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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編5】 「Fictoin Story」 [小説(story) Fiction]

ストーリー【前編4】からの続きです是非下欄【前編5】をお読み下さい☆

 

yoshiko-通勤上半身.jpg  翌朝 先生を最寄の駅前まで車で送る 先生は濃紺(deep navy)のスーツで四角い大きなエルメス バーキンの黒皮ショルダーバック 昨日とまるで別人貴賓さえ感ずる、

駅前広場の駐車スペースに車を止めると 運転席の俺の肩に手を置き 「レース頑張ってね!」 にこやかに車を降りた 「うん!先生も気を付けて」 「ハーィ」 と返事をしながら先生はその場に立ち止まり

 スマホで職場であろうメールの確認を取りながら おそらくここ二日間は外部や仕事など重要な連絡が有るだろうに、俺に悟られない様に心掛けていたのだろう、どれだけ先生にとって大切な時間を俺の為にと考えると内心嬉しく思った、

 俺は先生の気を解す為に先生に向かって声をかけ 「・・先生!今朝は営業用の顔ですか?」 先生は怪訝そうに振り向き悪戯坊主を叱るように 「もーぅリュウたら!・・それにリュウは私の常識を見事に壊してしまったわ」「それって俺が非常識って事?」「違うのよ 余り常識に拘ると 何の変革も生まれないって事・・それより気を付けて運転してね」「うん 先生も」

 一度駅の改札口のエスカレーターに向かっていた先生が忘れ物でも思い出した様に踵を返し 俺に歩みよりニッコリと まるで自分の子供でも送るように運転席の窓枠に肘を掛けた俺の手をとって 小声で 「ねぇ 何か二人って いいわね! 心が暖かく楽しくなるわ」 何だか母親みたいに思えた「フッフ・・・」 俺はただ照れ笑いを返した

  先生は確認を取る様に俺の手を確り握り「行ってらっしゃい! 本当に気を付けて いいわね!」 「うん!じゃー」

 車から見送る俺に背を向けて、朝の通勤の人混みに塗れ駅のエスカレーターを上がる先生の姿が見えなくなるまで暫らくの間見送っていた、

 俺はこの女性の包み込む様な優しさと暖かさをもっと感じていたいと痛切に思い初めていた。

 その足で本牧の自分の部屋に戻り 着替えやレースに必要な物を揃え、先生との事を伝える為 久し振りに母の所で一晩泊り翌朝富士に向かう事にした。

  俺の実家は横浜根岸の高台、記憶には無いが以前 競馬場跡付近にある、俺のマンション本牧からすぐ坂を上がった所で坂を下れば元町にすぐ出られ 左に下れば伊勢崎町 真っ直ぐ行くと港の見える公園と外人墓地。

 母とゆっくり夕食取りながら話す事は久しぶりである、

 俺は一息入れて 改めて台所で夕飯の支度している母に声をかけた 「ねー おかーさん」「うん!な~に?」 少し躊躇したが母に離婚した妻(美奈子)の担当医 鶴見先生にひょんな事で再会し親しくなり当時世話になっていた事など 料理の手を休め怪訝そうに聞いていた母に説明し

 少し改まった表情で「それでね」俺の次の言葉がないので不振顔で 「どうしたの?」 「うん・・俺・・まだ先生には確かめていないけれど 先生と結婚しょうと思ってるよ」 母は驚いた様に俺に向き直り 「エッ!結婚!」

 母はきっと複雑な思いであろう、不安げな顔つきで言葉を選び慎重に 「おまえが決めた事だから反対はしませんが・・住む世界が余りにも違うでしょう?・・女性は 男と違い傷つき易いのよ、もう泣かす事は絶対許しませんよ・・五つも年上の事考えて、一生この先 その方を責任もって守っていけるの?」

 「・・あぁ・・」  「二度と同じ間違いをしてはいけないよ!おまえは直ぐにその場の感情に流され易いから」 「・・」 「解っていると思うが結婚は其の方の人生に責任を持つ事だよ!・・だいいち その先生の気持ち聞いていないでしょう?」 「もう~ 解かっているよ!」 しばらく重い沈黙が続いた 「・・兎に角 近い内に其の方連れて来なさい」 俺は首を縦に振り「うん」母は口ではきついが受け入れてくれた様子だ、内心俺は ほっとし嬉しかった。

 又 これも言い辛いが 俺のレース再開と今週からビックレースにチャレンジ出来る様になった事を報告した、何れは判ってしまうだろうが 今は流石に別れた奥さんの父からスポンサー援助の事は話せなかった。

 母はお金の事も薄々気付いていたのかもしれないが その事には触れず諦めた様子で 「お前は誰に似のか?一度決めたら全く聞く耳を持たないから、あんなに安定した会社も辞めてしまって 本当は母も危険な事は反対ですよ、それに結婚を決めるのには相手の女性の事も考えなさい どんなに心を痛めるか 前の事で解かっているはずでしょう、とにかく! よーく考えて 気を付けてやりなさい」。

 叱られたが 一応了解を得た、やはり母特製の散し寿司と稲荷寿司 肉ジャガは美味い、まだ俺の部屋が其のままにしてあり いつもながらベットのシーツは洗い立ての糊のきいたものが用意されていた 

   《富士スピードウェイ》 Fuji Speedway round 4 (06/28)  

fuji.jpg 今年設立 開校したばかりのジャパン・レーシングカー・アカデミー(J.Rc.A)のスクールオーナーで有り 同校のレーシングチームの監督である北原から、今年のレースは全部で8戦、前半3戦は先輩レーサーがドライブしていたが、家庭の事情でレース活動を辞める事になり そのため資金難も有り急遽スポンサーの収得を条件に俺の起用となった。

 この第4戦6月から俺にとってはビックレースのデビュー初戦になる。 気持ちも高まり何時もの集中を取り戻し始めた、レース期間中はメカニックやチームクルー達はスピードウエイ内のホテルに宿を取るが 俺はパッドク裏に預けてあるチームのキャンピングカーの生活になる、ホテルでも良いが車の中の方が落ち着き気を使はないですむ それに経費の節約でチームに貢献になり、食事はレース場内のケータリングやレストランで何時でも取れ風呂やシャワーも何時でも使用出来る。

 レーシングスクール-5.jpg翌日朝、横浜海老名から東名高速をへて 監督とメカニック・エンジニア達それに手伝と実技のための生徒達 御殿場で ジェイ・アールシィ・エイ (Japan RacingCar  Academy)のマイクロバスと合流し例のメカニックが俺の車に移動 エンジニアの無口で考え深そうに俯き加減に挨拶を交わす井原くんに運転を変って頂き俺は後部席でサーキットまで休む事にした 処が孝ちゃんが何を思ったのか俺に寄り添う様に乗り込んできた、

 俺は思わず 「あーぁ」 ため息がでてしまった、 孝ちゃんは俺の顔すれすれにせまり 「何よ!そのため息!」 俺は笑って誤魔化し孝ちゃんの顔見て「今日は眠いんだよ」 「ふふっ 私が見守ってあげる」「これじゃー眠れそうに無いよ」「なんでぇー」俺は笑いながら「それが眠れない原因だよ」「もーリュウたら!」

 今週末の天候は余り芳しく無いがチームの皆 始めての俺の走りに期待を掛けて居る様で少しプレッシャーを感じつつ東名御殿場から富士スピードウエイに向かった。

孝ちゃんラブ2.jpg 車の中で 孝ちゃんが変らず明るく軽いトーンで話しかけてくる 「ねー リュウ? 毎回ビリで走っている人如何して未だ走るの」 始めは質問の意味がわからなかった 「?」と云う顔で孝ちゃんをみる 「いつも最下位で辞めようと思わないの?」 孝ちゃんはもう何年レースに参加している

 「う~ん 人其々考えが違うが 俺だったら何時かは必ずトップに立ってやると思ってやっているよ、少なくとも皆そう思って戦っているのでは?中には趣味でやっている人もいるのかも」

 「でも 明らかに実力に差がある事解らないの」 確かにお金に恵まれ そう云った人も いないでは無いが「おいおい!そこからが重要だと思うよ なにくそと思い相手の走りを研究して来る人 諦める人 幸ちゃんだってそうでしょう!、皆より俺が早く走れる様に調整研究して誰にも負けないメカニックを目指しているんだろう?」

 笑顔で 「まーね 私機械が好きだから それに機械は裏切らないからね」 「まーねって!孝ちゃんに俺の命預けているんだよ ネジ一本でも緩んでいたら俺オシャカ!だから頼むよ、・・何が有ったか知らないが俺だって初挑戦だし一番ビリになるかも?・・孝ちゃん脅かすなよ 頼むよ!」 孝ちゃん誰かに裏切られたのかな?

