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枯れ葉の流れ着く先 【幻:前編3】 「Fictoin Story」 [小説〔Story〕]

   ☆=ストーリ【前編2からの続きです、是非お読み下さい=☆ ?

                                                                       《富士サーキット》 Fuji Speedway

Fuji_Speedway1.jpg

 次の日から いよいよ待ち望んだ富士サーキットで俺のドライブ(運転)に合わせたレーシングカー(racing car)のシェークダウン(shake-down)性能テストの走行と調整作業が始まった、

 これは富士だけではなく国内それぞれのサーキット毎に行われるが ?特に俺にとって全て初めての挑戦 、FJは国内最上位クラスのカー・レース? パワーや反応が繊細で このレシングカーになれる為にも念入りにテスト走行をし リノベーション(renovation)を行われなければならない、

 エンジンの分解 メンテナンスは言うまでも無く変速機のギャー比の調整交換、サスペンション、アブソーバーの調整、ダンパーの交換、アライメントの調整、トーイン、キャンパー、タイヤの減り具合温度、ダウンフォースのフロント・リアーのウイングや肝心要のエンジンの調整 主だっては負荷に対しての立上がり良さ等、今思いあたるだけでも沢山の仕事が有り 同様に各チームが凌ぎを削り遭う場所でもある。

 このクラス”FNフォーミラー日本”ではF1とは異なり、日本での規則と規格ほとんどワンメイク(同じ仕様の車体 排気量)と 唯エンジンのメーカーが違う、これは車の開発に余りお金を掛けなくて済む事とで 自動車レースの拡大を目的にしたイベントである、本当にチームの技術力とチームワーク この圧倒的なパワーと軽量 機敏さ!真にドライバーの腕が試される処である。

  何度も車の走り込みと調整(adjustment & run)です 又この車(FN.machine)の特徴は ”オーバーテイク システム(over-take system)?レブ・リミッター(limiter)エンジンの回転数10,700rpmの制御や開放” が有る事でオーバーテイク(追い越し)が楽になり 使用中ロールバーのLEDが点灯 競技中の各ドライバーやチームに知らせ5回までの使用できこのFNレースの特殊な規定である、もっともこのロールバーのおかげで横転した時に助かったのです。

 今年は富士・鈴鹿・ツインリンクもてぎ・オートポリス・スポーツランドSUGO、各サーキットで行うが前半3戦は先輩ドライバーが家の事情でエントリーを辞め 4戦から俺のドライブに変わる 久し振りに しかも待ちに待った日本でコックピット.jpgは最高ランクのレースマシーンV型8気筒・排気量3,400cc・出力600/hp+α・パワーステアリングホイール(power steering wheel)にパドルシフト(paddle shift)をドライブ出来る期待と喜びがあり、今までレースに全てを優先させてきた俺が 他の雑念や邪心に惑わされている場合ではないのだけれど・・、

 大事な時だと充分理解しているにも関わらず、

 振り払って忘れようと思えば思うほど先生の優しい微笑みが浮かび頭の片隅にあったものがいつしか俺の脳全体を覆い初めて行く、

 如何したと云うのか!何時もならステアリング(steering wheelハンドル)を握ったら 新しい恋人に出会ったように期待と喜びに全てを忘れ充実を感じ もっともっと このマシーンに触れドライブしたいと感じるのに!、

 増してやレースを初めて以来待ちに待ったレーシングマシーン初めて乗り込んだ時 まるで妖しく青く光る抜身の名刀を握った時 心の奥底から湧き上る ぞくぞくと震える 妖しいときめき覚えた様に このマシーンの瞬発力と反応の鋭さに驚きと興奮を感じた、ジャジャ馬の様な600hpの大出力で車両重量670kgの軽量で繊細、国内最高峰のレースマシーンを如何に乗りこなすか、期待と喜びに燃えあがって来た筈なのに?

 ・・・こんな事が起るとは考えても見なかった・・・ レースが全ての俺に いったい何が起こっているのだ!

 俺が長年追い求めてきたレースマシーンが俺の手の内に入ってしまったからか? 其れとも それ以上に魅力がある人なのか? 躊躇いながらも幾度と無く携帯電話に手がいくがそれを止める、

 何の約束をした訳ではないが? 何を次を望んでいるのか!いやこれは別の次元だ!いや先生の事等を今考える時ではない 止めるべきだ!? だが思えば思うほど俺の心を支配してしまう。

 心此に非ずと感じたのだろう、北原監督の顔が益々渋くなり低音で重みある声が俺に刺す様に響いた

 「リュウ なにか悩んでいるのか? 突っ込みの切れと立ち上がりが全然駄目だ!・・何時もは激しくマシーンを壊してしまうほどなのに 如何した!」 俺は誤魔化す様に 「あ!ハイ別に何もないです」

 俺は心を隠すように 元気に振る舞い冗談で 「壊して良いですか?」 と応えた

 監督笑いながら 「バカ! 例えだ! 」 俺は明るく 「でしょう!次は本気で壊す処だったよ」「お前ならやりかねないな 高価なマシーンだ壊すなよ!」 ピリピリ感の中でのメカニック達も交えた笑いである

 待ち望んだレースマシーン(車)をドライブ出きる事に 最高の喜びを感じて良い筈なのに? 何時もと違う? やたらと先生が気になる 全てを捨てたはずなのに いったい俺はどうなってしまったのだ!

 監督 レーシングカーに手を置き 普段と違う俺を感じ取ったのだろう 「リュウ!何処か気になる箇所は無いか?」 と俺にたたみ込むように質問を重ねた!

Swift_017n1.jpg  長い間のブランクと新しいマシーンにも関わらず 体に染み付いているのか意外に簡単にマシーンに馴染みドライブ感覚を取り戻せたがもっと攻め込まなくてはならない。

 スポンサーを獲得するのが遅かった為、まだチームカラーやスポンサーの宣伝用スッテカーも塗装も していない新しいブラックカラーボデイのレーシングマシーンのエンジン部分を見ながら 俺は気を取り直す様に率直に感想を述べた

 「レスポンス!(response反応)・・エンジンの立ち上がりが イマイチ フケがわるいよ! (フケとは吹き上がる意味で回転数が最高になるのが遅くトルクがアクセルとずれ車速の上りが悪い)、多分変則ギヤー比がコースにあっていないか吸排気か?ハイスピードではアンダーステアー(under steer フロントが流れるハンドルを切っても曲がらない外側に膨らむ事)スローではオーバーステアー(over steer ハンドルをあまり切らなくても内側に曲がってしまう)気味です」 「それに・・いや!」・・ つい思わず出た愚痴に少し恥?気持ちを変え ・・「次はもっと攻めてみます」 と明るく返事をした 監督「そうか!その他ないか?」「今のところは!」

 俺の感想を聞いた監督 流石にテキパキと指示をだす 「 井原君 聞いたか! 調べ直してくれ それにリュウ何か元気が無いぞ!」 「ハイ!」流石に細かいところまでよく見ているな 俺とエンジニアの井原君が同時に返事をし互いに顔を見合わせ苦笑する 今まで余り時間も取れなくマシーンの整備や調整が出来ていなかった様だ! まるで反応が悪く本当に乗りづらい まだまだ細部の調整が必要だ、 この調整はレーサーの好みもありとても重要な事である。

 ”あぁ~先生に逢いたいな!” あの時何故逃げ出したか悔いが残った、 今はこんな事考えてる場合ではない もと真剣にアタックしマシーンを仕上げなければならない、先生への思いを消すように 頭を何回となく横に振った、

 テスト& ガレージ(調整)で5日間 普段なら ア と云う間に終わって もっとレースマシーン乗りたいと思うのだが 早く先生から連絡が来ないか やけに気になってしかたなかった、 こんな自分を如何処理して良いのか こんな事は初めてで戸惑うばかり。

孝ちゃんタイヤ交換.jpg チームのメカニック達がエンジンを分解しバルブ・フェイスやバブルスプリングの傷や歪・ピストンリング等部品のチェク交換、組み立てと懸命に働いている、

 エンジニアとメカニックは 其々かなり個性の強い人達だ、 一人(井原君)は寡黙でコンピューターとにらめっこ 又 分解した部品を丁寧に洗い一つずつ傷などを細かく調べバブル等のタイミングを決め丁寧な仕事をする、不言実行とはこの人の事だと感じた、それに助手と思われるレーシングスクールの生徒が二人付いていた いずれも井原君の指示に従い控えめな人達だが無類の車好きだろう、

