云う処察しが良い「なんーだ、知和喧嘩!仲が良いから」 「バカらしい、そんなところだよ」本当は大分深刻だった、「タケちゃん、もう心配かけるなよ!あんな、良い子はいないよ、大事にしろよ!」 「はい、心配掛けました、有難う御座います」 孝ちゃん「リュウ大変ね、でも皆リュウちゃんを慕っているから」

 「ありがとう、監督は経営の事で頭使っているから、少しは手助けしなければ」 「だからリュウの事皆好きになるの」 「明日はタイムトライアルだから、頼むよ」 孝ちゃんは俺の耳元で「リュウ!私知っているのよ」 「何が?」 「引き抜きよ!、私、さっき聞いちゃった、凄いのね!」 「まだ、何も分からないよ、皆には絶対内緒だよ!バラしたら許さないよ!」 「その位、分かっているわよ」

 俺は孝ちゃんを皆と離れた場所に連れて行き 「俺の口から監督に話すまでは、誰にも云うなよ、それと孝ちゃん女の気持ち判るでしょう?」 「ええまあ、それが何か?」 久美ちゃんと竹田君の事を詳しく説明し、俺が久美ちゃんにアドバイスした事が良かったか尋ねた「リュウ、それで良かったと思うよ、責めれば、責めるほど男の心が離れてしまうのに、女は自分以外の女性は許せなくなるのよ、それで彼を攻め立て、その女性を彼の心から抹殺したいのよ、自分の方が絶対上と思いたいの、人には、優劣を付けられないのにね、それが女心、色々な好みが有るのにね、大丈夫よ久美ちゃんはそんなに馬鹿じゃないから」 「なら良いが?恐いね!」 「そうよ、リュウも気を付けなさいよ」 

 「リュウ、久美ちゃんは本当に大丈夫よ、..それより、リュウの婚約者、ヨシ子さん、リュウが惚れたの解るよ!普段は自分に厳しい人だが、リュウには完全に女になって凄く素直で可愛いい人ね、あんなに可愛い人いないよ、その上リュウを見つめる目、可愛い子供を守る様な、あれは母の目よ、悔しいけど、負けたわ、リュウ、大事にしなさい」 「俺は餓鬼だからな、本当にそう思ってくれるの?ありがとう!」 「当たり前でしょう、美奈子って誰か知らないが、男は直ぐに浮気するから、リュウ、ヨシ子さんを泣かさないでね」 まずい事云ちゃった、言い訳は尚、へんに思われるから、触れず「オォ、ありがとう、大事にするよ!」 孝ちゃんの追及が無く、ポットする。

 翌日、天候も良く暑い位だ、Free Practice(フリープラクテス)1’42.522秒で四番手始めてのコースではsuzuka.jpg上出来だ、監督「リュウ良くやった!午後からQualifying(予選)だぞ、気を抜くな」 「はい、皆の御陰です、何時も夜遅くまで有難う、井原君とコウちゃん、S字カーブから後の逆バンクでフロントが流れてしまってスピードがそのままキープ出来ないんだ、ダンロップコーナーまで、此処が一番重要だから」 コウちゃん「解ったよ、フロントウイングもう少しダウンフォース掛けるね、リュウは、お昼食べて、少し休んで直ぐ調整出来るから」 「ありがとう」 午後から三回の一番良いタイムが採用される、ヨシコの言葉を思い出し冷静にを心がける孝ちゃんの調整が良く、1’42.036秒貴重なタイムアップ、三番手に決まり、上々だ、これで、明日の決勝レースに望める 孝ちゃん「リュウ凄いわね、前のドライバー何時も10番前後よ」 「そうだったの?、コウちゃん達の調整が良かったからだよ、有難う、暑さで負けない様にレーシングスーツに風入る様にしてくれて、ドライブし易くなったよ、それに井原君のエンジンの調整力は抜群だよ、立ち上がりも以前より良くなったよ」 「リュウの実力よ、だから..」 俺は慌ててコウちゃんを睨み付けた

 いよいよ本番、suzuka-s.jpg7月12日鈴鹿、天候:晴 コース:ドライ 気温:30℃梅雨明け湿度も高い俺達ドライバーに採って暑く辛いコンデションの中で43週の長丁場だ、孝ちゃんと井原君がコース上のマシーンサイドで俺を迎え、例の如く俺がマシーンに乗り込むのを待って、安全ベルトを締め、確り締まっているか確認後、俺に向けて孝ちゃんが親指を立て、グッドラックの賭け声がヘルメットごしに聞えた、俺も親指立て返事の合図を送る

 エンジン スタートの合図があり、俺はスタートボタンを押す”キュルキュル、フォフォーンフォーンフォーン”レース用エンジン、高回転の独特な音が一斉に響く、バッテリーを外し、各チームのメカニックやレースクイーン達がパドックに引き揚げる、スタートランプがグリーンに変りフォーメーションラップがスタートした、先導車に従いRPMパターンをバーンアウトにセットし俺は時々蛇行運転しながらニュタイヤの皮を剥き同時に適正温度に暖め路面との接触を良好に保つ、監督から路面温度44℃と聞かされた少し高い、車の油圧、水温、等確認しスタートラインの三番グリッドに付く

リュウヘルメット1.jpg この緊張感は大嫌いだ!、何時もの事ながら回りのドライバーが気になる胸は最高に高鳴る、本当はライバルは自分自身、先ず自分を超える事からだ、やっと其のことに気が付てきた、13台全マシーンがグリッド定位置に付いたであろう、バーンアウトからスタートにセットする、クラッチバドルを引いて、シフトバドルでギヤーを入れる、アクセルペタルを踏み込む、エンジンの回転はリミッターで制御されている、あとはスタートランプを凝視、スタートを待つ、嫌が上にも緊張が最高潮になる

 スタート合図のレッドシグナルが付き始めた、一斉にエンジン音が高鳴る、全ての不安が掻き消されランプに集中する、1・2・3・4・5ブラックアウト、よし行くぞ!同時にクラッチバトルをはなす、上出来のスsuzuka-start.jpgタートだ!そのままインをキープしサイドミラーで後続を確認、俺より少し離れている、3番手で第一コーナーを順調に無事抜けた、スタートのドキドキ感も消え、獲物を追う闘争心の狼に変わる、監督から無線だ「後続4番は少し離れている、スタートでフライング、ドライブスルーペナルティだ、落ち着いてそのポジションをまもれ」監督の声など耳に入らない、前車との差が少しずつで有るが近ずく、俄然闘志が湧く、23週で2番手がピットイン給油だ、25週でトップがピットへ、監督よりピットに入れの指示が「次の週に給油とタイヤ交換だ」給油タイヤ交換も順調に進み3位をキープしたまま前車を追う、32週目「よし、射程圏内に入った、プレッシャーを掛けるぞ」アウト側から、並び掛ける

 突然4速ギヤーァが入らなくなった、「なんだ!如何した!」素早く何回もギヤー チェンジを試みる、だめだ! 「監督、4速からギヤーが動きません」 「何とか走れるか?」 「はい」 「そのまま走行キープしろ」 一気に7~8秒ほど落ちる4,5番手に抜かれてしまう、「あーぁ、また駄目か!、何て事だ!」 監督「リュウ、諦めるな!最後までやれ!」 「はい、クソ!何とかなってくれ、チキショウ!、入れ、入れよ!」..バドルで何回もシフトチェンジを試し続ける、自然にマシーン(車)に話かけていた「お願いだ機嫌を直してくれよ、如何したんだ、頼むよ!」

 其の度、幾度もギャーチエンジ、偶々何かのショックで、噛んでいるギヤーが外れてくれたのだろう37週目に回復した「ヨシ!ラッキー、監督ギヤー直りました!行くぞ!」いいぞ、其の調子、頑張ってくれよ..又マシーンと話していた 「よし、良いぞ、あわてるな!そのまま、いい子でいてくれよ!少し調子を見てからだ」 監督からの怒鳴り声がイヤホンに響く「リュウ、熱くなるな!冷静に!一周位は確認を取れ」 「大丈夫です、行きます!」

 今度は頼むよマシーンに話しかけ猛アタックを開始、2、3周すると五番手に追いつき、最終コーナーから直線に入っり、ピッタリ後に付きスリップストリーム(slipstream)に入る相手の空気抵抗の少ない力を利用して牽引して頂きエンジンに負担をかけず追随する、第一コーナー手前でイン側に飛び出す同時に五回まで使えるエンジン・リミッターを外しアクセルを目一杯踏み込み、上手く追い越す事が出来た

 一周後前車四番に追いつき、冷静に1週後ろに付いてプレシャーを加える、よし!このS字カーブで抜ける、カーブ入り口でアウトに飛び込む、ブレーキを我慢して、頭一つ出た、このままキープだ、此処はお互い譲れず闘争心の激突だ、次のカーブうまくインに飛び込む車体がアウトに流れる、相手も抜き返そうとアウトから突っ込んで来る、フロントタイヤが軽く接触、反射的にカウンターステヤーを充てリアが滑る事を押さえマシーンを立て直す、マシーどうしが触れそうに迫るが何としても譲れない!何とか頭一つ出る、相手も並び掛けて来るが、ねじ伏せ逆バンクを抜ける事が出来、何とか抜く事が出来ダンロプコーナーを直線的に走り、最短距離で少しでも後続車を引き離す

 ..ヤッタぜ!、此れだ、このバトルが快感だ..三番の獲物を追う、前車の真後ろに迫ったが相手も強く百戦練磨、俺の攻撃を上手く左右を押さえる、また監督からの指示だ「リュウ、聞いているか!冷静にしろ、テンション上がりすぎだ!」 「ハイ」返事はしたものの俺の闘争心に火が付き最後まで追回しバトルを続け、幾度となく並びかけたが鈴鹿ピット.jpg抜くまでに至らず、悔しさが残った43週、4番でチェカーを受けた、

 監督の激励の声がヘルメットの中に響きわたる「リュウ、良くやった!良くやった!惜しくも賞々台には上がれなかったが上々の出来だ、これでスポンサーも納得するよ」 例によって表彰式と全チーム集まった会食パーティーが行われ、他チームとの交流の場である、大分盛り上がっていた、皆から良いレーサー見つけたねと云はれて北原監督も上機嫌、中にはあからさまに家のチームで引き取りたいとまで出る、和やかな時間を過した後、監督やメカニックに後片付けや、レースーカーの運搬等お願いして、先に帰りたい生徒達とタケちゃん、久美ちゃん達とで帰る事にした

 監督から呼び止められ「リュウ、解っているだろうが熱くなるだけでは、レースに勝てないぞ、お前の悪い処だ!気持ちは解るが、もっと冷静に考えろ!」 「はい、すみません気を付けます」 監督の言う通りだ、結果的に最後まで走りきらなければ意味が無い、だがこれがレーサーの心情、ヨシ子にも注意されていたのに、闘争心に支配されてしまい冷静な判断に欠けてしまった、駄目だな!、もしかして俺の心に他のチームの監督にもっとアッピールする気持ちが働いたのかも知れない、メカニック達の最高のテクノロジーと監督とドライバーのヒューマンの結合で有る事を俺は忘れていた

 井原君と孝ちゃんにお礼を述べ早く帰りたい生徒達と帰途に着いた、マイクロバスはタケちゃんの運転で助手席に久美ちゃんが座りようやく定着指定席に収まった、もう家により話をする必要は無さそうだ、俺は生徒達と雑談して、生徒達はレースの感想を話していた、生徒の一人が離れた席から感激した様に「龍崎さん、マシーントラブルで残念でしたね、でも後半の追い上げ凄いと云うより、あのバトル執念を感じました」 俺は「君達も戦へば、解かるようになるよ、勝たなければ、意味が無いから、まだまだ、だよ、今日監督から、注意されたよ」 途中夜食を取り今日のレースの展開を生徒達の興奮した話し合いに、俺もレースを始めたばかりの頃を思い出していた、

 夜11時に横浜金沢柴町のヨシ子のマンションに着いた、生徒達とタケちゃんにお礼を言い別れ、ドアーホーンを押し「鶴見さん!ハート付きの電報です!」 「ハーイ、リュウ今開けます」 ドアーが開き、どちらかとも無く抱き合った

     《結婚》

 俺は気になっていた事を先ず訊ねた「おふくろ、如何だったの?」 「リュウ、リュウから報告して」 「分かったよ、とにかく、コーヒー飲みたいな、荷物を片付けてくるから」 その間にコーヒーを入れてむらい、一息入れ飲みながら、マシーンが故障して4位になった事、竹田君達の事、他のチームからの契約の誘いの件を話した 「凄い、リュウ良かったね、観戦したかったし応援したかったな」 ヨシ子は冗談顔で 「リュウのマネージャーやらなくちゃ、それは嘘よ、自分の仕事有るし、そんな事出来ないよ、其れより、リュウに嫌われそう」 

 「それで、ヨシ子はどうだったお母さん、なんだって?」 ヨシ子が母との会話を思い出した様に顔が綻び「私、お母様の事、大好きになっちゃた」 「あんな、厳しいお袋、なに云われたの!」 今度は俺を説いて聞かすように「リュウは、甘えていて、お母様をちゃんと見ていないから、 お母様、云ってらしたわ、リュウには、一番甘えたい時期に、お父様が無くなり、可哀想だったが、三人の育ち盛りの子供を抱え、それ処では無かったて、お母様の実家の方の援助も有ったが、子供達全員大学まで行かせて」 「お袋、そんな事まで話したの?」 「そうよ、お兄さん、東X大の大学院で教育学研究課程修了、次期教授候補だそうですね、今は教育心理学を研究されているのですね、お兄さん夫婦にも一緒に会いました、優しい方ですね、リュウは何も私に話さないから」

 「そんな事、俺とヨシ子に関係ないから」 突然、今までに無いキツイ声で「関係あります!リュウが私の家を尋ねた事!、私がリュウの家を訪ねた事!、両家族の協力が必要だからでしょう!」 「そんなに、怒らなくても」 少し押さえた様に「リュウ、怒っている訳で無いのよ、現実に、私達二人だけで、生きているのでは無いのよ、それにお母さん、こんな事も言っていたわ、健司は変った子ですがヨシ子さんならあの子の事、理解してあげられる人だからって」

 今度は俺を諭すように「ごめんね、リュウの気持ち判っているの、二人の愛情の問題だから、家族の自慢やそんな物でリュウを好きになって欲しくないと思ったからでしょう?良く判っているわ、そんな事で、私が変わると思ったの、..でもねリュウ、両親がいて私達がいるの、二人だけでは、リュウも私に会う事が出来なかったのよ、リュウがレース出来る事も皆さんの協力が有り関わっているからでしょう、もっと大人にならなくては、だめよ」 初めて、こんなに叱られてしまったが、あまり腹は立たなかった、「悪かったよ、ごめん」 

 「それでね、私も精神医学を習いたいとお話し、お兄さんと話が盛り上がり、楽しかった、これから色々聞けるわ」 「あぁ、兄と兄の奥さんは、お母さんの学習塾も手伝っているの」 「お姉さんも名古屋で高校の教師だそうね、教育一家ね、でも今の教育方針は嫌いですって、ただ、外面の形だけの理想を追いすぎているって、只外国の教育は良いと採り入れて、最っと日本の昔からの教育の良さ、何故良いのか悪かったのか、見直し考えるべきだ、と云っていましたよ、 私もそう思います」 「だから龍崎家、俺だけ、異端児と云ったでしょう、そんな家庭に息が詰まりそうで、お母さんに悪いなと思いつつ何故か自分に嫌悪感を持ちながらも母や家族に尚更反発ばかりして」 

 又俺を優しい目で「お母様がね、健司は一番甘えん坊で、なかなか、乳離れしなくて困り、オッパイにお塩を塗ったんだってね、それと人見知りが激しく、何時もお母様のお尻の後ろに隠れていったて、あの学生を叱った人が今では考えられない、可笑しくなっちゃいました

 でもお兄さんが、話して下さって、お兄さんが高校三年の時にイジメにあって、二年も違うと体力差が大人と子供位違うのにリュウが、不良の番長達に鉄パイプで大怪我さした事聞いたわよ、それ以来お兄さんにイジメは無かったって、その代わり、お母様、怪我をした家を訪ね大変だったって、話していましたよ」 俺は少し恥ずかしい思いで「まったく!そんな事まで」

 「お母様がね、何処が気に入ったか判りませんが、ヨシ子さん、貴女で良かったわ、健司をお願いしますって、言って頂いたのよ、本当に嬉しかったわ」 「ほんとう?あのおふくろが、そんな事云ったの!」 

 実は、一昨日、土曜の夜、お母さんより電話で話があり、そんなに驚いては居なかった、..”「お前にはもったいない位、お前の様な、糸の切れた凧のようにふらふら、何時までも子供の様にヤンチャは、やっていられませんよ!、ヨシ子さんに確り助綱を握って頂かないと、素晴らしい人です、確りお願いしましたから、大事にしなさい」”..と云ってきた、お前は二度目で、ヨシ子さんは言い出し難いと思うから、女性は結婚式楽しみにしているからお前から云って上げなさと、聞かされていた

 俺はヨシ子に改まって「俺まだ正式にヨシ子に申し込んでいないし、返事むらっていないよね!..ウッウン!エート、俺と結婚してくれる?」 ヨシ子は俺の気配で察したのか「はい!不束ですが宜しくお願いします..リュウ、本当はもっと以前にムードのある場所で云って欲しかったなぁ」 「だよね・・!」

 「でも、あの雨の富士でお互いの確認取ったから、リュウの腕時計戴いたとき、どの位高価な物か知っていたし、リュウに断られると思ったわ、それを何の躊躇もなく私に預け、私を本当に信頼しているのだと感じたの、それにあの時、リュウのレーシングスーツ姿、カッコよかったよ、リュウに後から抱きついた、あの時に決めたのよ、リュウはレースの事で頭一杯だったからね、あの時云って欲しかったな」 「ごめん、何か苦手でね!このまま、ズルズルになるのが嫌いだからハッキリさせたかっただけだよ、そういえば、何時もその腕時計しているね」 「そうよ、約束だもの、それに何時もリュウが側にいてくれているようだから」・・・

 「本当ね、言葉って大切よね、少し期待外れだったけれど、雨の富士で私、決めたのよ!これでケジメが付いたわね」 「そうか!それで、俺って鈍感だねムード台無し」 「いいのよ、リュウのそんな処も好いのかも」

 「ヨシ子、結婚式如何するの、何か希望有るの?ウエデングドレスとか、日本式か教会?」 急に抱きついて来て「リュウ、嬉しいわ!ありがとう、..予定ねー?、カレンダー見て、リュウの都合も有るし、ゆっくり、決めようね」 「ねーリュウにも聞いて頂きたいの」改まった、感じで俺に訊ねた 「何ですか?」 

 ヨシ子は座っていた椅子に姿勢を正す様に座り直し、真剣な眼差しで「私の学校の事、お兄さんに会って、益々勉強したくなったわ、心臓病で手術待ちの子供達、国内にドナーが中々居なく、外国でも絶望的に待たなければ、いけなし経費も凄く掛かるの、そんな子供達の精神的、心のケヤーをしなければいけないと、益々強く思い、本音を云はず都合の悪い物、汚い物には蓋をしてしまう人たち、思春期の悩みや患者の悩み、先ず自分自身を見直し対処しなければいけないの」

 ヨシ子は考える様に息を深く吸い込み意志ある力強い目で俺を見詰め「それで、リュウ此れは、真面目な話よ、以前リュウが哲学者みたいな顔をして云ったでしょう、例えば夫婦が肩を揉みあって、其処が良いのとか、そこじゃぁ無いよとか、平気で言うでしょう、でも殆んどの人達の性行為はタブーしされ、ほとんど話し合いは無いと思うの、特に女性は、不安で自分が正常で大丈夫なのか?こう感じたのよとか、こうして欲しい、これでよいのか?お互い話あった事は無いと思うのよ、

 男も女も自分は正常なのか?その事で悩んでいる人が多いの、でも相談する場所も相手もないのよ、現に院内の若い看護婦からも不安で時々相談があるの、でも、私自身何も知らないから、答えようが無かったの、お互い愛情があれば、相手の為になりたいと思うでしょう、だから私もリュウに感じた通り伝えたかったの

 リュウは意外と知っていたから本当に良かったけれど、私、自分の体、変になったって戸惑ったの、おまえ、変だよ、変わっているって言われたら、一生傷つき落ち込んでしまうでしょう、それだけではなく、かるはずみに云った言葉で、その人の大事な人生を一生狂わせてしまう事も有るのよ」

 尚も自分のミルク・ティーにも手を付けず、真剣に話が続く「それに女性特有の病気、乳癌や癌で子宮や卵巣を摘出手術を受ける人達、不安で一杯なの、其の上もう女では無くなるのか?、女性として生きて行けるのか?悩んでも、そんな事考えているのか!命の方が大切でしょうって云われそうで、女にとって大事な事なのに聞きずらいから質問も出来ない人が多いのよ、其処から考えたかったの、女性として子宮や卵巣だけでは無く、子供の問題や其の後、性交渉は出来るのか?夫婦にとって大事な事、悩んでも聞きたくても聞けないでいる人達が大勢いるの

 手術前後の心のケアも大切なの、此れもリュウが力説した通り当っていたわ、私も勉強したの、人の心や脳で大部分、体を支配する事が分ったわ、それによりホルモンバランスも左右されるの、その上で、夫婦間も含め、そう言った女性や思春期等の精神科を専攻したいの、どう思う?」 長い説明で有ったが、真剣である思いが俺にも伝たわり納得させられた

 「どうって?そんなに、思い考えているのなら、いいと思うよ」 明るい顔で「本当に、私、間違っていないよね、良かった!」 「あたりまえだよ!お互い良いものを感じられる事が、ストレスも解消され、より互いの愛を深めるし、そう云う病気で、沢山悩んで居る人がいると思うよ、結婚しても、性行為が嫌いな人もいるし、不幸にも幼いときの体験やショックで恐くなり駄目な人もいるよ、女の先生の方が、女性同しもっと気楽に相談出来るし、それに想像の世界の説得よりも実感があって、説得力有ると思うよ、俺には専門的な事、解らないよ、日本では、大切な事なのに、いやらしく不純に思っている人が大勢いるから、本当はそう云う人ほどいやらしい人と思うよ、とにかく新しい取り組み、ヨシ子がやりたいと思うのなら、迷わず、やったら、今だから出来る事も有るし後悔して欲しく無いから、やって見なさいよ、生活の事は何とかなるよ」

 「よかった!リュウ、いろいろ知っているのね、驚いたわ!..学校、行って良いのね、なるべくリュウに迷惑掛けない様にするから」 「医師でしょう人間の生態や体の仕組、本質、俺より数十倍知っているでしょう、大事な事だよ、間違っているわけないよ、堂々として」 「有難う、優しいのね」 「お互い様、だよ 俺も好きなこと、させてむらっているから、..ちょと、待ってね」 俺は、小物入れのバックを自分の部屋に取りにいった、バックとノートPCを持ち戻った

ノートPC.jpg それは二人して鎌倉鶴岡八幡宮に行った時から心に響いていた事である、俺は家庭や子供の事など、余り真剣に考えた事一度も無かった、自分の目的以外、余りにも自分本意であり、家庭を持つ事が何か、ヨシ子が子供を持ちたいと願った時に始めて知らされた

 バックの中から貯金通帳を全部出しヨシ子に黙って渡した、多分ヨシ子は俺の収入など全然、充てにはしていないと思い、 ヨシ子「なに?これ」 「それで、全部だよ、ヨシ子が管理して」

 通帳をめくり「なにこれ!ほんとう?ゼロが幾つ付いているの!」 「前にレース辞めた時、他にやる事が無かったから遊び感覚でレースの賞金や契約金等をインターネット株取引して、当時は上昇株が多く買えば儲かったよ、それで本格的に始め、アメリカの情報が手に入り易くコンピューターから一日中、目が離せなくなり此れでは体や精神まで駄目になると思い止めた、それにアメリカの家のローン関係が駄目になり始めた事を知り、いずれ銀行も駄目になる事知って、その煽りが日本にもいずれ来ると思い、2,3安定した有名な電気関係の会社のだけ残し、株全部売り、それで、本牧のマンション買ったの」

 ヨシ子は本当にビックリした顔で「まだ、家が買える位有るのね、ビックリして頭真っ白よ、リュウは何か会社作れるね」 「会社なんて全然駄目、俺には無理、才能ない上に性格的に駄目、それより、毎月の収入を見て、それで生活何とか成ると思うよ?」

 ヨシ子改めて俺を見て「ちょと、待って、今頭が混乱して、リュウはそんな素振り一度も見せなかったから、ネックレスとピアス買うときも、無理して買ったと思ったし、スポンサー探しに苦労しているみたいで、リュウの夢消したく無いし、だから私のお父様に頼んだの、それと、これリュウの物よ頂くわけには行かないわ」 「二人の物だよ、俺オフクロの苦労、小さい頃から見ているから、貧乏性なのかな?、これからは俺が生活費、責任持たなければいけないでしょう、その給料で生活費とヨシ子一人位学校に行かせる事出来ると思うけど?」 ヨシ子は通帳をめくりながら「これって、毎月同じ金額が入っているのですね、思ったより頂いているのね、リュウは先月、余り務めに行かなかったのでは?」 

 「給料と云うより契約ですから、アメリカの仕組みは必要で有れば毎年契約してくれます、でも要らなくなったら、切られてしまいます少し不安定、だから日本政府からの方が、安定しているって、話した事、有りますよね、レースの方は余り当てにならないし、レースでの契約金これは、俺に使わせて下さい、色々出費があるので、いいですか?」

 まだヨシ子は戸惑いながら「ええ、勿論よ、リュウの仕事の必要経費ですから、リュウって、驚かされる事ばかり?子供か大人か解らなく成ったわ、リュウに聞いても、”どうにか成るよ”、だけで..そんな夢を追ってるリュウを見るのが好きになったのだから、私が遣らなければと思っていたから、何か肩透かし受けたようで、戸惑ったの、それで私のお金は如何するの?」 本当に俺の金など充てにしていなかった、俺の夢を壊す事はしない覚悟で結婚に踏み切ったと思われる..とても其の心が嬉しく思った、 

 笑いながら「そうだね!此れからヨシ子の”ひも”でもやろうかな!」 「リュウには出来るわけないよ」 俺は自分に言い聞かす様に「解らないよ!、結婚するって、こう言う事だよね!」

 「此れから何が有るか解らないからヨシ子自身の為に捕って置いたら、それから銀行取引や振込みはインターネットで出来ますから、それと、ネット銀行、此れは電気製品が好きなので、ネット、ショップの為少しだけ、ヨシ子もネット利用すれば、必要な分普通銀行から、暗礁番号などもれ易いから、そのつど振り込んでいます、後で、暗礁番号など教えます

 とにかく今日はもう遅いから休もうよ、本当にヨシ子の進みたい事をやれば良いよ」 ヨシ子はまだ信じられない顔をしながら「本当にありがとう、助けてくれて、正直、リュウは好き勝って自由にやっているかと思い、充てにはしていなかったの、本当に思いも依らなかったわ、リュウは意外と生活力有るのね」

 「おふくろ、一人で頑張っている姿見ているから、これ以上迷惑掛けれないよ、まだレースの事で話したい事あるけど、もう遅いから明日にしょう」 「もう、こんな事が有った訳では無いですが、リュウが居ないと、寂しくて、リュウの体、どこか触っていないと眠れ無くなっちゃた!」 「あぁ、俺もだよ」 「ほんとうに?」 「あたりまえでしょう!」 「フッフ、リュウは、お母様も云っていらしたが、甘えんぼうでオッパイ離れしなくて、困りましたて、今も大好きでしょう」 「男は皆、好きだーよ~ん」

大田家.jpg 翌日何時もの様に其々仕事に出かけ、久振りに近くの漁師の居酒屋で夕食を取る事にした、夕方六時頃、居酒屋のドアーを空けた 「いらしゃい!」 相変わらず、女将さんの元気なダミ声で迎えられる、大分混雑してざわめいている「なんだ、リュウじゃない、お嬢さんも一緒かい」 「ハイ、今度、柴町に住む事にしたから、挨拶に、此れからちょいちょい、寄らせてむらうよ」 「又、如何して此方に住むのかね?」 ヨシ子に手を差伸べ「うん、先生と結婚するんだ!だから、この先のマンションなの」 「へー、ビックリしたな、もう当分結婚しないと思ったよ、こんなに、美人のお嬢さんと!」 

 奥の馴染みの近所のお客さんや漁師仲間に向かい、大声で「ねー、皆、リュウが結婚するんだって」 ざわざわしていた人達が一兜焼きjpg.jpg斉に此方を向き、拍手と歓声が上がった、奥の席で顔馴染みの若者達が、席を空け「よう!こっちに来いよ、ちょうど鮪の兜焼きを頼んだ処だ、お祝いしょうぜ、こっち、こっち、ここの席あけたよ」 皆この近所の漁師の息子や釣り船屋の息子等の集まりだ

 空いた席に照れながらヨシ子と二人座り「じゃあ、邪魔するよ」 「リュウ、凄い美人で羨ましいねー、紹介してよ」 女将さんが酒とタバコで潰れた声で「バカだねー、そんなにガサツに聞いたら、お医者さんの先生がビックリするだろう」 客の漁師の一人が「へー、先生なんだ、俺も診てむらいたいね」 女将さん漁師の頭を小突き「頭でも診てむらいな、こいつの頭は取り換えても良くはならいけどね」 俺は二人の会話に口を挟む様に「まあまあ、紹介するよ、横浜X大病院の心臓の先生で佳子さん」 「ヨシ子です、これから、宜しくお願いします」 女将さん話しかけた漁師を見ながら「それじゃあ、おおこぜ.jpg前は診てむらえないね、心臓、バカが付くほど強いから」 「それは無いよ!女将さん、俺だってこんな美人に、弱いよ!心臓バクバクしているよ」 お客さん皆大笑い 一息ついたところで女将さん「先生は飲みますかねー?」 「ええ、ビール頂くわ」 「先生はビールとリュウはウーロン茶で良いね」 「はい、腹が減っているんだ、あと何か煮付けと刺身それに飯、お願い」 「じゃあ、オコゼの煮付けと刺身、カワハギが有るから見繕うね」 ヨシ子、何かを感じたのか、皆に向かって「貴方達、健康診断受けているの?」 釣り船屋の若い船頭「俺なんか、病気になった事無いから、でも先生だったら診てむらいたいよ」 ヨシ子は意外と臆する所も無く「皆もそうよ、診断受けた事なさそうね、本当に安心出来るか調べて下さいね、突然倒れてからでは遅いのよ」 皆とそんな話しと冗談を言鮪すきみ.jpgいながら、楽しく呑んだり食べた、帰りに支払い行くと、

 女将さんが俺の肩に手を置いて「今日はリュウの結婚祝いだから料金は要らないよ」 「だめだよ、ちゃんと、取って」 女将可愛い者を見る様に目を細め、片に置いた手を前後に力強く揺すった「素直じゃないねー、お祝いだから良いんだよ」 「はい、そうですか、ありがとう御座います」 ヨシ子は俺にいいの、と問いかける目で見ている、俺は心で”うん”と呟く様に小さく頭を振った、それを見て「かぶと焼きや、珍しい物ばかり、とても美味しく頂きました、今日はご馳走になり、ありがとう御座いました、皆さんも此れから宜しくお伝え下さい」 女将嬉しそうに「先生も此れに懲りずに時々来て下さいよ、帰り気を付けて」 その後、真っ直ぐ家路に着いた

 俺達は部屋で寛ぎながら、この部屋に俺の荷物を運び込む日を考えて「ヨシ子、8月8,9日モトギのレースまで何も予定が無いから、引越しや住所変更の手続きしようよ」 ヨシ子も考えていたのでしょう「そうね、リュウの住所変更時に結婚届け、一緒に提出しましょか?」 「結婚式と一緒で、なくて良いの?」 「両親と相談したり、式場やまだまだ時間が要るから、ちゃんと何か良い日を選んで先に出しましょうよ」 「うん、そうだね、俺の誕生日3月17日だから7月17日にしょうか?」 ヨシ子は驚いた顔をして「ええ、本当!私もよ1月17日、奇遇じゃぁない、そうしましょう、リュウが絶対忘れないから」 

 「決まりだね、..それとね、来年のレースの契約、一流チームから話があったけれど、如何するか、迷っているんだ!今度のレースの時、返事聞かれると思うの、今までと違って全部やって、くれるし、次へのスッテプアップも見込めるし契約金も桁違いに良いと思うし..でもね」

 ヨシ子はやはり、相談すると思っていたのだろう 「リュウの長年の夢が見え始め手を伸ばせば届く処に有るのに、迷って!自分の心の中では決まっているんでしょう、なのに迷うなんってリュウらしく無いね、私に相談して”其れは他のチームの方が良いに決まっているでしょう、移りなさい”って云われ、それで表彰台に乗っても、リュウは、心から喜べないでしょう、解っているわ、リュウが恩有る人を捨てる事が出来ないで迷っている事、こう云う答え聞々たかったのでは? ”リュウには、そんな事出来ないから今まで通りやりなさい!”って、そのとうりでしょう!」

 俺の考え手に取る様に解かっている、まいったな! 「多分皆も不安に思っているから、早く結論出さなくては、世界が望みだから上を狙いたいよ、でも必ずしも成功出来るとは限らないし、北原監督に拾われたから今の俺が有る、うん此れで、決まった!、今まで通りのチームでいくよ」 ヨシ子は俺の座っている、カウチの横に立ち、俺の肩に手を置いて、力付ける様に軽く押した「リュウなら何処のチームでも大丈夫よ、リュウが後悔する事無く納得する様にしたら良いんじゃない」

 ヨシ子は両肩を揉むようにして、続いて俺にたずねた「それでね、話違うけれど、前に話した事あるでしょう、私の患者の子供、海斗(カイト)君と云うの、レーサーが夢なの、一度リュウのレース如何しても見させて上げたいと思っているけれど、どうかしら?」 「そんな事して、良いの? 俺はかまわないけど?」

 「拡張型心筋症なの、心臓を提供してくれる(レシピエント)..ドナーが見つからない限り、直る見込みが無く体が成長する分、心臓に負担が掛かるの、今もどんどん悪くなっているの、部長には私が付いて行くからと話し検討していただき、両親に了解得ているから」 俺はヨシ子から何かを感じ「決勝レースだけ見るだけだったら、時間的にも余り負担がかからないと思うけれど片道、車で約3時間半掛かりますよ、ヨシコがそんなに云うには訳が有ると思うから、手配するよ」 

 両肩を揉む手に力が入り「ありがとう、車なら大丈夫よ、酸素吸入も点滴も出来るから、リュウは本当に優しいのね!これで、あの子と約束守れるわ、先生の婚約者はレーサーなのって云ってしまって、あの子車が好きで好きで何時も私に話すのよ、それで如何してもリュウを応援したし、レース観たいって、聞かないの、あの子の両親、奥さんの方が私の中学、高校時代からの親友なの、夫は商社マンで海外を行ったり来たり、出来たら、是非お願いします、見させてやって下さいと云われたの」 「分ったよ、じゃー明日、病院へ行ったら、その海斗君の洋服のサイズ聞いといて」 ヨシ子は不思議そうに「どうして?」 「うん、プレゼント、俺達のチームのブルゾンでも、と思って」 「リュウて!だから、皆好きになるのね、きっと喜ぶわ」 

 ヨシ子は結婚式も嬉しいだろうが、もっと自分を向上させる授業を受ける事と今の仕事を大事に思っていると思い、式の事はヨシ子に任せようと思った

 ヨシ子は楽しそうに話を続けた「それと、リュウが居酒屋に連れていった、意味解かったわ、今まで、あの人達の様にガラ悪い人、話もしないで、ただ敬遠して居たけれど、皆、素晴らしく、本当は優しく愉快な人達、これからは、ああ云う人達のお話も真剣に聞けるわ」 「そうだよ皆、良い奴だから、解かってくれると思って」 「それと、高級料理だけが、美味しい味では無いって、漁師の経験から新鮮さと其の物の旨さを引き出しているよ」 「本当にみんな美味しかった、リュウって、不思議、色々な層の人と知り合いね、きっと 私、鼻持ちならない人なっていたのかも、本当にリュウと逢え、良かった」 「それは、ヨシ子自身が変えようと思っていたからだよ、俺だって、ヨシ子ともう離れられないよ」 これは本音だ 「本当?嬉しい!」

 翌日、会社(ベース)から、監督に電話連絡し、ヨシ子と結婚、籍だけ今月17日に入れる事、又、心臓病の子供、次のレース、ツインリング茂木に連れて行く事、子供用のレーシングスーツ(オーバーオール)とジャケットをサイズは後で知らせるから用意して下さいとお願いした

 監督の改まった声で「リュウ、解かっているよ、他のチームから誘われて居る事、如何する?」 「ええ、知っていたんですか?今まで通り監督のチームでやらせてください」 監督の声が一段と高まり「俺のチームで本当に良いのか?、お前の夢叶えられ、もっと上の海外レースも出来るチャンスだぞ、俺に遠慮は要らないよ、本当にそれで良いのか?」 俺は冷静に「ええ、もう決めましたから、それと他のチームはビジネス化していてダメだと思ったら、俺なんか直ぐお払い箱だから、監督!今のままで通りお願いします」

 「そうか、解かった、お前の強情で頑固な処、知って要るから、何時でもこだわらず、チャンス有ったら良いんだぞ!念を押すようだが、本当にいいんだな!」 「はい!宜しくお願いします」 「・・子供服手配しとくよ、それから、ヨシ子さんに、結婚おめでとう、と伝えてくれ」 「有難う御座います」 

 それから母にも17日に籍だけ先に入れる事を連絡した、母「ヨシ子さんから、連絡ありましたよ、お前が頼りないから、本当に確りしなさい!」 相変わらずだ、「もう同じ間違いを二度とするんじゃあないよ、お前にはもったいくらいな人だよ、大事にしなさい」 の返事だった

 その日の夕食前、ヨシ子からも「両家のお母さんに入籍する事、連絡しましたから、私のお母さんがリュウに何時でも夕食に、いらして下さい、と云っていましたよ、あれから何か気に入た見たい」 「ありがとう、俺もお母さんに、連絡したら、ヨシ子から、連絡があったって、宜しく云ってください、だって、それと海斗君のサイズ分かった?」 「今六歳だけど、本当は学校に入れなければいけない年なの、やはり、成長も遅く五歳位のサイズで良いみたい」 「判った、直ぐに連絡するよ、それと監督に来年も頼みますって、話したよ、それと入籍する事、監督がヨシ子さんに、”おめでとう”宜しく、って伝えて下さいだって」 「大事な契約の事電話でいいの?」 「其の方が良い時も、あるの、長い付き合い、感情が入らない方が良い時もあるの、俺の言葉で全て察しているよ」 「それなら良いが?」 

 直ぐにスクール事務所に電話をいれた 「ジャパン・レーシング・アカデミーで御座いますが」 「ああ、クミちゃん、監督は?」 久美ちゃんが電話を受けた「龍崎さん?、今監督帰りましたが」 「それじゃあ、明日でも伝えて下さい、子供のレーシングスーツのサイズ五歳用でお願いします」 「その話聞ています、サイズ五歳用ですね、明日メーカーに注文出しておきます、それと龍崎さん、家のチームに留まって下さる事、聞きました、本当に嬉しいです!」 「まーな、これからも宜しくね、次のレース8月9日朝一にもう一度、マイクロバスで、家のヨシ子と、その子と母親三人ですから迎えに来て下さいと伝えてね」 「竹田に伝えておきます」 「それじゃあ、頼んだよ、それと竹田君と旨く行っているの?」 「ええ、おかげさまで、仲良くしています」 「良かったね、じゃーぁ又ね」

 電話が終わるのをまった様にヨシ子が話しかけてきた「リュウて、本当優しいのね、有難う、きっと喜ぶわ」 「当日まで、海斗には内緒だよ」 「解ったわ、リュウレース前に病院で海斗君に一度合って頂ける、海斗君のお母さんにも?」 「いいよ、それと今度、金曜日17日半日に成らない?結婚届け提出の日、後二人だけで何所か食事どう、それともう一つ土曜日、両家で集ろうよ、確か能見台に予約制の懐石料理の店、今でも在ると思うよ、確か電話番号控えて有ると思うから、予約入れておくよ、どう?」

 「良いわね、多分大丈夫、スケジュウル調整するわ、お母さん達に連絡しなくては、じゃあ私何人になるかお聞きします」 「今回の会食費用俺達の結婚の為だから男の俺がレースの契約金の方から出します少しはカッコ付けたいから、此れも必要経費かな?冗談ですよ!、両親に伝えてね」 「そうするわ、リュウて何処からそんな考え浮かぶの、感心しちゃう」 「ヨシ子からに決まっているでしょう、ヨシ子ならきっとこうすると思って」 「まぁー!調子いいんだから、お母様でしょう?」

 「まぁね、これ全然違う話だけれど、前から思っていたの、朝や夕食後の皿洗い俺がするよ、ヨシ子に、少しでも勉強する、時間作って遣りたいから」 ヨシ子が突然抱き付いて俺をソファーに押し倒して来た「リュウて、どうしてそんなに優しく成れるの?ヨシ子、駄目になっちゃいそう!」 「ダメに、なったら困るよ、夕食まだだよ、お腹空いちゃた!」 ヨシ子は俺の額を突いて「リュウは良いとこで、本当お腹なんだから、直ぐ仕度するわ、少し待ってね、 リュウ!心から愛しているわ!」 「はい俺も、 腹が空いては戦が出来ぬ、て云うでしょう、この頃、ヨシ子、手早く応用も良いし栄養バランスも良く、料理凄く美味しくなったよ」 「リュウ、ほんとう?嬉しいわ!フフ..男は戦なの?ラブ & ピースでしょう!..急いで仕度します」 俺は何って素直で率直で可愛い人だと改めて思いました 

 ヨシ子は夕食の支度をしながら「リュウ、今朝、楽しい事、あったのよ、通勤途中と柴口の駅で、知らない、おじさん達に、先生、おはよう、お仕事ですか?て皆に笑顔で言われたの、私の心も何だか明るくなるの」 「あぁ、きっと、昨日、居酒屋に居た人達と思うよ」 「ええ、私もそう思ったの、何か毎朝楽しみになりそう、これもリュウの御蔭ね」

やはり!.jpg 17日金曜日、午後、横浜金沢区、金沢文庫の市役所に結婚届けと住所変更の届けを提出して、役所の係員が事務的に「お姉さんが代理ですか?」 俺は「生年月日を確認して下さい!」 係員書類に改めて目を通し、慌てて「これは、大変失礼しました、おめでとう、御座います、お幸せに!」 バツが悪そうに、お辞儀を繰り返していました、手続を済ませ役所を出、ヨシ子は自分に言い聞かす様に、呟く「やっぱり、年上に見えるのかしら?」それほど腹は立てていない様子 「俺が、子供の様に見えたからだよ」 「リュウ、本当だから、気にしなくても良いよ、でも、余りにも、あっけ無いね、此れで結婚!」 「俺も、そう思うよ、もう少しクラッカー等で皆が、おめでとう、言って欲しいね、受付の所全体だけでも良いから、祝福出来ないかなー、お役所仕事でセンス無いね、所詮、紙切れだからね、俺達の心の有り方でしょう」 

 「最近リュウに押されぎみ、私の方が子供ね、私、少しお金の事でイライラしていたの、其れなのにリュウ何にも云わずに、受け止めてくれて、嬉しかった」 「良いんだよ、解っているから、それと、言い忘れたが、あの中から結婚式に使ってもかまわないよ、ヨシ子に全部任したんだから」 「ありがとう、出来たら、私達の子供の為に使いたいの」 「まだコウの鳥が来ないのに、余り、子供を甘やかす様な事は良くないよ、少しは俺達の為に使おうよ」指輪.jpg 

 気を取り直し、横浜元町まで足を伸ばし宝石店で二人の結婚指輪とペンダントを奮発し、プラチナシルバーペンダント.jpgにダイアを大小埋め込んだデザインの良いものを選び、内側にxx.07.17 for ever love Y&K(xx年7月17日 永遠の愛を ヨシコ&ケンジ)を刻んで頂き発注した、俺は宝石や指輪に興味はなく、女性はなんで、こんなに喜ぶのか解らない? 特に指輪は基本的に..女性は男を縛り付けたいのか? それでも、戒めを抜け、男は自由を求めさ迷いたいから? 子孫繁栄の永遠のテーマ、不可解で解からない!? 

 中華街まで足を伸ばし二人で、ささやかな祝いの食事をした、ビールと烏龍茶で「結婚おめでとう、ヨシ子と俺の幸せの為に、乾杯!」ヨシ子がコラーゲンたっぷりの鱶鰭、ジュワ々たっぷりの小籠包、海老チリ、等をオーダーした、ヨシ子は今日一日本当に楽しそうに過し今最も輝き弾んだ声で嬉しそうに「乾杯!私、お姉さんに見られるからコラーゲンで若返らなければ」 「十分若いし、綺麗だよ」 「誰に云はれるより、リュウに云はれるのが、一番嬉しい!」 帰りに、俺の本牧のマンションにより、デスクトップのPCやオーデオ関係を運んだ、何れ、誰かに貸し、家賃収入を得よと思っている

    《海斗君との出会い》

浩子です.jpg 土曜日の朝、約束道りヨシ子の病院にチームの赤い帽子を手に海斗君に合いに出かけた、ヨシ子の友人の海斗君の母を玄関の待合所で暫らく待っていた、間もなく、海斗君のお母さんが見え 「始めまして、長崎(旧姓大平) 浩子です、此の度は自動車レースに連れて行っていただけるそうで、宜しくお願いします」やはり類は類を呼ぶではないが、中々の日本的美人で賓がありそうなうえ、妖艶な雰囲気を漂はせている、きっと着物が似合いそうだ 「此方こそ、よろしく」 ヨシ子は白衣を纏い澄まし顔が少し冷たく見えた「さーぁ、行きましょう」 俺は咄嗟に思いついた考えを説明した「ちょっと待って、部屋番教えて、俺だけ先に行くよ、暫らくしたら来てよ、俺が誰だか海斗君に当ててむらう、から」 ヨシ子は苦笑した顔で「リュウたら子供みたい、行きなさい、私、浩子と話したい事ありますから」 浩子さんは表情を崩さず、俺に了承の意味だろう、そっけなく「私達におかまいなく、お先にどうぞ」 その、そっけなさが妙に、俺をそそる

Cap.jpg 俺は海斗君の病室の前で、帽子を解る様に持ち直し、部屋のドアーを空けた、一番奥の窓側のベットであろう、一目で判った、帽子をチラつかせ「オッス、海斗1.jpgよ!海斗君だね」 不振な顔しながら、暫く沈黙をした、俺の持っている帽子を見つけ「はい、..龍崎さんですか?」 「そうだよ 正解!」 「だと、思った、レーサーの龍崎さん、鶴見先生の、嬉しいな!」 帽子を出し「これ、レーシング・チームの帽子だよ、海斗に!」 万遍の笑みを浮かべ「龍崎さん有難う」 「俺も、海斗と呼ぶから、リュウで良いよ」 「はい、解りました」 ちょうどヨシ子達が部屋に入って来た「ママ、これリュウ..リュウから頂いたの」 浩子俺をチラリと見「なんですか!呼び捨てで、失礼よ」 「いいんです、私がそうしてくれと頼みましたから」

 初めて海斗に会った時、死んだような目で俺を見詰ていたが俺がリュウだと解ると、途端に目が輝いた、この部屋の空気、何か淀んで居るようだったので、ヨシ子に向かって「外の屋上に連れて行って良いの?」 「少しだったら」 「じゃぁー、海斗、行こうか?」 「ハイ!行きたい」車椅子をベッドの隣に置き、母親が手を貸そうとした、海斗はその手を払いのけ「自分でやるから!」 そんな、事を云った事は始めての様で、浩子さんとヨシ子は顔を見合わせて、肩をすくめた、海斗は車椅子を支える手が震えながら、それでも自分で座り込んだ、車椅子を押しながら「よし、海斗、行くぞ」 「はい、龍崎...リュウ」 後からヨシ子達が付いて来る

 屋上に上がり、初夏の日差しに入道雲が見え、爽やかな海風が時折吹き抜ける、八景島が見える青々した海が広がっている「海斗、気持ち良いだろう?こうやって、鼻から息を吸い込み、深呼吸してごらん」俺がやって見せた 海斗、胸一杯吸い込む「はい、su-u リュウ、気持ち良いね、あの八景島の水族館に行った事、有るよ」 「そうか、楽しかったか?」 「はい」 「今度はレース場まで道乗りが長いぞ!、頑張れるかな」 「はい、リュウ!」 俺はアメリカ兵の間で流行っている、握手で手を、上下に握りあいトントン叩き親指を立てる、挨拶の仕方を繰り返し教えた、

 車椅子.jpg「よし、海斗はレーサーに成りたいのか?車椅子、レーシングカーの様に走らせるぞ、確り捕まっていろ!、いいな!」 「はい、りゅう」 俺は車椅子を押し走りだした「リュウ、恐いよ、恐い」頭を伏せ、目を閉じてしまっている 「海斗、顔を上げて、確り前を見て!レーサーになれないぞ!」 泣きそうな声で「はい、リュウ、前見ています」 「ようーし!楽しいだろう?」 「はい、リュウ、もう大丈夫です、ハハハ..楽しくなりました、ねーリュウ、もっと もっと 早く!」 

 屋上を一周してヨシ子達の処へ帰った、何か険悪な雰囲気..ヨシ子からいきなり平手うちが飛んで来た、俺は、とっさに避けようとしたが、あえて頬で受けた、浩子さんの怒りを露わにした佇まいと刺すような目を感じたからだ 「リュウ、何と云う事をするの!海斗君は心臓の病よ」 ヨシコの立場も解かっていたから、ちょっとやりすぎかな 「ごめん、そんなに様態が悪いと思は無かったよ」とだけ云った 浩子さんが俺を睨み「なんって事する人なの、海斗に何か有ったら!..もう、貴男には頼めません、今回の話、無かった事にして下さい」怒りと蔑みの目で睨む様に俺を見ている、 ヨシ子「浩子さん御免なさい!、私も迂闊だったわ、リュウに詳しく病状伝えてなかったの・・・あなた!リュウ下の玄関で待っていて下さい!」 寂しそうにしている海斗に分る様に俺は小さく指だけで手を振り、浩子に向かって 「驚かせ、危険なことをして失礼しました」 と云って玄関に向かった

 2,30分位だろうか暫らくしてヨシ子が降りてきて「リュウ、ごめんね、痛かったでしょう、私は医師ですから、少しでも安全を求めなければ成らないの」 「解かっているよ、だから、避けなかったの、真ともに受けたから痛かったよ!」 ヨシ子は皮肉ぽく「チュウ、しましょうか?..浩子さんに、冷静に説明したのだけれど、浩子、怒らせちゃった..アーァ、リュウ、一旦帰りましょう」 今日は両家の夕食会だ、家に戻り、

 俺は少し悔しさもあって「あれじゃあ、安全より、もう海斗は死んでると同じだよ!あれは駄目、これは駄目、可愛そうに、ただ恐怖に慄き死を待っているだけ、どんなに恐いか、大人だって耐えられないよ、それでも、海斗は親に心配掛けまいと懸命に良い子ぶっているのだよ、俺は多少の犠牲を払っても生きる喜びを知って欲しかった、レースの話で海斗の目が輝きだしたんだよ、ヨシ子が俺の目に感じた事、解かったよ、子供なんか、嫌いで面倒だと思っていたよ、でも海斗に会って、キヤキラ輝く目を見て可愛い奴だなって」

 「リュウはそんな処、不器用だから、人には中々解かって頂け無いのよ、実は私も医師として迷ったけれど、同じ考えだったからリュウにレース見せてってお願いしたのに、ごめんね、しかたないわね」 「俺も悪かったよ、そんなに心臓悪いとは知らなくて」 「もう、いいのよ、忘れましょう」

 懐石l.jpg夕方、能見台の懐石料理店で両親の会食会を行い、俺の処は母と兄夫婦、ヨシ子の処は父、母、看護婦、受付嬢、皆さん集った処で俺は「えー、今晩は、今日は両家の顔会わせ、と云う事で、宜しくお願いします」 母は「挨拶もろくに出来ない、息子ですが、結納も兼ね末永くお付き合いお願い致します」 こんな挨拶から始まり母は熨斗袋を出し、俺は慌ててそれを制した ヨシ子は直ぐに察して「お母さん、それはもう、リュウいいえ健司さんより頂いております」 「健司は何も話さないから、でも此れは私から佳子さんに」 ヨシ子が俺を見つめた 俺は首を立てに振り「お母さんの気持ちだから」 ヨシ子徐に「では、有りがたく頂きます」

 特に俺の母とヨシ子のお父さんが話が合い、ヨシ子の母は兄と話が盛り上がり、俺は鶴見医院受付の奥村さんと、コンピューターの表計算やアプリ(application)色々なプログラム等、医院に合せ制作する事等約束し無事、顔合わせも終わる頃、ヨシ子の母が誰とでもなく愚痴をこぼす「一人娘ですから、鶴見を継ぐ養子が欲しかったのですがね」 ヨシ子慌て義母を征し「お母さん!話済んでいるでしょう」 お袋は気を使ったのか、俺を睨み、義母に加担する様に「健司さえ良ければ、本人の考えですから」 俺は慌て「これから、なるべく伺います、・・・もう入籍終わっていますし」 何とか一段落付き、ヨシ子と俺は、思わずほっとしました

 家に帰りヨシ子、先ほどの熨斗袋を出しながら 「リュウ、お母様にちゃんと言ってないから、これ、返して下さいね、お願いよ、お母さん(ヨシ子の母)の事ごめんなさい」 「いいんだよ、解っているから、お袋、何時までも駄目な子と思っているから、俺もビックリだよ俺から返すよ、安心して、それにヨシ子のお父さん何も云はなかったけれど、鶴見家跡取りが居なくなるから、俺ってバカだよな」 「リュウ、止めましょう、リュウは養子なんて嫌でしょう、それ以上云わないで」 「ごめん」

 此処のところ慌ただしく過ぎ、明日の休み(日曜日)ゆっくり家で休み、夕食は俺がパスタとラムチョプ作る事にした、初めての俺の料理の披露だ!力が入りそう、

 日曜日の朝、食事を取って居る所に、ヨシコの携帯が鳴り、海斗の母、浩子さんからだった、「昨日は御免なさい、海斗が昨日のお昼から食事を全然、取らないで、困っています、龍崎さんに、会うまで、絶対食べないって..お願いですから一緒に病院まで来て下さい、お願いします」..「との事だから、リュウ、いやでしょうが、一緒に行って下さる?ごめんなさい」 「ヨシ子が謝る事ないよ、行くから、と連絡して、それから、初めに海斗と俺だけで話させて、問題ないでしょう?」 「信用しているけど、乱暴な言葉使わないでね」 「それくらい分っているよ」

 二人は慌ただしく食事を済ませ、病院に駆けつけた、玄関に海斗の母、浩子さんが、落ち着き無く行ったり来たり、オロオロしながら待っていた、俺を見つけると慌てて走りより「先日は..」 俺は無視する様に「そんな挨拶は、良いから、俺が呼ぶまで、海斗君の部屋に入らないで!男同士の話だから良いですね!」 浩子さんが都合の悪い顔で「はい、解かりました、宜しくお願いします」と深々と頭を下げた、