 孝ちゃん可愛い顔で真面目に俺を見詰める 「リュウの為だったら頑張れるわ 昔の評判聞いているわよ、ダントツの連勝だったってね ビリになる訳無いでしょう?・・如何して辞めたの?」

 孝ちゃんが怪しい目つきに変わって 俺は慌てて目をそらし車の窓から遠くの山並みに目先を移した「まあー色々ね、・・それより以前の車と今のでは全然パワーが違うよ! レギュレーションだってレースのクラスも今までより上のトップクラスでマシーンの性能も格段良くなっているからそれに 俺このクラス初めてで不安だよ!」

 察しの良い孝ちゃん 俺が本音を打ち明けたと思ったのか 嬉しそうに それ以上は触れず 「まかしてよね!リュウの事好きだから 私も命掛けちゃう」 俺は苦笑しながら 「孝ちゃん 命掛けなくていいから、然りネジの締め忘れ無いように 俺の命守ってよ 頼むよ!」

 運転席の井原君も 俺が話しかけなければ自分から積極的に話をする人ではないが 言葉を一つ一つ選ぶ様に思案深くぼそりと話に加わった 「孝ちゃん!龍崎さんはミスの無いように 確り点検して欲しいと云っているのだよ」 孝ちゃんは丸く大きな目を益々大きくして 「それぐらい解っているわよ リュウが素敵だから 解るでしょう!」

 何時も黙って聞いている井原君珍しく 「又!泣く事になっても知らないよ!」孝ちゃん益々驚いた顔で「もう泣いているわよ リュウ冷たいから!・・もうー!リュウたら狸き寝入りしているよ」

 井原君何時もなら それ以上関心を持たないのに、今日は何か違う 「龍崎さん戸惑っているから困らせては駄目だよレース何処じゃなくなるよ」俺は可笑しくなり「俺 孝ちゃんの事好きだしマシーンの調整の技術力すっごいと思っているよ だけど ごめん! 俺女好きだけど俺の好みとちょっと違うな!」

 「もうー解ったわよ!好みに合う様にするから どんな女が好き?」 井原君 珍しく冗談で「こりゃ駄目だ!重症だよ」と井原君 何を云っても駄目だとの思いで 俺と見合った、きっと井原君も孝ちゃんをチームのメカニックとして認め大事に思っている事が俺には伝わってきた。

 時々並走する我がチームの他の車の窓からも お互い話が弾んでいる様子で楽しそな笑顔が見えている、そんなこんなしている間にもう富士スピードウエイ入り口のダンロップゲートが見えてきた。

クミちゃん.jpg 俺らの弱小チームでも監督兼オーナー(北原)メカニック兼エンジニア(井原君&孝「コウ」ちゃん)この二人のマシーンの調整能力は他のチームに負けないくらい素晴らしい、それにマネージャー権雑用の竹田君(通称タケちゃん)紅一点 白のダブルボタンで少しショートのシャツ セクシーなへそ出しにパンツルック 事務兼タイムキーパーや雑用などをこなす久美子(クミちゃん)計6名、その他監督が経営しているレーシング・スクールからの体験を兼ね生徒のボランテアの6人 後はスポンサーからのレースークイン3名 チーム全体では略12、3名位になりレース当日にはスポンサー関係者などでけっこうな数になる、

 他の一流チームはレースードライバー2名 レースカーの予備も含め3~4台 従事する従業員に其々作業割り当てが有りスポンサーの数も多く大チーム俺らの余に3倍から4倍以上の人員である。

 富士スピードウェイに木曜の夜には各チームが集まってくる大型トレーラー3・4台でマシーン(車)や工具 テント 椅子やテーブル等スポンサーの宣伝用商品まで持ち込み、金曜朝には各チームごとに決められたパドック(発車待機所)で準備を整える為に大忙しだ、当然俺達も準備に追われケータリングのお弁当を取りよせ 準備が一応終わったのが夕方の7時を過ぎていた、皆 準備やマシーン調整に疲れた様で早々にシャワーを済ませ疲れの為か余り会話も無く食事が終り それぞれ宿舎に戻った。

北原 監督あ.jpg 翌金曜 街中と違い少しは標高が高い為か朝靄が立ちこめていたが清々しい朝を迎えた、場内のレストラン朝食はバイキング 我らのチームクルーも他のチームも続々レストランに集まって来た

 我がチームの人々が集まった中で監督の挨拶が有り 「皆さん おはよう 今回から皆も知っての通り新しく龍崎君がドライバーを務める事になりました、今まで通り力を合わせ戦いましょう、龍崎君挨拶を」 やはりチーム監督だ!渋めの顔で挨拶、長い間ファクトリーチーム(factory team)の所属で経験と知識が滲み出る話し方である、チームの皆の引き締めになる 挨拶の最後に予想すらしていなかった 俺に挨拶を振られ戸惑いと何を話してよいか 頭が真っ白になり 暫く無言が続き 監督の催促の目が痛く感ずるばかりだ

 俺はこの様な場面わどうにも苦手だ 俺は少し照れ笑いでごまかしながら首に手を当てながら少し下向き加減で挨拶の言葉を探すが気の利いた言葉が浮かばない、それでも俺は言葉に詰まりながら 「はい・・えぇー これと言って改めて無いのですが これから ”リュウ” と呼んで下さい、何分にもFJレースは始めて 何もかもが始めての経験になりますので 至らない処は遠慮なく注意して下さい、もう一部の皆さんとはコミニケーションが取れていますが 新しく参加してくださった皆さんどんな仕事であっても 将来役立てる事が出来ると思います、チームが一つなる様に頑張りましょう!、どうぞ宜しくお願い致します」 食事に集まった他のチームや以前からのレース仲間から祝福の拍手や野次があちこちから飛ぶ、

 監督とは何時も電話かレース場 又は出先のスポンサーの会社で商談時に待ち合わせていたが 未だチームの事務所に訪ねた事は無かった、

 そんな訳で 我がチームであるのにクミちゃんとは電話応対の声だけで タケちゃん(竹田君)に至っては初対面である、そんな両人が顔見せと挨拶にやって来た、クミちゃんは話し方も優しく大企業の受付や秘書の教育を受けた様に確りした受け答えであり 二十歳を過ぎた位で顔も色白で面長の美形でスタイルも中々である、

 タケちゃんは良い意味での青年くささが残っているが 何事にも真面目に取り組む姿は好感がもてる 俺より少し年は若いと思われるが 俺と違って中々の達弁である、臆することなく俺を褒め倒す様な挨拶を交わすが 話が面白く何故か憎めない奴だ、監督がタケちゃんを採用した理由が解った様な気がした、続いて我らチームのスポンサー達やレースクィーン、キャンペンガールやその他監督の知り合いであろう女性も交じり10・1・2人ほど挨拶を交わす

  食堂に入った他のチームの人達も このクラスでは新人レーサー興味深げに視線を受ける 大半は以前からの仲間や知り合いも沢山いて ”ヨォ!リュウ戻って来たね 頑張れよ!とか お手柔らかにたのむよ!” 等の声援があり 皆さん拍手で歓迎してくれた、俺は照れ笑いをしながら軽く手を振り頭を下げ答えた 少し気恥ずかしい思いをしたが一時の事、皆の歓迎がとても嬉しく思った、

龍崎ハイ.jpg 合わせ向かいに座った監督 ファクトリーチームの経験とレースへの情熱が眼鏡の奥でキラリと光り俺を圧倒する様に見詰め 「リュウ! 食事終わったら運営役員と各チームの監督に挨拶だ」 「あ!はい どうも苦手だなぁ~」 「リュウ! 行かなければ だめだ!」 孝ちゃん慌てて口を挟み 「私リュウと一緒に行ってあげる」

 空かさず 監督の声が響く「孝ちゃんは井原と挨拶がてら他のチームの偵察だ、何か新しい事が有るか勉強がてら何気なく聞いて来い 遊んでいる暇はないぞ! お昼は弁当になる 各人何にするかクミちゃんに注文をしとけよ」 孝ちゃんは不満そうに 膨れ顔で 「は~い」 俺と監督は各チーム監督に挨拶廻りし、もう俺の噂は大分流れている様だ それに以前からのレース仲間や知り合いもかなりいて励ましの言葉を掛けられ意外と挨拶も楽に終わった。

 俺は事前に イメージトレーニングの為にノートパソコンに取り入れたコース取りの再チェクを行い もう一度 気分転換も兼ね1時間位実際のコースサイドを歩き確認を取る、コースはドライ 路面もまだ新しく悪くは無い例によって各コーナーでのブレーキングポイントとクッリピングポイントの目標チェックと最速コースの再確認を行う (実践では他の車があり理想のコースを取ることは かなり難しいが常にベストコース採る事に努める)

  パドックに戻り昼食をチーム・クルー達とお弁当を食べながら雑談後、マシーンの調節を手伝う、その頃、我がチームのスポンサーで営業の人達や監督のスクールの生徒達も研修も兼ね見学に集まって来て我がチームのピットも賑わっていた、其々挨拶を交わす

 井原君が真面目そうな顔をして 聞き取り難い低い声で 「前のドライバーの人は乗る時まで全然顔も出しませんでしたよ、それに比べるとリュウさんは的確にマシーンの状態を伝えて 調整し易いので助かります」 孝ちゃんも慌て同意するように 「それに リュウに命に関わると云われ、ネジや孝ちゃんタイヤ交換3.jpgナットの一本まで気を入れてチェックし締め直しましたからね」