 もう一人(鈴木君通称孝ちゃん)は井原君とは正反対 良く喋る男だ?だが女性のような体付きと顔 喋り方もそうだ、初めはなんだ ボーイッシュな女かよ! と思った位だが、 かなりメカニックとして感が鋭く主だって足回り調整力が優秀である、レースコースによりコーナリング等が違いタイヤの温度を内側と外側を正確に測りネガティヴキャンバーをピッタリと決めてくれる、俺も機械いじりはかなり好きで調整や組み立てを手伝い少しずつコミュニケーションも取れてきた 俺の乗るレーシングカーもかなり調整が進み凡そ仕上がってきた、

 俺は悪戯心が涌き 「孝ちゃん! 顔にエンジンオイル付いているよ! 好い女 台無しだよ」 幸ちゃん トーンを高めに 「やだ~ リュウたら、ほんとう?」 俺は只にやついていた 幸ちゃん慌ててカーバーオール(つなぎ作業着)の胸ポッケトから鏡を取り出し自身の顔を念入りに眺め 「な~に 何でも無いよ!、リュウの意地悪」 「へー、何時も鏡持っているんだ」 「リュウ 怒るわよ!、この鏡顔見る為だけじゃないの!見づらいマシーンの裏側や底を見るのに都合良いのよね」

 「ごめん ごめん へー凄いんだね、それで安心してドライブできるよ、 このレーシング・カーも大分扱い易く孝ちゃんのように反応も良くなったよ!」 「もぅー!」 孝ちゃん嬉しそうに答え、

 井原君達もエンジンの組み立てが終わりに近づき最終の工程に入る処で一息入れ 笑顔で二人の会話に耳を傾けている これなら 我らチームも和やかに行けそうだ、俺は両人に 「お疲れさん、コーヒーでも飲んで一息入れてよ」労をねぎらい 俺はもう一度コースの再チェックに出かける事を告げた。

 富士サーキットのコース脇を再確認ため徒歩で何時もの様に念入りにチェックを開始した、コースの荒れ ブレーキングやクリッピングポイント(富士特有のカーブやブレーキングポイントなどの目標点の確認)、最速ラインの目標の確認を一時間位かけピットに戻った、実際には其々のレーシングカーにより多少コース取りや目標点が異なってくる。

 こんな大事な時に コースを歩きながらも先生の顔がチラ付く..これでは駄目だ!こんな事ではもう駄目だ、俺は一体如何したのだ!あんな別れかたをして 先生からはもう連絡が来ないのでは?不安で一杯だった!、

 俺から連絡を入れるか迷いながら携帯に手を掛けた途端 呼び出しベルが鳴り、余りのタイミングに思はず声を放ち 「オォ!」 驚き、携帯を覗くと先生からだ 期待と裏腹に一瞬ためらったがとても嬉しく 思わず喜びで俺の顔がほころびるのが解る、 落ち着きを取り戻し 待ち望んでいた事を隠すように少し低めに素っ気無い声で 「ハイ、リュウですが!」

あいたいな1.jpg たぶん、先生は外来の患者の診察が終わった頃だろう 「ヨシ子です、リュウ元気にしている?」 「あぁー」 ヨシ子は病院の屋上で ポニーテールに纏め上げた髪に海のそよ風を受けながら 東京湾の深い部分をゆっくりと行き交う大きな貨物船・原油タンカーや球体を3・4個並べた様なガス タンカーにぼんやりと目を移し 「今 お話し出来ますか?」

 「エェー!何か?」 「・・・」先生からは無言で何か躊躇しているか言葉を探している様で 俺は慌てて今の状況を話した 「今度乗るレースカーのテストで富士サーキットに来ていますが?」・・周りを見回して「ここ煩くてちょと移動します」? 時折走るレーシングカーの排気音で言葉がかき消されてしまう、ガレージの隣接する部屋に移りドアーを閉めて 「はいお待たせ!・・どうぞ?」 「リュウきこえる?凄い音がするのね、レースカーなの?」 「ええ!今のは俺の車では無いのですがテストや練習に来ている人達のレースカーです、ドアを閉めましたからもう大丈夫です!」

 先生は何故か慎重に言葉を探す様に「リュウ突然でごめんなさい・・私どう考えてもリュウを失う事出来ないわ!」 突然一方的な告白に驚きも有ったが それにも増してとても嬉しく 堪らなく思った 「・・!」咄嗟に何を話して良いかわからなく返事に詰まった

 口早に先生は喋り続ける まるで先生自身に言い聞かせる様に?「理由なんて解らないし、知る必要もないのよ!、勝手に思い込みリュウに叱られるかも知れないが 充分悩んだの、でも自分の心は否定出来ないし 何時だってリュウの顔がチラつくのよ!、私自身予想もしなかったし 理性では如何する事も出来ないの!・・この先リュウが居ないなんって..!」

 ワァー!スゲー気持ちが良い位 何って率直で素直な人なんだ、俺と同じ事考えていたんだ その上はっきり自身の考えを云う人だ!俺は嬉しく思った

 ..何時も取り澄まし、理論的過ぎるほど冷静沈着で少し冷たさを感じる あの先生が、こんなにも率直に自分の心の内を情熱的に告白するなんって、俺の方がもっと予想できなかった、しかも自分の気持ちを正直にはっきりと此れほど素直に話す人に出会った事は無い 何か人間的で共感した!・・”あぁー よかった 心からほっとした!”、

 だが反面異常な不安に襲われ、こんな事をしている場合ではない 余にも住む世界が違い過ぎるのではないか何時も心を支配していた、何時かこんなに正直な先生を傷つけてしまうのでは?

 それにも況してスポンサーの件も頭を過ぎった、これから俺のレース人生に影響しないか?何時か邪魔な存在にならないか?ましてやレースに全財産を投入して自身の生活すらままならないのに! 目まぐるしく頭の中で駆け巡っていた。

 俺は一体如何したのだ!・・駄目だと思う心が逆に一層止められない衝動に突き動かされていた・理屈じゃないよな~ぁ..全く先生の云う通りだ 今俺は先生に何も考えずに会いたいと心から感じていた!

 先生は少し合間を取って 「私のこと嫌で無かったら、其方の車のテスト終わったら来てくれる?..もし私と付き合う気が無ければ、今断って!」 なんて、素直で積極的なんだろう 俺も全く考える余地も無く今断ったら全てを失いそうに思え衝動的感情に押しまくられ不安も何もかも飛んでしまっていた!、

 不安を打ち消す様に自分勝手に言い聞かしている 「エェー・・・」あれほど待ち望んでいたものを 断る理由など無いでゃないか! 気を取り直し「ハイ!俺も同じ事思っていました!、明日夕方には着くと思います 夕食はチームの皆と食べて行きますから」 異常なくらい携帯電話を握りしめている俺に気が付き、レーシングカーのステアリングさえこれ程強く握り締めた事は無く苦笑交じりのため息が出ていた ”あぁーとうとう言ってしまったか・・・”

 「嬉しい!本当に良いのね!、待っています、リュウ!無理しない様に気を付けてね」 「ハイ、なるべく早く伺います」 ..無理しなければ勝てないのに..苦笑いしながら電話を切った..、普通女性なら思わせぶりな言い方をするが本当に率直な人だ ..俺は凄く好感をもった..これを断ったら二度とチャンスは訪れないだろう。

 メカニック達の呼ぶ声でパドックの修理部屋に戻った、今までは以前のドライバのシート(運転席の椅子)を隙間にクッション・パットを入れ調整して使用していたが最近メジャーした俺れにピタリと合ったファイバーグラスのドライバー・シートが出来上がりサーキットに直接届き早速交換、メカニックの指示に従い最適なポジションもピッタリ決まり操作やマシーンの動きの感覚が判り易くなった、

 それに先生の事も一先ず解決、その後げんきんな者でメカニック達と楽しく昼食後 後半のテストドライブは自分でも呆れるほど 今度はマシーンに集中出来かなり自分を追い込んだ走りが出来た、

 マシーンの足周りの調整もタイヤ表面の外側と内側の温度差がなるべく平均に表面の減り等からホイールアラメントを調整し仕上がりに近ずき・・一連の作業を見守っていた監督の眼鏡がキラリと光 俺れに近づき

 「リュウ後半の走り、別人の様だった、まだ調整必要か?」? 後半は大分路面との食いつきも良くなり、ギヤー比を変えた為か、コーナーからの立ち上がりもかなり良くなり、走り易くなったが