 俺は部屋まで行き、二人にドアー外で待つ様に告げ、ドアーを空けた「ヨウ!海斗、何、何時までもガキの様な事しているの?何があったの?」 「だって、リュウさん」 「リュウさん、じゃーないだろう、リュウで良いと言ったでしょう、それに”だって!”は嫌いだぞ!ハッキリ云えない人は付き合わないぞ!如何したいんだ?」 「ハイ、リュウ、僕は、リュウとレースに行きたいのに!」 「ありがとう海斗、俺も海斗にレース見せたいよ、楽しみにしていたんだ」 

 泣きながら「ハイ」 「そんな事して、お母さんに心配掛けて、海斗も悲しいだろう?」 「・・はい・・」 「だったら、お母さんに、海斗はレース見に行きたいとハキリ、言はなければいけないよ、そんな弱い子はレースやっても負けるし、レースやる資格ないよ、何が有っても、諦めない、最後まで戦うの、其れがレースだよ分かった?強くならなくてはレース出来ないぞ!約束だよ」

 「リュウ、分かった、分ったから!約束するから」 「そうか、分った!お母さん呼ぶから、ちゃんと話せるか?それと、ご飯食べなければ、元気になれないぞ、レースだって出来ないから、ヨシあの握手できるか?」グートントン、グー親指たててから 「よし、いいね、お母さん呼ぶよ」 確りした口調で、こくりしながら「はい、分かりました」 俺はドアーを空けヨシ子と浩子さんを招き入れた 

 海斗お母さんの顔が見られず下を向き「お母さん、僕、リュウのレース見に行きたいの、行かして下さい、ご飯ちゃんと食べ元気になるから」 ..浩子さん、海斗の手を握りながら 「はい、分かりました、海斗はそんなに、観たかったのね、お母さん、気が付かないでごめんなさい、行きましょうね、龍崎さん宜しく、お願い致します」 深々と頭下げました、俺は海斗に向かって、親指を立て「分りました、海斗はレーサーになるだって!な、海斗、ちゃんとお母さんの顔を見なさい」 明るい声で俺と母の顔を見ながら「ハイ、頑張ります」俺は心に感じたこの笑顔だよ! ヨシ子緊張の解れた顔で「ほっとしたわ、良かった!」

 浩子さん緊張した面持ちで俺に向かい「海斗があんなに、逆らった事、初めてです、私の気持ちだけ、押し付けて、何も見えなく成って、海斗の気持ち全然、解かろうと、せず、龍崎さんにご迷惑かけて、済みません」 嘗ての俺も前の奥さんで、そうだったから、自分の立場で物を考え、其れが自分にも相手にも正しいと思い込み、肝心の相手の心を察し物事を考えられなかった 「母親だったら、子供の安全と、少しでも健康になって、欲しい思うこと当然です、気にしないで下さい、ただ、海斗君に生きる希望を持たせたかったから!俺も子供の頃、冒険に心躍った覚えが有るから、そう思ったの」 浩子さん考え深い面持ちで「そうですね、心では解かって居たのですが..駄目ですね」

 暫らく、雑談をしながら、海斗の食事に付き合った、「海斗、そんなに、慌てて食べなくても、喉に閊えるよ」 海斗がジュースを飲みながら「うん、リュウ、海斗レーサーに成れるかなー?」 「なんだよ!成れるか?じゃあー、無いだろう、レーサーに成る、だろう、此れから、一杯苦しい事や、悲しい事、沢山有るよ、リュウだって一杯あったが、我慢して乗り越えて来たんだよ、海斗はリュウより強いよ、今だって戦っているんだから、きっと勝つさ!そうだろう?」

 「はい、リュウ、頑張ります」 親指を立てながら「おぉ!そうだよ、リュウ何時も見ているからな」 同じように親指を立て万遍な笑顔で「はい」 「御免なさい!ヨシ子が、龍崎さんを、選んだ、理由分る様な気がするわ」 「でしょう、凄く優しいの、幸せよ!」 「ごちそうさま」 それから暫らく付き合って、何故かほっとして病室をあとにした

 夕食の食材を求めに近所のストアーに出向く、車の中で 「リュウ、さっきから黙ってしまって、如何したの?」 「うん、海斗の事、考えていたんだ、昨日から、ずうーっと、お腹が空いても、何も食べずに、ハンガーストライキ、初めての抵抗だったんだね、あの、か弱い小っちゃい体で、俺との約束、自分の病気の為にお母さんの悲しむ顔、どうして良いか、分らず、海斗なりに、悩んでいたと思うと..もう考えるのやめよう、ウルウルして来ちゃう..」 

 「だから、リュウは優し過ぎるのよ、私より、リュウこそ、子供駄目にしそう!そこが好きだけどね、それだけでなく、今日の様に、子供の扱いから、電気の配線、電気品の修理、コンピューター、車、お掃除、それに料理、何でも便利やさんみたい、私も甘え過ぎで駄目になっちゃうわ!頑張って、勉強しなくては!」 多分今回の引越しで、俺が整理整頓やオーデオやPCのセットや棚作り、ヨシ子の壊してしまった電機品の修理等、手早くやったからと思う、

 前にもヨシ子に説明した、アサリのスパゲッティー(ボンゴレ)威張った手前、失敗出来ない、冷汗物だ、フライアサリのパスタ.jpgパンにオリーブオイルにガーリック弱火で加熱、いい香りがして来たら、ここでたっぷりの砂だしアサリを入れる事が重要、タカノツメ少々と黒コショウりを擦り入れ、パセリのみじん切、白ワインを多めコップ三分の二位(これが、男の料理)フタをして中火で、アサリが開いたら、バターを入れ、此処でお醤油ほんの少々振りかけ(此れがポイント)飾りの為3,4そのまま残し、あとわ殻を外し身だけを残す(お店に出す訳で無いから成るべく食べ易く)後はパスタの煮汁を少し入れ缶のマシュルームのスライスとバターを入れ乳化させる(又は生クリームを加えても良い)残りのパセリのみじん切、を加えエルダンテに茹で上がったパスタを加える

 ラムチョップは8本、岩塩と黒コショウを擦り、ラムにすり込む、フライパンにオリーブオイルを惜しまず、ラムが半分位沈む位入れる(これは、ラム独特の臭みを取る為)先ずフライパンにオリーブオイルにガーリックとローズマリー入れ弱火で香りを出し、取り出し、ラムチョップを入れる、初めは少し強火で両面を焼き焼き色が付いたら弱火にして、赤ワイン入れ、じゅくり数分蓋をして蒸す(これも臭みを消す為)

 後はブナシメジと舞茸等残り油で炒め、コーンの缶等盛り合わせて、出来上がり、 「リュウ、コーヒー出来ているわ、少し休んだら」 「じゃぁー、テーブルにセットして」テーブルにセットしている間、コーヒーで休む 「準備出来たわ、リュウも少し飲むでしょう、ロゼ(ワイン)開けて、頂ける?」 二人席に付き、乾杯 「リュウ、何処かのレストランで頂いたけれど、臭みが有って食べれなかったけれど、このラムチョップ美味しいわ、こんなに美味しくなるのね、それとボンゴレも凄く美味しいわ!、もしかして、逗子より美味しい!」..ワインのせいか食欲もある様だ 「よかった、何って云はれるか、心配だった」 「本当よ美味しい!お店出せるね」 「だめだよ、材料ふんだんに使ったから、赤字だよ」 「今度、時々リュウに頼もうかな?」 

 「良いけど、高く付くよ、今まで忙しく、やっと少しのんびり出来るね、ヨシ子と遭えて良かったよ」 「本当?嬉しい!もっと若ければ良かったのにね」 「いや!お互い今だったから、受け入れられたと思うよ、今のヨシ子だから、本当の俺で居られ、本当に休めるよ」 「嬉しい、ヨシ子もよ!」 暫くゆったりした時が流れ 「ねー、早く食べて子作りしょう!」 ワインも手伝ってか?俺、思わず、噴出してしまうほど、可笑しかった 「何で、そんなに可笑しいの?」 「ごめん、余りにも、突拍子な事だから」 

 「だって、早くしないと体力的にも私、齢だから、リュウの子供欲しいの!いけない?」 「そんな事ないけど、ごめん、俺、自分の事で精一杯で子供まで考えていなかったよ、第一ちゃんと育てられるか心配だよ!」 「リュウ、結婚て..」 「だよね!でも正直、子供の事まで考えていなかったよ」 「リュウには躁急過ぎたのかしら?」 「俺って考え甘いよね、それが自然だよね」俺は話を逸らせ「俺と居れば、若く居られるよ」 「如何して?」 「ちょっと、耳貸して」耳元で「あれ、良いアドレナリンが出て、ホルモン、バランスが良くなり若返るよ」 「やっぱり、私と同じ、一応先生ですから、知ってます、早く夕食済ましましょう!」

 なにか素直すぎて子供がお菓子を欲しがる様で、可愛く可笑しさが又込み上げた「慌てなくても!俺は逃げていかないよ、せっかくの力作なのに」 俺は言葉と裏腹に、一瞬不安が過ぎったが、幸せで楽しさに押し流されていた 「美味しいから、一杯食べ過ぎて太ちゃうから」 「それなら、明日から、少し早起きして、軽く、ジョギングしようよ、先生から見本、でしょう?」 「ええ、今までもしていたのよ、たまに夕方ね、やりましょう、リュウと一緒なら、楽しいね、足は第二の心臓とも云いますから、リュウに負けないように健康に成らなくちゃ」

 次の日から朝早起きして、爽やかな海の公園を軽くジョギングし、ヨシ子は栄養や健康には気使ってくれ、サラダとブルーベリーのヨーグルト、日差しの強い所でのレース、目の為にと果物は必ず欠かさず、用意してあった、美味しく朝食を採り、互い其々出勤

 俺はベースで、ボスに式は未だですがと結婚の報告をした(marriage registration)、事務所の従業員が集り、ベース内のクラブで祝ってくれるから日にちを決めてくれとの事、アメリカ人は家庭のそう言った事は大切に考えていて、反って迷惑のときもあるが、帰ってから妻と決めますからと伝え、例のパトリシアは少し残念そうでしたが、直ぐに、「Congratulations!」おめでとう、と云って祝ってくれました、何時までもグズグズしなくて助かった。

 ヨシ子は病院の部長に学校の件、相談して、今の部署やめなくても、大学のゼミを受けられる様に考えてくれるそうで、考えたより、スムーズに行けそうで嬉しがっていました、海斗君は、気持も落ち着き、楽しみにしているとの事、ベースでの我々の結婚パーティーは今週の金曜日の夕がたに決めました

 パーティーの招待も基地内の将校クラブでバイキング形式で無事終わり、ヨシ子は米軍基地の中、全てが珍しく、英語も少しは通じ、特に外人男性は積極的で受け答えを楽しんでいた様だ、沢山外国のクッキング用品のプレゼントを頂きヨシ子は大喜びで何よりでした」。

 アーァ!後は惰性で!..此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編6】へ続きますクリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11-2是非お読み下さる事お願いね


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編6】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

 ☆=Story【前編5】からの続きです、是非下欄【前編6】をお読み下さい=☆

   《ツインリング茂木サーキット》  Twin ring Motegi Round 6 (08/09) 

 8月7日朝、ヨシ子と二人、何時ものように、海岸でジョギングを終わり、互いに背中合わせに腕を組みストレッチを行い 「リュウ、今日から行くのね、気を付けてね、後から日曜に、海斗君達と行きますから、お願いね、..また寂しいなーぁ」 「たった二日だよ、竹田君が日曜の朝7時に病院まで迎えに行くから、必要な事は、遠慮なく伝えて充分気を付けて来てね」 「ありがとう、きっと海斗君、楽しみに待っているわ」

 朝の軽い運動を終え、マンションに帰り、朝食を何時もの様に確り食べ、ヨシ子は病院に8時に出勤「リュウ、今日と明日は実家に話もありますから、泊まって来ますね」軽くキッスを交わし「気を付けて行ってらっしゃい」 「じゃぁ、俺は8時30分頃迎えが来るから、それに云うまでも無いと思うが、ヨシ子も病人を運ぶのだから、充分気をつけてね」 玄関のドアを開けながら、振り返り「はい、リュウもね」軽く手をあげ出勤した

 竹田君が時間どうり、マイクロバスで家まで迎えに来た、ノンストップで茂木まで運転をする、運転席の後に座った俺は「竹ちゃん、久美ちゃんと旨く行っている?」 竹田君はテレを隠すように左手を首筋に充て「はい、大丈夫です、有難う御座いました」 「まぁ、俺が云う事ではないが、自動車レースの世界、華やかな所だから、可愛いくてスタイルの良い子が多く、色々目に付く人は沢山いるけれど、最終的に自分が本当に心から休める人だと思うよ、人は其々だが、外見だけで、取り返しのつかない事に、ならない様にしないと、久美ちゃんは、人に配慮が有るし気持ちが優しいし、綺麗だし、押し付ける訳では無いが、俺は良いと思うよ」

 竹田君は運転を続けながら、神妙な顔で「はい、今回で、尽くずく分りました、反省しています」 まだ遊びたい時期だろう、返事も上の空だ、俺は少しきつく「何が有ったかは知らないが、中途半端は相手も自分も傷つくだけ、間違いは、やり直す事が出来るが、心の中の傷は一生消すことが出来無いよ」 強く言い過ぎたのか「リュウさんも、以前は..」 俺は空かさず「男だから、解らない事は無いし、竹田君の人生だから、・・でもね一つも良い事なんか無いと思うよ、互いに傷付くだけだよ、だからこそ、後悔しているんだよ!」 俺の反論に逆らってはいけないと思ったのか「はい、解りました」 これは駄目だ!口先だけの返事だな、本当に解っていないな、無理も無い俺もそうだったな、自分に言い聞かす様に「本当かな?俺もそうだったが、人間は愚かだから、経験して初めて判るのかも、それでは遅いときもあるよ」そんな話や新しいスポンサーを監督と心辺りを訪問しているとの話など、途中休憩を取り12時頃、茂木サーキットに付いた

もてぎbrick-img.jpg 時間どうり、孝ちゃんが万遍な笑顔で迎えに出ていた「リュウ、久しぶり、車の準備出来ているから、それに監督からの伝言、午後から1時間練習と調整に予約とって有るとの事、先ず、お昼でもどうぞ」 「孝ちゃん、何時も良く気が付くね、有難う」 「リュウの為だもの」 「一時からか、あまり時間ないなぁー、監督わ?」 「監督、お昼終わって、井原さんとパドックで渋い顔して話をしているわよ」 「他のチーム来ている?」 「あーぁ、リュウは初めてだけど他のチーム今回此のサーキット2回目だから、今夜辺りから準備に入ると思うよ」 「そうなの、じゃー、竹ちゃんとお昼食べて、直ぐ行くよ」 フードコートのカフェでサンドイッチとコーヒーを注文、竹田君と急いで昼食を済ませ、レーシングスーツに着替えて、監督の待つパドックに急いだ

 「監督、井原君ご苦労様です、宜しく」 監督相変わらず、キビキビ手際よく予定をこなす「リュウ走行予約時間だから、直ぐに乗れ」 井原君、油で汚れた手を拭きながら、珍しく笑顔で積極的に俺に挨拶をし、マシーンの説明をし、コックピットえの乗り込みを手伝て「暑いから、もっと風が入る様に新しいブレーキダクトに取り変えて置きました」 「有難う、此処のサーキットはブレーキ使う回数が多いから、助かるよ」 車の調整の事は無論、井原君が明るく俺に話しかけてくれた事の方が嬉しかった、車に乗り込み、例の如く孝ちゃんと井原君に安全ベルトを閉めてむらい、ピット・ロードを出た、先ずはコーナーのチェックから、ゆっくり数回コースを走り、次は全力で、走った

 監督から無線のチェックが有り「タイトコーナーが多いから、余り速度を落とさず、最終コーナーで少しでも早く立ち上がる様に」 俺は監督は矛盾した事を云やがって、それじゃぁコーナー飛び出すよ、と思ったが、出来なければ辞めちゃえ、と言われそうだ、それがレースだ、それを乗り越えた者が勝利に繋がる「解りました、難しいがやってみます」 チェック走行も終わり、パドックに入り「井原君、2速と3速のギヤー比を下げて下さい、コーナーでの立ち上がり少しでもを良くしたいから」

 何処の業界でも、そうであるが、営業と技術者の対立があるとうり、ドライバーとメカニックの対立も多いなか、井原君は俺の一言々を静かにかみ締める様に聴いてくれた「解りました、前のドライバーの好みのままで合わし調整したので、直ぐに直しておきます」 其々ドライバーの癖や好みが違うが、たぶん、俺が機械いじりが好きで、論理的に相談するからだろう、井原君は本当に静かで、冷静沈着とは此の人の事を云うのだと思った、それ以上に最近は笑顔が見られ、技術的相談や彼自身の考えも解けて話してくる 

 「ありがとう、それと、此処のコース直線が短く少ないからダウンホース、前後とも少し気持ち控えて下さい、普通ならダウンホースを増しグリップを良くする所だが、立ち上がりと短いストレートのスピード増したいから、試してみようと思って」 孝ちゃん右手に、ラジェットスパナを握り空回させ胸の辺りでジーイジーイ音を立てながら俺に近ずき「普通はカーブが多く食いつき良く、ダンフォース加えるのに、リュウは、ハッキリ指示して、助かるわ、調整しときますー」 監督の指示が飛ぶ「リュウ今日はもうテスト時間が無いから、明日だ、ゆっくり、身体休めとけ」 「解りました」

 俺は井原君の肩に手を置き「井原君と孝ちゃん、後、調整、頼みます」 孝ちゃん嬉しそうに「今回も、キャンプングカーで寝泊りですよね?」 「ああ」 「一応、風入れ替えてベットも特に綺麗にしたから」云いながら、俺にウインクを送ってきた 「ありがとう、相変わらず、孝ちゃんは、気が利くね」 「リュウの為だもの」 「俺、結婚したんだよ!」 両手を握り胸の処で拳を作り力を入れ、両手を小さく上下に振りながら「もう、寂しい事云うのね、念を押さなくても、解かっているわよ!あぁそれに・・子供のレーシングスーツ置いてありますから」 俺は少し可愛そうと思ったが、冷たく「ありがとう、じゃぁー、先に休むよ」

リュウ横顔1.jpg キャンピングカーに乗り込み、俺のレーシングスーツと海斗の小さなレーシングスーツが並んで掛けてあった、小さくても本物そっくり、思わず、微笑んでしまった、大小並んで、余りにも可愛いく感じ、海斗を思い浮かべ、暫らく眺め、寝る事にした

 翌日朝、監督の声がキャンピングカーの外から聞えた 「リュウ、起きているか?入るぞ!」 俺は眠気眼でドアーロックを外した「はい、おはようござ監督.jpgいます」 監督すっかり身支度を整え、車に乗り込みながら「おはよう、リュウ、例の移籍件、本当に良いのか?家では故障しても予備のマシーンも無いぞ」 「勿論ですよ、迷惑ですか?」 真面目な顔で「冗談じゃぁ無く、せっかくのチャンス何時でも良いんだぞ、俺だったら迷わず移籍するよ」 俺は確り監督の目を見て「もう、止しましょう、決めたんですから、監督だって同じ様な事か有ったら、移籍出来ないくせに!お願いします、それと、子供服ありがとう、御座います」

 監督は俺から目を離し暫くボンヤリ窓の外を眺め適切な答えを模索しているようだ、それから俺に向き直り「かもな!よし、解かった!もっとスポンサー見つけなければ!、リュウ10時からフリープラクテス、着替える様に、先に行って待っているよ」 「はい、ありがとう御座います、スポンサーの件、竹田君も話していましたが、あちこち、あたっていると聞きました、有難うございます」 「ああ、なかなか、見付からなくて」 監督はそれだけ云うと俺の肩をポンポンと軽く叩き行ってしまった

 各チームも集り始めた、早速、移籍の話のあったチームを訪ね其処の監督に移籍の件丁重にお断りした 一流チームの監督すでに其々の事情や他のチームの内情は調べてある事だろう、内心はどの様に考えているか判らないが「龍崎君、何時でも、相談に乗るから、その時は迷わず来なさい」 「はい、有難う御座います」丁重に頭を下げ、我々のチームに戻った

 生徒達を全員引き連れ、北原監督は実戦教育に忙しく指導している、俺が他のチームから戻った事を確認した様だ、メカニック達はマシーンのセットアップに営業の竹田君はスポンサーとスクール宣伝のブースの準備に忙しそうだ、俺は気持ちを落ち着かせる為にコースの再チェックに、今日も朝から気温も湿度も高く暑い、コーナーやタイトなカーブが多く、ブレーキに負担が掛かり、シフトチェンジの回数や加減速が激しく運動量が多くこう暑いと体力とドライバー技量が試させられる所だ!

 いよいよタイムアッタクの時間だ、motegi.jpgパドックでマシーンに乗り込み、3回挑戦し一番早いタイムを取る、今日は路面温度30度湿度が非常に高い、マシーンにも俺にも過酷だ!、両メカニック親指を立て発進準備よしの合図、何事も無かったかの様に監督からの無線通話「リュウ聞えるか?締まって行くぞ」俺は答えながら手で準備OKの合図を送り、監督からのタイムアタック開始の合図

 ・・かなり激しく挑戦、スーツ内は汗が流れで、びっしょりだ、マシーンの立ち上がり良くなり、好タイムが出そうだ、2回目1’35.347 監督「よし!よし!リュウ2番手のタイムだ、良くやった」 3回目は暑さで集中出来ず少しタイムは悪くなった 「監督、とにかく凄く暑くてたまらないす!」

 1回目のタイムアタックが終わり、スタッフ全員大喜び、孝ちゃん俺の手を取りピョンピョン跳ねながら「リュウ、こんな事、初めてだ、嬉しいよ」 「井原さんと孝ちゃん、夕べ遅くまで調整していたから、有難う、とても乗り易くなったよ、ただ暑くて最後までもつか心配だよ」 井原君、下向き加減に一点を見詰めぼっそりと「何とかするわ」 「うん、又午後たのむよ」 2時から2回目1’33.977少しタイムを短めたがやはり、2番目だ、明日のスタート位置はトップラインの外側だ、明日はフリー走行が有るが、直接本番決勝レースに望む事にする、

 一夜明け、今日は決勝レースの日だ、何故か、朝から、ちいちゃな恋人を待つように不思議とワクワクして心が躍っている、海斗君が来る日だ!何がこんなに心躍らされるのだろうか?あの純粋な目で俺を慕い憧れの眼差しか?自分でも不思議に思う、長い道のり、大丈夫かな?とにかく待ちどうしい!、午前中フリー走行が有るので、朝コースの下見をして、メカニック達と食事を取った 孝ちゃん嬉しそうに「リュウ、コックピット暑そうだから、井原さんと、余り効果は期待出来ないが少し冷気を取り入れ、暑さ対策したよ」 「何時も二人共、良く気が付いてくれて助かるよ、ありがとう、監督は?」 「久美ちゃんと、生徒達とで、宣伝ブースへ行っいるよ」 「じゃぁ、監督と打ち合わせに行ってくるよ、マシーン頼みます、暑いの少しでも効果ある事を期待しているよ」

 監督と勿論レースの展開でのトップ狙いを打ち合わせをして、宣伝に忙しそうな久美ちゃんをからかいながら手伝いをして気を紛らせ、海斗達の到着をまった、お昼少し前に孝ちゃんから、ヨシ子達が付いた知らせで、サーキット内のレストランに向かった 車椅子に点滴用器具と酸素ボンベを付けた、元気そうな海斗の姿見つけ、ヨシコと浩子さんの笑顔にほっとした、二人に会釈し 「海斗、来たか!疲れたろう?」 海斗は、あたりを興奮したような目で見回し「リュウ、平気です、凄いですね」 「そうか、冷たいジュースでも飲んでから、案内するよ、とにかく暑いから、ヨシ子も浩子さんもレストランに入りましょう」 浩子さんは、つばの大きな帽子に、涼やかな目にサングラスを掛けながら、辺りを見回し、レース場は初めてであろう 「ビックリするほど沢山の人達ね、時々、雑誌や写真みる事あるけど、こんなに凄いなんって!」 人々は其々の目的の車や、用品、お土産、食料等を求めて賑わっていた

 ヨシ子、浩子さんを横目に嬉しそうに「リュウ、予選どうでした?」 「予選13台中2番だよ」 浩子さん一つも聞き漏らさない様に「龍崎さんはそんなに、成績良いのですか?ビックリしました」 ヨシ子、得意げの顔で「そうよ!一流チームから引き抜きが有ったのよ」 海斗は自分の事のように「リュウは絶対やると思ったよ」 「おぉ!海斗、ありがとう、ヨシ子も浩子さんもお昼にして下さい、此れから忙しくなりますから、ヨシ子!海斗、大丈夫なの?」 海斗を見守りながらヨシ子は竹田君にお礼の言葉を述べた「大丈夫よ、竹田君が気を使ってシートをリクライングさせ、旨くベットを作って、寝かせたくれましたから助かりました、流石にレーシングスクールの皆さん運転お上手ですね、海斗君は少し興奮しているが、病気も気持ちの持ち方で少しは左右する様で、何にか元気になったみたい、でも充分気を付けるわ」

海斗ワー.jpg 各チームのパドック裏を車椅子を押して通り過ぎる「ワァー!ほんものだ!すごいよ!」 「海斗、楽しいか?」 「はい」 「レースは何が起きるか解からないから、最後まで見て、ちゃんと学びなさい、皆、努力して勝利を掴み取ろうと頑張っているんだよ、後でリュウの乗るマシーンに乗せてあげるよ」 「ほんとう?嬉しいな、早く見に行こうよ!」 其処から車椅子をUターンさせ、食堂に向かった「お昼ちゃんと、食べてから、一つずつ、ちゃんと守らないと、元気に成らないよ、リュウも食べて、力付けるから」 「はい」 ヨシ子、海斗の血圧や脈とり診察しながら、何を思い出したのか、きっと、以前俺が話しをした、”腹が減っては戦が出来ぬ..と思うが”あの時の意味でクスクス笑っている、早めの昼食も終わり、海斗は見る物が全て本物、少し休ませたが大分興奮気味だ、俺はヨシ子の顔を見た、俺の心配を擦し 「リュウ、心配しないで、海斗君は、脈拍も血圧も大丈夫よ」

 海斗の為に暫く休息を採り、俺のキャンピングカーでレーシングスーツに着替える事にした、海斗の驚きの顔を早く見たい気持ちで海斗を車椅子から抱き上げた、意外と軽くビックリ!、何の躊躇いもなく俺の首に回した手、何と柔らかく弾力が有り暖かく、初めてだ、嬉しそうにしている海斗の顔に思わず、頬ずりがしたい、思いに駆られた、何だろう、この気持ち?心の底から抱き締めたくなるが、海斗が壊れてしまうだろう、そのままキャンッピングカーに入った、 海斗、見る物全て珍しく「わぁー、これが、リュウの居る所なの?凄いね」 「そうだよ、これが俺のレーシングスーツだよ、この小さいの、誰ーれのだ?」 車中のベッドに海斗を腰掛けさせ、 海斗、目を丸くして「もしかして、僕のですか?」 「そうだよ、チームの皆からのプレゼントだよ」 「本当ですか?頂いても良いのですか?」直ぐには信じられない顔をしていた「海斗のだよ」 「リュウ、ありがとう!、本当にありがとう」

リュウ.jpg 俺はヨシ子と浩子さんを呼んで「海斗を着替えさせて、下さい」 ヨシ子は以前から知っていたので、意味が直ぐに判った ヨシ子は俺に合図を送り「浩子さん、中に入りましょう」 海斗が嬉しそうな笑顔を見せ「お母さん、リュウがスーツ、プレゼントしてくれたの」 「龍崎さん、こんなに気を使って頂き有難う御座います」浩子さんは軽く頭を下げた 「堅苦しい挨拶はもう止しましょう、これチームの皆が協力してくれましたから」 「そうよ、楽しみましょうよ、海斗君、着替えるでしょう」ヨシ子は浩子さんを急かすようにキャンピングカーに乗り込んだ 「じゃぁ、車狭いから、着替えるまで、俺、外で待っているよ、着替えたら呼んで」

 待ってる間にも観客にサインをお願いされ応じていた、着替えが終わり、海斗が浩子さんに抱かれて、得意げな顔で出てきた 「おお!海斗、カッコいいよ!決っているね!」テレているが嬉しそうな笑顔だ「リュウ、ありがとう」 俺は親指立て「海斗、決まっているよ、グッググーだよ、今度は俺が着替えるから、そこで待っていてね」 浩子さんと車椅子に戻った海斗を残し

 俺とヨシ子が交代、着替えに車に乗り込みドアーを締めた途端、ヨシ子が俺の首に手を回し抱きついてきて軽いキスをして「逢いたくて、寂しかったわ!」 「実家で何か遇ったの?」 そのまま俺に密着し見詰め「いいえ、ただ、逢いたくて、それと、レースの後で、報告があるの、着替えましょう、手伝うわ」 「どうして、後なの?」 「いいから、心配しないで、良いことよ」 俺は其のとき、勝手に結婚式の事だろうと思い、それ以上質問しなかった

 レーシング・スーツに着替え、外で待っている、海斗と一緒にパドックに龍崎 健司.jpg行くことにした、海斗は俺と一緒に歩くと言い出し、ヨシ子からOKのサインがあり、俺は海斗を抱き上げ、地上に立たせた、海斗は少しフラついたが大丈夫のようだ、それより、なんの疑いも躊躇も無く俺の手を確り握り、懸命に俺に従い歩いた、俺の顔を嬉しそうに見上げる瞳は信頼に溢れて見詰る瞳は青く澄んで、何の疑いも無く喜びにキラキラ輝いている..なんだろう?小さな手から、柔らかく、暖かい何とも云えない温もりが俺の心を弾ませ、じんわりと心に伝わる、何だろう、この暖かさ、この軟らかい感激、説明が付かないが心がワクワク踊っている?..そんな俺自身に戸惑い驚く!?

 例の如く、ファンにサインを求められ囲まれてしまった、仕方なく車椅子に海斗を戻し、サインに応じた、浩子さんも、この観衆や初めてのレース場の華やいだ雰囲気に興奮している様子「龍崎さんて、凄い人気ですね」 海斗も自慢げに、嬉しそうに、見ていた、5,6人サインをして「皆さん、御免なさい、もう時間が無いので、又後で、お願いします」俺は後ろに振り向き浩子さんの耳元で「....浩子さんの事も皆さん憧れの眼差しで見ていますよ」 「まぁ!龍崎さん、お上手ね」 「本当のことですよ」 ヨシ子と浩子さんが並んでいると本当に男達は皆、二人の雰囲気に圧倒された眼差しで通り過ぎて行く

 海斗1.jpg車椅子を押し海斗をパドックに連れて行き、約束の俺達のマシーン(車)に乗せて上げる、これ又、海斗が大喜びだ「リュウ、凄い、凄いよ!、僕も早く運転したいな」 「そうだよ、今度はリュウと競争だね」 「駄目だよ、リュウに絶対負けるから」 「どうして?まだ海斗は戦いもしないうちに、負けちゃうの、駄目でしょう!此れから海斗は元気に成りリュウを負かして、チャンピオンにならなくちゃ、リュウ、悲しいな!さっきも言ったでしょう、何でも、最後まで諦めては、駄目と、約束したでしょう」 「リュウ、判った、約束するよ」「約束だぞ!」 「はい」 監督も嬉しそうに目を細め見ていたが 「そろそろ時間だぞ、リュウ準備に入れ」 「はい、よし気合を入れて行くよ!・・海斗、交代だ!」 海斗を抱き上げ、親指を立てた、海斗はリュウに笑顔で応え「リュウ、頑張ってね!」 「おぉ」 そのまま海斗を浩子さんに抱き渡し、暫くヨシ子と監督を交え雑談をして気持ちを落ち着け、ヨシ子に目で行って来るよの挨拶、ヨシ子は俺の目を見ながら首を微かに立て一度振った、それだけで二人には全て心が通うじ合っていた

 レースクイーンに宣伝用ビッグ・アンブレラを差されスタートラインに運ばれたマシーン(車)に向かう、大きく深呼吸、気持ちを落ち着かせマシーンに乗り込んだ、例の如く、井原さんと、孝ちゃんに安全ベルトを確り締めて頂き、両側の脇から肩を叩かれ、グットラックの声を掛けてくれた、俺も、親指を立て、ステアリング(ハンドル)を確り握り締めた、監督から無線チェックを兼ねた声がヘルメットの中に響いた 「落ち着いて、行けよ」 「はい」 フォーメイションラップだ、エンジンが掛けられ、全チームのメカニック達が立ち去る、先導車に従い全車順次走り出す、ウォーミングアップの為、時々蛇行運手をしながらタイヤを暖める、油圧、水温のチェック、一周して先導車がパドックに入る、

リュウヘルメット.jpg 二番目のスタートラインに付く、外側の最前列だ、前に何も無いが、やけに後ろが気になる、エンジン音が一斉に高鳴るがこの待ち時間は俺にとっては、何も耳に入らず静寂だ!俺の心臓の高鳴りだけが、やけに大きく感じる、この緊張間、何回経験した事か、全く馴染めない、各コックピットに収まったレーサー達は目が爛々と燃える様に輝き、此のときばかりは皆、孤独のオオカミであろう、最後尾のマシーンもスタートライン付いた、

 スタート合図のシグナルランプがつき始める1,2,3,4,5全て付き、次の瞬間ブラックアウト全て消える、同時にクラッチバドルを放す、スタートだ!、フロントタイヤが廻り始める、もう一度クラッチを引きながらシフトアップ、アクセルを床が壊れるほど踏み込み、第一コーナーに傾れ込む、旨くトップを押さえインに付く、コーナーぎりぎりで、今度は思い切りブレーキング、フロントのブレーキデスクが熱をおびて真っ赤に染まる、すかさずシフトダウン、その瞬スタート事故1jpg.jpg間何か後ろから押され、マシーンが回転し舞い上がった、空と地上が逆さに見え、そのまま意識が無くなった(其れらはこの小説の冒頭通りである)

 後は関係者の皆さんから、総合的に纏め、係員とオフシャルの人達の助けにより、第一コーナーのエスケープゾーンの砂地に真逆さまに着地したマシーンの下から駆けつけたオフィシャル達と俺を引きずり出し、監督とヨシ子が駆け付け、私は医師ですからと関係者に伝え、俺の脈を取り、呼吸を確認して、ヘルメットを外し、頭、首、胸、腹、腰、手足を順序良く、手のひらで、さすり押さえ負傷箇所の確認をした

監督に救急車を要請、係り員が無線でレース場内の救急車を呼ぶ、ヨシ子の冷静な声で「何処にも骨折も出血は無さそうね、多分、後頭部の強打により、気絶と思いますが、無闇に動かさないで下さい、それから誰か近くの、病院に連絡を取って下さい」 救急車と救急隊員が到着、其の後、レースを中断される事も無く、俺の事故車も取り除かれペース・カーも安全を確かめ続行した

もてぎ観衆.jpg 事故を見ようと集る観衆、サーキット内の救護班も到着し、外科の専門ドクターも見え、ヨシコ先生の診断通り、茂木駅付近の整形外科の病院に運び込まれた、ベッドで俺が目覚めたのは30分足らずと、思われる、母と思ったのは、ヨシ子の声の様だ、でもあの小ちゃな女の子は何だ!

 「リュウ、深く深呼吸して見て、何処にも痛み感じない?」 「うん」 「はい!もう一度、深く息をすって、どう痛い所ない?」 「大丈夫だよ」 「次はお腹出して」ヨシ子は俺のレーシングスーツのジッパーを全開に下げ、胸や腹をあちこち、手のひらの指先を揃え押して「痛くない?」と真剣な表情で質問してきた 「痛くないよ」 「両足の爪先、動かして、痺れた所はない?」 ヨシ子に診察を受ける何って、変な気持ちだ、つい「しびれた処?ヨシ子先生にだよ」 ヨシ子は冗談と気が付かず「うん!私ではなく?・・・リュウ!」気が付いたようだ、すこし怒ったような声で「冗談では無いのよ!、本当に危なかったのですよ!如何なの次は両手握って、開いてー、どう異状ない?」 「大丈夫だよ」

 少し安堵の表情を見せ「自分で移動できる?」 「出来るよ」 「大丈夫か?」此処の医院の寄り掛かったら、倒れてしまいそうな、痩せた、お年寄りの先生の助けをかり、レントゲン室に移った、直ぐにX線の検査を受け、首、背骨を重点的に、何処も異常が診られなかった脈拍と血圧を測り「良かった、此処の先生と改めて首から下のレントゲンを検査をしたのですが何処も異常が無いようよ、まだどこか痛みがある?、体全体を診察ましたが今の所、内出血もなさそう、はれた処も無い様ね、異常を感じたら、直ぐ教えてね

 先ほどまでの甘えていたヨシ子ではなく完全にドクターだ 「先ほど、横浜の私の所の病院にベッド予約入れましたから、今日は其方に泊まり翌日、頭と脊髄のMRIとCTスキャンをします、リュウ分りましたね」 何時もなら大丈夫だからいいよと云うところだが、おもわず「ハイ、分りました、先生、それで海斗達は?」 思わず先生と応えた俺とヨシ子の会話が可笑しく感じたのか孝ちゃん笑いながら「海斗くん、リュウが最後までレース見なさいって、約束だからって、リュウの事、心配でたまらないのに唇噛んで、動きませんでした、かえってその方が私達に都合が良いので、其のままレースが終わるまで浩子さんとチームの皆さんとで観戦しています」

 「そうか、海斗はもう、レースを見る機会が..じゃぁ、俺はどうやら大丈夫、海斗も大丈夫そうだから、皆を待ってからにしょうよ、良いでしょう?ヨシ子」 「ええ、そうしましょ、浩子には海斗の緊急処置話して有るし、何かあったら電話する様に、伝えてあります」 監督は安心した表情をみせ「リュウ、大丈夫そうだから、サーキットに帰って、後片付けに、戻るよ!」 孝ちゃん、唇の所に両手を合わせ静かに近ずき「リュウ、本当に心配したんだから、缶コーヒーとソーダ水、置いていくよ」 「ありがとう、相変わらず気が利くね、コックピット涼しくなったか、判らない内に終わちゃって、井原さんにごめんと伝えておいて、皆にも、大丈夫だから、宜しく云って」 「伝えておくわ」 監督もほっとした様に「解った、レース終ったら、竹田君と海斗君達を、此処に寄こすよ」 監督達はサーキッドに戻った

 暫らくは、ベッドの上の俺とヨシ子だけになった、「リュウ何処か痛みと腫れてきた所無い?」 「痛みは安全ベルトの跡くらいかな、腫れてきた所は..此処」 俺の股間を指差した、俺はこの張り詰めた緊張をほぐしたかった ヨシ子は呆れたように少し怒って見せた「バカ!もう本当に心配したんだから、お腹とか胸よ、内出血が有ったら、本当に恐いのよ」 「ゴメン、大丈夫、何も無いよ」 もう一度、俺の体を調べながら「無いのね、良かった!」

 ヨシ子はやっとホットした顔になり、ベッドのクランクを廻し俺を起し、缶コーヒーの蓋を指先が痛そうに開け、俺に渡しながら「本当に驚いたんだから 震えるほど恐かったわ、私の方が心臓止まりそうだったわよ!、駄目ね、こんなに冷静さを失うなんて!、さーぁ、コーヒー飲みなさい」 緊張が解れたのか、缶コーヒーを渡す手が小刻みに震えていた、ヨシ子の手を握りながら、内心もう止めて欲しいと言いたのでは?それをじっと我慢しているかなと、勝手に想像してしまい、美奈子の時の事が甦り、またレースを辞めなければと不安が襲った

 俺は自分の不安を打ち消す様に「有難う、助かったよ、心配かけ御免!..レース前に話があるって?」 ヨシ子はベットの俺の膝辺りに頭を預け、俺の手を握りながら「こんな時に、告げたく無いけれど」 「いいから、話してくれよ」 暫く考えている様子で思い切った様に顔を上げ「..リュウ、出来たの!ハッキリするまで云えなかったが、少し前から体調が変だったので昨日産科で調べていただき、3ヶ月だって、きっと最初の日か二日目にリュウと結ばれた時と思うわ」 「出来たって、子供?本当かよ!、夢の続きじゃ無いだろうな?」 「女にはなんとなく解るのよ」 ヨシ子怪訝そうな顔をして「ゆめって!頭!大丈夫!」

 「うん、後で話すよ、さっき気が付く前に、変な夢見ていたんだ!それで」・・「それより俺の子供?..何か実感ないよ!、如何して何時の時か分るの?」 俺は子供と聞かされ、それほど戸惑いも無かったが、ハッキリ云って他人事の様に感じ、本当に自分の子供に対しての実感は無かったが、重大な事である事は理解出来、受け入れ無ければならないと思った、大喜びする男もいるが、そんなに嬉しく思うのか、今の俺には解らない、正直、自分の家庭や子供?そんな事考えも及ばなかったから、まだ俺には遠い先の事と思っていた

 俺の気持ちを察したのか「もっと喜ぶかと思ったわ!」 本当は子供が出来た事を喜べば、よい事は解っているのだが、俺は今の気持ちに正直に「何か、実感ないよ」 少し落胆した様であったが 「・・男は実感湧かないよね、自身のお腹ではないからね、皆そうだと思うわ、リュウは何時も本心で言うから、心にも無い事を云はれるより、その方が、いいわよ、それより..お腹、さわる?」 「え?どうして」・と質問したが、慌てて、訂正した・「うん」俺は余り無関心ではいけないと重い慌てて”うん”と言い返した、 ヨシ子は立ち上がり、俺の頭をお腹に引き寄せた、俺は耳をお腹に付け、暫く聞き耳を立てた 「何も、解からないよ..?」

  それより、思わぬ事故に、懸命に耐えているヨシ子を愛しく切なく、又、子供の事もあり、以前の事がよりいっそう甦りレースを辞めなければならないかと思わず俺はヨシ子を抱き締めた、何も言葉が浮かばず俺は..只々、不安を感じそのまま頭を幾度と無くヨシ子に押し付ける事しか出来なかった、

 ヨシ子は俺の不安を感じ取ったのか優しく俺を抱き「リュウ、解かっているから、良いのよ、何も云はなくて、解かっているから」 かえって、優しく慰められ、ヨシ子のお腹に俺の頭を優しく、そっと押し付け 「良いのよ、安心して、私は大丈夫よ、此の子が出来たからと云って、リュウにレース辞めてとは言はないわよ」 ヨシ子を..此れほど、愛しく、切ない思いを感じた事はない、

 ヨシ子はなおも明るさを装い「それに体調の変化はあったが、子供の事、私にもあまり実感湧かないの、でもね此の子が、リュウの事、確り感じていると思うから」 ヨシ子は俺にお腹を触らせる事で、無意識に俺達の子供を少しでも俺に意識させたかったのだと思う 「うん、解かるのかなーぁ?」 

 「そうよ、リュウの子ですもの、少しずつ、お腹大きくなったら、リュウも実感するわよ、リュウと出会った事も不思議なのに、リュウの事が堪らなく好きになり、リュウからの沢山の精子から選ばれた、たった一つの精子が私のたった一つの卵子と出会い最初に細胞が二つに割れた時から新しい生命が生まれたのよ、それが四つになり八個になって徐々にDNAによって遺伝子が形成され、やがて二人の魂を受け継ぐのよ、性は生なの大切な命なのよ、リュウと出合った事も奇跡なのに、なんって神秘的なんでしょう..きっと此の子がリュウを守ったのよ」 やはり、こんな時も説明が医学的だ、本当に俺の子供が出来たのだと、俺に理解出来る様にの配慮だろうがピンとは感じず 俺は夢の中での子供の出来事を思い出しそれに重ね合わせ「本当に神秘的だね!」

 自分でも意味不明な事を口走っていた「俺もそう思うよ、..と云うか、信じた方が俺とヨシ子とお腹の子が幸せにいられるよね、だからヨシ子の云う通り此の子が俺を守った事、信じるよ」 ヨシ子は呆れた様に「もう!素直じゃあ無いから、これは現実よ!もう!理屈屋なんだから!」 本当に実感は無く「俺、形ちの無い物は信じられないが、今回だけは違うよ!、そんな気がする!きっと女の子だよ、あの夢もそうだ!」 そうか、俺の何処かで、子供は邪魔になりレースを辞めなければ、ならなくなる、恐怖があり、それがあの夢の赤ちゃんとなって、現われたのかもしれないと思っていたが又、俺の潜在意識の中に子供は女の子が良いなと思っていたからなのか?、それに、ヨシ子を失いたく無いとの思いも強く有ったから、あんな夢を見たのか?

 ヨシ子は俺が今回の事故も遭って、子供のことと混乱しているのではないかと思ったのだろう、優しく「今は調べれば簡単に子供の性別は判りますが、まだ男の子か女の子か聞いていないわ、フッフッフ、リュウの希望的観測ね、女の子が欲しいのね」 「かもね」 そうか、もし子供だ出来るのなら女の子がいいなと無意識に心の奥底で考えていたのかも知れない 「ねー、リュウの見た夢って!詳しく聞かせて」 「俺も理解できない事が多くて整理して後でゆっくり説明するよ」

 「夢って、理解出来ないそんなものなのよ、でも聞きたいわ、後で話してね、リュウの心の奥底の潜在意識が見えるかもね、冗談よ」 「うん、何時だって、全て俺の気持ち知っているくせに」 「どうかな? 私、感じたの、リュウの海斗を見る目、お父さんの様だった、さっきほど後から見ていて、浩子も、感じていましたよ、海斗君があんなに懐き甘えて、本当のお父さん見たいだって、将来のリュウの姿、見えた様で、嬉しかったわ」

 俺は海斗が懸命に俺に手を差し伸べる仕種を思い浮かべ「何んだろうね?..海斗、何のためらいも無く、其れが当然で有る様に何の躊躇も無く心から信頼して、俺の手を握って来るんだ、マジ俺、子供は煩くて、嫌いだったよ、でもあの感触..何とも云えないよ、小さくて、風船見たいに弾力があり軟らかく、温もりが有り、笑顔で無心に俺を見詰める、全てを信頼し懸命に握って来るあの小さな手」..あの感触を思い起こすように、俺の手のひらを眺めながら..

 「ヨシ子とは、又違った、愛しさを感じるよ」 ヨシ子は嬉しそうに「それだけ、リュウの心に余裕が出来たのだと思うわ、良かった!、もう直ぐ会いに来るリュウと私の子供に、優しく出来るね、私も確りしなくては、今のリュウ選んだのだから」 もう一度訊ねた「ねー、気絶している時に見た夢ってなに?知りたいわ」

  暫らくすると、海斗の興奮した甲高い声が聞こえてきた、レースも終わり、竹田君と久美ちゃんが、浩子さん、海斗とを連れ戻った、浩子さんは心配そうに「駄目かと思いましたが監督達に伺いまホットしましたが、本当に大丈夫なの?」 ヨシ子が医師の立場であろう、お腹を擦りながら、それに応えた「今の所この子の御蔭で奇跡的に、何の異状もないようよ、横浜に帰って精密に検査しないと」 子供の事はレース場に来る時にでも話していたのだろう、浩子さん、ほっとした様に「ヨシ子が付いているから、大丈夫と思ったが、よかったー」

 浩子さんは車椅子を俺のベットの脇に押して海斗の顔を真近に寄せた「リュウ、やっぱり大丈夫だったね、信じていたんだ!でも..心配だったんだ、リュウが最後まで見なさいって」 海斗の中では、きっと俺はウルトラマンか仮面ライダーそんな何かだ! 「そうか、レース面白かったか?」 「うん、リュウが一番だったのに、後ろの奴は汚いよ!」 「海斗!それは違うよ!俺が後ろなら同じ事に成ったかも知れないよ」 海斗は大きなめをもっと大きく見開いて「リュウはそんな事しないよ!」 「海斗、俺も、皆も、レースをしている人は皆勝とうと思って戦っているのだよ、避けられない、事も有るんだよ」 「デモ」 「海斗、デモはいけないでしょう、リュウの事、応援してくれて、嬉しいけど、相手の車もダメージを負ってしまい、相手の人も死んでしまう事もあるんだよ、皆フェアプレイで戦っているから、..さあ、お腹空いただろう?何処かで美味しい夕飯食べて帰ろう!海斗は何が好きかな?」

 竹田君久美ちゃんと心配そうに後ろに控えていたが「キャンピングカーから、龍崎さんの着替え持って来ましたから、それと久美子、一緒に横浜に行きますから」 「ありがとう、ご苦労さん、お願いするよ、着替えて行くから、車で待っていてよ」 俺はベッドから降りようとしたが、検査の時までは緊張で打撲の痛みを余り感じ無かったが痛みが出てきたようだ、滅多の事に痛いとは言はないが、思わず「いたたた!」 ヨシ子思わず俺に手を貸し「大丈夫?、着替え手伝いますから」

 着替えながら竹田君達の事もあって「竹田君達、今日朝から大変だったから、何処か横浜に泊めて上げ様かと思って、ヨシ子、港未来のホテル予約取ってよ」 二人の事を話した事が有り、ヨシ子は察しが良く「分ったわ、一部屋でいいのですね」 「ああ、海斗君の事で迷惑掛けたから」 「リュウって、優しいのね、こんな時まで」 「俺、監督に連絡入れるから」 携帯から監督に「リュウですが」 「おぉ、大丈夫か?」 「はい、少し痛みますが、大丈夫です、それとマシーン(車)どうですか?」

 「そうか、余り無理するなよ、井原君が調べた処、やはりチャーシ(車体)に皹が入り駄目だそうだ、ダメージの処の写真撮って、明日、リュウの診断書と保険会社に掛け合って来るから」 (皆レース前に車もドライバーもピットの中で働いている人達に普通の保険より、かなり高いが掛けてある、車が作業員の中に飛び込む場合もあり何処で何が起るか知れない)

 「そうですか、宜しくお願いします」 今後レースが続けられるか、不安が過ぎったが、それには触れず 「それに竹田君達、遅くなりますから今晩、横浜に泊めていいですか?明日久美ちゃんと竹田君、休ませて頂けますか?」 監督暫く考えている様子だったが「そうだな、明日は事務所は休みにするから、大丈夫だ、あの二人此処の処休まず、働いて居たから、俺からもゆっくり、休んで来いと、伝えてくれ」 「はい、有難う御座います、やはりマシーン駄目ですか、..休みの件二人に伝えておきます、また後で」 ヨシ子もホテルの予約出来た様で、俺達は横浜に向かった  途中で夕食を取り、海斗は、興奮してレースの話で夢中だったが流石疲れ、マイクロバスの倒したシート席でベッドを旨く竹田君に作って頂き、すやすや、寝てしまった

 海斗の母、浩子さんは、今までに無い別世界を見その上、俺の事故、海斗の生き生きし輝き、興奮した別の顔、全て初めて体験、一度に味わい、何から話して良いか、戸惑いながら言葉少なく 「海斗が何時までも子供と思い、気が付か無かったわ、別な面を知り、何時に間にこんなに成長して居たのかビックリしているの」 ヨシ子は自分の考えが正しいと確信したのか「海斗君なりに、お母さんを自分の病気で苦しめて、悲しませていると思い、反って浩子に、気を使っていたのよ、今日、本当に浩子に甘えられる子供になったのよ、あれは駄目、此れは駄目で浩子が悲しい顔ばかり見せていたから」

 俺は知らずしらずヨシ子より浩子さんに助け舟を出していた 「もう、浩子さん解かっているよ、此れは、長く看護した人しか、判らないよ」 「以前、俺も、どんなに、投げ出したく思った事が有ったか、誰に訴えても、お前の奥さんだろう、当り前と云はれるのが落ち、と決め込んでしまった自分と重ね合わせ 「..どんなに、疲れても、世間からは、母親だからて、当たり前だろうって言はれ相談も出来なくなり、口先で”分るわ”と言ってる人が本当に追い詰められた人をどれだけ解かっているのか?」どちらでも無く俺の経験を愚痴を交え口走っていた

 「何の助けにも成らない、口先だけの言葉など要らなくなってしまい、看護で本当に疲れきり、思考力も失い、相手に許しを乞い、泣きながら殺さなければならなく、自分も自殺してしまう、そんなニュースなど聞くと、どんなに惨めに苦しんだか、心が締め付けられ、切な過ぎてたまらないよ、

 むしろ、見た目は同じでも、感情を入れず仕事と割り切れ義務だけで看護出来る人の方が楽でしょう、これは長期に心から患者を思い愛し看護した者しか解らないよ、浩子さんの気持ちも解ります」 尚も俺は自分の事の様に喋り

 「でもね、俺もそうだったが、浩子さん、一人で抱え込まず、気軽に皆に話してみたら、ヨシ子は、浩子さんに分って欲しく、医師という立場を超えて危険を冒しても、力になれればと、思ったからでしょう、もっと素直に苦しさをぶっけたら、いいよ」

 つい長々と俺の思いを話してしまった、浩子さんは海斗の寝顔を見ながら頭に手をやり「はい、皆さんのおかげで、海斗があんなに生き生きして、心から笑った、笑顔、何時見たかしら、皆さん!ありがとう御座います、今日一日、皆さんの暖かい気持ちが、本当に嬉しく心に沁みました、何か、気持ちが楽になったようです」 ヨシ子ホットした様に「浩子、本当に良かったわね、竹田君とクミちゃん、疲れているのに、有難う」 竹田君も久美ちゃんも話に入り込めず「いえ、仕事ですから」 と笑顔をみせた

 横浜の病院に付き、俺はヨシ子からの要請で一晩病院に泊まり、明日検査をする事に、竹田君に明日休みが取れ久美ちゃんと、横浜見物出来る事を伝え、海斗を病室へ無事戻し、俺は外科の一般病棟に、ヨシ子「私達、帰ります、パジャマと洗面用具バッグに入れてありますから、リュウには、ちょっと、看護婦さん危険だな、私も泊まろうかしら?・・冗談よ!帰ります明日ね」

 浩子さんは神妙な面持ちで「龍崎さん、今日は、本当にビックリ、大変な事に成り心配しましたが、大事に成らず、安堵しました、どうぞ、お体、無理をせず、ゆっくり休めて下さい、海斗と私の為、今日は本当に有難う御座いました、御蔭で随分と気持ちが、楽になりました」 「まだまだ、此れからですよ、一人で抱え込まず、何でも皆に話して下さいね」 「はい、解りました」

  俺は「竹田君、久美ちゃん、ご苦労様、明日はゆっくり久美ちゃんと横浜を楽しんでね、夜景も綺麗だよ、運転気を付けて」 竹田君は嬉しそうに「はい、有難う御座います、龍崎さんもゆっくり、休んで下さい、それでは、失礼致します」hospital.gif ヨシ子は担当の看護師さんに、俺のバッグを渡しながら俺をお願いして 「リュウ、分っているでしょう、看護師さんの云う事聞いてね、じゃぁ明日ね、・・看護師さん、お願いします」 全く子供扱いだ

 皆と別れ、担当の女性の看護師に案内され病室へ、先ほどまでは、緊張の為だろう、余り痛みも感じなかったが、体中が痛む「オーォゥ、あっ痛タタ」 看護師、俺を支え「余り痛む様でしたら、先生に鎮痛、消炎剤出して頂きましょうか?」 やっぱり、お年寄りの男の先生よりこっちの看護師の方が柔らかくて、いいや 「いえ、大丈夫ですから、余り薬には頼らない様にしていますから」 看護師は俺のバッグを持って、俺の脇を手で支え「薬も時には良いのですよ、病室に案内します、..ベッドは此方です、荷物はロッカーに入れて下さい」 六人部屋の病室、奥の窓側のベッドに看護婦さんに案内され2、3の空きベットが有り後は誰か居る様子、カーテンが締めてあった、向かいのベッドには左足をギブスをされ吊り下げられている若者に、俺は「宜しくね」と挨拶を、若者は俺にペコリと頭を下げ「宜しく」と軽く挨拶を交わした