 俺は癖でコックピット辺りを手の平で2,3回押しながらマシーンを軋ませ 何を確かめる訳ではないが そうする事で何か安心を得られるから 「井原君!孝ちゃん!大変な作業ありがとう」 孝ちゃん唇を突き出し両目を同時に閉じる不思議なウインク 「ウッフン!リュウの為だもの」 俺はこれからも皆に沢山のお願いも兼ねて 「俺も機械物が好きだからね!それと この方が気持ちが静まるよ まぁーこれからも迷惑でなければ勉強の為に手伝わさせてよ 二人とも何時でも声かけてね」

 本当は機械も好きだが、このマシーンを自分の体の一部にする為の俺の儀式の様なもの..機械に接する事で愛着を感じるのだ..それに此のクラスになると、決してドライバーの技量だけで勝てるものでは無い総合力だ、

 監督の張りの有る声で 「今日から 一日目のフリー走行(practice)が始まるぞ リュウ時間だ! レーシングスーツに着替えて来い」 何か一瞬に緊張感が走った 「はい」 ピットの後ろに駐車してあるキャンピング・カーでレーシングスーツ(オーバーオール)に着替える 俺は毎回儀式の様に車内にセットしてある 鏡の前で着替えた服装をチェックし 大きく三回ほど深呼吸し身なりのチェックを行なってピットに戻った

ピット.jpg ”さーぁ やるぞ 気合を入れて行こう!” 誰ともなく吐いて、マシーンに乗り込み、タケちゃんと孝ちゃんに6点式シートベルトを肩に食い込ほど思い切り締めてむらい、二人にポンと肩を叩かれ 両者から親指を立てながら ”グットラック!” と声をかけられた

 「なんだよ孝ちゃん 英語かよ」 「今はこの掛声が一番合っているんです リュウがんばってねぇ~」 「おぉー孝ちゃん その声なにか力抜けちゃうな」 俺も親指を立て挨拶した「もう~ リュウたらぁ~」 「分ったよ ごめん 宮ちゃん 孝ちゃん、昨日から徹夜に近い調整作業 有難う 頑張るよ!」 宮坂君と孝ちゃん二人とも頭をうんうんと振り指で VサインやOKマークを示した

 ・・さー いよいよだ!、初めてのマシーン 冷静に行こう..ヘルメットを被りドライブ用グローブを指先一つずつ確かめながら確り着用、メカニックが予備バッテリーを繋ぐ、俺は目を閉じ大きく鼻から空気を込み口からゆっくりと息を吐出し目を開き、徐にマシーンのスイッチのカバーボックスを上げ開き 祈る様にスタータアーボタンを押した、

 ”キュルキュルキュル・・ヒューフホォーン、フホォーン、ヒューンフホォーン” 腹に沁みるレーシングカー特有の高回転高圧縮の甲高いエンジン音が快く体に響く、待ちに待ち望んだ恋人に逢う様にステアリングを愛しげに握り、逸る心を押さえもう一度 目を閉じ しばらくエンジンのサウンドに酔い痴れる、乱れの無いエンジン音にホットし 心の中で愛しいマシーンに向かって 「機嫌良く たのむよ!」 と語りかけ静かに目を開ける、俺の闘争心も徐々に高まってくる。

 話は違うが今 F-1の世界ではこのエンジン排気流まで空力リヤーウイング(DRS・ドラック・リダクション・システム)に使う凄ましさ、又ブレーキを併用して発電(KERS・キネマティック・エナジー・リカバリー・システム、運動エネルギー回生システム等、今では省エネでターボチャージャエンジンに電器モーターを併用MGU-Hして鎬を削っている)に使いその力を動力として利用する世界だ、  

 これはバレーやダンス等に使われる言葉だがカー・レースでも使う足の指先と踵でブレーキとアクセルを片足で同時に操作しシフトダウンやアップのときギヤーをエンジン回転とシンクロさせるが今では全てコンピューターで管理されていて”ヒール& トゥー(heel & toe)”は過去の物になり始めている、マシーン開発に凌ぎ合う物凄い世界だ! FN(フォーミラー・日本)では日本のカー・レースの底辺を広めようとチャーシ(ボディー)の規格を一定にマシーンの開発費等を抑えF-2.gifているが、開発の速さは日進月歩、まだまだ変化が早くコストがかかり大変だ。

 ゴーサイン合図で監督の手が上下に振られ スタートだ! 俺は右手を上げ監督に向って親指を立て合図を送る、ステアリングに配置されているピットレーンリミッターボタンを押しステアリング・バドルでギヤーを入れ慎重にクラッチバドルを押し込みアクセルを踏み込む

 マシーンはパドックをゆっくりと走り始め、ピットレーンを安全のため規定速度にて通過、レースの本コースに入りリミッターを解除し第一コーナーへ始めの周回はRPM(エンジン回転数)ダイヤルをバーンアウトにセット慣らしとタイヤを適正温度まで上げ粘着度を高める、タイヤの空気圧も適切に上がり 監督との無線通話も先ず々、コース取りの確認を頭で描く ステアリングボタンで通常ドライモードに戻し ステアリングパドルで序々にシフトアップをする、水温 油圧 のチェク異常なし、最終コーナーをアクセルを踏み込み徐々にスピードを上げながら直線に向かって立ち上がる、確かに今までレーシングカーとは明らかに違う強烈な馬力だ! 監督からの予選タイムアタックの指示がイヤーホンから聞こえる

 よし!いよいよだ 最終コーナーをアクセルを床に張り付くほど踏み込み 速力を増しながら立ち上がる、長い間 檻に閉じ込められた狼が今までとは異次元のパワー得て 解き放たれ獲物を追うかの様に、軽快な排気音を残しスタートラインを全速力で駆け抜けるマシーンと俺に取ってのベストラインを各コーナーぎりぎり フロントタイヤが縁石をはみ出すまで攻める、

 頭で描いたライン通り正確にコーナーを攻め最終コーナーでは 今までの体験より増した 最大横Gが俺に襲い掛かる マシーンが遠心力で外側に流れバランスが崩れた! 微妙にステアリングで調整 緊張と集中時だ!アクセルを緩める事無く何とか立て直し通過出来た、初回としては まずまず ピットに入り タイヤの内外側の減りや温度を見ながら再度メカニックが足まわりの調整、

 今度は集中して最終コーナーのラインを少し変え再挑戦 二度目は最終コーナーでブレる事無く走りきる ”アジャスト アンド アタック” を三回行い、ベストラップを見る1’27.66秒、13組出場中5番手だ、監督はじめ皆 大喜びルーキーとしてはかなり良い成績だ、明日は他のチームも本気でアタックして来る 安心は出来ない。

 俺はこの期間が一番好きだ、レースで勝つ事も大事だがチーム全員一つの目的に一丸となって 心の底でぶつかり合い 喜び 悲しみ 怒り 互いの心をぶっつけ 寄せ合い 分かち合う 一つの家族の様に、主役が何人も居る大チームでは 其々の思惑も有り そうも行かないと思う、久々にヨシ子先生との巡り合いもあり、長い間 死似体だった俺は今この世に この世界に生きている!、実感を強烈に感じていた やっと俺が生き返った やはり俺には この世界が一番 帰って来て良かった!

 俺は 「監督はじめ!昨夜からメカニックやヘルパーの皆さん徹夜に近い作業と努力 感謝しています、有難う御座います」 俺は嬉しさを隠さず在りのまま感謝を陳べ皆に向かって頭をさげた  それを聞いた監督 「リュウ これからが勝負だ! 皆の期待を裏切るなよ!」 俺は照れ顔で 「監督プレッシャー!掛けないで下さいよ」 口の重い井原君が珍しく笑顔で 「リュウちゃんは 機械にも詳しいから、適切のアドバイスで調整し易く助かりますよ」 俺は本音で「レーシングマシーンは本当に其々異なる動物の様に性格が違うから、馬のように調教して自分のものにしなければ 俺はその過程が好きだよ」孝ちゃん得意げに 「だからリュウは熱心だよね 私的にサァー リュウのドライブ癖解ってきたわよ」 俺は驚き顔を作り 「凄いね 何だか恐いよ! 心まで見透かされている様で」 「だってリュウの事 好きだもん 全部解ちゃうわよ」 「おい!おい、有難いが俺 女好きだよ!」 「よく云うわよねー!..解っているわよ それでもいいのよ!」 皆大笑いでチーム全体を和ませている、

 俺は孝ちゃんの話をかわし 「クミちゃんは彼氏いるの?」 クミちゃんとタケちゃんが顔を見合わせる 「はぁーはぁん 竹田君か?」 タケちゃんが頭を掻いている、コウちゃんが 「リュウの事だから もう目を付けたのね、手を出してはダメよ! タケちゃんに頭から水掛けられちゃうから」 まさかそんなことはないだろうが 本当にチーム全体を和ませる奴だ、監督何時もの渋みのある顔に益々重さを増した声で 「サァー 明日は最終公式タイムアタック 他のチームも真剣に来るぞ!これから もっと大変だ 引き締めて行くぞ! 皆 今夜は早く休みなさい」