 「そうですか?まだケツ(車のリヤタイヤの横滑り)が流れ気味で押さえきれないから、立ち上がりで、アクセルを踏み込めないのでワンテンポ遅れてしまいます、もう少し食いつき良く出来ませんか」 監督もホットした様子で 「そうか リュウも何時もの調子取り戻したようだ! 皆 後ひと頑張りだな今晩調整して明日 朝一にテストだ!今日は皆 休んでくれ!」 監督の顔つきも少し柔らかくなった様に思えた。

 レースはもう此処から始まっている。 次の朝、ある程度調整も終ったことにメカニックと労をねぎらい監督も加え食事をした、メカニックの鈴木 孝三さん(孝ちゃんと呼んでいる)は馴れ馴れしく俺の体を良く触る、言葉も女性の様だが、かなり好意的で気が利く! 「リュウ、切れも良く早くなったわ、凄いわね」 俺は照れながら「まーな!、孝ちゃんや井原君のおかげで だいぶ運転し易くなったよ」

 井原君は相変わらず真面目な顔で 「エンジンの回転良くなりましたか?シリンダー・ライナーの傷のチェックやピストンリングの交換はもちろん、シリンダー・ヘッド、バルブの傷や歪等、吸、排気マニーホールド内を良く磨きをかけ、ジョイントのズレも直しておきました」これは少しのずれも空気抵抗がでてしまうからだ

 俺はエンジンカウル部分を見ながら 「うん井原君! それで基本からチェックし直してくれたんだね! アクセル レスポンス(反応)が良く、エンジンの回転立ち上がりが以前より敏感に反応して全然良くなったよ・・本当にありがとう」終わりの語尾は井原君の肩に手を置き力を込めた、余り態度に出さない気難しい井原君の顔が初めて綻んだ! テストが一段落付き何時もは夕食を交え雑談などだ、予定時間より調整が大分遅れてしまい俺は食事もとらずに ”監督に他に用事があるからと伝え” 後の事はお願いして早速帰途についた。

 富士スピードウエイからの帰り道、車を運転しながら、スポンサーの事も少しは気になり常に頭の片隅に残っていたが 今は俺の頭と心は完全に先生に奪われていた、こんな事は初めてだ 何時もならレーシングカーの調整と俺のドライブの反省とでも云うのかドライブ・コースを思い浮かべ考えるが、それに此の事でスポンサーを失いかねない、まるで富士を回り山梨側にある本栖湖付近にある青木ヶ原の大樹海に入り込んで出口が判らなくなってしまう様なものかも知れないが もうそんな事は今ではどうでもよくなっていた、 先生に会いたい!只々会いたい今の俺にとって逢う事が全てだ、

 途中でマックのドライブスルールが目に止り、初めて腹が空いて喉もカラカラである事に気が付き それに先生に夕食は済まして帰ると伝えた事を思い出した、慌てて車のウインカーを出し飛び込む様にドライブスルーに入りビックマックとポテトフライ・オレンジジュースを注文、

 今は先生に会える嬉しさが全てであった、ビックマックを受け取り、休む事もなく齧り頬張りながら運転、喉に閊えたマックをジュースで流し込む様に食べた 無論味など解る訳でもなく 一時の空腹を満たせばよかった。

 俺の頭の中は先生と逢ったら何を話せば良いかそれだけで一杯であった、・・初めに 今晩は!それでは 当たり前すぎてインパクトが無い、ヤーか、ヨォか、オッスか、待った!それとも・・元気!何していたの?電話で話したばかりだ!おかしいよ、素直に 会いたかった!・・いや そんな事言えないよ、如何したんだ! ろくな考えが浮かばない、御殿場から東名高速に入り横浜へ向かった。

 俺の気持ちを話すべきか..綺麗で魅力が有りますね、そんな歯の浮く様な事、俺先生が好きです!いきなり云えないよ、いや、率直に云うべきか?それとも先生の事をもっと聞くべきか、

 長い間彼女を見て来た訳では無い まして医者の話しや医療の話など解る訳が無い 一体何を話せば良いのか?・・何かムードの有る話?俺に出来る訳が無い、うーん・・解らない!俺は何を考えているのか、

 何も浮かばない、只只一刻も早く先生に逢いたい!・・こんな戸惑いは初めてだ!先生の家が近づく程に異常に不安になる一刻も早く会いたいのに逃げ出したくもなる、レースのスタートラインに着いている待ち時間の方がまだ耐えられる!

     《再出発》

龍崎3.jpg 富士からの長い道のりを、まとまりが付かぬまま、先生の待つマンションに着いてしまった、

 何の恐さかわからないが初めての体験と戸惑いの様に感じた!部屋番号とチャイムを押す指が躊躇いを招いたこの場に立っているのは本当に俺なのか?、マンションのドアガラスに映った俺の姿を見、髪を手櫛で整えた、こんな事を初めて行った自分に照れを感じる、落ち着け!様々な負の要素が頭を過ぎる ここまで来て何を悩むことがか もう一度ガラスに映る俺を見て深く息を吸い込みチャイムを押した 、

 ドア・ホーンから明るい応答 ”はい” と云う返事があり 俺は何故か焦りながら答えた 「リュ!リュウです!」 先生からの軽やかな声で 「おかえりなさい!今開けます」 余り待たずして玄関ホールのドアーが開いた!俺はもう迷まずエレベーターで最上階に向かった、

 部屋の前で先生がドアー開けて待っていた、 お互いに言葉は要らなかった先生から俺の胸に飛び込んでくれた、黙ったまま極自然にどちらからでもなく確りと抱擁の後、お互いの目を見つめそれが自然であるが如く唇を交わし、お互い高ぶりを押さえようと先生は俺の胸に顔を埋め押し付け暫らく其のままにしていた。

ヨシ子心音.jpg 「リュウの心音、乱れているわ」 「ハッハァ、先生職業病だよ!・・当たり前でしょう、小心者だからこんな美人で可愛い先生に抱きつかれれば、乱れるよ!」 ..あんなに車の中で、悩み戸惑ったのに..アハァハ..言葉なんか要らないよな

 先生は悪戯顔を俺の胸に押しつけ 「冗談よ!正常よ、リュウは口が旨いから、今日は帰らなくていいでしょう?コーヒーでも飲む?」 俺は心の中で何って可愛い人なんだと思いながら ”うん” といい、先生の目を見て頭を小さく 立てに振った 

 やはり年の差、俺に気を使って自然の流れを作ってくれ ゆとりある気持ちになれありがたかったが、以前の結婚の失敗 これからのレースに対しての不安が一時過ぎったが嬉しさの方が数段勝っていた、全て先生に任そう..

 富士スピードウェイでのレーシングカーの準備や調整の話しをし 又先生のことも知りたく先生の職場や両親の話を暫らく聞いて時が過ぎた、

 なにか揺ったり穏やかな時が流れ、先生が俺に合わせた会話をした訳でも無いが 何か先生との波長が合い俺の心の中で変化し始めていた 以前から此処に住み暮らしていた様な何かゆったり落ち着いた気持ちを得られるのか?

 先生は俺を優しく見詰めながら 「ねーリュウ 先生って呼ぶのやめて」 「どして?..じゃぁ、なんて呼ぶの」 少し恥ずかしそうに 「そうーね、ヨシ子でいいわよ」 「なんか 急に無理だよ」 「じゃぁー 二人の時だけでもそうしてちょうだい」 なにか一層可愛く感じ あの理論整然とした先生の人間的面を垣間見た思いだ きっと少しでも歳の差を縮めようと思っているのだろう 「わかったよ、なるべくそう呼ぶよ」

 マジマジと俺を見て 「私 こんなに苦しく人を想った事無かったわ..どうしてこんなに惹かれるのかしら!、不思議な位」 ..俺だっておなじだよ! 何でこれほど惹かれるのだろう..その見つめる黒い瞳の中に俺が映し出され吸い込まれてしまいそうだ 俺は心の不安を見透かされのではないかと何故か慌て目を反らした、

 俺から富士サーキットでの車の作業を一通り大まかに説明を聞いた先生は 「リュウ、富士から直接帰ったのでしょう疲れていない?」 「大丈夫だよ」実際 先生との会話は楽しく疲れなど感じていなかった

 先生は念を押すように 「練習後直接来たのでしょう?」 「はぃ?」 「シャワー浴びるでしょう?」 そういえばシャワーも取る暇もなく急いで来てしまった 心の余裕が無い俺自身に苦笑した?「俺 臭う?」と問ったあと自分の両脇を変わるがわる 嗅いでみた、