 看護師は不思議そうな顔で「あのうー龍崎さんは、鶴見先生の..?」 「ええ、結婚式は未だですが、最近入籍しました、多分先生の名札が変わっていると思いますが?まずかったかな!まだ話してないのか?」 「鶴見..いいえ、先生とは病棟が違いますが、噂で結婚した事を耳にした物ですから、明日、朝食後、直ぐにCTの検査ですから、一応検温と脈拍・血圧診ます、着替えて、何か、異常が有りましたら、このボタンを押せば直ぐ来ますから」  あぁ、なんて長い夜か、「眠れないな 缶コーヒーでも買いに行くか」 「龍崎さん、今日は、安静にして下さい、打撲があり、後から何が出るか解りませんから」 「まさか、お化けは出ないでしょう、ただコーヒー飲みたっかたから」 看護師は冗談には耳をかさず、すまし顔で「冗談ではありませんよ、ちゃんと守って下さい!」

 看護師はおもむろに、俺の腕を取り脈を計る 俺は又冗談を思いつき「看護師さん、俺の脈速いでしょう」 「いいえ、正常ですよ」 「おかしいな、こんな美人に手を握られて、血圧も高くなって、いるはずだが?」 看護師は少しも顔も崩さず、すまし顔で「龍崎さん!冗談でしょう、眼科に行った方が、目が、お悪いじゃぁないですか?血圧も正常ですよ」そんな患者がいるのだろう、あっさり交わされてしまった 「いやぁーそんな事無いよ、看護師さんが菩薩様に見えるよ」 尚も澄まし顔で「はいはい!今日は静かに寝て下さい、体温計、ピッピッピと鳴るまで脇に挟んでください、コーヒー届けるまでに検温して下さいね」 「はい、こうですか」

 「ええ、私、行って来ますから、その他欲しい物ありますか?寝ていて下さいよ」 「看護婦師さん!」 「え!何か?」 ベッドの上掛けを捲り開いた所をポンポンと叩き「だから看護師さんが、可愛いから」 すぐに冗談と解り「もう、ヨシ子先生に云いますよ、今日は静かに寝てください、余り、うるさいと、注射しますよ」 「注射は俺が太いの持ってるよ」 呆れたように笑いながら「もう本当に安静にしていて下さい、本当にヨシ子先生の旦那様ですか?考えられない!」 「解りました、眠れそうにないから、話したくて」 看護婦が部屋から出て行くのを見て

 向かいの若者が「クックク」笑いを堪え「お兄さん、やるじゃーん」 俺は「如何したんだ、其の足」 「バイクで転倒!やちゃった!」 「そう、無闇に飛ばすから」 「如何して分るんですか?お兄さんは、痛そうにして?」 「お前と、同じさ、車だよ」 「人の事言えない、じゃん」 「まあ、な」 そんな話の中、先ほどの看護師が缶コーヒーと薬を届けてくれた「龍崎さん、痛むようでしたら、この炎症鎮痛剤を置いて行きますから、服用して下さい、それとコーヒーです」 「ありがとう、優しいね」看護師さんに手招きして、耳かして、小声で「出来たら、ここに添い寝してくれる?薬飲むより痛み取れると思うよ」 「もうー、龍崎さんわ!、いい加減にして下さい、結婚そうそうでしょう、先生に言付けますよ..今晩当直ですから、痛みが有りましたら、知らせて下さいね、おやすみなさい」笑いながら出て行った、 暫らくは眠れず、ここ一ヶ月目まぐるしく、過ぎた日々を考えているうちに、さすが、疲れで何時の間に寝つきました

 翌朝起き上がる時、足や肩の打撲等が少し痛みを感じ安全ベルトの跡が残る程の衝撃が有ったものと思はれ、改めて幸運だったと思た、夕べの看護師が「龍崎さーん、おはよう御座います、如何ですか?何処か痛みますか?」俺の手を取り脈を計る 「おはよう、大丈夫です、夕べは泊りで大変でしたね、一緒に帰りましょうか」 無視して「龍崎さんは、此れからCTの検査です、他の看護師が迎えに来ますから、分りましたね」..笑顔で「鶴見先生に叱られますよ」 「恐いからね、はい!分りました」 笑いながら、行ってしまった  向かいの若者「ハハァハ!又振られたね」 「まあな、又わ無いだろう!看護師さん照れているからだよ、本当は俺の良さが解かっているよ」 「気楽な人だね、思い込み激しいんだよ」 「そうかな?」 「ほんと!気楽だね」

 突然、三十代後半の青白く、切れ長の瞼、涼しそうな目をした清潔で頭の良さそうな秀才顔の男の先生が病室の誰かを探すようにゆっくり、ベットの名札を見ながら、俺の前で立ち止まり暫く立ち名札確認、暫く睨み付ける様な目で見ていたが、慌てた様に小さな声だが俺に聞かすように 「此処ではないか」 人を探している素振りで出ていった 何故か俺の心が騒いだ、向かいの若者に「何時も先生の診察何時頃だ!」 俺の厳しい言い方の質問に若者は少し驚いた様に目を見開き「普段、一時半から二時頃からだけど、如何かしたの?」 俺は言葉を投げ捨てる様に「何でも無い」 ..何故か胸騒ぎを感じ、直感したきっとヨシ子の元彼だな、何故か変んな、確信をした..噂を耳にして、俺を確かめに来たのかな!..出来るなら会いたくは無かったが..以外にも、俺は平常心で何の怒りも感情も湧かないが、違って欲しい気持ちもあった、如何見ても動物的な男では無く余り印象的では無い人だ、俺なら別れた彼女の男などわざわざ見には行かない、其れにしても少しも怒りを覚えない、俺はヨシ子を改めて、心から信頼してるからだと思った、俺も変わったな。

白衣の佳子1.jpg CT検査も終わり、お昼少し前にヨシ子が病室に、久振りにヨシ子の白衣のキリリとした姿を見て、あの頃の事を思い浮かべ、何か不思議な想いでした 真面目顔のヨシ子「おはよう、でもないわね、其処の、おバカさん」 流石に職場で俺の名前は呼びずらいのか、俺と向かいの若者が同時に「はい!おはよう」 ヨシ子はテレながら「あら、其方にもおバカさんがいたの、今日は此方のおバカさんに用があるの」俺の周りのカーテンを引き 「リュウ、CTの結果異状無いですって、良かったわ」 「うん、そうだね、今日は営業用の顔?」 「も~ぅ、からかわないで、このまま、直ぐに、帰っていいそうよ、かえる?」 「海斗に会って、から帰るよ」 「私、まだ診察残っていますから、今日はリュウ、家で休んでいなさい、そうそう..看護婦さんに、何か言ったの?楽しい人だって!」 俺、首を振って「うんうん、べつに、何んにも」 「まぁいいわ」

 ベッドから降りるときに、足と太ももの付け根、両肩がベルトの後も残り赤く腫れて痛かった いたずら坊主でも、見るように、着替えを手伝いながら 「太腿付け根、少し鬱血していますね、此れなら直ぐに直ります、塗り薬頂いてきましたから、ぬりましょうか?」 「いらないよ」 「だめです、見せなさい、青黒く腫れますよ」肩と太腿の付け根を塗り終わり、俺のお尻を軽くピシャリと平手打ち 「痛いなーもう」 「はい、これでいいですよ、今日、家の事、私全部やりますから、おとなしく家で休むのよ、いいわね!」 「うん」

 「CT検査ヨシ子も診たでしょう?」 「何か?聞きたい事有るの」 「うん、脳の中、輪切りにして診れるでしょう」 「ええ!どうして?」 「じゃあ、脳の中にヨシコ、ヨシ子って、書いてなかった?其れとヨシ子の裸写っていたでしょう」 「なんだ!心配するでしょう!..私の名前だけで無かったよ、あやしいな?私のでは無く、変な女の裸写っていましたよ」 「そんな事無いよ!一本取られたな、じゃぁ後で」

 俺は着替えをすませ、カーテンを空け、向かいの若者に「じゃーぁな!」 若者「先生の旦那さん?」 「そうですよ、其方のおバカさん!何か?」ヨシ子は頭を傾げ、問いただす素振りをした、 若者は気恥ずかしいのか、俺に向かって「ええ!ありえないすよ、こんな綺麗な先生と!..言ちゃいますよ!」 ヨシ子俺を見て「あら、何か有ったんですか?」 俺は慌てて色々喋られてはと「何んでも無いよ」 若者に向かって「あんまり、飛ばすなよ、お前だけでよかったが、人でも遣ったら、取り返しつかなぞ、親に心配かけるなよ」 「ハイ、分りました」 「やけに、素直じゃないか、じゃぁーな!」 「ちょっと!..あのーう、龍崎さんはレーサーなんですよね、記念に足のギブスに何か書いて下さい」ギブスには仲間のサインや悪戯書きが大分あった、多分検査中、看護師に俺の事を聞いたと思われる 「俺でいいのか?」 ヨシ子は笑いながら「この人のサインむらったら、また怪我をしますよ」 マッジックペンを俺に渡しながら「大丈夫です、お願いします、レース見に行きますから」 「無理するな!それより、早く足治せよ、多分この次はレースに出られないよ、出れるのはその次辺りかな」

 サインを済ませ、海斗の病室を訪ねた、病人に元気も無いものだ、と思いながらも、適切な言葉が浮かばず 「やぁー、海斗、大丈夫か?元気にシテイルか?」 「リュウ!リュウこそ大丈夫なの?もう良いんですか」  「おぉ、もう何でも無いよ」 「良かった、心配じゃ無かったが、心配だった」何か分けの判らない言い方だが、海斗の気持ちは、手に取る様に判り嬉しかった「そうだよ、俺は大丈夫だが、車壊れちゃった!次のレースに間に合わないかも」 「もう、乗れないの?」 「そんな事無いよ、この次だけだよ」「良かった!又、出来るんですね」 「そうだよ」

 ちょうど検診に来た年の頃25・6の女性の看護師さんに海斗は「ねーねー、凄いだよ、龍崎さん、レーサーなんだよ」 「あの、鶴見先生の?以前、此方に来ていましたですよね」 海斗「先生と結婚したんだよ」 看護師は小さい声で「知っています、先生ずるい」 「え!何が?」 「いえ、何でも有りません、海斗君、良いお友達が出来て良かったね」 「うん、昨日、凄かったんだ、車ぐるぐるって、舞い上がって、落ちたんだ、でも、リュウは平気だったんだよ」 浩子さんも海斗に会いに来た 「あ!お母さん、リュウがきているよ」 「昨日は、有難う御座いました、龍崎さん、お話が有るんですけど、少し良いかしら?海斗、すぐ戻るからね」 「はい、じゃぁー、海斗また来るからね、お母さん行きましょう」

 屋上に上がり、話を聞く事にした、海斗の今後の事と思っていたが.. 「実は、主人とうまく行ってないの、此処のところ、話もろくに出来ない、状態なの」 「その、夫婦間の問題は..」 「お願いです、他に話す人が、いない者ですから、龍崎さん、一人で抱え込まず、話しなさいって」 ..まいったなー..「それは、海斗の事で、そう云う問題はヨシ子の方が良いと思いますよ」 「ヨシ子には、話せません、出来るんなら、もう話しています」 何処かにライバル心でもあるのかな 「話だけでも、聞いて下さい、話せば楽に成るって..」 俺は疲れて早く帰りたかったが仕方なく「話だけなら、でも何のアドバイスも出来ませんよ」

 「実は、主人が浮気しているの!」 又か!男は如何して?俺も男、分らない訳ではないが、こんなに綺麗で淑やかな良い女性が居るのに!何故? 「海斗の事も有って、お互い疲れ切って居たの、主人は会社の中堅で、上から命令され下から愚痴で大変でその上、海斗の事、逃げたくなる、気持ちも判らないでは無いのですが、私に辛く当たるだけで、..他の女の人に逃げるなんて!..私耐えられません!」 「そう言われても、貴方が決めることです、冷たい様ですが他人には判らない、事が沢山ありますから、もっと親とか相談出来ないのですか?」 「親は決まった事しか言わないし」 俺には彼女の言う事が痛いほど解っていた、なんって愚かな質問をしているのだろう、又彼女の言い分だけでは、何も確信に触れないし判断も出来ない

 今度はかなり深刻な様だ 「とにかく、結論を急がず、海斗君の事で、お互いギスギスして居るのでは?とにかく、もう一度旦那さんと冷静に話会う事です、希望をもって、ゆっくり考え多くの人の知恵を得る様にて下さい、事情は、解かり過ぎる程解って居るのですが、本当に何のアドバイスも浮かびません、ご主人の事も知らないし、今日は俺も疲れていますから、又相談に乗りますから」 あんなに理解している様な事を言って、なんでその場しのぎ事言ってしまったんだろう、「御免なさい、ゆっくりなさって下さい、昨日は有難う御座いました、以前より、海斗も元気に、明るくなりました」

 自分も散々苦しみ、誰より理解し解っている俺が、孤独になって行く彼女に助けを求めてられているのに!海斗の事で荒んで行く夫婦の気持ち、口では立派な事言っても、そんなゴタゴタには入りたく無い気持ちと何も助けられない無力の自分に嫌悪感さえ覚えた、もっと前からの知り合いであれば?いいや、言い訳に過ぎない!皆と変わらないな!

 ..其れとは別に俺の心の悪魔が囁き頭を擡げようとしている、心の底で相談される事を期待し願っているのでは、此の心のざわめきは?、日本的で、妖艶な魅力で迫ってくる、彼女が怖い!だが危険な物に触れてみたい、何処かで期待をしてる、なんって奴だ!俺は..この様な、場面で世の男達はどの様にするだろう?と思った

夕マンション.jpg よほど疲れたのであろう、今日は何も考えたく無い!家でコーヒーをドリップするのも面倒だ、缶コーヒーを一階の自動販売機で購入、今日は何も考えずに、ゆっくりするか、家に着きほっとした、リビングのソファーで、缶コーヒーを飲み干し、いつの間にか、寝てしまった、どの位寝たか?味噌汁の香りで、起された、俺に軽いブランケットが掛けてあった「ウーン、ヨシ子帰っていたの?」 「良く寝ていたから、夕食、出来たの、起き立てで、食べられる?」

 「ありがとう、ねー、ヨシ子、ここに座って」 ソファーに座りながら「リュウ、如何したの?」 俺はヨシ子の膝に頭を乗せ「まさか!こんな事、起きるなんて、驚ろかせて、子供に影響あるかな?」 「それは、誰だって驚くわよ、本当、無事で良かったわ!..リュウの子だもの大丈夫よ.. 如何したの、何か有ったの?リュウらしくない」

R & Y 膝枕1.jpg 俺にも解らない、以前こんな事は一度も、無かったのに、これからの俺のレーサーとしての先行きの不安か、車に乗れなくなったからか?漠然と自分の齢?、何人のレーサーが色々な事情を持ち夢半ばで消えて行った事か!、米軍基地に通い何と無くアメリカの不況を感じ取り、スポンサーへの不安を感じているのか?子供が出来た為か?ヨシ子に此れ以上心配掛ける事に?、以前の結婚の苦い思い、美奈子さんの時の二の舞えになりたくないから?、疲れているのか?、漠然と不安が襲い掛かる無性に寂しく、ヨシ子に甘えたくなっていた、

 ヨシ子も何か感じたのだろう、膝の上の俺の頭を子供の様に、さすりながら 「如何したの?何処か痛いの?」 「ううん..ただ少しこうして居たいだけ」顔をお腹に付けて「大事な子供が出来たのに、こんな、事で心配掛けてしまって」 本当は子供への戸惑いと漠然とした将来の不安と寂しさが俺をそうさせている、 俺の頬に唇をあて「リュウの気持ち解かっているから、..夕飯食べよう」 「もう少しだけこうして、居たいの」 「少しだけよ、リュウの赤ちゃんが、お腹空いたって、言ってますよ」..暫らくそのままヨシ子は優しく頭を擦っていたが.. 「さぁー、もう良いでしょ、食べましょう」 「うん、そうしよう」 ヨシ子は俺の頭が落ちないように膝をずらし、立ち上がり、ダイニングに移った「味噌汁冷めちゃった、暖め直すわ、さーテーブルに座って」

 「さぁ、食べましょう、リュウ!一対如何したの、お腹の子供のこと?」 「その事では無いよ、何となく、チョッと、もう大丈夫だよ」 「それなら、良いけど、何でも、言って下さいね」 「子供の事では無いよ、俺達が感動して愛し合って、出来た子だよ、嬉しいに決まっているでしょう、ただ実感が湧かない無いだけ、別の訳の解からない不安かな」 「 ねー、海斗君以前より気持ち、大分元気に成ったよ、もうレースの話に夢中よ」 「気持ちから、体も元気になるって言うけど、そうなる事、願うよ」 「ええ、それと、生きる、希望が生まれ良かったわ、それにより体が反応すれば良いと思い、どんな事でもして上げたいの、時々海斗君に会って下さいね」

 「もちろん、其れより、此れは、浩子さんにヨシ子に内緒にして、云われたんだけれど、夫が浮気しているって、如何してヨシ子に相談しないの?」 「本当に?..解らないわ、どうして、私に相談しないのかしら?..何か有るのかしら、解らないわ?」 「俺に夫婦の問題、聞かれたって、..俺自身、散々迷走してヨシ子に救はれた、そうでしょう、俺に解るわけないよ、それに、海斗君の問題、これ世間で思うより、もっと深刻なことだよ、国が何とかしなければ、いけない事だよ」

 「そうねー、私たち病院も県や国に働き掛け努力しているの、まだまだ移植と云う問題は人権とか色々の不信につながる問題なのよ、其れと若い人の臓器中々無いの、とにかく、浩子とは親友で中学から大学まで一緒だったの、海斗君の事も有るし、リュウの説得、凄く良くて感心したよ、だけど少し浩子さんにジェラシー感じたな!..でも浩子の悩み聞いてあげてね」

 「ヨシ子の気持ちも考えず、ごめん!、俺、云った様に、何もアドバイス出来ないよ」本当は会うのが楽しくも恐くもあったがあの妖艶さ危険な物程近ずきたくなる、不謹慎は解っているが惹かれてしまう複雑な気持ちだ!こうやって俺も含め、世の男性達は浮気に走るのか?..ヨシ子驚いた様に「リュウも浮気するの?」 「例えばの話だよ」 「解っているわ、・・それより浩子、誰かに話す事で、気が楽になる事も有るから、お願いね」 ..こんなに友の為に尽くしているヨシ子を絶対に裏切れない、こんな安らぎを与えられているのに..と自分に言い聞かせていた..「うん良いけど、何も出来ないよ、それと、海斗の処に来た看護師さん、俺にヨシ子の事”ズルイ”って、聞こえたけれど、なにか有ったの?」

 「ああ、あれね、あの時の美奈子さんの夫がリュウだって確認取れたのね、私も今日、言われたわ、以前あの看護師さんリュウの事気に入って、誘って見ようかなって、他の看護師さんと冗談で話していると思ったの、あの時はリュウは以前の人と結婚していたし、弟みたいで、守ってあげたかったし、病院の立場もあるから、冗談でも良くないわと注意した事が有るの、それで」 「それで、..看護師さん、納得いったの? もっとも、どんなにあの時誘われても、断ったと思うよ」 「一様説明したけど、第一そんな問題ではないでしょう、あの時と今では状況がちがいます、別に私悪いことした訳も無いし、あの看護師は優しくて真っ直ぐで良い子よ、でも今回の事は見当違い、彼女自身、解っていると思うの、その内修まると思いますよ」

 「それより、リュウ、いくら甘えても良いから、レースの事なら続けて良いのよ、其れこそ、そんなリュウを見る方がよほど辛いから」 「うん、今日は疲れていたから、弱気になったのかな、それと、次の、オートポリスでのレース多分マシーン(車)間に合わないと思うから、エントリー出来ないと思うよ、後は9月26.27日スポーツランド・スゴウまで無いからね」 とは、云ったものの、何故か、何処かで予感と云うか、このままで良いのか?弱小チームの悲しさ、予備のマシーンが持てない、頭の片隅で漠然と、しかし何か不安と共に確実に動き始めたことを感じていた、

 「リュウ、今年のレースの終わりはスゴウでしょう、その後、私達の、結婚式考えていたの、良い機会だから、式場など決めましょうよ」 「10月だね、お腹大きくならない?」 「人に依って違うけれど、大丈夫と思うよ、確かその頃犬の日に腹帯する頃かな」 「俺、何も知らないから、それとお父さんになれるかな?期待と不安でごちゃごちゃ!」 「私だって、誰もがそうよ、..お父さん!頼りにしていますよ!」 「初心者のお父さんの若葉マークの講習会は無いの?」 「フゥフゥ、車の運転じゃあ無いのよ、判らないわ?、多分お母さんに説明が有るから、その時一緒に聞いたら良いのかも、調べてみます」

《オートポリス (不参加)》Auto Polis round 7 (08/30) No entry 

 次の日から基地ベースに出勤、チームの久美ちゃんから電話が有り「リュウさんですか、先日は有難う御座いました、とても楽しかったです、監督が話したい事が有るそうです、変わりますから」 「あーぁ、良かったね」 監督「リュウ?車の件だが、なんとか、保険会社に掛け合い全額負担、竹田君が何回も足を運び、話を付けって、了解を得て来たよ、ただ今回、チャーシ(車体モノコック)が如何しても間に合はず、Auto Polis のみエントリーキャンセルしたから、其のつもりで」 「判っていました、色々ありがとう御座いました、竹田君に宜しく、伝えて下さい」 思った通りだ、他のチームなら予備のマシーン(車)有るのに!仕方ないよな、尚監督から「スポンサーにはチームとして私から各所に報告して了解を得ているから、それにリュウが受けたアルミの会社、社長に了解を得たから心配ないよ」 「有難う御座います、あそこは俺からも、この後報告しておきます」 「そうだな、宜しく伝えてくれ」 次は今年最終の Sportland Sugo(スポーツランド・菅生) 9月26,27日で今年のレースは終わる、引き続き美奈子の親の会社に報告を入れた、社長は出かけていて、秘書に宜しく報告した

 その夕、普通なら会社と言うだろうが、基地内からでは会社でもないし、仕事場よりとでも言うより無いだろう、いずれにしても、仕事からもどり 夕食の支度で、何か煮付けをしているヨシ子に 「今日チーム監督から連絡があり、やはり次のレースは車が間に合わずキャンセル、だって、少しのんびり出来るよ、週末、俺達のチームのレーシングスクールの錦糸町、事務所に寄り、後 銀座か、お台場に行こうか?」

 「はい、リュウ コーヒー入ったわよ、..そうね、今の内でないと、中々行けなくなるから、いいわよ」 「じゃぁ、そうするね、俺、最新のデジタルカメラとレンズ購入したいんだ、秋葉原で見ても良い?」 「本当は、それが、目的でしょう? まぁ、良いわよ、楽しみましょう、事務所も見たいから」 こんな会話が当たり前に過ごして居る人には、この幸せを感じているのかわからないが? 俺は一日の終わりに、奥さんが、料理をして、互いを労り静かに話し合え、俺には、凄く平和で穏やかで、こんな、ほんわか日々を迎えた事が、不思議な様に思えた、現実か? 思わず、両手で頬を軽く、平手打ちし、確かめた、「イタ!」 このあたりまえの事が何って幸せの事だろう! 「リュウ、如何したの?」 「何でもないよ、そうしよう!」 本当に大事にしなくては。

 次の土曜日に、ヨシ子と二人、東京錦糸町のレーシングスクール事務所を尋ねた、この小説の冒頭に書き記した、会話を事務所にて行い、その後お昼も近く、近所のレストランに俺とヨシ子も含め9人ほど事務所.jpgで、テーブルを囲んだ、其々、好きなメニュウをオーダーして、ヨシ子が俺の事故と海斗君のお礼の挨拶から始まり 「孝ちゃん、女装とかは、しないんですか?」 俺は慌て 「そんな事、どうでもいいでしょう」 ヨシ子は平然と「リュウ、疑問を持ちながら、影で、勝手な想像する事の方が、よほど、失礼よ」 俺はやはり、こんな処は先生だと思った、 孝ちゃん笑い顔を作り「いえ、良いんです、変な気を使われるよりよほど良いですよ、どれが本当の私か?私も悩みました!、女性ホルモンを与えたり、でも、今は自然のままで良いと思ったの、此れが自分だって..」

 ヨシ子は頷きレーシングスクール-5.jpg「孝ちゃん、今まで沢山悩んだのね、私、素晴らしい、考えだと、思いますよ、自然に与えられた、ままに、孝ちゃんでなければ、出来ない事も沢山有ると思いますよ、無理に自分を変えても、苦痛が伴うだけです、決して良い結果は得られません、リュウも話していましたが、孝ちゃんは、メカニックとして素晴らしい技術と勘があるって」 監督も同調して「そうだよ、スクール用の練習マシーン(車)も全部整備しているし、生徒達に、女性にしか判らない様な指摘などユーモアを持って指導をしてくれるから、助かっているんですよ」 尚もヨシ子はその場の全員をゆっくり見渡し、落ち着いた口調で「リュウも言っていましたが、このチームの人達は、本音で話しあって、とても好きだって、私も監督、はじめ素晴しいチームですね」

 それに何時もと違って、その場を仕切る様に威圧さえ感じ迫力さえ感じた、尚もヨシ子は「それと、竹田君と久美ちゃん、もう解かっていると思いますが、本当に安らぎを覚え、心休まる、人を見失わない様にする事ですよ!、色々な人や、物事を知ることはとても良い事と思いますが、一時の感情で、大事なものを失う事になってしまうわ」 竹ちゃんは突然自分に話題を振られ、戸惑いながら「ええ、良く、解りました、失いかけて初めて気付きました、久美子は余り身近すぎて、反って、解らなくなってしまって」 「これから2人、如何しなさい、と云う事では無いのよ、ただ一時の感情で決めないようにする事ね」 やはり先生だ、主導権を取っている、久美ちゃんは見方が出来た思いだろう「時々、ヨシ子さんのレーシングスクール-10.jpg処に伺って良いですか?」 ヨシ子は俺の顔を伺う様に「休みの時には何時でも良いわよ、ねー、リュウ?」 俺は合ずちを打つ様に「ヨシ子さえ良ければ構わないけど」 ヨシ子は澄まし顔で「良いそうよ、何時でもどうぞ」 「はい、その時は、お願いします」 孝ちゃんは相変わらず俺の方を持ち「リュウが来てから、もっと纏って来たと思うよ、リュウはハッキリ云ってくれるから」 俺は照れ隠しに「みんな、監督の気使いが有るからだよ」

 ヨシ子はチームの主だった人に気を使い「井原さん?余り話し会った事、有りませんが、監督が一番信頼して頼りにしているようですよ」 俺もヨシ子のホローに「井原君の人柄と思うよ、技術も素晴らしく、俺も、頼りにしているんだ」 ヨシ子は改まり「今までレース等ではお会いしましたが、正式に挨拶は、未だでしたので、チームの皆さん、これからも、リュウや私、宜しくお願い致します、

レーシングスクール-25.jpg 挨拶遅れて今になってしまって、リュウ共々宜しくお願い致します」・「ところで、北原監督さん、これはリュウの事故の事で、レースのスクールも兼ね、思ったのですが、心臓機能停止時の為にAED(自動対外式除細動器)の設置をお願いしたいのですが、どうでしょう?」 やはりヨシ子は凄い主導権を取っている、病院でもそうなのか?別の面を初めて知った、監督も感心した様に「いやぁ、こちら、こそ、早速手配しておきます、なにか起きてからでは遅いですから、やはり、良い所に気が付きますね」 もう一人、新しくチームに加わった、と思う人を手で示し「森田 俊夫君、スクールの優秀な卒業生ですが、今度私の助手に、ドライブ、インストラクターとして加わりました」 俺は冗談混じりに「おーぉ、ライバル出現、恐わ!..宜しくね」 森田君は真面目な顔で「龍崎さんには、全然追いつきません、まだまだですよ、宜しくお願いします」

 俺は感じたままに「監督、チームも、スクールも少しずつ形が出来て来ましたね」 監督嬉しそうに「竹田君が、頑張ってスポンサー集めに紛争してくれて、運営も機動に乗り始めて来ているよ、リュウの云う通りスクールの宣伝インターネットに乗せる事にしたよ」 「そうですか、此れからは、効果が有ると、思いますよ、今日は寄る所が有りますから、そろそろ、失礼させて頂きます」 レストランを出て

 余り落ち込んでいる俺の様子を感じ、私の事は気にしなくて良いのよ、と事務所でのヨシ子のアッピール、だから悩まず続けなさいと間接的に俺に訴えて居ることが、俺には手に取る様に解り、愛おしく感じた「有難う!、心配掛けて俺なら大丈夫だよ、本当に丁度身体、休めて良いかも」 「リュウ、私の勉強の為もあるのよ、それより、カメラ見たいんでしょ、秋葉原に行きましょう」 秋葉の電気店をしばらく観て歩いたが、余り購買意欲の有る物が無く「帰ろうか?」 「ええ、私家でゆっくりした方が良いの、帰りましょう」 「じゃぁ、帰ろう」

 帰りの車の中で 「私、家で静かにリュウと二人だけで明日の日曜も過ごしたいの、良いでしょう?」 「うん、そうだね」 「真っ直ぐ帰りましょう、リュウの好きな、ステーキ焼いて、上げますから、良いでしょう」 「良いけど、これから疲れない?、お腹の子供に余り負担掛けては、いけないから」 「心配しなくても、焼くだけだから、大丈夫よ、誰にも邪魔されなく、何も考えず、リュウの側にいたいの」 少し何時ものヨシ子と違うなと思ったが「本当嬉しいな、俺も同じだよ、じゃぁ、真っ直ぐ帰ろう」

スクールからの後1.jpg 家に着き「あ~ぁ、此処が一番、ほっとするよ」 ヨシ子急に抱きついて来て「リュウ、大好きよ!」 「如何したの?急に!、十分解かっているよ!俺も愛しているよ」 急に後を向いて、悲しげな声で俺にぶっつける様に「解かっているわ!解かっているけど、リュウ、皆に優し過ぎるのよ!浩子だって、久美子さんも、レースクイーンだって皆、リュウが目的よ!それに、ベースに行った時も、パトリシアさん、リュウを見る目が..」

 俺はヨシ子の急変に驚き「ヨシ子今日は、どうかしているよ!」 ヨシ子は聞き入れる様子も無く、尚もキツイ声で「一番許せない事は前の奥さんの美奈子さんの事!、何時もリュウの心の中にいるのよ!時々寂しそうな顔をして美奈子さんの事を考えているんでしょう!、だから浩子に説明した時も、真に迫っていて、浩子は解って頂ける人がいるのだと、心が動くのよ!、・・それにスポンサー..なんでもないの、私の力ではレーシングカー用意出来ないし解かっていても!私悲しかったの」 ..こんな悲しげで怒りを堪えたヨシ子を見たのは初めてだ、女の人の感の鋭さに驚かされた、何時も賢く賢明なのに、お腹の子供のせいでバランスが崩れたのかな?涙まで流して..

  どの様に扱ってよいか、判らず、ただ俺は弁明に懸命だった「ヨシ子!浩子さんに話た時だってヨシ子が心配して力になって云ているからでしょう、俺は協力しているだけだよ、それと、俺が幸せを感じれば感じるほど、其の通りだよ!美奈子の事が..俺にはヨシ子しか、いないよ!ヨシ子が一番、知っているくせに!」 「やはり、そうだったのね!だから、頭では解かっているのよ!でも何故か、さみしいの!私、間違っている?」

 何故かヨシ子がそんなになるなんて、以外過ぎて、腹も立たず、反って、愛おしく、確り抱きしめ 「俺が、どんなにヨシ子に救われたか、人に優しく出来る様になったのも、ヨシ子の御陰だよ、愛する事の素晴らしさをヨシ子が教えてくれたんだよ!」 「うん、本当に頭では判っていたんだけど・・私、リュウを縛りつけてしまいそう」 きっと俺の事故、ヨシ子が一番心配していたのにも関わらず、浩子さんを気ずかった、事と、美奈子?まさかスポンサーの件?そんなはずは無いと思うが.. 「もう、分ったから!ごめん・・大丈夫?じゃないよね!」・・「俺の方が、今こんなに幸せで、愛しているのに」続く後の言葉を飲み込んだ・・

 ヨシ子を失ったら、狂っちゃうよ!こんなに可愛いヨシ子を見た事がない、ヨシ子だって、そうだよ、俺だって言いたい位だよ、病院での男の先生の見る目、男の患者、友達、俺だって、感じているよ..でも、違うな、俺はかえって、優越感を覚えるのに、男と女は違うのかな?..後々ヨシ子が本当に悲しく思った、理由が解る事になる・・

 暫く泣いてスッキリしたのだろうか?サーロインステーキ.jpg「ごめんね、私、嫌な女に見えたでしょう?・・お腹すいた?、ステーキ、リュウはミディアムレアーだったね、今焼くから、自分でコーヒー入れてね」 俺は気分を変え様と「チョットビックリしたけど、可愛いなって!思ったよ、俺、生粋の肉食系だから、襲っちゃうよ!」 ヨシ子も分ったのだろう「本当?嬉しいわ!今襲ってよ」俺のジョークに乗ってくれた 「大丈夫なの!」 「人によって違うけど、優しく優しくしてくれたら?..でも今は大事にしょうね、..リュウ、リュウは我慢しなくて良いのよ、何時でも言ってね」 「解ってるよ」 「本当にそうしてね..お願いよ、私だってそうするから」 ..なんって、優しくサラリと云ってくれて、やはり先生だ、男の生理も知っている一度も先生としてのプライドや鼻に掛けた事はなく優しさに満ちていて嬉しく思った

 「リュウ、ブレッドより御飯の方が良いでしょう、それとサラダ、コースローにフライドポテトにシメジのバター炒めとマッシュポテト此れは私が好きなの、スープ作って無いから代わりに味噌汁、和洋折中で良いでしょう」 本当にヨシ子は最近益々料理も手早く味も美味しくなった

 食事をしながら「このお肉美味しいね、ヨシ子の涙で少しショパイかな? 俺達、何か問題が有ったら、直ぐその時、話合おうよ、後からお互い愚図々するの嫌いだから」..ヨシ子は言ってしまったら、サッパリしたのか.. 「ええ、そうしましょう」 ヨシ子は思いついた様に「リュウ!明日ゆっくり海の公園を散歩しましょうよ、お昼のお弁当は私も手伝いますから、リュウの美味しいクラブサンド作って、ねーいいでしょう」 「いいよ、そうしよう」

 海の公園ウインドサーフィン.jpg次の日の日曜日朝9時過ぎまで久しぶりに寝坊をし慌てて二人してランチのクラブサンドを楽しく作り、出かけた海の公園でウインドサーフィンの講習会でも有ったのか沢山練習している人達を眺めながら、ゆったり砂浜を手を繋ぎ散歩

 「リュウ、昨日はリュウに当たって、ごめんね、余り私の仕事の事で迷惑かけたくなかったから病院での事、話さなかったし、医師の立場で話せない事もあったから、海斗君の事で、ある先生達から公平ではないと非難されたり、むしゃくしゃしていたの!其の外の事もね、其れとスクールの事務所でね..まあ、其れは良いけれど..そんな時、リュウは気軽に前の奥さんの事、浩子に話して、だから..」

海の公園.jpg 「悪かったよ、ヨシ子の気持ちも考えずに、ごめん!、此れから気を付けるよ、俺はね、医者の事や医療の事は何も解らないが、医者や患者や患者の家族の中にはやきもちを持つ人がいることも、判るよ、だからと云って、何も特別扱いする訳でも無く、出来る事を手助けして上げられるのに変な理由を付け何もせず、助け無かったり、何も遣らない事の方が、もっと悪いよ、医者でしょう少しでも助けられる望みが有るなら、出来る事を一人でも少しずつやってあげれば其れで良いと思うよ、ヨシ子の立場は解るが、公平を保つ為に何もしないの?その人その人に合う事を遣れば良いと思うよ、自分の信念をもって、治療に当れば良いよ、俺はそう思う、何も間違っていないよ、負けるなよ!何の為に医師としているの?何時ものヨシ子は何処に行ったの?」

 「本当にそう思って、下さる?」 「当たり前だよ、自信を持ってよ、そんな基本的な事を忘れ’事無かれ’の偏見野郎、俺がグウの根も云わせないよ、行って説明しようか?」あの時の白衣姿の先生が思い浮かぶが、顔は何故か余りハッキリ思い出せない! 「大丈夫よ私がちゃんと説明するから、心配してくれて、ありがとう、又リュウに教えられたね」 もしかして..俺の直感、元彼の嫌がらせかな?まーぁ、そんな事どうでも良いけど、これ以上何か有れば絶対許さない!..R_yoshiko-2.jpg

 「俺に本当の意味での安らぎを、教えてくれ本当に幸せだよ、いつもの自信、持ってよ」 ..子供のせいで、少し情緒不安定な処有るのかな? 「ねー、リュウこのまま、時間が止まれば良いのにね、私、何か、意味もなく不安なの、恐い位、こんなに幸せなのに..リュウ大好きなの!..愛しているわ..何でか、涙が出てきちゃう、変よね」

 俺は、ヨシ子の腰に手を回し、引き寄せ、歩いた、きっと、年上の彼女が初めて責任も何もかも、捨て去り、初めて俺に本当にぶっつかり甘える事が出来たのではないか、初めてヨシ子の力になれた気持ちがして、俺は心から嬉しかった

R&Ybeach-sands.jpg 「ほら太陽も波もキラキラ笑っているよ..お腹の赤ちゃんも心配しているよ、..俺のお母さんの家の近くに教会が有るけど、結婚式の事聞いてみようか?、それとも、和式?」 「まだ、決まってないのよ、リュウはどっちら?」 「此れこそ、ヨシ子が決めてよ、着る物も有るから、俺はどっちでも、良いよ、俺には神様は一つだよ、山ノ神、ヨシ子様、..本当にどっちでも良いから」

 「私そんなに強くないし恐くないよ、ね!可愛いでしょう?」その顔は普段確り意見を言う顔ではなく、無邪気な笑顔を見せ、俺の手を引き、同意を求めた「最高に、可愛いよ」 「嬉しい!式の事、リュウのお母さんの意見も聞いてから決めます」 それ以来ヨシ子の気持ちの乱れもなく、以前以上優しくなった様な気がした、暖かく和やかな日々が続き、

 お母さんと式場を決めに、何故か母とても気が合う様だ、電話で相談したり二人で出かけたり、母の知り合いの外人墓地の近くの山手エレン教会に決めた様で、本当に親しい身内と友人で静かに行いたいと、ヨシ子の希望、後は港の見える丘公園近くのホテルでささやかな披露宴を行う様に、進めている様子、全てヨシ子に委ねている

 レースでの車のダメージを知ったのでしょう、又他の2,3のチームからお誘いが有ったが、丁重にお断りした、今年最後のレース、スポーツ・ランドSUGOの日が近ずき、新しいマシーン(車)も到着し、富士に2回ほど、調整とドライブの感触を確かめに出かけた、、多分前のマシーンは以前何らかの原因でモノコック・チャーシ(車体)にダメージが有り、調整出来なかったのかも又リヤダンパーの規定変更もあり、以前よりエンジンの立ち上がり回転もバランスも良くなり大分ドライブしやすくなっていた、後はチームが運送会社にお願いしSUGOのサーキットまで運ぶ手はずだ、ヨシコからも海斗に会いに行ってと度々要請が有り、浩子さんの事もあり少し躊躇したが、子供には関係ない事、久々ベースでの勤務の帰りに海斗を尋ねる事にした。

 海斗の病室のドワー開け「やー、海斗久しぶり!」ちょうど、夕食が終わった処、海斗に飲ませる薬の確認に先日の看護婦が来ていました、海斗、嬉しそうに「リュウ、来てくれたの、全然来てくれなかったから、心配したよ、ヨシコ先生に聞いても、リュウは今は新しいレーシーングカーで忙しいからって」 心なしか海斗は痩せた様に思えた「そうか、俺も海斗如何しているかなって、何時も思っていたよ、..看護婦さん、少し屋上まで連れて行って良いですか?」 今は日も長くまだ外は明るかった 看護婦「ええ、少しなら構いませんが」 「海斗、看護婦さんが良いってよ、行くか?」

 「はい、行きたい!」 看護婦さんが用意した、車椅子に海斗は目もくれず、俺に向かって両手を出してきた「リュウ、抱いてよ、ねー」 意外な言葉に驚いたが、余りにも要求するので、海斗を抱き上げた、思ったより軽い、俺の首に手を回し顔を肩に押し付けてきた 「如何したの?海斗!赤ちゃんみたいだぞ」 「だって、全然来てくれないから、海斗の事、嫌いになったと思って!」 「ばかだな、嫌いになる訳、無いだろう、如何してそんな事、言うの?」 看護婦さんが、顔を横に振り目配せして、俺を制止した、何か有ったのか? 「よし、このまま、屋上に行くか、海斗!」 頭を2回ほど俺の肩に押し付け微かに「うん」と合図した、看護婦さんも、他の看護婦にその旨を伝え、俺と車椅子を押して屋上に付いて来てくれた

 俺は海斗と海の公園の海を眺めながら「海斗、ピッカピカ新しいマシーンが来て走って見て凄く調子が良いんだ!」 海斗「ほんと!今度は一番に成れるよね!」 「だと、良いが、やって見ないと、分からないよ」 「なれるよ!リュウなら、きっと一番だよ、ねー、看護婦さん、リュウは一番早いんだよ」 看護婦「そうなの、龍崎さんはそんなに、早いんですか?」 俺「バカですから、走るかとしか出来ないです」 海斗「そんな事ないよ、コンピュウターで走り方とかメカニックに色々教えたり、凄いんだ!」 看護婦「だって、ヨシコ先生が好きになった人でしょう、私以前から」 俺は遮る様に「ヨシコ先生も今では俺のバカさかげんに呆れているよ、それより、海斗、もっと元気になり先生の許可が下りたら、俺と八景島の水族館に行こうよ」

 「ええ!ほんとう?連れて行ってくれるの、リュウ約束だよ!」 ヨシ子が勤務も終わり屋上にやって来た、看護婦さんに、有難う、後は、私が診ますから、看護婦は頭を下げ、海斗に手を振り立ち去った、海斗は嬉しそうに「ヨシ子先生、リュウが八景島に連れて行ってくれるって!」 「そうなの、良かったわね、早く元気に成らなくては」 海斗は真剣な眼差しで「リュウも、そう云っていたよ、約束だから!」 ヨシ子は嬉しそうに「リュウ有難う、来てくれて、一緒に帰りましょう」 海斗はヨシ子を睨むように「だめだよ!リュウはまだ僕といるの」 ヨシ子も海斗の異常に気が付いたようで「いいわ、私、先生、先に帰るから」 俺は頷くように頭を振りヨシ子に向かって「さっきの看護婦に、事情、聞いて」 其れだけで、全て理解した様だ、ヨシ子も頷き「判ったわ、後で、車椅子置いていきますから、頼むはね

 「海斗、重くなったよ!リュウの大事なハンドル握る手が、痛んだら困るから、下ろしても、良い?」 「うん、降りる、でもまだ側にいてね」 車椅子に海斗を座らせ「海斗如何したの?リュウも約束守るから話してくれるかな」 「うん..お母さんが、お父さんもう海斗に会いに来ないって..」 「なんで、お母さんは、そんな事云うの?」 「お母さんが、もうお父さんと一緒に住めないからだって」 俺は浩子さんに対し少し怒りを覚えた何の為に海斗に話したのか! 「でもね、一緒でなくても、お父さんは、海斗のお父さんなの、きっと来てくれるよ」 「でも今は余り来てくれないの」

 こんなに良い子が、こんな手練を何故?人の運命とは何だろう!俺は言葉に詰まり 「今は、きっと、お父さん、忙しいだよ、お父さんも疲れて休みたいんだよ、きっと元気になり可愛い海斗に会いに来てくれると思うよ、だから海斗も先生や看護婦さんの言う事を聞き、一生懸命頑張って元気になり、お父さんを助けてあげられるよ」 海斗は小さく頷き「パパ疲れているんだ?」 「そうだよ、リュウだって、事故して休んでいたんだから、海斗もリュウもお父さんも皆休んで、又元気になるんだよ」

 何だか、俺はとっさで訳の分からない説明をしてしまったが、少しは納得しているのかな? 同時に海斗さえ元気であれば、と思うと両親の苦しみを今更ながら感じていた 「さー、部屋に戻ろうか?」 「リュウ、又、椅子押して走ろうよ」 「今日は駄目だな!又ヨシ子先生に叱られるから」 「リュウ、ゴメン、叩かれて痛かった?」 あの時の事憶えていたのだ「海斗が謝る事ないよ、そうだよ、凄く痛かった思い出しただけでおぉー痛タタタ、ヨシ子先生強いから」 俺は顔をしかめて、海斗の頬をなぜた 海斗「ハハハ、リュウも痛いんだ」 俺は海斗の唇を指で押さえ「海斗、内緒だよ」

 海斗は少し元気を取り戻し、病室に戻った、まだヨシ子は看護婦と話しているらしく見当たらなかった、しばらく、海斗と車の話しをしながら、待ち、暫くしてヨシコが戻り、帰る事にした、海斗はまだ俺に居て欲しい様だったが、レース前にもう一度尋ねる事を約束して、家路に着いた

 ヨシ子は夕食の支度をしながら「リュウ、看護婦に聞いたのですが、浩子別れるそうよ、私、腹が立って、もやし炒め.jpg海斗君に何故話たのかしら?明日、聞いてみるわ」 俺も初めはそう思ったが 「やめた方がいいよ、浩子さんがヨシ子に話すまで」 ヨシ子は怪訝そうに「どうして?」 「俺も初めはそう思ったが、もう壊れたものは中々修復出来ないよ、浩子さんは決意したのかも、いずれ、海斗に解かる事だよ、何時かは話さなければいけないからでしょう」 「そうよね、リュウの方が大人ね、..さーぁ、ご飯食べましょう、どう? この、もやし炒めと鳥胸よパフリカで味付けしたの、リュウの方が美味しく出来るね、この次は、リュウの作り方教えてね」 「大丈夫だよ、かなり美味しく出来てるよ、本当に上手くなったね」

鳥胸.jpg 食事をしながら俺は「以前は直ぐにカーとなったが、ヨシコが教えてくれたから、それと、俺、前ほどレースに情熱が無くなったみたい」 ヨシ子は意外な俺の言葉にキョトンして「リュウ如何したの?私の事なら良いのよ、そう言ったでしょう」 「そうでは無いよ、ここ2,3戦でトップが見えて来て、俺の驕りかも知れないが、途端に、何か虚しくなり、事故の後あたりから、家庭を犠牲にしてまで、世界に挑戦しても何年かかるか、分らないしもう来年は29歳だよ、若くて早いドライバーがドンドン出てくるよ、俺、廻り道しちゃったから、それと俺と同期のレーサー達が経済的問題で自分の実力を発揮出来ず夢半ばで何人も消えていった人も沢山知っているし」

 「美奈子さんの事ね、3年半か4年位?でも決して無駄ではなかったのよ」 「分かっているよ、今日、つくずく感じたの、それも自分で選んだ人生、めぐり合わせと、此れが運命、自分で運んだ風かも、海斗なんか、誰もが望んだ運命ではないのに、背おって生きて行かなければならないと思うと」   「それで、此処のところ変だと思ったの..急にあんなに甘えたり、..黙りこんだり!..リュウの事解っているつもりだったのに、正直女性の事と、思った時期も有ったのよ....でも、何か違うなって、リュウの事を信じる事にしたの、..いやだ! リュウそんな目で見つめないでよ!..ごめんなさい!信じているんだから」

 そんな事を考えていたのかと、ヨシ子を見詰めていた、それがヨシ子に通じたのか!「他の誰がどう思うと、俺にはヨシ子が一番いいよ」 「ごめんなさい、解っているけど..」 「今日、何かもやもやした物が、ハッキリしたよ、ヨシコに逢えなかったら、目標を失い、ぼろぼろに生っていたかも」 ヨシ子はビックリした様に「リュウ、慌てないでね、辞める事は何時でも出来るのよ、あんなに、他のチームからお誘いが有ったでしょう、其れだけリュウを認めたからよ、今、結論出さなくても、後悔はもうしないでね」

 「うん、正直、初めは戸惑ったが、子供を、海斗の様にはしたくないし、出来きれば、引取りたい、位だよ」 ヨシ子「リュウ!子供はおもちゃじゃぁ無いのよ!」 「ひどいな!俺だって、其れくらい解っているよ、だから言ったのに!」

 「ごめんね、解っているわ、だから、安心して、この子生めるの、責任感の強いリュウだから、言ったのよ、だからこそ、それも兼ねて、後悔してほしくないの、解るわね」 なんだ、おふくろみたいだ、俺はまだまだ子供か 「俺はただ最近そんな風に考えている事をヨシ子に伝えたかったの」

 「解ったわ、とにかく、過酷なスポーツ、あの暑さの中、経験や勇気だけでは、やり直せない年ですから、後から又、始め様としても、出来ないのよ、G(加速度重力・遠心力横重力)に絶えて、反射神経や長時間の集中力、瞬時の判断力、体力や目の衰えなど良く考えてね」 ええ!いつの間に、調べたの?、カーレースに必要条件を調べている、やはり先生..