  《富士スピード・ウエイ予選/決勝 round4》

レースクイン1.jpg 翌日、メインスタンドの後ろには各メーカーの出店ブースにTシャツやワッペン、カー用品、フイルム、デジカメの記憶チップ等々や食べ物屋が沢山出揃ってコンパニオン キャンペンガール レースクイーン等で賑わい始めている、我がチームも一画のブースが与えられ、竹田君とクミちゃん ボランテアの車好きとスポンサーからのレースクイーンが集まり 宣伝ディプレイ等飾りつけで大賑わいだ。

 パドックでは新しく加わったスクールの生徒達 レースやメカニックの体験学習も兼ねタイヤ交換等の指導や練習に大忙し、流石に車好きの生徒達学習能力も高くスムーズに運ぶ、

 他のチームでは常時その倍位のメカニックは揃えている、二日目の公式タイムアタックではコンマ何秒か短めたが他のチームも頑張り一台下がり六番目のスタート位置になってしまった、前回までは十位前後だったようだ 初出場では良い成績と監督に言われ少しほっとした、二日目の夜はチーム全員で夕食会、

 監督はチームの皆を集め 「さー明日はいよいよ本番! 皆さんも力を合わせ頑張りましょう、ご存知でしょうが 今回からドライバーに龍崎君を起用致しました」監督は俺に手を差し伸べながら「リュウは改まった挨拶が嫌いな様なので 其々始めての方は食事を取りながら 互いに紹介を行ってください、では明日の検討を!」

 天気の情報が入りどうやら 明日は雨の様だ、初のデビュウで雨か!" あーぁ 附いていないよ ”、少し不安になるが条件は皆同じと話題を変える、俺は生徒達1人1人に握手と冗談交じりの挨拶を交わし チームの仲間意識を高める事に努めた、

 我らチームに集まった皆さんを隈なく挨拶に回り 最後に馴染みのメカニックの横の席に腰を下ろし リラックスするため井原君に話しかけた 「井原君には彼女いるのですか?」 孝ちゃん 得意げに 「井原さんは結婚しているのよ すごく可愛い奥さんよ なんで私には聞かないの?」 俺は彼しか彼女かわからず 考え込む様に 「う~ん いるの?」 孝ちゃん 「何よ!その聞き方 いる訳無いって顔して..いないに決まっているでしょう! リュウ 一筋だから、もう分っているでしょう」 何だ!俺に振って 「だから! 俺はダメって云ったでしょう」 「解っているわよ! もうリュウは女好きのスケベなんだから、目がレースクイーンにばっかりに行っているんだから ダメよ!」

 生徒達や我がチーム皆大笑い 監督 言葉とは裏腹に笑い顔で 「孝ちゃん あんまりリュウを困らせちゃダメだぞ」 孝ちゃん膨れ面で抗議する様に 「もう監督まで 解っていますよ、明日雨の様うだから締まっていかなくちゃね」 本当に彼の御陰で皆和やかになり 纏ったチームになりそうだ、

レースクイン7.jpg スクールの生徒の一人が俺に質問してきた 「龍崎さんのライバルは誰ですか?、其れと何方のチームですか?」「まだこのクラス 俺は新人だよ 全員 他の全チームがライバルかな?」生徒 「新人って事は無いでしょう 前に噂良く聞きましたよ」「此のクラスになると全員それにこのレースで俺は新人だよ!誰と言う訳では無いよ まあー何時だって自分がライバルかな、先ずは一秒でも自分に勝つ事だよ!」 生徒は驚きを見せ 「凄い!それでは目標のライバルが居ないと言う事ですか?」

 俺は苦笑して 「違うよ!解っていないな!少しでも早く走れる様に 自分との戦いだよ、それに何時だって全員がライバルだよ!、只 レースになったら何も考え目の前の獲物を追い詰めるだけだ! それと他のチームの事は余り気にならないよ 気にしても変えられないだろう、自分のチームに与えられた環境を最大限に生かす事 後は監督のレースの組み立てだよ もちろん俺もそうだがチーム全員で戦っているんだよ」

 生徒不思議そうな顔で何か納得がいかなそうに 「そう云う物ですか?」「他のドライバーの考えは 知らないが、現実はそんなに映画や小説のようにドラマチックな物では無いよ、・・・そうだなぁー 与えられた物や環境を最大限に生かし目の前の獲物を追うハンター  其れが俺にとって一番の魅力かな」 生徒は少し期待外れの答えに考え込むようにして 「そうですか!・・でも何か解る様な気がします」 「まぁー 人それぞれだよ・・ライバルを作りそれを目標に戦う事もいいんじゃないかな」 「ですよね」 きっとこの生徒もいろいろな人の助けがあって戦える事にきずくだろう

 いよいよだな! 日曜日 本番決勝日、夕べは流石に興奮して寝つけなかった、朝食を済ませ 小雨が降っていたが、俺は傘を差しコースの再チェックに出かけた 水溜りや滑り易い所を目標に見立て特に頭に入れコースを点検し歩いた、有り難い事に雨にも関わらず 観戦者が合羽や傘を差し続々集まっている、

 念入りにコース一周しパドックに戻りかけた時、孝ちゃんが息を切らし走って来る 「リュウ お客さんだよ、物凄く綺麗なお姉さんが尋ねて来てるよ」 「誰だろう?スポンサーの人かな?」 孝ちゃんと歩きながらパドックに戻った

ヨシ子来ちゃった.jpg 驚いた事に女医先生が待っていた!先生は俺を確認したとたんに、険しい顔がパット明るくなり俺に近寄り 「リュウ 来ちゃった!..だってリュウの大事なデビュー戦でしょう!」 まだヨシ子と云いずらく 「先生!びっくりしたなぁー!ありがとう この雨の中か大変だったでしょう?」 俺はまさか来るとは少しも思ってもいなかったので本当に驚きと嬉しさでいっぱいであった!

 先生は 霧深くなれない場所への一人旅、緊張した顔で 「ええ 横浜駅から国府津 御殿場まで電車乗り次いで其処からタクシー 周りには人影も無く山道を雨と霧で景色も見えなくなり フロントガラスの水滴を取り除くワイパーの単調に忙しく動く音だけ 何か凄く不安で寂しくなちゃった!」

 「だよね 心細かったよね 本当にありがとう」 俺は本当に嬉かった やっと先生に笑みが戻り 「リュウ 私がハラハラしたり恐がると思って 何も知らせなかったのね?」「 ごめん! 来れるとわ思なかったから本当に嬉しいよ!」 先生は声を潜めて「リュウは二度と前の奥さんの様に・・ごめんなさい でも云わせて! ハラハラドキドキ あんな思いさせまいと思い 私に観戦して欲しいとは云へなかった事 解っていたわ ・・私は大丈夫よ!」 俺は何故か ドキとしながら 「そんな事 考えもしなかったよ、仕事が忙しくて 来てくれると思っていなかったから 本当に嬉しいよ」「ほんとに?」俺は孝ちゃんが興味深げに聞いていたので 曖昧に頭を”ウンウン” 縦に振る、

 ピットに戻り チームの全員の痛いほどの視線を感じた 先生と一体何を話しているのか? 興味ぶかげに眺めている、俺はあわて手のひらを先生に向けて 「皆さんに紹介します、鶴見 佳子(ヨシコ)さんです エート・・・」 戸惑い言葉の詰まった俺を察したかのように 「紹介に預かりました、龍崎の..」  俺の顔を見、少し躊躇いがちな表情で  「・・婚約者のヨシ子です 龍崎共々宜しくお願い致します」 挨拶の後 即座に俺の耳元で小さな声で 「リュウ 勝手にごめんね、これで良かったかしら?」俺はエッエ想わず先生の顔を見直す 真直ぐに俺の顔を見つめる目を見て 先生は結婚を決意した様だ 駄目出しの理由もなく頭を小さく立てに振った、俺は続けて 「そう云う訳ですので、此れから宜しくお願いします」 と二人して頭をさげた

 そうか..なんって大胆で自信のある人だろう! 俺の煮え切れない気持ちを知っていたかのように いずれ話そうと思っていたのだが もし俺が違うと云ったら如何するつもりだったのか? 俺の気持ちを全て知っていたかの様に 驚きも有ったが先生は結婚するつもりなんだ、本音の処 助かったが母の言葉の様に俺は責任が持てるのか?今後のレースに影響するのではないか?別の不安が頭を過ぎる、

 俺達がこんなに急激に進行してしまう何って思いも因らなかった いずれスポンサーの耳に入る事は当然だろうと不安が過ぎったが・・何も悪い事をしている訳ではないと居直る事にしたら落ち着きを取り戻したが 次には先生の為に以前俺の義父の処にはもう次回はお願いは出来ないなぁ と不安が残った。