 先生は俺の動作を面白そうに笑いながら「そうではないけど ゆっくりリラックスできるでしょ!」 「あぁー ありがとう」 先生は自然に立ち上がり俺を促す様にバスルームへ案内して「此方よ、バスタオルこれ使って」 全て受け入れてくれたのだ!これが年上の気使いなのか これからの展開に一抹の不安があったが 今さら躊躇しても尚傷つける事になると思い従った、

 人の出会いとは不思議な物だ一月前には何も知らず何も無かったのに、それも六・七年前、美奈子と出会った時から手繰り寄せられる様に運命の歯車が廻り始めていたとは!。

 シャワーを済ませバスタオルを腰に巻いたままの俺は、覆い纏っていた全ての鎧や楯をはぎ取られた無防備の兵士のように戸惑いながら着替える間もなく、

 「此方よ!」先生に手を引かれるままに寝室に移る しかしこれがその後 俺の心の鎧も取り払う事になる、其処には大きなシモンズのダブルベッドが部屋の大半を占めていた、先生でもやはり女性 家族の写真やカーテンなどそんな雰囲気の部屋であり綺麗に整頓されている。

 二人は熱く唇を重ねもつれながらベッドに倒れ込む、もうこの女性の前では何も護るもの無く母でさえ見せた事の無い心の全てを曝け出せる思いが心を蔽う、

 やがて先生は以前の俺の結婚生活が余りにも子供で幼稚に思えたのだろう、そんな気使いは要らないのに、

 後ろで纏め留めた髪止めシュシュを外し 息を詰めた様に静かに俺を見詰める瞳、なんと深みのある優しい眼差しか、何故か今までの様に攻め奪う感覚では無く、他の人には得られなかったものを互いに求め この女性なら全てを委ねられ素のままの俺でいられる 初めて不思議な位ゆったりと心から休める感覚であった。

 美しい瞳で俺の目を改めて食い入る様に見詰めた先生は、両肩にそっと手を添え今度は様子を伺う様に不安そうで懸命に見つめる瞳が恥じらいと優しさを含みながら 今度は肩から両手で頬を挟み優しく熱く唇を重ねた、

 しばらくして 俺が今まで経験したことのない安堵感に浸り消極的であったのか それとも今まで経緯から察して 年下で何も知らないと思ったのだろうか 兎に角俺の心を傷つけ無い様に恐る恐るガラスの容器でも扱うように

 先生は恥じらいながらも けなげにゆっくりと優しく導き 「リュウ・・、慌てないでいいのよ・・優しくゆっくりとね・・」 耳元で優しく囁いてくれた、

 羞恥心を帯びながらもゆったり横たえた先生の体は、静かに波打つ曲線を描いたスロープ 投げ出された長く伸びた脚 眩しく光る柔らかく透きとうる肌から、微かに欲望を誘う香りが それを望んでいる様でもあった。

 それは俺にとっても長い禁欲からの燃える様な奪い合う渇愛ではなく、意外にも静かに優しく厳かな儀式の様に 互いを確かめるように目を離す事なく お互いの心の中を確かめ合う様に見詰め合い、定めに導かれるように ごく自然にゆっくりとゆっくりと結ばれ、先生は短く息を吸い込み 小さく開けた口元から 安堵の吐息と共に 俺の背中に廻した両手に優しく力が加わり..

 俺の全知全能のあらゆる感覚と感情や思索を優しく暖かいアロマオイルの中に包み込み体の奥底の芯からじんわりと人肌の温もりが安らぎの香りと共に全身を覆った、慈愛に満ちた眼差しに安住の中に溶け込み飲み込まれ ささくれだった心の空洞までもじんわりと満たされて行く!(Your love, adoring eyes, almighty & passion with peace of mind, My destined soul mate)、

 優しく受け入れくれた先生に 全てをさらけ出し委ね その気高さと気遣と優しさに感動さえ覚えた、いままで何をしょうと空虚感に襲われ カーレース意外 ”心の空洞” を埋めてくれるものは無かったが、こんなに満たされ それがフッとレースを失うのではないかと恐くなるくらい素晴らしく ゆったりした安らぎと安堵感を与えられた事は嘗て一度も無かった

 又こんなに愛おしく切なく感じた事も、あぁーこのまま時間が止ったらどんなに良いか!、

 心から信頼され言葉こそ無かったが ”私が望んだ事よ 全ての責任は私ですから安心して休みなさい” と語りかけているようだ、だからこそ嘗て誰からも決して得られなかった 安らぎと安住を与えられたのだと、

 俺は初めて感じた、例え俺が先生に刃を突き立てようが 先生の優しく包み込む様な眼差しが、貴方が其れを望むのならば 好きにして良いのよ..貴方の全てを受け入れるわと囁いているようだ..たとえこれからなにがあろうと、こんな巡り合いは二度と起こらない!このかけがいのない愛! 

 生まれる前から迷いつまずき傷つき 長い間探し求め 此処にたどり着くために やっと出会えた様な気がした!そして此の不思議な安堵感 遠い昔忘れていた香り 幼い頃父を亡くした俺には母に感じた香りであったのではないのか?

 あぁーこの安らぎ、どんな言葉でも勝るものは無い 永遠にこの愛の中に留まりたい!..もう引き返す事も止める事も出来ない、そして あのみなと未来での再会は何か運命的なものさえ感じられた・・・・どれほど時が過ぎたのだろうか?

 先生はそんな俺を優しく愛しげに俺の頬に手を添えて見守るように暫く見詰めていた、俺が落ち着いた頃を見はかり 呟く様に

 「リュウ、私だって全てを忘れリュウだけを感じ 全ての束縛を外し自由になりたい時も有るのよ 凄く嬉しかったの お互いに全てを受け入れ これが本当の愛なのよ、居るだけで心を通わせあい愛を感じ 安らぎを感じ 互いに愛しさを感じる者なのよ、人は生きている限り求め続ける者よ 心やお腹を長い間 空にする事は出来ないのよ」

 尚も はにかみ顔で、何も知らない年下の俺に教えるかの様に語る 「リュウ、貴方は何かに反抗し悪がっているが 本当は純粋過ぎるのよ、もう自分を偽る事をしなくても良いのよ、貴方には火の様な激しさと 優しさ暖かさが有るのよ、そんなリュウが愛しく大好きよ!..ただ欲を云えばヨシコって呼んで!」「うん」「遠慮することないのよ、もっと自由にしてもうちょっと目茶目茶にして欲しかったな」 こんなに知的先生が後に付け加えた言葉が何故か急に現実に戻され滑稽に思った 何かを忘れたいのか?それともストレスを払い除きたかったのかは解らない、それに年齢差を気にしている。

 意外な言葉だったが、たぶん俺が初心で気を使い先生に遠慮でもしていると思ったのでしょう、本当は長い禁欲生活と先生の優しさに何時までも、したって、全てを委ねていたかったからだ 羞恥心から少し頬を染めながら、そんな事を云う先生に驚きと滑稽さも覚えたが、飾りもなく素直で しかも 大凡の女性が言いたくても云えない事を はっきり自分の望みを主張している、

 又 どんな女性でも欲望が起きる時が有り愛する人を心から信頼出来るからこそ、自身に素直になれ本当に心からの安らぎを得られると、今までの俺の結婚生活に対してと、年下の俺に全てを身を持って教えている様に思えた、又 先生自身何か抑圧された心と戦って解き放したいのではないかと思えた。

 今までの俺ならそこまで云はれ、男として許せなく間違いなく再び牙をむき出し挑んだ事だろう、しかし先生の眼差しは 母にも似た無償の愛を感じ 優しさと愛に満ち溢れどんな凶暴の牙でもその眼差しで溶かしその軟らかい胸に包み込んでしまう(Love, true love is to ask nothing in return like a mother & your gentle gaze

 それにより俺自身の心の奥底に有った、今までの性に対しての不純な罪悪感や自身の心を閉ざし終わった後の遣り切れない空しさや孤独感が消え去り薄らいで ゆったり心の全てを解放する事が出来た、女性を征服するのでは無く 愛により生まれる 相手の全てを知り 俺の全てを開放し共有したい気持ちから起きる物だと感じ、又こんなにも無防備な中でゆったりとした幸せ感が得られ 遠い遠い昔こんな安らぎの中に居た様に思え 何時までも浸っていたい思いであった。

 そして、あの頑なまで守ろうとしていた封印と精神は!、脆くも崩れ今までの俺は何で有ったのか? ..もう、疲れた、本当に疲れてしまった!今、この安らぎを知り、生きると謂う事に脆くも崩れ去って行く、封印を破ってしまった俺自身に少し虚しさを覚えた事も事実であったが、今どんな言葉であろうと この安らぎを言い尽くせなく返って言葉にする事で薄らいでしまう様に思えた。