 「何時の間に調べたの?」 ヨシ子「大事な旦那さんですからね、当然でしょう、この前の事故で、骨折、打撲、圧迫、切断の緊急処理を勉強し直したの」 「へー、驚いたな!、そんなに思ってくれていたんだ!」 「リュウは私が、そんな怖いこと、辞めなさいと、言いたいのを、堪えているのではないか?と思っていたでしょう、それは、誰もが思う事よ、其の通り私もそうよ、でもレースをしているリュウを好きになったから、応援したいでしよう、するからにはリュウに勝って欲しいわ」 「夕飯美味しかったよ、ご馳走様、さー休んでよ、大切な時だから、後とかたずけは俺がするから」

 「そりゃぁー、レースに出る限り、勝つもりだよ、負ける為に走らないよ、さっきのヨシ子の説明でたりない物があるよ」 「なぁーに?」 「もう一つ守りたい人が出来た事」 「だから!、それは言ったでしょう?」 「いくら、言われても、俺の気持ちには変わりないよ、心配掛けまいと思う気持ち本当に嬉しいし有難いが、俺の心の中に生まれてしまったんだ、消す事は出来ないでしょう、..これだけは、ヨシ子に、知って欲しいのは、前の人は守ってやらなければいけなかったが、今わ守りたい人の違いだよ!」

 「それと、これは重要な事、レース中そんな心配を抱えて走れないよ、レースが始まれば、俺は闘争心の方が当然、勝るよ、決して守りには入れないよ、多分他のレーサーもそうだと思うよ、俺は闘争心の塊となって絶対引かない、そんな俺自身が怖いんだ..云ってる意味、解るでしょ?それから、チームの誘いは、他にもっと若く素晴しいドライバーが出て来れば、お払い箱になるって事!そんなに甘い世界では無いよ!それと、不況になれば、真っ先に切られるよ」

 焦れんまで、少し荒々しく「俺は止めたくないよ!、何時までもレース続けたいよ!、気力と努力と言うけれど、でも、何の保障もなく劣れて行ってしまうんだ!ヨシ子に当たって、駄目だよね」 俺「これは以前に経験していやと言う位苦しんで、俺からレースを取ったら、本当に何も残らなく、ポッカリ心に穴が空いた様で虚脱感だけになってしまい、なんの気力もなく過ごした時期もあったが、今わ違うと思う、運命に身を任せる気は無いが、矛盾に思ても、これも運命、ヨシ子に出会えた事だと思うよ」 本当は優柔不断な俺自身に腹が立っていたのだ、ヨシ子はそんな俺の不安が解っているのだろ

  ヨシ子戸惑い顔で「そう言って、頂いて、嬉しいわ、リュウを傷つけてしまって、ごめんなさい!、リュウの言う通りね、リュウの性格は知っているわ、意味も解っているし、人一倍正義感と闘争心が強いからね、私も恐いわ、一人で考え込まないで、之からも、話してね、ただ安易に云ってる訳では無いのよ、本当に後悔のない様にね、リュウに甘えられる事、嫌いじゃないわよ、幾ら甘えても良いからね、ゆっくり考えてね」 

フー!次に行くか!..此処まで読んで下さり有難う御座いますStor【前編7】へ続きますクリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-12-11-1是非お読み下さる事お願いね
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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編7】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

☆ストーリ【Story6】からの続きです是非下欄【Story7】をお読みください

 いよいよ、今期最終Formula Nippon(フォーミュラ・ニッポン)レースの日も近ずき、今朝家を出る前に、ベースの勤めの帰りに約束の海斗君に逢い行く事を、ヨシ子に告げた 「リュウ、前の事、御免なさい、もし浩子さんに遭って、相談されたら、聞いてあげてね、お願いよ、多分そんな気がするの、私は会えたら話しますが、リュウを待たずに先に帰りますから」 女の感?それとも長い友達としてか、職業的の感?それに何か俺の心の底を見透かされた様で、不機嫌を装い 「解ったよ!もし会ったらね、じゃぁー、行って来るよ」 ヨシ子、知ってか知らずか、機嫌よく、手を振って「気を付けて、行ってらしゃい」と俺を送り出す

プラモデル・フェラーリ.jpg 基地ベースでの仕事が終わり、病院に向かう俺は幾分心が弾んでいた、それは海斗に会える事だけではなく浩子さんに会えるかも知れないからだ、着いたのは6時を少し過ぎた頃であった、プラモデルを持って、海斗の病室を訪ねた、ヨシ子の感が、当たっていた、何故、こんなに俺の心がときめくのだろう、海斗にせがまれ、ちょうど院内を、車椅子で海斗と共に散歩して病室に戻った所であった 「よ!海斗」 此方を向いた海斗は俺を見つけ、目を輝かせて「あ!リュウだ!こんにちは、お母さんリュウだよ、リュウが来てくれたよ」

 浩子が振り向き静かにゆっくりと頭を下げ「先日は色々有難う御座いました、又何時も、海斗に気使い下さり本当に有難う御座います、ヨシ子は1時間ほど前に帰りましたよ」 俺は何かよそよそしい感じを受け「はい、もう気づかい、よしましょう、ヨシ子から頼まれたし、俺はただ、海斗が好きだから、来ているだけだから..それより、これ海斗に」 何故か言い訳を・・彼女にか?自身の言い訳か?何か落ち着かず、俺に海斗を利用しているのでわないかと、後ろめたい気持ちがあったからだろう hiroko-kaito-1.jpg海斗は無邪気に「リュウ、ありがとう、ワァー、フェラーリこれ欲しかったんだ!ありがとう」

 浩子さん、何か思いつめた顔で「海斗良かったね、お母さん龍崎さんと、お話が有るの少し良いでしょう?」 海斗は素直に「うん、ねー、リュウそのまま帰ったら駄目だよ!」 「判った、後でね」 海斗をベッドに戻し、前髪をそっと掻き上げ横から俺を見上げる浩子さんに、ドキッとするほどの艶めかしさを感じた 「龍崎さん、何処か食事に行きましょうか?」 きっと、浩子さん一人で食事をする事が寂しいのだろうと思ったが、俺は何故か浩子さんを直視できず、海斗に目をやりながら「いいえ、ヨシ子が夕食、待っていますから、屋上に行きましょう?」やはりヨシ子の悲しい顔が浮かぶ多分、心が踊る俺自身が恐く歯止めをかけたのだろう 「そう、分ったわ、行きましょう」

 夕暮れの屋上に上がり、向かいには、東京湾を挟み千葉の房総半島の明かりが微かに瞬いて見える、海からの風が肌に優しく時折通りすぎる、 浩子さん真っ直ぐ俺を見詰め「知っていると思いますが、私、離婚する事に決めました」 その目に何故かドギマギ、俺は負けずと見返す「海斗から聞いて、知ってます、あなた達の都合で、海斗に”お父さんに会えないわ”、無いと思います、何があろうと海斗に取ってはお父さんに変わりないですから」

 浩子さんは意外と素直に「はい、先ほどヨシ子と話してきました、反省しています、以前私達学生の頃から何時も一緒に行動していて、ヨシ子は知らないのですが、結婚前、私の夫はヨシ子の事大好きだったのです、それで夫はヨシ子の気持ちを聞いて欲しいと私に頼んだのですが、私は其の当時、夫の事が大好きで、一緒になりたく、つい夫の希望を伝えないまま、おそらくヨシ子のタイプではないし、ヨシ子が嫌いと言ったと、夫に話してしまって、それで夫はヨシ子を諦め私と、だからヨシ子に夫と二人して相談出来なかったの」

 「その事は解りました、其れまでして結婚したのですから、何故ですか?..もう本当にやり直す気持ちは無いのですか?こんな時ほど助け合わなければ、..あぁ、つまらない質問してしまいました」散々苦しんでの事だろう 「ええ、もうお互いに修復は出来ませんわ、実はヨシ子には話してないのですが、私達、別居してますのよ」 俺は動揺したが、かろうじて理性が働き「・・でしたら、今後の事、海斗君の事もありますから、弁護士にお願いしたら、如何でしょうか?市の相談室に行けば、無料の弁護士も、有料でもっと良い法律事務所を紹介してくれますよ、訪ねてみては?本当は海斗君の看護疲れや経済的問題は国がもっと考えるべきですよね、多分こうにはならなかったと思いますが」 何か勝手な理由をつけてしまった

 「ええ、そうしてみます」 「ヨシ子とは長い付き合いと聞いています、もっと気軽にヨシ子に相談しては?俺も経験が有るから一人にならず、多分少しは気が楽になりますよ」 浩子は俯いたまま「はい、ヨシ子にもその様に言われました」 今度は徐に顔を上げ、訴える様に俺を真っ直ぐ見詰め「でも私、如何して良いか..もう疲れてしまいましたわ、何もかも、忘れ消えてしまいたい!」

 ..突然、浩子さんが俺の胸に飛び込んで、顔を押し付けてきた、余りにも意外な行動に動揺した突き放す訳にもいかず、ただ呆然と、そのまま立ち尽くすしかなかった、一体何のつもりだ?抱いてもあげられず、仄かに香る香水に、俺はしだいに変な期待を懐き二度目の強烈な動揺を覚えた! ..悲しみを堪え震えて縋り付く浩子さん「御免なさい!しばらく此の侭にして下さい」彼女も理性を捨て、全て壊し現実から逃避したかったと思う、余程、何か苦しい事が有り悩み続けた事であろう、俺にも其の苦しさが良く解っていたから優しい言葉を投掛けたかったが、出る言葉は違っていた

 「....此れだけですよ」浩子さんにではなく、俺自身に応えた思い、喉が渇き何故か声が上ずっている..しばらく其のまま泣かせて..暫くして、なんという事だ!俺の方が..邪悪の心に負けそうだ、助けてくれ!、妖艶と思える表情と悲しみに打ち震える姿に愛しさを感じ此のままだと、危険なほど心が乱れ、欲望に押し流される、悪魔の囁きが聞こえる!”この腕を背中にまわせ!、簡単な事ではないか”..悪魔が囁く..ヨシ子を愛しているのに、別の欲望が襲ってくる、素直に受け止められないのは俺だけか?此のままだと駄目だ!..せっかく与えられた、愛と安らぎを!..あの優しく包む様な眼差しのヨシ子の顔が過ぎる、、泣かす事など絶対出来ない!それに海斗に何って云うのだ!..壊す訳には!..かろうじて踏みとどまる 「さー、浩子さんもう良いでしょう」 浩子さんの肩に手を当て、押し戻した、男って動物は、ヨシ子を愛しているのに、なぜ?こんな気持ちになるのか?しかも女性は子供の前で冷静に居られるのか?人間の複雑な本質を感じる

 俺自身に念を押す様に「浩子さん、もう良いですね、俺なんか何の支えも力もありません、もっと確りしたアドバイス出来る人が沢山いますよ」 浩子さんも何かを感じとっていたのであろう危険からかろうじて俺が回避した事を!甘えてはいけないと思ったのか「もう大丈夫です、本当に御免なさい」 其の苦しさ悲しさ、不安がわかるだけに俺は優しい言葉を投げかけてやりたかったが、敢えて 「浩子さん、まだまだ、離婚の事も、海斗君の事も戦いは此れからですよ、悲観的な事ばかり考えずに、一つずつ解決しなければ、確りして下さい!」

 「はい、もう大丈夫です、少しさっぱりしました」 さーぁ俺は、ゆらぐ心に、安全地帯に一刻も早く戻らなければ、心の中で呟いた、俺は自分に念を押す様に「海斗が待っていますから、戻りましょう、学生からの友達でしょう、此れからは、ヨシ子に相談して下さいね、俺より余程、頭が良いですから」 海斗の室に戻り、暫くプラモデルの作り方を海斗に説明をして、解らない事が有ったら男の先生に聞きなさい、そんな会話をして、帰る事にした 浩子さんの沈んだ顔みて「今度ヨシ子と三人で何処か美味しい物、食べに行きましょう?」 「ええ、ありがとう、其処まで送りますわ」

 弘子さんが病院の玄関まで見送りに来て 「今日の事はヨシ子に言わないで下さいね」 「別に、話すつもりも有りませんよ」 どうゆうつもりだ、話せる訳が無いだろう!俺は其処まで云う必要がないと思ったが、敢えて俺自身に言い聞かすため「ヨシ子は大事な人です、真剣に愛していますから」 「ヨシ子は幸せな人ね」 「いえ、俺となんかと関わりヨシ子は戸惑っているみたいですよ」..きっと何処かでヨシ子が羨ましく俺を誘惑する事で、何処かで勝ちたい気持ちが働いたのかも知れないのかな?..いや純真に相談したかったからだ!..邪推はよそう 「今こんな事云うのも、なんですが、今は辛くとも、きっと、これから浩子さんも、何時か幸せになれる時が来ますよ..」 俺は明るく装い手を振り 「それじゃぁ、海斗に宜しくね」 自分でも、歯の浮くような言葉を、気取って良く云うよ!下心見え見え、俺自身に少し嫌悪感を覚えた

 家に帰り、ヨシ子に浩子さんと海斗の事を報告した、流石に浩子さんが泣いた件はヨシ子の頼みとは故、伏せた 「ありがとう、で!浩子どうでした?」 「本当に別れるようです、それで弁護士に相談しなさい、としか考えつかなかったよ、浩子さん悲しそうな顔をしていたが、何にもアドバイス出来なかったよ、後はヨシ子と相談しなさいって、・・」 「そう..きっと、皆に話す事で浩子自信が、決着つけたかったと思うわ」

 翌日、ヨシ子は職場である病院で浩子が訪ねて来て、話をしたことを事を俺に告げた「今日、浩子が、夫の事、私に話をしたの、まだ浩子と結婚前、夫が私に好意を寄せていて、私に伝えてくれと頼まれていた事、初めて知ったの、..例え知ったとしてもあの当時、彼の事なんとも思っていなかったから、それに浩子、別居しているそうよ、今まで知らなかったわ」 俺はハ、ハァーンきっとヨシ子に相談できない理由も俺に話していたから俺の口から漏れるなと思ったのかな?それでヨシ子に

 俺はヨシ子にもっと解かり易く説明した「多分、ヨシ子に対してでは無く、浩子さんの夫に、嘘を言った事が、ヨシ子に知られ、それで話が噛合わず、夫に知られる事が恐かったのだと思うよ..ヨシ子に彼が相談して、彼から当時ヨシ子を好きだと伝えてくれと頼んだことが、伝わらなかった事が、何かで知れたら浩子さん、こまるでしょう、..初めはまだ、浩子の夫と別れる気持ちが無く、その事が知られ解ってしまう事が、怖かったと思うよ、でも離婚を決めた今は違うでしょう」

 少し驚いた様に「それで、変だと思ったわ、浩子だけが、相談に来て’旦那さんは?’と聞けば何時も出張だからって言って、私も鈍感ね」 「これからは、もっと相談に来ると思うよ」 「リュウがいてよかった、私って世間知らずね、リュウの御蔭できっと浩子も少しは救われたと思うわ、ありがとう」エレン教会.jpg

 やはり、俺の邪心も知らずに、少し後ろめたさを感じ!「そんな事ないよ、ヨシ子は自分に素直だし、教養もあるし、優しいし、可愛いし、俺幸せだよ」 ホニーテルが遠心力で平らに上がる行きよいで振り向き「リュウ急にどうしたの?、変よ」 鋭いな!咄嗟に「改めて、ヨシ子で本当に良かったて、そう思ったの」

 今は問い詰めても仕方ないと思ったのか、素直に「本当!リュウ嬉しいわ!本当にリュウに巡り逢えて良かったわ..安心して自分で居られるの、何か、定めに導かれた様で、私も幸せよ..あ、そうそう、肝心な結婚式、10月17日土曜日に例の港の見える丘のエレン教会に決めたの、17は私達の記念日、リュウいいでしょう?本当に身内だけにしょうよ」 きっと結婚が二度目の俺に気を使ってだろう「あぁ、良いね、それで進めてよ、ヨシ子に任したから」 ヨシ子は甘えるように「本当はね、リュウと一緒に行って決めたかったの、きっと、もっと楽しかったのに」

 「ごめん、車の事で忙しかったから」 「解っているわ、お互い仕事ですから、心配しなくて良いの、今年の最後のレース、私も25日金曜日から28日月曜日まで休み取ったの、一緒に行けるわ、帰りに仙台の松島に行来たいから、ねーぇ、良いでしょう?」 「本当、俺もゆっくり、仙台、見物したこと余り無いから、良いけど、体、お腹大丈夫なの?」 「嬉しい!、そんなに、心配し無くても、病気では無いから、激しい運動さえしなければ、良いのよ、..リュウ!レースクイーン達に色目や手を出せないね..冗談よ」 「ワァー残念だな!、本当に嬉しいよ!、行ってから体調悪かったら我慢せずすぐ知らせてね、医者の不養生て言うから、松島のホテル予約してね」 「大丈夫よ、心配しないで、ホテル、ネットで調べて予約しておきます」 本当に素直な人だ。

  《スポーツ・ランド・SUGO》  SportLand Sugo round 8 (Final 09/27)

 いよいよ今年の最終戦sugoへチームクルー達は前日、車で出発、俺とヨシ子は28金曜朝7時に横浜金沢文庫駅を出、横浜、東京へと乗り換えJR東北新幹線ハヤテ8:28分発で仙台へ「俺達、二人だけの電車の旅、初めてだね、疲れない?」 ヨシ子「そんなに心配しなくても、大丈夫よ、何か新婚旅行みたいで、ワクワクしちゃうな・・ネーネー美味しい駅弁知っている?」 「よく、知らないよ、駅員さんに聞いたら」・・「サーキットは、まだ先の宮城県の田舎のど真ん中で回りは畑だよ」 「でもリュウと一緒なら何処でも楽しいしサーキットで歓喜と熱狂の瞬間をリュウと一緒に感じていたいの!私の方がレースにハマッテしまったわ、場内は人々で一杯になり、其々の熱い思いと願いが伝わって来るの」 「そうだよね、一人より皆で分ち合うほうがいいよね、新婚旅行、体調を心配したり、楽しめないから子供が生まれてからにしょう、取り敢えず、温泉も良いし箱根が近いから良いよ、どう思う?」 「そうね、リュウが休み取れるなら、ゆっくりしようか、リュウも働き過ぎだから休んだら?」

 そんな話の中、仙台に到着した、ここで又、JR常磐線・原の町行に乗り換え名取駅に着いた、ここからチームの竹田君がマイクロバスにて出迎え、宮城県のスポーツ・ランド菅生まで11時少し前に到着、初めて走るサーキット、マシーンも新しく調整と少しでもコースに慣れる為、休む間も無く午後1時より一般に混じり1時間コースを借りている、監督とメカニック二人井原君と孝ちゃんが待っていた、後続隊は明日の夕刻に着く予定だ、監督「リュウ、ヨシ子さん、ごくろうさん、疲れていると思うが、お昼食べて、今回からソフトタイヤの使用が出来る様になったから、それも兼ね、午後からテスト走行、頼んだよ」 「解りました、井原君、孝ちゃん、お願いします」

 監督嬉しそうに「ヨシ子さん疲れたでしょう、お昼を食べたら、お部屋を案内しますから、ゆっくり休んで下さい」 ヨシ子神妙な顔で「宜しくお願いします、リュウと一緒の部屋ですか?」 「ええ、その様にしてありますよ、それと以前言われました、救急用AEDの件、FJ委員会で扱って頂ける様になりました、元々サーキットには有るのですが、格チーム備える様になりました」 ヨシ子「そうですか、良かったですね、チームの為だけでは無く一般観客にも使えます」

 孝ちゃんが話に割り込み「そうよね、これで一人でも助けられたらいいよね、リュウ、スーツやヘルメットは何時もの様にキャンピングカーに有りますから」 ヨシ子すまなそうに「孝ちゃん、何時も、リュウの世話お願いして、ごめんなさい、本当に助かっているわ、ありがとう」 孝ちゃん、ヨシ子に手を差し伸べ「そんなに、あらたまられると、照れるじゃない!」 俺は慌てて話題を変えた「何時も、ありがとう、助かるよ、ノートPCで何回も学習してコースは覚えたが、初めてだから、孝ちゃん宜しくね、とにかく、腹へった、何が美味しい物ある?

 孝ちゃんは、そんな所はちゃんと調べてある「カフェテリアに、ラーメン、お肉類、カレー、ピザなどありますから」 俺はカツカレーをヨシ子はサラダとピザを急ぎ食べ、ピットに向かい 「ヨシ子、監督に部屋連れって行って頂きなさい、ヨシ子を促がし、俺はキャンピングカーでレーシングスーツに着替え、井原君と孝ちゃんとテスト走行に向かった」road_09.jpg

 早速ピットからニュー・マシーンに乗り込み、孝ちゃんと井原君にコースや新しくなったマシーンの説明を受けスイッチ類の確認、セット方法等復習沢山ある、安全ベルトを締めて、PLリミッターでピットロードをゆっくり立ち上がり先ず1・2周目はコースをイメージしながら第一コーナーより各箇所のブレ-キとクリッピングポイントを確認し、流し運転、孝ちゃんと通信機能の確認取り俺は井原君と孝ちゃんに 「次の周回から、テスト開始だよ」 連絡を入れた、監督とヨシ子も戻りピットで指示に入った

 孝ちゃん、心配そうに「リュウ、ハリキリ過ぎて、壊さないでね、出来たてのニュー・マシーンよ、まだ処女の様な物だから」 「OK、俺好みに育てるよ、本気モード開始、少しオーバーステァだが、ギヤー比は良さそうだ、エンジンも前に比べ吹き上がりが良いよ」 ラン、アンド、ピットを繰り返しスイッチ類の動作確認、リヤダンパーの規定変更の為の調整や今回よりソフトタイヤの使用許可でのチェックや温度、足回りの調整を繰り返した、1時間半位だろう最後にタイムアタックを3周してベストラップは1’08.341初日にはまあまあだ、

 俺は気になる点を伝え「井原君と孝ちゃん後の調整は頼みます」 井原君、俺の背中に手を沿え「今日は早めに休んで頭と体すっきりさせて下さい」 「有難う俺、初めてのコースゆっくりダブルチェックに歩いて来ます一時間位掛かりますから、ヨシ子の事頼みます、退屈だろうと思うから、ピットガレージに呼んでマシーンの調整見せて上げてね、邪魔だったら遠慮なく言ってください」 何故か井原君、頬を薄赤く染めながら照れ笑いをして「いいんですけれど、マシーン整備、退屈しませんか?」 ヨシ子に好意を感じているのかな?「何でも興味持つ人だから運転席コックピットに乗せてあげて下さい、頼みます」 俺は例により歩いてコースのカーブ等、先ほど運転し気になった点を重点的に、目標を定めながら歩いた、一時間ほどでガレージに戻ると

 YoshikoR2.jpgヨシ子が何やら楽しそうに監督やメカ達と竹田君を交え話をしていた、 ヨシ子は俺の尻を見ながら「おかえり、リュウのお尻、意外と小さいのね」 「どうして?」 何か得意げの顔で「リュウのレーシング・カーの運転席窮屈でやっと入ったの、リュウのヘルメットまで被り、リュウの匂いで一杯だったが、写真まで撮って頂いたのよ、記念に捕っておいて、リュウ見る?竹田さん、見せてあげて」 竹田君が俺にデジカメを渡してくれた、5・6枚撮ってあった 「ヘー!俺より決まっているね、まるで、プロの様だ!とても可愛くて良く撮れているよ、

 それで俺に見せたかたんだ!後でノートPCにダウンロードするね 「でしょう!凄いでしょう!地面に座っているみたいに低いのね、あんなので良く運転出来るわね、でもハンドル握ると何かわくわくして来ちゃう、走りたくなったわ」

 俺は笑いながら「止めてくれよ!ヨシ子が走ったら何処に飛び込むか解からないよ!それより、動くかな?」 怒る訳でもなく、頷き「そうね、でも走ってみたいな、もっとリュウの気持ち解かるでしょう」 「今は赤ちゃん居るから駄目だけど、一度ハコ型GT(二人乗り)のレースカーでヨシ子乗せて走らせて見たいな、ジェトコースターより凄いと思うよ、高速カーブでは凄いGが掛かり、先生だから知っていると思うが、遠心力で耳の三半規管に影響があり、平らな地面が斜めに見えるよ、」 子供のように目を輝かせ「わくわくしちゃう、乗って見たいわ」 「其の内ね」 「約束ね」

ヨシ子背1.jpg ヨシ子は孝ちゃんに向き直り口を尖らせ頬を膨らめ「孝ちゃんたら、私がなかなか座れないから、お尻が大きいからだって!」 ヨシ子お尻に手を沿え振り返り、見つめていた 其の仕種が可笑しく笑いながら「運転席のシートがピッタリ俺に合わせてあるから車と路面の状態が解り、運転し易くなるの、それと無駄なスペースが全然無いの重量が嵩むし空気抵抗が増えるから、・・乗るときは、両手を席の両側の淵で体支る様にして、滑り込まないと、座れないよ、馴れないとなかなかね」 孝ちゃん、慌てて「冗談に決まっているでしょう、本気にしないで、ヨシ子さんのお尻、小さくキュウッと上ていて、足も長く格好良いわよ」 笑いながら「いいのよ、私、赤ちゃん、出来たから、お尻大きくなったと思って、心配したわ!」 「孝ちゃん!余り俺をいじめるから、からかわれたんだよ」 

ほっぺを膨らませて「もうーリュウまで!」と云いながら驚いた様子で「あかちゃん、出来たのですか?、ヨシ子さん!、リュウ、おめでとう!」 監督と井原さん、竹田君は、笑いながら「本当ですかヨシ子さん!、おめでとう!良かったですね」 ヨシ子「はい、ありがとうございます!、リュウどう?お尻大きくなった!」 「毎日見ているから、判らないよ?変わらないと思うよ、 孝ちゃんは、女の子のお尻見たって、何にも感じないよ!、皆が冗談言うから」 「本当なの?孝ちゃん!」 「私だって、綺麗なお尻、位解かるわよ!リュウのお尻は魅力的よ」 皆大笑い!? 「俺にトバッチリが来ちゃったよ」

 ヨシ子も和やかに皆に溶け込み、レースカーが状況やサーキットにより色々な調整が或る事を知り、改めて驚いていました、「ねー、リュウ!エンジンって心臓と同じね、弁がバブルでピストンが心室のポンプ機能、肺が過給器と燃焼機関人間と同じね」 「少しの間に良く覚えたね」 「まだ、あるのよ、空気抵抗とか足回りの事とか」 夕食の時も、メカニックに質問の嵐、井原君も堪り兼ね「リュウは良く知っているよ、もっとRyu.K3jpg.jpg丁寧に教えてくれるよ」 俺は慌てて、手を横に振りながら「だめ!だめ、井原君や孝ちゃんの方が解かり易く教えてくれるよ、何にせプロだから」

 ヨシ子真剣な表情で「ねー、皆さん、私うるさい?その時は遠慮なく言ってくださいね」 井原君「そんな事無いですよ、むしろ、感心しています、先生に成る人は違うなと思って」 孝ちゃん大袈裟な手振りで「少しでもリュウの役に立ちたくて、本当、リュウは幸せよ、焼けちゃうわ!」 「又、俺かよ!本当にもう」 監督真面目を崩さず「リュウ、尻の話だけに、トバッチリだね」 さすが、監督がすまし顔で落ちを言い、それがアンバランスで妙に可笑しい、皆大笑い、俺も笑いながら「監督!うまく、纏めましたね!」 俺はヨシ子に向かって「ヨシ子、明日から本番だからね、皆んなの邪魔にならないように久美ちゃんに聞いて、タイムキーパが良いよ、俺の走りチェクして、監督いいですか?」 監督「ヨシ子さん、リュウの走り甘くならない様に、確りチェックして、孝ちゃんの言う、美尻を叩いてくださいね」 俺は「監督!まだ尻に、こだわっているんですか?」 皆、大笑い、本当に笑いを交えた、和やかな時を過ごせ、改めてこのチームで良かったと思った

 俺達の部屋にヨシ子とクラブハウスに戻り 「皆、本当に良い人達、リュウがこのチーム大事にする事、良く解ったわ、明日はリュウの大事な日、解かっていますが、今日は何時もの様に私を抱いて寝て下さいね、リュウを確り感じていたいから、ベット少し狭いけど、いいですか?」 何時も自分の気持をはっきり云うヨシ子を快く感じている、多分何時別れが来ても後悔の無い様にだろう、ヨシ子の瞳の奥に、強い意志が感じられ訴えるものがあった 「大丈夫だよ、何時もそうしているでしょう?」 「うれしい!、レースの時は眠れなくなるといけないかな?と思ったから」 「大丈夫だよ、俺も其の方が最近馴れてヨシ子がいないと寝れないから」 「良かった!」

 俺はヨシ子と知り合ってから何時もこんなに自分の気持ちに正直で素直で有って、俺に押し付ける事もなく本当に可愛い人だと思っていた、そして、今は一人でレースをするのでわなく、二人で、いや、お腹の赤ちゃんも入れ二人半かな?と思え、しかもスポンサーの事もあり、レースを続ける事にやはりこんなヨシ子を悲しめてはいけないと云う気持ちも湧いて一層気持ちが揺らいだ

 改めてヨシ子が話だした「私ね、何時もリュウを愛し恋していたいの!それには夫婦の間に我慢や少しの嘘が有ってはいけないと思うの、それが積み重なる事で大事な家庭に孤独を感じたり、不満が積み重なり冷めた家庭になり破局に繋がると思うの、それに、子供が出来たって、リュウにお母さんって呼ばせませんよ、何時までも恋人ですからね」 「解っているよ、ヨシ子の気持ち素直に云ってくれる事、可愛いと思っているし、俺れもそう、思っているよ、大事な事と思うよ」

 「私、今回、浩子さんと話し合いで考えさせられたの、大半の夫婦がお互い不満を持ちながら伝えられず最後には耐えら無くなり、爆発してしまうと思うの、自分だけの思い込みで、こんな事ぐらい解るだろう、とか自分の都合だけで、その人に採っては大事なことなのに、話を聞かなかったり、自分自身に原因が有ると思っていなくて、相手に不満をぶっつけているだけなのよ、どんなちいちゃな事でも、積み重なれば、大きく成ってしまい、だから隙間風が吹き、休める処が無くなってしまうの」

 「以前リュウが話した通り、簡単な事なのよ、痒い処、掻いてむらえば良い事なの、夫婦の基本なのに、子供が親に甘えられるのは、全てを知られているからなのよ、その上何時だって味方してくれるから、そう行った小さい事が大事だと思うわ、結婚してから甘えられるのは夫であり妻で無くてはいけないの、其れ以外、誰であってもいけないのよ、その為の夫婦でしょう」

 「俺もその通りだと思っているよ」 「其の点、リュウは、本心で云ってくれるから、大好きよ!、試合前の大事な時にごめんなさいね」 「いいんだよ、俺が一番甘えられ、本当に安らぎを感じられるのはヨシ子だけだよ」 「私もよ、リュウには安心して身も心も裸の自分になれ、甘えられるの、駄目な事はいけないと言ってね、押し付けている訳では無いのよ、..愛しているわ! リュウ私のお腹に触って!、少し大きくなったみたい」 やはり、そうだ何時又事故が起こり、別れが来ても後悔の無いように、又赤ちゃんが成長する過程を母親だけでなく父親の俺にも実感させたく、思っているからだ

 いとおしい人だ、俺だって、そうだよ、口には出せないが、心残りはしたくないよ、直接ヨシ子のお腹を手で触り 「本当だね!少し、やっと、この中に俺達の子供がいるだと思える様になった、頭で解っていても、この中で別な命が息きずいていると思うと、神秘的で不思議だね!」 だが俺は子供が出来たと、大喜びする父親の様には、どうしてもなれない、俺は自己的で冷たい人間なのか!どうしても実感が湧かない

 「何時もリュウに抱いて頂き、きっと、この子は、何時もお父さんの暖かを感じているわ」 「そうだと、良いが..」 「きっとそうよ!解るものなのよ」 俺はヨシ子を後ろから抱き、うんうんと頭を振り応えた、が子供をもった親父の実感はどうしても感じられない、俺が子供なのか?それでは、ヨシ子にどれだけ、悲しませるか、分っている、何時もの様に、ヨシ子に触れ温もりと安らかな寝息を感じ、俺も安心出来たのか、何時の間にか眠りに入っていた。

Sugo.jpg 翌日サーキットは朝5時頃から賑わい始めていた、各チームのレースカーやメカニック、ヘルパー運営委員、宣伝用商品の運び込み、販売員、華やかなコンパニオン、キャンペンガール、レースクイーン、続々と集まってくる、皆忙しく動き廻っている、この田舎町、昨夜の静けさは嘘の様に活気に溢れている!我らチームも久美ちゃん森田君がスクールの生徒達を引き連れ朝8時に到着、今日は午前10時から1時間フリー走行タイムアタックもあり重要な時だ、各チームの緊張間が伝わってくる、

 チーム全員、雑談でざわめきながら朝食を取り、監督から例の如くスケジュールや仕事の説明や指示を受け、それぞれ役割に付いた、俺はインストラクターの森田君とレースコースのチェックポイントと指導に出かけ、基本的最速コースの採り方や主だったポイントを説明しながら俺自身レースのクリッピングポイントを確認し、森田君には、タイトコーナー等を攻める場合時により内輪を縁石よりコース外に外して走る場合もあるよ、遠心力で内輪は浮き上がっているからね落ちて前輪が引っかかることはないし余りショックは無いよ、前車を抜くタイミングにアウトを攻める振りをしてインを突けるよ

 複合コーナーでは最終出口を如何に有利に一秒でも早く抜けられるか、最終コーナーでの立ち上がり、例えば、コーナーを80Kmと100kmとの違いで立ち上がた場合、100m先では20mの差が出来てしまう、実戦では100kmのままではなく110,120と加速も早く、もっと差がつくよ、如何に速度を上げ次の直線に繋ぐかが重要で其れの繰り返しで有るかを説明、

 森田君は真剣な眼差しで「スクールで説明されなかった事が沢山有り、驚いています」 「スクールは基本、これから実戦で学ぶ事が、沢山有るよ、早い人の走りを良く見て違いを早く学び、基本に沿って自分と車の個性と云うか癖に見合った最速コースを見付ける事だね、それと何処を犠牲にするか、何を伸ばすかマシーンと語りメカニックに伝え調整する事だよ、それも限界が有るからね」 森田君は感心した様に何回も頷き「はい、良い勉強になりました、此れからその様な目で見ます」 俺は、この子は、伸びるな!と思った、いよいよ一般観客も入りだし賑わい始めた様だ

 ガレージに戻り、ヨシ子に着替えを手伝ってむらいレーシングスーツを着、パドックに入った、午前10時からの一回目のフリー走行の始まりである、天候は晴れコースはドライ、ヨシ子からのハグを受けタイムは確り測定しますから、と送られ、マシーンに乗り込んだ、井原君と孝ちゃんからシートベルトの締め付けと確認を受け、ヨシ子に投げキッスを送りヘルメットを被りグローブに思いを込め感触を確かめながら、ゆっくりと手を挿し込んだ、

Yoshiko & FJ-1.jpg 無線で監督からの指示、「今年最後のレース思い切り走れ、2~3周回った位でタイムアタックだ準備が出来たら合図をよこせ、時間だ!」 「はい、思い切り飛ばしますよ」 井原君と孝ちゃんに両脇から肩を叩かれ、親指を立て、グットラックの声を掛けてむらった、「良し!行くぞ!」 俺も親指を立て送り返した、もう俺らには一種の儀式の様な物、

 改めてステアリングを握り締め、メインスイッチを入れスターターボタンを押した、”キュルキュル..フォーンフォーン”腹に沁み込み耳を被うな高回転のエンジン音がアクセルを踏み込むと同時に響き、俺には快く官能的にさえ感じ、野生の血が騒ぎ掻き立てられ、戦闘態勢に入り込む、・・バッテリーが外され監督のスタート合図を待つ、マシーンに乗り込んだ俺の前に立つヨシ子の姿が何時もより張り切っている様で眩しく凛として映り、気持ちが引き締られた、右手の人差し指と中指の二本を立て敬礼を送るヨシ子も手を上げ左手に抱えたタイムボードを指差し送りだしてくれた

 ステアリングに気持ちを込め確り握り締めた、続いて、ピットレーンリミッターのボタンを押す、監督よりスタートの合図だ、ハドルクラッチを静かに放す、ピットロードをゆっくり抜け、コースに出た通常モードに戻しピットレーンリミッターを解除、一周目はコースの確認や温度、油圧などのチェックをしカーブのクリッピングポイントやライン取りの確認、徐々にスピードを上げて行く、今ではマシーンの状態はコンピューターで送られる、前回の事故の後遺症で恐くなってしまう人もいる様だが、俺は幸い恐怖心も起こらない様だ、此の新しいマシーン俺にピッタリ、フットする三周した処で、タイムアタックの指示を監督に送る、「次行きます、よし!行くぞ」 マシーンに語りかけ、最終コーナーからスピードを徐々に上げメインスタンド前ではアクセル全開ピット前の直線を全速力で走る、コーナー毎にブレーキデスクが真っ赤に染まる、激しいブレーキングとギーャチェンジを行い一周しピットに戻る

 井原君にまだ少しオーバーステヤーである事を告げマーシーンを降りずにダンパーの調節を受け再出発、再アタックだステアリングをポンポン叩き今度は頼むよとマシーンに語りかけていた、今度はコース幅一杯にクリッピング、ポイントを正確にコースを飛び出す位に責めベストタイムは1’06.679秒午前の走行ではトップタイムだ前回までのマシーンよりエンジンの立ち上がりも良く新しいボデイのバランスがいい、ドライブし易い 監督「リュウやったぞ!トップタイムだ、これなら、行けるぞ、午後は無理するな!」 孝ちゃん解っていたよと云うような素振りで「リュウなら、やると、思ったよ」 森田君も感心したように「凄いですね、何か尊敬しちゃいます」 井原君は嬉しそうに「何か他のチームに対して鼻が高いです」

sugo.jpg ヨシ子少し興奮して「目の前を、あ!云う間に駆け抜けて行くリュウて!何か胸がキュンとして改めて凄いと思い、おもわずストップウォッチ押し忘れる処だったわ、リュウ前に何が見えているの?」 俺はヨシ子の質問の意味が解っていた、未だチームを変わるのか?迷っていると思いこんでいる、今、迷いは消えたのか?何を考え走っているかだ!「ヨシ子に決まっているでしょう」 ヨシ子真面目顔で「私の事など忘れているのに、真面目な質問よ」 本当はもっと深刻な事を考えていたのだが、其の事には触れず「今は未だ何も見えないよ!本番後だね、ヨシ子は以外に思うかも知れないが、運転操作は反射的にしているから、直線等、観客席まで見えているよ、意外とヨシ子の事や色々考えているものだよ」此れで解るはずだ! 「もう、危険だから、レースに集中してね」 「うん」

 「井原君、孝ちゃん、皆のおかげだよ、大変だったね、有難う有難う!それと孝ちゃん!ヨシ子を頼みます、椅子などに座らせ休まして下さいね」 孝ちゃん心得たと云うよな顔で「解っているわよ、任しといて!」 「有難う」 ヨシ子は俺に向かって「そんなに心配しなくても大丈夫よ!リュウ病気じゃぁないから気にしないでね、本当よ!」 俺も本番レースに此れなら行けると思った、気持ち我がチームの皆に誇らしげに笑顔が浮かぶ、監督手をパンパンと響くように叩き、注目させ「さー皆、お昼にしょう、森田君皆を集めてくれ、リュウはこの後ガレージでサイン会に行ってから、お昼もか兼ねて、2時まで奥さんと休んでくれ2時半から3回タイムトライアルがあるからね」

Ryuサイン.jpg 俺は用意されたサインテーブルで30分程サインを行いヨシ子と食事に行こうと席を立った 「龍崎さん!」呼び止める声のする方向に7,8人の若者達が手を振っていた、中の一人が松葉杖を付きながらこちらに近ずき「龍崎さん、横浜の病院で」 「おぉ!お前か、来てくれたんだ!有難う、確か?」 「西です、其処の友達と来ています、皆サインをして頂きたくて、お願いします」 「ああ、いいよ、もう足は大丈夫か?」 「はい、リハビリー中です、明日、本番頑張って下さい、予選タイム見ましたが、凄いですね」 「あぁ、ありがとう、今日は君たち何処かに泊まるのか?後にいる人、彼女か?」 まだ幼さを残す女性がペコリと頭を下げた 「はい明日も応援しますから」後を向き「皆、サイン大丈夫だから」 まだ高校生か卒業したと思われる男女を含め七・八人、思はぬ飛び入りだったが、素直に喜んでいる若者達を嬉しく思った

 サインも終わりピットに戻った、我がチームの生徒達や竹田君、久美ちゃん、全員で拍手で迎えてくれた、リュウさん、おめでとう、凄いですね、俺はテレながら「ありがとう、これからが、本番予選だよ、まだ喜ぶのは早いよ」 生徒の誰かが「私達のチームでは始めてのトップですよ、一流チームの仲間入りこれから私達も希望が持てます」

 皆の顔に明るさとプライドが出て来た様だ 俺は「本番は明日、皆のピット作業(タイヤ交換や給油等)頼みますよ」 生徒「そうですよね、責任重大、練習もっとして一秒でも早く出来る様にします」 監督「そうだよ、皆頼むよ!」 俺はヨシ子と食堂に連れ立った、食事をしながらヨシ子は「改めてリュウの凄さ解ったわ、実力有るのね、だから他のチームからお誘いが有るのね」 「あまり、褒められると、くすぐったいよ本番は此れからだから」 食堂にいた、他のチームの人たちも、俺達の席に来て、おめでとうと云ってくれ握手を求めてくれた

 予選(Qualifying)開始だ!監督・メカニックに送られ一回目1’07.063、二回目R1’06.332、三回目R1’06.635 僅かの差でトップを譲ってしまった、トップは一流チームの外人ドライバーだ、其の後フリープラクテス(FreePractice)をこなし、マシーン温存の為少し抑えて走りこんだ、チームの皆は残念がっていたが、抑えて走った俺と監督には明日の本番には行けると核心していた、チーム全員でサーキットのカフテリアで明日の予定を確認と取りながら他のチームも交えお祭り騒ぎで夕食を摂った、レース関係者の社交場である、

 やはり、前回からのスタートポジションと前回の事故、それに今回の結果否応なしに注目が集まる、中にはあからさまに、あの人よと指差す人や目配りで其の気配を感じた、互いに探りあったり、交流を深めたり、スポンサーと話し合ったり、騒めきで大変だ、「さー、ヨシ子疲れるから、そろそろ部屋に戻ろう」 「ええ、リュウ凄い注目の的だね、少し疲れたわ」 明日の為に俺とヨシコは早めにクラブハウスに引き上げ風呂に入り早めに休んだ、むろんヨシ子とお腹の赤ちゃんを充分感じながら..。レースクイン4.jpg

 決勝当日の朝が来た、曇りで午後からは少し雲行きが怪しく雨になりそうだ、俺達のレースのスタートは午後二時過ぎ午前中は暇である、朝飯をゆくり摂り、レースクイーンやコンパニオンが興奮気味に甲高い声であちらこちらで話しあっている ヨシ子も少し興奮だ「リュウ、良く眠れた?」 「うん、大丈夫だよ」 「リュウ、昨日から注目されているね、視線を感じるわ、リュウの目が泳いでいるわよ、レースクイーンがいっぱいで楽しいでしょう、皆若くてピチピチだね、いいでしょう?」 「まーね、皆可愛いね、目の保養だよ、今まで長い事、こんな世界にいる俺だよ、それほどには感じないよ、それよりヨシ子ほど魅力有る人は滅多に居ないよ、ヨシ子の方が男の視線感じない?」

 ヨシ子も満更でも無い様だ「いいわよ、煽てなくても、本当に口が上手いんだから、他の人にも云ってない?」ちょっとヨシ子、怒って見せた 「煽てじゃないよ」 ヨシ子「ちょっとリュウを、からかっただけよ」 「それより、お腹、大丈夫かよ」 「大丈夫よ、ちょとだるかったりする事があるが心配しないで」 「これから俺達のスクールの宣伝ブースに応援に行こうか?」 「ええ、そうしましょ」

 朝から観客も沢山入り始めて混雑して来ている、俺達のメイン・レースの前に色々なデモストレーションや前座レースがある.  我々のレーシングスクールの宣伝ブースでは久美ちゃん始め竹田君、スクールの生徒達がパンフレットを配りながら、説明に大忙しだ、久美ちゃんが俺達を見つけ「龍崎さん、お早う御座います、リュウさんの効果で大分お客さん来て質問してくれます、多分入学希望者が増えていると思いますよ」

K.Ryuzaki.jpg 目ざとく俺を見つけた人達がサインを求め又列になり、話も出来なくなってしまい、生徒たちが、気を利かし6,7人で終わる様に取り計らってくれブースの奥に隠れるようにして、久美ちゃんがヨシ子に「奥さん、あかちゃんが出来たそうで、おめでとう御座います、何時のご予定ですか?」 ヨシ子お腹に手を充て「ありがとう、来年の3月頃だと思いますよ、久美ちゃん結婚は?」 「そのつもりでいますが、まだ、竹ちゃんが?」

 ヨシ子怪訝そうに「そうなの、聞いて見ましょうか?」 久美ちゃん恥じらいながら「いいです、そんな事!」 「久美ちゃんは結婚したいのでしょう?」 俺は「久美ちゃんに任して置けばいいよ二人の都合も有るから、あんまりしつこくすると、嫌われると思っているから、ヨシ子とは立場が違うの」 ヨシ子「そう?そうかな~ぁ、解った!とにかく頑張りなさい」 俺「そろそろ、部屋に戻るよ、ヨシ子はどうする?もっと別な所見ていきますか?」 「リュウと一緒に戻る、こんなに大勢の人込み、少し疲れたわ」 「大丈夫?」 お昼は久美ちゃんにお願いして部屋まで届けて頂く事にした。

 部屋で、久美ちゃんの運んでくれた食事を採りながら ヨシ子やっとほっとした顔をして「あまり人気が有り、なんだかリュウが別人の様、こんなに近くいるのに、手の届かない処の人に感じたの」 「何、変な事云うの?俺だって、病院でのヨシ子は別人に感じる事あるよ、俺、其れはプロに徹しているからと思っているよ、お互いプロでしょう、ヨシ子は初めて今回長く居るから色々見えたんでしょう」

 「私だめね!病院の事意外、全然知らないから、リュウの方が余程大人ね」 「そんな事ないよ、俺が子供だから、ヨシ子が何でもやらなくてはと思っているでしょう?、今回ヨシ子は一度に一杯詰め込み過ぎだよ、もっと遊び感覚でいたら」 「だって、リュウに少しでも近ずきたくて、後悔..うんうん、いいの」 俺にはヨシ子が云をうとした事が解っていた、あの事故以来何時つも一日々を後悔の無いようにだろう..それには触れず「凄く有り難いと思っているよ、もし俺が医者の勉強するとしたら、頭が痛くなり、とても疲れて出来ないよ、ヨシ子だってそんな事、望んでいないでしょう、望まれても俺、出来ないよ、それで、いいんじゃない?」

 ..改めて、年上なのに、可愛い人だなと感じていた..そしてソファーに座っている、ヨシ子を後ろからそっと抱きしめた、ふと、こんな場面何処かにあった様な気持ちになった内容は違うが..あぁ前の奥さんだ、悲しそうな顔の彼女を良くこんな風に抱き締めた、俺が幸せに成る度に思い浮かぶ如何して居るか気になったが..あわてて打ち消しヨシ子のお腹を擦り「頑張ってくるからね」とつぶやいたが、なんで、こんな時に!又同じ不安が襲うレースを辞める時なのか?

 ヨシ子は俺の手をゆっくり外しながら「リュウ、もう大丈夫だから、大事な試合前にごめんなさい、そろそろ時間よ、リュウ着替えなければ、手伝うわ」 気持ちを切り替えレーシングスーツに着替え、熱いキスを交わす、よしやるぞ!ヨシ子お腹を擦りながら「短気起こさないで、充分注意してね、この子の為にもね」

 決勝レース(Final Race SUGO pm2:30)

SUGOスタート前.jpg 天候は大分悪くなって来た空は黒い雲に覆われ、今にも降りそうである、着替えを終え俺達はピットに向かい、フアンから頑張って下さいと、声を掛けられる、手を上げて応えた、監督と天候とレースの運びを打ち合わせ、「今年最終レースだ、思い切り遣って来い!」 「はい」ヨシ子と黙って然り抱き合い、ヨシ子を手で押し出すように監督に預け、

 コース上のメカニック達の待っている場所に宣伝用アンブラレを翳すレースクイーンを従えスタートラインに向かう、最前列のポジション、アウト側だ井原君と孝ちゃん森田君達が待っていた、二人に「ご苦労さん、二人とも遅くまで、本当に有難う、凄く乗りやすくなったよ」マシーンに乗り込み、俺達の儀式、安全ベルトを確りと井原君、孝ちゃん、に締めて頂、相変わらず孝ちゃんの「リュウ頑張ってね」を聞きながら、身体を左右に振って安全を確かめる、両者に親指立てOKのサインを示し、今日は何故か自信があった俺は「任して!チームの為に笑顔で終わる様に頑張るよ!」

孝ちゃん.jpg 孝ちゃんはニンマリしながら「リュウ、絶対チャンスだからね、ものにしてね、愛してる!グットラックよ!」 二人に両脇から肩を叩かれヘルメットとグローブを被り、孝ちゃんは、ドサクサに紛れなんって事を!「孝ちゃん、井原君、有難う、でも、孝ちゃんダメ..」 「粋じゃないよね!解っているわよ!行ってらしゃい、頑張ってね!」 親指を立て「オッケイ!」

監督&ヨシ子・ピットにて.jpg エンジンスタートの合図でメインスイッチを入れエンジンスタートボタンを押した、相変わらず腹に沁みる快い振動とエンジン音が響く、全ての人達が退き

 指定された回転数バーンアウトにセットする、スタートのグリーンランプが点きペースカーが走り出すステアリングペタルでシフトアップしアクセルを踏み込む、トップに続き、サーァ出発だ、第一コーナーを回り蛇行運転タイヤに熱を入れ地面との粘着度を高める、同時にタイヤ圧も高める、監督からの指示が入る「リュウ聞こえるか、調子はどうだ、どうやら、雨が降りそうだ」 「マシーンは順調です、雨ですか?」 「タイヤ交換時期は後で知らせる、頑張ってこい!」 「ハイ、了解!」 一周でペースカーが抜けスタート位置に付く

リュウヘルメット1.jpg いよいよ、本番だ何時もより落ち着いているが、毎回、今まで何回スタートを迎えた事か?何回経験が有っても、この待ち時間ほど嫌なものはない、何故か、ヨシ子、監督、竹ちゃん、孝ちゃん、他のチームの人達やレーサー達、の顔が浮かぶ、皆の努力に報いなければ、敵は自分自身の心の中だ!、先ず自分に勝つ事だ、と何時ものように自身に言い聞かす、辺りは13台一斉のエンジン音で他の全べての音がかき消されているはずだ、13台最後のマシーン全車が整列した、ヘルメットと耳栓を兼ねたイヤーホンで覆っている、だがエンジン音は聞えてる筈だが、俺はスタートシグナルランプに集中している為か、静寂そのものだ、俺の動作は今までの経験と各レースの度、何回も頭に叩き込み尚ミスの無いように工程を確認しマシーンのスイッチ類の設定を行っている、ドライブモードをドライ通常スタートに切り替える、ただ異常に心臓の鼓動の高鳴りが聞える、ステアリング・クラッチパドルを右手人差指と中指で引き左シフトバドルでギヤーを入れる俺の心の中では全てがスローモウションを見ている様だ

  赤いスタートランプがゆっくりと1・2・3....4と付き始め5個全てが付き、次の瞬間、現実に戻る、全てのランプが消え、ブラックアウト、スタートだ! 反射的にステアリング・クラッチを放しアクセルを踏込、スタートする「よし、綺麗にスタート出来た、行くぞ!」 パドルで2速3速とシフトアップ、同時にアクセルを床が抜ける位、踏み込む、この一連の操作はレースで身に付いた経験で、無意識の中で最良のタイミングで行われる、すでに其のとき全ての不安は消えスタート第一コーナー.jpg去り、獲物を追う闘争心の塊、一匹の狼に変わる、ひたすら第一コーナーを目指す..トップのマシーンが焦り、アクセルを踏み込み過ぎ、タイヤをスリップさせ僅かに出遅れた様だ、幸い俺はコースのイン側をキープしトップで第一コーナーに入る事が出来た「よし、行ける」俺はすかさずイン側ぎりぎりに入り込み、正確にクリッピングポイントを目掛けて急速なブレーキング同時にシフトダウン、幸いライバル車も無く、前回の事故での恐怖しんも無く、何の影響も躊躇も感じず冷静に第一コーナーを駆け抜けた、前回、俺自身の運転ミスで起きた事故では無かったからと思う、次のコーナーまでの間にペダル・スイッチを通常モードに戻す、バックミラーで後続車を確認、素早く計器類に目を移し異状がないか、確認する

 其のままトップをキープ後ろでは、順位の入れ変わる激しいバトルが始まっている、もう一度バックミラーで確認する、順調に最終コーナーを立ち上がりメインスタンド、ピット前を通過、監督から「いいぞ!其のまま焦らず慎重に行け!後続は離れ始めている」 「はい、了解!」 2番手はマシーンの調整が少し悪かったのか?、実力は十分ある、油断は禁物と自分に言い聞かせる!

 7周め辺りから、とたんに空が暗くなり霧雨が降り始めた、俺と2番手は後続を大分離し始めていた、監督から「タイヤ交換の準備が出来ている、何時でも良いぞ」 俺は路面が少し濡れ始めていたが、雨はそれほど降らないと、判断した「監督!此のまま行けます」 監督「そうか!用意は出来てる、状況に応じて何時でもいいからな、後続は交換に入った」

 「はい、連絡します」..何時もと勝手が違う、やはり、俺はハンターだ、そして俺の祖先も狩人だったのではないか?..ふと、そう思った、前に追う車がいないと、何か不安になる、追い詰める、あの快感が無く、今度はマシーンの心配ばかり、バックミラーや油圧計、水温計、エンジン音に心が行く、監督から「ラップタイムが落ちているぞ」の連絡が入る..此れではダメだ、ベストラップをたたき出す気持ちで集中して挑まなくては!、又監督からの連絡で他車はレーンタイヤに交換し始めている10周目で2番手はタイヤ交換に入った様だ、

 気持ちに気合を入れ、コーナー、ギリギリまで攻め込み、ベストラップに闘志を湧かす!少しでもタイヤ交換の時間を稼ぎ出したい、俺はマシーンが少し滑りだしたので14周次の周で入る事にした「給油も同時にするから」と連絡をオーバーテイク.jpg入れ、ピットイン、皆手馴れた手つきでタイヤ交換や給油を行ってロスタイムも無く出発来た、ピットロード出口、トップのままコースに戻れたが二番手が真後ろに近ずき、盛んにアタックして来る、アウトに出たり、インに入ったり、上手く押さえ暫くバトルが続いたが、ニュータイヤの表面も剥け路面に馴染み始め、オーバーテイクを使い少しずつ離す事が出来た、..やはり俺は此のバトルが好きだ、俄然闘志が湧く..

 幸いその後雨も余り激しく降らず回復に向かっている、コースに水溜りも出来ず、順調の周回を重ねた後続車とは14秒程の差を付け39周めに再び給油とタイヤ交換に入る、順調に運び其のままトップをキープする事が出来た、ベスト走行ラインをなるべくキープする事に勤め運転がラフにならない様に勤めた、後はマシーンが順調である事を願い走るのみだ!..何て!不安な事か!思わず、マシーンに呟いてしまう(頑張れ!もう少しだから機嫌良く頼む!)..雨も止み始めコースのコンデションも良くなり、監督の興奮した声が聞こえる「よし!よし!よし!が繰り返し聞こえる、後続と10秒以上離れている、慌てるな!後7周だ!良し!」 「OK!了解!」

 監督の方が興奮して慌てている様だ、今回、何故か俺は冷静でいる、余り興奮もしない、ただマシーンが壊れない事を願うのみだ、監督は俺の今の気持ちを察してか一周過ぎて又連絡「リュウ後残り6周だ、そのまま行け!」 何か監督の方が興奮しているようだ、此れ程残り周回を長く感じたことは無い後6周か!マシーンを労わり、いよいよラスト5週も終わる、ファイナルラップ62周目だ、観客が手を振る、騒めきが手に取る様に解る、最終コーナーを立ち上がる待ちに待ったチェッカーフラグが振られている、一度もトップを明け渡す事無くゴールが出来た、初めて感情が湧き上がる 「ヨーシ!やったね!有難うありがとう!」ピット側すれすれにチェッカーを受ける

 右手を突き上げ俺達のピット前を通過、クルー達がジャンフしながら手を振って居る様子が、解る、「ありがとう!」 後は言葉がでなかった 監督から興奮した声で「良く遣った!良く遣った!」 監督も声がイチオクターブも上がっている、一周ゆっくりと、コースをまわる後は観客に右や左の手を上げながら、声援に応える、 やっと実感が湧いてきた、所定の位置にマシーンを止め立ち上がり両手を挙げ観客に応える、チームクルRyu Winning1.jpgーから背中や肩をメチャクチャ祝福の洗礼を受ける、「ありがとう、ありがとう」 体重検査の為部屋の中に入り、体重計に乗り検査を受ける、監督とヨシ子が待っていた、ヨシ子は俺を見つけると駆け寄り抱きついてきた、受け止めながら一回転し「やったよ!」 ヨシ子の目が涙目で光って見える「うんうん!リュウ凄いよ凄すぎる!良かったね、おめでとう」 俺はヨシ子の頭にてを充て「うん、...監督!有難う御座います!」 監督の万遍な笑顔で迎え「良くやった!、これから表彰式だ、行こう」

 孝ちゃん「リュウおめでとう、良かったね!ヨシ子さんずーと力が入って、両手を合わせたり握り拳作たりして、祈っていたわよ」 「そうだったの?」 ヨシ子バツが悪そうな顔で「そんな事ないわよ、少しは力入ったかも知れないけど」 尚も孝ちゃん笑いながら「自分では解らない物なの!リュウの為に、一生懸命だったわよ」 俺はヨシ子の頭の手を有難うの思いを込め軽く叩いたり撫で回した、ヨシ子は髪の乱れも気にせず興奮状態「孝ちゃんや、井原さん、森田君の方が応援、凄かったわよ、飛び上がったり、手を握り締め、良し行け行け!て、生徒達もすっかり興奮して、もうリュウの虜よ」 「休み無く、俺の為に色々調整、して頂いたから、井原君や孝ちゃんのお陰だよ、ありがとう」 ヨシ子は頷きながら「そうよ、井原さん、最後の5,6周なんてエンジン壊れないように祈っていたわよ」

 表彰台に上がり優勝のトロフィーを大会委員長から受け、また新人と言う年齢では無いが新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)も受けた、インタビューで俺は「天候とピットインのタイミング監督の指示が良かったし、メカニックの調整力に助けられドライブしやすかったチームの皆に感謝しています」 どうにも、インタビューは苦手だ今年のレースの終わり、幸い年間チャンピオンのインタビューがあり、質問は早々に切り上げインタビューはチャンピオンに向かい助かった

 興奮して疲れた顔のヨシ子から「少し疲れたから、部屋に戻るわ」 「解った、直ぐ行くから、久美ちゃんに、送ってむらいなさい、無理するなよ」少し心配で有ったが 暫くもみくちゃにされて挨拶に追われたが、此の後、懇親会や今後のレース方針などに参加し、又皆にもみくちゃにされる前に早々に引き上げる事にした   

 主だった人々に挨拶して、監督やチームクルーにお礼を述べ、宜しくお願いして、妻が身籠り中で有り、疲れが出た様で、先に帰ることを告げ、竹田君に最寄の駅(名取)まで送って頂き、車内で流石に疲れた様で、ヨシ子は言葉少なく、まだレースの興奮に沁たっている様だ、俺に寄り掛かっているヨシ子に「大丈夫か?」 「ええ、少し疲れただけ、丈夫よ」 ほっとした、正直俺は普段のレースドライブが終わった事と余り変りなく優勝の実感は余り無かった、ヨシ子は俺の肩に寄り掛かり名取駅に着き、竹田君に皆さんにお礼を伝える様にお願いして、宮城県松島に向かった。

    《宮城県 松島》 

リュウ車中.jpg 名取駅を夕方6時に出てJR東北本線で仙台に15分位で到着、JR仙石線・石巻行、30分で松島海岸に着く、ヨシ子が予約した、松島センチュリーホテルにタクシーで3分、フロントデスク(受付)にて、宿帳にヨシ子が記入し「妻と記入した事、初めてだわ、未だ、なんだか実感ないね」と俺に囁いたが、嬉しそうな顔で、少し感動している様子

 受付を済ませ、日本三景として知られる(松島)が一望出来る良い部屋に案内され、馴れたものでヨシ子は素早く心付けを渡し、今何が美味しいか、お風呂はどうか、色々質問、今ちょうど、野天風呂の個室が空いている、から利用出来ます、直ぐに予約入れて頂き、先ずはお風呂に入る事にした、貴重品等金庫にしまい、野天風呂へここもオーシャンビューの素晴しい景色

露天風呂汐音1.jpg 今までの騒がしさや騒めきは嘘のように、やっと、ゆったり広々した空と海、静かに、二人して潮騒を聞きながら、しみじみ温泉を満喫しほっとした顔のヨシ子は「此処の温泉、肌に良いみたいよ、リュウ、頭流してあげる、ヘルメットで汗一杯だったから、ここに座って、初めてね、こんなにゆったり温泉に、二人で入る事」 俺は見慣れたはずのヨシ子の裸を、昼間日の光に照らされた肌を眩しく感じ、ドギマギして「そうだね」 以前より全体にほんの僅かにふっくら、丸みをおびた身体は益々優しさを感ずる、髪を頭の上で纏め上げた首筋、なんとも、ゾクとする色気を感じる、ツンと上を向いたプリンの様な魅力的なオッパイに悪戯しようと手を出したら 「だめよー、今は、さあー頭を下げて!、洗うから、やっとリュウが私の処に帰って来たわ..」髪を洗ってむらいながら 「何時も一緒だったのに、何?」 「今迄は、皆の者で、何か取られてしまったようで、傍にいるのに、何か寂しかったわ」シャンプーが終わり 「どう?サッパリしたでしょう」 「あぁ」

 「ねー、リュウ、其処に立って見て!リュウの体、しみじみ見た事無かったわ」 「改まって、言われると、気恥ずかしいな、此れでいい!」 ヨシ子は何の動揺もなく、見詰めている「ええ、思ったより、全体が筋肉質ね、特に胸と腕凄いわ、そこで廻ってみて」 「もーぅ!、これでいい」その場で一周廻る 「今までこんなに、全身ゆっくり見る事無かったわね、意外と見ている様で、気が付かなかったわ、何回も着替え手伝ったのに、孝ちゃんが言ったとうりね、お尻が小ちゃくて、締っているよ」 「もうー、良いだろう、ショーは終わり..毎朝、ヨシ子と走って、腕立てしているでしょう、馬力の有るレーシング・カーは意外とハンドルや首に力がいるだよ、今までヨシ子は医者の目でしか見ていなかったからでしょう」 「そうよね、そうかもしれない、感心にリュウは毎朝欠かさず走っているから、私も付き合って、スタイル良くなったでしょう?」 「大丈夫だよ、綺麗だよ」 「本当?」 「本当だよ」 少し出て来たお腹を押さえ「此の子、産れた後、又ジョギングするから、付き合ってね」

 「あぁ、今度は俺が、背中流そうか?なんだか、少しオッパイ大きくなったのかな~ぁ?」 「そうね、赤ちゃんの為の準備かな、..優しくね、今は悪戯は無しよ、..なんだかリュウに言われ、女として感じるのかな?レースの時の興奮と今のリュウの裸見て、ギリシャ神話の彫刻より筋肉が生々しく動き、何だか、たまらないわ!私を引き付けた時と何処か同じ感覚よ、でも、後にする」 「はいはい、後でね」 俺は余りにも拘りの無いヨシ子の言葉が、美味しいお菓子でも食べる様に聞こえ、可笑しさを覚えた、真面目に優しく背中を流し、意外と華奢で小さいな背中、背丈は有るのに、こんな小さな体で、一生懸命だったと思うと、いっそう愛おしく思った

 「リュウの実力、改めて、感じたわ、前に言っていた事、本当ね!..もう、あえて今後の事、聞かないわ、リュウが結論だしなさい」 それには応えず「うん..お腹すいたね」 ヨシ子も笑顔で「ほっとしたら、本当ね、リュウに逗子に連れられて行った事、思い出すわ」 ヨシ子は海を眺めながら、逗子の海岸を思い出したのか「..何か、遠い昔の様な、つい最近の様な..さあ、食事に行きましょうか」少し感傷にしたっていた 「そうだね、短い間に、色々な事が有ったから」野天風呂を満喫し

オープンキッチンjpg.jpg 先ほど聞いた、ホテル内のオープンキッチンで牛タン塩味、天ぷら、えび・すずき・あなご・烏賊・野菜・刺身の盛り合わせ等好きな物を個々にオーダーその場で作って頂き俺は宮城ステーキ、ヨシ子は牛タン、刺身の盛り合わせ等オーダー、お腹も空いていたので美味しく頂き、ヨシ子は、俺の伺いを見る様に「リュウの優勝祝い、少しくらい、ビール飲んでも良いよね」 「俺に聞くなよ!、先生だろう」 お腹を撫でながら「少しなら良いって、言っているわ....ね!リュウ、いいでしょう」 俺はコックリしてみせた

 客は俺達二人だったのかそれとも話好きコックさんか「おめでたですか?」 ヨシ子は神妙に「はい!」と返事をした、コックさん活き良いずいてか「其れは、おめでとう御座います、じゃ少しだけですよ」まるで自分のことの様に、俺は思わずヨシ子と顔を見合わせ笑顔をつくった、 コックさんが話好きで此の時期余りお客さんが少なく、本当は冬場、牡蠣が有名ですよ、何処が見所かいろいろと観光案内をして頂き、退屈をしなかった

 まだ寝るのには時間も早く、夜の海岸を僅かな月明のかりに、島々からの明かりが漣に綺麗に輝いて、快く、静かに時折そよぐ風、寄せては返す潮騒の音、..二人手を繋ぎ漫ろ歩き、此の雰囲気からもっとムードのある話に、したると思いきや意外、俺達の将来設計やレースの話にも触れず、今はとにかくレースの話には触れたく無かった

 急に海斗を思い出し「俺、ヨシ子に海斗達の事、生意気な事いったが、如何してやったら良いか、何も考えていなかったよ、駄目だよな」 ヨシ子は乱れ髪を掻き上げながら「そんな事ないわよ、苦しみを理解して、聞いてあげたでしょう、それで、十分だと思いますよ」 「そうかなー?海斗が可哀そうで、何とか、ならないかなー」 ヨシ子「以外ね!車の話しするのかと思ったわ」

 俺は車の話を避けていたから、慌てて「始めた頃はね、車漬けだったよ、今は半分仕事、仕事となるとね」 「私ね、以前から、リュウはそう云う処が人一倍、優しいね、相手の気持や体調の悪さを、想像出来る、そんな愛と思いやりがある人だと思っていたわ、だから人より疲れるのよ」 「買い被りだよ!」 「私がリュウを好きになった理由はそれもあるかも知れないわ」 「もう良いから」

 本音は、今後、来年からのレース活動の事で、頭が一杯だった当然今回は後半半年分の費用で済んだが来年は其の倍以上の予算が必要だそれに良い成績を残す為に当然予備のマシーンが必要だ、今はその事に触れたくなかった..