 監督初めスタフ全員拍手で歓迎してくれ、コウちゃんが目を丸くして 「綺麗な人!この人がリュウの好みの女なのね!・・・メカの鈴木 孝三です、残念だけれど..おめでとう! ねぇーヨッちゃんって呼んで良いかしら?」 「えっ!」 先生は目を見張り俺を見 確認を取り 「はい! ヨッちゃん・・ねぇ 考えて置くわ?」 孝ちゃんは察し良く手を出し「とにかく よろしくね!」先生に握手を求めた、俺も先生がヨシコと呼べと言うから困ってしまったが ”ヨッちゃん” なら呼べそうな気がしたが 余好きではない様だ。

 監督の顔も綻び 先生に握手しながら 「北原です 婚約おめでとう! 龍崎君は何も話していなかったので驚きました、此方こそ宜しくお願いします」付け加えた様に「龍崎君には期待しています」 監督の挨拶に先生は思はず自分の言った言葉に照れを感じたのか 俺の顔を緊張し探るような眼差しで俺を見詰めている、俺は監督に向かって示す様に手を差し伸べ 「俺のチーム監督でオーナーでレーシング・スクールを経営しているよ」と紹介し なお続けて「以前からレースの大先輩で監督と同じチームで走った事が有り、間もなく監督はレーシング・スクールを開設し声を掛けて頂いたもので..」 そんな経緯をへて監督の世話になる事などを説明した、ちょうどお弁当の時間 皆其々自己紹介をして和やかに過ごした。

 監督が気を利かして 「リュウ! ヨシ子さんと一緒にレストランに行って来なさい、スタートは一時半だから一時までにレーシング・スーツを着て間に合う様に」 孝ちゃんふてくされた顔で 「リュウのお弁当頂いちゃうわよ」と俺に投げかけた「いいけど?食べすぎで肥るよ!いいの?」少しは気持ちもわかるが突っぱねた 孝ちゃん外人の様に肩をすくめ 両手を広げ「もー ヤケ食いよ!」相変わらず皆の笑いを集めていた、俺は少しホットして先生を誘いレストランに向かった

 俺達はサーキット内のレストランで昼食を取りながら 先生は 「リュウごめんね、リュウの了解も得ないで とっさにあんな事言って でも私の本当の気持ちよ! ・・リュウ本当にそれでいいの?」 何か先生の意気よいに押されても 悪い気はしなかったが 俺が同意しなかったら如何するつもりだったのだろう そんな事とは裏腹に  「いい(良い)に決まっているよ! それに初めからそのつもりで俺を誘ったんでしょう?」「ええ! ちょっと心配でしたが リュウさえ良かったらって」 「正直ほんとに驚いたよ でも助かったよ! 俺 挨拶が苦手で そのうえ急に俺に振られ 何も言葉が浮かばなかったよ、・・でも驚いたな!本当にそんなに簡単に 俺でいいの?」

 「そうよ初めから決めていたの 以前にも云ったでしょ! 私もリュウが きっとそうしたいと勝手に思って、それに何事にも慎重な私なのに 普通お互いを知るために もっと期間を得てからと考えるのに 自分でも不思議だわ・・何故かじっとしていられず 待っていられなく此処まで来てしまったの!」・・「だから思わず あんな大胆な言葉が出てしまったの・・云ってから自分でも驚いたわ」

 今考えれば母に打ち明けた事態 レースやスポンサーの事も考えずに 自分でも不思議に思った「うん・・俺からも何れ先生に結婚の事話そうと思っていたんだ、俺此に来る前におふくろに合って 先生との事話して来たんだ」 「リュウ 有難う本当にいいのね お母様驚いたでしょう」 「何時もの事だから それほど・・そうだ!近い内におふくろに合ってくれる?」

 「ええ そのつもり心配しないで大丈夫よ、リュウが私にレースの事 云えない気持ち解るけど、一緒に考えましょうって云ったのはリュウでしょう、責める気は無いけれどリュウが前に言った事と同じに一人だけで待っている事の方が辛いし寂しいのよ・・レースは恐いわよ でもリュウを苦しめる事になるから、リュウと同じ夢追うの いいでしょう?」

 ヨシ子良かった.jpg「あぁー これからそうするよ 強いんだね」 「ちがうわ 此処へ来るのだって 霧が出て回りは見えないし雨は降るし 本当に寂しくなったし心細く不安で恐かった、本当は弱いんだから!」 俺の肩によりかかってきた 「分かったよごめん、さ食事して着替えなければ」 「それと さっきコウちゃん こうぞう? 男みたいな名前ね ”残念だけれど” って、どう云う意味?」 「あぁーあれね、アハハ後で分かるよ 気にする事ないよ」 やはり先生も孝ちゃんを女性だと思っている

リュウ横顔.jpg 食事を済ませキャンピングカーに向かい車内で軽くキスを交わした、レーシング・スーツ(ツナギ服)に着替える、先生が手伝いたいと背中から腰に腕を回して来た 「それでは着替え出来ないよ 帰ってからね」 「はーぃ!今大切な時だよね でも寂しかったのよ、リュウの気持ち確かめられ良かったわ、・・さぁー着替えて」 防火用耐熱アンダーウエア上下(厚手の耐熱タートルネックのシャツとタイツ)先生が後ろから手を貸してくれとても楽に出来た。

 「リュウ お守り鎌倉の鶴岡八幡宮で宮司様にお払いを受けて頂いて来たのよ 何処か身に付けて神主.jpgね」 俺は余り神頼みはしないが、お守りの絵柄は流鏑馬だ きっと馬と車を掛けての事だろう、先生からの初めての心からのプレゼント本当に嬉しかった 「ありがとう嬉しいよ 付ける処無いから大事にポケットに入れとくよ」。

 これは蛇足であるが 俺は無宗教だ、これは日本人の良い所だと勝手に思っている 俺だけかな? 人は弱いもの困った時の神頼み それで良い 自分の都合のいい心の神にお願いする事だ、他の人や他の国の宗教を批判するつもりは無いが、そのために争い殺し合い 又人の心の弱さに付込み それを利用するカルト集団まで出てくる始末、単純に考えても何か間違っているが 群れなければ生き伸びれない人間の性なのか?俺は各々の都合の良い自分なりの心の神に願えば良いと思っている、俺は今勝利の女神に祈るだけだ。 話をもどそう、

 ソックスも防火用 その上に此れも防火耐熱お守り.jpg繊維で出来た アンダーウェア上下とオーバーオールのレーシングスーツそして車に乗る時、頭から覆面レスラーの被るようなマスクにグローブこれも防火耐熱用 此れだけでもそうとう夏には暑いそれにレーシングシュウズとヘルメット

 「リュウ 凄くかっこいい! 中に沢山着るのね ROLEX daytona Na116523-1.jpg知らなかった」 「安全の為だよ でも夏はかなり暑いよ」 俺の外した腕時計デイトナを受け取りながら 「本当にカッコ良い!ねー!リュウのこの腕時計 私に頂戴!」

突然の先生の要求に驚きが有ったが「エー!これ俺がレース始めた頃どうしても欲しくて高かったけれど 無いお金出してアメリカの基地に働いている外人に頼んで取り寄せてむらったものだよ、アメリカ国内でも兵士や家族は免税と普通は外国から日本に入る時は品物に税金がかけられるがアメリカの兵士は免税で名目上は俺にプレゼントした事にしているの だから俺にも買う事が出来たの」・・

 「それに男物でゴツイし外側のケースは普通は板をプレスして加工した物のだが、オイスターと言って分厚いシルバーゴールドを刳り貫いて作った物で重いよ 裏に俺のイニシャル入っているから」俺はこの腕時計に関わらず 技術と匠の技の芸術が凝縮された物に愛着感じ先生の要求に戸惑う。

 「だからなのよ! リュウが大事にしていると思ったからこそ頂きたいの! 代わりにリュウの欲しい時計買ってあげるから お願い!」 何故か先生の真剣な眼差しが突き刺さる様に気になって、何か従わなければならない様に思った 「うーん じゃぁーいいよ、代わりは今のところ考え付かないから 要らないよ」 「嬉しい!いいのね、ありがとう!リュウだと思って大事にするわ 欲しい変わりが見つかったら云ってね」俺を意味有りげに鋭い眼差しで見詰め もう一度確かめる様に「本当にいいのね!」 「うん いいよ・・本当に大事にしてね」

 先生は嬉しそうに、自分のカルティエ・パシャ・クロノの時計を外し 付け替えた 「うん大事にする有難う、これ患者の脈拍 計るのにも秒針が見えてとてもいいのよ」 まだ俺に未練が有ったのか 「先生の時計だって値段高いし 脈計れますよ」「小さいから判りにくいのよ これがいいの・・ね!」嬉しそうに腕に付けた時計を左右に廻し眺めている 突然俺の首に腕を巻きつけ 頬にキスをして 「大事にするわ ありがとう! それに この雨大丈夫なの?」「俺にもわからないよ 皆も同じ条件だから」

 「まだ少し時間あるでしょう?」「あぁ 何?」先生は助手席を指さして 「リュウここに座って!」座った俺の両肩に手を置き 真剣な表情で俺を見つめ「リュウの左右の手を重ね太腿の上に静かに置いて 姿勢を良くして 顔を少し下に向け」俺は云われる様に静かに従った「そう そうよ! そのまま静かに目を閉じて、いい 何も考え無いで三分ほど瞑想するの」「俺には雑念や邪心が一杯有って とても瞑想なんて出来ないよ」先生は真剣な表情で真っ直ぐ俺を見て「いいから 目を瞑って 静かに意識してゆっくり呼吸を整えるの・・そうそよ 意識して呼吸をすることで 他のことは忘れてしまうの・・そう そう! はい 初めて 呼吸を意識して! 三分経ったら知らせますから」