何故だ!?こんな時に!少し悲しげな顔の別れた妻美奈子を思い出す、俺が幸せ過ぎるからか?急いで打ち消す様に振り払うが暫く頭に残る、先生はあの包み込む様な優しい瞳でのぞみ込むように 「どうかしたの?」 俺は目を伏せ 「余り幸せすぎて・・」 スポンサーの件も然り、こんな幸せは返って不安を呼び起こす、

 俺は先生の胸に潜り込む様に顔を寄せた、先生は黙ったまま俺をきつく抱締めてくれた、まるで女の台詞、何の違和感も無く俺は呟いていた。

 条件は違うが俺も世の中や自分自身に反発した様に、先生も何か固定された常識を破りたかったのでは?だから俺の様な別世界の物に興味を持ったのでは! それも純粋の愛で一適の邪悪な心が無い事をものがたり ある意味尊敬さえ覚えた、又年上の女性にも関わらず可愛くも感じていた、今まで俺が感じた罪悪感や嫌悪感など微塵も覚えず心から休めた人である。

 そして静寂と安らぎの中で富士スピードウエイの疲れも有り、何時の間にか先生の優しい温もりと香りに包まれ眠りに落ちていく・・・かすかな記憶のなかで 此の人と一緒になるのかも・・そんな予感がした。

コーヒー.jpg 翌朝、俺のレーシング・カーに得体の知れない老紳士が乗っている 「おい其れは俺の車だ!降りろ!降りるんだ!」 何処かで遇った顔だが?思い出せないそのうえ、声を出そうにも、声が出ない!、

 その男を掴み出そうとして驚く!宇宙人の様な得体の知れない下半身タコのように変わっていく、身構えようとするが体が金縛りなった様に動かせない!俺は初めて恐怖を感じる、何故か先生が奴から逃れ俺に救いを求め走り込んで来るが寸前捕まってしまう、

 なんなんだ!・・何時ものエンジンの排気の匂いではなく、爽やかなコーヒーの匂いが漂う?、不思議だ!だがその男のタコ足が大蛇の様に俺の首に巻きついてくる ”くるしい!息が詰まる!”

 其処で、ハット!目覚めた、なんだ!ベッドのシーツが俺の体に絡まって手足の自由を奪っている、そのうえ自分の腕が俺の首を絞める様に絡まっている!相当寝相が悪かったか!嫌な汗が残っている、

 やっと掴んだレースのチャンスと先生を心の底から失いたくないと、その二つを失うことが そんなに怖いのか!そんな気持ちがこんな夢に! 親しくなったのは最近の事なのに 見る筈の無い夢、しかし以前何処かで見た様な不思議な感覚だ?

 そうだ何年も前レースを始めた頃 同期生が練習中 単独事故でヘルメットが真二つ割れるほど激しさでサーキットのガードレールに激突 病院に運び込まれたが息を引き取った、

 その時駅から病院迄ご両親と彼の妹を迎える事になり、車両の中で両親の話 手や足が無くなっても良い生きていて欲しいと痛切に話かけたが 事実を話す事が余りにも悲しく可哀そうで現実を話す事が俺には出来なく曖昧な返事を繰り返した、その道のりが異常に長く感じた事を覚えている、

 その両親は病院で受け付け嬢の案内を受けたが病室とは異なった通路を案内され、初めて俺に何故なの?と疑問と不安の目を向けた、俺は何故か!目を伏せたまま黙って立ちつくしていた、

 暫らくして受付嬢に催促される様に静かな口調で 「こちらです」 霊安室に案内された両親と妹、その時の何処に怒りや悲しみをぶっつけて良いか解らず俺を見詰めた父親の怒りの顔だ!

 後でレース場の係り員の説明を聞いた父親が俺の脇にそうっと寄り添い、君は本当の事を話せなかったのですね 解りますと囁いてくれた、 何故!今頃夢に出るのだ!。

 部屋の出窓の白いレースのカーテンから朝の光が漏れている、そうか此処は先生の所だ 隣脇にはもう先生の姿はなく 何だか訳の解部屋1.jpgらぬ嫌な夢だ!振り払う様に打ち消し手早く身支度してベットルームを出た、

 ダイニングへ海から来る爽やかな風に 夢の事は忘れようと大きく両手を広げ胸一杯吸い込んだ、朝の柔らかな太陽の光 何もかもやわらかく感じ 香り良いコーヒーの匂いと共に

 「リュウ おはようコーヒーどうぞ」 何も起きなかった様な、穏やかな声にほっとした ヨシ子後ろ食事.jpg「あ、せん・・えーと・・おはよう」

 「リュウ 呼びづらい様だからケイでも良いですよ 私の漢字(佳子)ケイ子とも読むの」 「うんうん ヨシ子で良いよ、これからそう呼ぶから」

 バスルームでシャワー浴び体を洗っていると 「リュウ! 歯ブラシとタオル私のだけど新しいから使って、後で必要な物買いに行きましょう」ドアーの外から声を掛けてくれた  擦りガラスのドアー外に向かって「あぁー ありがとう」と 返事をする

 衣服をととのえダイニングへ 「リュウ・・朝食ハムエックにカリカリベーコンとウインナ、とトーストで良いでしょう」 「ハイ!充分です」 「さぁー座って、用意出来ているから、野菜サラダ食べてよ!云われているでしょう」

 俺はハットしたが、先生は無意識に美奈子のあの置手紙に書いてあったサラダの事だと思った、俺が美奈子を思い浮かべた事を感じたのか?すこし気まずい思いもあったが今はその事には触れずに無視をすることにした、それより私はこんなゆったりとのんびりした待遇を受けたのは母以来だ

 トースト.jpgオレンジジュースを出しながら 先生は優しく 「リュウ、本当に愛していなく欲望だけで私を抱けたの?・・違うでしょう!、リュウの中の何かが壊れた?愛の形には色々有ると思うけど お互いを認め全てを与え全てを奪いたい物なのよ、本当の意味での理解が出来たからと思うわ、全てではないけれど そう思わない?」 ”俺だって愛を感じない人など抱けないよ”

と思いながら黙って聞いた、先生は何処からこんな自信が生まれるのか?本人の目の前で欲望だけで抱きましたと云える男などめったにいないよ!

 だが凄く愛している、何故か余り悪い気持ちは起きなかった、と言うより先生は俺の感じている全てを解っている様な気がし先生の云う通りだと思った、素直に受け入れれば こんなにも安らげるのに自分が少し偏った考だと 今まで先生に出会う為に先生に向かって迷い 戸惑い 辿り着いた気がし 体全体の力が抜け本当に心から安らぎを持てた、

ベーコンエッグ.jpg 俺は心からそう感じた事を言葉に出した 「やっと出会えたよ ここなんだ!この安らぎだ!、心からそう思ったよ でも先生に甘え駄目になってしまうような 何か恐さも感じるよ・・エェ!何んだよ女が云うような事 俺が云ってる!」 

 「本当にそう思っているの?」 「本当だよ!本当に出会えて良かったと思っているよ」 「本当なら嬉しいわ!・・そうよね、これからは良い所をなるべく見ることね、私はどんなリュウで有っても 私が世間から非難されボロボロになっても愛し続けるわ、それを覚悟出来たから リュウに又合う事が出来たの」

 少し前の俺だったら ボロボロに傷つくと聞いただけで、そんな風に思っていたの!それならもういいよ そんなに我慢してむらわなくても と そのまま出て行ったと思う、しかし 今の俺は以前と捉え方が変わって 先生が其処まで覚悟して俺を選んだ事に 素直に有難うと思った.."俺は変ったな!"

 「俺・・、嬉しいよ!でも こんな俺で本当に良いの?」 先生は覗き込む様に顔の下から 「バカね!困った事に こんな俺が大好きなのよ!」 先生は自分自身に対して ”私 バカね” と発したのだろう 「・・・」 俺は照れもあり、応えにつまっていた 先生は覗き込み 少し改まり 「よろしくお願いね」 と優しく俺を見詰めた、やはり予感が当たった、俺は照れながら 「こちこそ頼みます」 と首に手をあてた。

 幸せすぎたのか今朝のあの嫌な夢を思い出す、あれは何だったのか?先生とこの様になって 俺のカーレースでのスポンサーが以前の妻の父である事が心に痞えて気になっているからか、その上まだ自分の目的も達せられない不安定な俺が家庭を持つ事への?不安が心を過ぎる..