 「そうね、時々レースの事、忘れたいよね、..海斗君の事ね、もっと未来だったら、アレルギーも起きない自分の細胞から必要な内臓器を作れる様になれるのに..昔から、生命力の有る人が色々な苦難を病気だけではないのよ、災害や戦いを乗り越え生き残って来たのよ、其の中で、医師達の力どれだけ小さいか、どれだけの悲しみが有ったか、それの繰り返し、今わどうにもならないわ、私自身医師としてどんなに無力で不甲斐無いか思い知らされたわ、それだから、諦めろと、云っているのでは無いのよ、其の中で出来る限りの努力しているの、私自身も如何にあるべきか、他にもリュウのように心痛めている人が何人もいるのよ」 やはり、こんな時は、先生と云うより母の様だ!

 「遺伝子の組み換えや臓器を作る其処まで、進んだら、何か恐いね、俺は神など信じる信者では無いが、なにか神をいや自然を冒涜するような、戦う為の最強の化け物が作られたら..あの包帯グルグル巻きのフランケンシュタインの涙の意味、それに永遠の命を持った火の鳥、の悲しみが初めて解ったような気がするよ、それもヨシ子が云う神が人間に与えた進化と知恵だけど..」

 ヨシ子「そうよね、実験段階ですがiPS細胞(人工多能性幹細胞)って言うの、本人の細胞から作るのですから拒絶反応も少ないと云われているのよ、これからもっと実際に実験や拒絶反応のテストが必要で、研究者達は純粋に一人でもその研究により助かれば良いと思っての事よ、其れも法律的規制が出来るでしょうね、その為の争いも起きるかも知れないわ、なんだか恐いわね、でも何処までも進化するでしょうね、いまや、特殊タンパクの利用で脳細胞の再生を試みているのよ、其れが人間の欲望だから、リュウとそんな話出来ると思はなかったわ、難しい問題ね、私も一人の医師として、一人でも多く助ける事を望むから努力しているのよ、時々リュウは違う視点から考え、根本を改めて考え直し、刺激になるわ」

 俺は突然こんな事を思いついた「もし大海原で、誰も助けも無く、二人で最後の水を如何するか、本当にこの周りの社会で、其れくらい追い詰められる人達が沢山いるんだ、二人で仲良く飲んで命を共に無くするか、それともどちらかに上げて一人だけ助かるか、考えた事ある?人が極限に追い込まれた時に、とる行動、自分だったら、如何するだろうって?」 「どちらも、恐い事ね、私ならリュウと愛し合い幸せの中で死にたいわ、リュウって時々変なこと考えているのね」 「変って?答えになってないよ」 「言い方がいけなかったわね、それも顔が違う様に又育った環境も違い其々違うでしょう、取る行動も其々違うと思いますよ、ただ突然その質問今でなくても、時々リュウが解からなくなるわ」不思議な顔をして、俺を見詰めた、・・ヨシ子に云はれてみれば、全く俺は何を話しているんだ!

 「そうだね、ただ、ふっと思ったから、でも本当にユニークな考えだね、俺もするよ、一人では出来ないしヨシ子のこと大好きだから」 ヨシ子、笑いながら「そうよね..それが、一番平和で悲惨に成らないでしょう、それに、意外と人は最後まで助け合う者よ、リュウだって、私の為にそうすると思うわ、人間は弱いから、そうやって生き延びて来たのよ」 「やはりヨシ子の考えの方が的を得ているね、それが人間や動物の生と死かも、でも本当の所、俺には解らないよ生きなければならない意義が」

 「以前リュウはこの世界で人間の存在価値について、質問したわね、この宇宙に、何かの条件が組み合わされ、たまたま人が生まれたもので、誰も見付けられないと思うの、..何のためではなく折角、与えられた命、どう生きるのか、でしょう、もっと生きていて欲しい人も、生きたくても生きられない人も、どんなに人が悲しんでも思う様にならないの、それが自然の摂理なの」 医師だからこそ、実感があり感じた事だろう

 「リュウと私が何億万人の中で出会えた事も、何万人とすれ違ったのか?不思議で奇跡でしょう、だから悔いの無いように、確り生きることでしょう」 「うん、そう云われれば、そうなのかも」 「それでね、何も無く生きるより、その人なりの価値のある目的を見つければ良いと思うよ」..俺と違って、余裕のある考え、でも俺はその目的を失いかけているのに..如何するのだ!

 なんで、こんな話になるんだよ!折角二人でムード有る処にいるのに、なんて色気の無い話、俺なにやってるの!..街灯や島からの明かりに照らせれ、寄せては返す優しい波の音が情緒を誘う....本当はなるべく、将来のレース(車)の話を真剣に話合わなければならないのに、自分の考えが決まらないうちに触れたく無かったからだ..話せば決断しなければならない..

客室1jpg.jpg 部屋に戻り、久振りにベットでは無く布団に入る、俺はレースの興奮が残っているのか、今後の事か、気になり眠れそうになかった、それでもレースの事には触れなかった「海斗の事、解っているけど!」 ヨシ子優しく俺を見詰め「いいのよ、それでも、悩んでくれる、そんな優しいリュウが好きなの、でも誰にでも優しいリュウに時々焼きもちやいちゃうな」 「ええ!そんな!」 「でもね、レースに取り組んでいる時のリュウの真剣な顔見ていたら、改めて、此の人なら信じられる、て感じたの、女の直感かな!」 「へー、変なの!」

 「そうなの、女って、そんな変な処有るのよ、..私、自分がこんなに、やきもち焼きだなんって、思っても見なかったわ、此の年に成るまで、こんなに、男の人に夢中なった事、無かったの、どんなに優しくされても、何時も何処かで醒めていて、入り込め無かったの、..リュウだけは違ったわ、何時でも、本気で、ぶっつかって来て..その澄んだ目で見つめられ、どんな過去が有ろうが、この人は純真な人と、と何時しbetto.jpgか、引き込まれてしまったの、レースに取り組んで、いる目と同じ、..だから..さ....」暫く沈黙の時が流れ「・・・zz」

 ..なんだ!後にすると云ったのに、久しぶりにビールを飲んだ事でも有り、レースで流石にヨシ子は疲れ、眠ってしまった様だ、本当に率直で可愛い人だ..年上なのに、こんなに愛しく感じる人は初めてだ、・・もう大事で愛している人の悲しい顔を見る事は二度としたくないよ、あ~ぁ!俺は一体如何すればいいんだ! 又これから無責任に今の生活を、全てを捨て、そんな事出来ない、それでは望み薄のレースが尚の事望みが無い、やはり全てを捨てないかぎり駄目だ、ボロボロになるまでやるのか?

 其の夜、俺は余り眠れず、レースを十年程前に始めた頃からの事を思い浮かべ、あの頃の俺はレースが全て毎日が楽しくて喜びだった、資金繰りに走り廻った事すら楽しく、レース用、車の改造やレースで性能の低い車で高性能の車を追い詰めた時の事、仲間とレース用車をエンジンのパワーアップや足周りの改造、レース談義に仲間達と夜明かし、少しでも性能の良いパーツが欲しくて噂を頼りに飛び廻った事、ただレース・カーで走五大堂毘沙門堂五大明王像.jpgれる事が楽しく喜びだった、本当にあの頃はギラギラと燃えていた、

 しかし、レースを中断せざるを得なく目標を失った、あの苦悩、再開出来た喜びも有ったが、今又、同じ苦しみの中にいる、此のまま進んでも先が見え初めてしまった..決断する時が来た!

 翌朝も、二人で野天風呂、朝の日差しを浴びながら、雄大な海と綺麗に写る島々、柔らかく包み込む温泉に浸り、爽やかな活力と元気を取り戻し、バイキングの朝食を戴き、ホテルを9時に出発、近くの名所、五大堂や福浦島等を訪ね、島めぐりの遊覧船で自然が作り上げた島々の美しさを満喫し、明日お互い仕事なので早めに帰る事にした、

 新幹線(はやて)にてヨシ子、良く眠れたのか少し元気を取り戻した様だ「ねー、リュウは如何して、あんなに早く走れるの?」 「如何してて、云はれても、あのクラスになると、レーサーの腕は、ほとんど変わらないよ、本当に、車の調整力それと、集中力の従続と思い切りでしょう..それと天候も運かな」 「でも気持ち良い位、早くて、スッキリしたわ、チーム全員活気が出て、大喜びだったわよ、..リュウ、余り浮かない顔ね」 「うん、流石に疲れたかな」 午後五時半には、家に到着

 《瞑想》

 ヨシ子、玄関ドアーを開け、家に入り居間の長椅子に座り込んだ「リュウ、此処が一番ホッとするわね」 「そうだね、俺なんか、何時も家のドアー空けて、ヨシ子の返事の声を聞くと、ほっとして、安心するよ」 「ほんとう?嬉しいわ」 「本当に感じている事しか、云わないよ」 「リュウ、コーヒー飲む?」 何かとても疲れている様子だったので「ああ、俺、入れるから、いいよ、ヨシ子は紅茶?」 「ええ、ありがとう、ミルクテーにして、其処に紅茶アッサムが有るでしょう、それと、暖めたミルクと半々にして」

 ミルクテーとコーヒーを入れリビングに戻った、何時もなら、荷物を整理する人なのにソファーに座ったままだ 「出来たよ」 「ありがとう」 「疲れているの?食事出かけるのよそうか?何か頼のもうか?」 「家に着いたら、疲れが出たみたい、そうして、頂ける」 「うん、良いよ、何にする」 「消化の良さそうな物がいいなーぁ」 「うどん、なんかどう?俺カレーにするよ」 ヨシ子「月見うどんで、良いわ、電話して下さる」 「わかった、お風呂、入れておくね、あかちゃんがいるから、疲れたんだ、今日は早く休みなさい」

 ヨシ子疲れた様子、腰も何時もと違って、ゆっくり上げた「じゃぁ、先に入るわ、リュウ、洗濯物、出して置いてね....うぅ..うぶぁ」 ヨシコ子は慌ててキッチンの流し台に走りこんだ! 「ヨシ子!如何したの!気持ち悪いの?紅茶のせい?」 「ゲッゲプ!..大丈夫よ、....多分悪阻(ツワリ)でしょう、少し吐き気がしたの、時々有るの心配しないでもう大丈夫よ」 「..ふぅーん、女の人は大変なんだ!心配しちゃった」 「大丈夫だから、お風呂に入るわ」 心配だったので、時々声をかけた 「大丈夫よ、リュウは優しいね、もう本当に心配しないで」

 「うん」 荷物を整理して、月見うどんを二つに変更し電話でオーダーし、冷蔵庫を開けると卵と焼き豚、残り物冷凍ご飯、後は粒コーンの缶詰とマッシュルームのスライス缶、が有ったので、バターで洋風チャーハンを二人分作る ヨシコがお風呂をすませ「やっぱり、お家が一番良いね、疲れが取れたわ、リュウも入る?」 「食事してからに、するよ、チャーハン作ったから、うどん、だけじゃぁお腹空くでしょう、食べられる?」 ちょうど、出前のうどんが届く 「お風呂に入ったら、落ち着いたわ、なんだかお腹空いてきたわ、リュウて気が利くし本当、優しいのね」 「もう大丈夫よ、さー、食べよう」「リュウ、このチャーハン美味しいわよ、べたべたしないで、上手く出来てるわ、感心しちゃう」 「元気になってよかった、心配したよ」

 「もう大丈夫よ、さすがに、疲れたわ、見ているだけでも、こうなのに」 「俺はレースに慣れているし、ヨシ子はお腹に子供いるからだよ」 「自動車レースって、側で見ているより、数段ハードで、頭もかなり、使うスポーツね、今回だけでも、良く解ったわ、レーサーの技量、レースの組み立て、チームワーク、天候、技術、全てが上手くかみ合って居なくては、いけないって事よね」 俺は何故かヨシ子の様子から、早く俺の考えを話さなければいけないと思い「さすが、だね、少しの期間に良く、細かく観察したね、これから自動車レースの見方変わるね、俺が如何してレースに夢中になったか少しは解ってむらったのに、それに俺の為に協力してくれたのに、..真剣な話、聞いてくれる」 「ハイ、如何したの?」 俺は少し躊躇したが、話す事を決めた「....俺、此のところ考えたが、これでレース辞めるよ!....」

 ヨシ子「....!....?」 直ぐには理解出来ない様子であった 俺は理解出来る様に説明した「カテゴリーは色々有るが、一応日本の自動車レースでは最高峰、もし今回、トップを取れ無かったら、まだ挑戦をして辞める事は考えなかったと思うが、今回トップに立てたんだ、一応俺なりに納得出来た、年間チャンピオンを取ら無ければ一番と言えないが、それを取るには来年になるか再来年か、それも解らない、誰もが此の世界に入った以上、世界で活躍したいと思うよ、ましてや俺にとって其れが夢だった、世界に挑戦するなら、技量だけでは、だめ世界の一流のマネージャーを付け一流チームでなければ、決して良い成績を残せないよ、今年のレースも終わり、区切りも良いし、其の上、来年当たりから必ず不況が来るよ、そうなるとスポンサーも見付からないかも」

 ヨシ子は驚いた顔をして「それで、優勝出来たのに、浮かない顔していたのね、..もう決めていたの..、本当に?..後悔しないでね!」何か言たい事が有るようだがそれ以上は云わなかった 「あぁー、ヨシ子が一生懸命レースの事覚えたのに、ごめん!もう、これ以上は皆に迷惑を掛けられないし俺にとっても無駄になる様な気がするし」とりあえず、理由を付けた ヨシ子は自分と子供の為と思ったのか「私の事なら良いのよ、リュウのビジネスと思って割り切るつもりよ」・・スポンサーと美奈子の事を解っていたのだ!・・「此れからリュウに期待が掛かるのにね、変な物で辞めるとなると、少し残念に思うけど、・・リュウが決めた事だから、でも本当に良いの?」

 「幾ら期待が有っても、今より上は、奇跡が起きない限り望め無いよ..スクールには、インストラクターとして残るつもりだよ、ヨシ子には一番先に了承して欲しいから」 「リュウ、此処に来なさい、本当に私や子供の為にでは無いでしょうね、それで本当に良いの、良く考えてね....リュウは目的が無いと、だめだと思うわ、だから私..まだ信じられない!何か新しい目的が有るの?」 「別に!、今は何も考えていないよ」 「..解ったわ!リュウ自身の事だから、もう何も云わないわ、お風呂に入ってらしゃい」 「あぁ、先に休んでね、ゆくり、入るから」

 ..ヨシ子は俺が凄く落ち込んで悩んでいるとバス-2.jpg思ってか?、もしかして子供の為に悩んだ上に辞めようと思っているのか?、きっと俺がカーレースに何年も打ち込んで来た事を知っているからなのか?どの様に力になれるのか、戸惑いの顔が明らかに感じた

 俺にもそれでいいのか、正直判らない、兎に角風呂にでも入ろう、ウーンアーア..俺も年かな!こんな声が出るなんって!..湯船に身を任せながら、普通ならレースを辞めるなどとは、やっと掴んだ物を、此れから活躍出来、運良くスターになれるかもしれないのに、だが..其れも、後1,2年の事だろう、もうそれ以上は奇跡が起きない限り世界には進めない何時までも此の位置にくすぶって居ても、年を取るだけスポンサーも見つけられない其のうち惨めに年取って忘れられ終わってしまうだろう、前の奥さん(美奈子)との苦悩の日々を無駄に過した為か?

 あれ程まで、追い求めていた情熱が、十年前のいや、考え始め十年以上、あのギラギラした目で、獲物を追い求めていた俺は何処に行ってしまったんだ?、途中で中断してしまって無駄に過ごした事が影響したのか、あの時レースを続けていれば?考えても時は戻って来ない、それも、いや!俺自身が選んだ人生だ!、人として無駄では無かった、そう自分に思い込まして居るのではないか?、

  あの流れてしまった日々、無駄に終わってしまうのか、このまま皆を犠牲にして、何も残らなかったら、本当に其れでいいのか?、俺が選んだ道では無いか!、此の小さい目標を達した満足感を求めた訳ではない!、それほどまで、追い求めた結果が此の脱力感と空しさなのか、なぜ、こんなに、寂しいのだ!

 その上の目標が余りにも遠いからか?....まだ出来ない事は無いが、日本はレースに対し理解が少ないから、年を考えると、ぼろぼろになるまで、やる人もいるだろうが無駄どころか犠牲が大きすぎる、それで平気なのか?此れが挫折と言う物なのか!又、不況がじわじわ遣って来る、其れより、目標を達した途端、正直レースへの情熱が薄れてしまった、いや挑戦する事が恐いから、そう思い自分を納得させ様としている、どちらを選ぶのだ!判らない! 遊びではない!此れではもう勝てない、第一こんな気持ちでは危険だ、

 次の目的が、実力は勿論、それ以外の要素で動く事を十分知っているから、其れを切り開き乗り切るのもプロだ!当然スポンサーに頼るほかは無い、益してや、別れた人の父の会社をこれ以上頼るわけには行かない、恥ずかしいがスポンサーを求むのプラカードを持ち東京駅か横浜駅前にでも立つか!いや!それも以前の妻、美奈子の父への、当て付けの様で、それも出来ない、今の妻の為にも辞めるべきだ!、だが此れ以上は並みの資金では出来ない、チームを移籍する?俺にそんな事が出来る訳がない!全てが絡みあってくる、俺の選んだチーム、後悔が残るだけだ!、俺にはこれ以上の犠牲を家族に与える事は出来ないし、本当に喜べない

 今までだって、恵まれた方だ、良い潮時だ!そうしよう、もう決めたのだから!ヨシ子に遇わなければ、此のまま突き進んだのか?誰のせいでも無い、俺の力が無かったからだ、ヨシ子に惨めな思いをさせたくない、いや俺自身の為にも、俺の選んだ運命だ此の幸せを守りたい、俺の心の中で決まっていた事だ!此の中に本当の幸せを見つけたから?、何故かレースへの情熱が少しずつ醒めてしまった事も事実だ!何処かで、自分に納得出来る機会を待っていたのかも知れない

 遣るだけ、やったのだから!これを挫折と思いたく無い俺が居るからか、素直に認めたく無い、だったら!愛する人を!皆を悲しみに巻き込み、スポンサーの事で肩身の狭い思いをさせてまで、ボロボロになり何万分の1%に賭けるのか?今更..目まぐるしく浮かぶ、同道巡りだ!考えても結論など出ない!何て、優柔不断なんだ!俺自身に呆れる

 久しく1時間位いお湯に浸かり、物思いに耽った、以前にはこんな事は無かった、家庭を持つと云う事は、この事か、俺も優柔不断になった者だ、久々に長々と湯船に浸かった、疲れもとれた様だ、俺自身に呟く「さー出よう」

 ベッドのヨシ子を起こさぬ様に静かに脇から潜り込む、何時もなら俺が後ろから抱いて寝るのだが、心配して眠れなかったのか、まだ起きていて向きを変え、俺を柔らかく抱き締めてくれた、俺を慈愛に満ちた優しい眼差しで「本当にそれで、いいの?」 俺はまだ迷っていたが「大丈夫だよ、子供やヨシ子の為では無いから、俺自身の問題だから心配しないで」 「解ったわ、良いのよ、慌てる事は無いのよ、もう聞かない、さーぁ寝ましょう」..何故かヨシ子から憂いを感じる、初めて出逢った時の様にヨシ子の胸の中に、顔を埋めて..あの時の、安住の地だ、あの時から俺の牙は溶かされ始めて、こうなる事、予想していた様にも思えた..俺を確り抱きとめて、きっと、どんな、俺でも、受け止めるわ..安心してと無言で伝えているかの様だ

 何度も、何度も、”此れでいいのだ!”と心でつぶやき、この時が来ただけだ!まだ何年かあるのに..だが此の世界で上に這い上がるには遅すぎる、過ぎ去ってしまった歳月は取り戻す事は出来ない”老兵は消え去るのみ”のフレーズが浮かぶ、まだ老人にはほど遠いが、此れが車のレースの世界、何故か悔しさも、残念さも沸か無い空虚な中で、ただ移り行く歳月の無情さを感じる、寂しさか?、

 感傷的になり閉じた瞼から涙溢れていた、..”此れでいいのだこれで..々”..十年余り俺にとっては壮絶な戦い、此の涙で洗い落とし、終止符を打ち、新たに静かな幸せを求めよう..

 ヨシ子が気が付たので有ろう、そっと俺の涙を拭き取って、黙ったままそっと抱き締めた、まるで子供が母親に甘えて居る様だ、此の俺が今まで記憶のある限り一度も見せた事が無かった姿と涙で有った、益してや女性の前で、少しも恥ずかしくなく出来た事が不思議だ!、目を開ける事もなく、思わずきつく抱き締めて、安堵の思い..そのまま、いつの間にか眠りに付いた

  《トラブル》

 基地開放.JPG翌日、横須賀ベースは一般開放日で沢山の人々で賑わっている、我が事務所もボランテアで駆出されバーベキュウ等に大忙しだ、此れからわ、俺も、この様な模様しにも参加しなければ成らなくなる、ボスにレースで優勝を報告して、自分にケリをつける為に、カーレースを辞めるので軍の契約から日本政府から正式雇用をボスにお願いした、ボス「リュウ、優勝出来たのに?本当に、それで良いのだな」 俺「はい、お願いします」

 ボスも俺に正式に勤める事を望んでいた、ボスは、雇用を変える事は、即時に一存では決められない、部隊の上司の許可を得て書類の提出等あって日本政府の許可が必要なので、後日返事をするからとの事、前向きに考えて頂き、有難かった

 もう、これで、俺の気持ちを断ち切り、後戻りは出来ない、これでカーレースと決別だ!、自分でも驚くほど、対応が早い、未練を持ちたくない、いや未練が有るからこそ、俺の選択が正しいか、正しくないか、それは後にならなければ解らない、此れで良いのだ!此れで、気持ちにケリが付けられる!

 ヨシ子にも報告し 「決めたら早いのね、今度はサラリーマンよ、リュウに勤まるかな~ぁ?リュウは型に嵌らない人だから、チョト心配だな!」 「日本の会社とちょっと違うから、日本政府の雇用で管理はアメリカ軍、だから実力次第の評価だよ」 「良く解らないけど、アメリカ軍の影響が有ると言う事ね」 「複雑だけれど、給料は日本政府から、派遣の様に米海軍に雇われているからね」 「複雑ね、解ったわ、..リュウ、急いで決め付けないで、もっと柔軟に考えて良いからね」 「うん、解ったよ」とは言ったが、もう諦めなければ成らない時が来ている、俺の心は半ば決まっていた。

 其の夕互いに仕事を終え、何時もの様に穏やかに夕食を摂った、ヨシ子が病院での出来事を話始めた「海斗君がね、レースどうなったかって?随分期待していたわよ、それで優勝した事話したの、自分のことの様に喜んで、リュウなら必ずやると思ったよ、だって、リュウに会いたいなーぁて、・・リュウ行ってあげてね、・・それと浩子、家庭裁判所に弁護士付けて離婚の申し立てしたわよ」 「あーぁ、行かなければ、と思っていたよ、離婚は二人の問題だけど、海斗がね」 ..海斗が何の罪を犯したと言うのだ..如何にも納得出来ないよ、此れが現実の世の中! ヨシ子寂しそうな顔で「浩子さん達、壊れてしまった物は仕方ないけど そうね、いがみ合っていてはもっと海斗君に悪影響でしょう、..リュウは、まだそうやって愚痴が言えるだけいいのよ、離婚の事はともかく、私の立場では何も云えないし、可哀そうだからと云って、海斗君を特別扱い出来ないのよ、それに治療方法..なんでもないわ」 「ごめん!立場じょう、もっと辛いよね」

エエ!此処まで来たんだ、最後まで読むか!..此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【Story8】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20是非お読み下さる事お願いね 

  尚、文中の東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福と、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げまるとともに一日も早い復旧・復興と、通常の生活に戻れる事、心よりお祈り申し上げます


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編8】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

☆=ストーリ【Story7】からの続きです、是非下欄【Story8】をお読み下さい=☆

 最近俺の顔から笑顔が少なくなった事をヨシ子は感じていたのだろう 「ねー、話変るけど..私達も、どんな、小さい事でも、不満やストレスを貯めない様にしようね」 「あぁ」 「それには話合をね、どんなに、くだらないと、思う事でも、聞き合う様にしょうね」 やはり俺は苛立っていたのか 「俺って、そんなにくだらない!」 此処の処、何が原因か解っていてるが、何をすれば良いか互いに最近苛立っていたが、 やはり、年上とでも云うのか、ヨシ子は怒りを表すどころか、優しく説明し始めた「リュウ、此れってね、私達にとっても真剣な話なの!、私の患者さんの中に馬鹿げた事、言っている人が居るの、始めはね、聞き流していたけれど、その人の本音を素直に言えなく、馬鹿らしい事を言って、誤魔化していたのよ、本当は手術、恐くて、恐くて、たまらなかったの、解ってくれって訴えていたのよ、素直に言ったら良いと思うのに、言えない人もいるの、だから理解するために心理学が必要と思ったの」

 患者の話にすり替えているが、本当は俺がレースを辞めたく無いのに、ヨシ子に遠慮して本当の事言えずにいるのではないか、本当は私が足を引っ張っているから、力になりたいのに、如何して良いか解からず苛立って居たのを押さえているようだ

 俺はヨシ子の気使が尚更煽られ少しイラつきが増し「何、俺を分析しているだよ!云いたい事有るんなら、そんなに遠廻しに云わ無いで、はっきり云ったら、如何なんだ!」..少し云いすぎたか、と思い「・・解ってるよ!、ヨシ子から学んだ事、沢山有るし、助けてむらっているよ、何時も本音で話してくれるから、だから俺も本当にそうしてるよ、だから、もういいんだよ!」 ヨシ子は驚いた顔で俺を見詰めたが、ほっとした顔で「私もよ、リュウと同じ、やっと安心して自分で居られる場所を見つけたの、だから..」 「もうー、良いからって!云っているでしょう!」 俺は何って天邪鬼なんだ、甘えている事も身勝手な事は解っていているが、あまり優し過ぎるのも、腹が立つ!

 ヨシ子は私だって、如何して良いのか苛立っているのよ、言う様な悲しそうな顔をして「本当の所、身内は分析出来ないわ、特にリュウの事になると、冷静に判断出来ないし解からなくなるの..リュウって、凄く甘えん坊だったり、ファイターだったり、時々変に大人に見えたり、本当に多彩ね、一緒にいて飽きない人、..どんな時でも、いざと言う時にリュウは必ず、私を守ってくれるから」..「でも私に遇いさいしなければリュウはレース続けていられたのよ、私、解っているの!でも如何したら良いのか判らない」

 「だから、諦める事しか無いだろう、ヨシ子のせいではないよ、違うって云ってるでしょう、その気使いが、くどくて、腹が立つよ」可哀そうな、言い方をしてしまった、俺自身も腹立って惨めさを感じる、 ヨシ子は戸惑いを見せ、自分に怒る様に「でも事実よ、何んにもして上げられない!私って、だめね!」 「なに言っているの!充分助けてむらっているよ、無駄な時間を過した俺が招いた事だよ」

 急に俺の目をきりりと見詰め「リュウ無駄な時間って!、美奈子さんの事?そんないい加減なお付き合いしたわけでは無いでしょう!そんなリュウを選んだ、私も侮辱する事になるのよ!」 なんだ、確りしているじゃん「ごめん!説明のしかたが間違っていたよ、自分で選んだ道だから、自分で切り開か無くては駄目だと解っているよ、でも如何にもならない事もあるんだよ」

 引き続きレースーについて説明した・・「カーレースはそんなに単純な物ではないよ、大勢の支えてくれる人があって成り立っているんだよ、レーサーの才能が有っても、スターに成れる人はほんの一握り、それも俺の実力の無さと運だよ!・・ヨシ子に影響されて辞めると云っているのじゃないよ、自分は違うと思って始めた大半の人達、俺もそうだが、何処の世界でもほんの一握り、いやほとんど沢山見てきたよ!悲しいかな俺も其の一人、消えていってしまうんだよ、だからヨシ子には関係なく、其のときが来ただけさ」..本当は何時もヨシ子が俺を護ってくれているのに、甘えているのか・・俺はヨシ子に心配掛けて、御免と思う気持ちが有りながら、投げ捨てる様に言葉を吐いた

 「俺の事はもう良いよ!、決断の時が来ただけさ!暗くなるから此の話やめよう、如何にもならない事考えるだけ無駄だよ」..「そうだ!明日、海斗のに、会いに行くよ」

 ヨシ子は伺う様な目で、俺に尋ねた「ありがとう、その後、私の実家に一緒に行ってね、結婚式の事、話したいから、本当に良いのですね」 そうか、それではっきりしたかったんだ「うん、良いに決まっているだろう、ヨシ子を失えるわけ無いでしょう」 本当に俺のはっきり、した答えがほしかったのだろう、嬉しそうな笑顔で「うれしいわ!ありがとう」

 俺は息が詰まりそうで、話題を換えた「それより、海斗に何て言おうかな、レース辞める事、がっかり、するだろうな、俺、海斗がストライキ起こした時、最後までやれって、威張って言ちゃった」 ヨシ子はサラリと「事実だから、仕方ないじゃない、誠意を待って話してみる事ね」 なんだ!アドバイスは無いのか、それもそうだ「そうだよね、其れしか無いか、解ってむらえるか分らないが、話すよ」

 「リュウって、なにか、海斗君の事、自分の子供みたい、お願いしたの私なのにね」 お腹を擦りながら 「将来、此の子にも、きっと、そうでしょうね」 自分の子供の事もそれ位考えよと俺に云っているのかな?母親の心なのか? 本音はまだ会っていない俺の子を理解出きる訳が無い「そうかな~ぁ?良く判らない」 「まだ、リュウは実感ないものね」 もう父親の自覚持ちなさいよ、では無く、本当にヨシ子の顔は皮肉では無い様だ、俺を気使っての事だ、そんな風に感じる、俺自身が拘っているのかも知れない、俺は皆と違って、冷たいのか?一体世の男はどう思い感じているのだ、本音が知りたい

 翌日、スクールでの販売用の子供用Tシャツを持って海斗の病室を訪ねた、疲れたのか、静かに眠むっている、ベット横の来客用補助椅子に座り、暫く寝顔を眺めていた、..なんって、汚れの無い顔か!、誰かが云っていたな..「昼間は散々困らせるのに、寝顔を見ると、全て忘れ、幸せになれるわ」って..そんな言葉が浮かぶ..俺の気配に気付いたのか「リュウ、来ていたの」 「よぅ!」 海斗は嬉しそうに「ヨシ子先生から、聞いたよ、一番になったんだって!凄いね、・・ねぇねぇ、話し聞かせてよ」..俺の手を取って揺すっている..俺はレース辞める事、なんって話すか迷っていた、取り執えずTシャツを海斗に渡し「今回急いで帰って来たから、お土産此れだけだよ」

 「いいよ、リュウが一番になれた事が、一番嬉しい、お土産だよ」 思わず、海斗の頭に手を置き「なに、生意気な事云って」 目を丸く見開いて「だって、リュウの一番のファンだから」自分の子供で無くてもこうして接して話し合い、初めて愛情が湧いてくるものだ、俺の子にしてもそう思う、まだ会わない内に一体何を感じるのだ、俺って、間違っていて、おかしいのか?

 ..丁度、ヨシ子が定期的診断だろう、白衣姿で入って来た、顔を見合わせたが..俺は海斗に話を続け「嬉しいけど、海斗はファンより一番の友達だよ」 ヨシ子、海斗の脈を取りながら「あら、先生がリュウの一番のファンだと思っていたのよ、海斗君が一番だったんだ」 海斗、得意そうな顔をして「そうだよ、一番の友達で一番のファンだよ!」 俺とヨシ子は顔を見合わせた、リュウ、ちゃんと、話しなさいと云っている目だ、..「なー、海斗、俺レース辞めるよ」 暫くキョトンとした顔で「え!どうして、どうしてなの!辞めたら、嫌だよ!」 ..こまったな!なんて、説得したら良いのか?..

 其の時、浩子さんと海斗の父親(長崎 伸男)らしき人が病室に海斗の見舞いに入って来た、海斗に歩み寄りながら「海斗!うわまま、言ったら、いけないよ! 龍崎さんですね、お世話になっています、噂は聞いていますよ!」 語尾がきつく、何か文句が有りそうな、言い方だ 「いいえ、此方こそ」 海斗は父親を睨み「お父さん、なんか何にも知らないくせに!」 父親は冷たく「海斗は黙っていなさい!」

 ..俺はレースの事も有って何か、もやもやしていた、誰でも良い、無性に当たり散らかしたかった、..俺が腰を上げ、反論を言う気配を、察したヨシ子が素早く俺の手を取り押さえ、遮る様に前に立って「別の部屋に行きましょう、海斗君、後でね」 海斗は何か父に云おうとしたが、向きを変え「リュウ後で絶対きてね、聞きたい事があるの、約束だよ!」 軽く頷き「おぉ、後で」

 同じフロアーの患者相談室に案内され、ヨシ子は厳しい顔で 「さー、皆座って、リュウも浩子さんも、海斗のお父さん長崎さんも、座って下さい、さー、リュウもよ!」ヨシ子は皆がテーブルを囲んで座るのを見届け「..お父さん、如何したのですか?海斗君にあんな言い方して、如何したのですか!、其れで無くても、海斗君は自分の事で、怯えているのですから」

 「すみません、何をやっても、..もうこれ以上如何したら良いですか..私、もう駄目なんです、浩子は全部、私の責任にして」 ヨシ子「一体如何したのですか?第一に海斗君の事を考えて下さい」 浩子達夫婦は別居状態が以前から続いていたようだ、浩子が夫を睨み付け「此の人、愛人にも、捨てられたのよ!、それで、私の処に戻りたいって、今まで散々私を蔑ろにして、今更、もう家庭裁判所に申請出したのよ!何があっても、もう一緒には住めないわよ!」と尾びを高めた

 長崎さんは素早く立ち上がり両手で机を叩き突けた「なに云っているんだ!今まで、どんなに、して上げても、何時も、だめよ、貴方が悪い、だけでしょう、いい加減、嫌になるよ!」 ヨシ子は当惑した様に「ちょと、待ってください、浩子も長崎さんも、今は、その話と海斗君の事は別でしょう、これからは、海斗君の前で言い争いは止めて下さい!」ヨシ子は二人を宥める様に「兎に角、長崎さんも浩子も座って下さい、リュウもよ」 長崎さん怒りが収まらない様子で「何かと言うと、浩子は、リュウさん、リュウさん、なんだから、いったい貴方は浩子のなんですか!」 今度は逃げ場を求め俺に話題を変え、当ってきた 

 俺が立ち上がりそうな気配を感じたのか、ヨシ子は又俺の手を確り掴んだまま俺を制して、厳しい声で「貴方は人の好意も分らないのですか!自分のして来た事を何と思っているの、責任転化して!その反省もなく、なんだって言うのですか!少しは海斗君の事、父親として考えたらどうなんですか!今は皆さんで海斗君の事を考える事でしょう、もし医療費の事でしたら、院内にも市や県に相談できます、落ち着いて下さい」

 よほどヨシ子も呆れ、絶えかねた様子、こんなに激しく、荒い言葉で、話す事を今まで聞いた事わ無かった、やはり男社会で生き抜いて来た人だ! 長崎さん再び席を立ちながら「もうほっといて下さいよ!、誰も私の事など解ってくれない、本当に疲れてしまいましたよ!」 今度は急に言葉が荒くなり「..先生、あんたも、気を付けな!龍崎さんに裏切られるから!」

 また、ヨシ子は俺の手を確りと握り押さえる様に制し、俺の顔を見ヨシ子の顔を横に”駄目よ”と合図し、長崎さんに顔を向けるとヨシ子は厳しい声で「話をそらし責任転換しないで下さい!私達に何が有ろうが、貴方に関係無い事、それに貴方夫婦に何が有ろうと、海斗君に対して責任が有るのですよ!もう少し父親として考えて下さい!」

 浩子さんも声を荒立て「あんた!何言ってるの!負け犬の捨て台詞の様な事、云って、貴方と違うのよ!、恥ずかしいわ!本当に海斗の事考えてよ」 長崎さんは、怒りを抑える様に「これ以上如何すれば良いんだ、お前は何時もそればかりだ!」 浩子は怒りの頂点に達した様に「全く無責任なんだから、今更許せません、もう家に入らないで下さい!荷物は何処へでも送ります!、鍵を置いて行って!」浩子の凄ざましい言いかたに、長崎さん、ポッケトから鍵を取り出しテーブルに投げ出し、向きを変え乱暴にドアーを開け、足早に出って行ってしまった

 ..だれも後を追う気配も引き止める事もしなかった、..浩子落胆したように「御免なさい、何と言う人なんでしょう、本性が解ったわ、これで本当に私の心もはっきりしたわ」 ヨシ子心配そうに「本当に、其れでいいの?冷静に考えてみて、海斗君の事、冷静に話合わなくていいの?呼び戻しましょうか?」 浩子怒りが収まらない顔で「私は冷静よ、ヨシ子には云えなかったが、長崎の女性問題で、随分まえから私達、別居状態だったの、もっと早く決めれば良かったと思っている位、今は何を言っても無理よ話にならないわよ」

 ヨシ子宥める様に浩子に向かって「とにかく、海斗君の事少しも考えていないのね、浩子、今後二人の事は必ず弁護士を通して、話合う様にね、..今日は浩子、長崎さんに会わない方が良いでしょう、私の実家に泊まって行ったら?私たちも行く予定だから、お母さんに電話するから、そうしなさいよ」 俺は出て行った長崎を思って「長崎さん、荷物こまるでしょう?」 浩子リュウ解っていないのねと言う様な顔をして「いいの、もう殆んど、長崎の必要な物、あの人の処へ行っているのよ」

 ..彼に怒りを感じたが、背中を丸め足早に立ち去る後姿を見て..、何か哀れさを憶えた嘗ては愛し合った二人だろうに、疲れきっても誰にも理解されず、嘗ての俺を垣間見る様で、少しは同情も沸き、気持ち解らないでもないが、決して彼の見方になれないと思った、そして彼の邪推した事は何も無かったが、彼の推測通り少し下心も有って心も痛んだが、俺もそうとう頭にきてヨシ子の制止が無かったらぶち切れるところだった

 「ヨシ子、俺の云いたい事全部言ってくれたよ、俺、海斗と約束したから、病室に行くよ」 ヨシ子「リュウも何が有るか判らないから、海斗君の前で争いは絶対駄目よ」 「あぁ、分ったよ」 「私達、少し話が有るから、少し、してから行きますから、お母さんに浩子が今日泊る事、連絡するわ」

 ..海斗のお父さんの立場からも聞いてみないと、優しいが故に不甲斐ない自分に誰よりも心を痛め、疲れ切ってしまっているのだろう..嘗ての俺を見ている様であり、一層、強い彼を勝手に期待し、勝手に裏切られた気持ちになっていたのかも知れない、彼は本当にボロボロになっていたのだ! 今少し冷静なり、本当は俺が理解者になり手を差し伸べ、聞かなければならなかったのでは?..いや何が有ろうが、許せない、何かやるせない

 ..海斗の病室に戻り..俺の心の中は複雑で自分自身の怒りと彼に対しての怒りで一杯、心の拳を何処に下ろすか、迷ったまま海斗の病室にもどった、海斗の顔を見て心鎮め..「お父さん、何か仕事が有るからって、先に帰ったよ、海斗に早く元気になって、言っていたよ」 海斗厳しい目で俺を見て「そう、リュウの顔、なんだか恐いよ!..お父さんの事なんか、いいよ..其れよりレースの話して」 「そうか、ごめん、海斗!、..お父さんが一番心配しているんだよ」..何で、こんな事言わなければ..

 海斗は膨れ顔で「いいよ!、もう止めてよ、リュウまで、そんな嘘言わなくていいよ!」 海斗は全て解っている「どうして、そんなふうに、思うの?、海斗のお父さんだよ」 ..本当は海斗も充分知っているんだろうが、どんなお父さんでも愛されたいよな..この俺がこんな事云うなんって!.. 「海斗が早く良くなる様に、海斗に会いたいけど我慢して一生懸命働いているんだよ、解って上げないと、お父さん寂しいよ」 海斗「うん、もうー、リュウ、良いから!もう云わないで、やめてよ!」 ..意外と大人になっているかも.. 「そうか、悪かったね、もう言わないよ..」 子供の目は鋭いな、全て解っているようだ、

 俺は意を決する様に「さっきも話したけど、海斗、俺レース辞めるよ!」 「なんで!海斗、否だよ!リュウ、最後までやれって、言ったじゃない!」 あんなに期待させって..何の説明も無く、納得出来ないだろうな.. 「ごめんな!約束やぶって、リュウは最後まで力、出し切ってもう走れなくなってしまったの、その代わり、海斗、走ってくれよ」 「そんな事、出来ないよ!リュウが海斗に云ったでしょ」 「海斗、本当に、ごめん」・・まだ納得出来なく、膨れ顔でいる、俺は無視して「あれ、リュウにレース・カー、ドライブするって約束したでしょう」 「だって、リュウがやめちゃうでしょう、嫌だよ!」 「大丈夫だよ、レースは辞めても、海斗は特別、リュウが教えてあげるから」 きっとリュウは変える事は無いと判ったのか?「..本当?、約束だよ」 「あぁ..」

 ヨシ子達が入ってきた 海斗は不満そうに「ねー、ねー、お母さん、リュウ、レースやめちゃうんだって」 全然納得しない様子..俺が悪いんだ..あんなに、期待させちゃって.. 浩子さん、海斗を無視して「そうなんですか、ヨシ子も此れで安心ね」 海斗なお膨れ顔で「そんなの!ちょとも、良くないよ!、リュウはレーサーだよ!..いやだよ!..」

 俺は謝る事しか思い付かず「海斗、ごめん、本当にゴメンよ」 海斗は俺の何かを差したのだろうか、少し収まり「..でも、その代わり、リュウがね、海斗に教えてくれるって」 浩子優しく答え「そうなの、良かったわね、先生の言う事聞いて、早く元気にならなければ..」 「うん、だから、リュウ、時々来てね、約束だよ!」 俺は親指立て「ごめんよ!俺の代わりに走ってくれるよな」 「うん、頑張るよ!」 「お母さんと先生の云う事聞いて頑張れるかな?」 「うん、リュウ、絶対来てね、約束だよ」 俺は以前海斗が聞きたい事が有るからと、云った事を、思い出した「海斗、俺に聞きたいってなんだ?」 海斗はお母さんの顔を盗み見して「今日は良いよ!」 俺は察して「そうか、またな」 海斗は子指を出して約束を求めてきた 「おぅ」小指を出して応えた

 「それで、海斗、今日はリュウ達、海斗のお母さんも一緒に、ヨシ子先生のお父さんとお母さんにお会いに行かなければ、いいよね」..「もう行かなくては?」 「うん、わかった、リュウ....絶対来てね!」 ..海斗なりに、レースの事も含め何か感じとった様だ.. 俺はほっとして「当り前だろう、海斗!、海斗はリュウの大事な友達でしょう」 海斗の頭をぐちゃくちゃに、両手でかき回した、顰め面だが嬉しそうにしている「ねー、やめてよ!」俺はもう一度親指を立てた、海斗も心なしか指を立てた手に元気が無かったが少し元気を取り戻したようだ

 海斗、消え入る様な声で「..友達より..」 俺は海斗の前にしゃがみこみ目線を合わせ「海斗、はっきり云えよ..」とっさに心無く、云ってしまったが、俺には海斗が何を云をとしたか解っていた 海斗「うん、..何でも無い、もう良いよ、..本当に来てね!」 俺は、こみ上げるものがあり、声にならず、ただ頷き、海斗に答えた、

 ..俺は海斗の親父にはなれないよ、でも親父のまね少しは..、 海斗は、漠然と、それなりに薄々は気付ている、近ずく死の恐怖に怯え、戦っている、俺の話に乗り夢中に成る事で少しでも迫り来る現実の恐怖を忘れ生きる希望を..子供なりに感じているのだろうと、それは後髪を引かれる思いであった、海斗を説得出来ないまでも、俺は海斗と向き合った、海斗の父親にも、そうして欲しいと思った..