 俺は 何かヨシ子から先生に戻った様に思えた それから 静かに目を閉じ待った、なるほど 呼吸に意識する事で他の雑念も忘れてしまった 先生の「ハイ!三分立ちました」と云う声で静かに目を開けた「何か気持ちのせいか 頭がスッキリしたみたい だよ」「でしょう!これからレースのスタート前にやってね 約束よ」「うん そうだね ・・あ!もう時間が・・ さぁーそろそろ時間だ 行こう!」。

 キャンピングカーを出てパドックに向かう途中、子供達のサイン攻めに会う、五、六人サインをし 「ごめんね  もう時間無いんだ また後でね」 「リュウ 人気者だね」 「彼ら誰でも良いんだよ レーシングスーツ着ていたからね、それとレースのプログラムに顔写真載っているから、でもね あの様なファンがレースを支えているから、大事にしなければ」先生にとってはなにもかも珍しく 感心したように「そうなんだ・・一人ずつ大事にしなければね」。

 「このクラス初戦でね 予選で六番目からだよ まぁ 真ん中位の所かな 気合入れて行かなければ!」 「フーンそうなの? ・・ねー この雨でもやるの?」 「大抵は このくらいの雨ではね だいいち こんなに集まって頂いたファンや観戦者に申し訳が立たないよ」 「でも・・滑りそうで恐く無いの!」 「皆に聞かれるが 恐いと思ったらもう乗れないよ」 本音は時として少し恐いと思うが、其処に飛び込まなくては向上は無い自分を信じて走るだけだ、本当に恐怖を感じたら体が動かなくなり危険である もう車には乗れなくなる、 

 幸い少し空が明るくなって来た、我がチームのピットに戻り ヨシ子を久美ちゃんに預け

FujiRyu.jpg グリッドガールにスポンサーからの宣伝用ビッグパラソルを差され、皆からデビューと婚約を祝福と励ましに肩や身体を叩かれ テレながらコース上のレースシングカーに向かい乗り込む、

 井原君や孝ちゃんに安全ベルトを確り締めてむらい 大きく息を吸い込む、誰しも感じる事だろうが この時間が一番嫌いで長く感じる、他のドライバーが百戦練磨の強者に見えるが俺が一番早いんだと自身に言い聞かせ、目を閉じてステアリングを確り握り暫く精神統一し雨のコースを心の中で復唱し 他の不安要素は考えない事にしている。

 いよいよメカニックはエンジンをスタートさせる為のバッテリーを繋ぐ 本番エンジン・スタートだ!、けたたましく全車一斉にエンジンの排気音が響く、多分耳元で大声話ても何も聞き取れない位のけたたましさだろう 俺にはヘルメットと耳栓替りのイヤホンをしても微かに聞こえる、この時ステアリングのボタンの確認や操作の確認は色々有り一番忙しい ダッシュボードに並んだボタンからレインポジションにスイッチ合わせる、メカニックやレースクイーン・グリドガール達がパドックに引き下がり 安全を確認したのちグリーンライトが点灯 前日予選で決められたスタート順位順に各車 ペースカーに従い走り始める、

 初めの周回はフォーメイションラップ 雨の中お披露目とウォームアップ走行が始まり、水飛沫で前が見えない 俺は前車の微かに見えるテールランプを追いながら走る、雨の場合は危険を避ける為にローリング・スタートになる、通常は先導車が判断してスタートの混乱をなるべく防ぎ事故を起こさないためレース・カーを予選順位に走らせながら安全を確認し先導車が退きスタートを切る、

 雨飛沫が視界を遮りコースの下見所ではない、普通はフォーメンションラップは一周で終わるが 今日は雨がひどい為3,4周 様子を見ながらスタートを待ちながら先導車に従い走る、今は天候の悪化 雨が強くなりコースアウトする車が多く 一旦 全車ピットに戻り 運営委員より一旦スタートを見合わせ、中止か続行か様子を見 判断する波乱の幕開けとなった 、

雨スタート.jpg 暫くそのまま天候の回復待ちで、雨が小降りなり空が明るくなり始め 再スタートに決定だ、俺達チームは監督の指示で燃料を満タンにする コックピットを降りた俺に向かって「リュウ これで給油無しで走りきるぞ 無闇にアクセルを踏み込むな」 不思議に思ったが 「分かりました」燃料が少ない方が車体が軽くなりスベリ安くなるが 惰力は弱くなる 一方車体が重ければ一旦すべり始めたら惰性が増し止められない?どちらにしても 危険はぬぐえない!

 俺は慌てて井原君に向かって 「ウイングを元に戻してよ」少しでもマシーンを抑え込む事が必要だ 「はい!雨で滑り易くなったから元よりもう少し立てます」 「あぁ!そうして」 後で監督のこの作戦が当たる事になる、タイヤも冷めない様に再びウオーマーで暖め再スタートを待つ 天候は回復に向かって再び各車ピットロードを走りスタート位置に並ぶ

監督&ヨシ子・ピットにて1.jpg グリーンライトが点き 再スタート、コース上から先導車に従い 本来は温度を上げ路面との粘着度を高めるがその必要は無い レーンタイヤで水捌けを良くする溝が有る為に状況による、

 スタート位置に付く前に一台コースアウトし最後尾からのピットスタートになる 自動的に一台繰上げ五番目位置だ、

 此れまで何回スタートを迎えた事か スタートシグナルが付くまでが心臓が飛び出す位高鳴る、俺の記念すべき再デビューは最悪の雨か前後左右のドライバーが超一流の強豪ドライバーに見える、きっと皆俺と同じだと不安を断ち切ろうと思うがそうもいかない 全ての不安を打ち消す為大きく深呼吸する、

 マシーンを雨用スタートポジションに操作、シグナルが青に変わりローリング・スタート先導車の後に予選順位順に緩やかに続き戦列を作る、雨も小降りになり たぶん一週でスタートだろう コースの終盤 最終コーナーで前車との間隔をつめる、先導車がピットロードに退く 予選一番の車両(FJマシーン)がスタートラインを過ぎた時点でレースの始まりである 最終コーナーを速度を上げながら立ち上がる、

 さーぁスタートだ! ”おちつけ!” 前車に集中する!クラッチバドルを静かに放しクラッチを繋ぎ ギアーを一段上げ徐々にスピードを上げる、

 スタートライン通過! 何時もより静かにアクセルを踏み込む 雨でタイヤがスリップしない様にだ、前車に離れない様に上出来のスタートを切ることができた この時すでに俺の不安は消え獲物を追う狼に変わる、水飛沫で前が見えないが前車に襲い掛かる様に第一コーナーに飛び込む 前車を捕らえた!、横に並び込む 此処が勝負処だ!

 雨.jpg少し相手よりブレーキをギリギリまで遅らせ同時にシフトバドルを二回素早く握り返す2段跳びのシフトダウン、エンジンブレーキを併用し 微妙な車体の動きも逃さずブレーキング勝負を掛けた!、車体半分位の競り合いタイヤのスリップが起きない事を願いながらステアリングに集中しアクセルを静かに踏み込む、何とか前車を交わし前に出る事ができた、慎重にテアリングを操作しコーナを抜け よし! このまま落ち着いて行こう、そのまま抜き去った後続車を押さえ 少しずつ離す事が出来 何週か前車との距離を短締め様と焦りと不安で心が折れそうになり 車が安定しなく 真っ直ぐに走る事さえ一層困難になり前車との間隔がなかなちぢまらない 焦る心と直のコースでの油断を招き コース上の水溜りに乗り 瞬間 車が思わぬスピン! ガードレールが目の前に見え 景色が霧の中を流れる コントロールする間もない  ”あぁー此れで終わり!” と思ったがコースをはみ出す事も無くコース上に一回転、幸い走る方向に立ち直ってくれた  ”..おぉ!ラッキー助かった!”