 「リュウ、これからリュウに再会した横浜のラウンドマークに行きましょう、あそこでリュウと手をつないで堂々と歩きたいの、行きましょうよ!」 その時俺は何って子供の様な人なのかと思った 「いいですよ、行こうよ!」と答えたが それは先生自身の何かの決意にも思え 質問を投げかけ様と思ったが 何か気まずさが残る様に思え 飲み込んだ、

 早々と食事を済ませ 先生は俺の食べ終わった食器を洗いながら?「リュウ!私し 何着て行こうかしら?」 「なんでもいいよ!」先生は食器を洗い終わり手をふきながら俺の方に振り返り「リュウの好みが知りたいの」「そんなの急に聞かれても・・」 「どうでもいいの?」「う~ん、 俺 昨日の様なラフなスタイルが好きだよ、それと俺も着替えたいから 俺の処に寄って行くよ」 「ハーイ、そう言うと思った」先生は何か楽しんでいるように思えた

 今日の先生は 誰も医者とは思へ無いスタイル、膝辺りに穴の開いたビンテージ物のジーズと黒の胸の開いたTシャツ あのセクシーな匂いの香水 胸と腰が強調され足の長さと相まってとても魅力的だ、

 「いいね!俺そのスタイル好きだよ!」 「ほんとう?リュウの好みなの?以前にもそう云っていたわね、そう言う処 自分に素直で好きよ」 「まーね!感じたままで何も考えないバカだからね」 俺はこの人には思いのままを何でも話せる人とだと感じた

 俺の住んでいるマンションは横浜本牧の元米軍基地を返還した跡地(マイカル本牧)に有る 先生が部屋を見たいと云うので 一緒に俺の部屋に入った 暫く珍しそうに見回していたが、

 「意外と綺麗にしているわ、それに車のトロフィー沢山有るのね」 「うん 大凡はカーレース、特に始めの時は思い出があるよ でもレーシングスクールで飾る事にしたの」 「そうね その方がトロフィーも生きるわね それにあの賞状と金のバッチは?..COMMANDER FLEET ACTIVITIES..って?」

 「あ~あれね、カーレースを始めた頃は、当然それだけでは・・いや!今でも生活出来るわけでもないので米海軍の横須賀基地で働いているから」 「・・そうなの?」

 「当然レースでは食べる事も出来ないし、笑うかもしれないが世界で認められるレーサーになりたくて英語の勉強を兼ねてなんだ」 「笑いはしないわよ!そうだったの」

 「あの賞状は特別な賞で滅多にない事だよ そのほか毎年仕事で賞を頂いているよ」 「見掛けによらないね、レース以外興味が無いのかと思った」 「なに? そんな風に!見ていたの」 「冗談ですよ! そんなリュウだったら惹かれる訳ないでしょう」 「まったく!」

 「リュウ 下着と他の着替え2,3持って来て 今日も私の処に泊るでしょ?」 「俺も週末休みだから良かった そうさせてむらうよ」

 サーキットなどは週末はレンタル料が高いうえ色々な模様し物が有りマシーン(車)のテストには不向きで マシーン(車)のテストも終わり 後は本番1,2日前位まで予定が無い、おれもカーゴーパンツとTシャツに着替え 予備の着替えをバッグに詰め込んだ、

みなと未来駅付近.jpg みなとみらい駅、地下ホームからの長いエスカレーターは相変わらず途切れる事のない人波が続いている、

 クイーンズスクエアの有名店をあちらこちら、先生は以前の何か嫌な思い出を消すかの様に 開放され俺の手を引き約束どうりまるで二十歳前後の若者様に楽しそうに歩いた、

 ..男達の目が先生に向けられる、ある者は釘づけされ じーとなめ回すように見つめる人、又ある人は慌てて目をそらし 振り返って見ている男、その気配を肌で感じ 俺は少し優越感を覚えた、

 暫くウインドショッピングをし 「リュウ こんなブルー・ダニューブ(Blue-Danube)の食器揃えたいね」 「それなら 俺 一式持っているよ、ベースの外人の友達に頼んで取り寄せてむらったんだ」「本当?良く知っていたね」「以前イギリスのレースの学校に行った時に知ったの、イギリスの皇室で使っているとか とにかく俺も気品が有る品だと思って」 「リュウて不思議な人ね 何処か影があり、そのくせガサツな人と思っていたのに何故か人懐っこい処もあり 物を見る目も有るのね」

 「へーそうなんだ! そりゃあー良い物位分るよ、そんな目で見ていたんだ!先生を選んだ目だよ 確かな物ですよ」俺はこんなに楽しいデートは何年ぶりだろう 「ごめん!リュウは口が上手ね、私の事は解らないわよ リュウの買い被りかもガッカリしないでね」 「俺が良いと云っているから それで良いの」先生は目を細め本当に嬉しそうな顔で「嬉しいわ!」

 少しお腹も空き、海の見える屋外のオープンデッキが有るお店を探し そこに決めた。 ピザときのこのパスタを注文しデッキテラスの席をとった、太陽と海そして青い空 開放感を満喫しながらの会話

ベイブリジッチ.jpg 先生は遠くの景色に目を向けて笑顔で 「すごく楽しいわ、来て良かった、これが本当のデートよね、リュウ、嬉しいわ!」 子供のように楽しそうにしている先生を見、俺も楽しくなった、以前何か有ったのかな? 「俺も本当に楽しいよ」 先生は運ばれたパスタを口にして 「ここのスパゲッティより、トニーの処の方が数段美味しいね」 「俺もそう思うよ、あれはね、俺が伝授したんだ」

 先生は信じられないと云う様な顔で 「まぁー偉そうに良く言うわ」 「本当です イタリアの人は日本のお醤油使わないから、アサリのワイン蒸しを作る時にオリーブオイルにニンニクの香りを付けて種を抜いた鷹の爪 少しに白ワインでアサリを蒸しアサリが少し開いた処に 黒コショウ バター パセリの微塵切と そこにお醤油少々使って本当に味が良くなったんだよ」

 説明で少しは納得したのか 「ふ~ん、リュウって応用が利きアイデアマンね」 俺はちょっと自慢げに 「だろう」 ピッザも食べ終わり、暇そうに海を眺めていた 「リュウお腹空いているでしょう私のピッザ食べなさい」 「いいよ!お腹減ったら何か注文するから」 「顔にお腹空いたって!書いてあるわよ、私はもう充分だから食べてよ」 「それじゃー戴くよ」

 店を出、臨港パークを左手に大桟橋、右手には横浜ベイブリッチが見えるベンチにゆっくり並んで座り、爽やかな風と何処までも青く広がる空と海を眺め、

 先生はピザに齧り付いている俺の顔を覗き込む様に 「ねーリュウ 私・・以前彼氏がいたのよ、こんな話して良いかしら?」

 先生だったら誰も彼氏がいなかった事の方がおかしいと思っていたから驚く事もなかった 「余り聞きたくないが必要だったら いいよ」

スクエアエリア.jpg 先生は少し躊躇いがちに 「その人はね、始めはいい人だと思ったけれど、僕の彼女や妻になる人は淑女であってこうあるべきだとか、何かと云うと慎みなさい、世間体ばかり考えている人だったのよ、その家族と同僚の男達もそれに近い人が多かった」

 やっはりそんな気がした、その年まで何も無い事はない、以前何か此処での思い出を消してしまいたいか塗り直したかったのかも知れない 「もう何も云わなくて良いよ、解ったから、俺は先生の、ごめん・・まだ先生がぬけなくて」 「いいのよ、続けて」

 「先生の云いたい事解かっているよ、誰も先生の自由は奪えないし妨げられる物ではないよ、だいち個性が無くなるよ そこら辺の似合いもしないブランド品を身に付け中身が空堂のPTAの噂好き欲求不満のザーマス、おばさんになって欲しくないよ、過去はどうでもいいよ知りたくもないし知れば嫌な思いも生まれるし、知った処で過去は何も変えられないよ、今が大切だから・・もっと個性ある先生らしく楽しく実りの有る生き方をしようよ」

 そうか、俺だっていろいろ、先生も俺以上にトラウマが有ったんだ、それで今までの先生が言ってきた事が、自由をさまたげる障壁を取り除きたかったのでは、何か理解出来た様に思えた、