 病室をで三人で車に乗り込み、ヨシ子が緊張した顔で「さっきは、リュウの顔、凄く恐かった!止めるのに必死だったわ!」 浩子は、吐き捨てる様に「あの人は、自分より強いと思った人には、途端に変わるのよ、だから黙って出て行ったのよ、あんなに、卑怯でだらしない人と思わなかったわ、離婚決めて良かった!」 ヨシ子は俺の顔を見、徐に浩子に「絶対に直接話しては駄目よ、必ず弁護士を通して、交渉するようにして後で後悔しないようにね」 浩子まだ、興奮が収まらない様子「解かったわ、今日は御免なさい」

 「本当に、ヨシ子と浩子さんって、何時も正反対だね、一人は、結婚、一人は離婚、不思議だよ」 ヨシ子慌てて、なんて事を言うのと云う様に「リュウ不謹慎よ!」 浩子冷静な声で「いいのよ、本当の事だから、気を使われる事の方が、いやよ」 そんな話の中、ヨシ子の実家に付いた

 車の音で分ったのだろう、ヨシ子の母が玄関先で向かえてくれた、「浩子さん、随分久しぶりね、学生以来かしら、とにかく、おあがりなさい」 浩子沈みがちな声で「はい、有難う御座います、お邪魔させて頂きます」 義母は明るく装い「堅苦しい事は良いから、それからリュウさん、余り来てくれないから、お母さんの事嫌い?」 ヨシ子慌てて「お母さん!リュウは車で忙しかったの」 俺は頭を掻きながら素直に「ご無沙汰して御免なさい」 義母は俺を見詰め甘える様な声で「寂しかったのよ、さー、早く上がりなさい」 俺は嫌味では無い義母の何気ない言葉に本当に嬉しく思った

 居間に通され、大先生(義父)と受付の奥村さんが待っていた「リュウ君、たまには顔を出しなさい、お母さんが寂しがっているよ」 「すみません、此れから伺うようにします」 ヨシ子急いで言い訳した「お父さん、リュウはね、レースで忙しかったの、今回優勝したんだから」 義父は俺に向き直り驚きの顔をみせながら「ほう、ヨシ子には聞いていたが、それは凄いね、良かったおめでとう、・・まぁ、座りなさい、浩子さんも、どうぞ」 ヨシ子両親を安心させる為に「でも、此れでレース辞めるって」 義母、急に明るく嬉しそうに「本当ですか?良かったわ、何時も心配で心配で、たまらなかったわよ」 ヨシ子俺の気持ちを充分しっているから、バツが悪そうに「お母さんたら!よして」慌てて嗜めた

 俺もヨシ子に助け舟を出し「皆さんに、ご心配おかけして、すみません、もう自分の夢だけを追っては居られませんから」社交とはいえ、俺もよく言うよ、俺自身思ってもいないのに! 義母嬉しそうに「此れで安心、本当に良かったわ、此れからは、そんなかたぐるしい言い方をせず、もっと、甘えて来て下さいね」 如何にも綺麗過ぎる言葉ずかい、よそよそしく感じる 「でしたら、義父さんも義母さんも、リュウと呼んで下さい」 二人は其の言葉の意味を十分解ってると思った

 義父は中を取り持つように話題を換える「まあ、リュウ君、いやリュウと浩子さん、夕食にしょう、下の焼肉屋さんからお肉など先ほど奥村さんに運んで頂いたよ、さあ頂こう」 義父は焼肉が若い頃から好きだったのだろう、本格的にダイニングのテーブルは埋め込みの焼肉用ガスコンロが付いているテーブルの上にからも下からも換気装置が付いている、たぶんヨシ子が俺の好みを話たであろう、肉は骨付きカルビを筆頭に沢山の肉や野菜、サンチェ、センマイも有る、みんな俺の好きな物だ、義母は名前を呼ぶのに恥ずかしげに「リ、リュウ、貴方の好きな、センマイもサンチェも有りますよ、食べなさい」たぶんヨシ子に聞いていたのだろう

 「はい、どうも、これ大好きです」 義母は嬉しそうに俺を見て、浩子に目を移した「それと浩子さん、学生の頃の様に、今日はヨシ子の部屋で休みなさい、用意してありますから」 浩子懐かしそうに、辺りを眺めながら「宜しくお願いします」 義父は肉を編みに乗せ焼き始めたが、ただ喜んではいない「リュウ、レース辞めて、今後は如何するのだ?」 「あ、はい、今まで、契約でベースに雇われて、いたのですが、公務員として、正式雇用をお願いしてあります、返事は未だですが、多分大丈夫です」 義父は肉を返しながら、安心したように「ヨシ子も一安心だな、ヨシ子、体の方は順調か?」ヨシ子のお腹に目をおとす

 ヨシ子の本音であろう「ええ、大丈夫、順調ですよ、それよりリュウが心配よ、無理に辞めさせてしまったようで・・」 浩子の気使だろう、慌てて遮る様に話題を変える「お父さんも、お母さんも、もう直ぐ、お孫さんの顔が見れ楽しみですね」 義母は嬉しくて堪らないように、声を大きくして「ええ、楽しみにしているわ」..云った後に気付いたのだろう「そうそう、海斗君は如何ですか、大変ですよね」

 ヨシ子は自分の仕事以外の事だが、友達として、尽くしている「病院も色々頑張っているのよ、提供者が少なすぎるし想定外の問題が多くて、一つ間違えると諸刃の剣、公平性や提供者側の問題解決が多過ぎるし、人としての問題もあるの法の整備も必要なのよ、リュウも云ってたけど、有る事は有るのですが、国で其の家族も保護しないとね、ボランティア団体にもお願いしてありますが、待つ人が多すぎて、..其れと院内に福祉相談室もあり、浩子に相談する様に進めたの、経済的問題もお願いして有るの」

 浩子は本音であろう「ヨシ子が居なかったら、途方に暮れ、如何なっていたか!本当に助かっているわ、..長崎は、いざ、と言う時に逃げてしまう人だって、早く分って良かったわ、こんな問題無くても、何時か駄目になったと思うわ」 義父やはり重みがある、何か皆を安心させる「弁護士に離婚の問題だけでなく、まず市や県の相談室で海斗君の経済的問題と移植の件、一緒に相談して頂きなさい、きっと力になって頂けると思うよ、浩子さん、そうしなさい」 

 浩子は沈痛な顔で「はい、行って話してみます、臓器移植は、私迷ったんです、他人の命をむらい受けてまで、自分の子の命守りたいのか、外国では人の命を奪ってまで売買するとか?私成りに悩み、いくたびも葛藤がありました、其の上拒否反応と戦はなければいけないし、もっと海斗を苦しめてしまうかも、...でも助かる者なら、何としても助けたいです」よほど苦しかったのであろう、声が震え、涙まで溢れていた、暫くその場は暗く沈んだ、沈黙が有った

 .. その雰囲気を消すように、義父力強く「さぁ、浩子さん食べなさい、其の件に付いても移植団体やボランティア団体が有ります、先ずは力を付けなくては、弘子さんも、もっと食べて!」浩子さんの皿に焼きたてのお肉を置く、 ヨシ子仕事の話になるとやはり顔が締まる「其の件に付いては、病院の方からも、申請していますから、親として当然な気持ちです浩子さん、市や県の方からもお願いしてむらったら、良いわね、さあー食べて」

 この重い雰囲気を消す為で有ろう....ヨシ子は俺を見て、編みから煙りを出している、カルビを俺の皿に運びながら、ヨシ子にしては雑な言葉で「腹がへっては戦が出来ないでしょう、ねーリュウ!」 ヨシ子が俺にウインクを送って来る、ヨシ子と俺の隠語になってしまった様だ(戦とは・・)、 義母は何も知らずに「そうよ、昔から、その様に云はれているわ、弘子さんもっと食べなさい、リュウもよコチジャンも頂いてきたから、巻いて食べて、沢山あるのよ、遠慮しないで、リュウさん私作りましょうか?」 ヨシ子が事前に話し、好の食べ方を聞いていたのだろう、義母の心ずかいが、嬉しかった、 事務の奥村さん、慌てて「私、作ります」 「大丈夫です、俺、自分でやりますから」

 叔母さん風の看護師さんは、時々笑顔を浮かべながら、黙って聞いていた、奥村さん俺の顔を伺うように「あのう、後でコンピューター解からない処有るので、教えて下さい」 「はい、遠慮無く、何時でも言って下さい、急いでいる時は、電話でも良いですよ」 「ええ、食べてからで良いですよ、此れから電話しますからお願いします」

..そして、ヨシ子が結婚式の日取りや場所、本当に身内と友人だけにしますからと報告、義母は招待する人に少し不満があった様子もっと医院や母の関係者をと望んでいたようだがヨシ子が本当に身内だけでしたい事、説得し了解を得ていました、俺は奥村さんと受付に行き、コンピューターの新しいアプリ(application)の扱い方を説明、問題点を修正した、奥村さんゴマ摩りではなさそうだ「リュウさんて、お嬢さんが、選んだ理由が解るわ、頭も良く優しく、簡単に直してしまうのね」 「いやー、おだてないで下さい、ヨシ子にたまにコンピューターの扱い聞かれて、喧嘩しながら教えていますよ、またま、工学系の学校だったから、何時でも電話して下さい、使い馴れたら楽ですよ」

  《新たなる旅立ち》

夜景部屋.jpg 式の話も了解を無事、得て、浩子さんをお願いして、俺達はマンションに帰った「リュウ、今日はありがとう、疲れたでしょう、お父さんもお母さんも嬉しそうだったし、浩子も安心して休めると思うわ」 「俺、兄弟がいるから、気が付かなかったが、ヨシ子は一人っ子、もっと行ってあげれば良かったね、ごめん、此れからもっと行くよ」 「いいのよ、リュウ今まで忙しかったから」

 「お父さん、お母さん、リュウって、云いづらかった、ようよ」 「今まで何かよそよそしくて、やっと鶴見家の一員成れた気がしたよ」 「そうね、リュウの気持ち、解ったから、人を呼び捨てにする事が無かったし、其のうち馴れると思うわ、リュウ、コーヒー入れましょうか?」

 「うん、話は違うけど、結婚式の前に、チームの皆を呼んで、お礼と、 引退の事、話さなければ、ヨシ子、何処が良いかな?」 ヨシ子、キッチンカウンターに立ちコーヒー豆を挽きながら「本当にそれで良いの?」 「何回も云わすなよ!」 「もう、直ぐ怒るから、分ったわ、そうーね、若い人にはボリュームもある、あの逗子のイタリアンレストランが良いじゃない、チームの皆、此れから来年こそと思っているのに、ビックリするしガッカリでしょうね」 「そうだよな、監督には前もって話しておかなければいけないね」 心配そうにヨシ子が問いかける「少し遅い時間で迷惑かもしれないが、大事な事少しでも早く知らせたら」 

 「うん、そうするよ」家の電話から連絡を取った「もしもし、北原さんのお宅ですか?」 当時メーカーの綺麗なコンパニオンだった監督の奥さんだろう電話に出て「ハイ北原ですが」 「龍崎ですが、監督、お願いします」 「ああ、リュウちゃん、お久しぶりね、先日、優勝おめでとう、家の人も大変喜んでいたわよ、今変わります」

 監督は近くにいたのだろう、受話器を受け取る音がする「もしもし、此の間は、ご苦労さん、何か?」 「はい、監督、俺大分考えたんですが、今年、いや、此れで、リタイア、レース辞める事に決めたんですが、お願いします」 「急に一体如何したんだ!」 「はい、充分考え、出した答えです、大事な話を電話ですみません、少しでも早く知らせしようと、思いまして」 「ぅーん、何か有ったのか!一方的に言われても」

 「歳ですから」 監督は意外さと、俺の冗談に怒った様に声を高め「..冗談いうな!そんな歳ではないだろう、本当に冗談ではなく、如何したのだ!何か有ったのか?」 俺は神妙に「本当にすみません!充分考えた上です!」 監督冷静を装っているが、まだ声は高ぶっている「何だ!もう話合う余地は無い口振りだな!考え直す事は出来ないのか?」 「はい、何処かの大きな会社の社長の息子だったら、ボロボロになっても続けられますが、このFJレース始める前から考えていて、一度でもトップでゴール出来たら、辞めようと思っていましたから、本当に良くして頂き、申し訳ありません!」本心は続けられる物なら続けたい、だがヨシ子へと俺の拘りが、どうしてもスポンサーを変えないかぎり続ける事が出来ない

 尚も監督は押し付ける様に「くどいようだが、辞める事少し早すぎるぞ、もう一年二年やってみたらどうだ?もう一度冷静に考え直せよ!」 「本当にもう」 「う~ん!何か有ったのか?出来る限り相談に乗るぞ!これから活躍出来るのに!くどいようだが、それで良いのか?後で冷静に話し合おう」 「いえ、考えは変りません、はい、お願いします」

 暫く監督の沈黙が続き「..そうか残念だな!..俺と同じ悩み、に突き当たったんだろう、その上を望む事に、悩んだ末だな!惜しいな!リュウ、お前は俺の時より、もっとチャンスが有ると思うぞ!他のチームに移籍も出来るぞ!」 「他に移る気は無いです、今のチームが好きですから、それと他のチームに移っても俺の将来、同じ事が待っています」 監督も世界に挑戦しようとした人だ、俺の気持ちはこの短い会話で充分理解している事だろう、諦め落胆した様に「お前の事だから、決意は変らないだろうな」

 「本当に勝手云って、すみません、結婚式の前にケジメを付けたくて、それと今年のレース・スケジュウルが終わりましたから、チームの皆に慰労の意味も兼ね、招待したいのですが、来月3日か4日、如何ですか?」 「うーん、そうか、結婚で解った、スポンサーの件だな!前の奥さんの所だからな、お前は決めたら変えない頑固物だから、俺の方こそ、リュウの結婚式も近いから其の前に、祝勝会開こうと思っていたんだ」 「そうですか、俺の友達の逗子のレストランなら多少人数や予定日など変更が出来きますから、ご足労願いたいのですが?」 「分った、奥さん元気か?宜しく伝えてくれ」

 「はい、元気です、あとで、スポンサーもお礼に廻らなくては、それと、..出来たら、スクールのインストラクターに土日手伝わして頂きたいのですが?」 「願っても無い事だよ、リュウの名前で生徒も集まるよ、スポンサーか、来年は不況になりそうだな、式の後でゆっくり廻ろう、其のときは頼むよ」 「はい、有難う御座います、お世話になった方に挨拶とお礼言わなければ、宜しくお願いします」 「おお、来年1年くらい続けると思った、残念だが、解った!、スポンサーの件、スクールとチームとして今後もお願いに挨拶廻りしたいから、今は、ゆっくり休め、奥さんに、宜しくな」 「はい、でわ」 ほっとして、電話を切り

 俺はヨシ子に向かって「監督がヨシ子に宜しく伝えてくれって」 心配そうな顔で「それで、如何なの?」 「一応、了解得たよ、監督も同じ事で、悩んだ時期があったみたい、パーティー逗子で良いって、3日か4日、ヨシ子、空けておいてね」 尚も心配そうに「分っているわ、大丈夫よ、でもそんなんで、監督納得したの?」 「だろうな」 「だろなって!、それでいいの?」 「あーぁ、此れで、夢は達成出来なかったが、何処かでケリ付けなければ、..”俺のレース人生も終わったか”..もっとガックリ来ると思ったが、意外とサッパリしているよ」本当は自分を追い込む事でしかケリがつけられそうに無いからだ、それにそう思いたい強がりかも!

R & Y 膝枕4.jpg 「リュウ、コーヒー出来たわよ」 「うん」 コーヒーをテーブルに置き、長椅子の俺の横に並んで座った「..膝枕する?此処に来て、お腹の赤ちゃんが呼んでいるよ、リュウ本当はレース続けたいのでよう、訂正するのならまだ間に合うわよ、私のせいにすればいいのよ、本当にそれでいいの?」 ヨシ子は俺の頭を膝の上に乗せ、本当に偽りの無い真の俺の気持ちを知りたかったのだろう、ヨシ子の質問には答えず 「そだね、何か聞こえるかな?」 ヨシ子の膝に頭をあずけ、お腹の音を聞くが、未だ何も分らない、実感は余りない、不思議だが俺達の新しい生命が、此の中に眠っているんだ、日に日に少しはお腹が大きくなって来た、ヨシ子は俺の顔を覗き込み、..多分電話の内容から、俺が本気である事、察しが付いたのだが、未だに本当に其れで良いのか心配しての事だろう、やはり俺の本心を見抜いている、出来るならばレースを続けたい事を、ヨシ子は徐々に話始めた

 「リュウが辞めると言ったときにね、リュウは私の為で無いと言ったけれど、以前、レーシングスクールの事務所をリュウと一緒に訪ねた事があったでしょう、その時、私、久美子さんが経理ノート開いていて見てしまったの、其のとき、美奈子さんのお父様の会社にスポンサーになって頂いている事、知ってしまったのよ、それも凄い金額!、だから、其のこともあって、今回のリュウの気持ち本当に嬉く思ったわ、でもね、私も迷ったのよ、私の為に辞めるんじゃぁないかと、それも私と結婚する前から始めようと思っていた事だったし、此れもビジネスの内と思って、リュウの夢を潰したくなく何も云へなかったの、それにリュウが気使かってくれる、気持ちも考えて、此れで良いのかと、思っていたの」

 「うん..もう、いいんだ、誰のせいでも無いよ」 ヨシ子は全部自分の為にと思ったのか「私の為だったら、いいのよ、其の為に、リュウの夢、壊せないわよ!」 「良いんだよ、本当に俺自身の問題!其れだけでは無いよ、プロをやって行くには、お金集めも実力の内だよ..そうか!それで以前、事務所から帰ったあと、ヨシ子が変だと思ったよ、珍しくあんなに、荒れて..もう決めた事だから、ヨシ子に再会した時から、決まっていたんだよ、此れが運命だよ」 俺はヨシ子のお腹を擦り 「其れより、もっと、いい事、あったでよう!」 「私達の子供の事?」 「あぁ、そうだよ!、ヨシ子と再会した時から、漠然とこうなるって、何処かで感じていたのかも、いずれ、俺自身決着をつけなければ」 「どうして?」

 「俺、本当にカーレース以外にヨシ子の事あんなに気になった事、今まで無かったよ、あの時から、今の此の子と同じに、ヨシ子の子宮の中に吸い込まれ、護られて何の戦いも迫害も受けず、休みたかったからかな?」 ヨシ子、俺の顔をマジマジ見詰めながら「リュウて、突然変わった、こと云うのね!話そらさないで」 「・・・」 「リュウ、逃げないで、ちゃんと向き合って!

 「マジだよ!、上手く表現できないが、女性は男だからって’確りしてよ’言う人が多いが、俺って、いや男って力があっても、精神が基本的に繊細で弱いんだよ、何時も頑張っていられない時も有るよ、俺は何時もヨシ子に包まれていたいのかも、初めてヨシ子と愛を交わした時の暖かみと香りかな?、凄く懐かしい気がしたんだ、遠い昔、いや生まれる前からかな?其処に居たような、凄く安心出来たよ..

 やっと解ったよ!..産れてきた子宮に戻った様な、全て子供の頃の汚れの無い姿を曝け出し安らげる気がしたからだよ..この宇宙が出来、地球に初めて生物が生まれた時から子宮によって受け継がれて来たのだよ、多分、この子が出来た事が神秘的で、男に無いからなお更感じるのかな?俺だけなのかな?それだけヨシ子を必要としているから

 レースを辞めようと決断した、あの時そう感じたんだ、此処なら安心して休めるって、でも休んでいては・・不安も感じる時があるよ、本当に無性にヨシ子に甘えたくなり、反面何かに取り組まないと自分でも解らない程、不安を感じ、ヨシ子から飛び出したくなるだ、自分でも解らないよ!」 「正直な人ね、それは誰しもが持っているものかも知れないわね」

 又俺は、ヨシ子のお腹をさすりながら「今は此の子には負けるよ!追い出されちゃったぁー!でも、海斗を知って尚更、本音で、何でも良いから五体満足で健康な子である事を願うだけ、それに愛する人を失いたくないって、痛切に感じたよ」 多分他の女性だったら、何、訳の解らない事云ってるの?頭がおかしいんじゃない、スケベでマザコン位に思うだろうが、ヨシ子は違っていた、俺にちゃんと向き合てくれた

 「リュウって本当に変っているね、考えている事、時々解らなくなるわ、でも変な表現だけど、リュウの言う事、解る様な気がするわ、この世の中の誰であれ皆、お母さんのお腹から産れたのだから、何かの本で子宮は宇宙と繋がっているって、子宮回帰の幻惑かな、現実と幻想が絡み合うような、読んだ事あるわ、大丈夫よ、リュウの為のスペース有るから、安心して、でもリュウは私の処に収まって居られる人では無いわ、時々休むだけよね?..リュウを知れば知るほど縛り付ける事出来ないわ、..此の子も、リュウの愛情一杯受けているから、大丈夫よ心配しないで」 懸命に俺を理解しょうと思っている、ヨシ子をいじらしく可愛くさえ思えた「その本の事は知らないが、幻想ではないよ現実に感じている事だよ」 「良く解かったわ、リュウは疲れているの、さーぁ、遅いから休みましょう」。

  翌日お昼頃、監督から連絡が入り「リュウ、夕べの話で、本当に良いのだな! 今、結論出さなくても良いんだぞ!」 「はい、有難う御座います」 「パーティー3日でどうだ、皆、本当にガッカリしていたぞ!」 「すみません、インストラクターとして土、日お願いします、それで3日の午後5時どうですか?其れで何人になりますか?」 「もちろん、スクールの顔になってむらうよ、スクールもようやく、形ちに成って軌道に乗って来たところだよ、..えーと、こっちは丁度11人

 皆、朝から鎌倉.江ノ島を周って湘南の海を見たいって、俺と井原君は奥さんと二人、竹田君と久美ちゃん、其れと久美ちゃんの女性の友達1人、後は孝ちゃん、森田君と森田君のレースクイーンの友達2人、森田は女性に手が早く、リュウの若い時と同じだ!」 「もうー、勘弁して下さいよ、其れより森田君来年から乗せたらどうですか?」 「ああ、俺も考えていたんだ、リュウ時々見てやってくれるか?」 「ええ、土日だったら、構いませんよ、じゃー3日5時お願いします」

 早速、逗子のトニーの店に電話を入れ予約を取った トニーの奥さんが電話に出た、奥さんとは子供の頃から近所の付き合い、良く俺達と遊んでいた、未だ米軍基地が横浜本牧にクラブ(Club)や食堂、遊戯場、エックスチェンジ(米軍の日用品や食料のスーパー兼、換金両替所Exchange)が有った頃、外人達の遊び仲間とクラブで良く遊んだ、彼女は外人好きで、名前は富士子だがちょっと二世の様な顔立ちで当時外人仲間に(エバ)と呼ばれていて、其の頃知り合ったトニーと結婚した

 「もしもし、エバ?」 「もしもし、リュウちゃん、何よ!ちょとも顔見せないで、レース凄いじゃないインターネットで見たわよ」 「まぁーね、それで今度予約したいから、3日5時、全部で14人、料理任すから、安く上げてよ」 「分っているわよ、何時もリュウには安くしているじゃぁない」 「そうだよな!俺、結婚したんだ、トニーも先日会っているよ」 「本当?トニーが話していた、先生とか?、また、私に黙って、連絡しなさいよ、お祝いも出来ないじゃない」

 「ごめん、まだ式は此れから17日だから、それからレース辞めるよ」 「またーぁ、今度の人の為?」 「そうじゃ無いよ、俺が決めたんだ、それと、妊娠しているんだ!」 「リュウが?」 「そんな訳無いだろう!」 「解っているわよ、冗談よ!それで、リュウは仕込みが早いね」 「またまた、すぐからかうから!、彼女の歳がね、だから早くしたの、やめたのは子供が理由では無いけど」 「リュウは何にも言ってくれないから、とにかく分ったわ、バイキング形式で良い?予約トニーに言っときます」 「任したよ、其の方が、人数変わっても良いね、頼んだよ、じゃぁね、トニーに宜しく」

 元町商店街.jpg3日土曜日逗子に出かける日だ、朝からヨシ子が何かマタニティー用洋服が欲しいからと、俺の実家により、母と横浜元町と中華街に運転手として買い物に付き合う事になった、母とヨシ子は本当に気が合い仲が良い、元町の通りを歩きながら、ヨシ子が母に「リュウ、いえケンジさんはレースを辞める事を決めた様ですよ」 母は疑う様に、俺を見て「そうですか、私も其れが、心配だったの、良かったですね、ヨシ子さん、其れで健司の仕事のほうわ?」

 ヨシ子は俺をかばい、代弁して「横須賀ベースに公務員として本雇いして頂く様ですよ」 どうにも母には弱い、まったく俺の出る幕は無いようだ、黙って二人の後に従う、結婚式の事は俺には事後承諾で母と二人で決めている様だ、最も其のほうが俺も気が楽だが..

 又、母は俺を見て「あの子にサラリーマン、勤まるのかしら?、でもヨシ子さん、心配事が減って良かったわね」 流石に俺は「おふくろ、まだ何か、云いたいの?」 ..ヨシ子と同じ事云っている、まったく!俺って、そう感じるのかな~ 「そうですよ!お前は幾つになっても皆に心配ばかり、かけて..」

 ヨシ子は俺を見詰め庇う様に「お母様、大丈夫ですよ、お母様が思うより凄く確りしていますよ」 母は不安そうに「なんだかね? 宜しくお願いしますね、それと、ヨシ子さん体、労わってね、順調なんですか?」 「はい、今の処順調です、マタニティー用の洋服で無いとお腹がきつくなったものですから、リュウ、私達に付き合っても大変だから、此処の喫茶店で待っていて頂戴、良いでしょう?」 「ああ、俺も其のほうが良いよ、じゃぁ此処で待ってるよ」 カフェ炭火焙煎珈琲.jpg

 通りを隔て真向かいの喫茶店のドアに手をかけ様とした時、ヨシ子が俺を追って来て息を切らして「リュウ、お母様の洋服の好み解る?」 「どうして?解らないよ!」 「お母様に、何かプレゼントしようかと思って!今、リュウが財布持っていないから、お金渡して来るって、お母様に云って来たの」 「俺には、解らないよ、率直に聞いたら?其のほうが、良いと思うよ、そんなお袋だから」そう云えば、母の好みの洋服には関心も無かったな 「解ったわ!そうする、待っていてね」

 俺は冗談で「うん、じゃぁ、コーヒー代、..お金頂戴!」ヨシ子は驚いた様に、慌てて、ショルダーバックから財布を取り出した「..冗談だよ、一度云ってみたかったから、お袋の事、有難う、慌てなくて良いからね」 「いいのよ、此れからは、リュウに毎月のおこずかい、考えなければ」 「いいから、おふくろ待っているよ、行って」

 1時間程でお店の紙バッグを其々さげて、俺の待つ喫茶店に戻って来た 母は嬉しそうに店の紙バックを上げながら「ヨシ子さんに、洋服買って頂いたわ、健司からもお礼言って下さいな」 俺は照れながら「うん、ありがとう」 「何ですか!ぶっきらぼうに、その言い方は!、・・お腹空いたから、中華街で何か頂ましょう、行くわよ」 「まったく!云いたい事云って、お袋は」 ヨシ子笑いながら「リュウ、お母様から腹帯買って頂いたのよ、後で健司さんと二人で御参りしなさいって」 「あぁ、おふくろ、ありがとう、後で鎌倉に行くよ」 ヨシ子もなにやら紙袋を沢山提げて「中華街近いから、荷物、車に入れてから、歩いて行きましょう、お母様の荷物持ってあげてね」 俺はぶっきらぼうに「あぁ、おふくろ、荷物!」 母は笑いながら俺を見て「あら、珍しい事、持ってくれるの?」 「まったく、いやみ!」 お袋のこんなに楽しそうな顔を見るのは久し振りだ、駐車場に戻り車に荷物を入れ、久しぶりにゆっくり中華街を歩く、

 中国茶.jpg俺はヨシ子の実家で飲んだ、甘く美味しい烏龍茶を思い出し「美味しい烏龍茶が欲しいな、専門店で探そうよ、体にも良いから」 母は不思議そうな、顔で「健司、お茶なんか飲むの?ジュースかコーヒーだけだったのに」 「そりゃぁー、たまには飲むよ、本当に良いのは、甘く感じるよ」 母は驚いたように「へー、健司がね..ヨシ子さんに教えて頂いたの?」 ヨシ子、母を気使いながら「多分実家だと思います、父が何処からか、頂いて来たみたいです」 専門店で高級な美味しい烏龍茶の葉を母とヨシ子の実家と俺達にとお土産に、烏龍茶の美味しい入れ方を店の方に説明を受け、実際に入れて頂きました 

 中華街1.jpg母は昔を思い出した様に「ヨシ子さん、健司はね、小学6年生の時に、将来の為にお茶を習わせたの、始めの頃は嫌がっていたのですが、お茶の先生が美人で子供が無く、健司を可愛がって優しくしてくれ、健司ったら、私が忙しく相手をしてやれなくて、寂しかったのでしょうね、先生の処に入り浸り、御かげでお茶すっかり覚えてしまったの、当時、生意気に、”おふくろ!お茶の心は、思いやりのもてなし”一期一会を大事にしなさい”だって..此の子は本当に人一倍、心優しい子なの、ただ上手く表現出来ないのよ」 「おふくろ!そんな事まで云わなくても」 母は真剣に「此れからはヨシ子さんに、貴方を預けるのよ、威張っていても、甘えん坊なんだから」 俺は投げやりに「まったく!形無しだよ!」

 ヨシ子は母の話に納得したように「お母様、もう良く解っていますわ、本当に、優しくて、確りしています、ご心配しないで下さい」 母はどれだけ俺がだらしなく思っているのか、尚も「健司、前の様に、二度と人を悲しましてはいけませんよ、ヨシ子さん、改めて、健司を宜しくフカヒレ小龍包.jpgお願いします」と頭を下げた、 ヨシ子慌てて頭を下げながら「いえ、此方こそ、お願いします」 「たく..!赤ちゃん預ける訳じゃぁ無いよ!おふくろ!、もう、お腹空いたよ、行こうよ」 母は子供を扱うように「はいはい」 ヨシ子は笑いを堪えながら二人の後を歩いている、小籠包の美味しいお店でお昼の時間帯食べ放題、女性はフカヒレえび包み、コラーゲンの言葉に弱く、付き合いう事に、 今日は夕方より逗子で祝勝会と俺の引退の報告が有るので、母を早めに家に送り、

 早々に引き上げ我々の家に戻り、ヨシ子の買い物して来た、4,5点、マタニティードレスのファションショウに付き合され、少し閉口する 手に入れた新しい服を首の辺りに充て「ねー、リュウこれ似合ってる?」 「あぁー」 「リュウ、ちゃんと見て頂戴!」 浩子さんも落ち込んでいるから、連れていく事にしていた 「大丈夫だよ、ヨシ子は何を着ても似合っているよ、そろそろ、逗子に行かなくちゃぁ、逗子に行く準備して!浩子さんに連絡入れてよ」 

 ヨシ子は俺の感心無さそうな態度に苛立ち「もう、リュウ、私に感心無いの!」 「違うよ!今は時間が無いの、何時だってヨシ子、綺麗だよ」 「リュウは直ぐに本気に応えるから、冗談よ!良く知っていますよ、リュウが凄くヨシ子のこと愛しているって知っているし、何時も感謝しているのよ、でも、リュウに時々言われたいの、それが一番嬉しいのよ!」

 「まったく!、..今日はお母さんの事、ありがとう、本当に嬉しそうだったよ」 「時々、お母様の処でリュウの好きな料理、教えて頂いていたのよ、だからお礼ですよ、本当にリュウは、お母様に愛され幸せ者よ、今日改めて良く分ったわ!..浩子に直ぐに連絡取ります」 携帯で「もしもし、浩子?何処に迎えに行ったらいい?..はい分りました」 電話を切って「リュウ、病院で待って居るって、そろそろ行きましょうか?」

 病院の玄関前で浩子さんに会い、少し落ち着いたのか、窶れ顔が取れ、とても綺麗に見えるが、不思議と嘗てのトキメキは起きなかった、 俺は海斗に会いたくて「ちょっとで良いから、海斗に会って行きたいな、直ぐ戻るから、車で待っててよ」 ヨシ子、浩子を見ながら確認を取り「良いわよ、私達は毎日会っているから、待っているわ」 「直ぐ、戻るから」 俺は急いで海斗の病室を訪ねた、海斗はベットでテレビを見ていたが「ヨォ!海斗」 海斗テレビから目を離し此方を振り向き驚いた様に「あ!リュウさん、こんにちは、・・ねー、リュウ、今は何しているの?」レースを辞めた俺を気使っての事だろう 「そうだね、..アメリカの兵隊さんの手伝いしているの」 興味津々の海斗「凄いね!銃とかピストル持っているの?」 「アメリカの兵隊さんは、持っているよ、でも普段は待っていないよ、リュウの所もね、そんな物無いよ、コンピューターと書類ばかりだよ、ごめんね、何時も長く居られなくて、今日は海斗も知っているレーシング・チームの人達と会うの、今度ゆっくり話すから、今日はね、海斗の顔チョッと見たかったの、下でヨシ子先生とお母さんが、待っているから、お母さんも少し休ましてあげようよ、お母さん、連れていって良いだろう」  「うん、分ったよ..リュウお母さん可哀そうだから、助けて上げて」

 「如何して?..お母さん、海斗が思っているより、強いよ」 「だって!パパが」 「パパだって海斗が大好きなんだよ、今、海斗の為に一生懸命、働いて、疲れているからチョットだけ、お母さんと喧嘩したの、又休んで、元気になったら、仲良くなるよ!」 「でも..お母さん、可哀そう」 「そうか!解かったよ、海斗は心配しなくて良いから、海斗はパパもママも大好きでしょう?」 「うん」 「じゃぁー、先生の言う事を良く聞いて、元気になりパパとママを喜ばせなければいけないよ、..リュウは辛かったり、悲しい時は、我慢しろ何て言わないよ、泣きたければ、泣いて良いんだよ、解かった?海斗は優しいんだね、リュウも大好きだよ」

 「うん、..リュウ..聞きたい事、有るんだ」 「なんだ!海斗、あんまり、難しい事は、わからんぞ」 「ねー、死ぬって事はなんなの、リュウ教えて!」 俺は突然の事に頭が真っ白になった海斗は知っていたのか!「ねー、教えてよ」 俺はとっさに「さー、俺にも、判らないよ、死んだ事無いから、如何してそんな事、知りたいの?」 「海斗!死ぬかも知れないから、苦しくて痛いの?」

 ..俺は答えに詰まった、物理的に説明しても何の意味も無い、海斗は漠然とで有るが、迫り来る死に対する恐怖だろう..なんて事だ!俺は咄嗟に話をそらした「海斗!レーサーになるんだろ?俺も良くは解からないが死んだら、レーサー出来なくなるよ、海斗、約束したろう、レーサーになるって、それから、お母さんも助けるだろう?そんな事、考えていたら、何も出来なくなるぞ!辛いけれど、リュウとの約束守れよ」

 「リュウがレースで事故が起きたた時、本当は死んでしまったのかと思った、本当は凄く恐くて一生懸命我慢したんだよ、だから、知りたいの」 そうだったのか、小さい心痛めていたのか、俺はなお更応えられなくなった「人は何時かわ死ぬが、俺は自分が死ぬ何って考えた事も無いよ、そんな海斗は嫌いだよ!海斗いいな!もう一度約束だ!元気になって、俺の代わりにレースしてくれる、約束しただろう?だから、リュウの大事なレーシングカーに乗せたのだよ、あのハンドル握りたいだろう」 あの時海斗の目は輝いていた、取り戻して欲しい、俺は海斗を睨みつけた 「はい!乗りたいなぁー」 「男の約束だぞ!絶対乗るんだ、いいな!」 「はい、解かりました」 なんって無力だ!俺は!こんな事しか、云えないのか!

 「海斗、プラモデル出来たか?」 「リュウ、ごめん、疲れちゃって、まだ出来ないの」 俺は海斗のベッドの横にすわり「そうか、リュウが作ろうか?」 「うんうん、大丈夫少しずつやるよ」 海斗を抱き「そうか、慌てる事ないよ、無理するな、リュウは何時までも、海斗を待っているよ、海斗に会えなくなったら、リュウ悲しくてたまらないよ!、海斗のお母さんもお父さんも、ヨシ子先生だって皆、悲しいって、泣いちゃうぞ!」..「海斗だって、同じだろう、リュウが海斗に会いに来れなくなったら、悲しいだろう?」 「リュウ、苦しいよ!解ったから!」 思わず強く抱き締めてしまった「おぉー、ごめん、痛かった?」 「うん大丈夫だよ、又来てくれる?」 「あたりまえだろう!リュウは何時だって、海斗の友達だよ」

 俺は心苦しかったが皆を待たしている「海斗、お母さん待たしているから」 「いいなー、皆に会えて」 「皆、海斗が来てくれる事、楽しみに待っているからね」 「うん、リュウ忙しいでよう、行って良いよ」 「俺に会いたくなったら、何時でもヨシ子先生に云えよ、直ぐに会いに来るから、じゃぁ、皆も心配しているから海斗は元気になっているって云っとくよ、行くよ」 海斗親指を立て「うん、わかった」

 BMW.jpg 駐車場に急いで帰り、車の運転席に乗り込み 「お待ちどう!浩子さん、海斗、お母さんの事、心配していたよ、もっと、明るく、今日は全部忘れて、楽しみましょうよ」 車は逗子にむかう、 俺が運転席でヨシ子は助手席、浩子さんは後部席、車の中で、海斗の云った最後の質問を除いて一部始終を話した、浩子「海斗がそんな事、云っていたの、驚いたわ」 俺は「お母さんには中々本心はテレがあって云えない物ですよ、本当に海斗は優しい子ですよ」 ヨシ子、俺の顔で何かを感じたのだろう心配そうに「リュウ如何したの?何か有ったの?」 「別に!」 俺の返事で何かを察したのだろう、明るい声で「リュウも同じでしょう、お母様にはテレて言えないでしょう」

 浩子は俺がレースを辞める事信じられない様に「龍崎さん、前の奥さんの事も有って、レーサー本当に辞めるんですか?..ヨシ子凄く心配していますよ、ヨシ子の為にじゃないかって!」 「そんな事無いですよ、ヨシ子に話したのに、如何して?」 浩子俺を嗜めるように「前の奥さんのお父さんの会社のスポンサー件もあるでしょう、龍崎さんが、優しいから、ヨシ子の為に、それを心配しているのってヨシ子が云っているのよ、龍崎さんが、ヨシ子やお腹の子供の為に犠牲になっているか心配だったからよ」

 「俺、ヨシ子の為に犠牲になっているなんて一度も思った事ないよ!、本当にその件だけでは、無いよ、たとえ俺が一人であっても、同じだよ」

 面倒くさいなと思いながら仕方なく、説明した「ヨシ子はまだ、世界の自動車レースの現実を知らないから、俺も始めた頃は、実力の世界と思っていたよ、そんなに甘い世界ではないよ、日本から出向いたレーサー腕は世界に通用する人が何人かいたが、誰一人、成功した人は居ないんだよ.. 言葉の壁もあるし、習慣と、感情の違い、自分の売り込み、外国に通用する宣伝効果、其れは色々、だからこそ、俺が行って、やってやる、と思ったよ、

 其れも、もっと若く、海外に出ていなければ駄目だよ、其れと認められるまで余程のスポンサーとマネージャーの力が必要だよ、本当は前の奥さんの時に、辞めるべきだったが、何か遣り残した気がして、心残りだったんだよ、せめて、国内だけでも、一度トップになり俺なりに納得したっかたから、..で!..もう俺の中で終わったんです」..

ウインドサーフィン.jpg 鎌倉から逗子のへ向かう海岸を横目に、今年は女子大生がかなり多くウインドサーフィンに嵌っている、グループであちらこちら砂浜にて講習を受けている、そんな人達を眺めながら車を走らせている

 俺は説明しながら自身にも納得のある、答えを見出したかった「今までそんな事など、考えもしなかったが、本当の幸せってなんだろうって、考えて見たんだ、物、名声、権力、全部違うなと思ったんだ、それらは限りが無いよ、望みを得れば、又次が欲しくなる、負け惜しみでも何でも無いんだ、”平凡の中に幸せが有る”、事がわかったから、だから本当に心配しなくていいだよ」俺は続けて「まぁー、過去もを含め自分の選んだ人生、結局、その道に対し、全ての実力が欠けていたから、かっこ付けて、誤魔化しているだけだよ..、ヨシ子が期待して応援してくれるの嬉しく思うが、時として負担に感じるよ」

 ヨシ子は本当にすまなそうに「浩子、ごめんなさい、私、リュウに直接聞くべきだったわ、でもリュウの性格、判っているから、ビジネスとして私の為に割り切れなく思っているのではないかと」 俺は慌てて弁明した「いや、俺が悪いんだよ、自分だけ解っていて、ヨシ子に説明不足だったよ」  浩子の気持ちも入って「本当よ!此の前だって、命落としたかも知れないのよ、もう、あんな思いは、関わりのある誰だって嫌でしょう」

 ヨシ子、同感するように「私だって人一倍恐いわ、..でも其れとは別よ!私にはそうは、思えない私の為に!リュウが可哀想よ!」 俺のことは、もうほっといてくれよと思い「もう良いんだよ!そりゃぁー、未練有るけど、どうにも成らないでしょう!もう良いから!」

 浩子はじれったそうに「ヨシコ子、私の事云うけれど、貴女だって、同じでしょう、龍崎さんの事になると、..治り掛けた傷を何時までも、いじって、開いているのよ」

DSC01508-2.jpg 浩子を説得するようにヨシ子は「ごめんなさい、ただリュウの才能、此のまま埋もれてしまうの、悔しいの、本当に何とかして上げたいの!」

 尚も言葉に力を入れ「他の一流チームの外人ドライバーだって追いつかなかったでしょう、本当に凄いなって!そう思っているから!..何とかしたいが、如何したら良いか解らないの..」

 ヨシ子はリュウの肩に寄り添って甘えるしぐさをした、リュウはヨシ子の手を握り「ありがとう、本当に、もうー良いんだよ、反ってそんなヨシ子が俺には負担に感じるよ、俺はヨシ子と今の生活が幸せであればいい、此れを護りたいだけ、もう決めたから」 ヨシ子甘える様に「私もくどい事、解ってDSC01506-2.jpgいるの、でも..本当に良いのかしら」 俺よりヨシ子の方が残念で悔しがっている

 浩子は呆れた様に「お暑い事、見ていられないわよ!バカバカしい!」 俺は感謝を込めて「浩子さん、ありがとう、助かったよ、それと余り名前で呼ばれた事ないし、何かこそばゆいから、リュウって呼んでよ」 やはり口では如何でもよいような事を言っていたが、気になるのか浩子は「解ったわ、そう呼びます、・・リュウ、一時的な事で、道を間違わないでよ、良く考えてからでもいいじゃないの」 「あぁ、ありがとう、俺一人じゃないしチームの方針もあるから早めにしないとね」

 ここ逗子海岸はウインドサーフィン(wind surfing)が盛んである 、積極的な女性達も大分増え、波間を風に乗り軽快に魚か鳥なって、時の過ぎる事も忘れ、皆、笑顔で輝き声も弾んでいる、太陽が辺りを紅に染め始めた..ふと俺もカーレースを夢中で始めた頃を彼らと重ね合わせ思い浮かべた、あの頃は、全てが新鮮で壁を乗り越える喜びに輝き、彼らや彼女達と同じだった..そんな、会話の中、逗子海岸近くのトニー・イタリアン・レストランに付いた、

  《パーティー・トニーの店》

逗子の夕暮れ-1.jpg トニーの店の扉をあけ、人数の多いのに驚いた、トニーの奥さんエバが目ざとく俺を見つけ俺に近ずき「リュウ、久しぶり、待っていたのよ、皆さん来ているよ」

 「なに!この人数、凄いね!エバも元気そうだね」 エバ「そうなの、地元のウインドサーファー(wind surfer)なの、パーティーの事話たら、リュウなら友達だから仲間に入れろって!、それとレースの監督の方も人数増えたからって、前もって連絡有ったの、だからお隣の中華のお店にも応援お願いしたのバイキング形式にしてローストビーフ、ターキー、ピザ、それからサラダ後中華とにかく充分食べ物あるからね」

ピザ釜jpg.jpg リュウ、手を差し述べながら「そうなの、凄いな、サンキュー、..奥さんのヨシ子です、それからヨシ子の友達の浩子さん」

 ヨシ子笑顔で「宜しく、先日ご主人に大変お世話になり、リュウと仲良くなる切っ掛けを作って頂いたのよ、こちら浩子も宜しくね」 エバ、ヨシ子を観察するように「此方こそ!、リュウ、おんな先生で美人じゃない、うまくやったね!」 俺にウインクをしながら俺の肩を叩いた「さー、皆、待っているよ、中に入って!」

 一歩中に入るなり、拍手や口笛の(ピューピュ)の嵐、監督からビールの入った、グラスを3人に渡され「皆静かに!リュウとヨシ子さんの結婚とお腹の赤ちゃんに乾杯!」 ウォーと言う歓声と共に乾杯、「それから、今回 F.J レースの優勝を祝して、リュウから挨拶があるそうだ、どうぞ」 エバも調子よく監督の言葉にのって「さー主賓の挨拶だ、さー、リュウ始めて」

 俺は改まった挨拶は如何にも苦手だ、頭を掻きながら「こうゆうの、弱いんだ」 監督おもむろに立ち上がり「えー、静粛に願います、此れより、龍崎より挨拶があります、リュウどうぞ」 「ええー、リュウです」 サーファーの誰か「名前は知っているよ、さぁー、後続けて」多分俺の気持ちをやわらげるつもりだろう、皆大爆笑 

 俺は無視して「それでは、この至らない俺を、チーム監督初め、メカニックの皆さんと営業の皆さん達の並々成らない努力と支援に感謝しております、又、今まで応援して下さった皆さん、又サーファーの皆さんやレースクイーンの皆さんまで集まって頂き、心からお礼申し上げます..此処に感謝と優勝を祝して乾杯致したいと思います」・・「乾杯!」

 参加した皆の「オォー!おめでとう!」の返事を聞き、改めてヨシ子に手を差し伸べ「えーと、ですねー、今度、此方、七月十七日に鶴見 佳子さんと、入籍しました」 ピーピー口笛での祝福、サーファーの一人「じゃー、今、此処で祝ちゃえよ、リュウ、もう遊んでいられないな年貢の納め処だよ、さー披露宴だ!」又爆笑

 俺は皆を手で制止しながら「静かに!..それでお腹に子供もいます、祝っていただき皆さん、ありがとう」 サーファーの一人だろう「おめでとう!なんだよ!レースも早いが、そっちもはやいね、とにかく、オメデタにおめでとう」 別のサーファーが同調して「かーちゃん、うるさくて、これで、俺達も飲めるから、何回もやってよ」 レースクイーン「ちょっと、違うでしょう?何回もって!なんなのよ!」 頭を掻きながら「おぉ、いけねえ、リュウなら仕掛けないよ」 またまた大爆笑、「こんな美人もうないよ、なぁーリュウ?」

 笑いの収まるのを待って「それからもう一つ報告があります....俺、..レースから引退したいと思っローストビーフ-1.jpgています、今まで、おれ、いや、私を支えて下さった、皆様に心から感謝と、お礼申し上げます、又此れからもスクールを通し皆様と今まで通りのお付き合いと、お腹の三人目とも宜しくお願いします、又サーファーの皆さんにも変わらず、お付き合いお願い致します」

 俺の挨拶を終わるのを待って監督、改めて「リュウおめでとう ..二人共飲めないから、ジュースに変えて、ヨシ子さん順調ですか?其れと浩子さん、も元気でしたか?」 ヨシ子と浩子さん、二人で、「はい」 ヨシ子は軽く会釈をして「此方こそ、今日は宜しくお願いします」

 ..監督気配りが良く「浩子さんは飲めるんでしょう、サーどうぞ!、それから、私の家内です、宜しく」 監督の奥さん以前は車会社のコンパニオン「リュウちゃん、久しぶりね、此れから活躍出来るのに、ガッカリだわ、如何して続け無いの?」 監督、奥さんを制止しながら「よしなさい!リュウも悩んだ結果だよ、スクールもリュウのおかげで、沢山生徒が集まって来ているよ、

 少し酔い始めたサーファーの一人が「なんでよ、優勝したのに、もう尻に引かれ、引退かよー!」 浩子さん真面目な顔で「そんな事、無いのよヨシ子さん、リュウにレース進めたのよ!」 30代位のサーファーの古株の南波さんが「解っています、リュウは誰も止められないから、知っています、冗談ですよ、浩子さん此方に来て飲みませんか?」 浩子さん不安そうに俺を見て如何するのって顔をしている、俺は目配せで大丈夫行きなさいと合図、

ガーリックチャーハン.jpg エンジニアの井原君に俺は訊ねた「井原さん、其方、奥さんですか?綺麗な方ですね」 井原君は本当に残念そうに「あぁ、リュウさん、これからなのに残念です、如何してですか?」 俺は説明が長くなるので手短に「本当に、ごめん、其の話、後で監督に聞いてよ、話して有るから、奥さん、始めまして、リュウです、彼には何時も助けて頂いています」手を出して、握手を求める 「あ、はい、家内の真澄です、此方こそ主人がお世話になっています」 ヨシ子は笑顔で「ヨシ子です、此方こそ宜しくね」 井原君の奥さん、尊敬の眼差しで「凄いわ!女医さんですってね、憧れます」 孝ちゃんが近ずいて来る「ヨシ子さん、お腹順調!」 「ええ、孝ちゃんは?」

 「寂しいわよ、急に辞めるなんって、リュウにはガッカリだわよ!これからじゃない、来年活躍出来るのに、ねーどうしてよ?何か気が抜けたわよ!」 孝ちゃんの肩にてを置き軽く叩きながら「まだスクールにお世話になるから、それより俺よりもっと若いレーサー宜しく頼むよ、あっちのサーファー達のグループ紹介するよ」 本当に気抜けした様に「もう!がっかり!気がぬけたわ」 「何時でも、遊びに来なよ」俺はヨシ子の目を見て救いを求める ヨシ子は俺の気持ちを察して「孝ちゃん!私も、孝ちゃんの面白い話、聞きたいから時々遊びに来てね」 表情豊かな孝ちゃん、万遍な笑顔で「ほんとうに!うれしい!ヨシ子さんの許可が出たから、リュウに会いに来るわよ、ヨシ子さん本当にいいのね」 「ええ、いいわよ、リュウの命預けた人達でしょう、本当にお世話になり、何時でも顔を出して下さい」 「うれしい」

 向かいには次期レーサー候補の森田君とレースクイーン達がいる、俺はレースクイーン達を呼び孝ちゃんとサーファー達のグループに皆を連れ挨拶をした、「皆、久振り!俺達のチームの連中だよ、宜しく!」 レースクイーン達「キャー!凄い真っ黒ちょと触っていい!」 俺は手を差し伸べ「森田君だよ、俺れの変わりに、走るから宜しく」 サーファー達に握手しながら「森田です、よろしくお願いします」 陽気なサーファー「おぅ!リュウに負けるな、頑張れよ!ねー、リュウ、こんな美人ドクターをどうやって、釣り上げたの?」 レースクイーン「そんな下品な云い方じゃぁ、無理よ、何処で出会いましたか?でしょうー..ね!」 俺は笑って、誤魔化した、..スクールの生徒達も、サーフィンに興味が有る様で、話に夢中だ!、浩子も南波さんと話が弾んでいる様だ、竹田君と久美ちゃんには少し離れた所にいる、手あ挙げ、挨拶を送る、どうやらその後、仲良くしている様だ、..あちこちで、話が盛り上がっている..

ピザ.jpg 「何か挨拶、締まらなかったね、でも凄いよ、こんなに来てむらい、沈んだ雰囲気ならないで良かったよ」 ヨシ子「リュウの友達皆個性ある人ね、でも、気取っていないで本音トーク皆楽しそう」 俺はヨシ子と一緒に厨房に入り トニーに挨拶「ハイ!トニー元気」 陽気なトニーはヨシ子に握手をしながら「ヨシコ&リュウ、コングラチュレーション(Congratulations)おめでとう、赤ちゃんもね」 ヨシ子も笑顔につられ「ありがとう、トニーの御かげよ、あの日、此処に来たから、本当に私達に採って運命だったわ」

 トニー両手と肩を上げながらお決まりのオーバーアクションで「運命?」 俺は冗談交じりに「トニー、ベートーヴェン、第五だよ」 エバ、横合いから俺を制止して「リュウ、よしてよ、それじゃぁーなお更解らないわ、destiny!よ」 トニー「おぉ!うんめい....そうだよ、私、キューピッド(Cupid)ね、..ねー、リュウどうしてよ、レース、ファースト-プレイスなのにリタイヤなの?」 俺はふざけて「トニーはキューピットって顔じゃないけどね」 トニーも解ったようで乗ってきた「どうして、可愛いでしょう」

 エバ真面目に説明した「だめよ、He is never-change、リュウは決して変えないよ」 ヨシ子俺の顔を見ながら「リュウ、あなた、よほど頑固者で通っているのね、皆、知ってる様ね」 エバ得意そうな顔で「そうよ、子供の頃からよ」 俺はエバを制止しながら「エバが宣伝するからだよ」 エバ声を高め「へー、そんな事云っていいの高校の時の事云うよ」 ヨシ子笑いながら「其の話知っているわ、リュウのお母様からも聞いたの、後でゆっくり、聞きにくるわねエバさん」 俺は言い訳するように「別に何にも無いよ、エバは子供の頃から、お兄ちゃん、お兄ちゃんって金魚の糞みたいに、俺に付いて来たんだ」 話を変え 「其れよりエバ、支払いお願いするよ」 エバ真面目な顔になり「もう、頂いているわよ、監督からと、南波さんから、皆で会費払った見たい、リュウに叱られるからって、言ったんだけど、皆いいから、お祝いだからって」

ローストターキー.jpg 「そうなの..分った、足が出たら俺払うから、云ってね」 エバ「大丈夫よ、充分頂いているから、リュウ、お祝い何が欲しい?」 前より少し太った様だ、胸元が大きく開いたTシャツから豊満なバストの谷間が見える、エバ笑いながら、俺に何時もの悪戯「リュウ、そんなにバストばかり見詰て、私は駄目よ!ハァハァ夫ある身ですからね」 「バカだね、間に合っているよ、俺、結婚したてだよ!、少し太ったなって思って、..ウインドサーフィン(wind surfing)でも教えてもらえ!やせるよ!」 「そうなのよ!ほんとう太り始めて、こまっているの、やろうかな~」 「食いすぎ!ハズバンドが美味しい物作ってくれるから、サーフィン、今女性も多いよ、俺もやる事無くなったから、始めようかな?」 間髪をいれずにヨシ子は「私も連れて行って!」 俺は少し驚き「泳げるの?」 俺を睨むように「泳ぎ位、出来るわよ、リュウはまだ知らなかったわね、此処のところご無沙汰ですが、浩子と良く、沖縄の海、もぐったのダイバーの免許も有るのよ」 「へー、意外だな!」

 「其れより結婚式の招待状もう届くと思うから、頼むね、何せ俺達のキューピットだから」 ヨシ子改めて「本当にそうよ、是非出席して下さいね」 エバはトニに説明する「トニー、リュウとヨシ子さんのan invite guest wedding-ceremony & party  ウエデング・セレモニーとパーティー行くでしょう?」 トニーは俺の胸を拳で軽く叩く様に「Yes of course イエス、オフコース、お店クローズね」 「ありがとう、待っているからね、今日は皆話も盛り上がり楽しそうで良かった、」 皆其々楽しく過ごし無事パーティーも終りに近ずき

 俺はエバに改めて、海斗の病気の事、レース観戦に行き、明るく成った事等、手短に説明して、レース関係は監督に、サーファー関係をエバの知り合いの人に、ボランテアで海斗の海外手術の費用の寄付を集めて頂く事をお願いした、此れも”心臓病の子供を守る会”や”臓器移植ネットワーク”などにお願いしなければ成らないし、直接海斗には如何にも成らないかも知れないが少しでも何かしなければ、遣り切れないよ、俺は良いと思うけど、中には煩い奴が居て、中傷する人もいて俺達夫婦はヨシ子の医師とゆう立場で患者の個人的応援は出来ないので、幼馴染のエバに海斗の事、臓器移植ネットワークに手紙を添えてお願いする事にした、エバは納得言ったように「分ったよ、リュウに何時も助けって、むらったからね、やってみるよ」

エビチリ.jpg ヨシ子は俺を感心したように見ながら「リュウ、そんな事考えていたのね、リュウには驚く事ばかり!」 俺は言い訳するように「生意気の事、云うだけじゃ、かっこつかないからね、此れでやり残す事無く結婚式出来るね」 ヨシ子感心した様に「リュウは..なんって..」 俺はテレながら「何かしなかったら、俺の気持ちが、許せないだけ、だから、俺の為だよ」 ヨシ子頷き「それでも、凄いわよ」 エバは俺の子供の頃から知っている事を強調して「ヨシ子さん、リュウは昔からそうゆう人なんだから、リュウに私、昔、生意気で問題起こして、何回助けてむらったか!パーティー終わる時に海斗君の事、私から話すよ」 「助かるよ、頼むね」

 暫くして、エバは両手で大きな音をたて..パン!パン!平手打ちをして注目を集めた..エバ「皆!静かに!静かに..大分盛り上がっていますが、聞いて下さい!..突然ですが、浩子さんの6歳の息子、リュウの友達でもあるのですが難病の心臓病で、移植を受けなければ、生存が困難です、移植待ち状態ですが、それで、少しでも、助けに成ればと思い、寄付と海斗君の為の署名、協力お願いします」

 サファーの南波さん、浩子さんと大分話が弾んで気に入っている様だ、南波さん「如何して浩子さん何も話してくれないのですか?そう云う事なら、湘南じゅうのサファーに協力してむらうよ、なー皆」 サーファー「エバの頼みなら、俺達余り金無くて、大した事出来ないが、それでも良いなら、協力するよ」 エバ皆を説得するように「もちろんよ、気持ちで良いからさ」 陽気なサーファー「エバに、飯で大分世話掛けてるかな、なー、皆やろうぜ!」 レースクイーン達がサーファー達に「皆でやろうよ、私もレース場で海斗君に会ったの可愛い子よ!協力するでしょう?」 サーファー達..彼女達の手前も有って、皆もちろん、協力するよ、うん良いよ..と言ってくれた

カルパッチョ.jpg 俺は監督にも協力してむらう、為「監督!そんな訳で、勝手ばかり言ってますが、レースの主催者に話して下さい、お願いします」 浩子さんも俺に合わせ、少し涙ぐみ、声を詰まらせながら「皆さん!宜しくお願いします、本当に!本当に!ありがとう御座います」何回も、々、頭を深々と下げていた、 俺は浩子さんをかばう様に「海斗だけの事じゃないから、日本全国には何万人が待っているだよ、厳しい審査の上危険度の高い順で尚且つ年齢に有ったドナーが見付り適合しなければ成らないのだよ、ただこれが少しでも役立てたらと思ってだよ」 監督説得するような響く声で「もちろん、協力するよ、此れは浩子さんの為では無く、宣伝になるから、リュウが居なくなり、如何しようと、思っていたからな!」 ..多分、俺や浩子さんに、気を使ったんだろう..自分達の為にもと、浩子さんの心の負担をなくしたい為に、監督らしい心ずかいだ!だから他のチームには移れないよ!.. 「監督!ありがとう御座います、..エバの所で纏めて管理しますから、宜しく」

 エバ小声で「リュウよかったね、意外と策士じゃん!あの子達、女に弱いから」 俺は複雑な気持ちで「そんなんじゃないよ、たまたま重なっただけだよ、其れよりエバはもうここら辺のサーファー抑えているの?」 得意そうな顔で「リュウが以前言ったでしょう、男捕まえるなら、胃袋掴めって!、それで、あの子達のお金の無いとき時々、めんどう、見てるの、きっとあの子達他のサーファー達に話してくれるよ」 トニーはエバに同調する様に「そうだよ!だから何時も赤だよ!」..多分赤字の事と思う.. 「だから、フレンド沢山だろう、トニー?」 「オー、イエスうれしいね」

 ヨシ子感心したように「リュウの友達って皆、凄い行動力ね!、感心するわ、私の知り合いにわ、居ないわ、理屈だけは、ごちゃごちゃ云うけれど、全然駄目よ、皆、自分の手を汚さないの、エバさんと居ると何か元気を頂けるわ、良かった、私からもお礼言うは、本当にありがとう」 エバ照れた様に「奥さん、やめてよ、照れるじゃぁない、リュウに世話になったからだよ」 もう大分時間も過ぎていた