 幸い後続車に抜かれる事無くそのまま進むことが出来 ホットする、あせるな!自分に言い聞かせ神経を研ぎ澄まし バケットシートから尻と背中に伝わるマシーンの微妙な挙動を感じ取る事に一層集中する 反射的にアクセルとステアリングに反映し何周か走る、

 カーブもなるべく前車の轍に沿い乾いた所を選ぶ緊張感で何時もの倍以上の神経を使い疲れを感じる監督から無線で燃料を持たせろの指示 余りアクセルを踏み込むなの意味、

 途中 又雨がひどくなり何処かで事故が有ったのか?コース脇に立つ競技マーシャル(marshal)により追い越し禁止の旗が振れている 処理の為ペースカーが入り追い越し禁止 少し気持ちを休め緊張をほぐす、

 監督より「雨でスリップ2,3台コースから飛び出した様だ リュウ!慎重に我慢して走れ いいな!」 うるさいな こっちも必死だよ! 俺はコンピューターを動かすアルゴリズムじゃぁー無いよ監督!と言いたかったが監督は冷静で正しい グッと気持ちを抑え出る言葉は違って

 「はい 監督!」全車ペースカーの速度に合せペースダウン 前車に近ずくが後ろからも真後ろに迫って来る、スタート直後状態に各車が犇き合うが規定により其の時の順序を守り抜く事は出来ない 6周回後事故車を片付けコース上がクリアーになりペースカーが退きレース再開だ、

 各車一斉にスピードアップ あせるな!あせるな!自分に言い聞かせ、アクセルペタルをおもきり踏み込み速度を上げたいが我慢 我慢 一瞬のミスで全てを失う ステアリングに集中する、バックミラーに後続が写し出され迫って来る 焦る気持ちを抑え慎重に水の溜まっているコースを避けマシーンを宥める様に走行する、

 監督から連絡 「前の二台がスピン コースアウトだ!、二番手だ!そのまま燃料をセーブしろ!」 「解りました! 前が見えない」 監督「皆同じだ!あせるな!」又もペースカーだ、雨の滴で後続車が歪み擦れてバックミラーに見え隠れするまで迫ってくる 後続車を意識しながら走り続ける、4周後にペースカーが退く アクセルを静かに踏んだり緩めたり、なるべく水の少ないコースを選びスピード慎重に上げ走る、

 後続車と距離とるヒヤヒヤだが相手も慎重で仕掛けて来ない! 周回が長く感じる 後何周あるのだ 「監督!後 何周ですか?」 「後8周 我慢しろ」俺の気持ちは痛いほど解っているのだろう、 長い!レースがこんなに長く感じた事はなかった 雨F.jpgほとんど前が見えなくなった、ヘルメットのカバーバイザーの汚れた最後のステバイザーをむしり取り投げ捨てる、さぁーもう少しだ気を抜かず行くぞ! 後7周、良し一周過ぎた後6周....5..4フーゥ! 何とか燃料をもたせ最終ラップまで来た よし後続車も見えない後一周だ! 高鳴る気持ちを抑え慎重に走り切り 待ちに待ったチェカーフラグだ! ゴールラインを過ぎ思わず 大きくため息が出る ”フー!終わった..まったく! 雨でハイドロプレーニング、氷上との戦いの様だった レースと言うより綱渡りの様な曲乗りと我慢比べのようだ 通常のレースより数倍疲れた” それでも 片手を大きく上げ 我がチームの前を通過!

 監督からリュウ良くやった二番だ! 無線の声がやたら大きく聞こえ喜んでいる様子が解る、この雨でも観客が多く熱心に声援を送ってくれる、俺は手を上げ拍手に答えながらゆっくり一周ゴールの指定場所まで走る

 チームクルーと喜びを分かち合い手を握り合い 「ありがとう、ありがとう」繰り返すしか何も浮かばなかった、先生も涙ぐみ喜んで俺に抱きつき「リュウ!こんなに興奮して歓喜し感動した事なかったわ!」痛い位に俺の首に巻き付いてきた「うぅ!先生苦しいよ」「ごめん つい興奮しちゃった」「 ありがとう! 先生のお守りのせいかな」としか言葉が出てこない、走りきった感動で頭の中が真っ白だ! 孝ちゃんは俺に向かって「先生は両手を合わせ額を押し付け祈り通しだったわよ」と興奮気味に俺に報告してくれた、

 先生は監督やメカニックと俺との無線のやり取りを体験して、まだ興奮した様子で 「レースって監督やエンジニアの井原くん孝ちゃん皆さんの助けがあって 成り立つのよね」まだ興奮気味に話を続けた「改めて本当にリュウの事 宜しくお願いします!」 まるで息子を気使う母親の様にクルー達に何度も頭を下げていた 俺は照れくさくもあり 「先生! 皆 解っているから、もういいよ・・皆!本当にありがとう」

 ラッキーにもデビュー戦で表彰台に立つことが出来た、案の定インタビュウー 苦手だ、俺は ”ただ々我慢のドライブだった、監督の作戦とクルーの皆さんの努力に感謝する” とのべ 早々に退散した、

 この後 全チームと関係者のパーティが有る、ここでは車で帰る人など居るのでお酒は無理に進めたりしない、各チームの交流会が目的で この時ばかりは和気藹々、他のチーム監督から良いドライバー見付けたなの連発、監督も鼻高々の様子だ、

 俺は ”偶々運が良かっただけですよ、 皆さんのチームのドライバーさん凄く早いですよ、俺なんかまだまだです、それに教えて頂く事沢山あります” 宜しくお願い致しますと挨拶廻り、本来なら 自分を売り込むチャンスの場であるが俺の性格余りそうした事をしたくなかった、

 一段落付いた処で俺は監督に ヨシ子さんは明日仕事が有りますから、先に送って帰りますので 後の事お願いして帰る事にした、チーム全員に送られ なんだか気恥ずかしい思いであった、

 帰りの車の中、言葉少なくなった俺を心配したのだろう「運転疲れていない?代わりましょうか?」「平気だよ、先生の運転の方が疲れるかも」と冗談ぽっく云った  先生はカッチンときたのか「馬鹿にしないで!」多分先生は運転に自信が有ったのでしょう 俺は慌てて

 「ごめん 先生だからって事ではないよ、この道はもう数えきれないほど通った道だがら」 先生はつい言い放った言葉の間違を訂正する様に「リュウだったら運転技術に格段の差が有るから 私もほかの子の運転恐い時があるから もっともだと思うよね 」

 先生は何気無く話題を変え 「リュウ 今日のレース 水飛沫であれでは何も見えないでしょう? どうやって走るの」

 「どうて? コースは熟知しているよ 其れに前の車の轍の跡とテールランプそれにブレーキランプ、後は俺らのクラスの同等腕前の人をだから信頼するしかないね、後はー 微かに横の景色かな 雨のひどい時にはハイドロプレーニング現象が起こりコースはアイス・バーン(氷の上)状態に成る時も有るよ、そんな時は中止になる場合が多いかな」

 先生はレースを思い起こす様に前方を見詰めたまま 「とにかく ひやひやものよ もう夢中で手の平の汗でびっしょり、あんなに興奮した事 何年振りかしら リュウが夢中になる気持ち判ったわ、表彰台に立ったリュウ素敵だったわよ」

 「ありがとう たまたまだよ そんなに甘くない世界だから、皆凄い人ばかり! 今日は本当にラッキーだったよ、前車がつぶれ早い人がリタイヤしたからね 走って痛感したよ、やっぱり凄い人たちだね 全然追いつかなくて」

 「それでもかっこ良かったな..それと孝ちゃん?面白い人ね!、あの人 GID? ごめん云直すわね..性同一性障害? リュウの事 好きなのかな?」専門用語なんか出る処なんか先生だね 「・・俺にも本当の処 解らないよ! 孝ちゃんの云っている事 本気か冗談か 解らないよ?・・とにかく良い奴?・・奴と云っていいかな~ぁ? その辺は孝ちゃん自身解っていると思うよ そうやって世間と戦って来たんだ、とにかくチーム全体を和やかにしてくれるし 車の調整技術は抜群だよ」

 「そうよね 彼なりに苦しんできたのよね、皆良い人達で気を使って頂て今日一日で皆さんの好意感じ 好きになったわ、皆と話せる様に車の事もっと勉強しなくちゃぁ・・」内心ただ楽しんでくれたら良いのに と思った「・・」「リュウ それに沢山の綺麗なレースクイーン?に囲まれちゃって少し焼けちゃたな」

 「大丈夫だよ! 先生の様な優しくて綺麗な人いなよ!あの脳内メーカーで調べれば 俺の頭の中は全部ヨシ子ヨシ子で墨の処に少し車かな?ほとんど思考力ゼロになっているよ」

 「ほんと?冗談でも嬉しいわ・・・少し眠くなったみたい」 「本当だよ!朝から大変だったから 今日はありがとう、お守り仕事終わってから鎌倉に行って来たの?」「そうよ! 八幡宮の神主さんが居るうちに 急いで大変だったのよ」「そうなの ありがとう!」先生は凄く眠そうであった「・・シート倒して寝なさい!、もう家まで後一時間半位かかりそうだから」

 暫く無言が続き助手席の先生に目を移すと 微かに寝息が聞こえる 「..zzz」「もう寝ているのかな・・」本当に疲れていたんだ、昨日だって仕事で此処へ来る事だって大変な事だったし

 先生の寝顔を見て朝から電車を乗り継ぎ 雨の中あんな寂しい山へ、俺のデビュー戦だからと一生懸命 俺の選んだ世界を知るために違った環境の人達と懸命にコミュニケーションを取って 初めての経験と興奮 本当に疲れてしまったんだ・・なんて可愛いんだ! 前とは違った意味で先生を守らなければ 今度は俺達の為に心からそう思った。

 先生と俺は似たような環境で育ち 俺は世間と教育者の親に大好きな故に矛盾しているが反発を覚え、道を少し外れてしまって ようやくたどり着いた処が先生であり 又先生自身のこの生き方が 何か違うのではないかと疑問を持ちながら 俺にたどり着き きっと俺だったら お互い心の底から全てを分かち合えると感じたのではないか、

 無事 富士のスピードウエイから到着!マンション駐車場 助手席で眠りに落ちている先生の肩口を優しく揺すって起した「あら! もう着いたの? 朝出かけた時より全然楽で早くついたわ、リュウの運転安心出来たし」優しく俺を見つめ 「 ・・今日泊まって行くでしょう?」「エッ!・・はい」「こんな気持ち生れて初めてだわ もうリュウ!が居ないと毎日が寂しくて!・リュウなんか車の事で 私の事など忘れていたでしょう?」 「そんな事無いよ!有る訳無いでしょう」 「本当に?」「うん そうだよ! とにかく荷物降ろそうよ」 俺はあわてて話題を変えた!