赤レンガ倉庫.jpg 「ごめんね!リュウはそんな人では無いと思うし、ただ、後から何かと言われるのが嫌だったから、この出会いを本当に大切にしたと思ったから..嬉しいわ、リュウは意外と大人ね、でも世の中、偽善と虚飾ばかりでは無いのよPTAは言い過ぎよ、それなりに皆、頑張っているのよ、子供みたい処有るけれど、そこが好きよ!」・・・「ねー、赤レンガ倉庫に行って、歯ブラシ、湯のみ、など揃えましょうよ明日の食料もね、リュウはお腹満足させればご機嫌だから、リュウと一緒だと本当に楽しいわ」

 「そうだね、俺ってそんなに単純!なの?..でも、先生もユニークな人だね、あの時の表現が、何か俺も納得させられたよ」 「バカ!恥ずかしいじゃない、あの時だから云えたのよ

 「そうでなくて先生が俺の為に ”女だって疲れたり寂しかったり要求があったりするのよ、生きているって!とても大変な事” だって」 「・・・」 「それと今までの周りの環境から抜け出し何か抑圧された物を変えようとして何かにぶっつけ全てを壊したかったから、自然に出た言葉と思うよ・・長い間自分を殺して生きていけないよ、俺がいやと云うほど経験した事だよ、上手く説明出来ないが」

みなとみらいの夜景.jpg 「そうね・・リュウも苦しんで解っているのね」 「うん、俺もそんな時があったから」 「リュウは一見変わっていてガサツに見えるけど、そのへんの気取った男より、本当に経験も有るし意外と教養も身に着けているね」 「そんなに、煽てると舞い上がるよ」

 「煽てじゃぁないよ!自分でも気が付かなかったけれど、リュウに言われその通りと思うから、だから一目見た時から全然違う世界のリュウが気になっていたのかも」

 「そんなに褒められた事無いよ、上げたり下げたり忙しいね、俺レーサーですから瞬時の判断が出来なくてわ、冗談ですけどハァハァ・・さぁー、行きますか?」

 ?二人は本当に素直に自分の気持ちをさらけ出し、精神的面も含め全てを裸になり、いっそう絆が深まり、安らぎと、愛情が生まれ始めていた、楽しく買い物して何時の間に日も落ち

 大桟橋の夜景が余りにも輝く様に綺麗に見え立ち寄る事にした二人は言葉を失う様に暫らく肩を寄せ合い無言で見詰め、俺はこの時あの息を呑む程キラキラ綺麗に輝く夜景の中でも沢山の人々が蠢き生活があり其々の物語があるだろうなと感じ暫らく見入っていた、夜景に感動し寄り添う先生を受け止め やっと俺は二人の年の差も余り感じなくなり初めていた

 流石に沢山歩き廻ったので俺の腹も空き中華街に足を伸ばし夕食も済ませ、足早に家路に向かった。

   ・・・先生のマンションにて・・

 新しいマグカップにコーヒーを入れて 「なにか、新婚さんみたいね」 俺は冗談ぽく、両手を広げ 「みたい、じゃあ無く、新婚だよ、さ~ぁ、こっちに、おいで、スィートハァーッ(sweet heart)」 「それって、大根役者の演技みたい、ダーリン(darling)と言えばよいでしょうが、笑っちゃいそうよ・・それより、リュウ!レースの事、聞かせて」

 「なにから話して良いか、・・俺の乗っている車はフォーミュラカーと言って早く走るためだけに無駄を省き、各国やランクにより規格規定が定められ作られているんだ、今乗っている車は大体3400cc位で600/hp(馬力)位有り、普通車の半分以下の重さで最高速300km位出るの」 「・・・」

 だまって聞いている先生を見て 「こんな話つまらないでしょう?」 先生は慌てて頭を横に小刻み振り 「うんうん 大丈夫よ!新幹線が200kmでしょう もっと狭い道で!・・なんとなく凄さが解かるわ、 それよりリュウが車の事話している時の目キラキラ輝いて生き生きして、好きよ! ねぇ~続けて・・」

 俺は少し得意になり話を続けた 「う~んそれにマシーン・・レーシングカーや機械は人を裏切らないから、レーシングカーで一番大切な事はエンジ音や排気音は楽器のバイオリンやピアノの音の様に繊細で気温や湿度等で微妙に変化するがそれと同じに変化を感じ取ったり車体の足回りのタイヤの減りや滑りを、レーサーの体全体のセンサーつまり五感で・・いや六感 全てで感じるだよ」

 綺麗な目をいっそう大きくして 「そうー凄いのね・・なんとなく解かるわ!」 先生は急に何かを思い出したように 「そうだ!・・時々街中で大きな音させドリフト(drift)?しているグループが有るけど、リュウもした事あるの?」 「良く車の事、知っているね」 「入院患者で小学生に入る位の男の子が車大好きで、良く私に話してくれるの、遊びたい盛りなのにね、リュウの車も、最近その子からミニチアで教わったの」

 「そうなの..俺や本物のレーサー達は、そんな運転はしないよ、傍迷惑だし、ただ、腕自慢したいだけで、スタントマンは別にして本当にレースを目指している人には誰もいないよ、並のレーサーだったらドリフト位(車のタイヤに急激にパワーを加えたり急激なブレーキを加え車を横滑りさせ方向を変えたりする事)、皆んな出来るよ」 「・・・」

 「レースは人より早く走る事、あんな無駄な走行は、しないよ、無駄な横滑りさせれば、それだけ遅くなるし、タイヤやブレーキ、そのほかの部品の消耗になるよ全部悪影響そんな馬鹿げたレーサーは誰一人いないよ、少しでも、ドライブもマシーンも如何に無駄なく走る事が早さに繋がるんだよ」 

 「・・・」 「それとカーレースはガソリンの無駄使いと思っている人が多いが、車の開発や安全に関わっていて如何に安全で少ない燃料で早く走れるか凌ぎを削っているのだよ、それとヨーロッパでは意識が高くイギリスなどレースで活躍した人をサー(sir:閣下)の称号を与えられているんだよ」 先生は納得したように頭を二度ほどコックリして 「凄いんだね、解ったわ じゃぁーただの暴走族と同じね」

 「そうだね、本物のレーサー達は限界まで走り込み常に五感を高めているんだよ、だからこそスピードの怖さを知っているから公道でそんな無謀な運転はしないよ、もし間違えでも起こしたら自分の職を失う事になるからね」 「そうだよね、だからリュウの運転安心出来るんだ!」

 「それに 今の車は性能が良くなり、自分の腕でなく 車に乗せられている若者が多く 見ていて危なく思う事が沢山有るよね、彼らに時々サーキットを開放してやり 思いっきり走らせれば、スピードと車の恐さも解かり無謀な運転は無くなると思うよ、・・もっとも今ではドリフト専用コースも大分有るけど有料で料金が高いから、時々無料でサーキットを解放して上げたら良いのにね」 「そうだと良いのにね リュウ いい事云うね、あの子にも話すわ」

 俺は尚も得意に「それで レーサーは其々自分とマシーンの限界ぎりぎりを見極め走り そのタイトロープを集中し護り通し気を緩めた者が負けだよ、俺が最も好きなのはレースの駆け引き 相手を射程距離に治めたとき 相手のマシーンの特性を知りプレシャーを与え相手のミスを誘う、相手の苦手なコーナーや相手の車の特性を見極め此方アウトから抜くと見せかけ インから抜き去った時 ちょっとした快感だね」

  尚も開催日程や場所等を話し..得意げに身振り手振りで話す、俺をまるで母親が子供の話を聞くように見つめている。俺の話が一区切りつき留まった処を見定める様に確かめ「リュウのご両親や兄弟は?」と聞いて来て

 俺の家族の話になった、父は俺が小三の時に白血病で亡くなった事、父の職業は新聞記者の政治部で時々社説等書いていた事、母は高校の教師で今は定年退職して家で学習塾をやっている事、女二人、男二人の四人兄弟の末っ子で俺は 工学系の専門学校を出 暫らくある企業で勤めていたが派閥や人間関係が嫌になり、

 ある日 自動車レースのF-1を観戦し虜になり この道に入った事など 大まかに話した 「あぁ~ それで! 何となく解かったわ リュウが時々 難しい言葉使うから」「俺は父母と違って文学は全然駄目 機械いじりばかりして勉強嫌い家では異端児扱い 変わっていたのかも」

 「リュウ、おおよそ解かったわ..それでね、私達のこれからの事考えてみたの 当分はこのままで良いけれど、 いずれ考えなければいけないわ 私は病院辞めたく無いし・・ リュウの子供欲いし ・・リュウの夢も叶えさせたいし色々考えなければいけないね」「俺まだ何も考えていないよ」「・・」先生は俺の対応に無言であった 俺は慌てて後を続けた「俺が何処まで出来るか解からないし これからどうなるか俺にも判らないが・・・マジで! 絶対先生を失いたくないよ