 エバ大きな声で「皆!名残惜しようだけど、そろそろ、お開きにしまーす..リュウしめてよ、挨拶!」 「えーぇ、本日は忙しい中、ありがとう、此れを機会に皆さんが友達なれたら、嬉しく思います、それから、俺の友達の海斗の事宜しくお願いします、今日は、本当にありがとう、御座いました」 ヨシ子と浩子さんが一緒に頭を下げてくれた、久美ちゃんと竹田君に結婚はまだか、訪ねたがまだはっきりしていない様子、

 ヨシ子孝ちゃんが気になった様で「孝ちゃんは、どうだった?」 頭と胸を押さえ「あの子達、見た目は良いけどさ、ここと、ここ、今一よ、やはり、リュウ以外居ないわ」 ヨシ子笑いながら「孝ちゃん、リュウはだめよ!」 「安心して、ヨシ子さんには敵わないわよ、リュウ、早く来てね」 俺達は監督にお礼を言って、帰る事にした、浩子さんと南波さんは、まだ名残惜しそうだった、エバは俺を気使って「リュウ、エビチリ残ったから持って行って」 「おぉ、サンキュウ、美味しいから、むらって行くよ」

 帰りの車の中で、浩子さん「今度、南波さんが食事しょうって、リュウ、行っても良いかしら?」 「其れは..浩子さんが決める、事でしょう」 俺は浩子さんの挑戦的目線を感じた「リュウなら友達でしょう、彼の事知っていると思って、それとリュウが止めると思って」 ..何、考えているんだ、俺が止めたら?時々解らなくなる..寂しくて誰かにぶっつけたい、気持ち解らない、訳ではないが 「友達と云っても、時々トニーの店で会っただけだよ、自分の目で確かめるのが、一番だよ、其れより、寂しいの解るけど、順序間違えないようにね、俺が云う問題ではないが、旦那の事が先だよ、それだけ踏まえて居れば、良いじゃない」

 ヨシ子、心配そうに浩子に向かって「浩子、家に泊まって行ったら、もう、遅いし一人で寂しいでしょう、ね!リュウ良いでしょう?」 その寂しさでは、無いのだが..俺「構わないけど」 浩子さん俺の意見には応えず「今日は帰るわ、海斗の事、本当に嬉しかったわ、本当にありがとう、御座いました、明日、弁護士に会う予定なの、家まで送って下さる」 浩子さんを送り、俺達はマンションに着いた

 「私やっぱり、リュウの人生狂わしちゃった、才能あるのに!」 俺は少し’うんざり’だったが、本当に俺を気使って居る事が、解っているので、ヨシ子を優しく抱き締め「違うよ!、最初にヨシ子に病院で逢う前から、レース捨てたんだ、だから俺が運命変えたから、でも監督からの誘いが有って、国内だけでもと思ったんだ、それが終わっただけだよ、ヨシ子は強いよね、何時も自分の生きる道を失わないね、気持ち嬉しいけど、もういい加減よそうよ!、俺には反って負担だよ!本当に怒るよ!良いね」 「ハイ!御免なさい」 「何が有っても、ヨシ子事が一番だよ」 「嬉しい!今日は海斗君の事ありがとう、浩子も喜んでいたわ、

 浩子..うん..何でも無い!、リュウは凄いね、行動力が有って、それとエバさんも」 「云うだけじゃぁ、かっこ悪いから」 「浩子さん如何かしたの?」 「何でもない!きっと浩子、苦しくやり切れない、ほど寂しいと思って」 俺は、ヨシ子の言おうとし止めた事が解っていた、俺れの事だろう、きっと浩子さんから何かを、感じ取ったのだろう、それと浩子さん俺達の様に何でも話し合える相手が欲しかったのかも..俺はそれ以上質問はしなかった

ヨシ子右横海斗.jpg 「ねーリュウ、海斗君、何か有ったの、海斗に会いにいって戻った時に、リュウ変だったわ?」 「うん、海斗、死について、俺に質問してきたの、俺、如何応えたら良いか解からず、悲しくて、訳もなく、腹立たしく!俺..」 「もういいわ、それ以上言わなくて、解かったから、きっと全て知っているのよ、だから恐かったのだと思うわ、だからリュウに助けを求めてたのよ」 「そうだよな!俺、何にも勇気ずけ出来なかった、ほんとう、駄目だよな!」

 「そんな事、無いと思うわ、リュウには、心開いているの、聞いてあげる、だけで良いのよ、なるべく会ってあげてね」 「うん、そうする様に海斗に云って来たよ」 「リュウ、海斗君はね..御免なさい、なんでもない」 「良いんだよ、解っている、医者の守秘義務って、事だろう、もうただ変わりの心臓を待つ事しか出来ないなんでしょう、なんで、世の中、こんなに悲しい事ばかりなの!」 ヨシ子は悲しそうに、目をヨシ子後ろ髪1.jpg伏せてしまった、ヨシ子の方がもっと、悲しいよな、俺は、ぽつんと呟く様に「ごめん」 ヨシ子は後を向いた、その後姿は悲しみを絶えている様だ 「いいのよ!でも医者は最後まで諦めはしないわ、リュウも..本当はパーティー楽しんでいなかった!・・なんでもない」 俺はその続きは解っていたレースの事だろう

 明日は日曜だが、ヨシ子は出勤で当直、月曜の夕方まで帰らない、久しぶりに、俺のマンションの片付けでもして、おふくろに鍵を預け、管理を頼もう 「ヨシ子、俺、明日、勤めに行った後、おふくろの所に泊まってくるよ、俺のマンションの鍵渡してくる、今の内に売れたら良いと、思って、不況になってからでは、遅いから、いいよね」 「リュウの家だもの、聞くまでもないわ、今が良いと思ったら、良いじゃない、リュウの感凄いと思うよ」

 「今は二人の物だよ、じゃぁーそうするよ、月曜の夕食、ヨシ子疲れているだろうから、たまには、俺が作るよ」 「へー、何作って、頂けるの?」 「まだ、決めてないよ、..そうだ、餃子と、もやし炒め、挑戦してみよう、初めてだから、上手くいくか分らないよ、それとえびチリ旨かったから、むらって来たのあるから、遅いから寝よう」 「楽しみにしているわー」

 今回こんなにはっきりした、意志表示は初めてだ、俺は少し驚いた 「ねー、リュウ..して..!」ヨシ子からハッキリと、俺は少し大きくなったお腹を擦り「如何したの?お腹大丈夫?本当に大丈夫かなぁ~」 ヨシ子は俺を黙って抱き胸に顔を押し付け、俺の背に廻した腕に力が入る「..」 「うん、わかった」 俺の胸の中に顔を埋めて.. 「優しくね」

 何か、俺には、解る様な気がした、俺の子供の頃からのエバとの絆を知り、又 浩子と海斗の事もあり、ヨシ子自身の為より、俺の気持ちを、愛を確かめたかったのでは無いのか、そんな気がして、愛しく思い「ヨシ子だけが、俺の休める処だよ」 「うん、解っているんだけれど、..寂しかったの」 ..此のときほど、どんなに理性的な人で有っても、齢のさも無く、なんって可愛い人なんだ!と思った、俺は思わず、ただ黙って抱き締めた.. 「リュウ!大好きよ!・・」 「うん、俺もだよ」

 翌日、俺のマンションに寄り実家の母の元へ、餃子の作り方を、教えてむらいながら、一緒に作った、やはり母の作った方が、形がとても良く、早かった 母笑いながら「健司、お前とね..餃子作るとはね、後は、家で焼きなさい、焼き方を聞き、水より熱いお湯を入れた方が、上手く焼き上がるよ、蓋をして5分くらい音が変わったら、ごま油を少し上から垂らしなさい、翌日朝仕事前に家により冷蔵庫に入れて、行きなさい」..「いよいよ来週は結婚式だね!、佳子さん、美人だし背丈も有るからドレス似合うと思うよ、今から楽しみだね、知っているとは思うけど、お父さんよりお母さんが年上だったのよ、其れなのに先に行ってしまい、本当に辛く、悲しかったわ、健司、ヨシ子さんの事考えて、もう危険な事はしないでね」

 「もう!、分っているよ」 「それと、夫婦だからと、云って感謝の気持ち忘れては、いけないよ、健司はお父さんにそっくり、お母さんはね、何時もお父さんに始めて逢った時の事思い出すのよ..」 母と何年ぶりにゆっくり話す事が出来た、母はほとんど一人で喋っていたが、嬉そうだ、マンションの鍵を預け母の知り合いの不動産屋を通し売る事をお願いした、

 翌日、餃子を言われた通り焼き、少し焦げめ、が付き、上手くいった、ヨシ子に直ぐにバレテしまった「この形の良い方は、お母様でしょう、ジューシーで美味しいわ!知っているのよ、鶏がらで作った、ゼリーを少し入れる事」 「こっちだって、美味しいよ」 ヨシ子「中身はお母様が作ったからね、とても美味しいわ、リュウの、もやし炒めもシャキシャキして美味しいよ」 「今度は俺1人で全部出来るよ」 やはりこの話になると、目の輝きをまし、嬉しそうにヨシ子は語る「..式、後一週間ね、リュウと知り合い、沢山の事が一度に一杯有りすぎたね、でも凄く充実していたわ」 「全部任しちゃって、ごめん」 「うん、うん、リュウは休みも無く忙しかったから、考えているだけで何かドキドキして楽しかったわ」 俺も実感して「此れからも、だよ、何時もドキドキしていたいね」 ヨシ子照れた様に「其れは大変!..何時も若く新鮮でいなくちゃ!ね」

 「俺やはり、スポンサーの件で、監督が後でいいと言ったが此れだけは、結婚式前に済ませたかったんだ、今朝、職場から連絡取ったの、..明日、休み取って来たから東京に行ってくるよ」 ヨシ子はきっぱりと「美奈子さんのお父さんの会社でしょう、私、リュウにハッキリ言ってむらった方がスッキリするよ、リュウが世話になったし、気になるだったら、行ってらしゃい」 俺は、そんなヨシ子を快く好きだ「うん、今日朝、社長に連絡して明日11時に会えるからて」

 「着て行く物、用意したの?」 「別にいいよ、何時もの物で」 まるで母親が幼い子供の心配をするように「駄目よ!夏の明るいスモーク、グリーンのジャケット有るでしょう、ネクタイ嫌いでしょう、黒のティーシャツで良いから、着て行きなさい」 「うん」 「少しリュウのスーツ用意しないと、いけないわね」 「いらないよ、持ってこなかったが、お袋の家に、沢山置いてあるよ」今まで全て一人でやってきた、俺には、そんな受け答えをしながらも、何処か心良く感じていた 「リュウもセンス良いけど、此れから使えるかチェックして、たりない物買い足さなければ」

   ストーリ【Story9】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2010-06-24是非お読み下さる事お願いね 


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編9】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

 ☆=ストーリ【Story前編8】からの続きです、是非下欄【Story前編9】をお読み下さい=☆

  東京駅絵1.jpg翌日、約束の時間に東京駅近くの元義父の会社の受付で面会をお願いし、秘書が出向いてくれ「社長から聞いております」 俺を社長室まで案内して、ドアをノックしドアーを開け俺が来た事を告げた、

  奥の大きく広々としたデスクを立ちながら「健司君、入り給え」社長の威厳のある声が聞えた 「はい、失礼します」と俺は深々と頭を下げた、 俺の姿を見るなり、社長の顔がほころび「健司君、優勝おめでとう、一年目なのに事故なども、有ったが大分活躍でしたね、うちの営業の者から、報告を受けてるよ、怪我が無くて良かった」 俺は社長の目を確り見ながら「はい、事故の時には大分ご迷惑をお掛けしました、色々と有難う御座いました」と、もう一度頭を下げた。

 社長にとって、此の社での俺は随一ビジネスに関わらない人かも知れない、俺を見詰める目と声は優しさを漂わせている 「健司君は、お昼まだだろう?どうだ寿司でも食べに行くか」 其の前に俺は大事な話を終わらせたっかた「はい、其の前に、今年のレースは御蔭を持ちまして、無事終わりましたが、・・私!」

 話が長引くと感じたのか「そうか、来年の事か?まぁ、座りなさい!」大きなデスクの前には、高級そうな深々とした長椅子など応接セットが備えられている 俺はこれからの話が重要な事、社長の進めには応じず、その場に立ったまま、応えた「はい、其れもあるのですが、私からお願いして、大変申し上げ難いのですが、今期、此れを限りレースを辞める事にしたいと思いまして、何時も勝手なお願いで申し訳御座いません」 

 社長は予想とは違った言葉に、暫く考えを探している様子「....また、何か有ったのかね、始めたばかり、此れからだろう?、活躍出来ると営業の者に逐一全部報告は受けている、遠慮はいらんよ、..事故の件か?」

 一番云いずらい事から報告しなければ、俺は思い切って切り出した「いいえ、事故では一レース出場出来ず、尚、私への怪我の気使いまでして頂き、ご迷惑お掛けしましたが、・・私、結婚するので!」 社長はそれほど驚いた様子も無く「そうか、娘、美奈子と離婚しているのだから、君の自由だよ、其れとは別の話、私は何も云うつもりは無いよ、娘から頼まれたとは云え、公私混同はしないよ」 意外とあっさりした対応に驚いたが、それも当然スポンサーである、社の営業部員が細かく報告していた事だろう 俺は社長に負けない様に力を入れ「此方からお願いして、真に言いずらいのですが、二度とお嬢様の様に悲しませる、同じ間違えはしたくないと思いまして」

 社長は穏やかに「まぁー、其れは君がレースをしていなくても美奈子が病気で、正常な夫婦生活が出来なかったから仕方ない事だよ、初めて美奈子の発作が起きた時から、大分重症で、安静が必要と担当医から告げられいたからな」 「ええ」 「当時、家内からも君に夫婦生活は無理だから、何時でも離婚していいと伝えたはずだよ」 「はい、聞いていましたが、でも私達二人で頑張って行こうと・・ご存知の通り結果は惨めな事に・・・」 「君達は若さ故に・・まーいい、悩み苦しんだ事、美奈子だけでは無く、君も同じだろう、美奈子を通して解っているつもりだが?..一度は義父になったんだ、此れも何かの縁、遠慮は要らんよ」

 俺は今のヨシ子の為と言うより、有難い事と思う反面、嘗ての義理の父に甘えるのでは無く、俺自身、許せない思いがヨシ子を知ってから日に日に強くなった、単に一個人のレーサーとして、援助を受けたかったが、何処にも頼る処が無く、此処を訪ねたのに、一企業の広告搭として勝手なものだ世の中そんなに甘くは無いよな!これは社長より俺自身の心の問題だろう、後々の柵が恐いからだ、本当に自分勝手な言い分と思ったが、叱られるのを覚悟で、当って砕けろだ、云ってみるしかない

 「はい!ありがとう御座います、..それに、レースを始めたからには上を望みます、自分で云うのはなんですが、これ以上は世界です、私の歳もあるのですが、限界を感じました、此れ以上、ご迷惑を掛ける訳にはいきませんし、考えられません、..其れで切り替えるのなら、少しでも早い方が良いと思いまして、本当に身勝手で生意気な事ばかり云って、申し訳有りません」 俺は気持ちを込め頭を下げた、

 暫く考えている様子、裸一貫で此処まで昇り積めた人、多分、察しているだろう..俺の性格でレースの事では限界などと決して云わない事を、何か別の理由が有ると思ったのか「そうか、頭を上げなさい、健司君が其処まで言うのなら、余程、考えての事だろう、解った!」 俺はもう一度深々と頭をさげ「本当に勝手ばかりで申し訳ありません」 社長は穏やかに「そうか、話は違うが、まだうちの会社に来る気は無いかね?娘の事と関係なく、私は君を見込んでいるのだよ」 俺は叱られると思ったが、以外だった、だがそんなに割り切れる物ではない、その優しさが俺には耐えられない

 「本当にありがたいのですが、今までお世話になった所で、公務員として雇用していただけそうなので」 「ふむ..そうか!」 「それに厚かましいのですが、お世話になったチーム、来年のスポンサーの件で、又チームとして監督と伺わせて頂きたいのですが、宜しくお願いします」 「そうか、解った!また監督と連絡を取り説明に来なさい、どれだけ協力出来るか判らんが営業の方に話しておくよ」 「有り難う御座います」 「それに、何か有ったら、遠慮なく相談に来なさい」 「はい..有難う御座います」。

 其のとき社長のデスクの電話がなった、社長、受話器を取り言葉少なく「そうか、此処に直ぐ来るように、伝えてくれ」 「お客さんですか?、じゃぁ、私は」 受話器を戻しながら改めて俺を見詰め「良いんだよ、丁度、三日前、美奈子が軽井沢から此方に戻っていてね、何か買い物で一週間ほど家に居るそうだ、今、下の受け付けに来ているよ、直ぐに来るから、待って居てくれ」

 ..俺は急な事で、何か落ち着かずその場を行ったり来たり、そわそわしていた.. 俺の気持ちを察したのか「健司君、落ち着きなさい、あんな、美奈子の一方的な別れで、余り話していないだろう、良い機会だ、きちんと、話しなさい」 暫く二人に気まずい沈黙があり、ドアのノックの音がした..社長明るい声で「入りなさい」 美奈子ドアを開けながら「パパ食事..あ!」余程意外な出来事に驚いたのであろう、美奈子は暫く胸を押さえ、その場に立ち尽くし、暫く俺と見つめあった、別れた、頃より顔に赤みがあり健康そうに見えた

俺も驚きを隠せず「久ぶり、..病気は・・どうですか?」詰まりながら問い掛けた、 美奈子は相変わらず、あのクリクリした目でじっと俺を見詰ながら言葉に詰まって居る様子だったが..明るく「あ、はい、大分良くなりました、健司さんは?」相変わらず、静かで清楚な人だ、..

 二人の会話から感じたのであろう、社長は「そうだ!、君達二人で、下の寿司屋に行って来たらい良いよ、予約入れてあるから、そうしなさい」 多分俺と食事をする、つもりだったはず、何故か、あわてながら「いいえ、私は帰りますから」 社長は押し付ける様に「いいから!ちゃんと話して来なさい!、私は別に行く処があるから、そうしなさい」 美奈子に俺の口からヨシ子との結婚の事、話しておかなければならないと思い、考え直し、もう一度社長に深々と頭を下げ「はい、有難うございます」・・「では、そうさせて頂きますミーコ行くよ」 当時、結婚以前から美奈子の事を”ミーコ”と何時もそう呼んでいた、無言で美奈子は俺に従って、後に続いた。

八重洲口寿司店.jpg ビル内の寿司屋に入り、..いらしゃーい..ああ、店の主人らしき人が美奈子の顔を確認したのだろう「社長さんから連絡有りました」..奥の席に案内され、「何にしますか?」と俺に尋ねた 「とりあえず、お茶と二人共、お刺身定食!適当に見繕ってください」・・好みは解っていたので「ミーコ良いよね」 美奈子は笑顔で店主を見て「はい、お願いします」・・美奈子は改めて、俺を見詰め相変わらず静かな口調で「..元気そうね、ちゃんと野菜も採ってバランス良く食べているの?それに、その服装・・、洗濯している様ね」 相変わらず優しい話し方でやはり嘗ての妻、俺を気使っている 「うん、大丈夫だよ、・・スポンサーの件、お父さんに聞いたよ、有難う」 「いいのよ」美奈子は自分自身に呟く様に言い放った、その現実離れした雰囲気と澄んだ汚れを知らない、大きな瞳に異次元の世界に引き込まれてしまいそうだ

 暫く沈黙が続き..美奈子の容態が気になったが以前より大分元気そうだ、結婚する事を伝えなければ.. 心苦しいが、思いきって切り出した「それで..俺今度、レース辞めて・・結婚する事にしたよ」 「え!..」・・ビックリしたのか結婚は冗談に思ったのか結婚には触れず「本当に!..どうしてレース辞めるの?」 俺は真面目な表情を作り「才能が無い事が判ったから」 大きな瞳が益々見開いた「そんな事嘘よ!・・解っているわ、絶対レースしたかったから、それなのに負担を感じお父さんに援助受けたく無いからでしょう」 本当に感の鋭い子で、その通りドッキとしたが「そんな事は無いよ」

 それ以上のミーコの追求は無かった、全て解っている子だから、暫く沈黙がありやっと結婚について応へてくれた「結婚、本当なの?」 「あぁ」 暫く考え込む様にしていたが静かな口調で「・・とにかく、良かったわね」・・「何時までも一人いるから、心配していたのよ、私のせいで、結婚が恐くなったのかと思ったわ、....どんな人?」 言い訳しても意味の無い事だと解っていても、何故か俺は言い訳していた「別にミー子のせいではないよ・・・俺の結婚の事、本当によかったと思ってくれるの?」 少し酷な事と思ったが、聞く事で俺の心の決着を着けたかった

ミーコ正面.jpg 美奈子は本当に汚れの無い子だ、今も変ってわいない、俺に話すより美奈子自身に言い聞かす様に 「えぇ、気になっていたのよ、何時までも一人でいて、心配していたの」・・「・・良かった!・・、もう私の事なら、心配しないで、どう考えても、仕方の無い事よ、成るべきして、成ったのよ!」・・「美奈子も解っていたの、私達、あのまま進めば悲惨な破滅の道を進んでいたわ、美奈子は健司さんの性格知っていて甘えていたの、健司さんも解かっていたはずよ」 俺は沈黙を続けた「・・」 美奈子は尚話を続け「美奈子、長い事、気が付かない振りをして、悪い子なの、男と女の生理の違いも解からなく、健司さんを苦しめてしまったわ、もっと早く決断すべきでした、許してくださいね」

 俺は呟く様に「そんな事、ないよ」 美奈子は引き続き静かな口調で「・・だからお互いもう忘れましょうよ..うーん..忘れるなんて、とても無理でしょうが!、..なるべく考えない事にしたの」 俺は何故か悲しくて、やりきれなく黙って聞いていた。

 美奈子は普通の人とは物を見たり、感じたり、考える視点がまるで違うが、教養はかなり高く頭は非常によかったが、何処か危なげで、常識では考えられない、別な星から来た様な不思議な人だ、時として普通の大人より物知りで、俺は理数は得だったが、文学や歴史、芸術、絵画等は全くの苦手で有ったが、質問の度に解かり易く丁寧に教えてくれた。

 だが俺にとっては、純真無垢の子供の様に危なげで、そんな美奈子を俺はとても可愛く好きでたまらなかった、ただ違っていた事は守る愛だけで、女として考え得なかった事だ!..破滅か!俺もそう感じていた、此処で逃げ出してしまう事は、俺にとって、自分を裏切ることで、美奈子をジャングルの中に一人置き去りにしてしまう様でとても出来なかった、そして俺を失う事で、美奈子自信が命を失ってしまうのではないかと恐くもあり、この気持ちを貫く事だけしか見えなくなって、死に向かって進み、もがけばもがくほど、出口が見付からず、この愛は間違っている、ことを認める事も、告げる事も、美奈子を傷付け壊してしまうのでは、ないかと恐くて出来なかった!

 そう云えば以前、美奈子が俺の為に云った事がある、人はどんなに、美しく綺麗な心を求めても、”生きる事自体が醜いの、その為に動物も植物も無残に殺して飢えを満たしいるのよ、しかも、高級霜降り牛やフォワグラなど、人間の都合でビールを与え運動をさせずに育て其れを平気で食べ、しかも、新鮮の物が美味しいと魚など未だピクピク動いている活き造り等美味しそうに食べるのよ、これって、観方によって、物すごく残酷な事でしょう、黴菌も病原菌も全て生きているの、彼等からすれば人間の方が大悪党、それを人間のエゴで敵と勝手に決めつけ、悪い物として殺してしまうの、もっと悪いのは人の生き血をすって金持ちになり、金銀の装飾を付け、その人達がお肉等を得意げに喋りながら食べている口やあの油でギタギタした唇を想像すると、吐き気を覚えるわ”

 人間の都合で神の思し召しと云い、この世に生まれた事、事態がもう罪み深いの、生まれた其の時からこの世の生物は全て戦っているの、矛盾に苦悩しても人は生きる為に大切な動物や植物の命を頂いているの、だから食事は疎かに出来ないの、其の為に心ある人は、外国では食事前に祈り、日本では感謝の気持ちをもって、頂きます、ご馳走様を言うの、全ての人は人ばかりではないわ生物そのものが犠牲で生きていられるの、”運命は残酷なものよ”、と俺を救う為に云ったことがあった

 なおも美奈子は今まで心に溜めていた、思いを語る様におっとりした口調で話始めた 「健司さんに、初めてお逢いした時に、この人は言葉は荒いが今まで誰にも感じた事はなかた優しさと愛を感じ、純粋で真っ直ぐな人と思ったわ、実際そのとうりで、美奈子を理解して、愛して頂けるのは健司さん以外い、いないと思ったの・・うそよ!美奈子解っていたのよ!健司さんを苦しめている事を知っていたわ」・・

 「でも健司さんを失いたくなく、このまま護っていただければ、一緒にいられる、一時はそれで良いのだと思い、最後までこの愛を貫こうと思ったわ、その方が美奈子にとって幸せの事だったから、健司さんに抱かれ見守られて死ねるのなら良いと思ったの、でもね、自然でない愛が、このまま進めば健司さんが耐え切れず崩れてしまい壊れてしまうから、だからこそ、美奈子も凄い葛藤が有ったの」

 そこで言葉を捜す様に暫く沈黙があり 「本当に健司さんを愛しているのなら、健司さんの為に、恐い結末にならない様に、美奈子、身を引いたの」。なおも溜めていた物を吐き出すように静かに話続けた

 美奈子の云う通りだ、美奈子だったら死も厭わないだろう、美奈子自身も俺の為、辛い選択をしたのだ、其の頃の俺は看護疲れと、俺の全てを賭けたレースを捨てる事のジレンマで限界だった、若さ故か、自分の殻らの暗闇に押しつぶされ、方向も変えられず、追い詰められ、出口も見失い、どんな理由があろうと愛し続けるのだと、方向を変える事に嫌悪感を覚え許せなく、何時か俺の弱さ、きっと裏切る事になる、それを思うと死を考えた事もあった、あのまま、進んだら..きっと..

 俺の心を察したのか、美奈子は話題を変え 「軽井沢、空気も綺麗で、夏じめじめしていないの、此処の所、体調安定しているの、それに沢山友達も出来たから、もう、何時までも子供で無いから、・・今、家のお手伝いさんと小さな、喫茶店を開いているの、健司さんを困らせる事はもうしないわ、本当よ、こんなに元ピルケース.jpg気で明るくなったでしょう、..で誰なの?」

 何気なく美奈子の手は胸の薬入れのペンダント(nitro-case 'nitroglycerin')を触っている、当時俺が緊急時に薬が飲める様にプレゼントした物だ、..まだ薬を入れているか解らないが..聞くことも出来なかった..俺との思い出をなるべく考えないか・・・、美奈子らしい答えかも知れない

 ..丁度、刺身定食が出来て来た、何か、ねたが特別の様だ..店の主人「社長さんから伺っていますから」 俺は店主に向かって笑顔を作り「そうですか、ありがとう」 今度は美奈子に向かって「..さー、食べよう・・ミーコが良く知ってる、人だよ」

 「ねー誰なすしjpg.jpgの、心当たり無いわ」 俺は覚悟を決め「先生だよ!」 「先生?」 「ミーコが入院していた時の、鶴見先生だよ」 「ええ!..うそよ!うそでしょ!」 「本当だよ、こんな事、嘘なんか言える訳無いだろう」 「そう言えば、優しい目で、健司さんを見ていたわ、..あの時、病気の私にコンプッレクスがあって何故か、やきもち、かな?、すごく先生と反対の立場に生りたいって」..

 「健司さんに云えなかったの、時々、健司さんに毛布掛けていたわ、優しい人だと、思った、あの人なら、大丈夫よ、健司さんが、何時までも一人で気になっていたのよ..でも驚いたわ!..先生で本当に良かった、安心したわ、先生元気にしていますか?」 やはり、毛布の事、知っていたんだ..美奈子はそんなに考えていたんだ、..それと凄く勘の鋭い子であった、その時から何かを感じ取っていたのかも..「元気だよ、有難う、ミーコと話せて、これで俺、胸の痞えが取れたよ、良かった!」 ..暫く沈黙..

 「さーお寿司、美味しそうだね、頂こうよ、ミーコも食べなさい」 美味しいはずの刺身も、何時ものように、美味しさは、少しも感じなかった、何故か口は渇き、後は無理やり口の中に、押し込むように食べた、美奈子は一切れか二切れ位、食べた様だが、無理に進める事は出来なかった。

 俺は乾ききった喉を潤す為、ゆっくりお茶を飲み、次の言葉を必死に捜した、出た言葉は「ルノワールの絵が好きだったけれど、今も絵描いているの?」 大きく開いた瞳は何処までも深く澄み切り、何か幻想の世界に引き込まれてしまうような、眼差し、現実を忘れてしまいそうで、美奈子の話声が何処か遠くから聞こえて来るようだ..ミーコとの楽しかった、思い出が甦る 「健司さん、どうなさったの!」 「いや、なんでもないよ」 頭の中で思い出が渦巻いていた

 「ええ、最近少しずつ描き始めているわ、・・画廊と言う程のものでは無いですが、お店の2階に飾っているの..でも此れでお別れね!」 「そんな事ないよ、其のうち絵を見に行くから、それと、まだお父さんにはチームとしてスポンサーの事でお世話になるかも知れないよ」

 暫く間をおき、物静かに美奈子は語りかける様に「それは、それよ」・・「健司さニトロケース2.jpgん、お別れに来たんでしょう、..健司さんのいけない処、私の事言っていたけど、私よりナイーブで優し過ぎるのよ、反って、罪作りよ! 世の中には如何にもならない事も有るの」

・・暫く沈黙があり、あの引き込まれる様な目を大きく見開き「私が家を出る前に今の様な話を聞かされたら、きっと絶えられなく健司さんに取り返しの付かない事をしてしまったと思うの、私達はもう会わない方が良いの!、・・もう前の美奈子では無いわ、大丈夫です、先生の為に、そうしなさい、それが、私と健司さんの幸せよ、解っているでしょう!」美奈子はゆっくり、おっとりと俺に理解出来る様に話した、

 確かにそのとうり、何か、美奈子自身に言聞かす様に、凄く強がっている様に思えてならなかった、本当に体大丈夫なのか、まだ薬が必要ではないのか?、いつの間にか、大人になっている!いや、もうずーと前からなのかも!ただ俺が気付かなかっただけかも知れない

 ..俺は心の中で心配はあったが、その通りだよ、あのまま行ったら本当に俺は壊れてしまった、現実に生きているのだ!..今では、ヨシ子を誰より、愛しているよ!そして誰よりも必要で大事な人なんだ!、改めて感じさせられているよ..別れは寂しいものだが、此の異常なくらいの寂しさは、なんなんだ!..本当にかなしいよ..俺は遣る瀬無い気持ちを、俺自身に吐き捨てるように

 「..ああ、解ったよ」 ..荒れ狂う人も、困るが、こんなに優しい人も困る..なじってくれよ..俺が救われたいからか?そんな事の出来る人ではない、勝手だよな..優しさを求め、優しさに、苦しむなんって!

Minako-R.jpg ..何だろう、逢うまでは、沢山々話す事が有ったのに、肝心な時に何も思い浮かばない!、話せば愚なしくなる、頭の中で思い出が空回りして、焦るばかりだ、よく体が弱く俺に何もして上げられないと嘆いて、”悲しい顔でいるミーコを後ろから良く其のたびに抱き締め、慰めたものだ”当時の事が、甦る!  二人の会話は沈黙が多く途切れ途切れで有ったが、二人には通じ合っていた

 大丈夫と言ってはいるが、未だに心配なってしまう、割り切る時が来たのだ..息苦しい沈黙が暫く続いた..心残りで有ったが..

 「それじゃぁー、まだ時間あるから、俺達のレーシング・スクールの事務所に、寄って、帰るから」 ..なんで、こんな説明しているのだろう、俺が何処に行こうが、もう何の意味も無いのに?..俺は立ち上がり..

 「お父さんには、本当に自分勝手な事をして、申し訳ないと、伝えて下さい」・・「其れにお母さん元気ですか?」 「はい、元気にしています」 「お母さんにも宜しく伝えて下さい、それじゃぁ」俺は手を出して、握手を求めた、応えるように立ち上がり、両手で俺の手を握り締め「健司さんも、お元気で..お母様にも宜しく伝えて下さい」 「あぁ、それじゃぁ!」俺は頭を小さく立てに振り応えた..そのまま何も語らず暫く目を見詰会い、色々有ったがもう、いいのよと言っている様であった..

 美奈子はは目を伏せ、消え入る様な声で「さーぁ、行きなさい」 其れは、そうする事しか出来なかった俺を、許したのか、悲しくなるからか、その言葉の意味は解らなかった、俺自身答えを出したくなかった事が本音、本当は"今まで俺の方が助けられていた"のかも 「あぁ.. 」ただ頭を小さく立てに振った、 余りにも静かな別れ、言い知れぬ、悲しみだけが、残った

 何故か、さようなら、は二人とも、口には出さなかった 俺は一度も後ろを振り返らず、寿司屋を出た、涙が出そうで振り返れなかった、それだけでは無かったもし振り返ってしまったのなら、ダムが崩壊する様に全てが壊れてしまう、美奈子にしてもそうだろう..’ミーコ’はどんな顔をして、私を見送っているのだろう..解っていたが、どうにも、悲しいたまらないよ、クソ!悲しくて悲しくてやり切れないよ!

 駐車場に戻り車に乗り込んだがこのまま、真っ直ぐチームの事務所に行くのは苦し過ぎた、乗り込んだ車を降りて、車はそのまま駐車場に置き電車で気を紛らせ、訪ねる事にした、東京駅の人混みの中、俺は一層孤独と悲しみを覚え、電車の中のすまし顔で乗っている人々は、何も苦しみも悲しみも楽しみも無い能面に見えた、いや能面の方が表情がある、この人達には、其々の人生がる、何を思って生きているのだろうか?中には最愛の人を亡くした悲しみを背負った人もいるのだろうか?、

 錦糸町の駅から、ゆっくり人々や商品の飾りウインドーを見ながら歩いてレーシングチーム事務所を訪ねた、沈んだ気分を取り除くために大きく息を吸い込み気持ちを整え、ドアを押した

 明るさを装い「ヨォ!、この前は、有難う!」 パソコンに向かい難しい顔の久美ちゃん「あら、龍崎さん、如何したのですか?」 俺は寂しさを打ち消すために「可愛い久美ちゃんに会えなくて寂しくて会いに来たんだよ、慰めてくれる」 パソコンの手を止めた久美ちゃん、俺の顔を伺うように「またぁー、冗談を!慰められたいのは私ではないでしょう!」 俺は作り笑いで、質問を無視て「監督は?スポンサーの事で、少し話が」 久美ちゃん、席を立ち「監督、今奥で、生徒にランセンス習得の講習やっているの、後2,30分で終わりますから..今コーヒー入れます」

 俺は事務所のカウンターのドアーを押し開け、コーヒーを入れに立った久美ちゃんの後を追いながら、「孝ちゃんや井原君は?」 「スクールの練習用レースカーのメンテナンスに富士なの」 続いて矢継ぎ早に「竹田君は?」 暫くして此方を向き「はい、コーヒー・・・、竹田ですか・・教室、中で監督の手伝い」何処か事務的で、冷たく応えた

 まったく!俺は人の心配している場合かよ!心の中で思いながらも「有難う、それで、どうなの、仲良くしている?」 少し暗い顔を作り久美ちゃんは声を落とし「それが..まだハッキリしないの、影で彼女に未だ会っているような?、彼には、内緒よ」 「俺はなんとも言えないよ、此れから先は、久美ちゃんが決める事だよ、自分の人生だから」 「ええ、私も解からなく、なって」 「今、彼はこんな、華やかで、刺激的な世界に入り、目移りして居るのかも、何て云って良いか解らないが、自分を見失っているのかも、何時かわ気付くと思うが、それでは久美ちゃんが可愛そうだね、今俺が言っても、解らんと思うよ..如何したものか誰か他に良い人、居ないの?」

 「ええ、いないわ」 「此れは、危険な賭けだけれど、他に誰か居る様なそぶりしたら、..でもこれ幸いに、逃げられる可能性が大きいよね、俺にも判らないよ」 「辞めときます、リュウさん責任取ってくれるなら..もう暫く様子見ます」 「ビックリさせるなよ!本当難しいな」 今度は少しすねた様に「結婚早々で冗談ですよ!今日の龍崎さん、何か違う!如何かしたんですか?」 やはり、美奈子との別れが何処かに出ているのか?「別に、何も無いよ」 慌ててコーヒーを口にした

 どうやら、B-ランセンス(JAF公認)のペーパー講習が終わったようだ、未来のレーサー達が十人位、ザワザワ話をしながら出てきた、中には、俺を知っている者がいて「龍崎さんですね優勝おめでとう御座います」 「あぁ、ありがとう」 イストラクターの森田君と営業の竹田君が話しながら此方に来る、竹田君「あ、龍崎さん、如何したのですか?」 「お前の事が心配で、レースクイーンに目移りしていると思ってな」 竹田くんテレ笑いしながら「リュウさん!キツイッス!冗談でしょう!監督中にいますよ」 俺は教室の中に入り、監督に声を掛けた「監督!先日は支払い有難う御座います」 「おう!リュウどうした?」

北原 監督どした.jpg 「今日、俺のスポンサーの処に行って来ました、俺今期限りでドライブ辞める事、了解を得てきました、其れで来期からの相談改めて伺う事でお願いして来ましたから」 監督、大きなガラス窓越しの外のビルや景色をボンヤリ眺めながら「そうだよな、あの会社、前の奥さんの処だからな、大口のスポンサー失ったか、冗談だよ!ご苦労さん、何れ挨拶に伺う予定だった」 「勝手にすみませんでした」 「いいんだ!あれはリュウ個人のスポンサー、苦いおもいで、獲得した物だからな」 暫くの沈黙の後監督「リュウ!酷な事だがチームの為に又一緒に行ってくれるか?スクールも苦しいからな」 俺は予想した通り「....はい、スクールのチームとしてなら一応話はしましたが、しかし、どうなるか解かりませんよ、保障は出来ません、それでよかったら、その時は連絡下さい」 頷きながら「何れチームとしてお礼の挨拶をしなければ」

 やはり険しいかをしていたのか、監督の後ろにいた、森田君、気をきかし言葉を挟んだ「龍崎さん、今度走りますから、教えに来て下さいよ」 「そうだな、結婚式済むまでは忙しいから、その後だな」 「お願いします」 事務室に戻りながら、監督は後ろに従って来た森田に手を差し伸べ俺に向かって「今度、此方の森田君をGTレースに出場させようと考えているんだ」 「F.Jの前に、いいんじゃないですか、それとスクールのレースで生徒の成績の良い者、スクールの年間チャンピオンから、ビックレースに出場出来る様にしたら、生徒達も励みになり、希望が持てますよ、誰かもう一人事務員企画担当を入れたら良いのでは?

 監督空かさず「いい考えだ、リュウ、企画立てて見てよ」 「俺がですか?..横須賀基地、本業になるから、もう今までの様に休めません、何時になるか解りませんよ」 監督「生徒、集めるのに良い企画だよ!軌道に乗ったら人を入れるから、当分リュウの休みの時だけでいいから、必要な時は連絡に久美ちゃんを使ってくれ、頼むよ!..なー久美ちゃん、良いだろう」 監督..人の使い方上手いよ、経営者に向いているな

 久美ちゃん、何故か嬉しそうに「はい、解りました、リュウさん何時でも、言って下さい」 「まったく!監督!何時になるか解りませんよ」 監督俺の肩に手を沿え「リュウは、良いアイデア一杯持っているから、今年中でよいから、やってくれよ!」背中をポンと叩いた 「まあ、何時もうわまま、聞いて頂いていますから、少しは」 「まぁー、他のスポンサーの件も有るから、此れからも、頼むよ」..雑談の後

 チーム事務所を出、錦糸町から東京駅へ戻り社長とミーコの顔を思い浮かべ、ビルを眺めながら、もう此処には、あまり来られないな、そんな思いで、駐車場に向かった  流石に、今日はそのまま直ぐに家に戻り、ヨシ子に話しをする事が出来ない心境で、この言い知れぬ寂しさを、一人心を鎮めたかった

森戸海岸.jpg 誰にも逢いたくは無く、首都高にて横浜を過ぎ鎌倉をへて海岸沿いに、逗子を過ぎ、葉山の森戸海岸まで来ていた 砂浜につながる岩場に腰を下ろし、風も無く、しばらく静かに波打つ渚に耳を傾けた、俺の心に、どんなに嵐が起こり荒れ狂おうが、自然や世間は何も変らない、何時かこの日が来る事を分っていたが寂しい、ぼんやり一時間以上だろう時を過したレースの事も美奈子の事も、其の上ヨシ子まで目的の為に沢山の物や人を犠牲にして、価値があるのか?以前の俺は考えもしなかった事だ、束縛されない自由な気持ちを求め自分の事意外は興味も関心なかたのに

夕日.jpg これまで、全て犠牲にし守ってきた物がと言えば語弊があるが、自分の好きな事の為にしてきた事だが、俺にとって意味が有るのか?、今まで何も感じなかった事に大切な意味があり、家庭を作り、此れからの生活が重要な事に気が付いたのか?そんな振りをしなければ乗り越えられないのか?他の人達も同じ苦い味わいをしてきたのか?俺だけは違うと思い込んでいたのに、全て無意味な時を過したのか!

 俺は運命を乗り越え、変えてきたつもりであったが、何も変ってはいない、自分の選択を超えた、何か”宿業”とでも云うのか、それも運命なのか?いつの間にか引きずり込まれてしまう、人はどうやって、この悲しみを乗越え次に進んで行くのか?俺はこの気持ちをどう処理したら、何処に収めるのか?理屈では何の解決にもならない、人間とは厄介な物だ、いや俺自身が厄介な人かも知れない、俺は生かされているのではなく、自分の意思で生きていたい!

 何処からか、流されてきた汀の枯れ葉が、夕日に照らされ、波間に揉みくしゃにされ、俺の目の前で岩に当たりながら行ったり来たりしている、この世に俺の生きて来た足跡や存在さえ否定され、感傷的になっている俺には物の哀れを感じる、木の葉が青々と成長している時は希望に溢れ、突然の嵐に散ってしまった、その葉達はその役目に終わりも告げられず、どんなに逆らっても流されてしまう、枯れ葉が川に流され、あちこちの岩にあたり、急流に飲み込まれ、渦の中で翻弄され、岸辺に留まっても、何れ大海原に流され朽ち果ててしまう、あの一枚の枯れ葉が俺だと言うのか!それを運命と決めてしまうのか?

 何時か時が鎮めてくれるのか?俺の目指し求めた物が崩れ目的を失ってしまった、今までの全てが虚空の中に引き込まれていまう恐怖、もう這い上がる事も出来ない巨大なブラックホールに吸い込まれ押しつぶされ光まで失ってしまった、俺にとっては、敗北以外何物でもない!

 勝手なもので自分が落ち込んでいる時だけ、考えてしまう、この宇宙で、地球とは、人の感情や心に関わらず無常に自然の営みが行われている、其の中での人とは?何の役割があるのか?海斗の事を、一つ採っても、俺には如何する事も出来ない、なんて不条理か何か意味が有るのか?又進むべき道を失ってしまった!

 それともヨシ子の云うとうり、愛は全ての物を特別なものに変えてしまうのか?ヨシ子は..”私に採って、リュウは最も必要で特別なぞんざいよ”だから、与えられた時間を大切に..そしてそれと同じように全ての存在に意味が有るのよ、と云ったが、俺って、いったいなんなんだ!本当に何の意味があるのだ!全てが無意味に思える時がある、人はこんな時、勝手に神を作り上げ、勝手に恨んでしまう者なのか?ましてや神など信じていない、この俺が!救いを求めしまう

 誰か教えてくれよ!運命に身を任せる気は無いが、運命に逆らう事も出来ないのか!ヨシ子が云ったとうり愛情は人を特別な存在に変える、ヨシ子に出合った事で運命が変ってしまった事も事実だ! そしてヨシ子はこんな事も”リュウ、神は宇宙の何処かにいる者ではないわ、其々の人の心の中に生まれるものなのよ、それは人々の願いが創り出した者なの”そこを見失わないで..本当にそんな簡単な事まで見失ってしまいそうだ!ヨシ子は生かされていると云ったが、俺は此処に生きている実感が欲しい!、カーレースを失った俺に、これから何んの実感が得られるのだ!

 暗黒の無の世界に何故か解らぬガスの粒子が集まり、やがて巨大に圧しくされ耐え切れず大爆発(ビクバーン)を起し此の宇宙が出来、何千何万億年の時をへて、一つの星に水を与え、それは美しく青く輝き、命に限りある生物を誕生させ、以来、その目的が何か解らぬままに、全ての生物が競い争って辺りを傷つけ生き残ろうとし、無常の自然に命を奪われ様とも、それでも飽き足らず子孫を作ってまで生き延びようとしている、その為に、仲間を作り、他の家庭やグループを見方にして、国を作り、又他の危険要因な生物や同胞までを裏切り排除する、それも自然が破壊する、それが現実だ!そうまでして生きる意義はなんなんだ!神など人の都合で作りだした幻の産物だ!

 そう思いながら、生きている実感が欲しいだと!、矛盾だらけだ、俺の弱さなのか!何かに、救いを求めている!それが神か?俺の価値とは何だ!人が生死を掛けた軍鶏や闘牛の戦いに歓喜する様に、愚かな人間の破滅への醜い戦いを何処かで楽しみ、全てを奪い去る事が神の目的か?自然にとって、人間の善悪は無関係、一番自然を破壊する、人間は失敗作で有ったのかも知れない、それとも、宇宙をも変える、ぞんざいなのか?一体、人間って!俺はなんなんだ!、何の為に此の星にいるのだ、本当に何か意味が有るのか?悲しいかなこれが生物の生命体の宿命なのか!

裕次郎灯台.jpg 俺にとって大きな夢を失ったが、愛にトキメキ、愛を見つけ、情熱的で、かけがいのない愛、ヨシ子を心から愛し、もう失う事など出来ない、そして、命の尊さを海斗を通して教えられ、愛する人を悲しませる事など出来ない!、..出会い、結婚、ありふれた家庭を作る事、これが運命なのか? 子供の誕生、時々神秘の衣に包まれる、急ぎ過ぎたのか?俺は一体如何すれば良かったのか?やはり、俺は、流されて生きる事は苦痛だ!生甲斐、生きている、実感、証拠が欲しい!

 日も暮れ辺りを紅に染め初め、黄金に変る、その変り行く海の美しさに見入っていた、美し過ぎる光景もやがて茜色変わり終止符がくる!意味も無く、涙がこぼれそうになる..目の前の波打際の砂浜を恋人らしき若い男女が、移り変る夕焼けに(ワァー凄い!綺麗!ねー見て見て綺麗でしょう)感動の声を上げ、楽しそうに通り過ぎる、なぜか、いっそう、空しく遣る瀬無くなる!