 女の人は何て感が鋭いのか 見抜かれているようで少し戸惑った、確かに先生が来るまで考えもしていなかった 多分先生に関しては安心していたのかもしれない

 「リュウ!洗濯物沢山有るでしょう?持って来て」 「いいよ 帰ってから擦るから」この部屋に入り 自分の家に帰った様に何かほっとした、

 先生は部屋に入った途端振り向きざまに 俺の首に腕を巻きつけて 「リュウ 此処に移って来ない?あれから毎日 会いたくて寂しくて寂しくて眠れなくて 夕方毎日ジョギングしていたのよ」そんな 忘れ方もあるんだ!と思った 俺はそんなに直ぐに図々しくしていいのかと思っていたので「いいの?良かったらそうするけど、明日久しぶりにバイト先米軍基地に行こうと思って、仕事終わったら本牧の俺の処から取り敢えず必要な物持ってくるよ・・本当にいいの?」

 本当に年上とは思えない様な 子供の様に嬉しそうに万遍な笑顔を見せ「うれしい!・・良いに決まっているでしょう、じゃぁー夕食用意して待って居るから リュウはお肉好きだからハンバーグで良いでしょう?

 ..あぁ、俺に優しく待っていてくれる人がいるのだ!愛する人の元に返れるのだ!..幸せの中にどっぷり浸かって それが普通の出来事と思っている人には解らないだろうが これほど嬉しく安らぎを感じた事はなかった、 先生と俺は何と波長が合うのかと思った..昔ならレーシングクルー達と勝利の美酒で一晩中騒いでいたが、今は俺も変った、普通なら何所か高級レストランで二人の出発を祝いたいはず でも誰にも邪魔されず全て手作りで二人の門出を祝いたいと思ったからだと思った、俺には最高のプレゼント!

 「いいね、明日楽しみに帰ろう」 「余り、料理した事、無いから美味しく出来るか解りませんよ、それと遠慮しなくて良いのよ 洗濯物出してね、明日 洗って置きますから」「うん」 「はい、コーヒー出来ましたよ」「有難う リビングで飲んでいい?」

 先生も缶ビールの蓋を開けながら 「どうぞ 私もビール飲んで良いかしら? それとリュウのレースのスケジュール教えて」先生としての一面だけ知っていたが 家の事は何もしないと思っていた 意外と家庭的で驚いた、

 「うん 予定書いて冷蔵庫の扉に張って置くよ、取り敢えず次は鈴鹿で7月11,12日だよ」 「そう じゃあ来週土日 空いている?」 「うん」 「じゃあ 私の両親に会って頂ける? 連絡しておきますから」 「はい 日にちはどっちでも良いよ 俺何か緊張しちゃうな!」返事をして気が付いた おぉ!ついにダメ押しの要求がきたか!これで俺もがんじがらめ! 少し不安を感じるがこの先も先生と一緒に過ごしたいと思う気持ちが強くあった! 「大丈夫よ 心配しないで、じゃあ明日 両親に連絡取っ手おきますから」缶ビールを高く上げ「それと 改めてリュウのデビューと入賞 おめでとう」 先生ビールを一口 「あぁー 美味しい!」俺はコーヒーカップを上げ 「ありがとう」と素直に受け取った。

横須賀基地.jpg  翌朝先生は病院へ、俺は横須賀米X軍基地( FLEET ACTIVITIES,YKOSUKA(通称、Base-ベース)に休みのスケジュールは前もって定出、了解を取って有るので心配は無い、勤務するオフィスに入り俺のボス 大柄でデブでとにかく明るいMr: Samuel(サミエル)通称サムにレースでセカンドポジションで在った事を報告、

 外人は大げさだ、オフィス全体聞こえる大声とアクションで"congratulation"皆も拍手で喜んでくれた、リュウ仕事が溜まっているぞ! 同僚に仕事のスケジュウルを聞き 改善するPCプログラム変更や日本人の事務員の表計算等のPCのアップデートを行う、一通り終わり事務員と雑談中

 「Hi! Ryu, Long time no see you. Do me favor for check my PC?(ハイ!リュウ 長い間見えな かったね、私のPCもチェックして下さい)」 「ハイ ミス パトリシア元Tボーンステーキ.jpg気していましたか?あなたのPCは外人サイドですよデイブに頼んだら?」

 「ちょとだから お願い見て下さい」 PCの画面を見ると、I miss you so much!..invitation to T bone steak dinner at military officer's club..(逢えなくて寂しいかったわ 今晩ベース内の将校クラブ・レストランで Tボーン・ステーキご馳走するから行きませんか?) とタイプしてあった

 とっさに 「So sorry, I have an appointment today, I must be going to another place. If you like next time. ごめん、今日は他に約束があるから帰らないといけないから 次の期会いにね」 ちょと残念そうでしたが 「OK! Next time that.. feel regret」

-、 軍の将校の娘さんで 綺麗で可愛い 時々俺を誘ってくる、同僚の平井君が察しているのか 「デートしたら良いのに! 何かと将校の娘さんだから有利になるよ」

 俺は内心 損得で恋愛出来るかよ!と思ったが 「俺はダメだよ 平井君誘って見たら?」「私ですか?ダメですよ相手にされないすよ」俺は空かさず「なんなら 俺 話してみようか?」平井君は右手を振り「ダメダメ!だめですよ 止めて下さい」 「そうか?、男と女解らないよそのうち誘ったら」 間もなく退社時間になったので、今日は急いで帰り支度をして 

タッチおじさん ダヨ!.jpg有難う御座いますストーリ【前編6】へ続きます、クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28是非お読み下さる事お願いします


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ナベジュン

タッチおじさんこんばんは!
サーバーの不具合で3日ぶりにやって来ました。
レースの記事が本格的でした!レースクイーンとマシンの写真がniceでした。
パソコンサーバーに不具合がなければ明日も参上します!
by ナベジュン (2013-01-20 01:31) 

つなみ

少し加筆されました?(*´∇`*)
こんにちは。いつもありがとうございますw
by つなみ (2013-02-25 13:53) 

RuddyCat-Lalah

レース前のマシンのセッティングがらレース終了まで
リュウの冷静さと集中力が途切れることなく持続している様子がこちらにもリアルタイムで伝わってくるようですね。それがレースを終えてからの心の解放と相まってレースの緊張感が伝わってきます。
by RuddyCat-Lalah (2013-03-03 18:33) 

つなみ

こんにちは(⌒∇⌒)ノ"
やっぱりま~くんさんのイラストきれいですね。
タッチさんの作品のイメージがふくらんで、相乗効果が素晴らしいです。
いつもTwitter有難うございますm(__)mぺこり
by つなみ (2013-05-01 09:21) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
どんどん 加速していく感がいいですね!
ぐいぐいっと遠心力で回ってる感じがします(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2013-06-11 01:58) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
目覚めたら 美味しい珈琲出てこないかな~(笑)
今日は スッキリ秋晴れっぽいお天気です。
お肉 焼きたいな~
・・・朝から すみません^^;
やっと晴れたのでうれしくて(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2013-09-06 07:08) 

つなみ

タッチさん、niceとコメントありがとうございました。(*´∇`*)ノシ
by つなみ (2014-04-23 10:15) 

ちゅんちゅんちゅん

こんにちは!
朝から雨です(*_*)
一日降るみたいです。
今日のお昼は関東ではお馴染みの大戸屋さんに行ってきました。
雨なのに大賑わいでしたよ~☆
籠っていないでお出かけしないといけませんね~(*^^*ゞ
花粉やら黄砂やら飛んでいます、
ご自愛くださいませ(^^)
by ちゅんちゅんちゅん (2015-02-26 14:18) 

mimimomo

こんにちは^^
若いって良いですね^^ 人を恋する気持ちなんて、もうすっかり忘れましたよ。
by mimimomo (2015-08-29 15:27) 

mimimomo

レースの時着る洋服って、耐火用耐熱〇〇なんですね~
雨の日は普通の車を運転するのも嫌なものですがレースってそんな日でもやるのですか・・・?
by mimimomo (2017-08-23 22:09) 

mimimomo

こんにちは^^
まだ続きが読めないでいます。また時間が出来たら伺いますね^^v
by mimimomo (2017-09-14 12:04) 

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