 「嬉しいわ!、 リュウが 逃げださない誠実な人だって 前の奥さんの事で解かっているわ、 うちの病院の女性の看護師達が言ってたわ、毎晩 疲れ切って帰って来て奥さんの手を握りながらベッドの下で眠っていたって、あんな旦那さんだったら良いねって、皆憧れていたのよ」

 「そんなんじゃーないよ!看護婦さん達は現実を知らないから、結局 惨めな破局、・・・マジ同じ過ちは絶対出来ないよ!自分が許せなくなる・・ 話変わるけどさ、あの時 前の奥さんの看護で、そのまま寝てしまって時々毛布が俺の肩に掛けて有ったの、看護婦さんに聞いたけど誰も知らないて、・・もしかして先生では無かったの? 何かそんな気がして」

 「そうよリュウ、今はね看護婦と言わないのよ 今は女性ばかりではないの、それで看護師と呼ぶの。 それは兎も角 夜勤の時にね」 「・・」 俺は無言で次の言葉を待った

 「あの時のリュウはね、今もね目が澄んでいてキラキラして 私を見つめ他の方法は無いか又調べたのですが こんな方法はどうなんですか?て懸命に質問して来たの・・・大半の患者やその家族の方は私や他の先生方の説明を聞くだけで ”そうですか” で終わってしまうの」 「・・・」 俺は黙って聞いた

 「何故かあの時 こんな弟がいたら良いなと思い 時々ね・・」 「そうなんだ!やっと解った あの時はありがとう」

 「リュウの気持ちとっても嬉しいわ、今日は遅いから又考えましょう」・・・「さぁー シャワー浴びて来て、 そう云えばリュウのパジャマ買うの忘れたね、 まだまだいっぱい色々する事あるね」

 「うん、今夜は期待どうりするからね」 「バカな事云ってないで!早くシャワー浴びてらっしゃい」 こんなところは お姉さんの様だ 「私のパジャマ用の 徳大なTシャツ出して置くから着てね」

? シャワーを浴びながら ふと思った俺は未だガキだな、先生が何を考えていたか少しも考えていなかった、先生の両親、俺の母、そして世間の皆を説得させなければ成らない、

 先生の固い決意 少しも汲み取れなかった、年上の上に先生の地位全て責任を取らなくてはいけない、少なくても世間はそう思うのだから、俺にそんな心配少しも掛けまいとしてそれなりの決意をしている事、今までの女子達と違うんだ なんって俺はノウテンキなんだと!

 俺は改めて 先生がシャワーを済ませあがって来るのを待った 「リュウ 如何したの? ベッドに行っていると思ったわ、 パジャマ合わないの?」 「そうじゃないよ、こっちに来て座って」 「如何したの?改まって!」

 「ごめん 先生の事何も考えていなくて、これから 先生の両親と皆を説得しなければ成らないし、俺そんな事少しも考えていなくて」

 「良いのよ、リュウはそんな事 心配しなくても、 云ったでしょ!リュウに電話入れるまで 色々悩み考えたの、結局は私たちの決意が変わらなければ大丈夫よ!必ず説得出来ると思うわ、 リュウはそんな心配しなくて いいのよ、 リュウの夢 壊したくないし リュウに迷惑掛けたくないよ」

 やっぱり五つも歳違うんだ、 そこまで考え 全部自分でやろうとしていたんだ そう思うと一層愛しく 「なんで?俺にだって出来るよ! 一人でやろうと思わないで 二人の問題でしょう?、二人で乗り切ろうよ!」 先生の瞳が急に潤み 俺に抱きついてきた 「リュウって優しいのね、..うんうん..うん」 と子供をあやすように俺の頭をなぜた

 「何でも二人で考えようよ、あまり役に立たないけどね」 今度は冗談まじりに 「抱き付くのは此処ではないよあっちのベッドだよ」 先生はそのまま 真面目に 「うん! でも先生はやめてね、 パジャマ大丈夫そうね よかった!」

 「パンツ無いから 女の子ってこんなに下からスウスウして大丈夫なの? それとこれ先生の良い匂いするよ」 「そうよね 何時もスカート履いているから慣れよ」

 「病院で会った時はキリットして誰も寄せ付けない顔して、狭心症 弁膜症 右心室 左心室 大動脈瘤とか今と全然違う顔だね、俺もあの時少しは覚えたけれど 今の顔どっちも好きだなぁ~」

 「リュウたら からかって! 女は恐いよ!営業用の顔と二つ持っているのよ フッフ フー」「下から掴んじゃうぞ!」 少し先生の笑顔が戻ってきた 「おぉ怖!、俺 先生のじゃぁー無くヨシ子の泣き顔より今の笑顔が大好きだよ もう寝よう~よ」

 あえて この後の事には触れないが この言葉で理解して頂こう。 女性をレーシングカーに例えたら失礼かも知れないが 俺にとっては同じ気分だ、空気抵抗を抑えるため極限までに削ぎ落としたボデーは女性の曲線美に等しく  繊細で扱い難く直ぐに燻ってしまうが、一フェラーリF458.jpg度エンジンが掛かると押さえきれない程の高回転に燃え上がる。

 扱いは女性と全く同じだ、時には繊細に押さえ 時には床を踏み抜くほど此れでもかとアクセル踏み込み、幾つものカーブを微妙なハンドル捌きとアクセル ワークで操り まるで情熱のタンゴを踊る様に!、後はオーバーヒートでブチ壊れようがゴールに向かって走りきる。

 その極限の車を操れ自分の手足に出来た時、男たちは究極な喜びを得られ 美しいスポーツカーに憧れる。 これは俺の持論だが 少なからずそう思っている男は多いはず。

 (ワゴン車も実務的で良いが 時には無駄の遊びが有っても良いと思う、スポーツカーで夢とロマンを持ち続けて欲しいものだ、芸術や科学も其処から生まれ決して無駄にはならないはず)。タッチおじさん ダヨ!.jpg

  此処まで読んで下さり有難う御座いますストーリ【前編4】クリックね《http://touch-me.blog.so-net.ne.jp/2012-09-30》次に続きます 是非お読み下さる事お願い致します


読んだよ!(911)  コメント(10)  トラックバック(0) 
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読んだよ911

コメント 10

ナベジュン

こんばんは!
素敵な小説ですね!
風景も魅力を感じました。
順に読ませていただき、やっとここまで拝見させていただきました。
数回に分けていずれ全ての記事を拝見しようと思います。


by ナベジュン (2013-01-15 20:58) 

RuddyCat-Lalah

レースのスピード感と、二人のゆっくりと流れる時間のが対照的でいいですね。
それと要所ようしょに入っている写真が更に
イメージを沸き立たせるアクセントになっていると思います。
by RuddyCat-Lalah (2013-03-02 00:08) 

テレーズ♪

以前「富士スピードウェイ」の駐車場に古い車で
ドリフトさせている人を見かけましたので、良く聞いて見るとあれは「スタントマンでレーサーとは違う」と聞いたんですが、まだああいう人は残っているんでしょうか。目指すものは違いますが、妙に記憶に残っています。
by テレーズ♪ (2013-05-06 18:07) 

Therese♪

あれ、so-net以外はコメントは急に出来ません。
by Therese♪ (2013-05-18 13:38) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
ここまで来ました♪
そうか~、
今さらですが、レースと恋愛って似てるんですね。
by ちゅんちゅんちゅん (2013-06-09 03:04) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
豪雨の後、
少しは涼しくなるかと期待しましたが
湿度がMAXになっただけでした。
雨の被害も各地で出ているようですが
タッチおじさんさまのところは大丈夫でしょうか。
このまま台風シーズン突入なんてことにならないよう
祈るばかりです。
by ちゅんちゅんちゅん (2013-08-07 02:47) 

つなみ

タッチさん、お誕生日おめでとうございます!(*´∇`*)ノシ
by つなみ (2014-03-16 12:18) 

ちゅんちゅんちゅん

おはようございます!
今までどうして気付かなかったのか(。>д<)
スマホからコメントしてみました~(⌒‐⌒)
早くも夏バテ気味です☆
タッチおじさんさま、頑張って夏を乗りきりましょうね( 〃▽〃)
秋が待ち遠しいです☆
by ちゅんちゅんちゅん (2014-07-18 07:47) 

つなみ

タッチさん、ありがとう(*´∇`*)ノシ
by つなみ (2015-02-06 12:35) 

takasi

ご訪問、nice!ありがとうございます。
by takasi (2015-09-22 19:01) 

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