R & Y 膝枕2.jpg やがて、辺りも薄暗くなり始めた、何処からか?ヨシ子の声が聞こえて、顔が浮かぶ、今は、ただヨシ子の胸の中で眠りたい、....”リュウ膝枕する!そんな顔して、如何したの?”..ヨシ子が笑顔で語りかける、そんなフレーズが思い浮かぶ..俺は心で呟き「何時まで引きずっているのだ!駄目な俺、さーぁ、帰ろう!..あまり遅くなり心配させてはいけない」 家路に着くことにした、やはり、カーレースから中々離れられないな

 あんなに、ヨシ子に会いたく、安らぎの家なのに、何故か今日に限って重苦しく、足を踏み込む事を躊躇ったが、誰よりも心配しているヨシ子に一部始終、全てを隠さず報告した、..家事をしたり勉強している時のヨシ子は、何時もポニーテールにしている、その髪をなびかせ、振り返り「遅いから、心配したわ!」 「うん」 「それで、美奈子さんにも、会えたのですね」 「あぁ、偶然ね、でもちゃんと、ヨシ子と結婚の事も話して来たよ、大分元気で安心したよ」 ヨシ子俺を何時もの優しい目で見詰め「そうですか」 ヨシ子が、何を感じ何を思っているか解らないが美奈子に関しては、俺に気使ってか、それ以上の質問も意見も、一切触れなかった

 しばらく沈黙の後「スクールの企画ね、やって見たらどう?、何か次の目標が見付かるかも、知れないわよ、其れだけでは無いわ、リュウの今まで車での知識、生かせるでしょう」 「うん、そうだね」 「私、スクールの教科書、見たんだけれど、素人でも、もっと確りした、物が有った方が良いと思いましたよ」

 「スクール立ち上げたばかり、殆んど、監督一人でが創り上げた見たいだよ、..あんなに短い間にヨシ子は良く見ているね、凄いよ、経営アドバイザーになれるね」 「そんな事ないわよ、ただ、リュウなら車に関して、経験も豊富だから生かせると思って」 「そうだね、考えて見るよ、ただ、俺、のめり込むタイプだから、迷惑掛けると思うよ」

 ヨシ子は此方に向き直り「やっと解ったわ!リュウを好きになった理由、貴方が誰の邪魔も払いのけ自由に何かの目的に取り組んでいる、あの生き生きした行動と目が好きだったのね!他の若者達には無い物をリュウから感じたのよ」 「今の俺、何もないよ、皆と同じだね」 「だから、スクールの企画、初めて見たら」 「うん、やって見ようかな」

YOSHIKO2.jpg 本を手元に置いたヨシ子を見て「そういえば、俺の事より、ヨシ子の心理学の勉強の方は順調なの?、自分の事で一杯で、聞いても解らないけど、何も聞いてやらないでごめん」 「大丈夫よ、でも此れほど難しいとわ、思わなかったわ、一つの物に単純に、当てはめられる物では無いから、学べは学ぶ程、考えさせられ、意味深い物なの、学んだ事をどの様に生かすか、携わる人の理解度も有るが人としての経験も有ると思うし、最近直ぐに、薬に頼る傾向に在るけど、もっと心のケヤーをする必要が有ると思うわ」

 「だろね、人の心理は複雑だよ、其れをデーターを集め当てはめているだけ、素晴しい先生との違いは、分析力と経験、応用力、其処だと思うよ、レースだってそうだよ、セオーリ、道理だけじゃ勝てないよ、レースコースの変化、設置場所、マシーンの状態、タイヤの磨耗、気候、温度、対戦レーサーの心理、一つの物でも此れだけ診方があるよ、増してや人に到っては色々な複雑なケース、環境や境遇、体験を経験しての総合的、判断だよ、精神的問題は特にそうだと思うし、何でも知れば知るほど、奥深いと思うよ」

 「リュウは実際に、レース体験しているし、その通りだね、説得力あるわよ、私もそうだけれど、女性は特に単一思考になり易い処が有るから、簡単に決め付ける事は出来ないわ、薬で一時的に抑えても、反って心の反発が強くなる場合もあり、心の奥底に触れる事はなかなか難しいわ、リュウに、こんなアドバイス受けると思わなかったわ」・・「ただカー・レースでは人を追い詰めてる事でしょうが、それが正しいからと、とことん人を追い詰めては、逃げ道も与えなければ、だめよ、前にも云いましたがリュウ自身もそうよ、それが自分をも追い詰める事になるのよ」 もっともだと思った「うん、そうだよね、痛い所付くよね!」 美奈子にも言われたばかりだ、たぶん、頭の良い専門家が何人も集まり何年も研究し分析しテストを繰り返した事だろう、納得出来る所も沢山ある、ヨシ子は理論で語りあったら、たぶん俺を簡単に負かすだろう、だが決して理論を振りまわさず偉ぶらず、素直に聞いてくれる俺の好きな処だ

 「ごめん、少し気になったから、リュウ一人だって子供と言うか青年みたいな良い所有るし、反面、頼れるし、未知で不思議な処があり其れだけでも、解らないのにね、アハッハァ!本当に難しいね」 「俺なんか単純だよ、ヨシ子のオッパイだけあれば、其れで幸せだよ、それが解っただけでも、進歩だね」 笑顔で「オッパイだけ!人格は無いの?オッパイに顔でも描こうかしら..分っているわ、でも、ほかの人のオッパイに、のめり込んでは駄目よ、毒に当たるわよ」 「オッパイに顔!面白い事云うね」 「だって、リュウは人格無視の様な事云うから」 「それだけじゃぁ無いに決まっているでしょう、本当に毒に当たるのかな~?恐いね!」 ヨシ子「本当よ、恐いよー、ウフフゥ体中にアレルギーが出るから大変よ!・・それでね、赤ちゃんは母親からのオッパイで免疫をむらい受け強くなっていくのよ」

 「あぁ其れで、俺もヨシ子のオッパイから免疫むらっているんだ!」 「私もリュウからの免疫頂いたから、多少の事、大丈夫になったわ」 「ヨシ子は確かに、以前はこんな事云なかったのにね..変わったね、その方がもっと好きだよ」

 ヨシ子「角が取れたかなーって思ってる?冗談はともかくゼミや勉強会は部長が理解有るから、スケジュウル、上手く組んで頂いているの、..患者さんが最近よく言うのよ、”先生、結婚してから、優しく、やわらかく、なりましたよ!” だって、此れもリュウの影響かな」 「俺の影響か?ヨシ子は自分に厳しいから、知らない人は冷たく感じるかも、俺も初めは冷たく感じたよ、でも良く話を聞く内に、優しい人だなって思ったよ、だから好きになったの」

 「本当に?嬉しいわ!、私達、医者は大勢の患者を扱っているうちに麻痺してしまい、余り個々には、聞いて上げられない、時もあるの、ましてや、大学病院では責任も分散されてしまうの、でもそれではいけないの、この頃、心理学の影響もあるけど、患者にとっては、病気を治す為とは言えどんな手術であっても、体を傷を付ける事になるし、かけがいのない命、人によっては冗談みたいに誤魔化していても、本人にとっては、本当に恐ろしい事、そうしたことも受け留められるようになったし、これらは教科書では得られない事ですね、リュウが色々な人と会わしてくれたから」

 「そうだよ、柄が悪くて、話す事が下品な人も、親しみからで、凄く心が優しい人も沢山いるよ、水の中に入らず、水泳を教える様な物ではね」 「ええ、少しずつ、解ってきたわ、頭だけではなく、皮膚感覚や体験、も重要ね」 「先ずは、相談者が本当に心を開いて居なければ、なかなか掴みずらいよ」 ヨシ子「人間の心理って不思議よね、病院に来ているのに、痛みや病気を隠し検査を受けたがらない人、やたら病気にしてしまい、思い込む人、本当に難しいわ、本当にリュウって、急に立派事言って大人なのか、頭が良いのか、全然子供の様な処があり解らない人ね、だから好きなのかな?」

 ・・「ねー、リュウにシリアス(serious)に尋ねたいけど」 「改まって、なに?」 「もし私が癌等で、リュウの大好きなオッパイ無くしてしまっても、変らず愛してくれる?」 「なに言ってるの?ありえないよ」 「将来、何が有るか分らないわよ、真剣に考えてみて」 「そりゃービックリして驚くよ、初めは、とまどうけれど、それで命が助かるなら、その方を選ぶよ」 「そうではないの、そんな一般的答えは要らないの、其の後同じ様に愛せるの?」 「だから、初めは戸惑うといったでしょ、ヨシ子を失うより良いよ、ヨシ子はオッパイだけじゃないよ、一番解っているでしょう」 「でも、実際にそうなったら」

 「いい加減にしてよ、俺が変わるとでも、云いたいの!それよりヨシ子自身の問題でしょう、現実を確り受け止めて、それでも誰よりも凄く女で、いようと思うヨシ子で、変らず女性でいてくれたら、乗り越える方法はいっぱい、あるよ!そんな傷位でヨシ子みたいな良い女が変わる者じゃないよ、前にヨシ子が言っていたでしょう」 「そんなにおだてないでよ、・・たぶんリュウなら”人のせいばかりにしないで、自分の生き方や考え方もあるのよってね”、リュウがそう云うって解っていたわ、確かめたかったの、これで患者さんに向き合えるわ」 「おだて、じゃぁないよ、本当にそう思っているよ」 「ごめん、ありがとう」 ・・ヨシ子の事だ!もしかして俺に傷ばかり舐めていないで、次に進みなさい、早くきずきなさいと間接的に云っているのかも、・・

 「最近よく、夜遅くまで、勉強しているから、病院の仕事、休みでも、呼び出しが有るし、夜中でも行かなければならないし大事な体、気を付けてよ」 「何時もリュウに送って頂き助かるわ、今の病院、此れでも女性に優しい方よ」 「妊婦の休暇は無いの?」 「病気では無いのよ、動ける内は、動いた方が良いの、リュウは心配症ね、大丈夫よ、時期が来たら休まして頂ますから」 「ようやく、二人少し静かにいられるね」 「本当ね、少しゆっくりしましょうね」

  「何か格調の高いゆったりした音楽聴くと、お腹の赤ちゃんに、良いんだって」 「そうですよ!リュウは子供の事になると、夢中ね、フフ、私もかまって欲しいわ」 「俺の方が云いたいよ、ヨシ子は勉強ばかり、たまには、俺をかまって!って、..本当、冗談では無く体の為に少しは休みなさいよ!」

 ヨシ子は本から目を離し向きを変え、俺を見詰めながら「はい、ありがとう..処で美奈子さん、心臓の方は、どうなの?」 やはり、医師として気になるのだろう 「軽井沢の気候が良いから、大丈夫の様な事、言っていたよ、あまり、詳しくは」

 ヨシ子は椅子から立ち上がり、俺の目を真っ直ぐ真剣な眼差しで見詰め「そうですか、そろそろ本題に入りましょう!、リュウ、もうお互い避けては、通れませんね、ハッキリ云うは、美奈子さんの事とスポンサーの件、私の立場を考え、本当はリュウが一番心苦しく許せない問題、心が束縛され、何時も心に残って、晴れ晴れした気持ちを味わえない事、それでも、リュウに取ってレースが全て、今もって不完全燃焼である事、痛いほど解っていたの」

..「だから、いけないと思いなが本当に、これで良いのかって?リュウに何回も聞いたのよ、それが反って苦しめる事も知っていたわ、ビジネスだからと割り切れない理由がリュウにはあるのよね」..「リュウに..”じゃぁ俺は如何すれば良いんだよ!”て聴かれても、私、応えられないが、リュウもハッキリする時期ですよ

 そうーね、例えは違いますが、私達、医師も全ての患者、助けられる事が、出来ないのよ、私、気持ちでは解っていても、初めは凄く空しく敗北感を覚えたわ、他の優秀な医師だったらって、私だってリュウの考えや悩んだ事、私も考えたわ、人は何の為に生きているのか?皆突き当たる事よ、雄大な自然の前では皆無力なのよ、世間の皆、もっともらしい理由など言うけれど誰も明快な答えなど無いのよ、それが本当の処だと思うの、リュウも今回そうだと思うわ、でもねリュウは、私に云ったでしょう、出来る事をやればいいって!、自分の事になると、判らなくなるのね」

Yoshiko3.jpg 「くどい様だけど本当に、このまま二人の為に進めて良いの?..リュウ!貴方がどんなに平常心を装っても、私には痛いほど解るの、リュウの夢を壊したくないと云いながら、かえって、私、辛いのよ、私の為に犠牲になってリュウの自由を奪っているのよね!リュウがどんなに苦しんでいるか!私、解っているわ!私、リュウの誰にも束縛されない、伸び伸びと輝いている、そんな生き方と姿が大好きだったのに、私自身が壊してしまうなんて!思いも寄らなかったわ、

 だからなお更辛いの!リュウ優等生ぶらないでよ!あの逗子の海岸で初めて私に話した時の様に、あの自信に溢れたリュウは何処に行ったの!私に何もかもぶっつけてよ!私も一緒に泣く事しか出来ませんがね、あの時のリュウの方が人間的で好きだったわ!..またリュウが迷い悩んだ、あの時、”チームを変りなさい”って云えば良かったの?」

リュウ正面1.jpg 「なに云っているの!そんな事、出来るわけないだろう!」 「そうよね、リュウはもっと、傷つくわね」 「じゃぁ!もし俺と別れてくれと云ったら、如何するの!」 「そんな事、いやよ!出来るわけ無いわ!たとえ子供が出来ていなくても、別れる事など出来ないわよ..リュウのぬくもりを知った今、出来るわけないでしょう」

 「俺だって、そうだよ!、沢山悩んだよヨシ子と出会無かったら違った道が有ったのかって?、俺はね、みなと未来のラウンドマークタワーでヨシ子に遇った時、初めてレース以外の事が、如何しようもなく気になったんだ!もう、ヨシ子のいない、生活なんて、考えられないよ!本当にいいんだよ、全て終わったんだよ、考えてみれば、美奈子さんが、病気になった時に、俺のレース人生は終わっていたのだよ、仮にヨシ子に遇わなくても、いや、ヨシ子に遇って、どれだけ救われたか!」

 「リュウ、もういいのよ、貴方は大バカよ、正直になって!私の為に何も云えないのよ、だからと云って私から別れることなど出来ないわ、私どうしてよいか分らないし、如何する事も出来ないのよ!」 「それって、俺に決めろとでも云いたいの!」 「そうよ!後々私や子供の為に犠牲になったって云はれたく無いの、もともとリュウには家庭を作る事、早かったのよ!それで何時か二人が駄目になるのよ、私、リュウの事になると、冷静でいられないの、カウンセリングの勉強しても、リュウに関しては、何んにもならないね」

 「そうだよ!ヨシ子のせいだ!って云えばいいの?それで全てを失えば、いいの?確かにヨシ子だったら、俺など充てにしなくても一人で子供を育ていけるだろうよ、でも、そんな馬鹿げた事、出来るわけ無いだろう、男は正直、子供の事は、生まれて一緒に育て初めて愛情が湧くものだと思うよ、本当に子供を持つ実感、余り無いよ、でもね、ヨシ子と付き合い始めた頃、セックスと子供に就いて話してくれたから、そんなに無責任じゃあないよ、だから、話した事が全てだよ、そんな事とは別だよ」   

 ヨシ子は俺の顔を覗き込む様にして「リュウそれと私達の事とは違うのよ、リュウがそんな無責任と思ってもいないわよ、だからこそ云うのよ、それだったら、こんなにリュウが悩む訳ないでしょう、私が子供を望んだ事よ、ただリュウの夢壊したくないから」

 「その事は、誰のせいでも無いよ、俺の中で、もう望みが無い事は痛いほど解っていたよ、みんな俺が招いた事、もう、とっくにレース諦めていたのに、何処かで何とかならないかと、俺の未練、せめて国内だけでもと思ったから、前にも云ったと思うが、たった一回位の優勝では誰も認めないよ、例え年間チャンピオンになったて、如何にもならないよ、スターに成るには、レーサーは才能、実力が有って当然、後はお金と凄腕のマネージャー、それに人の持つ運だよ、其れが全部揃はなければ駄目だよ、本当に一握りの人に与えられものなの、せめて自己満足の為だよ

 それより、心から安らぎを感じられ、どんな俺でも、受け止めてくれるヨシ子に出会えた事、本当に俺の救いになったよ、..これからもだよ、ただ!レース一筋に十年以上、生きて来たのだよ、それだけ思い入れも有り、切り替えるには時間が必要だよ」 ヨシ子は険しい目を向け「自己満足の為?全部うそよ!夢を追って輝いていたのに、..そんな貴方が好きなのに..私自身が壊してしまう事になるなんて!」 俺は答えが見付からなかった「・・・・」 暫く沈黙が続いた後で、ヨシ子が口火を切った「思う様に成らない物ね、解かったわ、もう本当に二度と云いません、本当に、それでいいのですね」

 ヨシ子も俺れ以上に悩んで来た結果だろう、この一緒に泣くの一言が、俺の心に響き沁み込んだ、何時でも、苦しみも、痛みも、悲しみも、喜びも、全て貴方と一緒よと俺に伝えている、

 俺の心の動きを全て感じ取って、ヨシ子と付き合い初めの頃、”美奈子さんに会って来なさい”の言葉を思い出す、スポンサーの件も含め、俺の性格を知り、どれだけ悩みレースを辞める事にしたか本当に良く理解している、俺が今回決着を付けたことで、どれだけ気が楽になり自分自身で居られる事か、反面、常に中途半端で燃え尽きたという実感がない事を良く知っていていたのです、改めてヨシ子は俺を心から理解し俺を守ろうとしていた事に触れた思いでした、

 俺は全ての思いを断ち切る思いもあって「迷いながらレースしても良い結果が生まれないよ、それより危険だよ!、何れ、この時が来るんだよ!其れだったら、早く切り替えた方が、横須賀基地の仕事、今は必要で望まれているから、これで本当に良いんだよ!これで次に進めるよ、..俺はね、何が有ってもヨシ子とお腹の赤ちゃん失う事など出来ないよ、今までヨシ子に肩身の狭い思いかけていたね」

 ヨシ子は優しく俺を見つめ、ゆっくりあゆみより 「そんな事は無いわ、リュウは私に決してそんな事、少しも感じさせなかったから、..リュウは本当にバカよ、優しいね、そんなに想われていて嬉しいわ!私もよ、リュウを失うことなど..絶対出来ない!」 解った、と言う意味だろう、ウン々と背に廻した手で二度ほど軽く叩いて、俺を優しく受け止め 「リュウ、夕食も取らないで!お腹空いているんでしょう?」

 俺は何も云はずに、ヨシ子の胸に小刻みに幾度となく頭を打ち付ける様に押し付けた、ヨシ子も黙ったまま、俺の背中に腕をまわし抱き締め「本当にいいの?リュウの後悔の無いように、好きな道を選びなさい、死んでいるリュウなんか見たくは無いわ」 ヨシ子は誰かの力を借りなくても一人で生きていける人だ、どんな気持ちで言ってるか、俺には痛いほど解っている、これが絆だろうか?

 どれくらい、時が過ぎたのだろう、こんなに安心出来る処が他にはない、ヨシ子を失う事など何が有ろうが絶対に出来ない、俺は目の前の大事な幸せが見えなくなって見失う所だった、俺は呟くように「もう大丈夫だよ」 ヨシ子の目にも涙が光って見えた「うん..いいのね、さぁー手を洗って来なさい、直ぐに支度するからね」

 ヨシ子は口にはしなかったが美奈子の事も含めての事だろう、俺は思い出したように 「如何して、お腹空いている事、判るの」 ヨシ子は俺に感ずかれない様に急いで後を向き涙を拭き取り「其れくらい解かるわよ、リュウの全てって云ったでしょう、リュウは連絡もしないで、勝手にしないから、私も待っていたのよ、食事、温め直すからね」 俺はその場の雰囲気で 「ごめん」 と云った、その何でも無い様な会話に安らぎを覚えた

 夕食後、二人はどちらかでもなく散歩に行こうと、連れ立って手を確り握り合い、月明かりの、海の公園を言葉少なく寄り添いながら散歩する、呼吸に合わせた様に渚の音が静かに響く、俺は改めて実感する ”このやすらぎだ” 想わずヨシ子を引き寄せ抱締めたヨシ子も無言で応じてくれた

 俺はこの安らぎを求めいたのに、不思議で厄介なものだ、幸せの中にどっぷり浸かり当り前になってしまう事を何処かで弧絶しているのか、何故かこの安らぎの中で安穏している事に不安で恐くなっていた、俺の戦う本能が、この幸せを壊してしまうのか?

 ヨシ子は俺の不安を察したのか 「リュウ..私はリュウを縛り付け様とは思っていないわ、本当にリュウの進みたい道に進んで欲しいの、でもね互いに休める場所が有る事が大切な事と思っているの、私だってリュウに甘えたい時も、助けて戴きたい時もあるのよ」 「うん・・・全部を得られる事なんか、無いよ何か上手くいかないね」 

 八景島の柔らかな月明かりに微かに浮かぶ渚に、二人のシルエットが揺らぎながら微かに浮び上がらせては消える、何か幸せの風が漂ているかのように、..其の後、静かな穏やかな一週間が過ぎ、結婚式を迎えた

        ストーリ【Story前編10】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2007-06-06是非お読み下さる事お願い致します


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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編10】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

 ☆=ストーリ【Story9】からの続きです、是非下欄【Story前編10】をお読み下さい=☆

  《結婚式-ウエディング・セレモニー》

 ヨシ子は前日はエステに、家に帰ってから「ねー、私、リュウは旅行、箱根って云っていたけれど、レースの事故の時にリュウが夢で見た信州の蓼科に行って見たいの、いいでしょう?」 「俺は何処でもかまわないよ」 「リュウが印象深く思った所、きっともっとリュウを理解出来ると思うから、リュウだって懐かしいでしょう、其処に決めましょうよ」

 「でもこれ以上俺を知ったら、がっかりするよ」 「そうかな?もっと素敵な処見付かる気がする」 「じゃぁ、其処にしょう、きっと期待はずれだよ」 「いいから、其処に連れて行ってくださいね」 「わかったよ」

 結婚式の当日、普段と違い流石に少しテンションが上がっている、朝4時には起こされてしまった、ヨシ子の実家で朝食を頂く事に、ヨシ子は美容院に、女は大変だ、義父と俺は、ただうろうろ、するばかり 義母は生き生きして「お父さん、朝の食事と着て行く物は安部さん(義父の医院の看護師)に頼んで有りますからね、遅れない様に来て下さいよ、それにリュウさんも」

..化粧品だろうか、沢山小物の持ち物が有るらしく忙しく取りまとめてながらヨシ子は手を休める事無く、これからの段取りを俺に話す「リュウ、私達お母さんと奥村さん(義父の事務員)行き付けの美容師を拾って、お父様の車借りて、先に教会の会場に行きますから、後は安部さんに朝の食事お願いしてありますからね、式11時からですよ、10時までに、指輪忘れずに持って来てくださいね」 そんなに慌てると、ろくな事はないと思った俺は「だめだよ!ヨシ子は新しい車、余り運転してないだろう、朝食もこんなに早く、お腹空かないよ、俺が送って行くよ」 義父も俺に賛成するように「あぁー、リュウに送って頂きなさい、その方が安全だよ、そうしなさい」

 全て自分でやるつもりのヨシ子は「リュウ、お腹空いていると、機嫌が悪くなるから!」 「だから、寝起きで食べれないし、こんな時だから、余計心配だよ、いいから俺が送って行くよ」 俺に義父の車アウディーのキーを渡しながら「じゃぁ、プロにお願いするわ、リュウが戻ったら、阿部さん食事、お願いね」 阿部さん「はい、お嬢様心配なさらないで、ちゃんと、食べさせますから」 「さー、行こう、まったく、子供じゃないから、お腹空いたら食べますよ」 車、やはり、静かで激しいゆれもない

 車の中でヨシ子は俺に念を押すように「リュウ、リュウは嫌いでしょうが、此の式はね、皆さんに、社会人としての責任を認めて頂く事ですよ」 「解っているよ」 「いいえ、リュウは本心、形式なんか如何でも良いと思っているでしょう?人は助け合って生きているの、自分達が若く元気な時には感じないものよ、これから私達の子供を育てる為にも重要な事よ、判らない事ばかりでしょう」 ヨシ子は俺の心を全てお見通し 「だから、分ってるって!、おふくろが二人居るようだよ」

 叔母は俺の見方をしたいのだろう「リ、リュウ..、三人ですよ、私はもっと皆さんに来て頂きたかったんですがね」未だ俺の呼ぶのに馴れていない様だ、 ヨシ子「お母さん!意味が違うでしょう」

 叔母少しキツイ声で「ヨシ子!いい加減にしなさい、リュウは理解してますよ、だからこうして式が出来るのでしょう」 ヨシ子はお母さんに何か言いたそうな顔をしていたが、俺の気持ちが、解っているからこそ敢て諭したのだ、おそらく”リュウ、こんなに喜んで戴ける人達がいるのよ、その人達のいる事も忘れないで”と俺に伝えたかったのだろう、何故か、この頃、ヨシ子の云わんとする気持ちが解る様になってきた

 奥村さん慌てて「リュウさん、こんなに、綺麗で若い、お母さんにわ、滅多に合えませんよアハハ!」 ヨシ子「私は何時までも恋人のつもりよ」 俺「ワーァ、女ばっかりで、これじゃぁー大変だ!母の日のプレゼントも大変だよ!」 義母目を細め嬉しそうに「そうですよ、初めてリュウ、男の子からプレゼント、期待しているわよ」 ..きっと義母からの息子に対しての精一杯の気持ちだろう..途中、美容師を拾い、女性達の美容の話になっていた

チャペル.jpg 無事会場チャペル(chapel)に....俺はヨシ子が心配になり「ヨシ子達も食事ちゃんと、取ってね」 ヨシ子は微笑を返し「大丈夫よ、ちゃんと、頼んで有るから、女性はリュウが考えているより、強わよ、其れより遅れないでね」 俺の手を掴み胸にあてがい「でもリュウ、私、何だかドキドキしてきたわ」 「大丈夫、俺達の子供が守ってくれるよ、それよりお父さんの方が心配だよ、何か緊張しているようだったよ、バージンロードお父さん、ちゃんと歩けるかな、出足間違えずっこけそうだよ」

 よっと心配そうに「そうよね、お父さん、見掛けによらない処あるから」 俺は回りに聞こえないようにヨシ子の耳元で「お父さんにね”ヨシ子もうバージンじゃあないから”って言ってみたら、お父さん落ち着くよ」 ヨシ子笑いながら「リュウのバカ!よくそんなジョーク思いつくわね、子供出来た事知っているし、お腹見て解るでしょう、お父さん、もっとずっこけちゃうわよ、それより、俺の大事な娘に!って、リュウに殴りかかるわよ」 「おぉ!恐!」 「私ね、リュウに初めて逢った時の様に純粋で真っ白な”like a vargin”の気持ちで歩くのよ」

 「うん、そうだよね、女は女優って云うから」 「リュウ!本気なのよ、何時も新鮮でいたいの」 「ごめん!何時でも俺のこと思って考えていてくれるから」..俺は本当に感謝しているが、なかなか思う様には伝えられない、少し照れながら「俺!ヨシ子が大好きだよ、何時も俺の為に、本当にありがとう、感謝しているよ!..何時かお礼云はなければと..」 「リュウたら..!涙でちゃうじゃない」 俺は照れ隠しに「さー、その噂のお父さん迎えに行くよ」 「リュウは大丈夫と思うけど運転、気を付けて、それよりリュウ、指輪忘れないでね!、浩子さんもね」 「うん、じゃー迎えに行って来る」

 トンボ返りで鶴見医院に付いた、浩子さんはすでに鶴見家に来ていて裏口の家族用玄関から賓の良い赤紫の背中が大きく腰の辺りまで開いたカクテルドレス姿、肌がきめ細かく滑らかで色白で、腰の括れが艶めかしく、とても魅力的で眩しい、笑顔で出迎えてくれた「おかえりなさい、この度は本当に良かったわね、改めて、御結婚おめでとう」 改め挨拶され、俺は照れながら「あ!はい、ありがとう、そんな改まった挨拶..何時も浩子さん、綺麗ですがその素敵なドレスと相俟って今日は一段と眩しい位ですよ」正直、本当に美しい人だと思いドギマギしていた 「ま!おじょうずな事、ありがとう、それより、これ私と海斗から、お祝いです」

 「おぉ!嬉しいな!有難う、海斗、如何ですか、これ開けて良いですか?」 「はい、どうぞ、かまいません」 海斗から、色紙の青と紅色で二つ鶴を折ってあり、手紙に”リュウ、ヨシコせんせい、けっこんおめでとう、あそびにきてね”海斗、それに俺達の名前入りのクリスタルカットのワイングラス二つ浩子さんからでしょう「有難う、海斗に心配しないで、会いに行くからと伝えて下さい、さー入りましょう」

 「ええ、その前に、御めでたい時に、御免なさい、私達離婚出来ましたので..」 「そうですか...なんと云ったらいいか、兎に角、俺達皆、再出発ですね」 「ええ、そのつもりです、私これからやりたい事もありますから」続いて子供の様な笑顔で「そうそうヨシ子のお父さん威張った顔していますが、先ほどから落ち着かず、そわそわですわよ」 俺も思わず笑い「そですか!お腹もすいたし、中に入りましょう」

 二人してダイニングに入ると、絹の立ち襟シャツと黒の蝶ネクタイ、黒のモーニングに着替え、難しい顔をし何か落ち着かない顔をしていたが、義父はなかなか板に付き、似合っていた、待ちかねたように、手招きして「リュウ何か有ったのか?」 「いいえ!何も」 「遅かったな!浩子さんも食事まだでしょう、さぁー二人とも此処に座って、食事をとりなさい」 何処にも寄り道した訳ではないが、義父は余程心配で待ちどうしかったのだろう「はい、浩子さんもどうぞ」 俺も義父と二人ではなにか、気まずく浩子さんが隣に座って助かった

 義父の助手の看護師、阿部さんも、すでに着物に着替え、食事を運んでくれた、何時もと違い何か色気さえ感じ、見事な変身ぶりに思わず「いい!、良いですね着物姿、誰かと思った!」 阿部さんは食事を運びながら、チラリと浩子さんに目を向け、すまし顔で「ありがとう、龍崎さん、女は魔物よ!これからは気を付けなさい、さーぁ、召し上がれ、浩子さんもね」 俺は阿部さんの方が正直の処、魔物に見えてきた

 真向かいに座っている義父は真面目そうな顔をして、小さく咳払いをして、改まり椅子に座り直した「リュウ君」 俺も慌てて座り直し「ハイ!」 「娘、ヨシ子を宜しくお願いするよ、如何か幸せにして、やってくれたまえ」深々と頭を下げた、俺も思わず頭をげ 「ハイ!分りました、此方こそ宜しくお願い致します」 「それから、リュウ君の呼び名だが、家内とも相談して、健司君と呼ぶ事にするが、良いだろうか?」 「ハイ、かまいません、普通、名前で呼びますからね、それで一向に構いません」きっと義母からのリクエストだろう 「そうか、助かる、娘を頼む!」 よほどヨシ子を可愛く思っているのだろう、ヨシ子の”お父さんリュウに殴りかかるわよ”の言葉を思い浮かべ、父親の複雑な気持ちがわかる様な気がした

 先ほどから、義母の愛犬のルルが俺の足元でお座りをして、不思議な物を見る様に時々首を傾げ見上げている、ルルの耳の後ろを指先で掻きながら 「義父さん、ルルは如何するんですか?」 「あぁ、ルルも家族、連れて行くよ、幸い教会で預かって頂けるから」 流石に義父の前では俺とは言ずらく「そろそろ行きましょうか?私も向うで着替えますから」 「そうか、健司君、君は君の車で浩子さんと行ってくれ、私は阿部さんとルルとで戸締りをして行くよ」早速、健司君と来たか、この方が家族的に思えるからだろう

 「ハイ、では行きましょう、義父の車の方が今日の浩子さんには合っていますが?」 駐車場に向かいながら「いえ、リュウの...御免なさい!海斗が何時もそう呼んでいるので、云い方が出てしまい」 「それの方が堅苦しくなく、良いですよ、それより俺の車でいいの?義父の車が今日の浩子さんに似合いますが?」 薄く明るい同系色のショールを纏い「いえ、さー行きましょう」 と云いながら俺の車の助手席に乗り込んでしまった、俺は運転席に廻り、義父の方に目をやり、じゃぁー、お先にと云う意味で手を上げ、出発した

 暫く二人は無言で、有ったが、浩子さん前を見詰めながら「私、これから働かなければ、生活が成り立たないので、以前から考えていたのですが、少し賓の良いスナックバーでも始めようと思っているの」 「そうなんですか、具体的に何か考えているの?浩子さんなら美人だから人は集まり沢山来るとは思いますが、経営する事は良い時だけでは、ありませんよ、その辺覚悟出来ているのですか?」 「もちろんですわ、実家は伊勢崎町で母一人でいるの、其処を改造して..それより南波さん、どう思いますか?」

 突然、南波と云はれ誰の事か判らなかった 「南波!ってだれ?」 「もう忘れているの、逗子のリュウのパーティーで、サーファーの」 「あぁ、彼の事、本当に余り知らないんだよ、あの店で時々偶然、遇っただけだよ、車やサーフィンの話、それより、彼良い人かも知れませんが、ビジネスは一人でする覚悟でなければ、必ずトラブルよ!、もし彼を充てにしているのなら、止めた方が良いよ」 「違います!一人の男性として..」 「それこそ、彼のこと駄目だと言ってる訳ではないですよ、浩子さんの問題でしょう、誰かが止めろと云えば、止められるですか?俺も生意気な事言えませんが、ゆっくり考えたら」

 俺の心を見透かしたかの様に、にっこり俺を覗き込みながら「リュウ!気になるんでしょう?、南波さんから、お誘いの電話やメール幾度かありましたが、あれ以来、会っていないわ」 俺は心を見透かされた様で慌て「べつに!そんなんじゃーないよ」と言い訳を言った 「でも心配して下さったんでしょう、リュウは解かり易いわよ」 「単純な男だからね」 「そう云う意味じゃないわよ、悪ぶっていても本当は純粋だから・・ヨシ子が羨ましい」

 暫く沈黙の後「私、お店を持ちたいと思った事、ずーっと以前からよ、だから前々から準備していたの、誰の力も借りるつもりは無いわ」 「そうだったの」 「そうよ!リュウはもう少し遊び心を待たないとね、きっと、そうなれば、もっと魅力が増すと思うわ!それに、レースの事、何時までもヨシ子を悲しめないで」 「そっか!俺、気持ちに余裕が無いって事!ヨシ子が云ったの?」 「ヨシ子がそんな事、云うわけないでしょう、見ていれば、解かるわよ」 「そうか!俺・・」 浩子さん、言い過ぎたと思ったのか「別に気にする程の事ではないから」 そんな話の中、教会に着いた、義父達も、まもなく着き チャペルの控え室に入ると

 もう母や兄夫婦や姉夫婦が集まっていた、おふくろは家紋入り友禅の黒留袖、身頃から後身にかけて小菊に松の古典柄の金刺繍が施され鶴亀がさりげなく入っている、何か何時もと違い、知的に、しゃんと見える、俺を見つけるなり 「健司、ヨシ子さんに採っては一生に一度の晴れ舞台、へらへらしないで確りサポートしてあげなさい、それと、ちゃんと落ち着いて挨拶出来るのですか?お母さんそれが心配で」あいかわらずだ、だが当っている「出来るなら俺の挨拶飛ばして欲しいね」 「まったく!しかりしてちょうだい」

 「大丈夫だよ、挨拶ヨシ子に書いてむらったから」 「それなら良いが、ちゃんと練習したでしょうね!」 なにが、それなら、良いだ!「まったく!子供じゃないよ」 「それから健司、御両親の挨拶だけどね、家はお父さんもいないし、ヨシ子さんは一人娘でしょう健司はあちらに・・兎に角、挨拶はヨシ子さんのお父さんにお願いしましたから」 「別に誰でもいいよ、俺も代わって欲しいよ」 「それだから、健司は何時までも・・」

 浩子さん、母とのやり取りが、余りにも可笑しかったであろう俺の後で、口に手の甲を当て色っぽく笑っていた 「健司、此方の方は?」 「あぁ、ヨシ子の親友、なが!...浩子さん」 離婚前の姓を聞いていなかった! 母、頭を下げ「健司がお世話になり、此のたびは有難う御座います」 義父達も到着し又ややこしい挨拶が始まった、俺達仲間なら”ヤー、オッス、元気?ドウーモ”で済んでしまう、これもヨシ子の云う人と人との繋がりあいだろう、母に感謝、俺はその場を抜け出し、着替えと、ヨシ子が心配になり奥の着替え室に向かった

ヨシ子 ウエデングドレス1.jpg ヨシ子は既にウエディングドレスに着替えて髪を美容師に整えて終わったところ、身籠って五ヶ月に入ろうとしている、お腹が微かに張って見えるが、俺以外気が付かないと思う、何か今までにないほど、ヨシ子が輝いて美しく感じ、思わず「美しい、凄く綺麗だよ!」 「リュウ本当に?」 「うん、何か輝て凄く綺麗だよ」 「うれしい!ありがとう、ねー、リュウに云われて心配になったから、バージンロードお父さんと歩く処だけリハーサルお願いしたいの、こちらの方、式のコーディネーターで、披露宴の進行司会もお願いした方です、私の婚約者です」

 俺に手を差し向けて、少しでっぷりした三十代後半の男性を紹介した「龍崎 健司さんですね、宜しくお願い致します」 俺はテレながら「はい、いえ、こちらこそ」 ヨシ子「リュウ、お父さん呼んできて下さい」 「俺はリハーサルしなくて良いでしょう?」 司会者「龍崎さんは、神父さんが式の時に指示しますからそれに従って下さい」 余計な事言ちゃったかな 「義父に伝えてから、俺も着替えますから」

 母と義父達の所に又戻り 「義父さん、ヨシ子さんが、呼んでいますよ」 「なんだろう?」 「何か、リハーサルしたい、様ですよ」 「健司君もか?」 「いえ!私は、着替えがありますから」 「てれるよな!私もいいよ」 俺は笑いを堪え「兎に角、行ってください」 俺は着替えに向かったが、両家族全員に見守れて、半ば強制的にリハーサルをさせられて、ハンカチで汗を拭きながら、緊張する義父を想像すると、自然に笑みがでてしまう、俺もスーツに着替え鏡で確認、式も間近になり人事ではなく緊張感を覚える。

 控え室に出向くリハーサルも終わった様子で、ちょうどヨシ子が家を出る前にする筈の挨拶が出来ずに今父に、挨拶を始めた処であった、俺は気配を感じ入り口で立ち止り、室内からヨシ子の改まった声が聞こえるので、入室する事を控えた 「お父様、・・今まで長い間・・あり」 義父照れた様子で言葉を遮る様に 「ああ、その改まった挨拶は良いから、ただヨシ子の幸せだけを願っているよ、これでお別れではないよ、出来るなら、健司君と家に戻って欲しいと思っているよ、なーぁ、かーさん」 義母「そうですよ、あなたは時間も不規則な仕事を持って、生まれて来る孫の事も心配ですよ」

 ヨシ子「えぇ・・有難いのですが、リュウに相談してみます、私から話しますから、リュウには直接、云わないで下さい、それでなくても、私リュウの夢、誰が反対しょうが手助けしなければいけないのに反って壊してしまったから」 義母「自動車レースの事ですね、あんな危険な事、お母さん良かったと思いますよ」 ヨシ子「私、彼がレーサーで有る事、承知で、お付き合いしていたの、彼は絶対一流なれる人なの、それなのに・・・私リュウを縛り付けたくないの、自由にさせて」 義母「生まれて来る、子供の事を考えなさい」 ヨシ子「今のリュウ・・妻の私が受け止めなくては・・暫くそっとして下さい」 義父「お母さん、もう止しなさい、ヨシ子も考えての事だろう」

 ヨシ子「お父様、お母様、これからも、心配掛けますが、今まで、有難う御座いました」 義父照れている「うん、もういいよ、今日はめでたい日、さーヨシ子時間だよ」

 そうだよな、俺って現実に生まれて来る、子供の事、余り真剣に考えて、いなかったな!ましてや子供の生来の事など、考えもしなかった、”だめおやじに、なる所だったな、責任の重みを感じるが、でも実感無いよな!それに如何してよいか解からないよ、全て始めての事だから”、俺は部屋に入る事を躊躇っていた

「龍崎さん!時間ですよ、皆さん、みえています」係りの女性が声を掛けて来た 「ハイ!」 ヨシ子の返事が控え室から聞こえた、部屋から顔を出し「誰か呼んでる様だったけど!・・あらリュウ来ていたの、その白のタキシ-ド、リュウに良く似合っているわ、モーニングコートにしなくてよかったわね」 俺は照れ笑いをしながら、ヨシ子達の話を何も聞いてはいなかった様に「あぁ、ちょうど、今来たところ」

 改めてヨシ子がとても綺麗に感じ「ヨシ子、本当に綺麗だね」 「ほんとうに?」 「本当だよ!何か輝いて見えるよ」 「リュウ!うれしい、ありがとう」 「俺このタキシ-ド着慣れないから、何かぎこちないよ」 「大丈夫、良く着こなしている感じよ、何か大人に感じるわ、すてきよ!」 俺は、なおさらテレて「レースより首や肩が張るよ、もう疲れちゃったよ、あ!そうだ!始まる時間だって係りの人が呼びに来て、皆さんチャペルに行って下さいって、こちらの係りの方が云っていますよ」

 係りの女性大きな声で「花嫁様とお父様は此方に残って下さい」 さぁー、いよいよだ、二人を残し式場チャペルに入った、ヨシ子の親戚の方や来賓、何故かエリート集団に見える、俺の偏見か?病院の先生や看護師であろう、入り口付近にこれも係りに誘導され席に付き始めている、やはり浩子さんは一際、綺麗だ何か妖艶な感じさえ与える、米海軍基地のボスや親しい友となった部隊全体の現役将校、彼が日本に赴任なったばかりの頃から、パトリシアの父から、横浜や東京を案内してくれと頼まれ、パトリシアと案内してからの友達付き合い、それに部下達、白の制服の詰襟に光る金の星、外人は流石に凛凛しく一際目立つ、白の制帽を深々かぶり、黒のツバの奥にブルーに光る瞳に魅せられる、来賓の女性やヨシ子に俺の事で問いただした看護師とその仲間達の目が輝きを放ち白の詰襟、金ボタンが規則正しく真っ直ぐに光る、肩には金の星が輝きを放つ制服の外人達を見詰めている

 外人特有の気軽さで「リュウ!コングラチュレーション」握手をしながら、もう片方の手を肩越しに背中を軽く叩いてくれた「サンキュウ・サー 、ソー・プリシェード」 「リュウ、今日はオフシャル・ビジネスではないよ、トモダチでしょう、サーは要らないよ」 それにドレスの似合う職場のパトリシアと主だった人達、それにレーシングチームの監督や仲間達、イタリアン・レストラン夫妻トニー「リュウ、ヨカッタネ、オメデトウ!」やはり外人、確りハグをしてくれた、トニーの妻エバは外人達に通訳をかって出てくれ、助かっている

 職場のボスが握手を求め「Congratlons! with double advantage.」 「What's?  Boss, something reason?(ボス・サムシング リーズン?)」 「リュウに頼まれた(request of..employment)、採用決まったよ、今度、特別に公務員テストを受けてくれ」 「オーノウ、テストですか」 「リュウならイージー大丈夫だよ、それに米軍で必要な人して特例だから形式的にだよ、予定決まったら連絡するよ、決まったらstatesに講習に行く事になるよ」 思わず「エー、テストとアメリカに講習ですか?」 「Yas,take a PC class at silicon valley. 」 テストか思いもしなかった、なにも勉強していない俺に、大丈夫かな?それにカリフォルニアのシリコンヴァレーに勉強だって、ビックリだ!

 レースの北原監督も近ずき「おめでとう、今の話聞いたよ・・英会話然駄目だけれど、話聞いてなんとなく分ったよ、少しは戻って来る事に期待していたが、残念だけれど、これでレースに区切り付けた様だね!」 俺は確り頭を下げ「ええ、今まで有難う御座いました、お話した通りこれからもinstructorとして宜しくお願いします」 「もちろん、此方からお願いするよ」 「やぁー!孝ちゃん、今日は一段と綺麗だね」 「ほんとうに!ありがとう、リュウおめでと~う、リュウも、かっこう良いよ、時々来てね、寂しいわよ!」 式場係りの人の声「皆さん、間もなく、始まります、其々席に付いて、お座り下さい」

 式が始まり型どうりのメロディーが流れ、ヨシ子をエスコートて義父緊張した義父のぎこちない、姿を見守り、式は型通り、結婚の誓いと指輪を送る場面になり、盛り上げを予ねてから考えていた事を行った、俺はタキシードやパンツのポケットを大袈裟に探し、牧師さんに「チョット待って下さい!指輪が見当たら無いんです!」牧師は唖然とした様子、ヨシ子は”もうー、あれほど云ったでしょう”と云うような顔をしている、俺は牧師に向かって「ちょっとだけ待って下さい、お願いします」牧師の了解を得るが、首を振って嘆いている様子

 参列者に向かい「何方か、チリ紙を一枚、戴けますか?」と最前列の義母から求めた、義母は怒りの目で俺を見詰め小声で「健司さん、いったい、どうしたの?一番大事な物、忘れるなんて!」と言いながら心配げにチリ紙を渡してくれた「ええ、とりあえず、これで間に合わせます」義母は怪訝そうに見ていたが、かまわず俺はその紙で、かんじん縒りを作り、義母の指を借り丸め指輪を作り、皆さんに解る様に高く上げポケットに戻した、義母は呆れ落胆、参列者の驚きや溜息やひそかな笑い声を背に浴びながらヨシ子の元に、

 牧師に向かい「どうぞ始めて下さい」 牧師は「では、永遠の愛を誓い指輪の交換を」俺はおもむろに、隠し待っていた、本物の指輪を取り出し、参列者に向かい本物の指輪を高く上げて次に左右に確認させるように見せた、皆さんの驚きと、安堵の笑いを誘った、ヨシ子は子供にメっと怒るような顔をして、小声で「もーう、驚かさないで!もう一度ほっぺをピシャリとする処だったわよ」と怒って見せたが、みんなの手前、本心で無い事は、解かっていた、例え紙の指輪であってもヨシ子は俺の気持ち受けてくれるだろう、

w-yr.jpg 俺は無言で、おもむろにヨシ子の手を取り薬指に指輪を治めた、参列者、笑い声と皆さんの割れんばかりの拍手と祝福を受けた、・・先ずは成功かな?少しはウケた様でとホッとした、後は表に待っている人達の祝福受け、其の後ヨシ子が投げたブーケはヨシ子の職場の看護師が受け取り、仲間からからかわれていた

 引き続き、場所をかえ披露宴を行う為会場に移動、その折、ボスからの就職の件を手短にヨシ子に伝えた、ヨシ子は少し当惑した表情で「良かった、と言っていいのかしら?」俺の気持ちを汲んでの事だろう 「良いに決まっているよ」 何かすまなそうな顔で「でしたら、良かったわね・・・」ヨシ子の関係の人や俺の関係の人達に二人は祝福の言葉に遮られてしまった

 以前から義母の要望で着物姿も見たいと云う事で、会場にてヨシ子は着物に着替え席に付いた、会場ではもっと、大勢の人達が集まっていた、無論、レーシング・スクールの久美ちゃん始め全員揃っていた、其の後、久美ちゃんと竹田君どうなったか、心配で有ったが、二人仲良く寄り添っている、義父と義母の関係者達で有ろう、俺の苦手なエリート集団、初めて見る顔ばかりだ、それに母の付き合いの人達も集まっていた

 披露宴会場.jpgヨシ子の大学病院での学長夫婦の仲人の挨拶から始まり、其々の来賓や友達の祝辞も形どうり終わり、宴も中盤に進み、そこで義父の挨拶に普段ありうる話なのに何故か印象に残った

 「健司君もいずれ感じる時が来るだろう、・・娘、ヨシ子が生まれると、わかった時から、嬉しくて嬉しくて・・・」 俺はそんなにも嬉しさは無いよ・・そんなに嬉しいものなのか?義父の挨拶は続く

 「幼い頃は、おてんばだった君、怪我をしないか毎日気が気じゃ無くて、仕事がら、夜の多い日があり、家に帰り一番に君の無邪気で汚れを知らない寝顔を確かめ、ホットし・・帰れぬ夜は妻に様子を伺い安堵したものだ、やがて、小学生になり、変らずおてんば娘で、膝や手を擦り剥いて学校から帰る事が度々あった、ある時、学校に行きたくないと、駄々をこねる君を、いじめに合っている事も知らずに厳しく叱ってしまった、涙を流しながら眠りついた、君の頬に残った涙を拭きながら、どれほど辛らく思ったか、叱ってしまった事を後悔し、この子だけは、どんな事があっても守りぬかなくては、どんな事があっても子のこの見方でいようと、頬の涙を拭きながら、語りかけていたものです」

 それから俺の顔をみて、まるで俺の心を見透かした様に「健司君も近い将来、その時が来るはずです、きっと家庭を持つ喜びを知るはずです、如何か皆様方も優しく二人を見守ってやって下さい」 その部分は感動的で俺にも印象深く心に残った、まだ義父の挨拶は続いたが、余り憶えていない

 式も和やかに進み、ケーキ・カットやキャンドル・サービス、病院の医師達のテーブルではヨシ子が一生結婚はしないのではないか?、何が、その硬い気持ちを変えさせたのか?、心境の変化、教えてと、ヨシ子に訪ねた、きっと何人かがヨシ子にアタックしても動じなかったからだろう、ヨシ子は無言で微笑で誤魔化した、ために俺に質問が移った、俺は「さーぁ、きっと駄目男で黙って見ていられなかったのじゃないかな?」皆に笑い混じりにひゃかされていたが、俺が入院中訪れた不可解な医師はいなかった、

 外人席に移りほっとした、ヨシ子の着物姿がかなり気に入った様で褒めていた、若い外人一人が、孝ちゃんが気になる様で、紹介して欲しいと、俺は「彼女?彼だよ!それでも良かったら、何時でも」 暫く沈黙が有ったが 「いいよ!紹介して」 「じゃぁー、エバ頼むよ」 「いいよ、変った人ね」と俺に向かいウインクを送って、エバは若い外人を連れ孝ちゃんの席に向かった

 其の後普段、指定された席以外余り移動はしないのだが、やはり外人達は積極的だ、ヨシ子の病院の看護師のグループに混じり、片言の英語や日本語でジェスチャーも大袈裟に会話が弾んで時々笑いが聞こえ、会場全体が和やかで、明るくなっている、それに伴ない、知人や親戚同士ビールを手に、あちこちのテーブルで挨拶が始まっている、やはり浩子さんは人気者ですっかりドクター達の席で盛り上がっているようだ

 雛壇に飾られている様な俺には親戚関係の初対面の人達がお酒やビールを持って時々挨拶に、作り笑顔で答える位で、退屈で少しでも早く終わって欲しいと思っていた、ヨシ子が俺に「リュウ、退屈で、早く帰りたいと思っているでしょう、もう少しだから、リュウの挨拶が残っているよ、確りね」と俺に耳打ちして、優しく睨みつけた、なんで?そんなに細かい俺の心が解るか?、そうだよな・・浩子さんも解り易い人と言っていたな、俺も小さく肩を上げて見せた、会場はだいぶ盛り上がっていたが

 司会者のマイクから「宴酣では御座いますが、新郎新婦からのお礼の挨拶、謝辞に移らせて頂きます」 此方への指示があり、あぁ嫌だな!思いながらヨシ子と共に指定の場に進み、俺はヨシ子に教わったお決まりの謝辞を「本日はお忙しい中、私達二人の為に・・・」を陳べ挨拶も終わり、無事何事も無く終了した、来賓を送り出す

 母が俺とヨシ子の所に近ずき「ヨシ子さん、とても綺麗でしたよ、健司は自由奔放に我儘に育ててしまい、今日も神聖な儀式の時に指輪、あんなバカな事をして、大変でしょうがヨシ子さん宜しくお願いします」 「あ!はい」 「おふくろは、堅いんだよ」 「だから駄目なの、それに健司!解っていると、思いますが、ヨシ子さんは一人子ですから、御両親の事も確り見る覚悟をしなければいけませんよ、結婚とはそう云うものです!」 「ヨシ子の両親、俺なんか当てにしてないよ」 「健司!何時までも御両親、若くはいられないのよ、確りして下さい」 「それ位、解っているよ」 「ヨシ子さん、こんな子ですから、頼みますね」 「お母様、ご心配して下さり、有難う御座います、健司さんは、レースを止めて、正式に、基地に勤める事に決めた、様ですから」

 着替えをすまし、ヨシ子は流石に疲れた様子「無事終わったね!リュウ有難う、疲れたでしょう」 「ああ、こう言うの苦手だから、それよりヨシ子の方が疲れたでしょう、早く帰ってやすもう」

 翌日、穏やかな朝を向かえ、明後日、ヨシ子からの提案で信州の諏訪、霧ヶ峰、白樺湖、蓼科を二泊三日で訪ねる事にした、今朝は流石に昨日の疲れもあり、十時過ぎまで目覚めなかった

 軽く朝食を済ませ「ヨシ子、俺、ヨシ子と結婚したいと、御両親に報告に行った時、皆と同じに幸せにしますからと、素直に云えなくて生意気な事を云ってしまって、機会が有ったら謝っていたと、伝えて」 「リュウ急に如何したの!」 「義父さんが、あんなにもヨシ子の事、心配して、事あるごとにヨシ子を頼むよ、って、俺、初めて父の気持ち解った、気がしたんだ、俺、軽率だった、だから・・・」 「負けず嫌いのリュウが、どうしちゃったの?」 「俺だって、理由もなく突っ張らないよ、ヨシ子が可愛いから下げたくも無い頭、・・義父の気持ちが解ったからだよ、俺って青いよな・・そうだ、俺、今日の夕食、タン・シチューでも作ろうか?」

 それだけでは無かった、あんなに望んだ結婚で今の俺はヨシ子を失ったらきっと狂ってしまうのに、心と裏腹に勝手な者だ!こんな時にもハンターの血が騒ぐのか?次の獲物をもう追うつもりは無いが、何故か寂し?、これをマリッジブルーと言うのか?、・・フッフッフゥ・・俺はキリストや親鸞には絶対成れないな!・・其れに諦めたレースの事が思い出され、じっとしている事に、耐えられなかった

 「リュウ!本当に如何したのよ!今日は何処かに食べに行来ましょう、ねーそうしましょう」・・「久し振りに野島の漁師さんの所に行きたいわ」 「うん、良いけど、飲んじゃぁ駄目だよ」 「ええ、分ってる・・ほらね!口ではいい加減な事云っているが、リュウはお腹の子を心配している」 「・・・」

 「明日から出かけるでしょう、今日は、ゆっくりしましょうね、帰ってから、美味しいシチュー作っていただける?」 「うん、そうするよ」 「コーヒー入れましょう飲むでしょう?私、フレーバーティーにする、リュウわ?」最近ヨシ子はフレーバーティーに興味を持ち色々試している

 「うん、コーヒーで良いよ、じゃぁ、其処にしょう」 「今、美味しいの、入れますから、何か静かな音楽、かけて」 ヨシ子マンション1.jpg「クラシック好きでしょう?ショパンのノクターン、俺も好きだけど、お腹の子にいいよ」 「へー、リュウも聞くの?エルビス・プレスリーの方が良いんじゃない?無理しなくていいのよ」 「偶には、良いよ」 「はい、コーヒー、リュウ、ベランダに座りましょうか?、話があるの」 「いいよ、何なの?」 ベランダに移り、もう季節は秋空に変り鱗雲が遥か高く見える、穏やかな海を見ながら座った

 「ねー、リュウは今までは、カー・レースの頂点に駆け上ろうと、懸命に生きてきたのに、私と巡り逢った、為に運命が変って目標を失ってしまったわね、リュウがどんな気持ちか解っているつもりよ、でもそれを云うとリュウに叱られるから、俺が決めたんだって云うでしょう」 「うん、そうだよ、今までぐずぐずしていて、ごめん、きっと俺だけで無く他のアスリートも遅かれ早かれ何時かきっと通る道だよね」 ヨシ子は頷き「うん、大凡のアスリートは体力の限界を感じた時と思うけれど、それなら自分自身に納得が得られると思うの、リュウの場合は、続ければ出来たのに、お金の問題、スポンサーが必要でしょう、・・だから悩んだのでしょう」

 「だから、もう・・」 俺に訊ねる様に「今はそう云う事では無いの」・・「リュウは登山好きでしょう?」 「急に何?、そうだけど、でも長い間、山には行ってないな」 「本当はリュウと易しい初心者向けの山に、トレッキングか登山したかったの、でもこのお腹ではね、最近リュウみたいに元気良く動き廻るのよ」 「フーンその中にいると思うと何か凄く不思議に思うよ、そのうち、子供背負って行くのも良いかも」

 「良いわね、何時か三人で行きましょうね、やっぱり、リュウは子供の事考えているんだ」 「それと愛情は別だよ」 「リュウは気が付かないだけ、それを愛情と言うんでしょう!」 「・・」

 「・・それでね、登山は登る時より、下山する時の方が難しいて云うでしょう、登る時は頂点だけしか、見ていないと思うの、でも下山する時は、別の景色が良く見えるでしょう、リュウ、焦る事はないと、思うの、次の目標の山が見付かるまで、勉強の期間と思えば、良いんじゃない、それもあって、リュウの夢に出てきた所、信州の蓼科、其処がリュウに採って心の原点と思ったの、それでリュウが何かを得られば、いいなと思い」

 「そんな事、考えていたんだ、ヨシ子の言う通り、其処が原点と言えるかも、俺小学校低学年頃、身体が弱く、母親と家族と初めて離れ辛く思ったが、夏休みに療養生活を送った所だよ、でも何か変わるのかな~ぁ?」 「変らなくても、いいじゃぁない、何故かそんな気がしたの、行って見ましょうよ」 「うん、それも良いけど、こうしてヨシ子といると、安心出来るよ、それに、平凡で在り来たりの生活が一番良いって、誰より解っていて、それをヨシ子に求めて来たのに、でもその安心と幸せが、余りにも心地良く、慣れていないのか、このままで良いのか、何処かに、誰と言う訳ではないが、世の中に置いていかれてしまうのではないか不安で恐くなるんだ!」

 ヨシ子は俺の目を確り見詰め「いいじゃない!リュウは私の膝で何時までも甘えていられない人よ、でもね私達二人はその為にいるのよ、私もリュウに助けてむらったり、甘えたい時もあるのよ、互いに助けあうのが、夫婦でしょ」 「以前にも聞かされたよ、俺って素直に受け入れられない天邪鬼なのかも」 「そんな事、無いわよ!リュウは純粋過ぎるのよ、誤魔化しが出来ない人よ、何時も男でいなければならない、そう思っているから、完全な人など、いないのよ・・・ネー、リュウの椅子私の横に並べて、此方に来て」

 俺はベランダに椅子をヨシ子と並べて、遠くにウインド・サーフィンや浜辺を穏やかに散歩する人々をボンヤリ眺めながら座った、ヨシ子は座ったままで、俺の左手を両手で取り、海を眺めながらお腹の上に置いた、ヨシ子はその手を離さず俺の手の平をヨシ子のお腹に添え続け 「リュウ暫くそのままにしてね、この子が動いているのがきっと判ると思いますよ」 俺は手に神経を集中させ、そのまま待った

 「リュウの手暖かいのね」・・「ほんとうはね、私の方が、リュウに世界で活躍して頂きたくて、レースに初めて、連れて行かれた時から夢中になって、その度にリュウが良い成績を残し駆け上がって行く事が嬉しくて、リュウにレース辞めると聞かされた時、リュウの可能性を信じて夢見ていた、私の方が驚きだったわ、リュウの決断が私の為だと知っていたが矛盾してると思っても、知らずしらず、私の方が夢中になり、リュウにプレッシャーを掛けてもレースを続けて欲しかったの、人の気持ちって、いいえ、私の気持ちが複雑で!私には辛くて選択出来なかったの」

 「判っていたよ、俺がレースに対する気持ち、皆から理解されず反対され、くさっていたんだ、それをヨシ子は心から応援してくれていると、強く感じていたんだ、初めて俺の気持ちを理解して、心から応援してくれて本当に嬉しかったよ」 「だから、”リュウもう良いよって”、いいえ、自分に、それがどんな結果になっても、私達にとって、一番良い選択と自分に言い聞かせていたの、リュウもやっと、落ち着いてきたから、本当の私の気持ち話せたの」

 「あっ!お腹動いたよ、凄げー!本当に生きているんだ、不思議だね」 「きっと、リュウの暖かさが伝わったのよ」 「へー、ビックリさせてしまったのかな?重くて苦しいから”どけよ”って云ってるみたい!」 「うんうん、此の子が”此処にいますよー”って、リュウに懸命に伝えたのよ」 俺を見詰める目もそうだが、何だろう?最近ヨシ子、何処か優しさが、以前にも増して、感じられる

 「ふ~ん、頭では解って、この手にもこうやって感じているけど、未だ不思議で、この手に抱いて話をしないと余り実感が沸かないよ、俺って想像力が無く夢が無いのかな?俺に子供育てられるのかなー」 「リュウが不安を感じるって事は、責任が出てきたことでしょう、私だって不安ですよ、私達だけでは無いのよ、皆始めての経験をして来ているのよ・・そうだ!今から食事に行く前に海斗に会いに行きましょう、結婚の御礼に行かなければ、容態も気掛かりだから」

 「寂しがっているよね、ところで、浩子さん離婚して、姓(苗字)、なんて云うの?」 「あ~ぁ!リュウは知らなかったわね、大平て云うのよ」 「俺、お袋に聞かれ、慌てて名前だけ云ったよ、大平か!で海斗は?」 「もちろん、浩子が親権を取ったから、大平に変えるでしょうね」 「フーン!何かややこしいね」 「人が暮らして行く事は、色々な事が起きる物なのよ、リュウだって新しい仕事になるでしょう」

 俺は大きく息を吐いて「フゥー!そうだよね、ただ俺、これからの仕事に自分が生きてるって感じられるかな?」 それまで海を眺めていたヨシ子は俺に向き直り俺の目を見据え厳しい声で「何云ってるの!リュウが決めたことでしょう!、まだ真剣に何も初めてもいないのに、それでは何をやっても駄目でしょう!」 びっくりしたな、こんなに叱られた事は久し振りだ・・そのとうりだと思い、何も怒りも覚えなかった・・俺は力無く呟く様に 「だよね」

 余り俺が素直で、反って心配になったのか、ヨシ子はお腹上に置いた俺の手を力強く握り「慌てる事無いわよ、今は休みましょ」 「うん」 「信州に行って、のんびりしましょうよ、諏訪には温泉もあるでしょう?」 「あぁ」

 余りにも複雑な気持ち、以前にも味わった事だ、が今度は違うと思っていた、今度のレースへの断念と、時間が経つほど無気力になって行く、矢張り心に穴が空いてしまって力が抜けた様だ、なにか自由を奪われた様で、心がもやもやする勝手な者だ!。

 ヨシ子は椅子から立ち上がり「リュウ!人の本当の強さは、困難を乗り越える心の強さなのよ!」 「・・・」クー心臓を一突きにされた!反す言葉も無い 「さー!海斗君に会いに行きますよ・・如何するの?」 「あぁ、行くよ」 「そんな顔していると、海斗君が心配するよ、冷たいお水で顔洗って来なさい、シャキットするから」

 

北原監督しばらく.jpg

 

          ストーリ【Story後編1】は制作中暫くお待ち下さい!


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枯れ葉 後編裏表紙.jpg

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